説明

セメント焼成用バーナ

【課題】可燃性廃棄物を効率的に燃焼させることができるセメント焼成用バーナを提供する。
【解決手段】主燃料を供給する主バーナ10と、主バーナ10の鉛直上方に設けられ、可燃性廃棄物を供給する廃棄物バーナ11とを有するセメント焼成用バーナ1であって、廃棄物バーナ11の先端部11aの径方向断面において、水平方向に最も離間した2点L1,L2間の水平方向距離をx、鉛直方向に最も離間した2点H1,H2間の鉛直方向距離をyとすると、x>yであることで、可燃性廃棄物が水平方向に広がって供給され効率的に燃焼させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントを焼成するバーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント焼成用バーナとして、セメントクリンカを焼成するセメントロータリーキルンに採用されるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載のセメント焼成用バーナは、ロータリーキルン内に挿入され微粉炭を供給する主バーナと、廃プラスチック材料の可燃性廃棄物を供給する供給ノズルとを備えている。供給ノズルは、先端からの長さが5m以上の直管部を有している。直管部から供給された可燃性廃棄物はロータリーキルン内の被焼成物の上に落下した状態で燃焼する(着地燃焼)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3586575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載のセメントロータリーキルンにあっては、廃プラスチック材料の着地燃焼する領域によっては廃プラスチック材料がセメント焼成に悪影響を与えるおそれがある。このような課題を解決するために、可燃性廃棄物が着地する前に空中で燃焼させることが考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、可燃性廃棄物を効率的に燃焼させることができるセメント焼成用バーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係るセメント焼成用バーナは、主燃料を供給する主バーナと、前記主バーナの鉛直上方に設けられ、可燃性廃棄物を供給する廃棄物バーナとを有するセメント焼成用バーナであって、前記廃棄物バーナの先端部の径方向断面において、水平方向に最も離間した2点L1,L2間の水平方向距離をx、鉛直方向に最も離間した2点H1,H2間の鉛直方向距離をyとすると、x>yであることを特徴として構成される。
【0007】
本発明に係るセメント焼成用バーナによれば、廃棄物バーナの先端部の径方向断面において、水平方向に最も離間した2点間の水平方向距離が鉛直方向に最も離間した2点間の鉛直方向距離よりも大きくされているため、径方向断面形状を円形とする場合に比べて可燃性廃棄物が水平方向に広がって供給される。このように、主バーナの火炎と可燃性廃棄物との接触面積を拡大することにより、可燃性廃棄物を効率的に燃焼させることができる。
【0008】
ここで、前記廃棄物バーナは、前記先端部及び前記先端部に接続する円管部から形成され、前記可燃性廃棄物は、前記円管部、前記先端部の順に前記廃棄物バーナ内を通過するように構成してもよい。このように構成することで、溶接時又は熱膨張時の応力集中を低減させた廃棄物バーナを簡易に実現することができる。
【0009】
また、前記先端部における径方向断面の形状が矩形であることが好適である。このように構成することで、水平方向に最も離間した2点間の水平方向距離が鉛直方向に最も離間した2点間の鉛直方向距離よりも大きくした断面形状を簡易に実現することができる。
【0010】
また、前記廃棄物バーナの径方向断面が、前記廃棄物バーナの先端部において拡幅することが好適である。このように構成することで、可燃性廃棄物を水平方向に一層広げて供給することが可能となり、主バーナの火炎と可燃性廃棄物との接触面積をより拡大することができる。
【0011】
また、前記廃棄物バーナの中心軸が、前記廃棄物バーナの先端部において鉛直下方側に向かって傾斜することが好適である。このように構成することで、可燃性廃棄物が主バーナの火炎側に向けて効率良く供給されるため、可燃性廃棄物を効率的に燃焼させることができる。
【0012】
