説明

セラミックグリーンシートの積層装置及び積層方法

【課題】中間層に中空状態の出っ張り部を有する積層体を一度の加圧で形成することができるセラミックグリーンシートの積層装置及び積層方法を提供する。
【解決手段】中間層の複数枚のセラミックグリーンシート11が上、下層より突出した出っ張り部14を有する積層体20を上、下金型12、13で一体化に形成するための積層装置10であって、上、下金型12、13の押圧面に当接する弾性板15、15aと、この他方の主面に当接する剛性板16、16aと、この他方の主面に当接してセラミックグリーンシート11の最外表面に当接する金属板17、17aを有すると共に、剛性板16、16a及び金属板17、17aに設ける貫通孔18、18aに嵌合させて出っ張り部14を押圧するための弾性押圧型19、19aを有し、出っ張り部14が弾性板15、15a及び弾性押圧型19、19aを介して加圧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシートの多層構造の積層体からなるパッケージや、基板等のセラミック多層基板を作製するために用いるセラミックグリーンシートの積層装置及び積層方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体素子等の電子部品素子を収納するためのパッケージや、基板等に用いられるセラミック多層基板の作製は、先ず、複数個のセラミック多層基板が配列して形成できる複数枚のそれぞれのセラミックグリーンシートに上下層を電気的に導通状態とするためのビア用等の貫通孔を形成した後、スクリーン印刷法等によって、表面や、ビア用の孔に導体ペーストを配して導体配線パターンを形成している。次に、この導体配線パターンが形成された複数枚のセラミックグリーンシートは、重ね合わされて、平板面からなる上金型と下金型からなる積層装置を用いて加熱しながら加圧して積層体を形成している。そして、この積層体は、1個毎のパッケージや、基板等のセラミック多層基板に分割した後に焼成し、めっきを行ってパッケージや、基板等のセラミック多層基板を作製したり、あるいは、積層体を焼成し、めっきを行った後に分割してパッケージや、基板等のセラミック多層基板を作製している。
【0003】
しかしながら、上記のような、複数枚のセラミックグリーンシートを一度に重ねて加熱しながら加圧して積層体を形成する場合には、セラミック多層基板の中間層に段差がある場合に、この中間層のセラミックグリーンシートの段差の上面に圧力が掛からなくなるので、積層体の形成ができなくなっている。そこで、パッケージや、基板等のセラミック多層基板の中間層に段差がある場合には、一枚ずつ積み重ねては加圧を繰り返し行って積層体を形成している。
【0004】
しかしながら、上記のような、一枚ずつ積み重ねては加圧を繰り返し行って積層体を形成する場合には、加圧回数が各セラミックグリーンシート毎に異なるので、各セラミックグリーンシート毎に生密度が変化し、焼成を行った時に反りや、寸法バラツキの発生がある。また、上記のような、一枚ずつ積み重ねては加圧を繰り返し行って積層体を形成する場合には、作製に時間がかかり、セラミックパッケージや、セラミック多層基板のコストアップとなっている。そこで、セラミックパッケージや、セラミック多層基板の中間層に段差がある場合には、段差部に嵌合するようなゴム等の弾性体で作製された弾性押圧型を嵌め込んで上、下面から加圧して積層体を形成している。
【0005】
図4に示すように、上記の段差部に嵌合するようなゴム等で作製された弾性押圧型を嵌め込んで上、下面から加圧して積層体を形成するセラミックグリーンシートの積層方法と積層装置50には、上金型51の押圧面に弾性板52を介して段差部に相当するキャビティ部53に対応する部位に弾性押圧型装着用の貫通孔54を有する剛性板55を配し、貫通孔54に弾性押圧型56を挿入、装着し、かつ剛性板55と弾性押圧型56を下金型57上に複数枚が重ね合わせて載置されたセラミックグリーンシート58の表面に接触させ、セラミックグリーンシート58の表面を加圧して積層し、複数枚のセラミックグリーンシート58を一体化するのが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、近年のセラミックパッケージは、製品の小型化に伴い、キャビティ部53に電子部品を搭載した後、蓋体等でキャビティ部53内を気密に封止するために用いられるシールパス幅が狭くなっている。