説明

セラミックス多孔質膜、セラミックスフィルターとその製造方法

【課題】現状のチタニアを骨材とするセラミックフィルターの有するいわゆるファウリングの問題を解決し、ファウリングの発生を抑え、実用可能な強度及び耐食性を有する多孔質膜を提供する。
【解決手段】表面を構成する骨材粒子がジルコニア(ZrO)であって、その表面粗さがRaで1μm以下であるセラミック多孔質膜、または、表面を構成する骨材粒子がジルコニア(ZrO)であって、その膜表面ゼータ電位がpH7において−40mVから40mVであるセラミック多孔質膜である。多孔質基材の表面に、上記セラミックス多孔質膜を形成してなるセラミックスフィルターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファウリング性の改善されたセラミックス多孔質膜及びセラミックスフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス多孔質基材の表面に、更に細孔径の小さい多孔質膜を形成したセラミックスフィルターは、高分子膜等と比較して、物理的強度、耐久性に優れるため信頼性が高いこと、耐食性が高いため酸アルカリ等による洗浄を行っても劣化が少ないこと、更には、ろ過能力を決定する細孔径の精密な制御が可能である点において、固液分離用のフィルター等として有用である。
【0003】
かかるセラミックスフィルターは、セラミックス多孔体からなる基材の表面、あるいは当該基材上に形成された中間層の表面に、フィルターの気孔径を支配する分離層を形成したものであり、例えば、水処理や排ガス処理、あるいは医薬・食品分野などの広範な分野において、液体やガス中の懸濁物質、細菌、粉塵などの除去等広範囲に用いられている。
【0004】
このようなセラミックスフィルターの例として、コージェライトの支持体(基材)に、粒径12μmのアルミナ粒子をガラスフリットで結合し、更に粒径1.5μmのアルミナ粒子をガラスフリットで結合して1179℃で焼成した後、粒径0.3μmのアルミナ粒子を1179℃で自己焼結反応させたものが知られている(特許文献1)。
【0005】
また、支持体(基材)上に厚さ25μm、孔径0.2μmのチタニアの分離層を形成したフィルターの実施例が記載された特許文献が存在する(特許文献2)。
【0006】
このようなセラミックスフィルターにおいて、特に、ろ過に使用されるセラミックスフィルターについては、ろ過能力を決定するセラミックス多孔質膜の性能及び形成方法が技術上のポイントとなる。通常、セラミックス多孔質膜は、基材表面にセラミックス粒子を含むスラリーを成膜後、1300℃以上の高温で焼成しセラミックス粒子同士を固相焼結することにより得ることができる(特許文献3)。
【0007】
また、骨材となるセラミックス粒子にアルミナゾル、シリカゾル等の無機ゾルを添加したスラリーを、焼成前の基材(いわゆる生基材)の表面に成膜後、1200℃で共焼成する多孔質膜の製造方法が開示されている(特許文献4)。
【0008】
さらに、水蒸気雰囲気下に300℃以下で、或いは大気雰囲気下、300〜700℃で熱処理することによりセラミックス粒子を固着させてなるセラミックス多孔質膜、セラミックス多孔質体及びその製造方法であって、セラミックス粒子に、平均粒径がセラミックス粒子の1/5以下であるセラミックスゾル粒子を、セラミックスゾルの固形分がセラミックスの固形分の1〜30重量%となるように添加・混合した混合物をセラミックス基材に成膜し、水蒸気雰囲気下に300℃以下で、或いは大気雰囲気下、300〜700℃で熱処理することにより基材表面にセラミックス多孔質膜を形成する多孔質膜の製造方法が開示されている(特許文献5)。
【0009】
なお、結合材としてチタニアを用いて、水蒸気雰囲気下300℃以下で、或いは大気雰囲気下300〜700℃で熱処理することにより基材表面にセラミックス多孔質膜を形成する多孔質膜の製造方法が開示されている(特許文献6)。
【0010】
さらに、ファウリング性と除菌性の双方に優れ、浄水処理などに好適に使用できるセラミックスフィルターとして、平均気孔径0.08〜1μmで、膜厚5〜20μmであるチタニアの分離層を持つセラミックスフィルターが開示されている(特許文献7)。
【0011】
