セメントを含まないアルカリ活性結合材、それを用いたモルタルの製造方法およびセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法
【課題】本発明は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンなどの産業副産物にアルカリ性無機質材料を適宜添加したセメントを含まないアルカリ活性結合材、それを用いたモルタルの製造方法、およびセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルに関するものである。
【解決手段】従来のポルトランドセメントの問題点である二酸化炭素の放出を画期的に減らすことができ、環境にやさしいだけでなく、その特性にも優れるセメントを含まないアルカリ活性結合材、それを用いたモルタルの製造方法、およびセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルを提供する。
【解決手段】従来のポルトランドセメントの問題点である二酸化炭素の放出を画期的に減らすことができ、環境にやさしいだけでなく、その特性にも優れるセメントを含まないアルカリ活性結合材、それを用いたモルタルの製造方法、およびセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンなどの産業副産物にアルカリ性無機質材料を適宜添加したセメントを含まないアルカリ活性結合材、それを用いたモルタルの製造方法およびセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法に関するものであり、従来のポルトランドセメントの問題点の二酸化炭素の放出を画期的に減らすことができ、環境にやさしいだけでなく、その特性にも優れるセメントを含まないアルカリ活性結合材、それを用いたモルタルの製造方法、およびセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に建設産業分野に用いられるモルタルは結合材、水および骨材で構成され、結合材としては通常ポルトランドセメントを使用する。前記ポルトランドセメントはその生産過程において莫大なエネルギーが消費され、これにより発生する二酸化炭素の発生量は世界中温室ガス放出量の7%に至っている。
前記ポルトランドセメントは、主成分としてシリカ、アルミナおよび石灰を含有する原料を適当な割合で混合し、その一部を溶融して焼結させたクリンカーに適当量の石膏を添加して粉砕させて粉末化したものである。したがって、このようなセメントのクリンカー製造のためには、約1450℃の高温状態で溶融させなければならないため、大量のエネルギー(約30〜35リットル/トン)を消費することになる。それだけでなく、セメント1トンの製造時には約700〜870Kgの二酸化炭素が排出されることで知られている。
ポルトランドセメント1トンの生産に伴う約0.8トンの二酸化炭素放出量を減らすために、世界的にコンクリート製造企業等はセメントの使用量を減らすよう努めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンなど産業副産物にアルカリ性無機材を適宜添加してセメントを含まないアルカリ活性結合材を製造することにより、従来のセメントの問題点の二酸化炭素の放出を画期的に減らすことができ、環境にやさしいだけでなく、その特性にも優れるセメントを含まないアルカリ活性結合材を提供することにある。
また、本発明の目的は、産業副産物の高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンのいずれか1つ以上を含む原材料とナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、水および砂を混合してセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造において、前記セメントを含まないアルカリ活性モルタルの初期フロー、28日圧縮強度および圧縮強度の発現モデルに応じて前記アルカリ活性結合材、水および砂の混合比率を選択できるようにするセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法を提供することにより、従来セメントの問題点の二酸化炭素の放出を画期的に減らすことができ、環境にやさしいだけでなく、その特性にも優れるセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造できるセメントを含まないアルカリ活性モルタルを提供することにある。
また、本発明の目的は、初期流動性が大きく、経時による流動性損失が小さく、且つ圧縮強度が低くて建築物の保守補強用として適したセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の目的を達成するための本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンのいずれか1つ以上を含む原材料およびナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料を含んでなる。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料は、ケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含んでなる。
望ましい実施例において、前記ナトリウム系はNaまたはNa2Oである。
望ましい実施例において、前記液状型の水酸化ナトリウムのモル濃度は8〜16Mである。
望ましい実施例において、前記ナトリウム系/原材料の重量比は0.038〜0.14である。
望ましい実施例において、前記原材料が高炉スラグである場合、前記ナトリウム系/原材料の重量比は0.038〜0.088である。
望ましい実施例において、前記原材料がフライアッシュである場合、前記ナトリウム系/原材料の重量比は0.114〜0.14である。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料は、ケイ酸カリウム、硫酸カルシウムおよびケイ酸2カルシウムのいずれか1つ以上をさらに含んでなる。
望ましい実施例において、前記原材料中に含まれているアルミナまたはシリカは、前記アルカリ性無機質材料に含まれているナトリウム系との融解および合成によって硬化する。
前記の目的を達成するための本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンのいずれか1つ以上を含む原材料とナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水を混合して製造する。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料は、ケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含んでなる。
望ましい実施例において、前記ナトリウム系はNaまたはNa2Oである。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料は、ケイ酸カリウム、硫酸カルシウムおよびケイ酸2カルシウムのいずれか1つ以上をさらに含んでなる。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比は0.038〜0.14である。
望ましい実施例において、前記原材料が高炉スラグである場合、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比は0.038〜0.088である。
望ましい実施例において、前記原材料がフライアッシュである場合、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比は0.114〜0.14である。
前記の目的を達成するための本発明の第3実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルは、高炉スラグ、ナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料、水酸化カルシウム、メラミン減水剤およびホウ酸塩を含むセメントを含まないアルカリ活性結合材に乾燥砂および水を混合して製造する。
望ましい実施例において、前記ホウ酸塩の質量比は前記高炉スラグに対して1%〜5%である。
望ましい実施例において、前記水酸化カルシウムの質量比は前記高炉スラグに対して5%〜10%である。
望ましい実施例において、前記ナトリウム系はNaまたはNa2Oである。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料はケイ酸ナトリウムであり、前記ケイ酸ナトリウムには前記ケイ酸ナトリウムのナトリウム系のNa2Oが前記高炉スラグに対して6.4%〜9%の質量比で含まれる。
望ましい実施例において、前記メラミン減水剤の質量比は前記高炉スラグに対して0.5%〜2%である。
【発明の効果】
【0005】
上述した本発明によると、高い初期強度と長期強度発現に優れ、水和反応熱が低く、耐薬品性が高く、凍結融解に対する抵抗性が高く、耐火性能に優れ、非弾性変形が低いなどの特徴を有しており、一般建築物、海洋構造物および耐火構造物に使用できるだけでなく、レンガ、ブロックおよび道路境界石などのコンクリート2次製品にも用いることができるため、全建築産業分野において広範囲に効率よく活用できるセメントを含まないアルカリ活性結合材が提供できる。
また、本発明によると、従来の普通ポルトランドセメントを代替できる結合材として産業廃棄物の処理を解決でき、環境負荷を減少させることができるだけでなく、結合材の製造時にもエネルギーを節約し、二酸化炭素を放出しないため、環境にやさしいセメントを含まないアルカリ活性結合材が提供できる。
また、本発明によると、従来の普通ポルトランドセメントの製造時とは異なり、二酸化炭素を放出しないため環境にやさしい製造方法を提供するだけでなく、アルカリ活性結合材として高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンなどの産業副産物を用いることにより、環境負荷を減少させることができ、アルカリ活性結合材の製造時にエネルギーを節約できるセメントを含まないアルカリ活性モルタルが製造できる。
また、本発明によると、高い初期強度と長期強度の発現が優れ、水和反応熱が低く、耐薬品性が高く、凍結融解に対する抵抗性が高く、耐火性能に優れ、非弾性変形が低いなどの特性を有するセメントを含まないアルカリ活性モルタルが製造できる。
また、本発明によると、セメントを使用せずに、セメントを含まないアルカリ活性補強モルタルが製造できる。
また、本発明によると、産業副産物の高炉スラグを用いることにより、環境にやさしいセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルが製造できる。
また、本発明によると、初期流動性が大きく、経時による流動性損失が小さく、且つ圧縮強度が低くて建築物の保守補強に適したセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を示す写真である。
【図2】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を示す写真である。
【図3】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの流動性を示すグラフである。
【図4】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの流動性を示すグラフである。
【図5】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルのナトリウム系/原材料の重量比による28日圧縮強度および材齢別圧縮強度発現を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルのナトリウム/原材料の重量比による28日圧縮強度および材齢別圧縮強度発現を示すグラフである。
