説明

セメント含有調製物のための粉砕助剤としての櫛形ポリマーの使用

本発明は、セメント含有調製物における粉砕助剤としての、式A*−U−(C(O))k−X−(Alk−O)n−W A[式中、*は櫛形ポリマーの炭素骨格上の結合位置を示し、Uは化学結合又は1〜8個のC原子を有するアルキレン基を表し、Xは酸素又は基NRを表し、kは0又は1であり、nはその平均値が櫛形ポリマーに対して5〜300の範囲内である整数を表し、AlkはC2〜C4−アルキレンを表し、その際、Alkは基(Alk−O)nの中で同じか又は異なっていてよく、Wは水素、C1〜C6−アルキル基又はアリール基を表すか、又は基Y−Zを表し、その際、Yはフェニル環を有してよい2〜8個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキレン基を表し、Zは窒素を介して結合した5員〜10員の窒素複素環を表し、該窒素複素環は、環員として、窒素原子及び炭素原子の他に、酸素、窒素及び硫黄から選択された1、2又は3個の付加的なヘテロ原子を有してよく、その際、窒素環員は基R’を有してよく、その際、1又は2個の炭素環員がカルボニル基として存在していてよく、Rは水素、C1〜C4−アルキル又はベンジルを表し、かつR’は水素、C1〜C4−アルキル又はベンジルを表す]のポリエーテル基並びに、pH>12でアニオン性基の形で存在する官能基Bを有する炭素骨格を有する櫛形ポリマー及びその塩の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、セメント含有調製物のための粉砕助剤としての、炭素骨格上にポリ−C2〜C4−アルキレンエーテル側鎖AとpH>12でアニオン性基の形で存在する官能基Bとを有する櫛形ポリマー並びにこの種の櫛形ポリマーの塩の使用に関する。
【0002】
セメントは水硬性のバインダーである。水と混合することにより、セメントはセメントペーストとなり、このセメントペーストは水和により凝固及び硬化し、硬化の後であっても水中で固体のままでありかつ空間的安定性を維持する。
【0003】
セメントは、主成分であるポルトランドセメントクリンカー、副成分である水砕スラグ、ポゾラン、フライアッシュ、石灰石及び/又はフィラー並びに硫酸カルシウム含有成分及びいわゆるセメント添加物からなる。セメント成分は、その組成に関して統計的観点で均質でなければならない。全てのセメント特性の高い均一性は、大質量流での連続的な製造により、特に、適切な粉砕処理及び均質化処理により達成されねばならない。
【0004】
粉砕技術が数多く発達したにもかかわらず、大部分のセメントはなおもチューブボールミル中で粉砕されており、その際、粉砕助剤の効果が特に重要である。
【0005】
粉砕助剤は特に、セメントクリンカー又は石灰岩の粉砕の際に、粉砕材料の比較的高い粉砕粉末度を可能にするという課題を有する。
【0006】
粉砕助剤はアグロメレーション傾向にある粒子を単分子層で被覆することにより作用しそれに伴って表面電荷の中和をもたらす。物理的な観点から言えば、粉砕助剤は迅速に電荷担体をもたらし、該電荷担体は、クリンカー粒子の破砕の間に破砕面上に生じる電荷の飽和に有効であり、それによりアグロメレーション傾向を低減させる。更に、粉砕助剤はまだ分離されていない粒子の破砕面上で吸収され、温度及び圧力の作用下にその再結合を防止する。
【0007】
通常、セメント原料は乾燥して粉砕される。乾燥処理の際、原料成分はミルの配量装置を介して所定の混合比で供給されかつ微粉砕されて原料粉体となる。粉砕工程の間、粉砕材料が発熱し、その際、粉砕ユニットから取り出される粉砕材料の温度は80〜120℃に達し得る。典型的な粉砕ユニットはチューブミル(ボールミル)、またロールミルである。
【0008】
公知の粉砕助剤の有効性は極めて様々である。公知の粉砕助剤には、トリエタノールアミン、種々のカルボン酸及びその塩、例えばオクタデカン酸又はそのナトリウム塩が挙げられる。
【0009】
EP−A331308には、セメントを分散させるための櫛形ポリマーが記載されており、該櫛形ポリマーは、モノエチレン系不飽和カルボン酸、モノエチレン系不飽和スルホン酸及びポリ−C2〜C3−アルキレングリコールモノ−C1〜C3−アルキルエーテルのエステルを重合導入により含有する。
【0010】
EP−A560602にも、コンクリートのための添加剤としての櫛形ポリマーの使用が記載されており、該櫛形ポリマーは、ポリ−C2〜C18−アルキレングリコールモノ−C1〜C4−アルキルエーテルのアルケニルエーテル及びマレイン酸ないし無水マレイン酸を重合導入により含有する。
【0011】
EP−A753488からも、セメントのための分散剤としての櫛形ポリマーの使用は公知であり、ここで該櫛形ポリマーは、モノエチレン系不飽和カルボン酸、及び、ポリオキシ−C2〜C4−アルキレンモノ−C1〜C4−アルキルエーテルのモノエチレン系不飽和カルボン酸のエステルを重合導入により含有し、かつ所定の分子量分布を有する。類似のポリマーが前記目的のためにEP−A792850に記載されている。
【0012】
EP−A725044にも、セメントと水不含の石膏とからの混合物をベースとする水硬性結合材における、モノエチレン系不飽和モノカルボン酸、及び、モノエチレン系不飽和カルボン酸とポリオキシエチレンモノ−C1〜C5−アルキルエーテルとのエステルからなる櫛形ポリマーの使用が記載されている。
【0013】
EP−A799807にも、セメントのための分散剤としての、モノエチレン系不飽和モノカルボン酸とアルキルポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルとをベースとする櫛形ポリマーの使用が記載されており、その際、該アルキルポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルはエステル交換プロセスにより得られる。
【0014】
US5,728,207及びUS5,840,114には、セメント含有調製物のための添加剤としての櫛形ポリマーの使用が記載されており、該櫛形ポリマーは、環式無水物基を有するポリマーを、アルキルポリアルキレンエーテルアミンでポリマー変性することにより得られたものである。
【0015】
WO98/28353の記載から、アルキルポリアルキレンエーテル基及びカルボキシラート基を有する炭素骨格を有する櫛形ポリマーは公知である。櫛形ポリマーは、カルボキシラート基含有ポリマーをポリアルキレンエーテルで変性することによっても、適当なアルキルポリアルキレンエーテル基含有モノマーをエチレン系不飽和カルボン酸と共重合させることによっても製造することができる。
【0016】
EP976695には、粉砕助剤としての硫酸錫(II)が記載されている。
【0017】
粉砕材料に対する添加量は、公知の粉砕助剤の場合に典型的に0.05〜0.2質量%であるか又は明らかにそれを上回る。
【0018】
粉砕助剤は以下のパラメータの最適化を必要とする:粉砕ユニット中での付着の防止、粉砕材料の出来るだけ高い粉砕粉末度ないし出来るだけ大きい比表面積(ブレーンによる粉末度)の達成、粉砕材料の流動性の改善、粉砕材料の均質化、粉砕材料のアグロメレートの崩壊並びに粉砕助剤の添加量の低減。
【0019】
従って本発明は、上記のパラメータを満たすセメント含有調製物のための粉砕助剤を提供するという課題に基づく。
【0020】
意外にも、上記課題は、ポリマー骨格上に、以下に定義された式Aのポリエーテル基と、pH>12でアニオン性基の形で存在する官能基Bとを有する炭素骨格を有する櫛形ポリマーにより解決されることが見出された。
【0021】
それに応じて、本発明は、セメント含有調製物における粉砕助剤としての、式A
*−U−(C(O))k−X−(Alk−O)n−W A
[式中、
*は櫛形ポリマーの炭素骨格上の結合位置を示し、
Uは化学結合又は1〜8個のC原子を有するアルキレン基を表し、
Xは酸素又は基NRを表し、
kは0又は1であり、
nはその平均値が櫛形ポリマーに対して5〜300の範囲内である整数を表し、
AlkはC2〜C4−アルキレンを表し、その際、Alkは基(Alk−O)nの中で同じか又は異なっていてよく、
Wは水素、C1〜C6−アルキル基又はアリール基を表すか、又は基Y−Zを表し、その際、
Yはフェニル環を有してよい2〜8個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキレン基を表し、
Zは窒素を介して結合した5員〜10員の窒素複素環を表し、該窒素複素環は、環員として、窒素原子及び炭素原子の他に、酸素、窒素及び硫黄から選択された1、2又は3個の付加的なヘテロ原子を有してよく、その際、窒素環員は基R’を有してよく、その際、1又は2個の炭素環員がカルボニル基として存在していてよく、
Rは水素、C1〜C4−アルキル又はベンジルを表し、かつ
R’は水素、C1〜C4−アルキル又はベンジルを表す]
のポリエーテル基
並びに、pH>12でアニオン性基の形で存在する官能基B
を有する炭素骨格を有する櫛形ポリマー及びその塩の使用に関する。
【0022】
本発明は更に、そのような櫛形ポリマーを含有するセメント含有調製物、特にすぐ使用できる調製物及び該調製物から製造された物品に関する。
【0023】
nの平均値が櫛形ポリマーに対して10〜300の範囲内であり、かつ、基(Alk−O)n中の単位Alk−Oの平均で90モル%がCH2−CH2−Oを表す場合、この種の櫛形ポリマーは新規である。
【0024】
従って、本発明は更に、一般式Aのポリエーテル基と、pH>12でアニオン性基の形で存在する官能基Bとを有する炭素骨格を有する櫛形ポリマーに関し、その際、式Aにおいて、変数*、U、X、k、Alk、Y、Z、R及びR’は上記の意味を有し、かつnはその平均値が櫛形ポリマーに対して10〜300の範囲内である整数を表し、その際、基(Alk−O)n中の単位Alk−Oの平均で少なくとも90モル%はCH2−CH2−Oを表す。
【0025】
本発明による櫛形ポリマーは公知の粉砕助剤、例えばトリエタノールアミン又は種々のカルボン酸ないしその塩、例えばオクタデカン酸又はその塩と組み合わせて使用されてもよい。
【0026】
櫛形ポリマーの配合は粉末形でも溶液でも行うことができる。
【0027】
本発明の範囲内でのセメント含有調製物とは、無機の、通常は鉱物性の物質であり、該物質は水と混合された際に特に水硬性バインダー、例えば石灰及び特にセメント(潜在的な水硬性バインダー、例えば高炉スラグを含む)と解釈される。
【0028】
本発明による櫛形ポリマーは、水硬性バインダーの調製のための粉砕助剤として特に適当であり、セメント含有調製物のための粉砕助剤として極めて特に適当である。
【0029】
