説明

セメント系組成物用混和剤及びこれを含むセメント系組成物

【課題】(A)式(1)
【化1】


(R、R’はアルキル基を示し、yは上記アルキル基Rの数が1分子中のケイ素原子に直結する全置換基数の5〜50モル%となるための正数、zは0〜5、かつ3≦x+y+z≦300)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)式(2)及び/又は(3)
P−O−(C24O)a(C36O)b−SO3Na (2)
P−O−(C24O)a(C36O)b−SO3-・NH4+ (3)
(Pはアルキル基又はアルキルフェニル基、aは1〜15の正数、bは0〜15)
で表されるアニオン系界面活性剤、及び
(C)水
からなるオルガノポリシロキサンエマルジョンを有効成分とするセメント系組成物用混和剤。
【解決手段】本発明の混和剤によれば、常温養生によるセメントペースト、モルタルやコンクリート硬化体の耐久性を低下させることなく、特に撥水性を大幅に向上することができ、しかも当該特性を安定かつ均一に発現させることが容易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築材料として有用な常温養生に適したセメント系組成物用の混和剤、特に、セメントペースト、モルタルやコンクリートに要求される強度、撥水性に優れ、吸水防止、塩分浸透抑制、エフロ防止等の耐久性が良好なセメントペースト、モルタル又はコンクリート硬化体を得るための混和剤及び該混和剤を用いたセメント系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石灰質原料、即ちCaO単位を主成分として含有するもの(例えば、生石灰、石灰石、消石灰、セメント及び炭酸カルシウム等)と珪酸質原料、即ちSiO2単位を主成分として含有するもの(例えば、シリカ、砂、ケイ石、高炉スラグ、フライアッシュ等)を主要成分とする広義のセメント構造体の中には、発泡させ、低比重化した軽量気泡コンクリートと、砕石等を骨材として使用し、高強度を必要とする常温養生型のモルタルやコンクリート組成物とがある。
【0003】
軽量気泡コンクリートにおいては、その撥水性向上を目的として、各種のオルガノポリシロキサンを添加することが従来から提案されている。
例えば、ジメチルポリシロキサン、アミノ基含有ポリシロキサン、ポリエーテル含有ポリシロキサン、アルキル基含有ポリシロキサン、エポキシ基含有ポリシロキサン、フッ素含有ポリシロキサン、α−メチルスチレン含有ポリシロキサン及びアルコール変性ポリシロキサンを添加する方法(例えば、特許文献1:特開昭55−42272号公報参照)、メチルフェニルポリシロキサン及びクロルフェニルメチルポリシロキサンを添加する方法(例えば、特許文献2:特開昭55−85452号公報参照)、メチルシリコーンワニス、フェニルメチルシリコーンワニス及びこれらと他の有機モノマーやポリマーとをブレンド又は共重合させたもの、アルキッド、エポキシ又はアクリル樹脂等で変性した変性シリコーンワニスを添加する方法(例えば、特許文献3:特開昭55−90460号公報参照)、スラリーへの分散向上のため、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン又はメチルカルボキシル変性ポリシロキサンをアニオン系界面活性剤で乳化し添加する方法(例えば、特許文献4:特開昭57−123851号公報参照)、アルコキシ基含有シロキサンを添加する方法(例えば、特許文献5:特公平1−44673号公報参照)、アルキル基含有シロキサンを添加する方法(例えば、特許文献6:特公平1−58148号公報参照)、アルキル基及びアルコキシ基含有ポリシロキサンを添加する方法(例えば、特許文献7:特開平8−26811号公報参照)が提案されている。
【0004】
これら、比較的強度を必要としない軽量気泡コンクリートの場合には、各種オルガノポリシロキサンの内添により撥水性の改善がなされているが、発泡剤を使用せず、粗骨材として硬質砂岩砕石等を使用する常温養生型のモルタルやコンクリートにおいては、オルガノポリシロキサンを撥水剤として内添することにより撥水性は向上するものの、内添撥水剤が石灰質原料と珪酸質原料等の原料間の水素結合を阻害することから、モルタルやコンクリートの最も重要な特徴である強度が低下するため使用されておらず、専ら成形硬化後、表面に撥水剤を塗布する方法(例えば、特許文献8:特開昭62−95498号公報、特許文献9:特開平1−72817号公報、特許文献10:特開平4−114979号公報参照)が採られていた。
【0005】
