説明

セパレーター、セパレーター製造装置及びセパレーター製造方法

【課題】セパレーターの通液性が低下するのを抑制することが可能であり、従来のセパレーターよりも、一層高い電解液吸収性や一層低いイオン抵抗を実現することが可能なセパレーターを提供する。また、上記のようなセパレーターを製造することが可能なセパレーター製造装置を提供する。さらにまた、上記のようなセパレーターを製造することが可能なセパレーター製造方法を提供する。
【解決手段】基材層10と、第1ナノ繊維22を含む第1ナノ繊維層20と、第2ナノ繊維32を含む第2ナノ繊維層30とを有し、基材層10、第1ナノ繊維層20、第2ナノ繊維層30の順番で積層され、基材層10と第2ナノ繊維層30とは、第1ナノ繊維22により接合されているセパレーター1。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、セパレーター、セパレーター製造装置及びセパレーター製造方法に関する。
【0002】
従来、基材層と、ナノ繊維を含むナノ繊維層とを有するセパレーターが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来のセパレーターによれば、それぞれ異なる性質を有する基材層とナノ繊維層とを用いることにより、多様な性質を有するセパレーターとすることが可能となる。
また、従来のセパレーターによれば、基材層が有する性質にナノ繊維層が有する性質(広い表面積や微細な空隙等)を付加することにより、一層多様な性質を有するセパレーターとすることが可能となる。
また、従来のセパレーターによれば、一般的な繊維層を有するセパレーターと比較して繊維の平均径や空隙が微細なナノ繊維層を備えるため、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性を備え、さらに、総厚の薄いセパレーターとすることが可能となる。
【0004】
なお、「基材層」とは、ナノ繊維層を形成するための基材となる層のことをいう。
また、「ナノ繊維」とは、ポリマー材料からなり、平均径が数nm〜数千nmの繊維のことをいう。さらに、「セパレーター」とは、電池(一次電池及び二次電池を含む。)やコンデンサー(キャパシターともいう。)等に用いるセパレーター(仕切り)のことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−103050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、セパレーターの技術分野においては、基材層とナノ繊維層との間の結合強度が小さい(つまり、剥離しやすい)場合があるということが知られている。このため、種々の接合材料を用いて基材層とナノ繊維層とを接合することが行われている(例えば、特許文献1の[0040]段落参照。)。しかしながら、本発明の発明者らの研究により、上記のような場合には、セパレーターの通液性が低下し、その結果、一層高い電解液吸収性や一層低いイオン抵抗を実現することが困難であるという問題が判明した。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、セパレーターの通液性が低下するのを抑制することが可能であり、従来のセパレーターよりも、一層高い電解液吸収性や一層低いイオン抵抗を実現することが可能なセパレーターを提供することを目的とする。また、上記のようなセパレーターを製造することが可能なセパレーター製造装置を提供することを目的とする。さらにまた、上記のようなセパレーターを製造することが可能なセパレーター製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、基材層とナノ繊維層とを接合することによりセパレーターの通液性が低下してしまうことについて鋭意研究を重ねた結果、接合材料によりナノ繊維同士の間隙が埋まることが原因であることを見出した。これを踏まえて、本発明の発明者らは更なる研究を重ね、接合材料としてナノ繊維を用いることにより上記問題を解決することが可能であること(後述する実施形態参照。)に想到し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下の要素により構成される。
【0009】
[1]本発明のセパレーターは、基材層と、第1ナノ繊維を含む第1ナノ繊維層と、第2ナノ繊維を含む第2ナノ繊維層とを有し、前記基材層、前記第1ナノ繊維層、前記第2ナノ繊維層の順番で積層され、前記基材層と前記第2ナノ繊維層とは、前記第1ナノ繊維により接合されていることを特徴とする。
【0010】
このため、本発明のセパレーターによれば、接合材料としての第1ナノ繊維を含む第1ナノ繊維層を有するため、接合材料としての第1ナノ繊維がごく微細であることから、接合後にナノ繊維同士の間隙が埋まってしまうのを抑制することが可能となり、その結果、セパレーターの通液性が低下するのを抑制することが可能であり、従来のセパレーターよりも、一層高い電解液吸収性や一層低いイオン抵抗を実現することが可能となる。
【0011】
また、本発明のセパレーターによれば、それぞれ異なる性質を有する基材層と第2ナノ繊維層(従来のナノ繊維層に相当)とを用いることにより、従来のセパレーターと同様に、多様な性質を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0012】
また、本発明のセパレーターによれば、基材層が有する性質に第2ナノ繊維層が有する性質(広い表面積や微細な空隙等)を付加することにより、従来のセパレーターと同様に、一層多様な性質を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0013】