以下で、C2〜C4−アルキレンは、2〜4個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルカンジイル基、特に1又は2個のメチル基又は1個のエチル基を有してよい1,2−エタンジイル基、即ち1,2−エタンジイル、1,2−プロパンジイル、1,2−ブタンジイル、1,1−ジメチルエタン−1,2−ジイル又は1,2−ジメチルエタン−1,2−ジイルを表す。
【0030】
1〜C8−アルキレンは、1〜8個、特に1〜4個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルカンジイル基、例えばCH2、1,1−エタンジイル、1,2−エタンジイル、1,1−プロパンジイル、1,3−プロパンジイル、2,2−プロパンジイル、1,2−プロパンジイル、1,1−ブタンジイル、1,2−ブタンジイル、1,3−ブタンジイル、1,4−ブタンジイル、2,2−ブタンジイル、1,1−ジメチルエタン−1,2−ジイル又は1,2−ジメチルエタン−1,2−ジイルを表す。
【0031】
1〜C4−アルキルないしC1〜C6−アルキルは、1〜4個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、2−メチルプロパン−1−イル又はtert.−ブチルを表す。C1〜C10−アルキルは、1〜10個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基、例えば上記のようなC1〜C4−アルキル、並びに、ペンチル、ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、ヘプチル、オクチル、1−メチルヘプチル、2−メチルヘプチル、2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル、2−エチルヘキシル、1−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、1−メチルノニル、2−プロピルヘプチル等を表す。
【0032】
1〜C4−アルコキシは、酸素原子を介して結合しており、かつ1〜4個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブチルオキシ、2−ブチルオキシ、2−メチルプロパン−1−イルオキシ又はtert.−ブトキシを表す。C1〜C10−アルコキシは、酸素原子を介して結合しており、かつ1〜10個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基、例えば上記のようなC1〜C4−アルコキシ、並びに、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、1−メチルペンチルオキシ、2−メチルペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、1−メチルヘプチルオキシ、2−メチルヘプチルオキシ、2,4,4−トリメチルペンタン−2−イルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、1−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、イソノニルオキシ、デシルオキシ、1−メチルノニルオキシ、2−プロピルヘプチルオキシ等を表す。
【0033】
本発明による使用に関して、基(Alk−O)n中の繰り返し単位Alk−Oの平均数、つまり櫛形ポリマーに対する式A中のnの平均値が、少なくとも10、特に少なくとも20、特に少なくとも50であり、かつ250、特に200、特に150の値を超えない場合に有利であることが判明した。有利に、該値は10〜250の範囲内、特に20〜200の範囲内、特に50〜150の範囲内である。nの平均値ないし繰り返し単位Alk−Oの平均数は、櫛形ポリマーに対する数平均である。
【0034】
基(Alk−O)nにおいて、個々の繰り返し単位Alk−Oのアルキレン部分は同じか又は異なっていてよい。特に有利に、Alk−Oは1,2−エタンジイル又は1,2−エタンジイルと1,2−プロパンジイルとの混合物を表す。基(Alk−O)nが相互に異なる単位Alk−Oを有する場合、前記基はランダムにか又はブロック状に配置されていてよく、その際、ブロック状の配置が有利である。特に、Xと結合している基Alk−Oは式CH2CH2Oの基である。
【0035】
更に、基Alk−Oの少なくとも50モル%、特に少なくとも80モル%、特に有利に90モル%、特に全てがCH2−CH2−Oを表す場合に有利であることが判明した。前記の%表記は、櫛形ポリマーの全量に対する数平均である。
【0036】
基(Alk−O)nが種々の繰り返し単位Alk−Oを有する場合、基Alk−Oの平均で少なくとも50モル%、例えば50〜99モル%、特に少なくとも80モル%、例えば80〜99モル%、特に少なくとも90モル%、例えば90〜98モル%がCH2−CH2−Oを表すのが有利であることが判明した。これらのうち、残りの繰り返し単位Alk−OがCH(CH3)−CH2−Oを表す混合物が有利である。
【0037】
式A中の基Zは有利に5員〜10員の窒素複素環を表し、該窒素複素環は、Yに結合した窒素原子及び炭素原子環員の他に、O、S、N、基NRから選択された環員及び/又はカルボニル基を環員として有する。基NR中で、Rは上記の意味を有し、かつ特に水素又はメチルを表す。これらのうち、O、N又は基NRから選択された環員及び/又はカルボニル基を環員として有する複素環が有利である。有利な基Zの例は、ピロリドン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピペラジン−1−イル、ピペリドン−1−イル、モルホリン−2−オン−4−イル、モルホリン−3−オン−4−イル、ピペラジン−1−イル、4−メチルピペラジン−1−イル、イミダゾリン−2−オン−1−イル、3−メチルイミダゾリン−2−オン−1−イル及びイミダゾール−1−イルである。これらのうち、特にモルホリン−1−イル及びピロリドン−1−イルは有利である。
【0038】
更に、式A中のYがC2〜C4−アルキレン、特に1,2−エタンジイル又は1,3−プロパンジイルを表す場合に有利であることが判明した。
【0039】
Uは有利に化学結合、CH2又はCH(CH3)を表す。特に有利な実施態様において、Uは化学結合を表す。
【0040】
特にkは1を表す。
【0041】
式A中でXは有利にO又はNH、特にOを表す。
【0042】
特に、式A中で、変数U、k、X、Y及びZ並びに変数nは、共通して、有利なものとして記載された意味を有する。
【0043】
本発明により使用される櫛形ポリマー中に存在する基Bは、典型的には、12を上回るpH値で、アニオン性基の形で、つまり脱プロトン化された形で存在する。そのような基の例は、カルボキシラート(COOHないしCOO-)、スルホナート(SO3HないしSO3-)、ホスホナート(PO32ないしPO3-又はPO32-)である。有利に、基Bの少なくとも50モル%、特に少なくとも80モル%はカルボキシラート基である。
【0044】
本発明の有利な実施態様において、基Bは本質的に(つまり少なくとも95モル%、特に少なくとも99モル%が)カルボキシラートであるか、又は専らカルボキシラートのみである。本発明の別の実施態様において、櫛形ポリマーは少なくとも2個の異なる官能基Bを有し、その際、この実施態様において、官能基Bの有利に50〜99モル%、特に80〜99モル%はカルボキシラート基であり、残りの1〜50モル%、特に1〜20モル%はスルホナート基である。
【0045】
官能基Bは直接か又はスペーサーを介してポリマー鎖の炭素骨格に結合していてよい。典型的なスペーサーは、C1〜C4−アルカンジイル、フェニレン並びに式
*−C(O)−X’−Alk’−,
[式中、
X’はO、NH又はN(C1〜C4−アルキル)を表し、Alk’はC2〜C4−アルキレン、特に1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル、1,2−プロパンジイル又は1−メチル−1,2−プロパンジイルを表し、かつ*はポリマー骨格上のスペーサーの結合位置を表す]
の基である。本発明の有利な実施態様において、基Bは直接、つまり単結合を介して櫛形ポリマーの炭素骨格に結合している。
【0046】
更に、櫛形ポリマーは、式Aの上記基及び官能基Bの他に、式C
*−U’−(C(O))p−X’’−(Alk’’−O)q−Ra
[式中、
U’はUに関して記載された意味を有し、pは0又は1を表し、X’’はXに関して記載された意味を有し、Alk’’はAlkに関して上記された意味を有し、qはその平均値(数平均)が櫛形ポリマーに対して2〜300の範囲内、特に10〜250の範囲内、特に有利に20〜200の範囲内、特に50〜150の範囲内にある整数を表し、かつRaは、水素、C1〜C10−アルキル、C1〜C10−アルキルカルボニル、ベンジル又はベンゾイルから選択されている]
の基も有してよい。式Cにおいて、pは特に1を表す。U’は特に化学結合を表す。X’’は特に酸素を表す。Raは特にC1〜C4−アルキル、特にメチルを表す。Alk’’の有利な意味に関して、Alkに関する上記のことが同様に当てはまる。
【0047】
基本的に、ポリエーテル基A、またポリエーテル基Cも、櫛形ポリマーの中で、基(Alk−O)nないし(Alk’’−O)q中の繰り返し単位の数nないしqの数に関して同じか又は異なっていてよく、その際、基A及びCないし基(Alk−O)nないし(Alk’’−O)qは分子量分布を有し、かつそれに相応して、n及びqがこの分子量分布の平均値(数平均)を表すことを考慮しなければならない。従って、「同じ」という概念は、基AないしCの分子量分布がその都度一つの極大を有することを表す。それに相応して、「異なる」という概念は、基AないしCの分子量分布が複数の重畳した分布に相応し、かつそれに相応して複数の極大を有することを表す。基Aの分子量分布、又は存在する場合には基Aの分子量分布が基Cの分子量分布と異なる櫛形ポリマーは有利である。特に、その都度極大に割り当てるべき分子量の数平均が、相互に少なくとも130ダルトン、特に少なくとも440ダルトンだけずれている櫛形ポリマーは有利である。それに相応して、少なくとも2個の、例えば2、3、4、5又は6個の型の異なる基Aを有する(以下で基A1及びA2ないしA1、A2・・・Ai;iは整数、例えば3、4、5又は6)櫛形ポリマーは有利であり、その際、それぞれの平均値n(A1)及びn(A2)ないしn(Ai)は少なくとも3、特に少なくとも10の値だけ異なる。それに相応して、n及びqの平均値が少なくとも3、特に少なくとも10の値だけ異なる、式A及び式Cの基を有する櫛形ポリマーも有利である。
【0048】