しかし、この方法では塗布工程が必要になり、また、塗布液のロスの点から経済的ではなく、更に、撥水剤の揮発による環境などへの影響からも好ましくない。一方、最近、冷暖房の普及によりコンクリート内部と表面温度との温度差が上下する環境が増え、そのためひび割れ等を起こすケースが増えている。このため、コンクリート表面に生ずるひび割れは構造上の問題となり、また、耐久性の低下に影響を及ぼすことに加え、美観上においても好ましくなく、改善が望まれていた。
【0006】
以上のような問題点を解消する上で、強度低下の起こりにくい常温養生型のモルタルやコンクリート組成物の内添型添加剤としてアルキルアルコキシ共変性ポリシロキサンが提案されている(例えば、特許文献11:特開2005−22913号公報参照)。しかしながら、ポリシロキサンを直接添加した場合は均一に分散せず、安定した特性を得ることは容易でない。使用に際してポリシロキサンをエマルジョン化して添加できれば分散も容易になり、安定した特性が得られる可能性があるものの、具体的なエマルジョン化の方法や乳化組成等については開示されていない。
【0007】
【特許文献1】特開昭55−42272号公報
【特許文献2】特開昭55−85452号公報
【特許文献3】特開昭55−90460号公報
【特許文献4】特開昭57−123851号公報
【特許文献5】特公平1−44673号公報
【特許文献6】特公平1−58148号公報
【特許文献7】特開平8−26811号公報
【特許文献8】特開昭62−95498号公報
【特許文献9】特開平1−72817号公報
【特許文献10】特開平4−114979号公報
【特許文献11】特開2005−22913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、常温養生型のセメント系組成物に添加する際に気泡量の調整が容易であり、かつ均一に分散させることができ、強度、撥水性に優れ、吸水防止、塩分浸透抑制、エフロ防止等の耐久性が良好な硬化体を与える常温養生に適したセメント系組成物用の混和剤及び該混和剤を配合したセメント系組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、石灰質原料及び/又は珪酸質原料とを主要原料とするセメントペースト、モルタル又はコンクリートにおいて、アルキル基とアルコキシ基とを有するポリシロキサンを特定の乳化剤で乳化したエマルジョンの形態で添加することにより、均一に分散させることができ、かつ気泡量の調整が容易で強度、防水性及び撥水性に優れ、かつ屋外曝露条件下でのひび割れ防止性、耐候性も良好な硬化体を与える常温養生型のセメント系組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、(A)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、(B)一般式(2)及び/又は(3)で表されるアニオン系界面活性剤、及び(C)水からなるオルガノポリシロキサンエマルジョンを有効成分とするセメント系組成物用混和剤を提供するものである。
【0011】
【化1】


(但し、式中Rは炭素数3〜12のアルキル基、R’は炭素数1〜4のアルキル基を示し、yは上記アルキル基Rの数が1分子中のケイ素原子に直結する全置換基数の5〜50モル%となるための正数、zは0〜5、かつ3≦x+y+z≦300である。)
P−O−(C24O)a(C36O)b−SO3Na (2)
(但し、式中Pは炭素数1〜20のアルキル基又はアルキルフェニル基、aは1〜15の正数、bは0〜15である。)
P−O−(C24O)a(C36O)b−SO3-・NH4+ (3)
(但し、式中Pは炭素数1〜20のアルキル基又はアルキルフェニル基、aは1〜15の正数、bは0〜15である。)
【0012】
また、本発明は、前記の混和剤とセメントを含有してなるセメントペースト、モルタル又はコンクリートとして有効なセメント系組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の混和剤によれば、常温養生によるセメントペースト、モルタルやコンクリート硬化体の耐久性を低下させることなく、特に撥水性を大幅に向上することができ、しかも当該特性を安定かつ均一に発現させることが容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のセメント系組成物用混和剤の有効成分であるオルガノポリシロキサンエマルジョンは、セメントペースト、モルタルやコンクリート硬化体に撥水性、吸水防止性、塩分浸透抑制性、エフロ防止性を付与し、耐久性を向上させるために添加される。セメント系組成物中に均一に分散させるためにエマルジョンの形態で添加使用する必要があり、更には、セメントペースト、モルタルやコンクリート中の気泡量の調整を容易にするため以下の成分を下記の推奨割合で含有するものである。