また、チタニアの分離層を有するフィルターであっても、平均気孔径が0.08μmを下回るものや、膜厚が20μmを越えるものは、ファウリング性が良くない。特に浄水処理では、原水の濁度が高い場合において、濾過方式としてデッドエンド濾過を採用したときに、ファウリングが著しい(特許文献7参照)。
【0012】
さらに、特許文献7の方法で製造した多孔質膜は、ファウリング性について一応の対策はされているものの、チタニアの膜表面電位のために、後述するように、静電的に付着すると考えられているファイリング物質、特に、フミン酸に対してはその効果が限定されている。
【0013】
すなわち、現状のチタニアを骨材とするろ過製膜法による浄水用セラミックスフィルターにおいては、一般に、河川水中の物質が膜表面に付着するといういわゆるファウリングの問題が存在している。
【0014】
ここで、ファウリングとは、一般に、原水に含まれる難溶性成分や高分子の溶質、コロイド、微小固形物などが膜に沈着して、透過流速を低下させる現象をいうと理解されていて、沈着が膜内に起こった場合には、目詰まりといわれている。ファウリングは、膜ろ過の時間とともに進行する。膜面洗浄によって、ファウリングからどの程度、回復できるかはファウリング物質、膜、および、洗浄法によって大きく異なると理解されている。
【0015】
例えば、河川水中をろ過したときのファウリング物質が何であるかは明確ではないが、河川水中のフミン酸、糖、タンパク質糖の微小有機物成分が原因ではないかと考えられている。
【0016】
膜表面に付着した物質は、運転中の定期的な逆洗操作により一部の物質は薄利除去される。しかし、除去されないで残った成分は徐々に膜詰まりを起こしろ過作業の運転不可能となるので、フィルターを取り外して薬洗浄して再生する必要があった。
【0017】
しかし、フミンのファウリングメカニズムについては、図3に模式的に示すように、フミンは、その大きさがナノレベルであり、フィルターの細孔内に入り込んでいる。フミンがフィルターの細孔内で吸着しているので、剥がす手段をとってもなかなか剥がれない。フミンの二次側への漏洩は70〜80%であって、徐々に押し出されるようになって沈着してくるので、逆洗浄が効かなくなってくるという問題があった。
【0018】
【特許文献1】特公平6−67460号公報
【特許文献2】特許第2670967号公報
【特許文献3】特開2001−300922号公報
【特許文献4】特開昭63−274407号公報
【特許文献5】特開平10−235172号公報
【特許文献6】特開平10−236887号公報
【特許文献7】特開2003−230823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記ファウリングの問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ファウリングの発生を抑え、もってフィルターを取り外して薬洗浄して再生する頻度を少なくし、実用可能な強度及び耐食性を有する多孔質膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは鋭意研究の結果、ファウリング物質は電荷を帯びており、膜には静電的に吸着するのではないかと考え、従来のチタニア(TiO)よりも膜表面電位の低いジルコニア(ZrO)に骨材粒子を変更することもしくは従来のチタニア(TiO)上にジルコニア(ZrO)膜を形成することで、ファウリング物質の付着低減の効果があることを見いだし、本発明に到達した。
【0021】
また、本発明者らはさらに鋭意研究の結果、ファウリング物質は膜面の凹凸にたいしアンカー効果によって強固に付着していると考え、従来より平滑な膜表面を形成することによって、ファウリング物質の付着低減の効果があることを見いだし、本発明に到達した。
【0022】
すなわち、本発明によれば、表面を構成する骨材粒子がジルコニアであって、その表面粗さがRaで1μm以下であることを特徴とするセラミック多孔質膜が提供される。
【0023】
また、本発明によれば、表面を構成する骨材粒子がジルコニア(ZrO)であって、その膜表面ゼータ電位がpH7において−40mVから40mVであることを特徴とするセラミック多孔質膜が提供される。