そして、キャビティ部53には、個片からなる、例えば、ゴム等の弾性体で形成されている弾性押圧型56からなる積層装置で挿入し押圧することで、セラミックグリーンシートの均一加圧を可能としているものの、隣接するシールパス幅部である狭い土手部間のキャビティ部53に、個片からなる弾性押圧型56が挿入され押圧されると、弾性押圧型56のボリュームバラツキによる押圧力のバラツキによって強度の弱い土手部に変形を発生させ、キャビティ部53の寸法精度を低下させている。本来、弾性押圧型56のボリュームバラツキは、弾性板52の流動によって吸収する構造としているが、土手部の幅が狭い場合は、弾性板52で吸収する前に土手部に変形が発生している。
【0007】
そこで、図5に示すように、セラミックグリーンシートの積層装置50a及び積層方法には、上金型51の押圧面に弾性板52を介して弾性押圧型装着孔54を設ける剛性板55を有し、弾性押圧型装着孔54にシート状の一方の面が平面で他方の面にキャビティ部53に嵌合できる凸部を複数配列して設ける弾性体からなる弾性押圧型56が弾性板52上に平面が接するように装着して有するのが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−245359号公報
【特許文献2】特開2004−299147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述したような従来のセラミックグリーンシートの積層装置及び積層方法には、次のような問題がある。
セラミックグリーンシートの積層体には、複数枚のセラミックグリーンシートを重ね合わせた複数層の中間層に、複数枚のセラミックグリーンシートが上、下層のそれぞれのセラミックグリーンシートより突出した中空状態の出っ張り部を有するものがある。上金型と下金型の間に全てのセラミックグリーンシートを重ね合わせて一度で加圧して積層体を形成するための上記従来のセラミックグリーンシートの積層装置では、出っ張り部の下方側を支えることができないので、全てのセラミックグリーンシートを重ね合わせて一度で積層体を形成することができなくなっている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、中間層に中空状態の出っ張り部を有するセラミックグリーンシートの積層体を一度の加圧で形成することができるセラミックグリーンシートの積層装置及び積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う本発明に係るセラミックグリーンシートの積層装置は、重ね合わせた複数層の中間層に設ける複数枚のセラミックグリーンシートが上、下層のそれぞれのセラミックグリーンシートより突出した中空状態の出っ張り部を有する積層体を上金型と下金型で挟み込んで加熱しながら加圧して一体化に形成するためのセラミックグリーンシートの積層装置であって、上金型及び下金型の押圧面に一方の主面を当接する弾性板と、弾性板の他方の主面に一方の主面を当接する剛性板と、剛性板の他方の主面に当接してセラミックグリーンシートの最外表面に当接する金属板を有すると共に、剛性板及び金属板に設ける貫通孔に嵌合させて出っ張り部を押圧するための弾性押圧型を有し、上金型と下金型の加圧で出っ張り部が弾性板及び弾性押圧型を介して加圧される。
【0011】
ここで、上記のセラミックグリーンシートの積層装置は、弾性板及び弾性押圧型が硬度20〜50度のオイル含浸ゴムからなるのがよい。
【0012】