また、本発明のセパレーターによれば、第1ナノ繊維層をさらに有するため、第1ナノ繊維層が有する性質をさらに付加し、より一層多様な性質を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0014】
また、本発明のセパレーターによれば、一般的な繊維層を有するセパレーターと比較して繊維の平均径や空隙が微細な第2ナノ繊維層を備えるため、従来のセパレーターと同様に、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性を備え、さらに、総厚の薄いセパレーターとすることが可能となる。
【0015】
なお、本発明の「第2ナノ繊維層」は、上述したように、従来のセパレーターにおける「ナノ繊維層」に相当するものである。
【0016】
[2]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維は、熱接合性を有する樹脂からなり、前記基材層と前記第2ナノ繊維層とは、少なくとも一部が熱で溶融した第1ナノ繊維により接合されていることが好ましい。
【0017】
このような構成とすることにより、基材層と第2ナノ繊維層とを加熱することにより容易に接合することが可能となる。
【0018】
なお、熱接合性を有する樹脂とは、いわゆる熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)に加え、ポリウレタンのように熱による接合性を有する樹脂も広く含めたもののことをいう。
【0019】
[3]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維を構成する前記熱接合性を有する樹脂の融点は、前記基材層を構成する材料の融点及び前記第2ナノ繊維層を構成する材料の融点のいずれよりも低いことが好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、基材層を構成する材料の融点及び第2ナノ繊維層を構成する材料の融点と熱接合性を有する樹脂の融点との間の温度で加熱することにより第1ナノ繊維を選択的に溶融することが可能となる。
【0021】
[4]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維を構成する前記熱接合性を有する樹脂の融点は、前記基材層を構成する材料の融点及び前記第2ナノ繊維層を構成する材料の融点のいずれよりも10℃以上低いことが好ましい。
【0022】
このような構成とすることにより、基材層を構成する材料の融点及び第2ナノ繊維層を構成する材料の融点と、熱接合性を有する樹脂の融点とが十分に離れているため、加熱することにより第1ナノ繊維を選択的に溶融することが容易に可能となる。
【0023】
[5]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維の平均径は、50nm〜1000nmの範囲内にあることが好ましい。
【0024】
このような構成とすることにより、基材層と第2ナノ繊維層とを十分な強度で接合し、かつ、セパレーターの通液性が低下するのを抑制することが可能となる。
【0025】
なお、本発明において、第1ナノ繊維の平均径を50nm〜1000nmの範囲内にしたのは、当該平均径が50nmより小さい場合には十分な強度で接合することができない場合があるためであり、当該平均径が1000nmより大きい場合にはセパレーターの通液性が低下してしまう場合があるためである。
【0026】
[6]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維は、所定の溶媒に対して溶解性を有する樹脂からなり、前記基材層と前記第2ナノ繊維層とは、少なくとも一部が前記所定の溶媒で溶解した第1ナノ繊維により接合されていることも好ましい。
【0027】
このような構成とすることにより、基材層と第2ナノ繊維層とを所定の溶媒を用いて容易に接合することが可能となる。
【0028】
[7]本発明のセパレーターにおいては、前記第2ナノ繊維の平均径は、前記第1ナノ繊維の平均径よりも大きく、かつ、80nm〜3000nmの範囲内にあることが好ましい。
【0029】
このような構成とすることにより、第2ナノ繊維における加熱等の影響を抑制し、かつ、ナノ繊維としての性質(広い表面積や微細な空隙等)を損なわないようにすることが可能となる。
【0030】
なお、本発明において、第2ナノ繊維の平均径を第1ナノ繊維の平均径よりも大きく、かつ、80nm〜3000nmの範囲内にしたのは、当該平均径が第1ナノ繊維の平均径よりも小さい場合や80nmより小さい場合には第2ナノ繊維における加熱等の影響を大きく受けてしまう場合があるためであり、当該平均径が3000nmより大きい場合には第2ナノ繊維としての性質が損なわれる場合があるためである。
【0031】
[8]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維層は、前記第2ナノ繊維層よりも薄いことが好ましい。
【0032】
このような構成とすることにより、ナノ繊維層が有する性質(広い表面積や微細な空隙等)を付加するのが主に第2ナノ繊維層となり、安定した性能を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0033】
[9]本発明のセパレーターにおいては、前記セパレーターの厚さは、1μm〜100μmの範囲内にあることが好ましい。
【0034】
このような構成とすることにより、十分な機械的強度を有し、かつ、十分に低いイオン抵抗性を有するセパレーターとすることが可能となる。
なお、本発明において、セパレーターの厚さを1μm〜100μmの範囲内にしたのは、当該厚さが1μmより薄い場合にはセパレーターの機械的強度を十分に高くすることができない場合があるためであり、当該厚さが100μmより厚い場合にはイオン抵抗性を十分に低くすることができない場合があるためである。