【図7】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルのナトリウム系/原材料の重量比による28日圧縮強度および材齢別圧縮強度発現を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルのナトリウム系/原材料の重量比による28日圧縮強度および材齢別圧縮強度発現を示すグラフである。
【図9】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの乾燥収縮変形率の挙動を示すグラフである。
【図10】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの乾燥収縮変形率の挙動を示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルを示す写真である。
【図12】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルを示す写真である。
【図13】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルを示す写真である。
【図14】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比によるフローを示すグラフである。
【図15】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの 砂/アルカリ活性結合材の比によるフローを示すグラフである。
【図16】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度を示すグラフである。
【図17】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの 砂/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度を示すグラフである。
【図18】本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの初期流動性を示すグラフである。
【図19】本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの流動性損失を示すグラフである。
【図20】本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの圧縮強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施例によって本発明をより詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(第1実施例)
本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材には、原材料(Source material)とアルカリ性無機質材料(Alkali mineral material)が混合されている。
前記原材料は、高炉スラグ(Blast-Furnace Slag)、フライアッシュ(Fly Ash)およびメタカオリン(Mata-Kaolin)のいずれか1つ以上を含んでおり、前記アルカリ性無機質材料は、ケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含んでいる。
本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材は、前記アルカリ性無機質材料を構成する成分中において、ナトリウム系/原材料の重量比が0.038〜0.14の範囲内にあり、このようなナトリウム系/原材料の重量比は、本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材の流動性、強度および乾燥収縮などの力学的性質を決める。
前記ナトリウム系はNaまたはNa2Oなどを含む。また前記ナトリウム系/原材料の重量比において前記ナトリウム系の重量は全てNa2Oの重量に換算したものを使用した。すなわち、前記アルカリ性無機質材料のケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムには、前記ナトリウム系がNaまたはNa2Oとして存在できるが、これをNa2Oの重量に計算して変換した。したがって、本発明ではナトリウム系の重量は、Na2Oとして存在する場合はその重量をそのまま使用し、他の形態として存在する場合はNa2Oの重量に変換させた値を使用した。
これにより、必要な強度のセメントを含まないアルカリ活性結合材を得るためには、前記原材料とアルカリ性無機質材料を混合するに際して、前記ナトリウム系/前記原材料の重量比を適宜調節できるように前記アルカリ性無機質材料の重量を決めて混合する。
この時、前記原材料が高炉スラグである場合は、前記ナトリウム系/原材料の重量比が0.038〜0.088の範囲内になるように前記アルカリ性無機質材料の量を調節する。
また、前記原材料がフライアッシュまたはメタカオリンである場合は、前記ナトリウム系/原材料の重量比が0.088〜0.14の範囲内になるように前記アルカリ性無機質材料の量を調節する。
前記セメントを含まないアルカリ活性結合材に混合するアルカリ性無機質材料に前記液状型の水酸化ナトリウムを含ませる場合は、8〜16Mの水酸化ナトリウム溶液を使用する。
本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材には、下記一般式1から分かるように、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンのいずれか1つ以上の原材料と、ケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含むアルカリ性無機質材料とが混合されているが、前記セメントを含まないアルカリ活性結合材に含まれる原材料中におけるアルミナまたはシリカと、アルカリ無機質材料中におけるナトリウムまたはカリウムとが融解および合成されることにより、本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材が硬化する。
【0008】
【化1】
【0009】
(この時、前記NaOHまたはKOHから1つ以上を選択して混合できる。)
図1および図2は、本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を示す写真である。
図1および図2を参照して説明すると、図1は原材料が高炉スラグであり、アルカリ性無機質材料はケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび硫酸カルシウムが混合されたセメントを含まないアルカリ活性結合材を示す写真であり、図2は原材料がフライアッシュであり、アルカリ性無機質材料はケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび硫酸カルシウムが混合されたセメントを含まないアルカリ活性結合材を示す写真である。
この時、前記図1および図2に示されたセメントを含まないアルカリ活性結合材は、ナトリウム系/原材料の重量比によって比重が2.2〜2.9であり、比表面積は4000g/cm2になる。
図3および図4は、本発明の実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの流動性を示すグラフである。
この後の“GGBS”は、前記高炉スラグを一定の大きさの粉末に微粉砕したものであって、高炉スラグ微粉末(Ground Granulated Blast Furance Slag)を意味する。
また、この後の“モルタル”は、水-セメントを含まないアルカリ活性結合材の比(W/B)は50%で、砂-原材料の重量比(S/B)は3.0で、骨材の最大直径は5mm以下の条件で製造されたモルタルを意味する。
図3を参照して説明すると、原材料としては、高炉スラグまたはフライアッシュを、アルカリ性無機質材料としてはケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を用いて製造されたセメントを含まないアルカリ活性結合材を使用してモルタルを製造し、前記モルタルの流動性をナトリウム系/原材料の重量比により測定した結果をグラフに示す。
図3に示されたグラフによると、ナトリウム系/原材料の重量比が約0.015であり、原材料がそれぞれ高炉スラグおよびフライアッシュである場合は、初期流動値がそれぞれ約170mmおよび180mmで、ナトリウム系/原材料の重量比が約0.06で、原材料がそれぞれ高炉スラグおよびフライアッシュである場合は、初期流動値がそれぞれ約200mmおよび180mmである。
そしてナトリウム系/原材料の重量比が約0.17まで増加する間原材料が高炉スラグである場合は、初期流動値が減少し一定重量比(約0.11)からは初期流動性が非常に低下する。原材料がフライアッシュである場合は、初期流動値が段々と増加し一定重量比(約0.08)からは一定の初期流動値を維持することが分かる。
また、原材料がフライアッシュである場合には、ナトリウム系/原材料の重量比に関係なく、初期流動値が従来のポルトランドセメントの初期流動値よりも高く、原材料が高炉スラグである場合にはナトリウム系/原材料の重量比が0.06以下である時に、初期流動値が従来のポルトランドセメントの初期流動値よりも高いことが分かる。
図4に示されたグラフによると、ナトリウム系/原材料(この時、原材料は高炉スラグおよびフライアッシュ)の重量比がそれぞれ0.015および0.035である時に、SiO2/ナトリウム系の重量比の変化による初期流動値は水酸化ナトリウムの量に影響を受けることが分かる。
すなわち、全体的にナトリウム系の量に影響を与える水酸化ナトリウムの量が少ないほど初期流動値は高まることが分かる。
したがって、本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルは現場で適用できる程度以上の初期流動性を確保していることを示している。
図5〜図8は、本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルのナトリウム系/原材料の重量比による28日圧縮強度および材齢別圧縮強度の発現を示すグラフである。
図5を参照して説明すると、ナトリウム系/原材料(この時、原材料は高炉スラグ)の重量比が増加するにつれて28日圧縮強度も徐々に増加するが、原材料が高炉スラグの場合には、ナトリウム系/原材料の重量比が0.03795、すなわち約0.038でも約20MPaの圧縮強度を示している。
図6を参照して説明すると、ナトリウム系/原材料(この時、原材料はフライアッシュ)の重量比が増加するについて28日圧縮強度が増加する傾向にあるが、ナトリウム系/原材料の重量比が0.08855未満、すなわち約0.088未満では28日圧縮強度が1MPa以下であり、0.088以上である時に、圧縮強度が4MPa以上であることが分かる。
図7を参照して説明すると、原材料が高炉スラグである場合、ナトリウム系/原材料の重量比による材齢別圧縮強度は、ナトリウム系/原材料の重量比が約0.038である時に、従来のポルトランドセメントの圧縮強度に比べて若干低いものの、重量比が0.06325以上、すなわち約0.063以上であればむしろ本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの圧縮強度がより高いことが分かる。なお、従来のポルトランドセメントを使用したモルタルに比べて長期強度発現に優れたことが分かる。