前記目的に沿う本発明に係るセラミックグリーンシートの積層方法は、重ね合わせた複数層の中間層に設ける複数枚のセラミックグリーンシートが上、下層のそれぞれのセラミックグリーンシートより突出した中空状態の出っ張り部を設ける積層体を上金型と下金型で挟み込んで加熱しながら加圧して一体化に形成するセラミックグリーンシートの積層方法であって、上金型の押圧面に弾性板の一方の主面を当接させ、弾性板の他方の主面に剛性板の一方の主面を当接させ、剛性板の他方の主面にセラミックグリーンシートの最外表面が当接する金属板を当接させて配設すると共に、剛性板及び金属板に設ける出っ張り部を上方から押圧をするために設けられた第1の貫通孔に嵌合させて第1の弾性押圧型を装着させる工程と、下金型の押圧面に弾性板の一方の主面を当接させ、弾性板の他方の主面に剛性板の一方の主面を当接させ、剛性板の他方の主面にセラミックグリーンシートの最下面が当接する金属板を当接させて配設すると共に、剛性板及び金属板に設ける出っ張り部を下方から押圧をするために設けられた第2の貫通孔に嵌合させて第2の弾性押圧型を装着させる工程と、下金型の上面の所定位置に、セラミックグリーンシートの所定位置に設けられた第1の挿通孔と同じ位置に設けられた第2の挿通孔を第2の弾性押圧型に挿入させながら複数枚のセラミックグリーンシートを重ね合わせて載置する共に、その上に第1、第2の挿通孔を設けない複数枚のセラミックグリーンシートを重ね合わせて載置し、更に、その上に第1の挿通孔を設ける複数枚のセラミックグリーンシートを重ね合わせて載置する工程と、上金型を下降させて、第1の弾性押圧型を第1の挿通孔に挿入させながら上金型の剛性板及び第1の弾性押圧型と、下金型の剛性板及び第2の弾性押圧型をセラミックグリーンシートの表面に接触させて、重ね合わされたセラミックグリーンシートを加熱しながら加圧して積層し積層体を形成する工程を有する。
【発明の効果】
【0013】
上記の本発明に係るセラミックグリーンシートの積層装置は、重ね合わせた複数層の中間層に設ける複数枚のセラミックグリーンシートが上、下層のそれぞれのセラミックグリーンシートより突出した中空状態の出っ張り部を有する積層体を上金型と下金型で挟み込んで加熱しながら加圧して一体化に形成するためのセラミックグリーンシートの積層装置であって、上金型及び下金型の押圧面に一方の主面を当接する弾性板と、弾性板の他方の主面に一方の主面を当接する剛性板と、剛性板の他方の主面に当接してセラミックグリーンシートの最外表面に当接する金属板を有すると共に、剛性板及び金属板に設ける貫通孔に嵌合させて出っ張り部を押圧するための弾性押圧型を有し、上金型と下金型の加圧で出っ張り部が弾性板及び弾性押圧型を介して加圧されるので、出っ張り部を含む全てのセラミックグリーンシートを上、下方向から均一に加圧して寸法精度がよく、工程の掛からない安価なセラミックグリーンシートの積層体が形成できるセラミックグリーンシートの積層装置を提供することができる。
【0014】
特に、上記のセラミックグリーンシートの積層装置は、弾性板及び弾性押圧型が硬度20〜50度のオイル含浸ゴムからなるので、硬度が軟らかく出っ張り部の変形を防止できると共に、オイル含浸ゴムがタングステンペースト等で形成された導体配線パターンの付着を防止することができるセラミックグリーンシートの積層装置を提供することができる。
【0015】
上記の本発明に係るセラミックグリーンシートの積層方法は、重ね合わせた複数層の中間層に設ける複数枚のセラミックグリーンシートが上、下層のそれぞれのセラミックグリーンシートより突出した中空状態の出っ張り部を設ける積層体を上金型と下金型で挟み込んで加熱しながら加圧して一体化に形成するセラミックグリーンシートの積層方法であって、上金型の押圧面に弾性板の一方の主面を当接させ、弾性板の他方の主面に剛性板の一方の主面を当接させ、剛性板の他方の主面にセラミックグリーンシートの最外表面が当接する金属板を当接させて配設すると共に、剛性板及び金属板に設ける出っ張り部を上方から押圧をするために設けられた第1の貫通孔に嵌合させて第1の弾性押圧型を装着させる工程と、下金型の押圧面に弾性板の一方の主面を当接させ、弾性板の他方の主面に剛性板の一方の主面を当接させ、剛性板の他方の主面にセラミックグリーンシートの最下面が当接する金属板を当接させて配設すると共に、剛性板及び金属板に設ける出っ張り部を下方から押圧をするために設けられた第2の貫通孔に嵌合させて第2の弾性押圧型を装着させる工程と、下金型の上面の所定位置に、セラミックグリーンシートの所定位置に設けられた第1の挿通孔と同じ位置に設けられた第2の挿通孔を第2の弾性押圧型に挿入させながら複数枚のセラミックグリーンシートを重ね合わせて載置する共に、その上に第1、第2の挿通孔を設けない複数枚のセラミックグリーンシートを重ね合わせて載置し、更に、その上に第1の挿通孔を設ける複数枚のセラミックグリーンシートを重ね合わせて載置する工程と、上金型を下降させて、第1の弾性押圧型を第1の挿通孔に挿入させながら上金型の剛性板及び第1の弾性押圧型と、下金型の剛性板及び第2の弾性押圧型をセラミックグリーンシートの表面に接触させて、重ね合わされたセラミックグリーンシートを加熱しながら加圧して積層し積層体を形成する工程を有するので、出っ張り部を含む全てのセラミックグリーンシートを上、下方向から均一に加圧形成でき、工程が掛からない安価なセラミックグリーンシートの積層体で寸法精度をよくすることができるセラミックグリーンシートの積層方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係るセラミックグリーンシートの積層装置の説明図である。
【図2】(A)、(B)はそれぞれ同セラミックグリーンシートの積層装置で作製されるセラミック多層基板の説明図である。
【図3】(A)〜(C)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係るセラミックグリーンシートの積層方法の説明図である。
【図4】従来のセラミックグリーンシートの積層装置の説明図である。
【図5】従来の他のセラミックグリーンシートの積層装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るセラミックグリーンシートの積層装置10は、複数枚のセラミックグリーンシート11を位置合わせして重ね合わせた後、上金型12と、下金型13で挟み込んで加熱しながら加圧して一体化にして積層体20を形成するために用いられている。このセラミックグリーンシートの積層装置10では、複数層の中間層に設ける複数枚のセラミックグリーンシート11が上、下層のそれぞれのセラミックグリーンシート11a、11bより突出した中空状態の出っ張り部14を有する積層体20を形成することができる。
【0018】
このセラミックグリーンシートの積層装置10では、通常、複数枚のセラミックグリーンシート11を上金型12と、下金型13で挟み込んで加熱しながら加圧して一体化に形成した積層体20には、個片体からなる焼成前のパッケージや、基板等のセラミック多層基板30(図2(B)参照)が多数個配列する集合体として形成されている。そして、図2(A)、(B)に示すように、このセラミックグリーンシートの積層装置10では、例えば、多数個が配列する集合体から個片体として取り出すことで、中間層に中空状態の出っ張り部14を設けたセラミック多層基板30を作製することができる。なお、集合体からは、所定の形状の個片体となるようにセラミックグリーンシート積層体20の切断位置31を切り刃で切断した後、それぞれの個片体を焼成して個片体のセラミックパッケージや、基板、例えば、後述するフィードスルー基板等のセラミック多層基板30にしている。あるいは、集合体からは、所定の形状の個片体となるようにセラミックグリーンシート積層体20に押圧刃で分割溝を形成し、焼成した後、分割溝の切断位置31から分割して個片体のパッケージや、例えば、後述するフィードスルー基板等のセラミック多層基板30にしている。
【0019】
上記のセラミックグリーンシートの積層装置10は、上金型12の押圧面に一方の主面を当接する弾性板15、及び下金型13の押圧面に一方の主面を当接する弾性板15aを有している。また、セラミックグリーンシートの積層装置10は、上金型12の押圧面に設ける弾性板15の他方の主面に一方の主面を当接する剛性板16と、下金型13の押圧面に設ける弾性板15aの他方の主面に一方の主面を当接する剛性板16aを有している。更に、セラミックグリーンシートの積層装置10は、剛性板16の他方の主面に当接してセラミックグリーンシート11の最外表面に当接する金属板17と、剛性板16aの他方の主面に当接してセラミックグリーンシート11の最外表面に当接する金属板17aを有している。これと共に、セラミックグリーンシートの積層装置10は、上金型12の剛性板16及び金属板17に設ける出っ張り部14を押圧するための弾性押圧型19を、それぞれの貫通孔18に嵌合させて有している。また、セラミックグリーンシートの積層装置10は、下金型13の剛性板16a及び金属板17aに設ける出っ張り部14を押圧するための弾性押圧型19aを、それぞれの貫通孔18aに嵌合させて有している。