上記の観点からは、セパレーターの厚さが10μm〜40μmの範囲内にあることが一層好ましい。
【0035】
[10]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維及び前記第2ナノ繊維は、電界紡糸法により得られたものであることが好ましい。
【0036】
このような構成とすることにより、所望の性質(組成、厚さ、目付、各ナノ繊維の平均径、溶融温度、溶媒に対する溶解性等)を有する第1ナノ繊維層及び第2ナノ繊維層を形成することが可能となる。
【0037】
[11]本発明のセパレーター製造装置は、電界紡糸法により、基材層における一方の面に、第1ナノ繊維を含む第1ナノ繊維層を形成して第1積層体とする第1電界紡糸装置と、電界紡糸法により、前記第1積層体における前記第1ナノ繊維層の表面に、第2ナノ繊維を含む第2ナノ繊維層を形成して第2積層体とする第2電界紡糸装置と、前記第2積層体における前記第1ナノ繊維を用いて前記基材層と前記第2ナノ繊維層とを接合する接合装置とを備えることを特徴とする。
【0038】
本発明のセパレーター製造装置によれば、上記したような本発明のセパレーターを製造することが可能となる。
【0039】
[12]本発明のセパレーターにおいては、前記接合装置は、前記基材層と、前記第1ナノ繊維層と、前記第2ナノ繊維層とを積層した状態で熱圧着する熱接合装置からなることが好ましい。
【0040】
このような構成とすることにより、第1ナノ繊維として熱接合性を有する樹脂からなる第1ナノ繊維を用いた場合において、基材層と第2ナノ繊維層とを加熱により接合することが可能となる。
【0041】
[13]本発明のセパレーター製造方法は、基材層を準備する基材層準備工程と、電界紡糸法により、前記基材層における一方の面に、第1ナノ繊維を含む第1ナノ繊維層を形成して第1積層体とする第1電界紡糸工程と、電界紡糸法により、前記第1積層体における前記第1ナノ繊維層の表面に、第2ナノ繊維を含む第2ナノ繊維層を形成して第2積層体とする第2電界紡糸工程と、前記第2積層体における前記第1ナノ繊維を用いて前記基材層と前記第2ナノ繊維層とを接合する接合工程とをこの順番で含むことを特徴とする。
【0042】
本発明のセパレーター製造方法によれば、上記したような本発明のセパレーターを製造することが可能となる。
【0043】
[14]本発明のセパレーター製造方法においては、前記接合工程は、前記基材層と、前記第1ナノ繊維層と、前記第2ナノ繊維層とを積層した状態で熱圧着する熱接合工程であって、当該熱接合工程により前記第1ナノ繊維の少なくとも一部を熱で溶融させて前記基材層と前記第2ナノ繊維層とを前記第1ナノ繊維で接合することが好ましい。
【0044】
このような方法とすることにより、第1ナノ繊維として熱接合性を有する樹脂からなる第1ナノ繊維を用いた場合において、基材層とナノ繊維層とを加熱により接合することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施形態に係るセパレーター1を説明するための図である。
【図2】実施形態に係るセパレーター製造装置100の正面図である。
【図3】実施形態に係るセパレーター製造方法のフローチャートである。
【図4】実施形態に係るセパレーター製造方法を説明するための図である。
【図5】実施形態における接合工程S4を説明するために示す図である。
【図6】変形例におけるセパレーター製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明のセパレーター、セパレーター製造装置及びセパレーター製造方法について図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0047】
[実施形態]
1.実施形態に係るセパレーター1の構成
まず、実施形態に係るセパレーター1の構成を説明する。
図1は、実施形態に係るセパレーター1を説明するための図である。図1(a)は芯材(符号を図示せず。)に巻いた状態のセパレーター1の斜視図であり、図1(b)はセパレーター1の拡大断面図であり、図1(c)は図1(b)のAで示す範囲をさらに拡大して示す模式図(以下、拡大模式図という。)である。
【0048】
実施形態に係るセパレーター1は、図1に示すように、基材層10と、第1ナノ繊維層20と、第2ナノ繊維層30とを有し、基材層10、第1ナノ繊維層20、第2ナノ繊維層30の順番で積層されている。セパレーター1においては、図1(c)に示すように、基材層10と第2ナノ繊維層30とは、第1ナノ繊維22により接合されている。具体的には、基材層10と第2ナノ繊維層30とは、少なくとも一部が熱で溶融した第1ナノ繊維24により接合されている。
セパレーター1の厚さは、1μm〜100μmの範囲内にあり、例えば、20μmである。
【0049】
実施形態に係るセパレーター1は、後述するように、実施形態に係るセパレーター製造装置100を用いて、実施形態に係るセパレーター製造方法により得ることができる。
【0050】
基材層10は長尺シートの形態を取っており、基材層10としては、各種材料からなる不織布、織物、編物、紙等、通気性のあるものを用いることができる。実施形態においては基材層10として繊維質の基材層を用いており、図1(c)中、符号12で示すのは基材層10中の基材繊維である。なお、基材層10としては、繊維質以外のもの(例えば、多孔性のフィルム)も用いることができる。
基材層10の厚さは、例えば1μm〜90μmのものを用いることができる。基材層10の長さは、例えば10m〜10kmのものを用いることができる。
【0051】
第1ナノ繊維層20は、第1ナノ繊維22からなる。なお、第1ナノ繊維層は第1ナノ繊維を含んでいればよく、その上であれば第1ナノ繊維以外の物質を含んでもよい。第1ナノ繊維22は熱接合性を有する樹脂からなる。第1ナノ繊維22の平均径は、50nm〜1000nmの範囲内にあり、例えば、100nmである。第1ナノ繊維20は、後述するように電界紡糸法により得ることができる。
