説明

セラミックス押出成形用添加剤及びセラミックス押出成形用組成物

【課題】成形性に優れ、押出速度向上効果及び保形力向上効果の高いセラミックス押出成形用添加剤、及びその押出成形用添加剤を含有するセラミックス押出成形用組成物を提供する。
【解決手段】ポリオキシアルキレン誘導体(1)に基づく構成単位(ア)50〜99質量%、ジカルボン酸又は無水マレイン酸(2)に基づく構成単位(イ)1〜50質量%及び共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)0〜30質量%の組成を有する共重合体である、セラミックス押出成形用添加剤、及びこれを含有するセラミックス押出成形用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス成形体を押出成形して製造する際の押出成形用添加剤及びその押出成形用添加剤を含有する押出成形用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス押出成形は、各種原料(セラミックス粉体、バインダー、水、添加剤等)を混練機で混練し杯土と呼ばれる粘土状物質を調製し、杯土を押出機で押し出すことにより求める形状の成形物に加工する方法である。得られた押出成形物は、必要な長さに切断され、乾燥し、最後に焼結することで各種製品が得られる。
押出成形体の具体例としては、多層配電基板等に使用されるシート状製品、DPF(Diesel
Particulate Filter)やハニカム触媒担体のようなハニカム構造と呼ばれるセル状製品が挙げられる。
近年、セラミックス製品の高機能化のために、シート状製品、セル状製品ともに、小型化及び薄膜化が進められている。薄膜化するにつれて押出成形機の口金の形状が複雑となるため、押出速度が低下し単位時間当たりの生産能力が低下する問題が生じている。
また、薄膜化に伴いグリーン体の隔壁の保形力が低下するため、平面構造で保形力の影響の小さいシート状製品では大きな問題とならないが、構造が立体的であり隔壁の保形力の影響が大きいセル状製品では、押出成形直後のグリーン体がセル形状を保持できない問題、切断及び乾燥時にセル形状を保持できない問題が生じている。
グリーン体の保形力を向上させる方法として、バインダーであるメチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体量を増やす方法、混練時に使用する水量を減らす方法が知られている。しかしながら、水溶性セルロース誘導体量を増やしただけ、又は水量を減らしただけでは、杯土が固くなり押出成形可能な粘土状の杯土が得られない問題があった。
【0003】
セル状製品の製造方法としては、量産性向上のための成形助剤として脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤の使用が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、押出速度向上効果は得られるが、押出成形後のグリーン体の保形力は充分なものではなかった。
また、セラミックス成形体の製造方法として、ポリカルボン酸系分散剤(ポリオキシアルキレンモノアルキルモノアリルエーテル・マレイン酸の共重合体)の使用が提案されている(特許文献2)。当該文献には、ポリオキシアルキレンモノアルキルモノアリルエーテルの分子量が比較的に小さい(平均付加モル数110程度までの)ポリカルボン酸系分散剤を用い、かつポリビニルアルコールをバインダーとして使用してセラミックスシートを成形したところ、シート製品の性能(光沢性、柔軟性)が向上したことが示されている。
しかし、セル状製品の押出成形においては、当該ポリカルボン酸系分散剤を使用しても、成形後のグリーン体について十分な保形力を得ることはできなかった。
これらの背景から、セル状製品の押出成形時において、成形性に優れ、しかも押出速度向上効果及び保形力向上効果の高いセラミックス押出成形用添加剤の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−290430号公報
【特許文献2】特開平7−25665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、押出成形時において、成形性に優れ、押出速度向上効果及び保形力向上効果の高いセラミックス押出成形用添加剤、及びその押出成形用添加剤を含有するセラミックス押出成形組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオキシアルキレン付加モル数の大きなポリカルボン酸系共重合体を配合することによって、セラミックス押出成形用組成物の成形性、押出速度、及び保形力を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]下記式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体に基づく構成単位(ア)50
〜99質量% 、下記式(2)で表されるジカルボン酸又は無水マレイン酸に基づく構成単位(イ)1〜50質量% 及び共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)0〜30質量%
の組成を有する共重合体であることを特徴とするセラミックス押出成形用添加剤、
【0008】
【化1】

【0009】
(R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上で、2種以上の場合はブロック状付加でもランダム状付加でも良く、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、q=1又は2、p=151〜300、r=0又は1を表す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(Vは−OM又はW−(AO)、Wはエーテル基又はイミノ基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上で、2種以上の場合はブロック状付加でもランダム状付加でも良く、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、M及びMはそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は有機アンモニウム、s=1〜300を表す。)
[2]原料粉体、水溶性セルロース誘導体、水及び[1]に記載のセラミックス押出成形用添加剤を含有するセラミックス押出成形用組成物、に関する。

