説明

セパレータボルト先端部折り取り工具

【課題】 セパレータボルトの先端部を曲げ折って折り取り、切断したセパレータボルトの先端部を回収して収容することができ、更にプラスチックコーンを取り外すための工具も具備するなど、種々の作業を可能とし利便性を高めた工具を提供することを課題とする。
【解決手段】 管状の本体21の先端にセパレータボルト2の先端部4を挿入する筒状の折り取り部22を備えると共に、後端には折り取ったセパレータボルト2の先端部4を収容して蓄積する容器23を備えてセパレータボルト先端部折り取り工具20を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート型枠を固定するセパレータボルトの先端部を切断するための工具に関するものであり、より詳しくはセパレータボルトの先端部を曲げ折って折り取り、切断したセパレータボルトの先端部を回収して収容することができ、更にはプラスチックコーンを取り外すための工具も具備するなど、種々の作業を可能とし利便性を高めた工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の基礎および柱や壁あるいは梁などを作製する際には、板材にて型枠を形成して型枠内部に生コンクリートを流し込み、コンクリートが十分に硬化した後に型枠を取り除いて仕上げる工法が一般的である。この型枠は、生コンクリートを流し込む空間を規定するものであり、板材と板材との間隔を所定の寸法として保持し固定されるものである。
【0003】
詳しくは図7に示すように、先ず(a)のように2枚の板材1をセパレータボルト2とナット6にて所定間隔で固定し、次いで(b)のように生コンクリート3を板材1と板材1の間の空間に流し込み、コンクリート3が硬化した後に2枚の板材1を取り除く。そして(c)のようにコンクリート3から突出したセパレータボルト2の先端部4を切断する。
また、図8はプラスチックコーン5を用いた工法を示すものであり、(a)のようにセパレータボルト2の両端にプラスチックコーン5を配置し、(b)のようにプラスチックコーン5と外側のナット6とにより板材1と板材1との間隔を所定の寸法として保持し固定する。次いで(c)のように生コンクリート3を板材1と板材1の間の空間に流し込み、コンクリート3が硬化した後に2枚の板材1を取り除く。そして(d)のようにコンクリート3に埋没しているプラスチックコーン5を取り外す。
プラスチックコーン5は図9(b)に詳しく示すように、円錐状のプラスチック環7にオネジ部8とメネジ部9を備えた芯部材10を嵌め込んだものであり、メネジ部9の基部に設けた六角ナット部11を回転させることにより、コンクリート3に埋没している状態から外部へ取り外すことができるようになっている。
このように、型枠にて形成した基礎や柱あるいは壁や梁などを仕上げる際には、コンクリート3から突出したセパレータボルト2の先端部4や、コンクリート3に埋没しているプラスチックコーン5を取り除く作業が必要となる。
【0004】
従来、セパレータボルト2の先端部4を取り除くためには、例えばハンマーなどで叩き折る方法や筒状の専用工具を用いて曲げ折る方法が用いられていた。また、プラスチックコーン5を取り除くためには、図9(a)に示すようなソケットレンチ12などの専用工具にて六角ナット部11を回転させる方法が用いられていた。
このような作業については、例えば下記の文献に示すような器具や工具などが従来より提案されてきた。
【0005】
【特許文献1】 特開2000−140463号公報
【特許文献2】 特開2006−062054号公報
【特許文献3】 実開昭58−181472号公報
【特許文献4】 実開昭61−178678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セパレータボルト2の先端部4を例えばハンマーなどで叩き折る方法では、折れた先端部4が落下するため、後に付近の床などに落下した先端部4を集めて回収する作業、即ち清掃作業が必要であった。しかし、この先端部4は強い力で打撃されて折れることにより切断されることから、方々に飛散し付近の床に広範囲に散乱することとなり、小さな鉄片である先端部4を集めて回収する作業は極めて煩雑なものであった。更には先端部4が何かの隙間や物陰に入り込んでしまった場合には、見つけ出したり取り出したりする必要があり、更に煩雑な作業を必要とするものであった。また、高所での作業は危険を伴うほか、下や付近に他の作業者が居る場合には特に注意を要するものであった。
一方、プラスチックコーン5を取り除くためにはソケットレンチ12などの専用工具が必要であるが、セパレータボルト2の先端部4を取り除く作業とプラスチックコーン5を取り除く作業とが同時並行となる場合も多くあるため、現場での作業にはハンマーや専用工具類を複数持ち歩く必要があった。
また、コンクリート3内に残されるセパレータボルト2の先端部4を取り除いた切断部については、錆が発生することを防ぐために防錆塗料を塗布する作業も必要であった。
各種建築の現場において、セパレータボルト2やプラスチックコーン5は極めて多くの数量が使用されることから、これらを取り除く作業や防錆塗料の塗布作業および清掃作業などについて、従来より省力化および合理化が切に求められていた。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みて成されたものであり、セパレータボルトの先端部を曲げ折って折り取り、切断したセパレータボルトの先端部を回収して収容することができ、更にはプラスチックコーンを取り外すための工具も具備するなど、種々の作業を可能とし利便性を高めた工具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、請求項1に係る本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具は、管状の本体の先端にセパレータボルトの先端部を挿入する筒状の折り取り部を備えると共に、後端には折り取ったセパレータボルトの先端部を収容して蓄積する容器を備えたものである。