【0052】
第2ナノ繊維層30は、第2ナノ繊維32からなる。なお、第2ナノ繊維層は第2ナノ繊維を含んでいればよく、その上であれば第2ナノ繊維以外の物質を含んでもよい。第2ナノ繊維32の平均径は、第1ナノ繊維22の平均径よりも大きく、かつ、80nm〜3000nmの範囲内にあり、例えば、1000nmである。第2ナノ繊維32は、後述するように電界紡糸法により得ることができる。
【0053】
セパレーター1においては、第1ナノ繊維22を構成する熱接合性を有する樹脂の融点は、基材層10を構成する材料(基材層繊維12)の融点及び第2ナノ繊維層30を構成する材料(第2ナノ繊維32)の融点のいずれよりも低く、さらにいえば、10℃以上低い。
セパレーター1においては、図1(b)に示すように、第1ナノ繊維層20は第2ナノ繊維層30よりも薄い。
【0054】
2.実施形態に係るセパレーター製造装置100の構成
次に、実施形態に係るセパレーター製造装置100の構成を説明する。
図2は、実施形態に係るセパレーター製造装置100の正面図である。なお、図2においては、一部の部材(筐体200や原料タンク232等)は断面図として示している。
【0055】
セパレーター製造装置100は、搬送装置110と、第1電界紡糸装置120Aと、第2電界紡糸装置120Bと、接合装置130とを備える。セパレーター製造装置100は、第1電界紡糸装置120A及び第2電界紡糸装置120Bをそれぞれ1つずつ備える。
【0056】
搬送装置110は、基材層10を所定の搬送速度で搬送する。搬送装置110は、基材層10を繰り出す繰り出しローラー111、基材層10を巻き取る巻き取りローラー112、基材層10の張りを調整するテンションローラー113,118及び繰り出しローラー111と巻き取りローラー112との間に位置する補助ローラー114を備える。繰り出しローラー111及び巻き取りローラー112は、図示しない駆動モーターにより回転駆動される構造となっている。
【0057】
第1電界紡糸装置120Aは、電界紡糸法により、基材層10における一方の面(実施形態1においては下方の面)に、第1ナノ繊維22を含む第1ナノ繊維層20’を形成して第1積層体40とする(後述する図4(b)参照。)。
第1電界紡糸装置120Aは、図2に示すように、筐体200と、ノズルユニット210と、ポリマー溶液供給部230と、コレクター250と、電源装置260と、補助ベルト装置270とを備える。第1電界紡糸装置120Aは、後述する複数の上向きノズル220の吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら吐出して、第1ナノ繊維層20’を形成する。
【0058】
筐体200は、導電体からなる。
ノズルユニット210は、複数の上向きノズル220を有する。
本発明のセパレーター製造装置には様々な大きさ及び様々な形状を有するノズルユニットを用いることができるが、ノズルユニット210は、上面から見たときに一辺が0.5m〜3mの長方形(正方形を含む)に見える大きさで、ブロック状の形状を有する。
【0059】
上向きノズル220は、ポリマー溶液供給部230から供給される「第1ナノ繊維22の原料であるポリマー溶液(熱接合性を有する樹脂のポリマー溶液)」を吐出口から吐出するノズルである。上向きノズル220は、ポリマー溶液を吐出口から上向きに吐出する。上向きノズル220を構成する材料としては導電体を用いることができ、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム等を用いることができる。
【0060】
上向きノズル220は、例えば、1.5cm〜6.0cmのピッチで配列されている。上向きノズル220の数は、例えば、36個(縦横同数に配列した場合、6個×6個)〜21904個(縦横同数に配列した場合、148個×148個)とすることができる。
【0061】
なお、実施形態においては、ノズルとして上向きノズル220を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。ノズルとして横向きノズルを用いてもよいし、下向きノズルを用いてもよい。
【0062】
ポリマー溶液供給部230は、ポリマー溶液をノズルユニット210に供給する。ポリマー溶液供給部230は、原料タンク232、撹拌装置233及び供給装置234を備える。第1電界紡糸装置120Aの原料タンク232には、第1ナノ繊維22の原料が入る。
【0063】
コレクター250は、ノズルユニット210の上方に配置されている。コレクター250は導電体からなり、図2に示すように、絶縁部材252を介して筐体200に取り付けられている。
電源装置260は、上向きノズル220と、コレクター250との間に高電圧を印加する。電源装置260の正極はコレクター250に接続され、電源装置260の負極は筐体200を介してノズルユニット210に接続されている。
【0064】
補助ベルト装置270は、長尺シートWの搬送速度に同期して回転する補助ベルト272と、補助ベルト272の回転を助ける5つの補助ベルト用ローラー274とを有する。5つの補助ベルト用ローラー274のうち1つ又は2つ以上の補助ベルト用ローラーが駆動ローラーであり、残りの補助ベルト用ローラーが従動ローラーである。コレクター250と基材層10との間に補助ベルト272が配設されているため、基材層10は、正の高電圧が印加されているコレクター250に引き寄せられることなくスムーズに搬送されるようになる。
【0065】
第2電界紡糸装置120Bは、電界紡糸法により、第1積層体40における第1ナノ繊維層20’の表面に、第2ナノ繊維32を含む第2ナノ繊維層30を形成して第2積層体50とする。
