説明

セラミックメタルハライドランプ

【課題】色彩制御のためのハロゲン化物添加量増加にかかわらず、発光出力の低下及びランプ短寿命を抑制する。
【解決手段】0.40〜0.77(好ましくは0.53〜0.68)のハロゲン化物添加重量対水銀重量を有する。ハロゲン化物添加量は、モル/cm3の単位で以下の成分範囲、NaI 1.84E−05〜2.33E−05、LnI3 5.20E−06〜6.60E−06、TlI 1.76E−07〜2.23E−07(Lnはランタニド元素)で達せられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックメタルハライドランプに関し、具体的には、それのみではないが、街路などの地面照明灯で使用するためのランプに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック発光管を備えたメタルハライド放電ランプの主要な損耗メカニズムは、多結晶アルミナ(PCA)壁の腐食である。発光管内に添加した金属ハロゲン化物は、ランプ作動時に1つの領域から別の領域にPCAを輸送する。この材料の輸送により、最終的には、発光管の壁内に小さな孔が生じ、従ってランプの故障が発生するか、或いは壁が熱応力下で(通常、ランプをオン又はオフに切り替える時の)割れを発生するほど薄くなるかのいずれかになる。PCA輸送は、水平作動ランプにおけるよりも垂直作動ランプにおいてより厳しいものとなる。PCA輸送速度は、金属ハロゲン化物添加重量を増加させるにつれて増大する。従って、ハロゲン化物添加重量が増加すると、ランプの寿命が短縮する。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0215524A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、以前のランプ設計は、全てのランプを同一の色彩出力で作ることができような色彩制御のためにより高いハロゲン化物添加量を使用しており、そのような色彩制御は、照明看板のような一般的照明のために必要であるが、ハロゲン化物添加量の増加により、発光出力の低下及びランプ寿命の短縮が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、長い寿命かつ高い発光出力システム効率を有するセラミックメタルハライドランプを提供しようとするものである。ランプは、水平方向又は垂直方向のいずれかの配向で作動するようにするのが望ましい。
【0005】
本発明によると、セラミックメタルハライド放電ランプを提供し、本セラミックメタルハライド放電ランプは、0.40〜0.77のハロゲン化物添加重量対水銀重量を有する。
【0006】
ハロゲン化物添加重量対水銀重量は、0.53〜0.68であるのが好ましい。
【0007】
ハロゲン化物添加量は、モル/cm3の単位で以下の成分範囲、すなわち
NaI 1.84E?05〜2.33E?05
LnI3 5.20E?06〜6.60E?06
TlI 1.76E?07〜2.23E?07
を含有することができ、ここで、Lnはランタニド元素である。
【0008】
ランタニドハロゲン化物は、DyI3を含むことができ、DyI3は、4.59E?06〜5.81E?06モル/cm3の範囲を有することができる。
【0009】
ランタニドハロゲン化物は、CeI3を含むことができ、CeI3は、6.14E?07〜7.77E?07モル/cm3の範囲を有することができる。
【0010】
ランプは、150ワットの定格とすることができ、ハロゲン化物添加量は、モル/cm3の単位で以下の成分、すなわち
NaI 2.012E?05
DyI3 5.018E?06
TlI 1.930E?06
CeI3 6.720E?07
を含有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、図面を参照しながら実施例によって本発明をより詳細に説明することにするが、図面のただ1つの図は、本発明を使用するタイプのランプの側面図である。
【0012】
このランプ1は、エジソン式ねじ込み取付金具5に取り付けられた(このケースでは)外側エンベロープ3を含む。外側エンベロープ3の内部には発光管7が設置され、発光管7は、1対の導電部材9及び11によって支持され、これら導電部材9及び11は、ピンチ部13から延びかつ発光管7のための支持体15及び17を有すると同時に発光管7内に配置された電極(図示せず)に給電も行う。
【0013】