さらに、本発明によれば、多孔質基材の表面に上記のセラミックス多孔質膜を形成してなることを特徴とするセラミックスフィルターが提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明のセラミックス多孔質膜及びセラミックスフィルターは、ファウリングの発生を抑え、実用可能な強度及び耐食性を有するとともに、公知のチタニアを用いたものに比較して特に優れたファウリング発生の抑制効果を有する。その結果、差圧上昇が小さいため、フィルターを取り外して薬洗浄して再生する頻度が減少しコスト減となる。更には、差圧上昇が小さいため、透水量が高いまま運転可能でき、膜面積少なくて済み、コスト減となるほか、圧上昇が小さいため、装置負荷が小さくてすむという特別優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0026】
まず、本発明のセラミックス多孔質膜について詳細に説明する。なお、以下の説明において「細孔径」、「粒径」は、いずれも「平均細孔径」、「平均粒径」を意味するものとする。
通常、セラミックス多孔質膜とは、セラミックス多孔体よりなる0.5〜500μm程度の厚さの薄膜をいう。例えば、セラミックス多孔質基材の表面に薄膜を形成したセラミックスフィルターの形で用いられ、フィルターのろ過機能の中枢をなす部分となる。
【0027】
本発明のセラミックス多孔質膜(以下、多孔質膜という。)は、少なくとも表面を構成する骨材粒子がジルコニア(ZrO)からなり、表面において固相焼結によりジルコニア(ZrO)粒子同士が結合した構造をとる。なお、表面を除く部分においては、骨材粒子は必ずしもジルコニア粒子でなくてもよい。このように、表面が高耐食性のジルコニアからなるため、通常、腐食に対して敏感な結合部についても耐食性が高い多孔質膜を形成することが可能となる。
【0028】
本発明におけるジルコニア骨材粒子は、多孔質膜の骨格を形成するセラミックス粒子であり、当該骨材粒子の粒子径により多孔質膜の細孔径、即ち、フィルター機能が決定される。換言すれば、骨材粒子の粒子径を適宜選択することにより、所望の細孔径を有する多孔質膜を得ることができる。本発明においては、0.1〜3μmの比較的粒径が小さい骨材粒子を用い、細孔径が0.05〜1μm程度の多孔質膜を形成することを目的とする。
【0029】
多孔質膜のうち、表面を除く部分を構成する骨材粒子の材質としては、セラミックスである限りにおいて特に限定されず、例えばアルミナ(Al)、チタニア、ムライト(Al・SiO)、ジルコニア(ZrO)、シリカ(SiO)、スピネル(MgO・Al)、あるいはそれらの混合物等を用いることができるが、粒子径が制御された原料が入手し易い、スラリーが安定である点からアルミナ、チタニア、ジルコニアが好ましい。
【0030】
本発明に係る多孔質膜では、少なくとも表面を構成する骨材粒子がジルコニア(ZrO)からなるとともに、その表面粗さがRaで1μm以下であるか、及び/又は、その膜表面ゼータ電位がpH7において−40mVから40mVであることにその特徴を有する。
本発明に係る多孔質膜において、その表面粗さがRaで1μm以下とすることによって、ファウリング物質の付着が大幅に低減する。また、本発明に係る多孔質膜の膜表面ゼータ電位が、pH7において−40mVから40mVであることにより、同じくファウリング物質の付着が大きく低減するという効果がある。
【0031】
次に、本発明のセラミックスフィルターについて説明する。本発明のセラミックスフィルター(以下、フィルターという。)は、多孔質基材の表面に上述した本発明の多孔質膜を形成してなるものである。
【0032】
本発明における多孔質基材(以下、基材という。)とは、セラミックスよりなる多孔質体であって、フィルターの外形を構成する部材をいう。但し、フィルター機能は専ら基材表面に形成される多孔質膜が果たすため、基材自体については細孔径が1〜50μmである、比較的細孔径の大きい多孔体を用いることができる。
【0033】
基材の材質は、セラミックスである限りにおいて特に限定されないが、例えばアルミナ、チタニア、ムライト、ジルコニア、或いはこれらの混合物等を好適に用いることができる。また、セラミックス基材表面に既にセラミックス層が被覆されているものを基材として用いてもよい。このような基材の表面に、後述する製造方法を用いて多孔質膜を形成しフィルターとする。
【0034】