【0020】
上記のセラミックグリーンシートの積層装置10は、上金型12と下金型13の加圧で凹部や、出っ張り部14が上金型12の弾性板15及び弾性押圧型19、下金型13の弾性板15a及び弾性押圧型19aを介して加圧されると共に、セラミックグリーンシート11の上、下面平坦部が上金型12の剛性板16及び金属板17と、下金型13の剛性板16a及び金属板17aを介して加圧されるようになっている。なお、セラミックグリーンシートの積層装置10の上金型12と下金型13は、従来のセラミックグリーンシートの積層装置の上金型、下金型と同じであって、それぞれ加熱用のヒーター(図示せず)を備えている。また、セラミックグリーンシートの積層装置10の金属板17、17aは、セラミックグリーンシート11の僅かなうねりに対応して加圧できると共に、セラミックグリーンシート11からの樹脂や、溶剤の滲み出しがあったとしても、容易に洗浄することができるために設けられている。
【0021】
上記のセラミックグリーンシートの積層装置10は、図示しないが、上金型12の押圧面に設けられる剛性板16及び金属板17が、弾性板15及び弾性押圧型19を支持した状態で取り付け治具等で固定して取り付けることができるようになっている。また、上記のセラミックグリーンシートの積層装置10は、図示しないが、下金型13の押圧面に設けられる枠状のセット治具等の枠内に、弾性板15aを下金型13の押圧面に当接させながら弾性押圧型19aを支持した剛性板16a及び金属板17aを嵌合するようにして取り付けることができるようになっている。
【0022】
上記のセラミックグリーンシートの積層装置10は、弾性板15、15a、弾性押圧型19、19aの硬度が20〜50度のオイル含浸ゴムからなるのがよい。なお、硬度が20度を下まわる場合には、弾性板15、15a、弾性押圧型19、19aの硬度が軟らかくなりすぎて、押圧時の変形が大きくなり、押圧力が小さくなると共に、横方向へのはみ出しが大きくなるので、積層体20の接合が充分でなく接合面での剥がれによるセラミック多層基板30の気密不良や、貫通孔部の変形を発生させることとなっている。また、硬度が50度を超える場合には、弾性板15、15a、弾性押圧型19、19aの硬度が硬くなり過ぎて、積層体20の複雑な形状に追随して押圧することができなくなり、積層体20に変形や、クラックを発生させることとなっている。上記のオイル含浸ゴムには、例えば、シリコンゴムのようなものがよく、オイルを含浸させることによる剥離性を持たせることで、出っ張り部14等に形成された導体配線パターンのメタライズペーストとのくっつきを防止することができる。
【0023】
次いで、図3(A)〜(C)を参照しながら、本発明の一実施の形態に係るセラミックグリーンシートの積層方法を説明する。
セラミックグリーンシートの積層方法は、パッケージや、基板等のセラミック多層基板30を複数個配列させて作製するためのものであって、従来のセラミックパッケージの製造方法と同様に、セラミックグリーンシート作製工程、導体配線パターン形成工程、セラミックグリーンシート積層工程、焼成工程を有する中のセラミックグリーンシート積層工程について説明するものである。
【0024】
図3(A)に示すように、セラミックグリーンシートの積層方法では、先ず、弾性板15、15a、剛性板16、16a、金属板17、17a、及び弾性押圧型19、19aは、積層するセラミックグリーンシート11の積層枚数、厚み、凹凸状態等に応じて好ましいものを選択する。次いで、上金型12の押圧面には、弾性板15を介して弾性押圧型装着用の貫通孔18を有する剛性板16及び金属板17を配すると共に、貫通孔18に弾性押圧型19を挿入させ、弾性板15及び弾性押圧型19を、剛性板16及び金属板17で固定して装着する。ここで用いられる弾性押圧型19は、一方の面が平面で、他方の面がセラミックグリーンシート11に設ける凹部や、出っ張り部14を押圧するための穴に若干のクリアランスを有して嵌合できる凸部を有している。そして、弾性押圧型19は、弾性板15に一方の面の平面で接するようにして装着されている。なお、剛性板16及び金属板17は、図示しないが、上金型12の押圧面に取り付け治具等で固定されるようになっている。