発光管7には、好適なハロゲン化物を添加した水銀が充填されて所望の放電特性を得る。外側エンベロープは、真空にされるか又は低圧の不活性ガスが充填されるかのいずれかにされる。
【0014】
上記のようなランプの構造は、本発明自体の一翼を担うものではないことを理解されたい。本発明は、所望の長寿命、輝度及び効率をもたらすことになる添加量にある。
【0015】
本実施形態は、このワット数のランプが、初期設備として及びナトリウムランプなどの現存するランプの交換用としての両方で街路などの照明に特に有用であるので、それのみではないが、特に150ワットの定格であるランプに関する。セラミックメタルハライド放電ランプは、それらランプが許容可能な色彩の良好な発光出力を生成することができる場合には、ナトリウム蒸気によって生成される黄色よりも夜間視認用としてより良好な白色光線を生成するので、ナトリウムランプに優る特定の利点を有することになる。本発明者たちが発見した特徴の1つは、街路及び車道タイプの照明用に使用するランプに必要な色彩制御が店内陳列照明用に必要な色彩制御よりも厳格さが少ないことである。陳列照明においては、隣接するランプが互いに緊密に接近した状態になっており、従って隣接するランプ間のあらゆる色彩の変化が関連の陳列に対する悪影響により直ちに明白になるが、街路照明で使用する間隔及び周囲環境の場合には、隣接するランプの色彩の差が重要な問題となることは少ないといえる。本発明者たちはまた、街路照明及び同様な目的の場合には、これまで有用であると思われていたよりも遙かに少ないハロゲン化物添加量を使用することができ、これが、意外にも、許容可能な色彩制御を得ながら大幅に高い発光出力と大幅に延長したランプ寿命をもたらすことを発見した。
【0016】
従って、150ワットのランプの実施形態のケースでは、満たすべき課題は、長いランプ寿命の可能性をもたらす低いハロゲン化物重量の添加量と、96ルーメン/ワット(LPW)以上のランプ効率及び90LPW以上のシステム効率を有する一般的に14500ルーメン以上の高い発光出力との提供である。定格システム出力の71パーセント(115W)での作動の場合に、このランプは、9586ルーメン、83ルーメン/ワットのシステム効率、及び336Kの色温度の増加をもたらすことになる。このランプは、垂直又は水平で作動するように設計すべきである。
【0017】
この実施形態によると、この発光管は、7mgの低いハロゲン化物添加重量を含有するのに対して、同一のセラミック成分を使用する同一の定格の他の全ての発光管は、少なくとも8mg、一般的には10〜14mgの添加重量を有する。
【0018】
本発明で特に150ワットの実施形態に関して使用するパラメータを以下に表の形態で示す。
【0019】
1.特に150ワットランプの実施例で使用するハロゲン化物混合物
成分 重量分率 モル/cm3
NaI 0.448 2.012E?05
DyI3 0.405 5.018E?06
TlI 0.095 1.930E?06
CeI3 0.052 6.720E?07
使用した上記混合物の重量=7.0mg
使用した水銀の重量=11.5mg
ハロゲン化物対水銀の重量比=0.61
発光チャンバの内部容積=1.04cm3
2.一般の150ワットランプの好ましいハロゲン化物濃度範囲
成分 モル/cm3範囲
NaI 1.84E?05〜2.33E?05
DyI3 4.59E?06〜5.81E?06
TlI 1.76E?06〜2.23E?06
CeI3 6.14E?07〜7.77E?07
3.一般の150ワットランプの好ましいハロゲン化物重量範囲
全重量/mg 5.8〜8.2
mg/cm3 5.58〜7.88
4.一般の150ワットランプの好ましい水銀重量範囲
全重量/mg 11.0〜12.0
mg/cm3 10.58〜11.54
5.一般の150ワットランプの好ましいハロゲン化物対水銀重量比
ハロゲン化物/水銀 0.53〜0.68
6.本発明の範囲内に属しかつNaI+TlI+LnI3(ここで、Ln=ランタニド元素)を含有する全てのランプの一般的なハロゲン化物濃度範囲
成分 モル/cm3範囲
NaI 1.84E?05〜2.33E?05
LnI3 5.20E?06〜6.60E?06
TlI 1.76E?07〜2.23E?07
7.本発明の範囲内に属する全てのランプの好ましいハロゲン化物重量範囲
全重量/mg 4.0〜10.0
mg/cm3 3.85〜9.62
8.本発明の範囲内に属する全てのランプの好ましい水銀重量範囲
全重量/mg 10.0〜13.0
mg/cm3 9.62〜12.50
9.本発明の範囲内に属する全てのランプの一般的なハロゲン化物対水銀重量比