さらに、前記廃棄物バーナの鉛直上方に設けられ、他の燃料を供給する他燃料バーナを備えることが好適である。このように構成することで、主バーナの火炎と他燃料バーナの火炎とで可燃性廃棄物を挟み込んで可燃性廃棄物の燃焼のばらつきを抑制することができる。よって、可燃性廃棄物を効率的に燃焼させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可燃性廃棄物を効率的に燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係るセメント焼成用バーナを用いた装置の構成を示す概要図である。
【図2】図1のセメント焼成用バーナの一部拡大断面図及び正面図である。
【図3】図1中の廃棄物バーナの斜視図である。
【図4】図1中の廃棄物バーナの側面図及び先端部の正面図である。
【図5】図1中の廃棄物バーナにおける先端開口部の他の例を示す正面図である。
【図6】図1中の廃棄物バーナの他の例を示す側面図及び正面図である。
【図7】図1のセメント焼成用バーナの作用効果を説明する概要図である。
【図8】第2実施形態に係るセメント焼成用バーナの一部拡大断面図及び正面図である。
【図9】図8のセメント焼成用バーナの作用効果を説明する概要図である。
【図10】セメント焼成用バーナの変形例における一部拡大断面図及び正面図である。
【図11】図10中の廃棄物バーナの側面図及び正面図である。
【図12】セメント焼成用バーナの変形例における一部拡大断面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るセメント焼成用バーナを用いた装置の構成を示す概要図である。図1に示す装置は、セメント製造装置の一部であり、クリンカ焼成工程で用いられるものである。
【0017】
図1に示すように、クリンカ焼成工程に採用される装置は、略円柱状の回転窯であるロータリーキルン3を備えている。ロータリーキルン3は、セメント原料を焼成しクリンカを生成する。ロータリーキルン3は、窯尻(入口)から窯前(出口)へセメント原料が移動するように傾斜配置されている。ロータリーキルン3の窯尻側には、セメント原料を予備的に加熱するサイクロンを有する予熱部4及びセメント原料を仮焼する仮焼炉5が接続されており、予熱及び仮焼されたセメント原料がロータリーキルン3内部に供給される。キルン内部に供給されたセメント原料は、仮焼されながらロータリーキルン3の回転に応じて窯前側へ移動し、焼成されたクリンカとして排出される。排出されたクリンカは、ロータリーキルン3の窯前側に設けられた冷却部6により冷却される。
【0018】
ここで、ロータリーキルン3の窯前側には、炉外からロータリーキルン3内部(炉内)へセメント焼成用バーナ1が挿入されて配置されている。図2の(A)は、セメント焼成用バーナ1の一部拡大断面図であり、図2の(B)は、セメント焼成用バーナ1の正面図である。図2に示すように、セメント焼成用バーナ1は、炉壁20を貫通して炉内へ挿入されている。セメント焼成用バーナ1は、主燃料を供給する主バーナ10及び可燃性廃棄物を供給する廃棄物バーナ11を備えている。
【0019】
廃棄物バーナ11は、主バーナ10の鉛直上方に配置されている。図3は、廃棄物バーナ11の斜視図、図4の(A)は、廃棄物バーナ11の側面図、図4の(B)は、廃棄物バーナ11における先端部11aの正面図である。図3,4に示すように、廃棄物バーナ11は、先端部11a及び先端部11aに接続する円管部11bから形成されている。廃棄物バーナ11の先端部11aにおける先端開口部11dは矩形形状とされており、図4の(B)に示すように、水平方向に最も離間した2点L1,L2間の水平方向距離をx、鉛直方向に最も離間した2点H1,H2間の鉛直方向距離をyとすると、x>yの関係を満たす形状とされている。図5に、上記関係を満たす形状の他の例を示す。図5の(A)〜(E)に示すように、先端開口部11dの形状は矩形に限られずx>yの関係を満たす形状であればなんでもよい。
【0020】
また、図4の(B)では、先端開口部11dの垂直方向の一端部の位置が円管部11bの垂直方向の一端部の位置と一致するように配置されているが、これに限られるものではない。図6の(A)は、廃棄物バーナ11の側面図、図6の(B)は、廃棄物バーナ11における先端部11aの正面図である。図6に示すように、先端開口部11dの断面重心が円管部11bの断面中心と一致するように配置されていてもよい。また、図4,6中では先端開口部11dの長手方向が水平方向と完全に平行とし、水平方向距離x及び鉛直方向距離yが各辺上それぞれの位置で同一距離となる場合を示しているが、上記関係を満たす範囲で先端開口部11dを回転させてもよい。