【発明の効果】
【0012】
本発明の押出成形用添加剤の使用によって、セラミックス押出成形用組成物の水量、あるいは結合剤を減量することが可能であり、しかも、当該セラミックス押出成形用組成物は、押出速度などの作業性に優れる。また、成形直後の保形力が向上するとともに、経時安定性が顕著に向上する。
そのため、従来から課題であった、小型、薄膜化に対応したハニカム構造体の成形においてことに有用であり、変形や型くずれの少ない成形体を与えることができる点で顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のセラミックス押出成形用添加剤は、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体に基づく構成単位(ア)50〜99質量%、一般式(2)で表されるジカルボン酸又は無水マレイン酸に基づく構成単位(イ)1〜50質量%、及び共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)0〜30質量%の組成を有する共重合体を必須成分とする。
【0014】
式(1)において、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、好ましくは水素原子である。式(1)において、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いてもよく、2種以上の場合はブロック状付加でもランダム状付加でも良い。好ましくはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基とオキシプロピレン基が質量比40〜99:1〜60で付加されたもの、さらに好ましくは90〜99:1〜10の付加物である。
式(1)において、pは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、151〜300、好ましくは151〜250である。pの値が300を超えると得られる化合物が高粘度になるため製造が困難になるので好ましくない。また、pの値が151より小さいと、保形力の経時安定性が低下するため好ましくない。
qはメチレン基の繰り返し数であり、1又は2で、好ましくは1である。
rはカルボニル基の数で、0又は1である。
【0015】
式(1)のRで示される炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基があり、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、水素原子又はメチル基である。特に、r=0である場合、エーテル化反応によってRとしての炭化水素基を導入しようとすると、ポリオキシアルキレン誘導体の粘度が高くなり製造に困難が伴うため、より好ましくは、水素原子である。また、r=1である場合、Rはメチル基であることがより好ましい。Rで示される炭化水素基の炭素数が4を超えると起泡性が高くなるので好ましくない。
【0016】
ジカルボン酸又は無水マレイン酸に基づく構成単位(イ)としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられ、式(2)において、M及びMは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムである。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。有機アンモニウムは有機アミン由来のアンモニウムであり、有機アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等などのアルキルアミンが挙げられ、好ましくはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミンである。
式(2)のVは−OM又は−W−(AO)sRを表す。Wはエーテル基又はイミノ基であり、エーテル基は−O−で表され、イミノ基は−NH−で表される。AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を表す。sは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜300、好ましくは10〜150、より好ましくは20〜70である。sの値が300を超えると得られる化合物の粘度が高くなる傾向があるため製造が困難になるので好ましくない。Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基であり、炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、水素原子、メチル基である。Rで示される炭化水素基の炭素数が4を超えると起泡性が高くなるので好ましくない。
【0017】
本発明のセラミックス押出成形用添加剤に用いるポリオキシアルキレン誘導体を有する共重合体は、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体に基づく構成単位(ア)50〜99質量%、一般式(2)で表されるジカルボン酸又は無水マレイン酸に基づく構成単位(イ)1〜50質量%及び共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)0〜30質量%
で構成されるが、好ましくは(ア)80〜99質量%、(イ)1〜20質量%、(ウ)0〜20質量%である。共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)としては、本発明の効果を低下させない範囲で加えることができ、酢酸ビニル、アリルスルホン酸ナトリウム、メタクリルスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
本発明のセラミックス押出成形用添加剤に用いる共重合体の質量平均分子量は、10,000〜100,000であり、好ましくは15,000〜50,000である。質量平均分子量が100,000を超える化合物は高粘度のため製造が困難になるので好ましくない。
【0018】
本発明のセラミックス押出成形用添加剤に用いる共重合体は、公知の方法により、重合開始剤を用いて重合することにより得ることができる。重合の方法については、塊状重合でも溶液重合でも良い。
溶液重合で水を溶剤として用いる場合は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩や、過酸化水素、水溶性のアゾ系開始剤を用いることができる。また、溶液重合でメタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、n−ヘキサン、2−エチルヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の有機溶剤を用いた重合の場合や塊状重合の際には、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物を用いることができる。また、その際にはチオグリコール酸、メルカプトエタノールなどの連鎖移動剤を用いることもできる。