図8を参照して説明すると、原材料がフライアッシュである場合、ナトリウム系/原材料の重量比による材齢別圧縮強度は、56日以降圧縮強度発現が非常に優れ、ナトリウム系/原材料の重量比が低い時には圧縮強度が低いものの、重量比が0.11385、すなわち、約0.114である時には圧縮強度が16MPa(91日強度)であり、0.13915、すなわち、約0.14である時は圧縮強度が18MPa(91日強度)以上であるため、従来のポルトランドセメントの圧縮強度と比較しても低くなく建設現場で十分用いることができる程度であることが分かる。
したがって、前記図5〜図8を参照して説明した内容をまとめると、本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材は、原材料が高炉スラグである場合、ナトリウム系/原材料の重量比が約0.038以上であれば本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの圧縮強度が20MPa以上であるため、建設現場で望むモルタルの圧縮強度を得ることができ、原材料がフライアッシュである場合には、ナトリウム系/原材料の重量比が約0.114以上であれば本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの圧縮強度が16MPa以上であるため、建設現場で用いられる構造用モルタルの圧縮強度(20〜30MPaに相当)と比較して少し低いか、または高いことから、建設現場で十分用いることができると判断される。
この時、ナトリウム系/原材料の重量比が高いほどアルカリ性無機質材料の量が増加することから、原材料が高炉スラグである場合はナトリウム系/原材料の重量比が0.088以下であることが望ましい。また、原材料がフライアッシュである場合もナトリウム系/原材料の重量比が0.14以下であることが望ましい。これは前記ナトリウム系/原材料の重量比が高いほど初期流動性が減少するだけでなく、前記ナトリウム系のようなアルカリ性無機質材料の値段が高いため、その量が増加するほど本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材の値段も高くなるからである。
図9および図10は、本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの乾燥収縮変形率の挙動を示すグラフである。
図9を参照して説明すると、原材料が高炉スラグのアルカリ活性モルタルの乾燥収縮変形率は、ナトリウム系/原材料の重量比が0.139以下、すなわち、約0.14である時、材齢14日以降から普通ポルトランドセメントを使用したモルタルの乾燥収縮変形率より小さいことが分かる。この時、高炉スラグを使用したアルカリ活性モルタルの極限乾燥収縮変形率は約−900×10−6以下である。
図10を参照して説明すると、原材料がフライアッシュのアルカリ活性モルタルの乾燥収縮変形率は、ナトリウム系/原材料の重量比が0.114である時、材齢14日以降から普通ポルトランドセメントを使用したモルタルの乾燥収縮変形率より小さく、ナトリウム系/原材料の重量比が0.139、すなわち、約0.14と0.164である時にも普通ポルトランドセメントモルタルの乾燥収縮とほぼ同じ程度であることが分かる。この時、フライアッシュを使用したアルカリ活性モルタルの極限乾燥収縮変形率も約−900×10−6以下である。
これにより、本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンのいずれか1つ以上を含む原材料およびケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含むアルカリ性無機質材料を含み、前記原材料およびアルカリ性無機質材料の混合物のセメントを含まないアルカリ活性結合材は、前記アルカリ性無機質材料を構成するナトリウム系/原材料の重量比が0.038〜0.14であることが望ましい。
この時、前記原材料が高炉スラグである場合、初期流動性および圧縮強度などを勘案して建設現場で適用できるセメントを含まないアルカリ活性結合材は、前記ナトリウム系/原材料の重量比が0.038〜0.088であることが望ましく、前記原材料がフライアッシュである場合、初期流動性および圧縮強度などを勘案して建設現場で適用できるセメントを含まないアルカリ活性結合材は、前記ナトリウム系/原材料の重量比が0.114〜0.14であることが望ましい。
(第2実施例)
本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法は、高炉スラグ(Blast-furance slag)、フライアッシュ(Fly ash)およびメタカオリン(Mata-kaolin)のいずれか1つ以上を含む原材料とナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水を混合してセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造する。
前記ナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料は、ケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含んでいる。
前記アルカリ性無機質材料にはケイ酸カリウム、硫酸カルシウムおよびケイ酸2カルシウムのいずれか1つ以上を含むことができる。前記ケイ酸カリウム、硫酸カルシウムおよびケイ酸2カルシウムは、アルカリ活性モルタルの製造時に流動性を増進させ、乾燥収縮を制御するために含ませる。
前記アルカリ活性結合材は、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比が0.038〜0.14の範囲内にあり、このような前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比がアルカリ活性結合材の流動性、強度および乾燥収縮などの力学的性質を決め、このようなアルカリ活性結合材の力学的性質は、本発明のセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの力学的性質を決める。
この時、前記ナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料はNaまたはNa2Oなどを含んでいる。前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比において前記アルカリ性無機質材料の重量は全てNa2Oの重量に換算したものを用いた。すなわち、前記アルカリ性無機質材料のケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムにはNaまたはNa2O が含まれているが、このような構成成分中のNaの重量をNa2Oに計算して変換した。
この時、前記原材料が高炉スラグである場合は、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比が0.038〜0.088の範囲内になるように前記アルカリ性無機質材料の量を調節する。
また、前記原材料がフライアッシュまたはメタカオリンである場合は、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比が0.088〜0.14の範囲内になるように前記アルカリ性無機質材料の量を調節する。
この時、前記アルカリ活性結合材に混合されるアルカリ性無機質材料に前記液状型の水酸化ナトリウムが含ませる場合は8〜16Mの水酸化ナトリウム溶液を使用する。
前記アルカリ活性結合材において、高炉スラグを原材料として使用したアルカリ活性結合材は、水との反応によりCSH gelが形成される反面、フライアッシュおよびメタカオリンを原材料として使用したアルカリ活性結合材は、水との反応によりCSH gelが形成されない。なお、高炉スラグおよびフライアッシュは水との反応によりアルミナ原子がシリカに置換され得る。したがって最終的にアルカリ活性結合材は所要強度に応じてアルカリ品質係数により製造される。
この時、前記アルカリ品質係数(QA)は
【0010】
【数1】
【0011】
の式で計算され、前記Bは使用された原材料とアルカリ性無機質材料の全重量を意味する。
本発明のセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により、上述したアルカリ活性結合材、砂および水を混合してセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造する際は、下記数式2〜4を満たすように前記原材料とアルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水を適宜選択できる。
下記数式2は、アルカリ品質係数(QA)、水-アルカリ活性結合材の比(W/B)、原材料の比表面積/原材料の基本比表面積の比(SA/SA0)(この時、前記原材料の基本表面積は4000cm2/gである)、砂-アルカリ活性結合材の比(S/B)および基本フロー(F0)(この時、前記基本フローは100mmである)を変数にして初期フロー(Fi)を計算できる数式である。
【0012】
【数2】
【0013】
これにより、セメントを含まないアルカリ活性モルタルにおいて要求される初期フロー値が決まると、下記数式3および4を勘案すると同時に前記数式2から算出される前記原材料と、アルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水の重量比が決定し、前記の決定した重量比で配合しセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造すると、所望の初期フロー値を有するセメントを含まないアルカリ活性モルタルを得ることができる。
また、下記数式3または数式4により得られる28日圧縮強度または圧縮強度発現モデルから得られた各混合比を前記数式2に代入して計算すると、それによる初期フローを得ることができ、これにより下記数式2または数式4の配合による初期フローを得ることができる。
下記数式3は、アルカリ品質係数(QA)、水-アルカリ活性結合材の比(W/B)、原材料の比表面積/原材料の基本比表面積の比(SA/SA0)およびk1を変数にして28日圧縮強度((fck)28)を計算できる数式である。
【0014】
【数3】
【0015】
式中、前記k1は、砂/アルカリ性無機質材料の比(S/A)を0.5乗または−0.5乗で計算した値をいうが、前記砂/アルカリ性無機質材料の比が2.5より小さいかあるいは同等の場合は(S/A)0.5で計算した値を入力し、2.5より大きい場合は(S/A)−0.5で計算して入力する。
式中、前記(fck)0は基本圧縮強度を表わす変数であって10MPaである。
これにより、セメントを含まないアルカリ活性モルタルにおいて要求される28日圧縮強度値が決まると、前記数式1および下記数式3を勘案すると同時に前記数式2から算出される前記原材料と、アルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水の重量比が決定し、前記の決定した重量比で配合してセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造すると、所望の28日圧縮強度値を有するセメントを含まないアルカリ活性モルタルを得ることができる。
また、前記数式1または下記数式3により得られる初期フローまたは圧縮強度発現モデルから得られた各混合比を前記数式2に代入して計算すると、それによる28日圧縮強度を得ることができ、これにより前記数式1または下記数式3の配合による28日圧縮強度を得ることができる。
下記数式3は、アルカリ品質係数(QA)、水-アルカリ活性結合材の比(W/B)、原材料の比表面積/原材料の基本比表面積の比(SA/SA0)およびk2を変数にして圧縮強度発現モデル(すなわち、材齢による圧縮強度fck(t))を計算できる数式である。
【0016】
【数4】
【0017】
である。
式中、前記k2は、砂-アルカリ性無機質材料の比(S/A)が2.5より小さいか、あるいは同等の場合は(1+S/A)0.5で計算された値を入力し、2.5より大きい場合は(1+S/A)−0.5で計算された値を入力する。