【0025】
一方、下金型13の押圧面には、弾性板15aを介して弾性押圧型装着用の貫通孔18aを有する剛性板16a及び金属板17aを配すると共に、貫通孔18aに弾性押圧型19aを挿入させ、弾性板15a及び弾性押圧型19aを、剛性板16a及び金属板17aで固定して装着する。ここで用いられる弾性押圧型19aは、一方の面が平面で、他方の面がセラミックグリーンシート11に設ける出っ張り部14に若干のクリアランスを有して嵌合できる凸部を有している。上金型12の弾性押圧型19の一方の面の平面が接するようにして装着された弾性板15は、下金型13の押圧面に載置された枠状のセット治具(図示せず)等の枠内に嵌合するようにして載置されている。そして、下金型13の上面の金属板17a上には、出っ張り部14の下側を押圧するための穴を有する複数枚のセラミックグリーンシート11bを重ね合わせた時に上、下の位置が合うように、例えば、セラミックグリーンシート11bに設けるガイド孔をセット治具等に設けるガイドピン(図示せず)に挿入させながら位置合わせすると共に、出っ張り部14の下側を押圧するための穴に弾性押圧型19aを挿入させて載置している。次に、セラミックグリーンシート11b上には、出っ張り部14を設ける複数枚のセラミックグリーンシート11を載置している。更に、出っ張り部14を設ける複数枚のセラミックグリーンシート11上には、出っ張り部14の下側を押圧するための穴を有する複数枚のセラミックグリーンシート11aを載置している。なお、ここで用いられるセラミックグリーンシート11は、上記のセラミックグリーンシート作製工程、導体配線パターン形成工程を経ているものである。
【0026】
次に、図3(B)に示すように、上金型12は、下降することで、弾性押圧型19の凸部が下金型13上に重ね合わせて載置されたセラミックグリーンシート11の凹部や、出っ張り部14を押圧するための穴に若干のクリアランスを有して嵌合させながら挿入している。更に、上金型12は、下降することで、金属板17と弾性押圧型19は、セラミックグリーンシート11の表面と、凹部や、出っ張り部14に接触して、複数枚のセラミックグリーンシート11を上金型12と下金型13で上、下方向から加熱しながら、加圧して出っ張り部14を設ける積層体20を作製している。
【0027】
次に、図3(C)に示すように、上金型12を上昇させることによって、下金型13に載置されている積層体20を取り出している。そして、セラミック多層基板30は、積層体20を焼成する前に切断位置31で切断して焼成して作製したり、あるいは、積層体20を焼成した後に切断位置31で切断して作製したりしている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のセラミックグリーンシートの積層装置及び積層方法は、これで作製されたセラミック多層基板が出っ張り部を有するので、金属製箱体からなるパッケージの金属枠体の側面に設ける切り欠き部に取り付けるフィードスルー基板として用いることができる。このフィードスルー基板は、セラミック多層基板の上、下面にメタライズパターンが形成され、この部分を金属枠体の切り欠き部にロー付け接合されるようになっている。また、フィードスルー基板は、出っ張り部上と、壁部を隔ててその反対側のセラミック基体上にお互いが導通するメタライズパターンを形成し、内部側をワイヤボンドパッド、外部側を外部接続端子パッドとすることができる。そして、これを取り付けたパッケージには、金属枠体の側面に設ける光ファイバー取り付け部からの光信号を電気的信号に交換、あるいはこの逆の交換ができる半導体素子を実装して、半導体素子とワイヤボンドパッドをボンディングワイヤを介して接続し、外部接続端子パッドにろう付け接合する外部接続端子と、光ファイバーの光信号間を導通状態とすることができる光通信用パッケージに用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