【0015】
本発明の混和剤として用いられるオルガノポリシロキサンエマルジョンに使用するオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で示されるものである。
【化2】


(但し、式中Rは炭素数3〜12のアルキル基、R’は炭素数1〜4のアルキル基を示し、yは上記アルキル基Rの数が1分子中のケイ素原子に直結する全置換基数の5〜50モル%となるための正数、zは0〜5、かつ3≦x+y+z≦300である。)
【0016】
ここで、Rは炭素数が3〜12のアルキル基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、具体的にはプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。中でも炭素数6〜10のヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルが好ましい。Rの炭素数が3より小さい場合は、耐候性が十分ではなく、炭素数が12より大きい場合は撥水性が低下する場合がある。なお、1分子中のRは、同一であっても異なっていてもよい。また、上記Rの1分子中での基数を示すyは、オルガノポリシロキサン中のRの数をオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に直結する全置換基の5〜50モル%、好ましくは8〜30モル%、より好ましくは8〜20モル%とする正数である。これにより、本発明の組成物の硬化体の耐候性が向上する。
【0017】
上記オルガノポリシロキサンとしては、更には、アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンが好ましく、R’は炭素数1〜4のアルキル基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチルなどが挙げられる。R’の炭素数を1〜4としたのは、アルコキシ基(−OR’)としての骨材やセメントとの反応性付与のためであり、炭素数が5以上のアルコキシ基は反応性が低下する傾向がある。このアルコキシ基の1分子中の基数を示すzは0〜5であり、特に1〜2が好ましい。オルガノポリシロキサン1分子中のアルコキシ基の数が6以上になると、得られる硬化体の撥水性に悪影響を与える場合がある。
【0018】
式(1)のオルガノポリシロキサンのシロキサン単位の総数(x+y+z)は3〜300である。シロキサン単位の総数が300を超えると、オルガノポリシロキサンの粘度上昇が過剰となり、安定なエマルジョンを得ることが困難となる。好ましくは3〜100、より好ましくは3〜30である。
【0019】
このようなオルガノポリシロキサンとして、具体的には下記化合物を挙げることができるが、本発明は下記化合物のみに限定されるものではない。
【0020】
【化3】

【0021】
上記式(1)のオルガノポリシロキサンの一般的な合成方法としては、例えば、特定のSiH基を有するオルガノポリシロキサンにCH2=CH(CH2nCH3(nは0〜9の整数)で表されるα−オレフィン化合物をSiH基に対して等モル以下付加反応させて、SiH基を完全になくすか、1分子中に1〜5個のSiH基を残したオルガノポリシロキサンを合成する。アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンを得る場合には、SiH基を残存させたオルガノポリシロキサンに炭素数1〜4のアルコールをSiH基に対して等モル以上加え、脱水素反応をさせることによりアルコキシ基を導入することができる。なお、上記の付加反応及び脱水素反応の触媒は、一般的に塩化白金酸のような白金化合物が共通触媒として使用される。
【0022】
また、オルガノポリシロキサンエマルジョンに使用する界面活性剤は、オルガノポリシロキサンを水中に乳化分散させるために使用されるものであり、下記一般式(2)及び/又は(3)
P−O−(C24O)a(C36O)b−SO3Na (2)
P−O−(C24O)a(C36O)b−SO3-・NH4+ (3)
(但し、式中Pは炭素数1〜20のアルキル基又はアルキルフェニル基、aは1〜15の正数、bは0〜15である。)
で示されるものである。
【0023】
