説明

セラミックスの物性値推定方法、遮熱コーティング材の物性値推定方法、遮熱コーティング材の余寿命推定方法、及び、高温部材の余寿命推定方法、並びに物性値取得装置

【課題】高温部材に形成された遮熱コーティング材のセラミックス層の物性値、特にヤング率及び熱伝導率を、短時間で精度良く推定する方法を提供する。
【解決手段】セラミックスの加熱時間と加熱温度とからラーソンミラーパラメータを算出する工程と、該算出されたラーソンミラーパラメータと、前記セラミックスと同一組成の供試材から得たラーソンミラーパラメータと気孔率との相関図とから、前記算出されたラーソンミラーパラメータに対応する前記セラミックスの気孔率を取得する工程と、該取得された気孔率と、前記セラミックスと同一組成の供試材から得た気孔率と物性値との相関図とから、前記取得された気孔率に対応する前記セラミックスの物性値を取得する工程とを備えるセラミックスの物性値推定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスの物性値推定方法、遮熱コーティング材の物性値推定方法、遮熱コーティング材の余寿命推定方法、及び、高温部材の余寿命推定方法、並びに物性値取得装置に関し、特に高温部材に形成された遮熱コーティング材の物性値推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用ガスタービン及びジェットエンジンの動翼、静翼、燃焼器などの高温環境下で使用される高温部材は、金属製の母材を高温から保護するため、母材表面に遮熱コーティング材(Thermal Barrier Coating:TBC)が施されている。遮熱コーティング材は、母材上に減圧プラズマ溶射等で形成した金属接合層と、金属接合層上に大気圧プラズマ溶射により形成されたセラミックス層とから構成される。セラミックス層にはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等の希土類安定化ジルコニアといった材料が用いられる。
【0003】
タービンやジェットエンジンなどの機器部品の運転中に、遮熱コーティング材のセラミックス層に割れや剥離などの損傷が発生すると、高温部材の金属製母材温度が上昇して機器部品の破損に繋がる。従って、機器部品の運転前や運転中に、遮熱コーティング材のセラミックス層の耐久性や余寿命を把握する必要がある。遮熱コーティング材の耐久性や寿命を把握するために、高温部材を使用温度及び使用時間で加熱すれば良いが、試験結果を得るまでに長時間を要するので現実的ではない。そのため、ラーソンミラーパラメータを用いて、短時間の試験結果から長時間の試験結果を外挿して求めることが行われる。
【0004】
特許文献1には、セラミックス層の耐久性評価や余寿命評価に役立つ物性値として、セラミック層の温度を推定する方法が開示されている。すなわち、セラミック層と同じ組成の供試材を用いて求めた隙間状欠陥(層状欠陥)の面積率とラーソンミラーパラメータ値との関係を示す特性図に、実機で所定時間使用した場合の深さ方向断面の隙間状欠陥の面積率を測定して得た値を代入して、セラミック層の表面温度を推定している。
【特許文献1】特開2003−4549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遮熱コーティング材のセラミックス層は、内部に多数の層状欠陥と気孔を有する。高温部材が高温環境下で長時間使用されると、遮熱コーティング材の焼結が進行し、内部の層状欠陥及び気孔が小さくなる。層状欠陥及び気孔の変化に対応して、セラミックス層のヤング率や熱伝導率も変化する。
セラミックス層のヤング率や熱伝導率は、上述したセラミックス層の表面温度と同様に、セラミックス層の耐久性や余寿命に影響する物性値である。そのため、これらの物性値も、機器部品の運転前や運転中に管理する必要性があった。
【0006】
従来は、タービン実機の運転条件毎に、試験片を準備してヤング率及び熱伝導率を測定する必要があり、試験片作製及び物性値測定に莫大なコストと時間を要していた。そのため、タービンの運転前及び運転中に、遮熱コーティング材のセラミックス層の物性値をより簡易且つ迅速な方法によって高精度で推定し、更には遮熱コーティング材の余寿命を推定する方法が必要とされていた。
【0007】
