説明

セラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法

【課題】強度、耐摩耗性、高温特性の改善を図ったセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミナ、スピネル、炭化ケイ素のうち少なくとも1つのセラミックス粒子と、半金属のSi粒子と、Cu粒子、Ni粒子、Fe粒子、Zn粒子、Mn粒子、Ti粒子、Cr粒子のうち少なくとも1つの金属粒子とを予混合して混合粒子を作製した後、撹拌法でその混合粒子を溶湯アルミニウムまたは溶湯アルミニウム合金に分散させることを特徴とするセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス粒子を添加した高強度なセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の製造方法では、粒子分散強化アルミニウム複合材料(以下、複合材料ともいう)は、溶湯アルミニウムへのセラミックス粒子の直接混合(混合法)、セラミックス粒子の粒子プリフォームへの圧力によるアルミニウム溶湯の含浸(含浸法)、金属酸化物粉末のアルミニウム溶湯への添加によるアルミナ粒子のin-situ生成(反応法)によって作られている。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−70538号公報
【特許文献2】特開平5−320784号公報
【特許文献3】特開平5−5140号公報
【特許文献4】特開昭60−77945号公報
【特許文献5】特開昭64−11057号公報
【特許文献6】特開平6−320235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、混合法を用いる場合、溶湯アルミニウムと粒子との濡れ性が良くないため、粒径10μm以下の粒子の溶湯金属への分散は非常に難しい。現状では、混合法において粒径10μm以下の粒子を溶湯アルミニウムに分散する技術はまだ確立されたとは言えない。粒径数μm以下のセラミックスを撹拌法で溶湯アルミニウム合金に添加すると、粒子間の凝集が生じ、複合材料中に未含浸の粒子凝集体が残される。このような未含浸の粒子凝集体は複合材料の機械的特性を劣化させる。
【0006】
また、粒子プリフォームを用いて、圧力鋳造法で粒子分散アルミニウム複合材料を作製する場合、予め粒子プリフォームを作製する必要がある。ただし、粒径5μm以下の粒子を用いると、粒子プリフォームの作製は非常に困難である。
【0007】
一方、金属酸化物粉末の溶湯アルミニウムへの添加によるアルミナ粒子のin-situ生成においては、上述と同じように粒径10μm以下の金属酸化物粒子を用いると、その混合もかなり難しい。
【0008】
例えば、特願2007−134016では、セラミックス粒子とSi粒子を予混合して、撹拌法で溶湯アルミニウム合金に添加する方法を開発し、粒子分散の状況を改善させることにより高強度の粒子分散強化アルミニウム複合材料が得られることが提案されている。しかし、Si粒子とセラミックス粒子が一緒に溶湯アルミニウム合金中に添加されるので、セラミックス粒子を分散させるためのSi粒子の添加量を増やしすぎると、合金中のSi濃度が高くなり、合金の組成はもとの合金組成から離れ、他の組成の合金になる。
【0009】
また、特許文献1では、セラミックス粒子とAl粒子を予混合して撹拌法で溶湯アルミニウムに複合する例があるが、Al粒子の表面に酸化膜(酸化アルミニウム)が形成されやすく、特に100μm以下の細かいAl粒子は表面に厚い酸化膜が形成されるため、粒径の細かいAl粒子を予混合しても表面に酸化膜が付いたままでAl粒子が溶けず、セラミックス粒子の分散性を改善することができない。
【0010】
粒子分散強化アルミニウム複合材料の機械的特性をさらに向上させるには、粒径の細かい粒子の複合が望まれ、特にナノオーダーからサブミクロンオーダーのセラミックス粒子のアルミニウム合金への複合技術の開発が望まれている。
【0011】
しかしながら、従来の製造方法では、粒径がミクロンオーダーやナノオーダーの粒子のアルミニウム合金への複合は非常に困難であるため、新たな粒子分散法の開発が望まれている。
【0012】