本発明により使用される櫛形ポリマーにおいて、式Aのポリエーテル基及び官能基Bは典型的にA:B=2:1〜1:20の範囲内、しばしば1.5:1〜1:15の範囲内、特に1:1〜1:10の範囲内、特に1:1.1〜1:8の範囲内のモル比で存在する(櫛形ポリマーの全量にわたって平均したもの)。櫛形ポリマーが式Cのポリエーテル基を有する場合、式A及びCのポリエーテル基と官能基Bとのモル比、つまり(A+C):Bのモル比は典型的に2:1〜1:20の範囲内、しばしば1.5:1〜1:15の範囲内、特に1:1〜1:10の範囲内、特に1:1.1〜1:1の範囲内である(櫛形ポリマーの全量にわたって平均したもの)。
【0049】
式Aの上記基、官能基B及び場合により存在する基Cの他に、櫛形ポリマーはわずかな程度で、炭素骨格上の官能基C’を有してもよい。これには、特に、アルコキシ基が1個以上のヒドロキシ基、ニトリル基及び上記で定義されたような式Zの基を有してよいC1〜C8−アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0050】
官能基A、B、場合によりC及びC’の全量に対する官能基C’の含分は、有利に30モル%、特に20モル%を超えず、存在する場合には典型的には1〜30モル%の範囲内、特に2〜20モル%の範囲内である。有利な実施態様において、櫛形ポリマーは官能基C’を有しないか、又は2モル%未満、特に1モル%未満有する。
【0051】
有利な実施態様において、櫛形ポリマーは、式Cの基を、それぞれ官能基A、B、C及び場合によりC’の全量に対して5〜80モル%、特に10〜60モル%有する。前記実施態様において、側鎖Aと基Cとのモル比、つまりA:Cのモル比は、有利に1:10〜20:1の範囲内、特に1:2〜10:1の範囲内にある。本発明の別の有利な実施態様において、櫛形ポリマーは、式C’の基を有しないか、又は、それぞれ基A、B、C及びC’の全量に対して5モル%未満、特に1モル%未満有する。
【0052】
更に、櫛形ポリマーは炭素骨格上に炭化水素基、例えばC1〜C4−アルキル基又はフェニル基を有してよい。本発明の有利な実施態様において、炭素骨格はC1〜C4−アルキル基、特にメチル基をポリマー鎖の少なくとも4番目毎のC原子上に有する
更に、ポリマー骨格の平均して(数平均)少なくとも4番目毎のC原子、特に少なくとも3番目毎のC原子が式A又は場合によりCの基又は官能基Bを有する場合に有利であることが判明した。更に、ポリマー骨格の平均して(数平均)2個の、A、B又は場合によりCにより置換された炭素原子の間に、基A、B又は場合によりCにより置換されていない少なくとも1個の炭素原子が配置されている場合に有利であることが判明した。
【0053】
櫛形ポリマーの数平均分子量(MN)は、通常1000〜200000の範囲内である。櫛形ポリマーの使用に関して、5000〜100000の数平均分子量を有する櫛形ポリマーは有利である。数平均分子量MNは通常ゲル透過クロマトグラフィーにより、例えば実施例で説明したように測定することができる。下記の方法により測定された本発明により得られるコポリマーのK値は、通常10〜100の範囲内、有利に15〜80の範囲内、特に20〜60の範囲内である。
【0054】
櫛形ポリマーは遊離酸の形か又はその塩の形で使用されてよく、その際、塩形において、基Bは部分的又は完全に中和されて存在してよい。櫛形ポリマーが塩の形で使用される場合、該塩は電気的中性の理由から対イオンとしてのカチオンを有する。適当なカチオンはアルカリ金属カチオン、例えばNa+及びK+、アルカリ土類金属カチオン、例えばMg++及びCa++、及びアンモニウムイオン、例えばNH4+、[NRbcde+であり、その際、RbはC1〜C4−アルキル又はヒドロキシ−C2〜C4−アルキルを表し、かつ基Rc、Rd及びReは相互に無関係に水素、1〜C4−アルキル及びヒドロキシ−C2〜C4−アルキルから選択されている。有利な対イオンは、アルカリ金属カチオン、特にNa+及びK+である。
【0055】
本発明による櫛形ポリマーの製造は、この種の櫛形ポリマーの公知の製造法と同様に、例えば、冒頭で引用された先行技術に記載されているような方法、並びに、WO01/40337、WO01/40338、WO01/72853又はWO02/50160に記載された方法と同様に行うことができ、これによって前記開示内容は本願明細書に引用される。
【0056】
適当な製造法は特に以下のものである:
i)以下のものを含むエチレン系不飽和モノマーMの共重合
a)式Aの1個又は2個の基を有する中性のモノエチレン系不飽和モノマーM1、及び
b)1個又は2個の官能基Bを有するモノエチレン系不飽和モノマーM2、
ii)以下のものを含むエチレン系不飽和モノマーMの単独重合又は共重合
a)式Aの基及び官能基Bを有するモノエチレン系不飽和モノマーM3、及び場合により
b)1個又は2個の官能基Bを有するモノエチレン系不飽和モノマーM2、
並びに
iii)遊離カルボキシル基又はカルボキシル基のエステル形成性誘導体を有する炭素骨格を有するホモポリマー又はコポリマーと、式HO−(Alk−O)n−Y−Zのアルコール又は式HNR−(Alk−O)n−Y−Z[式中、n、Alk、R、Y及びZは上記の意味を有する]のアミンとのポリマー類似反応。
【0057】
3つの製造法i)、ii)及びiii)は全て本発明による櫛形ポリマーを導き、その際、この場合に得られる櫛形ポリマーの構造は、当然のことながら、その都度選択された製造法及び使用される出発生成物の量及び種類に、自体公知のように依存する。例えば、製造法i)及びii)により得られる櫛形ポリマーの場合、側鎖Aないし官能基Bの種類及び量は、使用されるモノマーM1及びM2ないしM1及び場合によりM3の種類及び相対量に、自体公知のように依存する。櫛形ポリマーの分子量も、製造法i)及びii)の場合、重合の際に選択される反応条件により、例えば使用される開始剤、場合により使用される調節剤、温度、反応媒体、モノマーの濃度等によって、自体公知のように制御され得る。製造法iii)により得られる櫛形ポリマーの場合、構造及び分子量は、当然のことながら、使用されるホモポリマーないしコポリマーにより、並びに、変性のために使用されるアルコールHO−(Alk−O)n−Y−Z又は式HNR−(Alk−O)n−Y−Zのアミンにより大幅に決定される。
【0058】
方法i)により得られる櫛形ポリマーは本発明によれば有利であり、従って本発明の特に有利な対象である。
【0059】
製造法i)において、モノマーMの種類及び量は式Aの側鎖の種類及び数を決定する。
【0060】
有利なモノマーM1は、式A中のkが1を表すモノマーである。従って有利なモノマーM1は、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸のエステル、及び、モノエチレン系不飽和C4〜C8−ジカルボン酸と式HO−(Alk−O)n−Y−Z[式中、n、Alk、Y及びZは上記の意味を有する]のアルコールとのジエステル、及び、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸と式NHR−(Alk−O)n−Y−Z[式中、n、Alk、R、Y及びZは上記の意味を有する]のアミンとのアミドから選択される。
【0061】
モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸の有利なエステルは、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルである。
【0062】
モノエチレン系不飽和C4〜C8−ジカルボン酸のジエステルの例は、フマル酸、イタコン酸及びマレイン酸のエステルである。
【0063】
モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸の有利なアミドは、アクリル酸及びメタクリル酸のアミドである。
【0064】
モノマーM1として、更に、式HO−(Alk−O)n−Y−Z[式中、n、Alk、Y及びZは上記の意味を有する]のアルコールのビニルエーテル、アリルエーテル及びメタリルエーテルが挙げられる。
【0065】
有利に、モノマーM1は、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸のエステル、特にアクリル酸及びメタクリル酸のエステルを、モノマーM1の全量に対して少なくとも80モル%、特に少なくとも90モル%含む。特に、モノマーM1は、上記のモノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸のエステル、特にアクリル酸及びメタクリル酸のエステルから選択される。
【0066】
モノマーM2には、以下のものが挙げられる:
M2a 3ないし4〜8個のC原子を有するモノエチレン系不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸。
【0067】
M2b 有利に2〜10個のC原子を有するモノエチレン系不飽和スルホン酸及びその塩、特にそのアルカリ金属塩、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルオキシエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、並びに
M2b 有利に2〜10個のC原子を有するモノエチレン系不飽和ホスホン酸、例えばビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2−アクリルオキシエタンホスホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸、
M2d 4〜8個のC原子を有するモノエチレン系不飽和ジカルボン酸の半エステル、特にマレイン酸、フマル酸及びイタコン酸とC1〜C10−アルカノール、特にC1〜C4−アルカノールとの半エステル、例えば前記酸のモノメチルエステル、モノエチルエステル又はモノブチルエステル並びに前記酸と式HO(Alk’’−O)q−Ra[式中、q、Alk’’及びRaは上記の意味を有する]のアルコールとのモノエステル、
及び前記モノマーの塩、特に前記モノマーのアルカリ金属塩。
【0068】
有利なモノマーM2は、3ないし4〜8個のC原子を有するモノエチレン系不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸を、このうち特に有利にアクリル酸及びメタクリル酸を、モノマーM2の全量に対して少なくとも50モル%、特に少なくとも70モル%含む。有利な実施態様において、モノマーM2は、3ないし4〜8個のC原子を有するモノエチレン系不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸から、特にアクリル酸及びメタクリル酸から選択される。本発明の他の実施態様において、モノマーM2は、3ないし4〜8個のC原子を有するモノエチレン系不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸を、このうち特に有利にアクリル酸及びメタクリル酸を、モノマーM2の全量に対して50〜99モル%、特に70〜95モル%、並びに、有利に2〜10個のC原子を有するモノエチレン系不飽和スルホン酸を、モノマーM2の全量に対して1〜50モル%、特に5〜35モル%含む。