本発明は、高温部材に形成された遮熱コーティング材のセラミックス層の物性値、特にヤング率及び熱伝導率を、短時間で精度良く推定する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、セラミックスの加熱時間と加熱温度とからラーソンミラーパラメータを算出する工程と、該算出されたラーソンミラーパラメータと、前記セラミックスと同一組成の供試材から得たラーソンミラーパラメータと気孔率との相関図とから、前記算出されたラーソンミラーパラメータに対応する前記セラミックスの気孔率を取得する工程と、該取得された気孔率と、前記セラミックスと同一組成の供試材から得た気孔率と物性値との相関図とから、前記取得された気孔率に対応する前記セラミックスの物性値を取得する工程とを備えるセラミックスの物性値推定方法を提供する。
【0009】
本発明において、物性値推定対象であるセラミックスと同一組成の供試材から、ラーソンミラーパラメータと気孔率との相関図、及び、気孔率と物性値との相関図が予め作成される。物性値推定対象のセラミックスが加熱された時間と温度とから、ラーソンミラーパラメータが算出される。算出されたラーソンミラーパラメータと、予め作成されたラーソンミラーパラメータと気孔率との相関図とから、算出されたラーソンミラーパラメータに対応する気孔率が取得される。取得された気孔率は、セラミックスの気孔率の推定値とされる。その後、取得された気孔率と、予め作成された気孔率と物性値との相関図とから、取得された気孔率に対応する物性値が取得される。取得された物性値は、セラミックスの物性値の推定値とされる。
セラミックスの加熱時間及び加熱温度をラーソンミラーパラメータで表すことにより、短時間の試験結果から得た相関図を長時間加熱した場合のセラミックスの物性値推定にも適用することができる。また、気孔率と物性値との相関図を用いることにより、取得される物性値の精度が高い。従って、上記相関図を用いれば、セラミックスの物性値を短時間に高精度で推定することができる。
【0010】
上記発明において、前記物性値が、ヤング率であることが好ましい。ヤング率はセラミックス内部の気孔及び層状欠陥と強い相関がある。本発明を用いれば、高温長時間の条件で加熱処理されたセラミックスのヤング率を、短時間に精度良く推定することができる。
【0011】
上記発明において、前記物性値が、熱伝導率であることが好ましい。熱伝導率はセラミックス内部の気孔及び層状欠陥と強い相関がある。本発明を用いれば、高温長時間の条件で加熱処理されたセラミックスの熱伝導率を、短時間に高精度で推定することができる。
【0012】
本発明は、上記のセラミックスの物性値推定方法を用いて、高温部材に形成された遮熱コーティング材のセラミックス層のヤング率及び熱伝導率の少なくとも一方を取得する遮熱コーティング材の物性値推定方法を提供する。
【0013】
例えば、遮熱コーティング材のセラミックス層材料の開発段階で得た結果を基に上記相関図を作成しておけば、実機に対しても相関図を適用することができる。従って、実機の運転前や運転中に、運転条件から遮熱コーティング材のセラミックス層の物性値を短時間で推定できる。また、セラミックス層のヤング率または熱伝導率を、ヤング率や熱伝導率と非常に相関が強い気孔率との相関図を用いて求めるため、ヤング率や熱伝導率を高精度で推定することが可能となる。これにより、遮熱コーティング材の物性値取得に要する時間及びコストを大幅に削減することができるとともに、遮熱コーティング材の物性値の推定精度を向上できる。
【0014】
本発明は、上記の遮熱コーティング材の物性値推定方法を用いて取得した前記セラミックス層のヤング率及び熱伝導率の少なくとも一方を用いて、前記遮熱コーティング材の余寿命を取得する遮熱コーティング材の余寿命推定方法を提供する。また、上記の遮熱コーティング材の余寿命推定方法を用いて取得した前記遮熱コーティング材の余寿命から、前記高温部材の余寿命を推定する高温部材の余寿命推定方法を提供する。
【0015】
上記のセラミックスの物性値推定方法を用いれば、遮熱コーティング材のセラミックス層のヤング率や熱伝導率を精度良く取得することができる。従って、取得された遮熱コーティング材のヤング率及び熱伝導率の少なくとも一方を用いて取得した遮熱コーティング材の余寿命、及び遮熱コーティング材の余寿命から取得した高温部材の余寿命も、精度良い値となる。このため、例えばタービンにおいては、タービンの運転前や運転中に本発明を用いて遮熱コーティング材及び高温部材の余寿命を推定しておけば、遮熱コーティング材が損傷する前に高温部材の保守点検を行うことができる。その結果、高温部材の破損による緊急停止を回避し、経済的損失を被ることを防止することができる。
【0016】
本発明は、セラミックスの加熱時間と加熱温度とからラーソンミラーパラメータを算出するラーソンミラーパラメータ算出手段と、該算出手段で算出されたラーソンミラーパラメータと、前記セラミックスと同一組成の供試材から得たラーソンミラーパラメータと気孔率との相関図とから、前記算出されたラーソンミラーパラメータに対応する前記セラミックスの気孔率を取得する気孔率取得手段と、該気孔率取得手段で取得された気孔率と、前記セラミックスと同一組成の供試材から得た気孔率と物性値との相関図とから、前記取得された気孔率に対応する前記セラミックスの物性値を取得する物性値取得手段とを備える物性値取得装置を提供する。