これにより、セメントを含まないアルカリ活性モルタルへの圧縮強度発現モデルが決まると、前記数式2および数式3を勘案すると同時に前記数式4から算出される前記原材料と、アルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水の重量比が決定し、前記の決定した重量比で配合してセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造すると、所望の圧縮強度発現モデルを有するセメントを含まないアルカリ活性モルタルを得ることができる。
また、前記数式2または数式3により得られる初期フローまたは28日圧縮強度から得られた各混合比を前記数式4に代入して計算すると、それによる圧縮強度発現モデルを得ることができ、これにより前記数式2または数式3の配合による圧縮強度発現モデルを得ることができる。
図11〜図13は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルを示す写真である。
図11〜図13を参照して説明すると、前記図11〜図13は、本発明による最適配合において代表的な配合で配合したセメントを含まないアルカリ活性モルタルを示す写真であって、前記図11は水/アルカリ活性結合材の比が50%、砂/アルカリ活性結合材の比が3.0であり、且つ前記アルカリ活性結合材の原材料が高炉スラグである場合におけるセメントを含まないアルカリ活性モルタルを表しており、前記図12は水/アルカリ活性結合材の比が50%、砂/アルカリ活性結合材の比が3.0であり、且つ前記アルカリ活性結合材の原材料がフライアッシュである場合におけるセメントを含まないアルカリ活性モルタルを表しており、前記図13は水/アルカリ活性結合材の比が40%、砂/アルカリ活性結合材の比が1.0であり、且つ前記アルカリ活性モルタルの原材料が高炉スラグである場合におけるセメントを含まないアルカリ活性モルタルを見せている。
図14および図15は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比によるフローおよび砂/アルカリ活性結合材の比によるフローを示すグラフである。
図14を参照して説明すると、図14は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造された、セメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比によるフローを示すグラフであり、水/アルカリ活性結合材の比が大きくなるほどフロー値は増加することを示している。
図15を参照して説明すると、図15は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造された、セメントを含まないアルカリ活性モルタルの砂/アルカリ活性結合材の比によるフローを示すグラフであり、砂/アルカリ活性結合材の比が増加するほどフロー値は減少することを示している。
これにより、図14および図15のグラフから水/アルカリ活性結合材の比が大きくなるほどフロー値は増加し、砂/アルカリ活性結合材の比が増加するほどフロー値は減少することが分かる。
図16および図17は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造された、セメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度および砂/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度を示すグラフである。
図16を参照して説明すると、図16は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造された、セメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度を示すグラフであるが、水の比率が高くなり、アルカリ活性結合材の比率が低くなるほど28日圧縮強度の大きさは小さくなることを示している。
図17を参照して説明すると、図17は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造された、セメントを含まないアルカリ活性モルタルの砂/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度を示すグラフであるが、砂/アルカリ活性結合材の比が2.5である時、圧縮強度が最も大きく、砂/アルカリ活性結合材の比が2.5以上では砂/アルカリ活性結合材の比が増加するほど圧縮強度は減少することを示している。
これにより、図16および図17のグラフから水/アルカリ活性結合材の比が増加するほど28日圧縮強度が低くなり、砂/アルカリ活性結合材の比が2.5までは砂/アルカリ活性結合材の比が増加するほど28日圧縮強度が高くなることが分かる。
(第3実施例)
本発明の第3実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法は、高炉スラグ、ナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料、水酸化カルシウム、ホウ酸塩およびメラミン減水材を含むセメントを含まないアルカリ活性結合材に乾燥砂および水を混合することによって行われる。
また、前記乾燥砂は最大直径が5mmの乾燥砂を使用し、前記セメントを含まないアルカリ活性結合材に対して2.5の重量比で混合した。
また、前記水は前記セメントを含まないアルカリ活性結合材に対して0.55の重量比で混合した。
前記高炉スラグは、前記セメントを含まないアルカリ活性結合材の主原料として使用され、鉄鉱石から銑鉄を作る時に発生するスラグである。
すなわち、本発明の第3実施例により製造されるセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルは、産業副産物をリサイクルすることにより、環境にやさしくセメントを使用せずに製造することができる。
前記アルカリ性無機質材料は、前記セメントを含まないアルカリ活性結合材で製造したモルタルの流動性、強度および乾燥収縮などの力学的性質を決めるために添加される。
また、前記アルカリ性無機質材料は NaまたはNa2Oのナトリウム系を含み、本発明の一実施例ではケイ酸ナトリウムを使用した。
しかし、前記アルカリ性無機質材料はNaまたはNa2Oのナトリウム系を含む材料であればどのような材料でも構わない。
例えば、前記アルカリ性無機質材料としては粉末型または液状型の水酸化ナトリウムや液状型の水ガラスを添加できる。
また、前記ケイ酸ナトリウムは、前記ケイ酸ナトリウムに含まれたナトリウム系のNa2Oの質量比が前記高炉スラグの質量に対して6.4%〜9%になるように添加する。
すなわち、前記アルカリ性無機質材料には前記ナトリウム系のNaまたはNa2Oなどが存在できるが、これをNa2Oの重量に計算して変換した。したがって、本発明ではナトリウム系がNa2Oとして存在する場合はその質量をそのまま使用し、他の形態として存在するナトリウム系の質量は、Na2Oの質量に変換させてNa2Oの質量比が前記高炉スラグの質量に対して6.4%〜9%になるように添加する。
前記水酸化カルシウムは、本発明の一実施例によって製造されるセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの硬化特性を決めるために添加し、前記高炉スラグに対して5%〜10%の質量比で添加して硬化を遅延させる役割をする。
前記ホウ酸塩は、モルタルの流動性を上昇させ圧縮強度を低くするために添加し、前記高炉スラグの質量に対して1%〜5%の質量比で添加する。
前記メラミン減水剤は、前記高炉スラグの質量に対して0.5%〜2%の質量比で混合し、モルタルのワーカビリティー(workability)を向上させる役割をする。
図18は、本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの初期流動性を示すグラフである。
図18からも確認できるように、ホウ酸塩を添加しない場合はモルタルのスランプフロー(Slump flow)が118mmである反面、ホウ酸塩を1%添加した場合はスランプフローが165mmと初期流動性が良いことが分かる。
すなわち、本発明の第3実施例により製造されたモルタルは、期流動性が大きいため、建築物のクラックの間隙などのようなところに詰め込んで補修する際等に非常に適している。
図19は、本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの流動性損失を示すグラフである。
図19を参照すると、ホウ酸塩1%または2%を添加したモルタルの場合、30分後のスランプフローがそれぞれ約180mm、約205mmで、初期スランプフローの165mmに比べて良くなることが分かる。
しかし、ホウ酸塩を添加しないモルタルの場合は、初期スランプフローが約118mmから30分後103mmにむしろ減少して迅速に硬化していることが分かる。
すなわち、本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルは、流動性損失が低いため、保守補強用モルタルとして非常に適している。
図20は、本発明の一実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの圧縮強度を示すグラフである。
図20を参照すると、ホウ酸塩を添加しないモルタルの場合は、1日目の圧縮強度が7.5MPaである反面、ホウ酸塩2%を添加して製造されたモルタルの場合は1日目の圧縮強度が約2.5MPaと圧縮強度が低いことが分かる。
また、3日目と7日目の圧縮強度を測定した結果、ホウ酸塩2%を添加したモルタルの方が、ホウ酸塩を添加しないモルタルの圧縮強度よりそれぞれ約7MPa、約5MPa低く測定された。
すなわち、本発明の第3実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合剤で製造されたモルタルは、圧縮強度が低いため、建築物のクラックの補修に柔軟性よく硬化される。
【産業上の利用可能性】
【0018】
従来のポルトランドセメントの問題点の二酸化炭素の放出を画期的に減らすことができ、環境にやさしいだけでなく、その特性にも優れるセメントを含まないアルカリ活性結合材、それを用いたモルタルの製造方法、およびセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルを提供でき、建設現場で有用に活用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンなどの産業副産物にアルカリ性無機質材料を適宜添加したセメントを含まないアルカリ活性結合材、それを用いたモルタルの製造方法およびセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法に関するものであり、従来のポルトランドセメントの問題点の二酸化炭素の放出を画期的に減らすことができ、環境にやさしいだけでなく、その特性にも優れるセメントを含まないアルカリ活性結合材、それを用いたモルタルの製造方法、およびセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に建設産業分野に用いられるモルタルは結合材、水および骨材で構成され、結合材としては通常ポルトランドセメントを使用する。前記ポルトランドセメントはその生産過程において莫大なエネルギーが消費され、これにより発生する二酸化炭素の発生量は世界中温室ガス放出量の7%に至っている。
前記ポルトランドセメントは、主成分としてシリカ、アルミナおよび石灰を含有する原料を適当な割合で混合し、その一部を溶融して焼結させたクリンカーに適当量の石膏を添加して粉砕させて粉末化したものである。したがって、このようなセメントのクリンカー製造のためには、約1450℃の高温状態で溶融させなければならないため、大量のエネルギー(約30〜35リットル/トン)を消費することになる。それだけでなく、セメント1トンの製造時には約700〜870Kgの二酸化炭素が排出されることで知られている。