そこで、本発明の目的は、強度、耐摩耗性、高温特性の改善を図ったセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために創案された本発明は、アルミナ、スピネル、炭化ケイ素のうち少なくとも1つのセラミックス粒子と、半金属のSi粒子と、Cu粒子、Ni粒子、Fe粒子、Zn粒子、Mn粒子、Ti粒子、Cr粒子のうち少なくとも1つの金属粒子とを予混合して混合粒子を作製した後、撹拌法でその混合粒子を溶湯アルミニウムまたは溶湯アルミニウム合金に分散させるセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法である。
【0014】
また本発明は、アルミナ、スピネル、炭化ケイ素のうち少なくとも1つのセラミックス粒子と、半金属のSi粒子と、Cu粒子、Ni粒子、Fe粒子、Zn粒子、Mn粒子、Ti粒子、Cr粒子のうち少なくとも1つの金属粒子とを予混合して混合粒子を作製した後、撹拌法でその混合粒子を溶湯アルミニウム合金に分散させ、かつ予混合時に添加されるSi粒子、Cu粒子、Ni粒子、Fe粒子、Zn粒子、Mn粒子、Ti粒子、Cr粒子のうち少なくとも1つの添加粒子の添加量と、さらに撹拌時に添加されるAlの添加量とMgの添加量とを調整することにより、溶湯アルミニウム合金の組成を調整するセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法である。
【0015】
上記Si粒子の添加量は1.65wt%以上であるとよい。
【0016】
上記セラミックス粒子は平均粒径が1〜30μmであり、上記Si粒子は平均粒径が0.5〜20μmであり、上記金属粒子は平均粒径が1〜150μmであるとよい。
【0017】
上記Si粒子の平均粒径は、上記セラミックス粒子の平均粒径よりも小さいとさらによい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、均一に分散した微細なセラミックス粒子により強化されているため、強度、耐摩耗性、高温特性が改善され、高強度軽量化部材として自動車産業などに応用できるセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0020】
本実施形態に係るセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料(以下、複合材料ともいう)の製造方法は、アルミナ、スピネル、炭化ケイ素のうち少なくとも1つのセラミックス粒子と、半金属のSi粒子と、Cu粒子、Ni粒子、Fe粒子、Zn粒子、Mn粒子、Ti粒子、Cr粒子のうち少なくとも1つの金属粒子とを同時に予混合して混合粒子を作製した後、撹拌法でその混合粒子を溶湯アルミニウムまたは溶湯アルミニウム合金に分散させる方法である。
【0021】
セラミックス粒子は、母材であるAlに分散させることで、単体では主に複合材料の強度、耐摩耗性、高温特性を高める。
【0022】
半金属のSi粒子を添加すると、複合材料の熱膨張係数が小さくなり、溶湯の流動性、鋳型の充填性と耐摩耗性がよくなる。また、Mgを添加した場合、複合材料の強度と耐食性がよくなる。ここでいう半金属とは、金属と非金属の中間の物質であり、フェルミエネルギーが価電子帯の最上部と伝導帯の最下部を横切っている状態(価電子帯と伝導帯がわずかに重なっている)、またはその状態を示す物質である。半金属元素としては、B、Si、Ge、As、Sb、Te、Poなどがある。
【0023】
Mg粒子は、単体では主に複合材料の強度を高める。Cu粒子は、単体では主に複合材料の強度と硬度を高める。Ni粒子は、単体では主に複合材料の強度と耐熱性を高める。Fe粒子は、単体では主に複合材料の強度と耐酸化性を高める。Zn粒子は、単体では主に複合材料の強度を高める。Mn粒子は、単体では主に複合材料の強度と耐食性を高める。Ti粒子は、単体では主に複合材料の耐食性を高める。Cr粒子は、単体では主に複合材料の耐摩耗性を高める。
【0024】