【0017】
上記のセラミックスの物性値取得装置を用いれば、高温長時間の条件で加熱処理されるセラミックスの物性値を、加熱前に迅速に高精度で取得し、推定することが可能となる。
【0018】
上記発明において、前記物性値取得装置が、前記物性値取得手段で取得された物性値を用いて、遮熱コーティング材の余寿命を取得する余寿命取得手段を更に備えることが好ましい。これにより、遮熱コーティング材の余寿命をより短時間で取得することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、セラミックス、特に遮熱コーティング材のセラミックス層の物性値を、精度良く短時間に推定することができる。これにより、物性値を取得するために要するコスト及び時間を大幅に削減できる。
【0020】
また、本発明によれば、遮熱コーティング材の余寿命及び遮熱コーティング材を備えた高温部材の余寿命を、短時間に高精度で推定することができる。このため、例えばタービンにおいては、タービンの運転前や運転中に本発明を用いて遮熱コーティング材及び高温部材の余寿命を推定しておけば、遮熱コーティング材が損傷する前に高温部材の保守点検を行うことができる。その結果、高温部材の破損による緊急停止を回避し、経済的損失を被ることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る物性値取得装置及びセラミックスの物性値推定方法の一実施形態を説明する。本実施形態では、セラミックスとして、タービンの高温部材に形成された遮熱コーティング材のセラミックス層を例に挙げる。
【0022】
本実施形態において、物性値取得装置はコンピュータである。
【0023】
まず、オペレータは、ラーソンミラーパラメータと気孔率との相関を表すグラフを作成する。
オペレータは、タービンと同一材料の金属母材に遮熱コーティング材のセラミックス層と同一組成のセラミックス粉末を溶射して、セラミックス皮膜が形成された供試材を複数個作成する。オペレータは、電気炉を用いて、供試材毎に加熱条件(加熱温度及び加熱時間)を変えて、供試材を加熱する。
【0024】
オペレータは、加熱前及び加熱後の試験用母材の断面ミクロ組織を、顕微鏡を用いて観察する。上記顕微鏡として、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡を使用することができる。
【0025】
図1は、(A)加熱前及び(B)加熱後の遮熱コーティング材断面ミクロ組織の模式図である。加熱前の遮熱コーティング材の断面ミクロ組織には、図1(A)のように、気孔1と層状欠陥2とが存在する。遮熱コーティング材が高温で加熱されると、図1(B)に示すように変化する。すなわち、焼結が進行して気孔1及び層状欠陥2が小さくなり、数も減少する。
【0026】
オペレータは、顕微鏡写真を画像処理して二値化像を作成する。作成された二値化像における気孔及び層状の欠陥を検出する。検出された気孔と層状欠陥の面積を測定し、気孔率及び層状欠陥の面積率を算出する。算出された面積率は、供試材の気孔率とされる。
【0027】
オペレータは、供試材の加熱温度及び加熱時間とから、ラーソンミラーパラメータを算出する。ラーソンミラーパラメータLMPは、式(1)で表される。
LMP = T(20+logt)/1000 ・・・(1)
ここで、Tは加熱温度、tは加熱時間である。
【0028】
なお、上記供試材のラーソンミラーパラメータは、物性値取得装置が算出しても良い。この場合、オペレータは、物性値取得装置に供試材の加熱温度及び加熱時間を入力する。物性値取得装置は、ラーソンミラーパラメータ算出手段において、入力された加熱時間及び加熱温度から、式(1)により供試材のラーソンミラーパラメータを算出する。
【0029】
オペレータは、算出された各供試材のラーソンミラーパラメータと、各供試材の気孔率との相関を表すグラフ(以下、相関図Aと呼ぶ)を作成する。
【0030】
図2は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)皮膜およびSmYbZr皮膜を形成した供試材の相関図Aの例である。同図において、横軸はラーソンミラーパラメータ、縦軸は気孔率である。気孔率は、走査型電子顕微鏡観察による反射電子像(BSE)から得た。図2に示すように、YSZとSmYbZrとでラーソンミラーパラメータと気孔率との関係が異なる。従って、オペレータは、材料ごとに相関図Aを作成する。