最後に、本発明のセラミックスフィルターの製造方法について説明する。この製造方法においては、骨材粒子であるジルコニアを含むスラリーを多孔質基材の表面に成膜して成膜体とした後、その成膜体を大気雰囲気下、900〜1100℃の条件で熱処理することにより基材表面に多孔質膜を形成せしめることを特徴とする。スラリーを基材へ形成する方法は、公知のろ過方法が利用できるが、平滑な表面を得るためには、例えば、ディップコート法(浸漬塗布法)が特に好ましい。
【0035】
スラリー濃度は成膜する膜厚にもよるが、通常は100重量%以下の濃度とする。スラリー濃度が100重量%より高くなると骨材粒子の凝集が起こり膜に欠陥を生じ易くなる。なお、スラリーには、成膜性向上のためにPVA等の有機バインダーを添加してもよく、分散性向上のためにpH調製剤、表面活性剤等を添加してもよい。
【0036】
次いで、前記スラリーを成膜後、大気雰囲気下で熱処理を行うが、熱処理は、900〜1100℃の温度条件で行う。700℃より低温では骨材粒子間に強固な結合部が形成できず、1100℃より高温ではクラック等が発生する。
【0037】
また、フィルターを製造する場合には、前記スラリーをセラミックスよりなる多孔質基材表面に成膜して成膜体とした後、上述の熱処理を行えばよい。成膜方法は特に限定されないが、例えばスラリーを直接多孔質基材の表面に塗布して膜を形成する方法等を用いることができる。
【0038】
図1(a)〜(c)は、ディップコート法による多孔質基材表面への成膜法の一例を示しており、まず、図1(a)に示すように、レンコン状の多孔質基材1をその流通路(セル)方向が垂直になるように、槽3を備えた治具2にセットする。次いで、図1(b)のように、槽3にジルコニア(ZrO)からなる結合材を含むスラリー4を投入し、多孔質基材1の上部から多孔質基材1のセル(流通路)5内を満たしながら下方向に通過させ、図1(c)のような、多孔質基材1のセル5の内表面にスラリー膜6が形成されたものを得る。そして、得られた多孔質基材1は、次いで乾燥、焼成されることにより、表面にセラミックス多孔質膜が形成されたセラミックフィルターが製造されることになる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を多孔質基材表面に多孔質膜を形成してフィルターとした実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
東ソー社製のジルコニア粉末(商品名:TZ8Y、比表面積:BET 16±2m/g)を水に対し60wt%で添加し、2mmφのジルコニアボールとともにポットミルで7hr分散邂逅しジルコニア原料とした。これを水に対し固形分10wt%となるように添加した。更に東亞合成化学社製の分散剤(商品名:A−6114)をジルコニア粉末に対して3〜5wt%添加して、最終的に固形分10wt%のジルコニアスラリーを得た。基材として0.18μmの細孔径を有する日本碍子社製の30mmφ(孔径)×1m(長さ)のモノリス品(レンコン状基材)を用い、これを垂直に設置し、上部から前述のジルコニアスラリーをモノリス品のセル内に通水した。これを950℃、3hr焼成することによりサンプル1を得た。サンプル1の表面に形成された多孔質膜の表面粗さ(Ra)は
0.9μmであった。また、膜表面ゼータ電位がpH7において−30mVであった。
【0041】
(実施例2)
1100℃、3hrで焼成したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプル2を得た。サンプル2の表面に形成された多孔質膜の表面粗さ(Ra)は0.8μmであった。また、膜表面ゼータ電位がpH7において−30mVであった。
【0042】
(実施例3)
東ソー社製のジルコニア粉末(商品名:TZ8Y)の代わりに東ソー社製のジルコニア粉末(商品名:TZ8YS、比表面積:BET 7±2m/g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプル3を得た。サンプル3の表面に形成された多孔質膜の表面粗さ(Ra)は1.0μmであった。また、膜表面ゼータ電位がpH7において−35mVであった。
【0043】
(比較例)
東ソー社製のジルコニア粉末の代わりにチタニア骨材を用いたほかは、実施例1と同様にして比較例のサンプルを得た。このサンプルの表面に形成された多孔質膜の表面粗さ(Ra)は3.4μmであった。また、膜表面ゼータ電位がpH7において−50mVであった。
【0044】
(考察)