セラミックス粒子と、半金属のSi粒子と、金属粒子との予混合は、乾式または湿式混合装置で行う。乾式混合装置を用いる場合、セラミックス粒子、半金属のSi粒子、金属粒子を直接混合槽に投入すればよいが、湿式混合装置を用いる場合には、エタノールや水などの溶媒をセラミックス粒子、半金属のSi粒子、金属粒子と一緒に添加する必要がある。乾式混合装置としては、V型ミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられるが、湿式混合装置としては、ボールミル、粒子撹拌機などがある。
【0025】
また、撹拌法は、合金の製造で一般的に用いられる方法であり、撹拌用容器内に母材の溶湯を入れ、その溶湯に添加物を添加し、半凝固(半溶融)状態で羽根付きの撹拌棒を回転させ、溶湯と添加物を撹拌する方法である。
【0026】
溶湯アルミニウムは、ほぼ純粋なAlの融液からなる。溶湯アルミニウム合金は、Alと、Siと、Mgとを含み、さらにCu、Ni、Fe、Zn、Mn、Ti、Crのうち少なくとも1つの金属元素を含む溶湯からなる。
【0027】
Si粒子の添加量は1.65wt%以上であるとよい。Si粒子の添加量を1.65wt%以上にすると、溶湯アルミニウムあるいは溶湯アルミニウム合金にSiを非平衡状態で溶融させた後、溶湯アルミニウムあるいは溶湯アルミニウム合金中に単体のSiを析出させることができ、AlとSiの間に金属間化合物が形成されないからである。
【0028】
しかも、AlにSi粒子を添加するとAl−Si合金も形成され、熱膨張係数が小さくなり、溶湯の流動性、鋳型充填性と耐摩耗性がよくなる。
【0029】
セラミックス粒子は平均粒径が1〜30μm、好ましくは1〜10μmであり、Si粒子は平均粒径が0.5〜20μm、好ましくは0.5〜10μmであり、金属粒子は平均粒径が1〜150μmであるとよい。
【0030】
セラミックス粒子は平均粒径を1〜10μmにしたのは、粒径が小さいセラミックス粒子を溶湯に分散させるのに、本実施形態に係る製造方法が特に有用な方法だからである。また、Si粒子のサイズに関しては、細かければ細かいほどよい。基本的にはセラミックス粒子より細かい(平均粒径が小さい)Si粒子がよいが、添加するセラミックス粒子の大きさに応じてSi粒子のサイズを上述の範囲から選ぶ。さらに、添加する他の金属粒子に関しては、粒径が細かくなると、粒子そのものが自然に酸化する問題があるので、平均粒径は1μm以上が好ましい。金属粒子の平均粒径が150μm以下であれば、予混合時にセラミックス粒子やSi粒子とよく混ざるからである。
【0031】
従来、Alに微細なセラミックス粒子を複合する際、溶湯中にセラミックス粒子を分散させるため、セラミックス粒子と金属粒子を予混合したり、セラミックス粒子とSi粒子を予混合したりしていた。セラミックス粒子と金属粒子を予混合する場合は、鋳造後に金属間化合物ができやすい。セラミックス粒子とSi粒子を予混合する場合には、金属間化合物はできないが、Si粒子の添加量を増やしすぎると、所望の合金組成とは異なる複合材料になる。
【0032】
これに対し、本実施形態に係る製造方法は、Alとの間に金属間化合物が形成されないSi粒子と、所望の合金組成の複合材料にするための金属粒子との両者を、溶湯中にセラミックス粒子を分散させるための添加物として用いる。
【0033】
本実施形態に係る製造方法では、まず、セラミックス粒子と、半金属のSi粒子と、金属粒子との予混合により、セラミックス粒子の周りが他の半金属のSi粒子と金属粒子に囲まれている状態の混合粒子を作り出す。この混合粒子を溶湯アルミニウムあるいは溶湯アルミニウム合金に添加して撹拌すると、溶湯中において、セラミックス粒子を伴った状態のまま半金属のSi粒子と金属粒子が均一に分散して溶けるので、セラミックス粒子の凝集による未含浸(複合材料中に未含浸の粒子凝集体が残されること)の問題が解決できる。
【0034】
これにより、微細なセラミックス粒子が均一に分散したセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の溶湯が得られる。その後、この複合材料の溶湯を金型に鋳込んで鋳造すれば、シリンダヘッド、ピストン、ピストンヘッドなどの自動車用部品を始めとする所望形状に作製された高強度軽量化部材が得られる。
【0035】
特に、本実施形態に係る製造方法では、特願2007−134016と比較して、セラミックス粒子は、半金属のSi粒子以外にさらに多くの金属粒子に分断されて凝集しないので、細かい粒子でも溶湯アルミニウム中や溶湯アルミニウム合金中に分散しやすくなる。