【0021】
可燃性廃棄物は、円管部11b、先端部11aの順に廃棄物バーナ内を通過する。可燃性廃棄物としては、例えば廃プラスチック等が用いられる。
【0022】
主バーナ10及び廃棄物バーナ11は、その表面が耐火物12によって覆われており、耐火物12と一体的に形成されている。例えば、主バーナ10及び廃棄物バーナ11と耐火物12とはスタッド溶接によって互いに固定されて形成されている。また、主バーナ10及び廃棄物バーナ11は、炉外に配置された図示しない支持部により鉛直荷重が支持されている。
【0023】
次に、第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1の作用効果について説明する。図7では、径方向の断面形状が異なる廃棄物バーナの一例を示している。図7の(A)は、先端開口部100dが円形の廃棄物バーナ100、図7の(B)は、先端開口部11dが水平方向を長辺とする矩形の廃棄物バーナ11を示している。図7の(A)に示すように、先端開口部100dの断面形状が円形の廃棄物バーナ100の場合には、同一断面積を有する矩形の断面形状の場合と比べ、廃棄物バーナ100内壁の形状に沿って廃プラスチックPが鉛直方向下側に寄せられるため、廃プラスチックPの出射領域が狭くなることから、水平方向に十分に拡散することが困難となる。このため、先端開口部100dの断面形状が円形の廃棄物バーナ100の場合には、同一断面積を有する矩形の断面形状の場合と比べ、廃プラスチックPと主バーナ10の火炎との接触面積が小さくなる。従って、廃棄物バーナ100にあっては、ロータリーキルン3の空間内で完全に燃焼せずにロータリーキルン3の下側に着地して燃え続け(着地燃焼)、セメント焼成に悪影響を与えるおそれがある。さらに、廃プラスチックにカーボン繊維等の難燃性材料が混入している場合には、このような着地燃焼が一層生じるおそれがある。このため、先端開口部100dの断面形状が円形の廃棄物バーナ100の場合には、供給される廃プラスチックの種類や量を制限する必要がある。
【0024】
これに対して、図7の(B)に示すように、第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1においては、廃棄物バーナ11の先端開口部11dの水平方向距離xが先端開口部11dの鉛直方向距離yよりも大きくなるように形成されているため、廃プラスチックPが廃棄物バーナ11内部において水平方向に広がり、拡散されて供給される。廃プラスチックPが水平方向に拡散することで、廃プラスチックPと主バーナ10の火炎との接触面積が大きくなる。このため、廃プラスチックPの燃焼速度が向上する。従って、廃プラスチックPを効率的に燃焼させることができる。また、廃プラスチックPの燃焼速度が向上することで、多種多量の廃プラスチックPを可燃性廃棄物として採用することができる。
【0025】
また、主バーナ10の火炎の上部領域は、残存酸素や余剰酸素が多い上に、火炎による温度が最も高く乱流が形成されている。さらに、排熱回収流路を備える場合には、ロータリーキルン3の窯前側に接続されるため、主バーナ10の火炎の上部領域は多量の空気が導入されることになる。また、この領域は主バーナ10の火炎に近接しており高温領域である。このため、主バーナ10の火炎の上部領域は、他燃料の燃焼空間として最適な領域である。第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1によれば、主バーナ10の上方に廃棄物バーナ11を配置して、最も燃焼に適した領域である主バーナ10の火炎の上部領域へ廃プラスチックPを水平方向に拡散させて供給することが可能となり、廃プラスチックPの燃焼を促進させることができる。
【0026】
さらに、先端開口部11dにおける水平、鉛直2方向間の距離x、yの関係はx>yであるため、先端部11aの断面形状は円管ではない。バーナは円管のほうが熱変形に強く、また製造も容易である。一方、バーナが円管でない場合は加工が煩雑であるとともに、矩形、三角形等頂点を有する断面形状の場合、熱膨張に伴って頂点に応力集中が発生し、破損のおそれがある。とりわけ平板を折り曲げて断面形状を矩形、三角形とする場合、折り曲げられた平板の端部同士を溶接によって接続することにより矩形、三角形の管となるが、熱膨張によって溶接部分に悪影響を与えるおそれが大きい。したがって、鋳物や削り出し部品等の一体物で矩形等の先端部11aを形成し、円管部11bと鋳物等で形成された先端部11aを接続することにより、平板を折り曲げて廃棄物バーナ断面全体を矩形、三角形等とする場合に生じる溶接箇所の応力集中の問題を回避することができる。なお、円管部11bと一体物の先端部11aは溶接により接続されるが、円管部11bおよび先端部11a全周にわたって溶接されるため、溶接箇所にかかる熱変形も全周にわたって作用し、応力集中を回避することができる。