ポルトランドセメント1トンの生産に伴う約0.8トンの二酸化炭素放出量を減らすために、世界的にコンクリート製造企業等はセメントの使用量を減らすよう努めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンなど産業副産物にアルカリ性無機材を適宜添加してセメントを含まないアルカリ活性結合材を製造することにより、従来のセメントの問題点の二酸化炭素の放出を画期的に減らすことができ、環境にやさしいだけでなく、その特性にも優れるセメントを含まないアルカリ活性結合材を提供することにある。
また、本発明の目的は、産業副産物の高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンのいずれか1つ以上を含む原材料とナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、水および砂を混合してセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造において、前記セメントを含まないアルカリ活性モルタルの初期フロー、28日圧縮強度および圧縮強度の発現モデルに応じて前記アルカリ活性結合材、水および砂の混合比率を選択できるようにするセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法を提供することにより、従来セメントの問題点の二酸化炭素の放出を画期的に減らすことができ、環境にやさしいだけでなく、その特性にも優れるセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造できるセメントを含まないアルカリ活性モルタルを提供することにある。
また、本発明の目的は、初期流動性が大きく、経時による流動性損失が小さく、且つ圧縮強度が低くて建築物の保守補強用として適したセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の目的を達成するための本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンのいずれか1つ以上を含む原材料およびナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料を含んでなる。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料は、ケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含んでなる。
望ましい実施例において、前記ナトリウム系はNaまたはNa2Oである。
望ましい実施例において、前記液状型の水酸化ナトリウムのモル濃度は8〜16Mである。
望ましい実施例において、前記ナトリウム系/原材料の重量比は0.038〜0.14である。
望ましい実施例において、前記原材料が高炉スラグである場合、前記ナトリウム系/原材料の重量比は0.038〜0.088である。
望ましい実施例において、前記原材料がフライアッシュである場合、前記ナトリウム系/原材料の重量比は0.114〜0.14である。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料は、ケイ酸カリウム、硫酸カルシウムおよびケイ酸2カルシウムのいずれか1つ以上をさらに含んでなる。
望ましい実施例において、前記原材料中に含まれているアルミナまたはシリカは、前記アルカリ性無機質材料に含まれているナトリウム系との融解および合成によって硬化する。
前記の目的を達成するための本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンのいずれか1つ以上を含む原材料とナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水を混合して製造する。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料は、ケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含んでなる。
望ましい実施例において、前記ナトリウム系はNaまたはNa2Oである。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料は、ケイ酸カリウム、硫酸カルシウムおよびケイ酸2カルシウムのいずれか1つ以上をさらに含んでなる。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比は0.038〜0.14である。
望ましい実施例において、前記原材料が高炉スラグである場合、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比は0.038〜0.088である。
望ましい実施例において、前記原材料がフライアッシュである場合、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比は0.114〜0.14である。
前記の目的を達成するための本発明の第3実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルは、高炉スラグ、ナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料、水酸化カルシウム、メラミン減水剤およびホウ酸塩を含むセメントを含まないアルカリ活性結合材に乾燥砂および水を混合して製造する。
望ましい実施例において、前記ホウ酸塩の質量比は前記高炉スラグに対して1%〜5%である。
望ましい実施例において、前記水酸化カルシウムの質量比は前記高炉スラグに対して5%〜10%である。
望ましい実施例において、前記ナトリウム系はNaまたはNa2Oである。
望ましい実施例において、前記アルカリ性無機質材料はケイ酸ナトリウムであり、前記ケイ酸ナトリウムには前記ケイ酸ナトリウムのナトリウム系のNa2Oが前記高炉スラグに対して6.4%〜9%の質量比で含まれる。
望ましい実施例において、前記メラミン減水剤の質量比は前記高炉スラグに対して0.5%〜2%である。
【発明の効果】
【0005】
上述した本発明によると、高い初期強度と長期強度発現に優れ、水和反応熱が低く、耐薬品性が高く、凍結融解に対する抵抗性が高く、耐火性能に優れ、非弾性変形が低いなどの特徴を有しており、一般建築物、海洋構造物および耐火構造物に使用できるだけでなく、レンガ、ブロックおよび道路境界石などのコンクリート2次製品にも用いることができるため、全建築産業分野において広範囲に効率よく活用できるセメントを含まないアルカリ活性結合材が提供できる。
また、本発明によると、従来の普通ポルトランドセメントを代替できる結合材として産業廃棄物の処理を解決でき、環境負荷を減少させることができるだけでなく、結合材の製造時にもエネルギーを節約し、二酸化炭素を放出しないため、環境にやさしいセメントを含まないアルカリ活性結合材が提供できる。
また、本発明によると、従来の普通ポルトランドセメントの製造時とは異なり、二酸化炭素を放出しないため環境にやさしい製造方法を提供するだけでなく、アルカリ活性結合材として高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンなどの産業副産物を用いることにより、環境負荷を減少させることができ、アルカリ活性結合材の製造時にエネルギーを節約できるセメントを含まないアルカリ活性モルタルが製造できる。
また、本発明によると、高い初期強度と長期強度の発現が優れ、水和反応熱が低く、耐薬品性が高く、凍結融解に対する抵抗性が高く、耐火性能に優れ、非弾性変形が低いなどの特性を有するセメントを含まないアルカリ活性モルタルが製造できる。
また、本発明によると、セメントを使用せずに、セメントを含まないアルカリ活性補強モルタルが製造できる。
また、本発明によると、産業副産物の高炉スラグを用いることにより、環境にやさしいセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルが製造できる。
また、本発明によると、初期流動性が大きく、経時による流動性損失が小さく、且つ圧縮強度が低くて建築物の保守補強に適したセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を示す写真である。
【図2】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を示す写真である。
【図3】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの流動性を示すグラフである。
【図4】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの流動性を示すグラフである。
【図5】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルのナトリウム系/原材料の重量比による28日圧縮強度および材齢別圧縮強度発現を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルのナトリウム/原材料の重量比による28日圧縮強度および材齢別圧縮強度発現を示すグラフである。
【図7】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルのナトリウム系/原材料の重量比による28日圧縮強度および材齢別圧縮強度発現を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルのナトリウム系/原材料の重量比による28日圧縮強度および材齢別圧縮強度発現を示すグラフである。
【図9】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの乾燥収縮変形率の挙動を示すグラフである。
【図10】本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの乾燥収縮変形率の挙動を示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルを示す写真である。
【図12】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルを示す写真である。
【図13】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルを示す写真である。
【図14】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比によるフローを示すグラフである。
【図15】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの 砂/アルカリ活性結合材の比によるフローを示すグラフである。
【図16】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度を示すグラフである。
【図17】本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの 砂/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度を示すグラフである。
【図18】本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの初期流動性を示すグラフである。
【図19】本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの流動性損失を示すグラフである。
【図20】本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの圧縮強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施例によって本発明をより詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(第1実施例)