また、請求項2に係る本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具は、更にプラスチックコーンを取り外すためのソケットレンチを備えたものである。
請求項3に係る本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具は、更に本体に防錆塗料を噴射するスプレー缶を保持するスプレー缶保持具を備えたものである。
請求項4に係る本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具は、折り取ったセパレータボルトの先端部を折り取り部の内部に仮固定する保持機構を備えたものである。
請求項5に係る本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具は、保持機構として筒状の折り取り部の内面に突出したブラシを備えたものである。
請求項6に係る本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具は、保持機構として筒状の折り取り部の内面に磁石を備えたものである。
請求項7に係る本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具は、保持機構として筒状の折り取り部の内面に突出した板バネを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具は、このような構成としたことにより、セパレータボルトの先端部を曲げ折って折り取り、切断したセパレータボルトの先端部を回収して収容することができるため、後の清掃作業を不要とすることができる。更には、プラスチックコーンを取り外すための工具を具備することにより、種々の作業を可能とし利便性を高めた工具とすることができる。また、防錆塗料を噴射するスプレー缶を保持するスプレー缶保持具を備えたことにより、セパレータボルトの先端部を取り除いた直後にその場で迅速に防錆塗料を塗布することができ、更に利便性を高めた工具とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
【実施例】
【0011】
本案の実施例を以下、図面に基づいて説明する。尚、各図に共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具の実施例を示す概略斜視図であり、セパレータボルト先端部折り取り工具20は、管状の本体21の先端にセパレータボルト2の先端部4を挿入する筒状の折り取り部22を備えると共に、後端に折り取った先端部4を収容して蓄積する容器23を備えたものである。また、後端部には更にプラスチックコーン5を取り外すためのソケットレンチ12を備え、更に防錆塗料を噴射するスプレー缶24を保持するスプレー缶保持具25を本体21に備えたものである。
このスプレー缶保持具25はスプレー缶24を保持すると共に遠隔操作機構26を備えており、スプレー缶24のスプレーヘッドを押圧するレバーを押下操作するワイヤーの端を引くことにより、手元の操作で防錆塗料を噴射して塗布することができるようになっている。尚、このような遠隔操作機構26については、他にも様々な公知の機構を適宜採用することができ、その取付け方法や位置なども適宜に設計可能であり、詳細な説明は省略する。また、スプレー缶保持具25の取り付け位置や角度および取り付け方法なども公知の技術を用いて適宜に設計可能であり、例えばスプレーヘッドを外したスプレー缶24を本体21に沿わせて配置し噴射口の軸線を折り取り部22の軸線に接近させるなど、使い勝手に応じて様々な態様とすることも好ましいものである。
【0012】
図2はスプレー缶24やスプレー缶保持具25および遠隔操作機構26を除いたセパレータボルト先端部折り取り工具20の構造詳細を示す概略断面図である。
本体21は管状となっており、本体21の先端に備えた折り取り部22はネジ込み式で着脱可能となっている。本体21の後端に備えた容器23には蓋27が備えられており、この蓋27を外して内部に蓄積したセパレータボルト2の先端部4を外部に排出することができるようになっている。本体21の後端部に更に備えたソケットレンチ12は図3に示すようにネジ込み式で着脱可能となっており、取り外して単独で使用することができるようになっている。
【0013】
セパレータボルト先端部折り取り工具20は、このような構成となっていることにより、セパレータボルト2の先端部4を折り取り部22に挿入し、図5に示すように後端を上下方向(a)や左右方向(b)に振るように揺り動かすことにより、セパレータボルト2の先端部4を折り曲げて切断することができる。切断された先端部4は、本体21が管状となっていることから管内を移動して容器23内に収容され蓄積されるようになっている。
また、セパレータボルト先端部折り取り工具20は、このような形状としたことにより、例えば本体21の先端付近を一方の手で掴んで支持し、ソケットレンチ12の後端付近を他方の手で掴んで力を加えるように操作することで広範囲な角度に亘り十分な力を加えることができ、操作性が良いものとすることができる。
尚、この実施例においては本体21の形状を略直線状とし、その延長方向にソケットレンチ12を配置したものとなっているが、この例に限らず例えば本体21の形状を曲線状としたり、ソケットレンチ12を本体21に対して角度を設けて配置するなど、使い勝手に応じて様々な態様とすることも好ましいものである。更に、ソケットレンチ12についても、その形状を直線状や曲線状あるいはクランク状など様々なものとするほか、ソケット部分をラチェット式とするなど、種々な態様とすることも好ましいものである。また、容器23も本実施例のような形状や構造に限らず、例えば把持部を設けて手で掴んで力を加えることができるようにするなど、使い勝手に応じて様々な態様とすることも好ましいものである。