【0069】
モノマーM3には、特に、モノエチレン系不飽和C4〜C8−ジカルボン酸と、式HO−(Alk−O)n−Y−Z[式中、n、Alk、Y及びZは上記の意味を有する]のアルコールとの半エステル、特にマレイン酸、フマル酸及びイタコン酸の半エステルが挙げられる。
【0070】
それに加えて、モノマーMは他のモノマーM4及びM5を含んでよい。
【0071】
モノマーM4は、式Cの1個又は2個の基及び場合により官能基Bを有するモノエチレン系不飽和モノマーである。これには、式HO(Alk’’−O)q−Ra[式中、q、Alk’’及びRaは上記の意味を有する]のアルコールのビニルエーテル、アリルエーテル及びメタリルエーテル、更には、前記アルコールとモノエチレン系不飽和モノ−C3〜C8−カルボン酸とのエステル、並びに、前記アルコールとモノエチレン系不飽和ジ−C4〜C8−カルボン酸との半エステル及びジエステルが挙げられる。有利なモノマーM4は、モノエチレン系不飽和モノ−C3〜C8−カルボン酸、特にアクリル酸及びメタクリル酸と式HO(Alk’’−O)q−Ra[式中、q、Alk’’及びRaは上記の意味を有する]のアルコールとのエステル、並びに、モノエチレン系不飽和ジ−C4〜C8−カルボン酸、特にマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びイタコン酸と式HO(Alk’’−O)q−Raのアルコールとのジエステルである。特に有利なモノマーM4は、モノエチレン系不飽和モノ−C3〜C8−カルボン酸、特にアクリル酸及びメタクリル酸のエステルである。
【0072】
有利に、モノマーM4は、モノマーMの全量に対して80モル%を超えず、特に60モル%を超えない。本発明の有利な実施態様において、モノマーM4の含分は、製造法i)ないしii)においてモノマーMの全量に対して5〜80モル%、特に10〜60モル%である。本発明の別の実施態様において、モノマーM中のモノマーM4の含分は、5モル%未満、特に1モル%未満である。モノマーM1とM4とのモル比ないしモノマーM3とM4とのモル比に関しては、官能基A:Cのモル比に関して前記したものが同様に当てはまる。
【0073】
モノマーM5には、モノマーM5a、M5b、M5c、M5d及びM5eが挙げられる:
M5a モノエチレン系不飽和モノ−C3〜C8−カルボン酸、特にアクリル酸及びメタクリル酸とC1〜C10−アルカノール又はC3〜C10−シクロアルカノールとのC1〜C10−アルキルエステル及びC5〜C10−シクロアルキルエステル、例えばメチルアクリラート、エチルアクリラート、n−プロピルアクリラート、イソ−プロピルアクリラート、n−ブチルアクリラート、イソ−ブチルアクリラト、tert.−ブチルアクリラート、n−ヘキシルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、シクロヘキシルアクリラート及び、モノエチレン系不飽和ジ−C4〜C8−カルボン酸の相応するメタクリル酸エステル及び相応するジ−C1〜C10−アルキルエステル及びジ−C5〜C10−シクロアルキルエステル;
M5b モノエチレン系不飽和モノ−及びジ−C3〜C8−カルボン酸、特にアクリル酸及びメタクリル酸のヒドロキシ−C2〜C10−アルキルエステル、例えば2−ヒドロキシ−エチルアクリラート、3−ヒドロキシプロピルアクリラート、4−ヒドロキシブチルアクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、3−ヒドロキシプロピルメタクリラート及び4−ヒドロキシブチルメタクリラート、
M5c モノエチレン系不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリル、
M5d ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン及びビニルトルエン、
M5e 有利に2〜12個のC原子を有するオレフィン、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、ジイソブテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等。
【0074】
有利なモノマーM5はモノマーM5bである。
【0075】
有利に、モノマーM5は、モノマーMの全量に対して30モル%を超えず、特に20モル%を超えない。所望の場合には、モノマーM5の含分は、通常、製造法i)ないしii)においてモノマーMの1〜30モル%、特に5〜20モル%である。特に、モノマーM中のモノマーM5の含分は、5モル%未満、特に1モル%未満である。
【0076】
方法i)の場合、側鎖Aと官能基B、場合によりC及びC’とのモル比は、通常直接、モノマーM1とモノマーM2とのモル比から、ないしはモノマーM1:M2:M4:M5のモル比からもたらされる。それに応じて、モル比M1:M2ないし(M1+M4):M2は、一価の酸の場合には通常2:1〜1:20の範囲内、特に1:1〜1:10の範囲内、特に1:1.1〜1:8の範囲内である。モノマーMが製造法i)において1個以上の酸基を有するモノマーM2又はモノマーM3を含む場合、モノマーのモル比は相応してもたらされる。
【0077】
それに応じて、それぞれモノマーMの全量に対して、モノマーM1の量は製造法i)において典型的に5〜65モル%、特に10〜50モル%であり、モノマーM2の量は35〜95モル%、特に50〜90モル%であり、その際、場合による他のモノマーM3ないしM5の含分は30モル%まで、特に20モル%までであってよく、かつモノマーM4の含分は80モル%まで、特に60モル%まで、例えば5〜80モル%、特に10〜60モル%であってよく、その際、もちろん、他に記載がない限り、全モノマーMのモル数の総和は100モル%である。
【0078】
方法ii)の場合、側鎖Aと官能基Bとのモル比は、方法i)と同様に、モノマーM3と場合により使用されるモノマーM2又はM1又はM4とのモル比からもたらされる。側鎖Aと側鎖Cないし官能基Bとのモル比の関係にも同じことが当てはまる。
【0079】
それに応じて、それぞれモノマーMの全量に対して、モノマーM3の量は製造法ii)において典型的に40〜100モル%、特に50〜95モル%であり、モノマーM2の量は0〜60モル%、特に5〜50モル%であり、その際、場合による他のモノマーM2又はM5のモル数は30モル%まで、特に20モル%までであってよく、かつモノマーM4の含分は80モル%まで、特に60モル%まで、例えば5〜80モル%、特に10〜60モル%であってよく、その際、もちろん、他に記載がない限り、全モノマーMのモル数の総和は100モル%である。
【0080】
更に、ポリマーの分子量を高めるために、モノマーMの重合を、例えば2、3又は4個の重合性二重結合を有するわずかな量の多重エチレン系不飽和モノマー(架橋剤)の存在で実施するのが合目的である。このための例は、エチレン系不飽和カルボン酸のジエステル及びトリエステル、特に、3個以上のOH基を有するジオール又はポリオールのビスアクリラート及びトリアクリラート、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール又はポリエチレングリコールのビスアクリラート及びビスメタクリラートである。この種の架橋剤は、所望の場合には、重合性モノマーMの全量に対して通常0.01〜5質量%の量で使用される。有利に、0.01質量%未満の架橋剤モノマーが使用され、特に架橋剤モノマーは使用されない。
【0081】
モノマーMの重合は、通常ラジカル形成性化合物、いわゆる開始剤の存在で行われる。この種の化合物は、重合性モノマーの全量に対して通常30質量%まで、有利に0.05〜15質量%、特に0.2〜8質量%の量で使用される。複数の成分からなる開始剤の場合(開始剤系、例えばレドックス開始剤系の場合)、上記の質量表示は成分の合計に関するものである。
【0082】
適当な開始剤は、例えば有機ペルオキシド及びヒドロペルオキシド、更にはペルオキソジスルファート、ペルカーボナート、ペルオキシドエステル、過酸化水素及びアゾ化合物である。開始剤の例は、過酸化水素、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボナート、ジアセチルペルオキシド、ジ−tert.−ブチルペルオキシド、ジアミルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(o−トルイル)ペルオキシド、スクシニルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジ−tert.−ブチルヒドロペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ブチル−ペルアセタート、tert.−ブチルペルマレイナート、tert.−ブチルペルイソブチラート、tert.−ブチルペルピバラート、tert.−ブチルペルオクトアート、tert.−ブチルペルネオデカノアート、tert.−ブチルペルベンゾアート、tert.−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert.−ブチルペルネオデカノアート、tert.−アミルペルピバラート、tert.−ブチルペルピバラート、tert.−ブチル−ペルベンゾアート、tert.−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート及びジ−イソプロピルペルオキシジカルバマート;更に、ペルオキソ二硫酸リチウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム及びペルオキソ二硫酸アンモニウム、アゾ開始剤2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)ジヒドロクロリド及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、並びに以下に説明するレドックス開始剤系である。
【0083】