【0036】
したがって、本実施形態に係る製造方法によれば、均一に分散した微細なセラミックス粒子により強化されているため、強度、耐摩耗性、高温特性が改善され、高強度軽量化部材として自動車産業などに応用できるセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料が得られる。
【0037】
ここで、本実施形態に係る製造方法と従来方法の違いを明確にするため、アルミニウム合金に金属元素あるいは半金属元素を添加する場合について説明する。
【0038】
(i)アルミニウム合金にMg、Cu、Mn、Fe、Tiなどの金属粒子を添加しただけの場合(従来方法)
1wt%未満の微量の金属をアルミニウム合金に添加すると、微量の金属元素がAlに固溶し、α(Al)固溶体が形成し、強度が向上する。1wt%以上の多量の金属(M)を入れると、金属間化合物AlxMy(あるいは他の金属間化合物)が形成される。
【0039】
(ii)さらに半金属Siを添加すれば
1wt%以下の微量のSiをアルミニウム合金に添加すると、微量のSiがAlに固溶し、α(Al)固溶体を形成する。本実施形態に係る製造方法のように、アルミニウム合金に1.65wt%以上の多量のSiを入れると、溶湯アルミニウム合金から単体のSiが析出し、AlとSiの間に金属間化合物が形成されない。また、SiをAlに添加するとAl−Si合金になることで、熱膨張係数が小さくなり、溶湯の流動性、鋳型充填性と耐摩耗性がよくなる。
【0040】
つまり、金属間化合物が形成するか形成しないかは、本実施形態に係る製造方法と従来方法との大きな違いであり、従来方法では金属元素を添加するので、アルミニウム合金中に金属間化合物が形成される可能性がある。ただし、本実施形態に係る製造方法では、Siを1.65wt%以上添加するので、Siが単独に析出する。Siの添加量が12wt%未満と少ないとき、アルミニウム合金はAC4C(Al−7wt%Si)になり、Siの添加量が12wt%を超えて多いとき、合金はAC8A(Al−12wt%Si)あるいは他の過共晶合金になる。
【0041】
上述したように、従来方法では、セラミックス粒子と金属粉末のみを予混合して溶湯に添加しているのに対し、本実施形態に係る製造方法では、セラミックス粒子とSi粒子と金属粒子とを予混合して溶湯に添加している。
【0042】
予混合の目的は両方ともセラミックス粉末の分散性を高めることである。ただし、金属元素を添加する場合、上述のように微量の金属粒子を添加する場合、α−Alに固溶するが、添加量が多くなると、金属間化合物として析出する。しかし、Siを1.65wt%以上添加する場合、Siが単独に析出し、金属間化合物が形成されない。これは本実施形態に係る製造方法と従来方法との大きな違いである。
【0043】
上記実施形態とは異なり、上述した混合粒子を作製した後、撹拌法でその混合粒子を溶湯アルミニウム合金に分散させ、かつ予混合時に添加されるSi粒子、Cu粒子、Ni粒子、Fe粒子、Zn粒子、Mn粒子、Ti粒子、Cr粒子のうち少なくとも1つの添加粒子の添加量と、さらに撹拌時に添加されるAlの添加量とMgの添加量とを調整することにより、溶湯アルミニウム合金の組成を混合粒子を添加する前と異なる組成に調整することもできる。
【0044】
この場合にも、半金属のSi粒子、各金属粒子の添加量と、後に添加されるAlの量とを、溶湯アルミニウム合金の組成と同じになるようにすれば、上述した混合粒子を溶湯アルミニウム合金に添加しても、撹拌時のMgの添加量を調整することで、最終的に得られる溶湯アルミニウム合金の組成が混合粒子を添加する前と同じ組成になる。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
SiC粒子(平均粒径5μm、200g)、半金属のSi粒子(平均粒径10μm、56g)と金属のCu粒子(平均粒径100μm、3g)を溶媒と共にボールミルで混合し、乾燥した後、セラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の作製に備えた。半凝固状態の溶湯AC4Cアルミニウム合金(2kg)を撹拌しながら上記の混合粒子を添加した後、溶湯アルミニウム合金の組成がAC4C合金の組成になるようにAl、Mgを添加した。その後、セラミックス粒子を含んだ溶湯アルミニウム合金を750℃に加熱した後、金型に鋳込んで、SiC粒子強化AC4C合金複合材料を得た。SiC粒子強化AC4C合金複合材料を析出硬化するためのT6(溶体化処理後、人工時効硬化処理)で熱処理した後、その組織を観察した。SiC粒子は均一にアルミニウム合金中に分散していることが確認できた。この複合材料のビッカース硬さ(Hv)は161で、引張強度は374MPaであった。