10:セラミックグリーンシートの積層装置、11、11a、11b:セラミックグリーンシート、12:上金型、13:下金型、14:出っ張り部、15、15a:弾性板、16、16a:剛性板、17、17a:金属板、18、18a:貫通孔、19、19a:弾性押圧型、20:積層体、30:セラミック多層基板、31:切断位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた複数層の中間層に設ける複数枚のセラミックグリーンシートが上、下層のそれぞれの前記セラミックグリーンシートより突出した中空状態の出っ張り部を有する積層体を上金型と下金型で挟み込んで加熱しながら加圧して一体化に形成するためのセラミックグリーンシートの積層装置であって、
前記上金型及び下金型の押圧面に一方の主面を当接する弾性板と、該弾性板の他方の主面に一方の主面を当接する剛性板と、該剛性板の他方の主面に当接して前記セラミックグリーンシートの最外表面に当接する金属板を有すると共に、前記剛性板及び前記金属板に設ける貫通孔に嵌合させて前記出っ張り部を押圧するための弾性押圧型を有し、前記上金型と下金型の加圧で前記出っ張り部が前記弾性板及び前記弾性押圧型を介して加圧されることを特徴とするセラミックグリーンシートの積層装置。
【請求項2】
請求項1記載のセラミックグリーンシートの積層装置において、前記弾性板及び前記弾性押圧型が硬度20〜50度のオイル含浸ゴムからなることを特徴とするセラミックグリーンシートの積層装置。
【請求項3】
重ね合わせた複数層の中間層に設ける複数枚のセラミックグリーンシートが上、下層のそれぞれの前記セラミックグリーンシートより突出した中空状態の出っ張り部を設ける積層体を上金型と下金型で挟み込んで加熱しながら加圧して一体化に形成するセラミックグリーンシートの積層方法であって、
前記上金型の押圧面に弾性板の一方の主面を当接させ、前記弾性板の他方の主面に剛性板の一方の主面を当接させ、前記剛性板の他方の主面に前記セラミックグリーンシートの最外表面が当接する金属板を当接させて配設すると共に、前記剛性板及び前記金属板に設ける前記出っ張り部を上方から押圧をするために設けられた第1の貫通孔に嵌合させて第1の弾性押圧型を装着させる工程と、
前記下金型の前記押圧面に前記弾性板の一方の主面を当接させ、前記弾性板の他方の主面に前記剛性板の一方の主面を当接させ、前記剛性板の他方の主面に前記セラミックグリーンシートの最下面が当接する前記金属板を当接させて配設すると共に、前記剛性板及び前記金属板に設ける前記出っ張り部を下方から押圧をするために設けられた第2の貫通孔に嵌合させて第2の弾性押圧型を装着させる工程と、
前記下金型の上面の所定位置に、前記セラミックグリーンシートの所定位置に設けられた第1の挿通孔と同じ位置に設けられた第2の挿通孔を前記第2の弾性押圧型に挿入させながら複数枚の前記セラミックグリーンシートを重ね合わせて載置する共に、その上に前記第1、第2の挿通孔を設けない複数枚の前記セラミックグリーンシートを重ね合わせて載置し、更に、その上に前記第1の挿通孔を設ける複数枚の前記セラミックグリーンシートを重ね合わせて載置する工程と、
前記上金型を下降させて、前記第1の弾性押圧型を前記第1の挿通孔に挿入させながら前記上金型の前記剛性板及び前記第1の弾性押圧型と、前記下金型の前記剛性板及び前記第2の弾性押圧型を前記セラミックグリーンシートの表面に接触させて、重ね合わされた前記セラミックグリーンシートを加熱しながら加圧して積層し積層体を形成する工程を有することを特徴とするセラミックグリーンシートの積層方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−235548(P2011−235548A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109430(P2010−109430)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(391039896)株式会社住友金属エレクトロデバイス (276)
【Fターム(参考)】