【0027】
[第1実施形態の効果]
(1)主燃料を供給する主バーナと、主バーナの鉛直上方に設けられ、可燃性廃棄物を供給する廃棄物バーナとを有するセメント焼成用バーナであって、廃棄物バーナの先端部の径方向断面において、水平方向に最も離間した2点間の水平方向距離が鉛直方向に最も離間した2点間の鉛直方向距離よりも大きいこととした。廃棄物バーナの先端を上記の形状とすることで、円形(同一断面積のとき)の場合と比べて廃棄物を分散して供給し、主バーナの火炎と廃プラとの接触面積を拡大して廃プラスチックを効率的に燃焼させることができる。
(2)廃棄物バーナにおける先端部の径方向断面の形状を矩形とした。これにより、簡易な構成で上記(1)の形状を得ることができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。図8は、セメント焼成用バーナの一部拡大断面図及び正面図である。図8に示すセメント焼成用バーナ2は、第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1とほぼ同様に構成されており、他燃料を供給するバーナを備える点が相違する。以下では、説明理解の容易性を考慮して、セメント焼成用バーナ1と重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0029】
図8に示すように、セメント焼成用バーナ2は、廃棄物バーナ11の鉛直上方に配置され主燃料とは異なる他燃料を供給する他燃料バーナ40を備えている。他燃料バーナ40は、耐火物12に形成された貫通孔12aに挿入され、主バーナ10の表面を覆う耐火物12上に載置されている。このため、他燃料バーナ40の鉛直荷重は、炉外に配置された図示しない他燃料バーナ支持部、主バーナ10及び廃棄物バーナ11により受け止められている。また、耐火物12の貫通孔12aの内径は、他燃料バーナ40の外径よりも大きく形成されている。例えば、耐火物12の貫通孔12aの内径は、他燃料バーナ40の外径よりも5〜10mm大きく形成されている。このため、他燃料バーナ40は、耐火物12と互いに固定されていない状態で耐火物12内に配置されている。従って、他燃料バーナ40は、主バーナ10と互いに固定されることなく軸方向に対して相対移動可能とされている。なお、他燃料バーナ40により供給される他燃料としては、例えば肉骨粉等、廃棄物バーナ11から供給される可燃性廃棄物よりも燃焼性の良好な燃料が用いられる。その他の構成は、第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1と同様である。
【0030】
以上、第2実施形態に係るセメント焼成用バーナ2では、廃棄物バーナ11の上下を、可燃性廃棄物よりも燃焼速度の速い燃料を用いた主バーナ10及び他燃料バーナ40で挟み込んだ構成としている。図9は、セメント焼成用バーナ2の作用効果を説明する概要図である。図中では、簡略化のため、各バーナの配置のみを表示している。また、廃棄物バーナ11からは廃プラスチックが供給され、主バーナ10からは廃プラスチックよりも燃焼速度の速い微粉炭、他燃料バーナ40からは廃プラスチックよりも燃焼速度の速い肉骨粉が供給されているものとする。
【0031】
図9に示すように、3つのバーナのうち最下部に位置する主バーナ10から供給された微粉炭、及び最上部に位置する他燃料バーナ40から供給された肉骨粉の燃焼タイミングは、中間部に位置する廃棄物バーナ11から供給された廃プラスチックの燃焼タイミングよりも相対的に早い。このため、廃プラスチックは、主バーナ10及び他燃料バーナ40の火炎によって上下から同時に高温で加熱されるため、主バーナ10及び廃棄物バーナ11のみでセメント焼成用バーナを構成する場合に比べて迅速に廃プラスチックを燃焼することができる。
【0032】