【0031】
オペレータは、作成された相関図Aを物性値推定装置に入力する。物性値推定装置は、入力された相関図Aをコンピュータのメモリに格納する。
【0032】
次に、オペレータは、気孔率と物性値との相関を表すグラフを作成する。
オペレータは、上記供試材の物性値を測定する。本実施形態において、測定する物性値は、ヤング率及び熱伝導率である。
【0033】
オペレータは、加熱前及び加熱後の供試材から、JIS規格に規定された形状及び大きさの物性値測定用試験片をそれぞれ切り出す。オペレータは、切り出した試験片を用いて、ヤング率及び熱伝導率を測定する。
【0034】
オペレータは、供試材の気孔率と試験片のヤング率との相関を表すグラフ(以下、相関図Bと呼ぶ)を作成する。オペレータは、供試材の気孔率と試験片の熱伝導率との相関を表すグラフ(以下、相関図Cと呼ぶ)を作成する。
【0035】
図3は、YSZ皮膜およびSmYbZr皮膜を形成した供試材の相関図Bの例であり、横軸は気孔率、縦軸はヤング率である。図4はYSZ皮膜およびSmYbZr皮膜を形成した供試材の相関図Cの例であり、横軸は気孔率、縦軸は熱伝導率である。なお、図3及び図4では、走査型電子顕微鏡観察による反射電子像(BSE)から得た気孔率から得た。このように、YSZとSmYbZrとで気孔率と各物性値との相関が異なる。従って、オペレータは、材料毎に相関図B及び相関図Cを作成する。
【0036】
オペレータは、作成された相関図B及び相関図Cを物性値推定装置に入力する。物性値推定装置は、入力された相関図B及び相関図Cをコンピュータのメモリに格納する。
【0037】
本実施形態の物性値取得装置は、コンピュータのメモリに格納された相関図A乃至相関図Cを用いて、タービン部材に形成された遮熱コーティング材のセラミックス層の物性値を取得する。
オペレータは、タービンの運転条件として、運転温度及び運転時間を物性値取得装置に入力する。物性値取得装置は、ラーソンミラーパラメータ算出手段において、入力された運転温度及び運転時間から、ラーソンミラーパラメータを算出する。
【0038】
物性値取得装置は、気孔率取得手段において、メモリから相関図Aを呼び出す。物性値取得装置は、気孔率取得手段において、呼び出された相関図Aを基に、上記算出されたラーソンミラーパラメータに対応する気孔率の値を取得する。
【0039】
物性値取得装置は、物性値取得手段において、メモリから相関図Bを呼び出す。物性値取得装置は、物性値取得手段において、呼び出された相関図Bを基に、上記取得された気孔率の値に対応するヤング率の値を取得する。
【0040】
物性値取得装置は、物性値取得手段において、メモリから相関図Cを呼び出す。物性値取得装置は、物性値取得手段において、呼び出された相関図Cを基に、上記取得された気孔率の値に対応する熱伝導率の値を取得する。
【0041】
オペレータは、物性値取得装置が取得したヤング率及び熱伝導率の値を、上記運転条件でタービンを運転した場合のセラミックス層のヤング及び熱伝導率であると推定する。
【0042】
上記実施形態では、気孔及び層状欠陥の検出に走査型電子顕微鏡の反射電子像を用いたが、光学顕微鏡画像や走査型電子顕微鏡の二次電子像を用いることもできる。
【0043】
同一試料(計13点)について、それぞれ走査型電子顕微鏡の反射電子像、二次電子像、光学顕微鏡画像から気孔及び層状欠陥を検出した。図4は、走査型電子顕微鏡の反射電子像を用いて気孔及び層状欠陥を検出して得た気孔率と熱伝導率との相関図である。図5は、走査型電子顕微鏡の二次電子像から気孔及び層状欠陥を検出して得た気孔率と熱伝導率との相関図である。図6は、光学顕微鏡画像から気孔及び層状欠陥を検出して得た気孔率と熱伝導率との相関図である。同図において、横軸は気孔率、縦軸は熱伝導率である。図中の実線で描いた斜線は、測定値の平均線を示す。また、図中の破線、二点鎖線及び一点鎖線はそれぞれ、1σ、2σ、3σの偏差帯を表す。
【0044】
光学顕微鏡画像から得た図6は、気孔率と熱伝導率の相関が見られるが、偏差帯(1σ、2σ、3σ)の幅が広く、測定点のばらつきが大きい。一方、走査型電子顕微鏡画像から得た図4及び図5は、偏差帯の幅が狭く、測定点のばらつきが小さい。これは、走査型電子顕微鏡では微細な層状欠陥が観察されるため、物性値取得装置が微細な層状欠陥も検出することができるためである。組織観察に走査型電子顕微鏡を用いれば、気孔率の算出精度が向上するため、取得される物性値の精度も向上する。特に、反射電子像を用いれば、図4に示すように、測定点のばらつきをより小さくすることができるので、好ましい。
【0045】