ここで、Pは炭素数1〜20、特に8〜18のアルキル基又はアルキルフェニル基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、オクチルフェニル、ノニルフェニルなどが挙げられる。中でもデシル、ドデシル、トリデシル、オクチルフェニル、ノニルフェニルが好ましい。aは1〜15の正数であり、15より大きい場合には、セメントペースト、モルタル又はコンクリートへ添加する際に気泡量の調整が困難となる。bは0〜15であり、15より大きい場合にはエマルジョンの安定性が不安定になる。好ましくは、aは1〜10、bは0〜10の数である。これら界面活性剤の添加量は前記オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。0.1質量量部より少ない場合にはエマルジョンの安定性が不安定であり、10質量部より多い場合には、セメントペースト、モルタル又はコンクリートへ添加する際に気泡量の調整が困難となる場合がある。より好ましくは0.2〜7質量部、最も好ましくは0.3〜5質量部である。
【0024】
また、オルガノポリシロキサンエマルジョンに使用する水は分散媒であり、エマルジョン中のオルガノポリシロキサン100質量部に対して10〜1,000質量部含有されるのが好ましい。10質量部より少ない場合には水中油型エマルジョンにならず、1,000質量部より多い場合には、セメントペースト、モルタル又はコンクリートの強度低下の原因となる。より好ましくは20〜500質量部、最も好ましくは30〜300質量部である。
【0025】
更に、オルガノポリシロキサンエマルジョンは本発明の効果が概ね維持される限り、上記以外の成分の含有を阻むものではない。このような成分として例えばノニオン系界面活性剤を挙げることができる。
【0026】
本発明によるオルガノポリシロキサンエマルジョンを有効成分とするセメント系組成物用混和剤は、オルガノポリシロキサンの固形分換算で、0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜2質量%の割合となるようにセメント系組成物に混和する。0.01質量%未満では十分な撥水性を有する硬化体を得ることができず、5質量%を超えると強度が低下することがある。
【0027】
本発明のセメント系組成物に使用するセメントは、普通セメント、早強セメント、超早強セメント、中庸熱セメント、耐硫酸セメント等、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメントが使用できる。更にカルシウムアルミネート相を多く含むアルミナセメントや、都市ゴミ焼却灰及び下水汚泥焼却灰の1種以上を原料としてなる焼成物であるエコセメントを用いることができる。また、このようなセメントは、通常、セメント系組成物中10〜90質量%の範囲内、好ましくは20〜80質量%の範囲内で配合使用される。
【0028】
ここで、本発明において、セメント系組成物は、セメントペースト、モルタル、コンクリート組成物を包含するが、セメントペーストの場合はセメント及び水を主成分とし、骨材を含有しないが、モルタル、コンクリート組成物の場合はセメント、骨材、水を主成分とする。本発明のモルタル又はコンクリート組成物に使用する骨材は、川砂、海砂、陸砂、砕砂、珪砂、石灰石砕砂等、モルタルやコンクリートの製造に用いられている骨材を使用することができる。また、フライアッシュ、高炉スラグ、炭酸カルシウム、シリカフーム等を上記の砂と併用することができる。また、このような骨材は、通常、組成物中90質量%以下、好ましくは10〜70質量%の範囲内で配合使用される。
【0029】
また、本発明のセメント系組成物に配合される水は、通常は3〜60質量%、好ましくは5〜40質量%の範囲内で配合する(オルガノポリシロキサンエマルジョン中の分散水の量を含まず)ことが推奨される。
【0030】
更に必要に応じて他の成分を加えることもできる。このような成分としては、例えば、ガラス繊維、合成繊維、パルプ等の補強材、木屑、鉱物油、硬化促進剤、空気連行剤(AE剤)、(空気連行型)減水剤、高性能減水剤、硬化遅延剤、急結剤、防水剤、耐寒剤、収縮低減剤、ポリマーディスパージョン(ラテックス)、防錆剤、粘稠剤、消泡剤、空気量調整剤等の他の混和剤等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、オルガノポリシロキサンエマルジョンの製造例を具体的に示し、このオルガノポリシロキサンエマルジョンを用いた混和剤を実施例により詳しく説明するが、本発明はここで記す実施例によって限定されるものではない。
【0032】
<製造例1>
2Lポリ容器に下記式(4)
【化4】


