セラミック内に埋込電極を備えるアドレス指定可能なマイクロプラズマデバイスおよびアレイ
【課題】マイクロキャビティプラズマデバイスのアレイはセラミック基板(14、22a、22b)内に形成され、このアレイは、セラミック基板内に画定されるマイクロキャビティのアレイ(12、24、46、50)のための、構造体および絶縁体を提供する。
【解決手段】セラミック基板は、セラミック基板内に配置される電極(16、18、26、28、34、36、38、40、42、44、52、54、56、58、44a、48)からマイクロキャビティを絶縁する。電極は、電極間に時間変化電圧を印加することにより、マイクロキャビティアレイ内のマイクロキャビティ中の放電を点火するために置かれる。本発明の実施形態は、個々のマイクロキャビティまたはマイクロキャビティ群のアドレス指定を可能にする、電極およびマイクロキャビティ配置を含む。マイクロキャビティ壁面の形状によりマイクロキャビティ内に電場が形成される。
【解決手段】セラミック基板は、セラミック基板内に配置される電極(16、18、26、28、34、36、38、40、42、44、52、54、56、58、44a、48)からマイクロキャビティを絶縁する。電極は、電極間に時間変化電圧を印加することにより、マイクロキャビティアレイ内のマイクロキャビティ中の放電を点火するために置かれる。本発明の実施形態は、個々のマイクロキャビティまたはマイクロキャビティ群のアドレス指定を可能にする、電極およびマイクロキャビティ配置を含む。マイクロキャビティ壁面の形状によりマイクロキャビティ内に電場が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堅牢であり個々にアドレス指定可能な、マイクロ放電またはマイクロプラズマデバイスとしても知られているマイクロキャビティプラズマデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロキャビティプラズマ、すなわち特性空間寸法<1mmを有するキャビティに限定されるプラズマは、従来のマクロ放電に勝るいくつかの明らかな利点を有する。例えば、マイクロキャビティプラズマデバイスは物理的寸法が小さいため、これらデバイスは、例えば蛍光ランプ内で生成されるマクロ放電で利用する圧力よりかなり高いガス圧力または蒸気圧力で動作することが可能になる。円筒形マイクロプラズマデバイスのマイクロキャビティの直径が、例えば約200−300μmのオーダー以下である場合、デバイスは大気圧以上の圧力で動作することができる。対照的に、標準の蛍光ランプは通常、大気圧の1%未満の圧力で動作する。また、マイクロプラズマデバイスは様々な放電媒体(ガス、蒸気またはこれらの組み合わせ)で動作して、スペクトルの可視、紫外線および赤外線部分の放射光を発生する。マイクロプラズマデバイスの別の固有の特徴、すなわちプラズマへの大電力集中(通常、数十kW/cm3またはそれ以上)は、既知の光放射源である原子および分子の効率的生成をもたらす一因である。結果的に、上述の高圧動作ならびに電子およびガス温度を含む、マイクロプラズマデバイスの特性のため、マイクロプラズマは効率的な光放射源である。
【0003】
マイクロキャビティプラズマデバイスは過去10年にわたり、広範囲な用途に対して開発されてきた。マイクロプラズマのアレイの例示的な用途はディスプレイ領域にある。例えば、10μmの小さい特性寸法(d)を有する単一の円筒形マイクロプラズマデバイスが実証されているため、デバイスまたはデバイス群はディスプレイにおけるピクセルに対して好ましい空間分解能を提供する。マイクロキャビティプラズマデバイスにおける発生の効率に加えて、プラズマディスプレイパネル(PDP)の中心における紫外光は、プラズマテレビにおいて現在使用されている放電構造体の効率を大幅に上回る。
【0004】
初期のマイクロプラズマデバイスは直流(DC)電圧により駆動され、金属電極へのスパッタリング損傷を含む、いくつかの理由のため寿命が短かった。デバイス設計および製作における改善は寿命を大幅に延ばしたが、材料コストを最小化および大型アレイの製作は引き続き重要な問題点である。また時間変化電圧により励起されるより最近開発されたマイクロプラズマデバイスは、寿命が第1の関心事である場合に好ましい。
【0005】
本発明者およびイリノイ大学の同僚による研究は、マイクロキャビティプラズマデバイス分野の先駆であり、この分野を発展させてきた。この研究の結果は、1つまたは複数の重要な特徴および構造を備える実用デバイスを実現している。これらのデバイスの大半は数十kW−cm−3から100kW−cm−3を超える電力負荷で連続的に動作することができる。実現されているこのようなデバイスの1つは、光増幅器およびレーザを励起するために設計されるマイクロプラズマの多重セグメント線形アレイである。また、半導体におけるガス(または蒸気)相プラズマと正孔プラズマとを整合する能力が実証されている。半導体および微小電気機械システム(MEMs)により大きく発展した製作プロセスは、これらのマイクロキャビティプラズマデバイスの多くを製作するのに利用されている。
【0006】