本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材には、原材料(Source material)とアルカリ性無機質材料(Alkali mineral material)が混合されている。
前記原材料は、高炉スラグ(Blast-Furnace Slag)、フライアッシュ(Fly Ash)およびメタカオリン(Mata-Kaolin)のいずれか1つ以上を含んでおり、前記アルカリ性無機質材料は、ケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含んでいる。
本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材は、前記アルカリ性無機質材料を構成する成分中において、ナトリウム系/原材料の重量比が0.038〜0.14の範囲内にあり、このようなナトリウム系/原材料の重量比は、本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材の流動性、強度および乾燥収縮などの力学的性質を決める。
前記ナトリウム系はNaまたはNa2Oなどを含む。また前記ナトリウム系/原材料の重量比において前記ナトリウム系の重量は全てNa2Oの重量に換算したものを使用した。すなわち、前記アルカリ性無機質材料のケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムには、前記ナトリウム系がNaまたはNa2Oとして存在できるが、これをNa2Oの重量に計算して変換した。したがって、本発明ではナトリウム系の重量は、Na2Oとして存在する場合はその重量をそのまま使用し、他の形態として存在する場合はNa2Oの重量に変換させた値を使用した。
これにより、必要な強度のセメントを含まないアルカリ活性結合材を得るためには、前記原材料とアルカリ性無機質材料を混合するに際して、前記ナトリウム系/前記原材料の重量比を適宜調節できるように前記アルカリ性無機質材料の重量を決めて混合する。
この時、前記原材料が高炉スラグである場合は、前記ナトリウム系/原材料の重量比が0.038〜0.088の範囲内になるように前記アルカリ性無機質材料の量を調節する。
また、前記原材料がフライアッシュまたはメタカオリンである場合は、前記ナトリウム系/原材料の重量比が0.088〜0.14の範囲内になるように前記アルカリ性無機質材料の量を調節する。
前記セメントを含まないアルカリ活性結合材に混合するアルカリ性無機質材料に前記液状型の水酸化ナトリウムを含ませる場合は、8〜16Mの水酸化ナトリウム溶液を使用する。
本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材には、下記一般式1から分かるように、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンのいずれか1つ以上の原材料と、ケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含むアルカリ性無機質材料とが混合されているが、前記セメントを含まないアルカリ活性結合材に含まれる原材料中におけるアルミナまたはシリカと、アルカリ無機質材料中におけるナトリウムまたはカリウムとが融解および合成されることにより、本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材が硬化する。
【0008】
【化1】
【0009】
(この時、前記NaOHまたはKOHから1つ以上を選択して混合できる。)
図1および図2は、本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を示す写真である。
図1および図2を参照して説明すると、図1は原材料が高炉スラグであり、アルカリ性無機質材料はケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび硫酸カルシウムが混合されたセメントを含まないアルカリ活性結合材を示す写真であり、図2は原材料がフライアッシュであり、アルカリ性無機質材料はケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび硫酸カルシウムが混合されたセメントを含まないアルカリ活性結合材を示す写真である。
この時、前記図1および図2に示されたセメントを含まないアルカリ活性結合材は、ナトリウム系/原材料の重量比によって比重が2.2〜2.9であり、比表面積は4000g/cm2になる。
図3および図4は、本発明の実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの流動性を示すグラフである。
この後の“GGBS”は、前記高炉スラグを一定の大きさの粉末に微粉砕したものであって、高炉スラグ微粉末(Ground Granulated Blast Furance Slag)を意味する。
また、この後の“モルタル”は、水-セメントを含まないアルカリ活性結合材の比(W/B)は50%で、砂-原材料の重量比(S/B)は3.0で、骨材の最大直径は5mm以下の条件で製造されたモルタルを意味する。
図3を参照して説明すると、原材料としては、高炉スラグまたはフライアッシュを、アルカリ性無機質材料としてはケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を用いて製造されたセメントを含まないアルカリ活性結合材を使用してモルタルを製造し、前記モルタルの流動性をナトリウム系/原材料の重量比により測定した結果をグラフに示す。
図3に示されたグラフによると、ナトリウム系/原材料の重量比が約0.015であり、原材料がそれぞれ高炉スラグおよびフライアッシュである場合は、初期流動値がそれぞれ約170mmおよび180mmで、ナトリウム系/原材料の重量比が約0.06で、原材料がそれぞれ高炉スラグおよびフライアッシュである場合は、初期流動値がそれぞれ約200mmおよび180mmである。
そしてナトリウム系/原材料の重量比が約0.17まで増加する間原材料が高炉スラグである場合は、初期流動値が減少し一定重量比(約0.11)からは初期流動性が非常に低下する。原材料がフライアッシュである場合は、初期流動値が段々と増加し一定重量比(約0.08)からは一定の初期流動値を維持することが分かる。
また、原材料がフライアッシュである場合には、ナトリウム系/原材料の重量比に関係なく、初期流動値が従来のポルトランドセメントの初期流動値よりも高く、原材料が高炉スラグである場合にはナトリウム系/原材料の重量比が0.06以下である時に、初期流動値が従来のポルトランドセメントの初期流動値よりも高いことが分かる。
図4に示されたグラフによると、ナトリウム系/原材料(この時、原材料は高炉スラグおよびフライアッシュ)の重量比がそれぞれ0.015および0.035である時に、SiO2/ナトリウム系の重量比の変化による初期流動値は水酸化ナトリウムの量に影響を受けることが分かる。
すなわち、全体的にナトリウム系の量に影響を与える水酸化ナトリウムの量が少ないほど初期流動値は高まることが分かる。
したがって、本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルは現場で適用できる程度以上の初期流動性を確保していることを示している。
図5〜図8は、本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルのナトリウム系/原材料の重量比による28日圧縮強度および材齢別圧縮強度の発現を示すグラフである。
図5を参照して説明すると、ナトリウム系/原材料(この時、原材料は高炉スラグ)の重量比が増加するにつれて28日圧縮強度も徐々に増加するが、原材料が高炉スラグの場合には、ナトリウム系/原材料の重量比が0.03795、すなわち約0.038でも約20MPaの圧縮強度を示している。
図6を参照して説明すると、ナトリウム系/原材料(この時、原材料はフライアッシュ)の重量比が増加するについて28日圧縮強度が増加する傾向にあるが、ナトリウム系/原材料の重量比が0.08855未満、すなわち約0.088未満では28日圧縮強度が1MPa以下であり、0.088以上である時に、圧縮強度が4MPa以上であることが分かる。
図7を参照して説明すると、原材料が高炉スラグである場合、ナトリウム系/原材料の重量比による材齢別圧縮強度は、ナトリウム系/原材料の重量比が約0.038である時に、従来のポルトランドセメントの圧縮強度に比べて若干低いものの、重量比が0.06325以上、すなわち約0.063以上であればむしろ本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの圧縮強度がより高いことが分かる。なお、従来のポルトランドセメントを使用したモルタルに比べて長期強度発現に優れたことが分かる。
図8を参照して説明すると、原材料がフライアッシュである場合、ナトリウム系/原材料の重量比による材齢別圧縮強度は、56日以降圧縮強度発現が非常に優れ、ナトリウム系/原材料の重量比が低い時には圧縮強度が低いものの、重量比が0.11385、すなわち、約0.114である時には圧縮強度が16MPa(91日強度)であり、0.13915、すなわち、約0.14である時は圧縮強度が18MPa(91日強度)以上であるため、従来のポルトランドセメントの圧縮強度と比較しても低くなく建設現場で十分用いることができる程度であることが分かる。
したがって、前記図5〜図8を参照して説明した内容をまとめると、本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材は、原材料が高炉スラグである場合、ナトリウム系/原材料の重量比が約0.038以上であれば本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの圧縮強度が20MPa以上であるため、建設現場で望むモルタルの圧縮強度を得ることができ、原材料がフライアッシュである場合には、ナトリウム系/原材料の重量比が約0.114以上であれば本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの圧縮強度が16MPa以上であるため、建設現場で用いられる構造用モルタルの圧縮強度(20〜30MPaに相当)と比較して少し低いか、または高いことから、建設現場で十分用いることができると判断される。
この時、ナトリウム系/原材料の重量比が高いほどアルカリ性無機質材料の量が増加することから、原材料が高炉スラグである場合はナトリウム系/原材料の重量比が0.088以下であることが望ましい。また、原材料がフライアッシュである場合もナトリウム系/原材料の重量比が0.14以下であることが望ましい。これは前記ナトリウム系/原材料の重量比が高いほど初期流動性が減少するだけでなく、前記ナトリウム系のようなアルカリ性無機質材料の値段が高いため、その量が増加するほど本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材の値段も高くなるからである。
図9および図10は、本発明の第1実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合材を用いたモルタルの乾燥収縮変形率の挙動を示すグラフである。
図9を参照して説明すると、原材料が高炉スラグのアルカリ活性モルタルの乾燥収縮変形率は、ナトリウム系/原材料の重量比が0.139以下、すなわち、約0.14である時、材齢14日以降から普通ポルトランドセメントを使用したモルタルの乾燥収縮変形率より小さいことが分かる。この時、高炉スラグを使用したアルカリ活性モルタルの極限乾燥収縮変形率は約−900×10−6以下である。
図10を参照して説明すると、原材料がフライアッシュのアルカリ活性モルタルの乾燥収縮変形率は、ナトリウム系/原材料の重量比が0.114である時、材齢14日以降から普通ポルトランドセメントを使用したモルタルの乾燥収縮変形率より小さく、ナトリウム系/原材料の重量比が0.139、すなわち、約0.14と0.164である時にも普通ポルトランドセメントモルタルの乾燥収縮とほぼ同じ程度であることが分かる。この時、フライアッシュを使用したアルカリ活性モルタルの極限乾燥収縮変形率も約−900×10−6以下である。