【0046】
(実施例2)
スピネル粒子(平均粒径1μm、160g)、半金属のSi粒子(平均粒径0.5μm、122g)、金属のCu粒子(平均粒径50μm、23g)、Ni粒子(平均粒径120μm、24.8g)とFe粒子(平均粒径150μm、6.6g)を溶媒と共にボールミルで混合し乾燥した後、セラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の作製に備えた。半凝固状態の溶湯AC4Cアルミニウム合金(2kg)を撹拌しながら上記の混合粒子を添加した後、さらにMgを添加した。その後、スピネル粒子を含んだ溶湯アルミニウム合金を750℃に加熱した後、金型に鋳込んで、スピネル粒子強化AC8A合金複合材料を得た。スピネル粒子強化AC8A合金複合材料をT6で熱処理した後、その組織を観察した。スピネル粒子は均一にアルミニウム合金中に分散していることが確認された。この複合材料のビッカース硬さ(Hv)は178で、引張強度は395MPaであった。
【0047】
(比較例1)
750℃で溶解したAC4Cアルミニウム合金(10kg)を撹拌しながら、スピネル粒子(平均粒径1μm、600g)を添加した後、金型に鋳込んで、スピネル粒子強化アルミニウム複合材料を得た。スピネル粒子強化アルミニウム複合材料をT6で熱処理した後、その組織を観察した。多くのスピネル粒子は凝集し、均一なセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料が得られなかった。この複合材料のビッカース硬さ(Hv)は128で、引張強度は258MPaであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ、スピネル、炭化ケイ素のうち少なくとも1つのセラミックス粒子と、半金属のSi粒子と、Cu粒子、Ni粒子、Fe粒子、Zn粒子、Mn粒子、Ti粒子、Cr粒子のうち少なくとも1つの金属粒子とを予混合して混合粒子を作製した後、撹拌法でその混合粒子を溶湯アルミニウムまたは溶湯アルミニウム合金に分散させることを特徴とするセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法。
【請求項2】
アルミナ、スピネル、炭化ケイ素のうち少なくとも1つのセラミックス粒子と、半金属のSi粒子と、Cu粒子、Ni粒子、Fe粒子、Zn粒子、Mn粒子、Ti粒子、Cr粒子のうち少なくとも1つの金属粒子とを予混合して混合粒子を作製した後、撹拌法でその混合粒子を溶湯アルミニウム合金に分散させ、かつ予混合時に添加されるSi粒子、Cu粒子、Ni粒子、Fe粒子、Zn粒子、Mn粒子、Ti粒子、Cr粒子のうち少なくとも1つの添加粒子の添加量と、さらに撹拌時に添加されるAlの添加量とMgの添加量とを調整することにより、溶湯アルミニウム合金の組成を調整することを特徴とするセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法。
【請求項3】
上記Si粒子の添加量は1.65wt%以上である請求項1または2記載のセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法。
【請求項4】
上記セラミックス粒子は平均粒径が1〜30μmであり、上記Si粒子は平均粒径が0.5〜20μmであり、上記金属粒子は平均粒径が1〜150μmである請求項1〜3いずれかに記載のセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法。
【請求項5】
上記Si粒子の平均粒径は、上記セラミックス粒子の平均粒径よりも小さい請求項1〜4いずれかに記載のセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法。