第2電界紡糸装置120Bは、機械的構成としては第1電界紡糸装置120Aと同様の構成を有するため、説明を省略する。
第2電界紡糸装置120Bの原料タンク232には、第2ナノ繊維32の原料が入る。
【0066】
接合装置130は、第2積層体50における第1ナノ繊維22を用いて基材層10と第2ナノ繊維層30とを接合する装置である。接合装置130は、基材層10と、第1ナノ繊維層20と、第2ナノ繊維層30とを積層した状態で熱圧着する熱接合装置からなる。接合装置130としては、図2に示すように、カレンダーロールを備えた熱接合装置を例示することができる。なお、加熱するための手段としては、例えば、カレンダーロール内にヒーター機能(図示せず。)を組み込んだものを用いることができるが、これ以外にも、たとえば、抵抗加熱器、赤外線加熱器、乾燥器、熱風発生器等を用いることも可能である。なお、図2においては、カレンダーロールは、上下1個ずつのローラーによって第2積層体50を挟むような構成のものを例示したが、このような構成に限られるものではなく、上下2個ずつのローラーが存在するもの等種々の構成を有するカレンダーロールを使用することができる。
【0067】
3.実施形態に係るセパレーター製造方法の説明
次に、実施形態に係るセパレーター製造方法を説明する。
図3は、実施形態に係るセパレーター製造方法のフローチャートである。
図4は、実施形態に係るセパレーター製造方法を説明するための図である。図4(a)は基材準備工程S1のときの基材10の拡大断面図であり、図4(b)は第1電界紡糸工程S2後の第1積層体40の拡大断面図であり、図4(c)は第2電界紡糸工程S3後の第2積層体の拡大断面図である。
図5は、実施形態における接合工程S4を説明するために示す図である。図5(a)は接合工程S4の前の拡大模式図であり、図5(b)は接合工程S4の後の拡大模式図である。
【0068】
実施形態に係るセパレーター製造方法は、図3に示すように、基材層準備工程S1と、第1電界紡糸工程S2と、第2電界紡糸工程S3と、接合工程S4とをこの順番で含む。実施形態に係るセパレーター製造方法は、実施形態に係るセパレーター製造装置100を用いて行う。
【0069】
1.基材層準備工程S1
基材準備工程S1は、図4(a)に示すように、基材層10を準備する工程である。実施形態においては、基材層10は長尺シートの形態を取っている。なお、本発明のセパレーター製造方法においては、長尺シート以外の形態を取る種々の形状の基材層を用いることができる。
【0070】
2.第1電界紡糸工程S2
第1電界紡糸工程S2は、図4(b)に示すように、電界紡糸法により、基材層10における一方の面に、第1ナノ繊維22を含む第1ナノ繊維層20’を形成して第1積層体40とする工程である。
具体的には、まず、第1ナノ繊維22の原料であるポリマー溶液を、第1電界紡糸装置120Aにおけるポリマー溶液供給部230を通じてノズルユニット210へ供給する。次に、長尺シートである基材層10を搬送装置110にセットし、基材層10を繰り出しローラー111から所定の搬送速度で搬送させながら、第1電界紡糸装置120Aにおいて基材層10に第1ナノ繊維層20’を形成し、第1積層体40とする。
【0071】
3.第2電界紡糸工程S3
第2電界紡糸工程S3は、図4(c)に示すように、電界紡糸法により、第1積層体40における第1ナノ繊維層20’の表面に、第2ナノ繊維32を含む第2ナノ繊維層30を形成して第2積層体50とする工程である。
具体的には、まず、第2ナノ繊維32の原料であるポリマー溶液を、第2電界紡糸装置120Bにおけるポリマー溶液供給部230を通じてノズルユニット210へ供給する。次に、巻き取りローラー112に向けて所定の搬送速度で搬送させながら、第2電界紡糸装置120Bにおいて第2ナノ繊維層20’上に第2ナノ繊維層30を形成し、第2積層体50とする。
【0072】
4.接合工程S4
接合工程S4は、図5に示すように、第2積層体50における第1ナノ繊維22を用いて基材層10と第2ナノ繊維層30とを接合する工程である。接合工程S4は、基材層10と、第1ナノ繊維層20と、第2ナノ繊維層30とを積層した状態で熱圧着する熱接合工程であって、当該熱接合工程により第1ナノ繊維22の少なくとも一部を熱で溶融させて基材層10と第2ナノ繊維層30とを第1ナノ繊維22で接合する。当該工程はセパレーター製造装置100の接合装置130により行われ、セパレーター1が製造される。製造されたセパレーター1は、巻き取りローラー112に巻き取られる。
【0073】
以下に、実施形態における紡糸条件を例示的に示す。
【0074】
第1ナノ繊維22の材料としては、熱接合性を有する樹脂、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)等を用いることができる。第1ナノ繊維22の材料としては、基材繊維12の融点及び第2ナノ繊維32の材料の融点のいずれよりも低い融点を有し、さらにいえば、10℃以上低い融点を有するものを好適に用いることができる。
【0075】
第2ナノ繊維32の原料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、シルク、セルロース、キトサン等を用いることができる。
【0076】
各種ポリマー溶液を製造するための溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、水、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン、THF等を用いることができる。また、溶媒として複数種類の溶媒を混合して用いてもよい。ポリマー溶液には、導電性向上剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0077】