これにより、本発明のセメントを含まないアルカリ活性結合材は、高炉スラグ、フライアッシュおよびメタカオリンのいずれか1つ以上を含む原材料およびケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含むアルカリ性無機質材料を含み、前記原材料およびアルカリ性無機質材料の混合物のセメントを含まないアルカリ活性結合材は、前記アルカリ性無機質材料を構成するナトリウム系/原材料の重量比が0.038〜0.14であることが望ましい。
この時、前記原材料が高炉スラグである場合、初期流動性および圧縮強度などを勘案して建設現場で適用できるセメントを含まないアルカリ活性結合材は、前記ナトリウム系/原材料の重量比が0.038〜0.088であることが望ましく、前記原材料がフライアッシュである場合、初期流動性および圧縮強度などを勘案して建設現場で適用できるセメントを含まないアルカリ活性結合材は、前記ナトリウム系/原材料の重量比が0.114〜0.14であることが望ましい。
(第2実施例)
本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法は、高炉スラグ(Blast-furance slag)、フライアッシュ(Fly ash)およびメタカオリン(Mata-kaolin)のいずれか1つ以上を含む原材料とナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水を混合してセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造する。
前記ナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料は、ケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムのいずれか1つ以上を含んでいる。
前記アルカリ性無機質材料にはケイ酸カリウム、硫酸カルシウムおよびケイ酸2カルシウムのいずれか1つ以上を含むことができる。前記ケイ酸カリウム、硫酸カルシウムおよびケイ酸2カルシウムは、アルカリ活性モルタルの製造時に流動性を増進させ、乾燥収縮を制御するために含ませる。
前記アルカリ活性結合材は、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比が0.038〜0.14の範囲内にあり、このような前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比がアルカリ活性結合材の流動性、強度および乾燥収縮などの力学的性質を決め、このようなアルカリ活性結合材の力学的性質は、本発明のセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの力学的性質を決める。
この時、前記ナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料はNaまたはNa2Oなどを含んでいる。前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比において前記アルカリ性無機質材料の重量は全てNa2Oの重量に換算したものを用いた。すなわち、前記アルカリ性無機質材料のケイ酸ナトリウム、粉末型の水酸化ナトリウム、液状型の水ガラスおよび液状型の水酸化ナトリウムにはNaまたはNa2O が含まれているが、このような構成成分中のNaの重量をNa2Oに計算して変換した。
この時、前記原材料が高炉スラグである場合は、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比が0.038〜0.088の範囲内になるように前記アルカリ性無機質材料の量を調節する。
また、前記原材料がフライアッシュまたはメタカオリンである場合は、前記アルカリ性無機質材料/原材料の重量比が0.088〜0.14の範囲内になるように前記アルカリ性無機質材料の量を調節する。
この時、前記アルカリ活性結合材に混合されるアルカリ性無機質材料に前記液状型の水酸化ナトリウムが含ませる場合は8〜16Mの水酸化ナトリウム溶液を使用する。
前記アルカリ活性結合材において、高炉スラグを原材料として使用したアルカリ活性結合材は、水との反応によりCSH gelが形成される反面、フライアッシュおよびメタカオリンを原材料として使用したアルカリ活性結合材は、水との反応によりCSH gelが形成されない。なお、高炉スラグおよびフライアッシュは水との反応によりアルミナ原子がシリカに置換され得る。したがって最終的にアルカリ活性結合材は所要強度に応じてアルカリ品質係数により製造される。
この時、前記アルカリ品質係数(QA)は
【0010】
【数1】
【0011】
の式で計算され、前記Bは使用された原材料とアルカリ性無機質材料の全重量を意味する。
本発明のセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により、上述したアルカリ活性結合材、砂および水を混合してセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造する際は、下記数式2〜4を満たすように前記原材料とアルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水を適宜選択できる。
下記数式2は、アルカリ品質係数(QA)、水-アルカリ活性結合材の比(W/B)、原材料の比表面積/原材料の基本比表面積の比(SA/SA0)(この時、前記原材料の基本表面積は4000cm2/gである)、砂-アルカリ活性結合材の比(S/B)および基本フロー(F0)(この時、前記基本フローは100mmである)を変数にして初期フロー(Fi)を計算できる数式である。
【0012】
【数2】
【0013】
これにより、セメントを含まないアルカリ活性モルタルにおいて要求される初期フロー値が決まると、下記数式3および4を勘案すると同時に前記数式2から算出される前記原材料と、アルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水の重量比が決定し、前記の決定した重量比で配合しセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造すると、所望の初期フロー値を有するセメントを含まないアルカリ活性モルタルを得ることができる。
また、下記数式3または数式4により得られる28日圧縮強度または圧縮強度発現モデルから得られた各混合比を前記数式2に代入して計算すると、それによる初期フローを得ることができ、これにより下記数式2または数式4の配合による初期フローを得ることができる。
下記数式3は、アルカリ品質係数(QA)、水-アルカリ活性結合材の比(W/B)、原材料の比表面積/原材料の基本比表面積の比(SA/SA0)およびk1を変数にして28日圧縮強度((fck)28)を計算できる数式である。
【0014】
【数3】
【0015】
式中、前記k1は、砂/アルカリ性無機質材料の比(S/A)を0.5乗または−0.5乗で計算した値をいうが、前記砂/アルカリ性無機質材料の比が2.5より小さいかあるいは同等の場合は(S/A)0.5で計算した値を入力し、2.5より大きい場合は(S/A)−0.5で計算して入力する。
式中、前記(fck)0は基本圧縮強度を表わす変数であって10MPaである。
これにより、セメントを含まないアルカリ活性モルタルにおいて要求される28日圧縮強度値が決まると、前記数式1および下記数式3を勘案すると同時に前記数式2から算出される前記原材料と、アルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水の重量比が決定し、前記の決定した重量比で配合してセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造すると、所望の28日圧縮強度値を有するセメントを含まないアルカリ活性モルタルを得ることができる。
また、前記数式1または下記数式3により得られる初期フローまたは圧縮強度発現モデルから得られた各混合比を前記数式2に代入して計算すると、それによる28日圧縮強度を得ることができ、これにより前記数式1または下記数式3の配合による28日圧縮強度を得ることができる。
下記数式3は、アルカリ品質係数(QA)、水-アルカリ活性結合材の比(W/B)、原材料の比表面積/原材料の基本比表面積の比(SA/SA0)およびk2を変数にして圧縮強度発現モデル(すなわち、材齢による圧縮強度fck(t))を計算できる数式である。
【0016】
【数4】
【0017】
である。
式中、前記k2は、砂-アルカリ性無機質材料の比(S/A)が2.5より小さいか、あるいは同等の場合は(1+S/A)0.5で計算された値を入力し、2.5より大きい場合は(1+S/A)−0.5で計算された値を入力する。
これにより、セメントを含まないアルカリ活性モルタルへの圧縮強度発現モデルが決まると、前記数式2および数式3を勘案すると同時に前記数式4から算出される前記原材料と、アルカリ性無機質材料を含むアルカリ活性結合材、砂および水の重量比が決定し、前記の決定した重量比で配合してセメントを含まないアルカリ活性モルタルを製造すると、所望の圧縮強度発現モデルを有するセメントを含まないアルカリ活性モルタルを得ることができる。
また、前記数式2または数式3により得られる初期フローまたは28日圧縮強度から得られた各混合比を前記数式4に代入して計算すると、それによる圧縮強度発現モデルを得ることができ、これにより前記数式2または数式3の配合による圧縮強度発現モデルを得ることができる。
図11〜図13は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルを示す写真である。
図11〜図13を参照して説明すると、前記図11〜図13は、本発明による最適配合において代表的な配合で配合したセメントを含まないアルカリ活性モルタルを示す写真であって、前記図11は水/アルカリ活性結合材の比が50%、砂/アルカリ活性結合材の比が3.0であり、且つ前記アルカリ活性結合材の原材料が高炉スラグである場合におけるセメントを含まないアルカリ活性モルタルを表しており、前記図12は水/アルカリ活性結合材の比が50%、砂/アルカリ活性結合材の比が3.0であり、且つ前記アルカリ活性結合材の原材料がフライアッシュである場合におけるセメントを含まないアルカリ活性モルタルを表しており、前記図13は水/アルカリ活性結合材の比が40%、砂/アルカリ活性結合材の比が1.0であり、且つ前記アルカリ活性モルタルの原材料が高炉スラグである場合におけるセメントを含まないアルカリ活性モルタルを見せている。
図14および図15は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造されたセメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比によるフローおよび砂/アルカリ活性結合材の比によるフローを示すグラフである。
図14を参照して説明すると、図14は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造された、セメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比によるフローを示すグラフであり、水/アルカリ活性結合材の比が大きくなるほどフロー値は増加することを示している。
図15を参照して説明すると、図15は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造された、セメントを含まないアルカリ活性モルタルの砂/アルカリ活性結合材の比によるフローを示すグラフであり、砂/アルカリ活性結合材の比が増加するほどフロー値は減少することを示している。
これにより、図14および図15のグラフから水/アルカリ活性結合材の比が大きくなるほどフロー値は増加し、砂/アルカリ活性結合材の比が増加するほどフロー値は減少することが分かる。