で示されるオルガノポリシロキサン(粘度:40mm2/s;25℃)600g、C1225−O−(C24O)3−SO3Naの25%水溶液(エマール20C:花王(株)製)20gを入れ、ホモミキサーで撹拌した状態でイオン交換水380gを徐々に添加した。更に高圧ホモジナイーザーで50MPaの圧力で2回処理を行い、均一なエマルジョンAを得た。このエマルジョンは105℃/3時間での不揮発分が59.5%であり、室温保管3ヶ月後も分離することなく、均一なエマルジョンであった。
【0033】
<製造例2>
1225−O−(C24O)3−SO3Naの25%水溶液(エマール20C:花王(株)製)を80g、イオン交換水を320gに変えた以外は製造例1と同様にしてエマルジョンBを得た。このエマルジョンは105℃/3時間での不揮発分が61.2%であり、室温保管3ヶ月後も分離することなく、均一なエマルジョンであった。
【0034】
<製造例3>
2Lポリ容器に製造例1で使用したオルガノポリシロキサン600g、界面活性剤としてポリオキシアルキレンデシルエーテルのHLB10.5タイプ(ノイゲンXL40:第一工業製薬(株)製)5gを入れ、ホモミキサーで撹拌した状態でイオン交換水395gを徐々に添加した。更に高圧ホモジナイーザーで50MPaの圧力で2回処理を行い、均一なエマルジョンCを得た。このエマルジョンは翌日分離していた。
【0035】
<製造例4>
ポリオキシアルキレンデシルエーテルのHLB10.5タイプ(ノイゲンXL40:第一工業製薬(株)製)を20g、イオン交換水を380gに変えた以外は製造例4と同様にしてエマルジョンDを得た。このエマルジョンは105℃/3時間での不揮発分が60.5%であったが、室温保管2週間後に分離した。
【0036】
<製造例5>
2Lポリ容器に製造例1で使用したオルガノポリシロキサン600g、界面活性剤としてポリオキシアルキレンデシルエーテルのHLB13.8タイプ(ノイゲンXL80:第一工業製薬(株)製)60gを入れ、ホモミキサーで撹拌した状態でイオン交換水340gを徐々に添加した。更に高圧ホモジナイーザーで50MPaの圧力で2回処理を行い、均一なエマルジョンEを得た。このエマルジョンは105℃/3時間での不揮発分が64.8%であり、室温保管3ヶ月後も分離することなく、均一なエマルジョンであった。
【0037】
【表1】

【0038】
<モルタル評価試験>
セメントは普通ポルトランドセメント(密度3.16g/cm3)、骨材はJIS R 5201に規定されるJIS標準砂(密度2.64g/cm3)、水は佐倉市上水道水、高性能AE減水剤は、太平洋マテリアル(株)製NP−55(ポリカルボン酸系)を使用した。また、空気量は、ポゾリス物産製の空気量調整剤マイクロエア303A、マイクロエア404を適宜添加し、4.5±0.5%に調整した。また、供試体としては、水セメント比45%、砂セメント比2.5のモルタルを作製した。
圧縮強度試験はJIS R 5201、吸水試験はJIS A 1404(建築用セメント防水剤の試験方法)に準じて行った。なお、吸水率は、下式から算出した。
吸水率(%)=(吸水後の供試体質量−吸水前の供試体質量)/吸水前の供試体質量×100
また、空気量については、約400mlの鋼製容器を用いて単質法により測定した。
【0039】
[実施例1]
練鉢に、製造例1に示されるオルガノポリシロキサンエマルジョン(セメントに対して1wt%:オルガノポリシロキサンの固形分換算)、NP−55(セメントに対して0.5wt%)、空気量調整剤、並びにW/C=45wt%となるように水(オルガノポリシロキサンエマルジョンとNP−55は、水の一部とした)を計量した。次に、ホバートミキサーで撹拌しながら、練鉢にセメントと砂を添加し、4分間混合後、型枠にモルタルを充填し、供試体を作製した。
【0040】
[実施例2]
製造例2に示されるオルガノポリシロキサンエマルジョン(セメントに対して1wt%:オルガノポリシロキサンの固形分換算)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、供試体を作製した。
【0041】
[比較例1]
製造例5に示されるオルガノポリシロキサンエマルジョン(セメントに対して1wt%:オルガノポリシロキサンの固形分換算)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、供試体を作製した。
【0042】
[比較例2]
オルガノポリシロキサンエマルジョンを使用しない供試体を、実施例1と同様の方法で作製した。
【0043】
実施例1,2、比較例1,2の空気量、28日圧縮強度、吸水率(%)を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
<コンクリート評価試験>