ところで、主バーナ10及び廃棄物バーナ11のみでセメント焼成用バーナを構成する場合には、廃プラスチックが下側から加熱されるため、上側の廃プラスチックの燃焼が遅れるおそれがある。また、廃プラスチックは破砕されたものが採用されるが、大きさにばらつきがあるため、燃焼にばらつきが生じるおそれがある。さらに、廃プラスチックにカーボン繊維等の難燃性材料が混入している場合には、燃焼のばらつきが一層生じるおそれがある。このように、廃プラスチックの燃焼性にばらつきが存在する場合には、供給された廃プラスチックは、ロータリーキルン3の空間内で完全に燃焼せずにロータリーキルン3の下側に着地して燃え続け(着地燃焼)、セメント焼成に悪影響を与えるおそれがある。このため、主バーナ10及び廃棄物バーナ11のみでセメント焼成用バーナを構成する場合には、供給される廃プラスチックの種類や量を制限する必要がある。
【0033】
これに対して、第2実施形態に係るセメント焼成用バーナ2によれば、廃プラスチックは、主バーナ10及び他燃料バーナ40の火炎によって上下から同時に高温で加熱されるため、上側の廃プラスチックの燃焼遅れを改善することができる。また、上下で加熱することにより廃プラスチックの燃焼性が向上し、ロータリーキルン3の下側における着地燃焼を低減させることが可能となるとともに、多種多量の廃プラスチックを可燃性廃棄物として採用することができる。
【0034】
また、第2実施形態に係るセメント焼成用バーナ2では、他燃料バーナ40が、独立した支持部によって支持されつつ主バーナ10及び廃棄物バーナ11と軸方向に対して相対移動可能に設けられている。このため、実操業中に、主バーナ10及び廃棄物バーナ11と他燃料バーナ40との間に、熱膨張量の差異がある場合であっても、他燃料バーナ40が耐火物12の貫通孔12a内部を鞘内部のように機能させてスライドすることが可能となる。このため、耐火物12の破損を抑制し、又は、他燃料バーナ40の配置ズレや変形を抑制することができる。よって、バーナ間に生じる熱応力の影響を低減することが可能となる。さらに、他燃料バーナ40の耐久性を向上させることができるとともに、簡易な構成で他燃料バーナ40を支持可能とし、経済性にも優れた構成とすることができる。
【0035】
[第2実施形態の効果]
(3)廃棄物バーナの鉛直上方に設けられ、他の燃料を供給する他燃料バーナを備えることとした。これにより、廃プラスチックを上下から同時に高温で加熱し、上側の廃プラスチックの燃焼遅れを改善し均一性に優れた燃焼を実現することができる。また、廃プラスチックの燃焼性が向上するため、ロータリーキルン3の下側における着地燃焼を低減させることが可能となるとともに、多種多量の廃プラスチックを可燃性廃棄物として採用することができる。
【0036】
なお、上述した実施形態は、本発明に係るセメント焼成用バーナの一例を示すものである。本発明に係るセメント焼成用バーナは、各実施形態に係るセメント焼成用バーナに限られるものではなく、各実施形態に係るセメント焼成用バーナを変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。また、第2実施形態では他の燃料として肉骨粉を用いたが、廃プラスチックよりも燃焼速度の速い燃料であれば他のものでもよい。
【0037】
(変形例1)
例えば、上述した第1実施形態では、廃棄物バーナ11において先端部11aの断面と先端部11aに接続する円管部11bの断面との関係は特に限定されていないが、先端部11aの断面が先端部11aに接続する円管部11bの断面と同一又はそれよりも大きく設けられる場合であってもよい。図10は、セメント焼成用バーナ1の変形例を示している。図11の(A)は、図10中の廃棄物バーナ11の側面図、図11の(B)は、図10中の廃棄物バーナ11の正面図である。なお、後述する変形例においては、説明理解の容易性を考慮して、第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1と重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0038】
図10,11に示すように、主バーナ10の鉛直上方に配置された廃棄物バーナ11は、径方向断面形状が円形の円管部11bと、径方向断面形状が矩形の先端部11aとを接合部11cで接合して形成されている。先端部11a側の径方向断面は、円管部11bの径方向断面積と同一かそれより大きく設けられている。すなわち、廃棄物バーナ11は、その先端部11a側において鉛直方向および水平方向に拡幅されている。このため、廃プラスチックPを水平方向へ一層拡散して供給することが可能となり、廃プラスチックを一層迅速に燃焼させることができる。なお、径方向断面形状の矩形形状が長い場合には、仕切り板を内部に入れて断面を均一な量の廃プラスチックPが流れるようにしてもよい。また、図10、図11の先端部11aは鉛直方向および水平方向ともに拡幅することとしたが、水平方向のみを拡幅するものであってもよい。