【0014】
図4は折り取り部22の詳細を示す概略断面図であり、折り取り部22には更に折り取ったセパレータボルト2の先端部4を折り取り部22の内部に仮固定する保持機構を備えている。(a)は折り取り部22の内面に突出したブラシ28を環状に備えたものであり、(b)は折り取り部22の内面に磁石29を環状に備えたものであり、(c)は折り取り部22の内面に突出した板バネ30を環状に備えたものである。
このように折り取り部22に保持機構を備えたことにより、図6に示すように、例えばブラシ28を備えた折り取り部22において、(a)のように折り取ったセパレータボルト2の先端部4をブラシ28が撓んで折り取り部22の内部に保持して仮固定することができ、次いで(b)のように次の先端部4を挿入すれば、(c)のように先の先端部4は押し込まれて外部に脱落することなく本体21の内部を移動して容器23内に収容される。
尚、図4において(b)の磁石29は磁力により先端部4を保持するものであり、(c)の板バネ30はブラシ28と同様に撓んで先端部4を保持するものである。尚、保持機構としては他にも例えばゴムのようなものや、スプリングなどにて出没する突起状のものなど、多くのものを使用することができるほか、折り取り部22の全体を磁石とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上、説明してきた如く本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具は、セパレータボルトの先端部を曲げ折って折り取り、そして切断したセパレータボルトの先端部を回収して収容することができるため、後の清掃作業を不要とすることができるものである。
更には、プラスチックコーンを取り外すための工具を具備することにより、種々の作業を可能とし利便性を高めた工具とすることができるものである。
また、防錆塗料を噴射するスプレー缶を保持するスプレー缶保持具を備えたことにより、セパレータボルトの先端部を取り除いた直後に、その場で迅速に防錆塗料を塗布することができ、更に利便性を高めた工具とすることができるものである。
各種建築の現場においてセパレータボルトやプラスチックコーンは極めて多くの数量が使用されるものであることから、これらを取り除く作業や防錆塗料の塗布作業および清掃作業などについて省力化および合理化できる本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具は、極めて有益なものであり大いに活用が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 本発明の実施例を示す概略斜視図。
【図2】 図1に示す実施例の構造詳細を示す概略断面図。
【図3】 図2に示す構造詳細の要部を示す概略断面図。
【図4】 (a)(b)(c)はそれぞれ折り取り部に備えた保持機構の実施例を示す概略断面図。
【図5】 (a)(b)はそれぞれ本発明のセパレータボルト先端部折り取り工具の使用状態を示す概略図。
【図6】 (a)(b)(c)はそれぞれ折り取り部の使用状態を示す概略断面図。
【図7】 型枠を用いてコンクリート構造物を作成する一般的な工法を示す概略断面図。
【図8】 型枠を用いてコンクリート構造物を作成する他の一般的な工法を示す概略断面図。
【図9】 (a)はソケットレンチを示す概略断面図。(b)はプラスチックコーンの構造を示す概略断面図。
【符号の説明】
2 … セパレータボルト
4 … 先端部
5 … プラスチックコーン
12 … ソケットレンチ
20 … セパレータボルト先端部折り取り工具
21 … 本体
22 … 折り取り部
23 … 容器
24 … スプレー缶
25 … スプレー缶保持具
28 … ブラシ
29 … 磁石
30 … 板バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータボルトの先端部を曲げ折って折り取る工具であって、
管状の本体の先端にセパレータボルトの先端部を挿入する筒状の折り取り部を備えると共に、後端には折り取ったセパレータボルトの先端部を収容して蓄積する容器を備えたものであるセパレータボルト先端部折り取り工具。
【請求項2】
後端には更に、プラスチックコーンを取り外すためのソケットレンチを備えたものである請求項1に記載のセパレータボルト先端部折り取り工具。
【請求項3】
本体には更に、防錆塗料を噴射するスプレー缶を保持するスプレー缶保持具を備えたものである請求項1または請求項2のいずれかに記載のセパレータボルト先端部折り取り工具。
【請求項4】
折り取り部には、折り取ったセパレータボルトの先端部を折り取り部の内部に仮固定する保持機構を備えたものである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のセパレータボルト先端部折り取り工具。
【請求項5】
保持機構は、筒状の折り取り部の内面に突出したブラシを備えたものである請求項4に記載のセパレータボルト先端部折り取り工具。
【請求項6】
保持機構は、筒状の折り取り部の内面に磁石を備えたものである請求項4に記載のセパレータボルト先端部折り取り工具。
【請求項7】
保持機構は、筒状の折り取り部の内面に突出した板バネを備えたものである請求項4に記載のセパレータボルト先端部折り取り工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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