搬送速度は、例えば0.2m/分〜100m/分に設定することができる。上向きノズル220とコレクター250とノズルユニット210に印加する電圧は、10kV〜80kVに設定することができ、50kV付近に設定することが好ましい。
【0078】
紡糸区域の温度は、例えば25℃に設定することができる。紡糸区域の湿度は、例えば30%に設定することができる。
【0079】
以下、実施形態に係るセパレーター1、セパレーター製造装置100及びセパレーター製造方法の効果を記載する。
【0080】
実施形態に係るセパレーター1によれば、接合材料としての第1ナノ繊維22を含む第1ナノ繊維層20を有するため、接合材料としての第1ナノ繊維がごく微細であることから、接合後にナノ繊維同士の間隙が埋まってしまうのを抑制することが可能となり、その結果、セパレーターの通液性が低下するのを抑制することが可能であり、従来のセパレーターよりも、一層高い電解液吸収性や一層低いイオン抵抗を実現することが可能となる。
【0081】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、それぞれ異なる性質を有する基材層10と第2ナノ繊維層30とを用いることにより、従来のセパレーターと同様に、多様な性質を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0082】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、基材層10が有する性質に第2ナノ繊維層30が有する性質(広い表面積や微細な空隙等)を付加することにより、従来のセパレーターと同様に、一層多様な性質を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0083】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、第1ナノ繊維層20をさらに有するため、第1ナノ繊維層が有する性質をさらに付加し、より一層多様な性質を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0084】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、一般的な繊維層を有するセパレーターと比較して繊維の平均径や空隙が微細な第2ナノ繊維層30を備えるため、従来のセパレーターと同様に、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性を備え、さらに、総厚の薄いセパレーターとすることが可能となる。
【0085】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、第1ナノ繊維22は熱接合性を有する樹脂からなり、基材層10と第2ナノ繊維層30とは、少なくとも一部が熱で溶融した第1ナノ繊維24により接合されているため、基材層と第2ナノ繊維層とを加熱により容易に接合することが可能となる。
【0086】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、第1ナノ繊維22を構成する熱接合性を有する樹脂の融点は、基材層10を構成する材料の融点及び第2ナノ繊維層30を構成する材料の融点のいずれよりも低いため、加熱により第1ナノ繊維を選択的に溶融することが可能となる。
【0087】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、第1ナノ繊維22を構成する熱接合性を有する樹脂の融点は、基材層10を構成する材料の融点及び第2ナノ繊維層30を構成する材料の融点のいずれよりも10℃以上低いため、加熱により第1ナノ繊維を選択的に溶融することが容易に可能となる。
【0088】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、第1ナノ繊維22の平均径は、50nm〜1000nmの範囲内にあるため、基材層と第2ナノ繊維層とを十分な強度で接合し、かつ、セパレーターの通液性が低下するのを抑制することが可能となる。
【0089】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、第2ナノ繊維32の平均径は、第1ナノ繊維22の平均径よりも大きく、かつ、80nm〜3000nmの範囲内にあるため、第2ナノ繊維における加熱等の影響を抑制し、かつ、ナノ繊維としての性質(広い表面積や微細な空隙等)を損なわないようにすることが可能となる。
【0090】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、第1ナノ繊維層20は、第2ナノ繊維層30よりも薄いため、ナノ繊維層が有する性質(広い表面積や微細な空隙等)を付加するのが主に第2ナノ繊維層となり、安定した性能を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0091】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、セパレーター1の厚さが1μm〜100μmの範囲内にあるため、十分な機械的強度を有し、かつ、十分に低いイオン抵抗性を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0092】
また、実施形態に係るセパレーター1によれば、第1ナノ繊維22及び第2ナノ繊維32は、電界紡糸法により得られたものであるため、所望の性質(組成、厚さ、目付、各ナノ繊維の平均径、溶融温度、溶媒に対する溶解性等)を有する第1ナノ繊維層及び第2ナノ繊維層を形成することが可能となる。
【0093】