レドックス開始剤系は、少なくとも1種の過酸化物含有化合物を、レドックス共開始剤、例えば還元作用を有する硫黄化合物、例えばアルカリ金属の亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜二チオン酸塩及び四チオン酸塩、又はアンモニウム化合物の亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜二チオン酸塩及び四チオン酸塩との組合せで含有する。例えば、ペルオキソ二硫酸塩とアルカリ金属亜硫酸水素塩又は亜硫酸水素アンモニウムとの組合せ、例えばペルオキソ二硫酸アンモニウム及び二亜硫酸アンモニウムを使用することができる。過酸化物含有化合物:レドックス共開始剤の量は、30:1〜0.05:1である。
【0084】
開始剤は、単独でか又は互いの混合物、例えば過酸化水素とペルオキソ二硫酸ナトリウムとの混合物で使用されてよい。
【0085】
開始剤は水溶性であってもよいし、水中に不溶性であるか又はわずかに可溶性であるに過ぎなくてもよい。水性媒体中での重合のために、有利に水溶性開始剤、つまり重合のために通常使用される濃度で水性重合媒体中で可溶性である開始剤が使用される。これには、ペルオキソ二硫酸塩、イオン性基を有するアゾ開始剤、6個までのC原子を有する有機ヒドロペルオキシド、アセトンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンヒドロペルオキシド及び過酸化水素並びに上記のレドックス開始剤が挙げられる。重合法i)ないしii)の特に有利な実施態様において、使用される開始剤は少なくとも1種のペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウムを含む。
【0086】
開始剤ないしレドックス開始剤系との組合せで、付加的に、遷移金属触媒、例えば鉄、コバルト、ニッケル、銅、バナジウム及びマンガンの塩が使用されてよい。適当な塩は、例えば硫酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸ニッケル(II)又は塩化銅(I)である。還元作用を有する遷移金属塩は、モノマーに対して0.1ppm〜1000ppmの濃度で使用される。例えば、過酸化水素と鉄(II)塩、例えば過酸水素0.5〜30%とモール塩0.1〜500ppmとの組合せ物を使用することができる。
【0087】
有機溶剤中でのモノマーMの重合の場合にも、上記開始剤との組合せで、レドックス共開始剤及び/又は遷移金属触媒、例えばベンゾイン、ジメチルアニリン、アスコルビン酸並びに重金属、例えば銅、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びクロムの有機溶剤中で可溶性の錯体が併用されてもよい。レドックス共開始剤ないし遷移金属触媒の通常使用される量は、使用されるモノマーの量に対して約0.1〜1000ppmである。
【0088】
本発明による得られる櫛形ポリマーの平均分子量を制御するために、モノマーMの重合を調節剤の存在で実施するのがしばしば合目的である。このために、慣用の調節剤、特に有機SH基含有化合物、特に水溶性SH基含有化合物、例えば2−メルカプトエタノール、2−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロピオン酸、システイン、N−アセチルシステイン、更に、リン(III)化合物又はリン(I)化合物、例えばアルカリ金属次亜燐酸塩又はアルカリ土類金属次亜燐酸塩、例えば次亜燐酸ナトリウム並びに亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素ナトリウムを使用することができる。重合調節剤は、モノマーMに対して一般に0.05〜10質量%、特に0.1〜2質量%の量で使用される。有利な調節剤は、上記のSH基含有化合物、特に水溶性SH基含有化合物、例えば2−メルカプトエタノール、2−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロピオン酸、システイン及びN−アセチルシステインである。前記化合物の場合、前記化合物をモノマーに対して0.05〜2質量%、特に0.1〜1質量%の量で使用するのが有利であることが判明した。上記のリン(III)化合物又はリン(I)化合物並びに亜硫酸水素塩は、重合すべきモノマーに対して通常多量に、例えば0.5〜10質量%、特に1〜8質量%の量で使用される。適当な溶剤を選択することによっても、平均分子量に影響を及ぼすことができる。例えば、ベンジル系又はアリル系H原子を有する希釈剤の存在下での重合は、連鎖移動によって平均分子量の減少を招く。
【0089】
モノマーの重合は、溶液重合、沈殿重合、懸濁重合又は塊状重合を含め、慣用の重合法により行うことができる。溶液重合法、即ち溶剤又は希釈剤中での重合は有利である。
【0090】
適当な溶剤又は希釈剤には、非プロトン性溶剤、例えば上記芳香族化合物、例えばトルエン、o−キシレン、p−キシレン、クメン、クロロベンゼン、エチルベンゼン、アルキル芳香族化合物、脂肪族化合物及び脂環式化合物、例えばシクロヘキサンの工業用混合物、及び工業用脂肪族化合物混合物、ケトン、例えばアセトン、シクロヘキサノン及びメチルエチルケトン、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert.−ブチルメチルエーテル、及び脂肪族C1〜C4−カルボン酸のC1〜C4−アルキルエステル、例えば酢酸メチルエステル及び酢酸エチルエステル、更に、プロトン性溶剤、例えばグリコール及びグリコール誘導体、ポリアルキレングリコール及びその誘導体、C1〜C4−アルカノール、例えばn−プロパノール、n−ブタノール、イソプロパノール、エタノール又はメタノール、並びに水及び水とC1〜C4−アルカノールとの混合物、例えばイソプロパノール/水混合物が挙げられる。有利に、本発明による共重合法は、溶剤又は希釈剤としての、水中で、又は水と60質量%までのC1〜C4−アルカノール又はグリコールとからの混合物中で行われる。特に有利に水が唯一の溶剤として使用される。
【0091】
モノマーMの重合は、有利に、十分又は完全な酸素の排除下に、有利に不活性ガス流、例えば窒素流中で実施される。
【0092】
モノマーMの重合法は、重合法に慣用の装置中で実施されてよい。これには、撹拌釜、撹拌釜カスケード、オートクレーブ、管型反応器及び混練機が挙げられる。
【0093】
モノマーMの重合は、通常0〜300℃の範囲内、有利に40〜120℃の範囲内の温度で行われる。重合時間は通常0.5h〜15hの範囲内、特に2〜6hの範囲内である。重合の際に存在する圧力は、重合の実施にはあまり重要でなく、通常は800ミリバール〜2バールの範囲内であり、しばしば周囲圧力である。易揮発性溶剤又は易揮発性モノマーを使用する場合、圧力はより高くてもよい。
【0094】
重合法に関する更なる詳細に関しては、EP−A560602、EP−A734359、EP−A799807、EP−A994290、WO01/40337、WO01/40338及びPCT/EP2005/009466が参照される。前記刊行物に記載された重合条件を、同様に、本発明による櫛形ポリマーの製造に用いることができる。
【0095】
モノマーM2、M4及びM5は、主に市販されている公知の化合物である。
【0096】
モノマーM1ないしM3は部分的に既に先行技術において記載されており、その際、基A中のnが平均で10〜300の範囲内、特に20〜200の範囲内、特に50〜200の範囲内、極めて特に50〜150の範囲内の数を表し、かつ、基A中の繰り返し単位Alk−Oの少なくとも90モル%がCH2CH2Oを表すモノマーM1ないしM3は新規であり、かつ本発明の他の対象である。該モノマーの製造は先行技術の公知の方法と同様に行うことができる。種々の単位Alk−Oのランダム及びブロック状の配置に関しては、基Aに関する上記記載が当てはまる。
【0097】
式A中のkが1を表す有利なモノマーM1は、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸ないしモノエチレン系不飽和C4〜C8−ジカルボン酸と式HO−(Alk−O)n−Y−Z[式中、n、Alk、Y及びZは上記の意味を有する]のアルコールとのエステル化により、又は、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸と式NHR−(Alk−O)n−Y−Z[式中、n、Alk、R、Y及びZは上記の意味を有する]のアミンとのアミド化により製造することができる。C3〜C8−モノカルボン酸ないしC4〜C8−ジカルボン酸の代わりに、前記酸のエステル形成性又はアミド形成性の誘導体、特に酸の無水物を使用することもできる。この種の方法は先行技術から公知である。
【0098】
例えば、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸ないしC4〜C8−ジカルボン酸と式HO−(Alk−O)n−Y−Zのアルコールとのエステルの製造は、以下によるものであってよい:
a)例えば、DE−A2516933、EP−A884290、EP−A989108、EP−A989109、WO01/40337、WO01/40338及びWO02/50160に記載されている方法と同様の、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸ないしC4〜C8−ジカルボン酸と式HO−(Alk−O)n−Y−Zのアルコールとの酸触媒エステル化、
b)塩基性又は酸性エステル交換触媒の存在での、DE−A19602035、US5,037,978、EP−A799807に記載されている方法と同様の、又は、酵素触媒下での、EP−A999229に記載されている方法による、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸ないしC4〜C8−ジカルボン酸と式HO−(Alk−O)n−Y−Zのアルコールとのモノ−ないしジ−C1〜C4−アルキルエステルのエステル交換、
c)例えば、WO01/74736又は古典的な出願PCT/EP2005/009466に記載された方法と同様の、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸ないしC4〜C8−ジカルボン酸の無水物と式HO−(Alk−O)n−Y−Zのアルコールとの反応、その際、前記刊行物に記載された方法から逸脱して、塩基の添加を省略できる場合もある。
【0099】
モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸と式HNR−(Alk−O)n−Y−Zのアミンとのアミドの製造は、公知のアミド化反応と同様に、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸の、又はそのアミド形成性誘導体、例えば酸塩化物、酸無水物又はC1〜C4−アルキルエステルとアミンとのアミド化により行われてよい。