図2(a)(b)に示す電子顕微鏡写真は、サンプル1(実施例1)の多孔質膜を示し、図2(c)(d)に示す電子顕微鏡写真は比較例の多孔質膜を示している。また、サンプル1(実施例1)の多孔質膜は平均細孔径が0.1μm、表面粗さが0.9μmであり、比較例の多孔質膜は平均細孔径が0.18μm、表面粗さが3.4μmであった。本発明の多孔質膜が、比較例と比べて平滑であることが明らかである。
【0045】
次に、ファウリング性の評価を行った。
図3にファウリングモデル実験の概要を示す。フミン酸水溶液を各種膜(サンプル1−3と比較例)に通水して膜面の差圧を評価した。外壁と内壁が隔壁する構造の筐体10にそれぞれの膜付き多孔質基材11を配置し河川水の定流量濾過を行った。フミン酸水溶液は、河川水にフミン酸を1ppm加えてpH7に調整し、原水槽12から送液ポンプ13を介して送液した。ろ過方向は内壁側から外壁側で、ろ過方式はデッドエンド濾過である。ろ過流速は5m/日の定流量である。ろ過を行うと内壁面に汚れがたまり圧力が上昇する。その上昇を防ぐため30分ごとに外壁側から内壁側に5kg/cmの高圧水を逆洗タンク14から流し、膜付着物の洗浄を実施した。この条件により約24時間運転し圧力の変化を観察した。圧力の挙動は運転時間に伴い上昇し、洗浄後低下するが、洗浄後でも初期圧力には回復せず徐々に圧力は上昇する。運転初期の圧力に対する運転終了時の圧力差を求めてサンプル1〜3(実施例1〜3)と比較例でグラフにした。ここで、圧力の上昇率の低いものが汚れにくい膜でファウリング性に優れる(耐ファウリング性)ものである。
【0046】
図4(a)(b)にファウリング実験の結果を示す。図4(a)は差圧の時間による変化を測定したものである。サンプル1,2,3(実施例1,2,3)は差圧が上昇せず、優れたファウリング性を示しているが、比較例は12時間経過後差圧が上昇していくのがわかる。なお、図4(b)は8時間経過から12時間経過までのデータを拡大したものである。これによって比較例は逆洗が効かないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のセラミックス多孔質膜及びセラミックスフィルターは、実用可能な強度及び耐食性を有し、優れたファウリング発生の抑制効果を有するので、透水量が高いまま運転可能でき、膜面積が少なくて済み、コスト減となるほか、圧上昇が小さいため、装置負荷が小さくてすむので、固液分離用のフィルター等として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)〜(c)は、ディップコート法による多孔質基材表面への成膜法の一例を示す模式図である。
【図2】(a)(b)はサンプル1(実施例1)の多孔質膜を示す電子顕微鏡写真、(c)(d)は比較例の多孔質膜を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】ファウリングモデル実験の概要を示す説明図である。
【図4】(a)(b)は実施例1,2,3及び比較例のファウリング試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1:多孔質基材、2:治具、3:槽、4:スラリー、5:セル、6:スラリー膜、10:筐体、11:膜付き多孔質基材、12:原水槽、13:送液ポンプ、14:逆洗タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を構成する骨材粒子がジルコニア(ZrO)であって、その表面粗さがRaで1μm以下であることを特徴とするセラミック多孔質膜。
【請求項2】
表面を構成する骨材粒子がジルコニア(ZrO)であって、その膜表面ゼータ電位がpH7において−40mVから40mVであることを特徴とするセラミック多孔質膜。
【請求項3】
多孔質基材の表面に、請求項1又は2に記載のセラミックス多孔質膜を形成してなることを特徴とするセラミックスフィルター。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−254222(P2007−254222A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82369(P2006−82369)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】