実施形態に係るセパレーター製造装置100によれば、第1電界紡糸装置120Aと、第2電界紡糸装置120Bと、第1ナノ繊維22を用いて基材層10と第2ナノ繊維層30とを接合する接合装置130とを備えるため、上記したような実施形態に係るセパレーター1を製造することが可能となる。
【0094】
また、実施形態に係るセパレーター製造装置100によれば、接合装置130は、基材層10と、第1ナノ繊維層20と、第2ナノ繊維層30とを積層した状態で熱圧着する熱接合装置からなるため、第1ナノ繊維として熱接合性を有する樹脂からなる第1ナノ繊維を用いた場合において、基材層と第2ナノ繊維層とを加熱により接合することが可能となる。
【0095】
実施形態に係るセパレーター製造方法によれば、基材層準備工程S1と、第1電界紡糸工程S2と、第2電界紡糸工程S3と、第1ナノ繊維22を用いて基材層10と第2ナノ繊維層30とを接合する接合工程S4とをこの順番で含むため、上記したような実施形態に係るセパレーター1を製造することが可能となる。
【0096】
実施形態に係るセパレーター製造方法によれば、接合工程S4は、基材層10と、第1ナノ繊維層20と、第2ナノ繊維層30とを積層した状態で熱圧着する熱接合工程であって、当該熱接合工程により第1ナノ繊維22の少なくとも一部を熱で溶融させて基材層10と第2ナノ繊維層30とを第1ナノ繊維22で接合するため、第1ナノ繊維として熱接合性を有する樹脂からなる第1ナノ繊維を用いた場合において、基材層とナノ繊維層とを加熱により接合することが可能となる。
【0097】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0098】
(1)上記実施形態における各構成要素の数、位置関係、大きさは例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0099】
(2)上記実施形態においては、基材層10、第1ナノ繊維層20及び第2ナノ繊維層30からなるセパレーターを例にとって本発明のセパレーターを説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、基材層、第1ナノ繊維層及び第2ナノ繊維層以外の構成要素(補強部材等)をさらに備えるセパレーターとしてもよい。
【0100】
(3)上記実施形態に係るセパレーター1は、実施形態に係るセパレーター製造装置100を用いて製造するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のセパレーターは、第1電界紡糸装置、第2電界紡糸装置及び接合装置がそれぞれ別体となっているセパレーター製造装置を用いて製造してもよい。このように、本発明のセパレーターは、種々のセパレーター製造装置を用いて製造することができる。
【0101】
(4)上記実施形態に係るセパレーター1は、実施形態に係るセパレーター製造方法により製造するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のセパレーターは、第1電界紡糸工程と第2電界紡糸工程とを同時に行うセパレーター製造方法により製造してもよい。このように、本発明のセパレーターは、種々のセパレーター製造方法を用いて製造することができる。
【0102】
(5)上記実施形態に係るセパレーター製造方法は、上記のセパレーター製造装置100を用いて行うものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のセパレーター製造方法は、第1電界紡糸装置、第2電界紡糸装置及び接合装置がそれぞれ別体となっているセパレーター製造装置を用いて行ってもよい。このように、本発明のセパレーター製造方法は、種々のセパレーター製造装置を用いて行うことができる。
【0103】
(6)上記実施形態においては、第1ナノ繊維22の一部を溶融する接合装置130を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1ナノ繊維の全部を溶融する接合装置を用いてもよい。
【0104】
(7)上記実施形態においては、熱接合性を有する樹脂からなる第1ナノ繊維を用い、基材層10と第2ナノ繊維層30とは、少なくとも一部が熱で溶融した第1ナノ繊維22により接合されているセパレーターを例にとって本発明を説明したが、本発明のセパレーターはこれに限定されるものではない。図6は、変形例におけるセパレーター製造方法のフローチャートである。例えば、所定の溶媒に対して溶解性を有する樹脂からなる第1ナノ繊維を用い、基材層と第2ナノ繊維層とは、少なくとも一部が所定の溶媒で溶解した第1ナノ繊維により接合されているセパレーターとしてもよい。このようなセパレーターは、例えば図6に示すように、第1ナノ繊維に対して適度な溶解性を有する溶媒に第2積層体を浸して、又は当該溶媒の蒸気に第2積層体を通して基材層と第2ナノ繊維層とを接合する接合工程(溶解接合工程)S4’を行うことで製造することができる。このような構成とすることにより、基材層と第2ナノ繊維層とを所定の溶媒を用いて容易に接合することが可能となる。
【0105】
(8)上記実施形態においては、第1電界紡糸装置120A及び第2電界紡糸装置120Bを1台ずつ備えるセパレーター製造装置100を例にとって本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1電界紡糸装置及び第2電界紡糸装置を2台以上備えるセパレーター製造装置を本発明に適用することもできる。
【符号の説明】
【0106】