【0100】
エチレン系不飽和エーテル又はアミン、つまり、基A(但しk=0)を有するモノマーM1の製造は、式HO−(Alk−O)n−Y−Zのアルコールとエーテル化又はビニル化により、又は、式HNR−(Alk−O)n−Y−Zのアミンのアルケニル化又はエナミン形成により、従来技術の標準的方法と同様に行うことができる。
【0101】
ここで、モノマーM3は、モノマーM1に関して記載された方法と同様に製造することができる。特に、有利なモノマーM3は、モノエチレン系不飽和C4〜C8−ジカルボン酸の無水物と式HO−(Alk−O)n−Y−Zのアルコールとを、モノエステル形成へと導く条件下で反応させることにより製造される。
【0102】
本発明の有利な実施態様によれば、特に有利なモノマーM1の製造は、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸の無水物、特に無水アクリル酸又は無水メタクリル酸と式HO−(Alk−O)n−Y−Zのアルコールとの反応により行われる。前記方法は、従来技術から公知である方法と異なり、式HO−(Alk−O)n−Y−Zのアルコールを使用した場合に特に良好な収率をもたらす。
【0103】
この場合、無水物をアルコール1モルに対して等モルか又はわずかに過剰に、有利に10モル%、しばしば9.5モル%、有利に9モル%、特に8.5モル%、特に8モル%を上回らないように使用する、つまり、無水物の量が、アルコール1モル当たり典型的に最大で1.095モル、有利に1.09モルを超えない、特に1.085モルを超えない、特に1.08モルを超えないのが有利であることが判明した。アルコール1モル当たり有利に、少なくとも1.005モル、特に少なくとも1.01モル、特に有利に少なくとも1.02モルの無水物が使用される。
【0104】
本発明の実施態様において、特に窒素複素環Zが塩基性基である場合には、無水物とアルコールとの反応は塩基の不在で行われる。本発明の別の実施態様において、無水物とアルコールとの反応は塩基の存在で行われる。このうち、アルコール中で90℃で不溶性であるか又はわずかに可溶性であるに過ぎない塩基は有利であり、つまり、アルコール中での塩基の溶解度は90℃で10g/l以下、特に5g/l以下である。
【0105】
この種の塩基の例には、一価又は二価の金属カチオン、特に元素周期律表の第一及び第二主族の元素、つまりLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+の水酸化物、酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩、並びに一価又は二価の遷移金属カチオン、例えばAg+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Sn2+、Pb2+、Ce2+の水酸化物、酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩が挙げられる。アルカリ金属及びアルカリ土類金属のカチオンの水酸化物、酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩、並びにZn2+、特にMg2+又はCa2+、特に有利にNa+又はK+の水酸化物、酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩は有利である。これらのうち、前記金属イオンの水酸化物及び炭酸塩、特にアルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物、及び特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムは有利である。特に水酸化リチウム及び炭酸リチウムも適当である。塩基は有利に、アルコールに対して0.05〜0.5塩基当量の量で、特に0.1〜0.4塩基当量の量で使用され、その際、例えば1塩基当量までの多量の塩基は通常不利ではない。ここで、水酸化物及び炭酸水素塩の場合には塩基当量が使用されるモル当量に相応するのに対して、炭酸塩又は酸化物1モル当量はそれぞれ2塩基当量に相当することを考慮しなければならない。
【0106】
無水物とアルコールとの反応は、有利に0〜150℃の範囲内、特に20〜130℃の範囲内、特に有利に50〜100℃の範囲内の温度で行われる。反応の際に存在する圧力は、反応の実施にはあまり重要でなく、通常は800ミリバール〜2バールの範囲内であり、しばしば周囲圧力である。有利に、反応は不活性ガス雰囲気中で実施される。無水物と化合物Pとの反応は、この種の反応のために慣用の全ての装置中で、例えば撹拌釜、撹拌釜カスケード、オートクレーブ、管型反応器及び混練機中で実施することができる。
【0107】
有利に、無水物とアルコールとの反応は、使用されるアルコールの変換率が少なくとも80%、特に少なくとも90%、特に有利に少なくとも95%に達するまで実施される。このために必要な反応時間は通常5hを上回らず、しばしば4h未満である。変換率は、反応混合物の1H−NMR分光法により、有利に強酸、例えばトリフルオロ酢酸の存在で観察することができる。
【0108】
無水物とアルコールとの反応は、塊状で、つまり溶剤の添加なしに、又は不活性溶剤又は希釈剤中で実施することができる。不活性溶剤は通常非プロトン性化合物である。不活性溶剤には、場合によりハロゲン化された芳香族炭化水素、例えばトルエン、o−キシレン、p−キシレン、クメン、クロロベンゼン、エチルベンゼン、アルキル芳香族化合物の工業用混合物、脂肪族並びに脂環式炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、工業用脂肪族化合物混合物、更にケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、更にはエーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert.−ブチルメチルエーテル並びに上記溶剤の混合物、例えばトルエン/ヘキサンが挙げられる。有利に、溶剤なしか又は極めてわずかな溶剤量で、出発物質に対して通常少なくとも10質量%未満で、つまり塊状で作業される。
【0109】
無水物とアルコールとの反応が、0.2質量%未満、特に1000ppm未満(カール・フィッシャー滴定により測定)の水を含有する反応媒体中で実施される場合に有利であることが判明した。「反応媒体」という概念は、反応物と塩基並びに場合により使用される溶剤及び阻害剤との混合物に関連する。湿分を含有する出発材料の場合には、水を反応の前に例えば蒸留により、特に有利に水と共に低沸点の共沸混合物を形成する有機溶剤の使用下での蒸留により除去するのが有利であることが示された。この種の溶剤の例は、上記の芳香族溶剤、例えばトルエン、o−キシレン、p−キシレン、クメン、ベンゼン、クロロベンゼン、エチルベンゼン及び工業用芳香族化合物混合物、更に、脂肪族及び脂環式溶剤、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン並びに工業用脂肪族化合物混合物及び上記溶剤の混合物である。
【0110】
反応の際、通常は、アルコール、無水物及び塩基及び場合により溶剤及び場合により阻害剤を含有する反応混合物が適当な反応容器中で上記の温度で反応するように行われる。有利に、アルコール及び塩基並びに場合により溶剤が装入され、これに無水物が添加される。有利に、無水物の添加は反応温度で行われる。
【0111】
出発物質が水を含有する場合、水は有利に無水物の添加の前に除去される。例えば、アルコール及び場合により塩基並びに場合により溶剤を反応容器中に装入し、引き続き、場合により存在する湿分を上記方法で除去し、その後、無水物を有利に反応温度で添加するというように行うことができる。
【0112】
更に、制御されない重合を防止するためには、無水物とアルコールとの反応を重合阻害剤の存在で実施するのが有利であることが判明した。この種の反応のために公知である重合阻害剤、特にフェノール、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、特に立体障害フェノール、例えば2,6−ジ−tert.−ブチルフェノール又は2,6−ジ−tert.−ブチル−4−メチルフェノール、更に、トリアジン、例えばフェノチアジン又はメチレンブルー、Cer(III)塩、例えば酢酸Cer(III)並びにニトロキシド、特に立体障害ニトロキシド、つまり、ニトロキシド基に隣接するC原子上にそれぞれ3個のアルキル基を有する2級アミンのニトロキシド(その際、前記アルキル基、特に同一のC原子上には存在しないアルキル基が2つずつ、ニトロキシド基の窒素原子ないしこれに結合している炭素原子と一緒に飽和5員又は6員環を形成している)、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)又は4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(OH−TEMPO)、上記阻害剤の混合物、上記阻害剤と、例えば空気の形の酸素との混合物、及び上記阻害剤の混合物と例えば空気の形の酸素との混合物は適当である。有利な阻害剤は、上記の立体障害ニトロキシド、Cer(III)化合物及び立体障害フェノール及びその相互の混合物並びにこの種の阻害剤と酸素との混合物及び前記阻害剤の混合物と例えば空気の形の酸素との混合物である。少なくとも1種の立体障害ニトロキシド、及び、立体障害フェノール及びCer(III)化合物から選択されたもう1種の成分、並びに、例えば空気の形の酸素とのその混合物を含む阻害剤系は特に有利である。阻害剤の量は、無水物+アルコールの全量に対して2質量%までであってよい。阻害剤は無水物+アルコールの全量に対して有利に10ppm〜1000ppmの量で使用される。阻害剤混合物の場合、前記表示は成分の全量に関するが、但し酸素は除外される。
【0113】
アルコールとモノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸の無水物との反応は、もちろんまず第一に、使用されたモノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸のエステルと、場合により過剰の無水物及び反応しきらなかったアルコールの残分との混合物をもたらす。
【0114】
しかしながら、過剰の無水物は、無水物のもとの使用量の通常10質量%以下、特に5質量%以下である。場合により存在する無水物を、水との反応によって分解するのが有利であることが判明した。反応しきらなかったアルコールの含分は、使用されたアルコールの量の有利に10質量%以下、特に5質量%以下である。
【0115】