図16および図17は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造された、セメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度および砂/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度を示すグラフである。
図16を参照して説明すると、図16は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造された、セメントを含まないアルカリ活性モルタルの水/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度を示すグラフであるが、水の比率が高くなり、アルカリ活性結合材の比率が低くなるほど28日圧縮強度の大きさは小さくなることを示している。
図17を参照して説明すると、図17は、本発明の第2実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性モルタルの製造方法により製造された、セメントを含まないアルカリ活性モルタルの砂/アルカリ活性結合材の比による28日圧縮強度を示すグラフであるが、砂/アルカリ活性結合材の比が2.5である時、圧縮強度が最も大きく、砂/アルカリ活性結合材の比が2.5以上では砂/アルカリ活性結合材の比が増加するほど圧縮強度は減少することを示している。
これにより、図16および図17のグラフから水/アルカリ活性結合材の比が増加するほど28日圧縮強度が低くなり、砂/アルカリ活性結合材の比が2.5までは砂/アルカリ活性結合材の比が増加するほど28日圧縮強度が高くなることが分かる。
(第3実施例)
本発明の第3実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法は、高炉スラグ、ナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料、水酸化カルシウム、ホウ酸塩およびメラミン減水材を含むセメントを含まないアルカリ活性結合材に乾燥砂および水を混合することによって行われる。
また、前記乾燥砂は最大直径が5mmの乾燥砂を使用し、前記セメントを含まないアルカリ活性結合材に対して2.5の重量比で混合した。
また、前記水は前記セメントを含まないアルカリ活性結合材に対して0.55の重量比で混合した。
前記高炉スラグは、前記セメントを含まないアルカリ活性結合材の主原料として使用され、鉄鉱石から銑鉄を作る時に発生するスラグである。
すなわち、本発明の第3実施例により製造されるセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルは、産業副産物をリサイクルすることにより、環境にやさしくセメントを使用せずに製造することができる。
前記アルカリ性無機質材料は、前記セメントを含まないアルカリ活性結合材で製造したモルタルの流動性、強度および乾燥収縮などの力学的性質を決めるために添加される。
また、前記アルカリ性無機質材料は NaまたはNa2Oのナトリウム系を含み、本発明の一実施例ではケイ酸ナトリウムを使用した。
しかし、前記アルカリ性無機質材料はNaまたはNa2Oのナトリウム系を含む材料であればどのような材料でも構わない。
例えば、前記アルカリ性無機質材料としては粉末型または液状型の水酸化ナトリウムや液状型の水ガラスを添加できる。
また、前記ケイ酸ナトリウムは、前記ケイ酸ナトリウムに含まれたナトリウム系のNa2Oの質量比が前記高炉スラグの質量に対して6.4%〜9%になるように添加する。
すなわち、前記アルカリ性無機質材料には前記ナトリウム系のNaまたはNa2Oなどが存在できるが、これをNa2Oの重量に計算して変換した。したがって、本発明ではナトリウム系がNa2Oとして存在する場合はその質量をそのまま使用し、他の形態として存在するナトリウム系の質量は、Na2Oの質量に変換させてNa2Oの質量比が前記高炉スラグの質量に対して6.4%〜9%になるように添加する。
前記水酸化カルシウムは、本発明の一実施例によって製造されるセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの硬化特性を決めるために添加し、前記高炉スラグに対して5%〜10%の質量比で添加して硬化を遅延させる役割をする。
前記ホウ酸塩は、モルタルの流動性を上昇させ圧縮強度を低くするために添加し、前記高炉スラグの質量に対して1%〜5%の質量比で添加する。
前記メラミン減水剤は、前記高炉スラグの質量に対して0.5%〜2%の質量比で混合し、モルタルのワーカビリティー(workability)を向上させる役割をする。
図18は、本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの初期流動性を示すグラフである。
図18からも確認できるように、ホウ酸塩を添加しない場合はモルタルのスランプフロー(Slump flow)が118mmである反面、ホウ酸塩を1%添加した場合はスランプフローが165mmと初期流動性が良いことが分かる。
すなわち、本発明の第3実施例により製造されたモルタルは、期流動性が大きいため、建築物のクラックの間隙などのようなところに詰め込んで補修する際等に非常に適している。
図19は、本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの流動性損失を示すグラフである。
図19を参照すると、ホウ酸塩1%または2%を添加したモルタルの場合、30分後のスランプフローがそれぞれ約180mm、約205mmで、初期スランプフローの165mmに比べて良くなることが分かる。
しかし、ホウ酸塩を添加しないモルタルの場合は、初期スランプフローが約118mmから30分後103mmにむしろ減少して迅速に硬化していることが分かる。
すなわち、本発明の第3実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルは、流動性損失が低いため、保守補強用モルタルとして非常に適している。
図20は、本発明の一実施例により製造されたセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの圧縮強度を示すグラフである。
図20を参照すると、ホウ酸塩を添加しないモルタルの場合は、1日目の圧縮強度が7.5MPaである反面、ホウ酸塩2%を添加して製造されたモルタルの場合は1日目の圧縮強度が約2.5MPaと圧縮強度が低いことが分かる。
また、3日目と7日目の圧縮強度を測定した結果、ホウ酸塩2%を添加したモルタルの方が、ホウ酸塩を添加しないモルタルの圧縮強度よりそれぞれ約7MPa、約5MPa低く測定された。
すなわち、本発明の第3実施例に係るセメントを含まないアルカリ活性結合剤で製造されたモルタルは、圧縮強度が低いため、建築物のクラックの補修に柔軟性よく硬化される。
【産業上の利用可能性】
【0018】
従来のポルトランドセメントの問題点の二酸化炭素の放出を画期的に減らすことができ、環境にやさしいだけでなく、その特性にも優れるセメントを含まないアルカリ活性結合材、それを用いたモルタルの製造方法、およびセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルを提供でき、建設現場で有用に活用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉スラグ、ナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料、水酸化カルシウム、メラミン減水剤およびホウ酸塩を含むセメントを含まないアルカリ活性結合材に、乾燥砂および水を混合して製造することを特徴とするセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項2】
前記ホウ酸塩の質量比は前記高炉スラグに対して1%〜5%であることを特徴とする請求項1に記載のセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項3】
前記水酸化カルシウムの質量比は前記高炉スラグに対して5%〜10%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項4】
前記ナトリウム系はNaまたはNa2Oであることを特徴とする請求項3に記載のセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ性無機質材料はケイ酸ナトリウムであり、前記ケイ酸ナトリウムは、前記ケイ酸ナトリウムのナトリウム系のNa2が前記高炉スラグに対して6.4%〜9%の質量比で含まれることを特徴とする請求項4に記載のセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項6】
前記メラミン減水剤の質量比は前記高炉スラグに対して0.5%〜2%であることを特徴とする請求項5に記載のセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項1】
高炉スラグ、ナトリウム系を含むアルカリ性無機質材料、水酸化カルシウム、メラミン減水剤およびホウ酸塩を含むセメントを含まないアルカリ活性結合材に、乾燥砂および水を混合して製造することを特徴とするセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項2】
前記ホウ酸塩の質量比は前記高炉スラグに対して1%〜5%であることを特徴とする請求項1に記載のセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項3】
前記水酸化カルシウムの質量比は前記高炉スラグに対して5%〜10%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項4】
前記ナトリウム系はNaまたはNa2Oであることを特徴とする請求項3に記載のセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ性無機質材料はケイ酸ナトリウムであり、前記ケイ酸ナトリウムは、前記ケイ酸ナトリウムのナトリウム系のNa2が前記高炉スラグに対して6.4%〜9%の質量比で含まれることを特徴とする請求項4に記載のセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【請求項6】
前記メラミン減水剤の質量比は前記高炉スラグに対して0.5%〜2%であることを特徴とする請求項5に記載のセメントを含まないアルカリ活性補強モルタルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−232901(P2012−232901A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196522(P2012−196522)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【分割の表示】特願2010−514586(P2010−514586)の分割
【原出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(308026861)インダストリー ファウンデーション オブ チョンナム ナショナル ユニバーシティー (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【分割の表示】特願2010−514586(P2010−514586)の分割
【原出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(308026861)インダストリー ファウンデーション オブ チョンナム ナショナル ユニバーシティー (9)
【Fターム(参考)】
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