特に好ましくは、溶液重合で水を用い、かつポリオキシアルキレン誘導体を製造後、ポリオキシアルキレン誘導体の入った反応容器内にマレイン酸系化合物、開始剤、及び水を一括仕込みし、不活性ガス雰囲気下、攪拌下、重合温度45〜100℃で重合させる方法である。
【0019】
本発明のセラミックス押出成形用添加剤は、そのまま単体で用いることもできるが、必要に応じて水で希釈、乳化、他の添加剤と併用して用いることも可能である。例えば、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の湿潤剤、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシアルキレン誘導体、高級アルコールエチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の非イオン性界面活性剤、高級アルコールから誘導したカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、りん酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができ、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上の場合の組み合わせについては特に制限は無い。
本発明のセラミックス押出成形用添加剤の添加量は、セラミックス粉体100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部であり、より好ましくは1〜5質量部である。
本発明のセラミックス押出成形用添加剤の添加方法及び使用形態については特に制限はない。添加方法としては、原料粉体に添加してもよいし、混練中に添加してもよく、また杯土調製後に添加してもよい。
【0020】
本発明に係るセラミックス押出成形用組成物に使用されるセラミックスの原料粉体としては、焼成によって得られたセラミックス粉体、焼成前のセラミックス原料及びセラミックス原料の配合物であり、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化タングステン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ムライト、コージェライト、チタン酸アルミニウム、サイアロン、カオリン、タルク、ゼオライト、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、又は石英等を用いることができ、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上の場合の組み合わせについては特に制限は無い。好ましくは、タルク、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ムライト、コージェライト、ゼオライトであり、より好ましくはタルク、カオリン、酸化アルミニウム、コージェライトである。
【0021】
本発明に係るセラミックス押出成形用組成物には、さらに水溶性結合剤と水を配合することができ、水溶性結合剤としては水溶性セルロース誘導体が好ましく、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはカルボキシルメチルセルロースを使用することができる。これらの結合剤は1種又は2種以上で用いることができ、2種以上の場合の組み合わせについては特に制限は無い。
水溶性セルロース誘導体を主成分とする結合剤の添加量は、原料粉体100質量部に対して1〜20質量部、好ましくは3〜15質量部であり、水分量は、原料粉体100質量部に対して15〜85質量部、好ましくは20〜50 質量部である。
【0022】
本発明の押出成形用組成物は、例えば、所定量の原料粉体と結合剤を均一に混合し、ついで、水とセラミックス押出成形用添加剤を加えて混練することによって得られ、引き続き、ハニカム体等の構造を有する口金を備えた押出機に搬送することによって、所期の構造を有する成形体を得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に説明する。式(1)で示される化合物の分子式、式(2)で示される化合物の分子式、及び質量平均分子量を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
[製造例1]
かき混ぜ機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器を装着した3リットルフラスコに、ポリオキシエチレン(エチレンオキシドの平均付加モル数210)オキシプロピレン(プロピレンオキシドの平均付加モル数11)モノアリルエーテル994g(0.1モル)、水707g、無水マレイン酸58.8g(0.6モル)を加え35℃で重合開始剤として過硫酸ナトリウム24.2g(0.1モル)を加え、系内の空気を窒素ガスで置換した後、60±2℃で10時間反応させた。重合反応終了後、28%アンモニア水溶液68g(アンモニアとして1.2モル)を加え中和し、さらに水888gを加え共重合体の40%水溶液を得た。
【0026】
[製造例2]
かき混ぜ機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器を装着した3リットルフラスコに、ポリオキシエチレン(エチレンオキシドの平均付加モル数157)モノアリルエーテル700g(0.1モル)、水510g、無水マレイン酸49.0g(0.5モル)を加え35℃で重合開始剤として過硫酸ナトリウム16.7g(0.1モル)を加え、系内の空気を窒素ガスで置換した後、60±2℃で10時間反応させた。重合反応終了後、30%水酸化カリウム水溶液186g(水酸化カリウムとして1.0モル)を加え中和し、さらに水592gを加え共重合体の40%水溶液を得た。
【0027】
[製造例3]
かき混ぜ機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器を装着した3リットルフラスコに、ポリオキシエチレン(エチレンオキシドの平均付加モル数210)オキシプロピレン(プロピレンオキシドの平均付加モル数11)モノアリルエーテルモノアセテート1005g(0.1モル)、水707g、無水マレイン酸58.8g(0.6モル)を加え35℃で重合開始剤として過硫酸ナトリウム24.2g(0.1モル)を加え、系内の空気を窒素ガスで置換した後、60±2℃で10時間反応させた。重合反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液160g(水酸化ナトリウムとして1.2モル)を加え中和し、さらに水885gを加え共重合体の40%水溶液を得た。