ハロゲン化物/水銀 0.40〜0.77

上記のものは一般的に150ワットランプに対応していたが、本発明は、上に記載した比率及び濃度を有する他のワット数のランプにも同様に適用可能であることが分かるであろう。また、比率又は濃度ではなくて個々の量が与えられた場合には、これらの量は、指定した特定のランプのみに適用されることも理解されたい。
【0020】
この開示において示した低い添加重量及び高い水銀重量は、街路照明及び車道照明用に使用する光源としての低出力(調光した)及び寿命での作動に応じた、スペクトル出力分布及び効率間の理想的なバランスをもたらす。しかしながら、ランプは、垂直又は水平位置で作動させることができるので、他の用途にも適している。添加重量は、発光管内の単位容積当たりの濃度(モル又は重量)に変換することができる。
【0021】
ランプは、電子安定器で作動させる時にその最適性能をもたらすように設計された。電子式安定器は、高輝度放電ランプの作動において電磁安定器に優る幾つかの利点をもたらし、それらには、ランプ電圧の上昇にも拘わらずランプの寿命にわたって電源調整が一定であるという利点が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を使用するタイプのランプの側面図。
【符号の説明】
【0023】
1 ランプ
3 外側エンベロープ
5 エジソン式ねじ込み取付金具
7 発光管
9、11 導電部材
13 ピンチ部
15、17 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.40〜0.77のハロゲン化物添加重量対水銀重量を有し、
前記ハロゲン化物添加量が、モル/cm3の単位で以下の成分範囲、すなわち
NaI 1.84E−05〜2.33E−05
LnI3 5.20E−06〜6.60E−06
TlI 1.76E−06〜2.23E−06
を含有し、ここで、Lnはランタニド元素であり、
前記ランタニドハロゲン化物が、CeI3を含み、
前記CeI3の成分範囲が、6.14E−07〜7.77E−07モル/cm3である、
セラミックメタルハライド放電ランプ。
【請求項2】
前記ハロゲン化物添加重量対水銀重量が、0.53〜0.68である、請求項1記載のランプ。
【請求項3】
前記ランタニドハロゲン化物が、DyI3を含む、請求項1又は2に記載のランプ。
【請求項4】
前記DyI3の成分範囲が、4.59E−06〜5.81E−06モル/cm3である、請求項3記載のランプ。
【請求項5】
0.40〜0.77のハロゲン化物添加重量対水銀重量を有し、
前記ハロゲン化物添加量が、モル/cm3の単位で以下の成分、すなわち
NaI 2.012E−05
DyI3 5.018E−06
TlI 1.930E−06
CeI3 6.720E−07
を含有する、セラミックメタルハライド放電ランプ。
【請求項6】
90ルーメン/ワット以上のシステム効率を有し、14500ルーメン以上の発光出力を提供する、請求項1乃至5のいずれかに記載のランプ。
【請求項7】
115ワットで作動する場合、9586ルーメン及び、83ルーメン/ワットのシステム効率を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載のランプ。
【請求項8】
1.04cm3の内部容積を有する発光管(7)を備える、請求項1乃至7のいずれかに記載のランプ。
【請求項9】
取付金具(5)と、
該取付金具(5)に取り付けられた外側エンベロープ(3)と、
該外側エンベロープ(3)の内部に設置され、1.04cm3の内部容積を有する発光管(7)と、
該発光管(7)を支持し、前記発光管(7)内に配置された電極に給電する、1対の導電部材(9及び11)と、
を備える、請求項1乃至7のいずれかに記載のランプ。
【請求項10】
前記ランプが、150ワットの定格である、請求項1乃至9のいずれかに記載のランプ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−33745(P2013−33745A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219937(P2012−219937)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2007−540385(P2007−540385)の分割
【原出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】