アルコールを反応の際に形成されたモノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸から分離するために、アルコールを原則的に蒸留により、又は他の方法で、例えば酸の抽出により除去することができる。エステルも例えば水性媒体からのエステルの晶出により単離することができ、その際、酸及び場合より存在する無水物は母液中に残存する。しかしながら通常はエステルの単離又は分離は行われない。むしろ、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸のエステルからの混合物を、場合により他のモノマーM2及び場合により他のエチレン系不飽和モノマーM3、M4及び/又はM5の添加下に、直接、ラジカル共重合させるのが有利である。
【0116】
同様に、方法a)によるエステル化により、又は方法b)によるエステル交換により製造されたモノマーM1ないしM3を、直接、つまり、事前の単離又は後精製なしに、引き続くモノマーMの重合において使用することもできる。
【0117】
モノマーMの重合を溶液重合として水中で実施する場合、多くの用途に関して、水の除去は不要である。その他の点では、本発明による得られるポリマーの単離は、慣用の方法で、例えば重合混合物の噴霧乾燥により実施することができる。重合が水蒸気揮発性溶剤又は溶剤混合物中で実施される場合、溶剤を水蒸気の導入により除去することができ、それによって、櫛形ポリマーの水溶液又は分散液が得られる。
【0118】
有利に、櫛形ポリマーは水性分散液又は水溶液の形で取得される。固体含分は有利に10〜80質量%、特に30〜65質量%である。
【0119】
本発明の他の実施態様は、製造法iii)により得られる櫛形ポリマーに関する。この場合、炭素骨格上に遊離カルボキシル基又はカルボキシル基のエステル形成性誘導体を有する炭素骨格を有するホモポリマー又はコポリマーと、式HO−(Alk−O)n−Y−Zのアルコール又は式HNR−(Alk−O)n−Y−Zのアミンとを、ポリマー類似反応の範囲内で反応させる。遊離カルボキシル基又はカルボキシル基のエステル形成性誘導体を有するホモポリマー又はコポリマーのポリマー類似反応法は、先行技術、例えばUS5,840,114、US5,728,207、WO98/31643及びWO01/72853の記載から公知である。前記刊行物に記載された方法を、同様に、本発明による櫛形ポリマーの製造に用いることができる。
【0120】
遊離カルボキシル基又は遊離カルボキシル基のエステル形成性誘導体、特に無水物基を有するポリマーとして、例えばモノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸及び/又はC4〜C8−ジカルボン酸ないしその無水物のホモポリマー及びコポリマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸のホモポリマー及びコポリマーが該当する。前記ポリマーは、他のモノマーM2、例えばスルホン酸基含有モノマー、例えばビニルスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、メタリルスルホン酸又はそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、また、モノマーM4及び/又はM5、例えばビニル芳香族モノマー又はオレフィンを重合導入により含有してよい。
【0121】
適当なカルボキシル基含有ポリマーは、特に以下ものもからなるコポリマーである。
【0122】
− 少なくとも1種のモノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸及び/又はC4〜C8−ジカルボン酸ないしその無水物、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸、又はその混合物5〜100質量%、特に50〜100質量%;
− モノエチレン系不飽和スルホン酸、例えばビニルスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、メタリルスルホン酸及び/又はそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩0〜95質量%、特に0〜50質量%、
− 及び、モノエチレン系不飽和C3〜C8−モノカルボン酸又はC4〜C8−ジカルボン酸の1種以上のエステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸のエステル、又は分子中に1〜8個のC原子を有する一価アルコールのマレイン酸エステル0〜95質量%、特に0〜50質量%。
【0123】
特に有利なカルボキシル基含有ポリマーは、アクリル酸及びメタクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メタクリル酸とビニルスルホン酸とからのコポリマー、アクリル酸とマレイン酸とからのコポリマー、メタクリル酸とマレイン酸とからのコポリマー、アクリル酸とモノエチレン系不飽和カルボン酸のエステルとからのコポリマー、メタクリル酸とモノエチレン系不飽和カルボン酸のエステルとからのコポリマー、並びに上記コポリマーのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩である。
【0124】
特に、上記分子量調節剤1種の存在での上記モノマーのラジカル重合により得られる、特に、重合の際に使用されるモノマーに対して少なくとも4質量%の、硫黄が+4の酸化数を有する水溶性硫黄化合物の存在での、水溶液中でのラジカル重合により得られる、カルボキシル基含有ポリマーは有利である。そのような水溶性硫黄化合物は、例えば二酸化硫黄、亜硫酸、亜硫酸又は二亜硫酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート、カリウムホルムアルデヒドスルホキシラート、カルシウムホルムアルデヒドスルホキシラート又はアンモニウムホルムアルデヒドスルホキシラート、ジアルキルスルフィット又はその混合物である。前記化合物のうち、特に、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム又は亜硫酸カルシウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、二亜硫酸カルシウム又は二亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウム又は亜硫酸水素アンモニウム又はその混合物が有利である。重合に関する更なる詳細に関しては、WO01/72853が参照される。
【0125】
前記ポリマーの分子量(数平均)は、典型的には500〜100000の範囲内、有利に1000〜50000の範囲内である。アクリル酸又はメタクリル酸のホモポリマー又はメタクリル酸とアクリル酸とからのコポリマーは特に有利である。
【0126】
酸基含有ポリマー(%表記は質量%を表す)の特定の例は以下のものである:
分子量2000を有するポリアクリル酸、
分子量4000を有するポリアクリル酸、
分子量8000を有するポリアクリル酸、
分子量20000を有するポリアクリル酸、
分子量70000を有するアクリル酸70%とマレイン酸30%とからのコポリマー、
分子量5000を有するアクリル酸50%とマレイン酸50%とからのコポリマー、
分子量5000を有するメタクリル酸70%とマレイン酸30%とからのコポリマー、
分子量10000を有するアクリル酸70%とメタクリル酸30%とからのコポリマー、
分子量10000を有するアクリル酸90%とビニルスルホン酸10%とからのコポリマー、
分子量6000を有するアクリル酸50%とメタクリル酸50%とからのコポリマー、
分子量5000を有するアクリル酸20%とメタクリル酸80%とからのコポリマー、
分子量4000を有するアクリル酸80%とメタクリル酸20%とからのコポリマー、
分子量5000を有するアクリル酸40%とメタクリル酸40%とマレイン酸20%とからのターポリマー。
【0127】
ここに記載した分子量は、それぞれ数平均分子量である。
【0128】
カルボキシル基含有ポリマーとアルコール又はアミンとの反応は、触媒の存在でか又は不在で行うことができる。触媒として、例えば強オキソ酸、例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、リン酸、亜リン酸又はハロゲン化水素酸、例えば塩酸が使用される。反応の際に触媒として作用する酸を使用する場合、量は、カルボキシル基含有ポリマー及びアルコールないしアミンの全量に対して10質量%まで、有利に5質量%までである。
【0129】
カルボキシル基含有ポリマー及びアルコールないしアミンが反応する質量比は99:1〜1:99であってよく、かつ有利に1:1〜5:95の範囲内、特に有利に3:7〜1:9の範囲内である。
【0130】
反応は、例えば、ポリマーの水溶液を場合により触媒として作用する酸及びアルコール又はアミンと混合し、水を留去するというように実施される。混合物からの水の蒸留は、たいてい雰囲気圧力下で行われるが、真空中で実施されてもよい。水及び他の揮発性分を迅速に除去するために、蒸留の間にガス流が反応混合物に導通される場合、しばしば有利である。ガス流として、空気、窒素又は水蒸気を使用することができる。しかしながら、水を減圧下で除去し、更にガス流を反応混合物に導通させることもできる。水を反応混合物から蒸留するために、混合物にエネルギーを供給しなければならない。このための適当な装置は、加熱可能な撹拌釜、外部にある熱交換器を有する撹拌釜、内部にある熱交換器を有する撹拌釜、薄膜式蒸発装置、混練機又は押出機である。蒸発する水は蒸気導管を介して反応媒体から排出され、熱交換器中で凝縮される。該蒸気はわずかな量の有機成分を含有するに過ぎず、水処理装置を介して廃棄処理することができる。
【0131】
引き続き、又は反応混合物からの水の除去と同時に、ポリマーとアルコールないしアミンとの間に縮合反応が生じる。この場合に生じる水は、同様に反応媒体から除去される。反応は例えば100〜250℃の範囲内の温度で実施される。この場合、温度は反応パートナー及び滞留時間に依存する。例えば、滞留時間がわずか数秒又は数分である連続運転式押出機又は薄膜式蒸発装置中で縮合される場合、有利に150℃〜250℃の温度を適用することができる。不連続運転式撹拌釜又は混練機中では例えば1〜15時間が必要であり、縮合はたいてい100〜200℃の温度範囲内で実施される。
【0132】
一つの方法変法において、まずカルボキシル基含有ポリマーを脱水し、この場合に得られる粉末又は顆粒をアルコール及び/又はアミンと縮合させることができる。
【0133】