【0039】
[変形例1の効果]
(4)廃棄物バーナの径方向断面は、先端部において拡幅することとした。径方向断面を水平方向に拡幅させることで、主バーナと廃プラスチックとの接触面積をさらに増大させることができる。また、廃棄物バーナ11の断面が先端部11aに向けて大きくなるように構成することで廃プラスチックの供給速度を下げることができる。反対に、廃棄物バーナ11の断面が先端部11aに向けて小さくなるように構成することで廃プラスチックの供給速度を上げることができる。このように、先端部11aの加工の仕方に応じて、廃プラスチックの供給速度を変更することができる。
【0040】
(変形例2)
また、上述した第1実施形態では、廃棄物バーナ11の中心軸が後端部側から先端部11a側へ向けてまっすぐに延びる例を説明したが、これに限られるものではない。図12は、セメント焼成用バーナ1が、屈折した廃棄物バーナ11を備える変形例を示している。なお、後述する変形例においては、説明理解の容易性を考慮して、第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1と重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0041】
図12に示すように、主バーナ10の鉛直上方に配置された廃棄物バーナ11は、径方向断面形状が矩形とされており、先端部11aと後端部11eとの間に屈曲部11gを備えている。廃棄物バーナ11の中心軸は、後端部11eから屈曲部11gまでは略水平とされ、屈曲部11gから先端部11aまでは鉛直下方に傾いている。すなわち、廃棄物バーナ11の先端部11aは、鉛直下方に向かって傾斜されている。このため、廃棄物バーナ11の先端開口部11dから供給された廃プラスチックPは、主バーナ10の火炎の上部領域へ向けて供給されることになる。これにより、廃プラスチックPを水平方向へ拡散させつつ、燃焼する空間として最適な箇所に廃プラスチックPを供給することが可能となり、廃プラスチックを一層迅速に燃焼させることができる。
【0042】
[変形例2の効果]
(5)廃棄物バーナの中心軸は、先端部において鉛直下方側に向かって傾斜することとした。これにより、廃棄物を主バーナの火炎に効率よく供給し、廃棄物の燃焼を促進することができる。
【0043】
さらに、上述した変形例に係る廃棄物バーナ11を第2実施形態に係るセメント焼成用バーナ1に適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,2…セメント焼成用バーナ、10…主バーナ、11…廃棄物バーナ、11a…先端部、12…耐火物、40…他燃料バーナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主燃料を供給する主バーナと、前記主バーナの鉛直上方に設けられ、可燃性廃棄物を供給する廃棄物バーナとを有するセメント焼成用バーナであって、
前記廃棄物バーナの先端部の径方向断面において、水平方向に最も離間した2点L1,L2間の水平方向距離をx、鉛直方向に最も離間した2点H1,H2間の鉛直方向距離をyとすると、x>yであること
を特徴とするセメント焼成用バーナ。
【請求項2】
前記廃棄物バーナは、前記先端部及び前記先端部に接続する円管部から形成され、
前記可燃性廃棄物は、前記円管部、前記先端部の順に前記廃棄物バーナ内を通過する請求項1に記載のセメント焼成用バーナ。
【請求項3】
前記先端部における径方向断面の形状が矩形である請求項1又は2に記載のセメント焼成用バーナ。
【請求項4】
前記廃棄物バーナの径方向断面が、前記廃棄物バーナの先端部において拡幅する請求項1〜3の何れか一項に記載のセメント焼成用バーナ。
【請求項5】
前記廃棄物バーナの中心軸が、前記廃棄物バーナの先端部において鉛直下方側に向かって傾斜する請求項1〜4の何れか一項に記載のセメント焼成用バーナ。
【請求項6】
前記廃棄物バーナの鉛直上方に設けられ、他の燃料を供給する他燃料バーナを備える請求項1〜5の何れか一項に記載のセメント焼成用バーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−202618(P2012−202618A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67767(P2011−67767)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】