上記実施形態では、気孔及び層状欠陥の検出、気孔率の算出及び各相関図の作成をオペレータが行ったが、気孔及び層状欠陥の検出から相関図作成までの工程は物性値推定装置または他の装置で行うことができる。この場合、気孔及び層状欠陥の検出から相関図作成までに要する時間及びオペレータの労力を大幅に縮小できるので好ましい。特に、上記工程を物性値推定装置で行えば、物性値推定装置に相関図を入力する工程も省略できるので、より工程が簡略化できる。
【0046】
物性値取得装置は、余寿命取得手段を更に備えることができる。物性値取得装置は、余寿命取得手段において、上述の物性値取得手段で取得したヤング率と熱伝導率とを用いて遮熱コーティング材に発生する歪みを熱応力解析により計算し、歪から求めた余寿命を取得する。オペレータは、物性値取得装置が取得した余寿命を、上記運転条件でタービンを運転した場合の遮熱コーティング材の余寿命であると推定する。さらに、オペレータは、推定された遮熱コーティング材の余寿命を、タービンの高温部材の余寿命であると推定する。
【0047】
なお、本発明の物性値推定方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で任意に組み合わせ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(A)加熱前及び(B)加熱後の遮熱コーティング材断面ミクロ組織の模式図である。
【図2】ラーソンミラーパラメータと気孔率との相関図Aの例である。
【図3】気孔率とヤング率との相関図Bの例である。
【図4】走査型電子顕微鏡の反射電子像を用いた場合の気孔率と熱伝導率との相関図Cの例である。
【図5】走査型電子顕微鏡の二次電子像を用いた場合の気孔率と熱伝導率との相関図Cの例である。
【図6】光学顕微鏡を用いた場合の気孔率と熱伝導率との相関図Cの例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスの加熱時間と加熱温度とからラーソンミラーパラメータを算出する工程と、
該算出されたラーソンミラーパラメータと、前記セラミックスと同一組成の供試材から得たラーソンミラーパラメータと気孔率との相関図とから、前記算出されたラーソンミラーパラメータに対応する前記セラミックスの気孔率を取得する工程と、
該取得された気孔率と、前記セラミックスと同一組成の供試材から得た気孔率と物性値との相関図とから、前記取得された気孔率に対応する前記セラミックスの物性値を取得する工程とを備えるセラミックスの物性値推定方法。
【請求項2】
前記物性値が、ヤング率である請求項1に記載のセラミックスの物性値推定方法。
【請求項3】
前記物性値が、熱伝導率である請求項1に記載のセラミックスの物性値推定方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のセラミックスの物性値推定方法を用いて、高温部材に形成された遮熱コーティング材のセラミックス層のヤング率及び熱伝導率の少なくとも一方を取得する遮熱コーティング材の物性値推定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の遮熱コーティング材の物性値推定方法を用いて取得した前記セラミックス層のヤング率及び熱伝導率の少なくとも一方を用いて、前記遮熱コーティング材の余寿命を取得する遮熱コーティング材の余寿命推定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の遮熱コーティング材の余寿命推定方法を用いて取得した前記遮熱コーティング材の余寿命から、前記高温部材の余寿命を推定する高温部材の余寿命推定方法。
【請求項7】
セラミックスの加熱時間と加熱温度とからラーソンミラーパラメータを算出するラーソンミラーパラメータ算出手段と、
該算出手段で算出されたラーソンミラーパラメータと、前記セラミックスと同一組成の供試材から得たラーソンミラーパラメータと気孔率との相関図とから、前記算出されたラーソンミラーパラメータに対応する前記セラミックスの気孔率を取得する気孔率取得手段と、
該気孔率取得手段で取得された気孔率と、前記セラミックスと同一組成の供試材から得た気孔率と物性値との相関図とから、前記取得された気孔率に対応する前記セラミックスの物性値を取得する物性値取得手段とを備える物性値取得装置。
【請求項8】
前記物性値取得手段で取得された物性値を用いて、遮熱コーティング材の余寿命を取得する余寿命取得手段を更に備える請求項7に記載の物性値取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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