縮合の後、反応混合物は冷却され、場合により水中に溶解される。反応混合物の水溶液は例えば、水をまだ温かい50〜150℃の反応材料に撹拌下に添加するか、又は50〜150℃の温度で液体の反応材料を水中に撹拌混合するというように製造される。通常は、櫛形ポリマーの20〜95質量%、有利に30〜50質量%水溶液が得られるような量の水が使用される。同時に、又は縮合生成物の溶解に引き続き、場合により、残存する酸基の中和が行われてよい。中和剤として、固形か又は10〜50質量%水溶液又は水中のスラリーの形のアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物又は水酸化物が使用される。適当な塩基の例は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムである。中和度に応じて、櫛形ポリマーの水溶液は1〜12の範囲内のpH値を有してよい。
【0134】
縮合の後に、反応材料は希釈されないままであってもよい。冷却の際に、この反応材料は通常、硬化してロウ状の物質となり、このロウ状の物質は容易に再度溶融し得る。これから、輸送のためのバリエーションが生じる。例えば、反応材料をバレル中に充填し、そこから縮合生成物を再度溶融させることができる。溶融状態で輸送及び貯蔵することもできる。しかしながら、水溶液を製造し、取り扱うこともできる。
【0135】
流動性の圧縮物を得るために、水不含の溶融物は不活性粉末と混合されてもよい。不活性粉末として、例えば珪藻土、シリカゲル、非晶質ケイ酸及び/又は非晶質二酸化ケイ素を使用することができる。
【0136】
セメントとは、例えばポルトランドセメント、アルミナセメント又は混合セメント、例えばポゾランセメント、スラグセメント又は別のタイプであると解釈することができる。特に、本発明による櫛形ポリマーは、セメント成分として、主に、及び特に、ポルトランドセメントをセメント成分に対して少なくとも80質量%を含むセメント混合物に適している。本発明による櫛形ポリマーは、このために通常、粉砕材料の全質量に対して0.001〜0.1質量%、有利に0.01〜0.05質量%の量で使用される。
【0137】
櫛形ポリマーは固形か又は水溶液としてセメント含有調製物に添加されてよい。有利に、櫛形ポリマーは液体の形で、つまり溶解された、乳化された、又は懸濁された形で、例えば重合溶液の形で粉砕材料に添加される。
【0138】
以下の実施例は本発明を明瞭にする。
【実施例】
【0139】
分析;
a)K値の測定:
コポリマーのナトリウム塩水溶液のK値をH. Fikentscher, Cellulose-Chemie, 第13巻, 58-64及び71-74(1932)の記載により、水溶液中で、pH値7、温度25℃、及びコポリマーのナトリウム塩のポリマー濃度1質量%で測定した。
【0140】
b)固体含量の測定:
Satorius社の分析機器MA30を用いて測定を行う。このために、アルミニウムシャーレ中に、所定量の試料(約0.5〜1g)を秤量し、恒量になるまで90℃で乾燥させる。固体含量(FG)のパーセンテージを以下のように算出する:FG=最終秤量×100/初期秤量[質量%]
c)分子量測定:
数平均及び重量平均分子量の測定を、水性溶離液を用いるゲル透過クロマトグラフィー(=GPC)によって行った。
【0141】
GPCをAgilent社の装置組合せ(シリーズ1100)を用いて実施した。該装置には以下ものが含まれる:
通気装置 型式G 1322 A
アイソクラティックポンプ 型式G 1310 A
オートサンプラー 型式G 1313 A
カラムオーブン 型式G 1316 A
制御モジュール 型式G 1323 B
示差屈折計 型式G 1362 A。
【0142】
水中に溶解されたポリマーの場合には、溶離液として、蒸留水+NaCl及びHClからなる塩化物イオン0.15モル/L中の0.08モル/Lトリス緩衝液(pH=7.0)を利用する。
【0143】
分離は分離カラムの組合せで行った。分離材料GRAL BIOリニアを有するPSS社のカラムNo.787及び788(各8×30mm)を使用する。流速は、23℃のカラム温度で0.8mL/分であった。
【0144】
校正を、M=194〜1700000[モル/g]の分子量を有するPSS社のポリエチレンオキシド標準を用いて行う。
【0145】
実施例1
撹拌機及び蒸留橋(Destillationsbruecke)が備えられた2L反応器中に、分子量1000のメチルポリエチレングリコール478g、メタクリル酸167g、p−トルエンスルホン酸6.5g及びフェノチアジン0.17gを装入した。混合物を窒素の導通下に120℃に2時間加温した。その後、水3.3gとメタクリル酸1.5gとからなる混合物を、真空中で120ミリバールで30分間留去した。その後、真空を窒素で完了した。混合物を窒素下で更に2時間撹拌した。引き続き、圧力を再度30分間100ミリバールに低減した。その後、水2.9gとメタクリル酸1.5gとからの混合物を留去した。真空を窒素で完了し、エステル化を撹拌下で更に2時間継続させた。圧力を再度100ミリバールに低減し、水0.2gとメタクリル酸0.2gとからの混合物を留去した。その後、真空を窒素で完了した。
【0146】
実施例2
実施例1と同様に行ったが、但し、噴霧乾燥されたポリマー粉末として使用した。
【0147】
粉砕助剤の試験
セメントクリンカーの粉砕の際のエネルギー供給に対する種々の添加剤の作用を分析した。
【0148】
このために、閉じられた循環路で運転し、かつ市販のポルトランドセメントを製造する、2つの粉砕チャンバを有する市販のチューブボールミルを試験した。そのようなチューブボールミルの技術的情報は、ZKG International (第53巻), No 10/2000, 第572頁、第1表に示されている。
【0149】
粉砕物体の充填度及びミルの通気は変化させなかった。
【0150】
試験すべき添加物それぞれ(粉砕材料に対して相対的に)0.02ないし0.06質量%を、市販のポルトランドセメントの製造のためのクリンカー材料上に噴霧し、4〜8時間粉砕した。種々の時間で試料を採取し、ブレーンによる対質量の表面積(cm2/g)を測定した。変性されていない試料と比較して、測定値「一定の粉砕時間ないし一定のエネルギー供給で得られた表面積」並びに「所定の表面積を生じさせるための粉砕時間ないしエネルギー供給」は、エネルギー節約に比例した測定値である。
【0151】
【表1】

【0152】
【表2】

【0153】
結果は、本発明による粉砕助剤の添加によりエネルギーコストが低減されることを示す。得られた全てのセメントの水必要量をDIN196−3に従って測定したところ、実施例1及び2の存在で得られたセメントが著しくより低い水必要量を有するため、低い加工粘度を有するモルタル及びコンクリートの製造に抜群に適していることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント含有調製物における粉砕助剤としての、式A
*−U−(C(O))k−X−(Alk−O)n−W A
[式中、
*は櫛形ポリマーの炭素骨格上の結合位置を示し、
Uは化学結合又は1〜8個のC原子を有するアルキレン基を表し、
Xは酸素又は基NRを表し、
kは0又は1であり、
nはその平均値が櫛形ポリマーに対して5〜300の範囲内である整数を表し、
AlkはC2〜C4−アルキレンを表し、その際、Alkは基(Alk−O)nの中で同じか又は異なっていてよく、
Wは水素、C1〜C6−アルキル基又はアリール基を表すか、又は基Y−Zを表し、その際、
Yはフェニル環を有してよい2〜8個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキレン基を表し、
Zは窒素を介して結合した5員〜10員の窒素複素環を表し、該窒素複素環は、環員として、窒素原子及び炭素原子の他に、酸素、窒素及び硫黄から選択された1、2又は3個の付加的なヘテロ原子を有してよく、その際、窒素環員は基R’を有してよく、その際、1又は2個の炭素環員がカルボニル基として存在していてよく、
Rは水素、C1〜C4−アルキル又はベンジルを表し、かつ
R’は水素、C1〜C4−アルキル又はベンジルを表す]
のポリエーテル基
並びに、pH>12でアニオン性基の形で存在する官能基B
を有する炭素骨格を有する櫛形ポリマー及びその塩の使用。
【請求項2】
基(Alk−O)n中の単位Alk−Oの平均で少なくとも50モル%がCH2−CH2−Oを表す、請求項1記載の使用。
【請求項3】
粉砕材料に対して0.001〜0.1質量%の粉砕助剤を使用する、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
セメント含有調製物において、式A
*−U−(C(O))k−X−(Alk−O)n−W A
[式中、
*は櫛形ポリマーの炭素骨格上の結合位置を示し、
Uは化学結合又は1〜8個のC原子を有するアルキレン基を表し、
Xは酸素又は基NRを表し、
kは0又は1であり、
nはその平均値が櫛形ポリマーに対して5〜300の範囲内である整数を表し、
AlkはC2〜C4−アルキレンを表し、その際、Alkは基(Alk−O)nの中で同じか又は異なっていてよく、
Wは水素、C1〜C6−アルキル基又はアリール基を表すか、又は基Y−Zを表し、その際、
Yはフェニル環を有してよい2〜8個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキレン基を表し、
Zは窒素を介して結合した5員〜10員の窒素複素環を表し、該窒素複素環は、環員として、窒素原子及び炭素原子の他に、酸素、窒素及び硫黄から選択された1、2又は3個の付加的なヘテロ原子を有してよく、その際、窒素環員は基R’を有してよく、その際、1又は2個の炭素環員がカルボニル基として存在していてよく、
Rは水素、C1〜C4−アルキル又はベンジルを表し、かつ
R’は水素、C1〜C4−アルキル又はベンジルを表す]
のポリエーテル基
並びに、pH>12でアニオン性基の形で存在する官能基B
を有する炭素骨格を有する櫛形ポリマー並びにその塩を含有することを特徴とするセメント含有調製物。
【請求項5】
低い加工粘度を有するモルタル及びコンクリートの製造のための、請求項4記載のセメント含有調製物の使用。

【公表番号】特表2009−517318(P2009−517318A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542733(P2008−542733)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068834
【国際公開番号】WO2007/063030
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】