【0028】
[製造例4]
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌器を付した四つ口フラスコにポリオキシエチレンモノアリルモノメチルエーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数110)550g、無水マレイン酸9.8g及びトルエン300mlを入れ、50℃まで昇温し、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート2.0gを加えて70℃まで昇温し、同温度で、終始窒素ガスを通じながら10時間共重合反応を行った。反応後、減圧下に110℃でトルエンを留去して赤褐色固体を得た。
【0029】
[製造例5]
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌器を付した四つ口フラスコにポリオキシエチレンモノアリルモノメチルエーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数11)550g、無水マレイン酸98g及びトルエン300mlを入れ、50℃まで昇温し、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート2.0gを加えて70℃まで昇温し、同温度で、終始窒素ガスを通じながら10時間共重合反応を行った。反応後、減圧下に50℃でトルエンを留去して赤褐色透明な粘稠な液体を得た。30%水酸化ナトリウム水溶液160g(水酸化ナトリウムとして1.2モル)を加え中和し、さらに水935gを加え共重合体の40%水溶液を得た。
【0030】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
〈杯土調製及び評価方法〉
混練機(ニーダーN−5型、(株)石川時鐵工所製)にコージェライト(P)(SS−600、丸ス釉薬合資会社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース((MC)(メトローズ65SH−4000、信越化学工業(株)製)を入れ、均一になるまで混練し、続いて水(W)(水道水)及び押出成形用添加剤(Ad)を添加し、さらに混練を行い、杯土を調製した。この際に、硬度計(CLAY HARDNESS TESTER、日本ガイシ(株)製)を用いて杯土硬度を測定した。
〈押出試験及び評価方法〉
調製した杯土を、簡易ハニカム形状(縦30mm×横30mm×壁厚1mmの正方形内に縦12mm×横12mm×壁厚1mmの4つの正方形を収めた形状)の口金を用いた押出機(小型土練機SY−05S型、(株)石川時鐵工所製)に投入し、押出試験を行い、押出圧力及び押出速度を評価した。
〈保形力評価方法〉
得られた押出成形体を用いて保形力の評価を行った。保形力は押出成形直後と経時安定性(温度25℃、湿度50%、1日静置)の二つの観点から評価した。
押出成形直後の保形力評価は押出成形体の形を目視にて評価した(○:セル形状を保持している、△:やや型崩れがある、×:セル形状を保持できず型崩れする)。
目視の評価で○及び△であったものに関しては、以下の方法で弾性率(mN/mm2)を算出し、その値を評価値とした。押出成形体(30mm×30mm×120mmの直方体サイズに調製したもの)を、オートグラフ(AGS-J、1kN、島津製作所)にセットした圧縮試験盤(φ100mm)上に乗せて、5mm/minの速度で、5mmの圧縮試験を行い、弾性率を算出した。この弾性率の値が大きい程、保形力は優れていることとなる。
経時安定性は、押出成形直後の目視評価が○及び△であった成形体を用いて評価を行った。経時安定性は成形体の型崩れ度合いと成形体の表面状態の二つの観点から評価した。
成形体の型崩れ度合いは、成形体の縦幅及び横幅をノギスで測定し、縦幅と横幅の比が、0.99〜1.01のものを○、この範囲を外れたものは×とした。
成形体の表面状態については、綺麗な平面状態のものを○、割れやしわが生じている状態のものを×とした。
杯土調製時の水量、MC、混練時硬度を表2に、押出試験及び保形力評価結果を表3に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
表3によれば、ポリオキシアルキレン誘導体の平均付加モル数が大きい本発明のセラミックス押出成形用添加剤を使用した実施例1〜3の成形体は、ポリオキシアルキレン誘導体の平均付加モル数が小さい比較例1のものに比較して、保形力の経時安定性に優れていることが分かる。
ポリオキシアルキレン誘導体の平均付加モル数が比較例1のものよりさらに小さい添加剤を使用した比較例2のものは、成形直後から保形力を維持することができなかった。
実施例1〜3の押出成形用組成物は、本発明のセラミックス押出成形用添加剤とは異なるタイプの非イオン性界面活性剤を使用した比較例3の組成物に比較して、結合剤及び水の量を減量(表2)することができ、さらに成形性及び保形力の点で、はるかに優れている。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体に基づく構成単位(ア)50
〜99質量% 、下記式(2)で表されるジカルボン酸又は無水マレイン酸に基づく構成単位(イ)1〜50質量% 及び共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)0〜30質量%
の組成を有する共重合体である、セラミックス押出成形用添加剤。
【化1】

(R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上で、2種以上の場合はブロック状付加でもランダム状付加でも良く、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、q=1又は2、p=151〜300、r=0又は1を表す。)
【化2】

(Vは−OM又はW−(AO)、Wはエーテル基又はイミノ基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上で、2種以上の場合はブロック状付加でもランダム状付加でも良く、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、M及びMはそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は有機アンモニウム、s=1〜300を表す。)
【請求項2】
原料粉体、水溶性セルロース誘導体、水、及び請求項1に記載のセラミックス押出成形用添加剤を含有するセラミックス押出成形用組成物。




【公開番号】特開2012−206259(P2012−206259A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71452(P2011−71452)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】