セメントは普通ポルトランドセメント(密度3.16g/cm3)、細骨材は小笠産陸砂(密度2.62g/cm3)、粗骨材は岩瀬産砕石2005(密度2.64g/cm3、FM6.5)、水は佐倉市上水道水、高性能AE減水剤は、(株)ポゾリス物産製レオビルドSP−8N(ポリカルボン酸系)を使用した。また、空気量は、(株)ポゾリス物産製の空気量調整剤マイクロエア303A、マイクロエア404を適宜添加し、4.5±0.5%に調整した。また、供試体としては、水セメント比45%、粗骨材率48%のコンクリートを作製した。
【0046】
空気量はJIS A 1128、圧縮強度試験はJIS A 1108、吸水試験はJIS A 1404(建築用セメント防水剤の試験方法)に準じて行った。なお、吸水率は、下式から算出した。
吸水率(%)=(吸水後の供試体質量−吸水前の供試体質量)/吸水前の供試体質量×100
【0047】
[実施例3]
ポリエチレン製の容器に、製造例1に示されるオルガノポリシロキサンエマルジョン(セメントに対して1wt%:オルガノポリシロキサンの固形分換算)、SP−8N(セメントに対して0.85wt%)、空気量調整剤、並びにW/C=45wt%となるように水(オルガノポリシロキサンエマルジョンとSP−8Nは、水の一部とした)を計量した。50リットルパン型強制練りミキサーに粗骨材、セメント、細骨材を投入し、15秒間空練りした。その後、ポリエチレン製の容器に計量した混和剤溶液を加え、45秒間撹拌した。掻き落し後、更に45秒間撹拌後、型枠にコンクリートを充填し、供試体を作製した。
【0048】
[実施例4]
製造例2に示されるオルガノポリシロキサンエマルジョン(セメントに対して1wt%:オルガノポリシロキサンの固形分換算)を使用した以外は実施例3と同様の方法で、供試体を作製した。
【0049】
[比較例3]
製造例5に示されるオルガノポリシロキサンエマルジョン(セメントに対して1wt%:オルガノポリシロキサンの固形分換算)を使用した以外は実施例3と同様の方法で、供試体を作製した。
【0050】
[比較例4]
オルガノポリシロキサンエマルジョンを使用しない供試体を、実施例3と同様の方法で作製した。
【0051】
実施例3,4、比較例3,4の空気量、28日圧縮強度、吸水率(%)を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
上記の結果から明らかなように、石灰質原料と珪酸質原料とを主要原料とするセメント系組成物において、アルキル基とアルコキシ基とを有するポリシロキサンを特定の乳化剤で乳化したエマルジョンの形態で添加することにより、均一に分散させることができ、気泡量の調整が容易で強度、防水性及び撥水性に優れ、かつ屋外曝露条件下でのひび割れ防止性、耐候性も良好な硬化体を与える常温養生型のセメント系組成物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
【化1】


(但し、式中Rは炭素数3〜12のアルキル基、R’は炭素数1〜4のアルキル基を示し、yは上記アルキル基Rの数が1分子中のケイ素原子に直結する全置換基数の5〜50モル%となるための正数、zは0〜5、かつ3≦x+y+z≦300である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)下記一般式(2)及び/又は(3)
P−O−(C24O)a(C36O)b−SO3Na (2)
(但し、式中Pは炭素数1〜20のアルキル基又はアルキルフェニル基、aは1〜15の正数、bは0〜15である。)
P−O−(C24O)a(C36O)b−SO3-・NH4+ (3)
(但し、式中Pは炭素数1〜20のアルキル基又はアルキルフェニル基、aは1〜15の正数、bは0〜15である。)
で表されるアニオン系界面活性剤、及び
(C)水
からなるオルガノポリシロキサンエマルジョンを有効成分とするセメント系組成物用混和剤。
【請求項2】
(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対し、(B)成分のアニオン系界面活性剤を0.1〜10質量部添加した請求項1記載の混和剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の混和剤とセメントとを含有してなるセメント系組成物。
【請求項4】
セメント系組成物が、セメントペースト、モルタル又はコンクリートである請求項3記載のセメント系組成物。

【公開番号】特開2007−91541(P2007−91541A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284221(P2005−284221)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】