1…セパレーター、10…基材層、12…基材繊維、20…(接合工程後の)第1ナノ繊維層、20’…(接合工程前の)第1ナノ繊維層、22…第1ナノ繊維、24…溶融した第1ナノ繊維、30…第2ナノ繊維層、32…第2ナノ繊維、40…第1積層体、50…第2積層体、100…セパレーター製造装置、110…搬送装置、111…繰り出しローラー、112…巻き取りローラー、113,118…テンションローラー、114…補助ローラー、120A…第1電界紡糸装置、120B…第2電界紡糸装置、130…接合装置、200…筐体、210…ノズルユニット、220…上向きノズル、250…コレクター、252…絶縁体、260…電源装置、270…補助ベルト装置、272…補助ベルト、274…補助ベルト用ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
第1ナノ繊維を含む第1ナノ繊維層と、
第2ナノ繊維を含む第2ナノ繊維層とを有し、
前記基材層、前記第1ナノ繊維層、前記第2ナノ繊維層の順番で積層され、
前記基材層と前記第2ナノ繊維層とは、前記第1ナノ繊維により接合されていることを特徴とするセパレーター。
【請求項2】
請求項1に記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維は、熱接合性を有する樹脂からなり、
前記基材層と前記第2ナノ繊維層とは、少なくとも一部が熱で溶融した第1ナノ繊維により接合されていることを特徴とするセパレーター。
【請求項3】
請求項2に記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維を構成する前記熱接合性を有する樹脂の融点は、前記基材層を構成する材料の融点及び前記第2ナノ繊維層を構成する材料の融点のいずれよりも低いことを特徴とするセパレーター。
【請求項4】
請求項3に記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維を構成する前記熱接合性を有する樹脂の融点は、前記基材層を構成する材料の融点及び前記第2ナノ繊維層を構成する材料の融点のいずれよりも10℃以上低いことを特徴とするセパレーター。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維の平均径は、50nm〜1000nmの範囲内にあることを特徴とするセパレーター。
【請求項6】
請求項1に記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維は、所定の溶媒に対して溶解性を有する樹脂からなり、
前記基材層と前記第2ナノ繊維層とは、少なくとも一部が前記所定の溶媒で溶解した第1ナノ繊維により接合されていることを特徴とするセパレーター。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記第2ナノ繊維の平均径は、前記第1ナノ繊維の平均径よりも大きく、かつ、80nm〜3000nmの範囲内にあることを特徴とするセパレーター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維層は、前記第2ナノ繊維層よりも薄いことを特徴とするセパレーター。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記セパレーターの厚さは、1μm〜100μmの範囲内にあることを特徴とするセパレーター。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維及び前記第2ナノ繊維は、電界紡糸法により得られたものであることを特徴とするセパレーター。
【請求項11】
電界紡糸法により、基材層における一方の面に、第1ナノ繊維を含む第1ナノ繊維層を形成して第1積層体とする第1電界紡糸装置と、
電界紡糸法により、前記第1積層体における前記第1ナノ繊維層の表面に、第2ナノ繊維を含む第2ナノ繊維層を形成して第2積層体とする第2電界紡糸装置と、
前記第2積層体における前記第1ナノ繊維を用いて前記基材層と前記第2ナノ繊維層とを接合する接合装置とを備えることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項12】
請求項11に記載のセパレーター製造装置において、
前記接合装置は、前記基材層と、前記第1ナノ繊維層と、前記第2ナノ繊維層とを積層した状態で熱圧着する熱接合装置からなることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項13】
基材層を準備する基材層準備工程と、
電界紡糸法により、前記基材層における一方の面に、第1ナノ繊維を含む第1ナノ繊維層を形成して第1積層体とする第1電界紡糸工程と、
電界紡糸法により、前記第1積層体における前記第1ナノ繊維層の表面に、第2ナノ繊維を含む第2ナノ繊維層を形成して第2積層体とする第2電界紡糸工程と、
前記第2積層体における前記第1ナノ繊維を用いて前記基材層と前記第2ナノ繊維層とを接合する接合工程とをこの順番で含むことを特徴とするセパレーター製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載のセパレーター製造方法において、
前記接合工程は、前記基材層と、前記第1ナノ繊維層と、前記第2ナノ繊維層とを積層した状態で熱圧着する熱接合工程であって、当該熱接合工程により前記第1ナノ繊維の少なくとも一部を熱で溶融させて前記基材層と前記第2ナノ繊維層とを前記第1ナノ繊維で接合することを特徴とするセパレーター製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−30364(P2013−30364A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165885(P2011−165885)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(508231821)トップテック・カンパニー・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】TOPTEC Co., Ltd.
【Fターム(参考)】