本発明者およびイリノイ大学の同僚による研究の結果は、例示的な実用デバイスを実現している。例えば、半導体製作プロセスを利用して、均一な放射特性を示す高密度のマイクロプラズマデバイスのアレイを実証してきた。シリコン内に形成されるアレイは、有効面積25cm2内に250,000個ものマイクロプラズマデバイスを備え、アレイ内の各デバイスは通常50μm×50μmの放射開口を有する。このようなアレイを用いてプラズマディスプレイパネルに類似する方法で蛍光体を励起でき、かつ、従来のプラズマディスプレイパネルでは現在まで達成されていない発光有効性の値が得られることが実証されている。別の重要なデバイスは高感度を示すマイクロキャビティプラズマ光検出器である。アレイ内に分散されるマイクロプラズマの位相ロッキングもまた実証されている。
【0007】
以下の米国特許および特許出願は、これらの研究成果から得られるマイクロキャビティプラズマデバイスを記載している。すなわち、米国特許出願公開第20050148270号明細書「マイクロ放電デバイスおよびアレイ(Microdischarge devices and arrays)」;米国特許出願公開第20040160162号明細書「マイクロ放電デバイスおよびアレイ(Microdischarge devices and arrays)」;米国特許出願公開第20040100194号明細書「マイクロ放電光検出器(Microdischarge photodetectors)」;米国特許出願公開第20030132693号明細書「テーパ形マイクロキャビティを有するマイクロ放電デバイスおよびアレイ(Microdischarge devices and arrays having tapered microcavities)」;米国特許第6,867,548号明細書「マイクロ放電デバイスおよびアレイ(Microdischarge devices and arrays)」;米国特許第6,828,730号明細書「マイクロ放電光検出器(Microdischarge photodetectors)」;米国特許第6,815,891号明細書「マイクロ放電を励起する方法および装置(Method and apparatus for exciting a microdischarge)」;米国特許第6,695,664号明細書「マイクロ放電デバイスおよびアレイ(Microdischarge devices and arrays)」;米国特許第6,563,257号明細書「多層セラミックマイクロ放電デバイス(Multilayer ceramic microdischarge device)」;米国特許第6,541,915号明細書「高圧アークランプ補助型始動デバイスおよび方法(High pressure arc lamp assisted start up device and method)」;米国特許第6,194,833号明細書「マイクロ放電ランプおよびアレイ(Microdischarge lamp and array)」;米国特許第6,139,384号明細書「マイクロ放電ランプ形成プロセス(Microdischarge lamp formation process)」;および米国特許第6,016,027号明細書「マイクロ放電ランプ(Microdischarge lamp)」、に記載されている。
【0008】
米国特許第6,541,915号明細書は、個々のデバイスが、セラミックを含む材料から機械加工されたアセンブリに組み込まれているマイクロキャビティ・プラズマデバイス・アレイを開示している。金属電極は、マイクロキャビティ内および電極間に生成されるプラズマ媒体に曝される。米国特許第6,194,833号明細書もまた、基板がセラミックであり、シリコンまたは金属フィルムがその上に形成されるアレイを含む、マイクロキャビティ・プラズマデバイス・アレイを開示している。キャビティの上部および底部に形成される電極ならびにシリコン、セラミック(またはガラス)マイクロキャビティ自体はプラズマ媒体と接触する。米国特許出願公開第2003/0230983号明細書は低温セラミック構造体内で生成されるマイクロキャビティプラズマを開示している。積重ねセラミック層はキャビティを形成するように構成および微細加工され、中間導体層はプラズマ媒体を励起する。米国特許出願公開第2002/0036461号明細書は、電極がプラズマ/放電媒体と接触する、中空の陰極放電デバイスを開示している。
【0009】
マイクロキャビティプラズマデバイスの開発はディスプレイ市場に重点をおいて続けられている。ディスプレイにおけるマイクロキャビティプラズマデバイスの最終的な有用性は、有効性(以前に述べた)、寿命およびアドレス指定可能性を含む、いくつかの重要な要素によって決まる。アドレス指定可能性は特に大半のディスプレイ用途において不可欠である。例えば、ピクセルを有するマイクロキャビティ放電群については、各マイクロプラズマデバイスは個別にアドレス指定可能でなければならない。
【0010】
現在のフラットパネルディスプレイの問題解決方法には多くの欠点がある。広く利用されているフラットパネルディスプレイ技術は、液晶ディスプレイ(LCD)およびプラズマディスプレイパネルを含む。これらの技術は、テレビといった大画面方式に広く利用されている。LCDはまたコンピュータディスプレイに利用されている。小型電子デバイスもまた高コントラスト、高輝度、高分解能ディスプレイの必要性を有する。例えば、携帯情報端末(PDA)および携帯電話機は高コントラスト、高分解能および高輝度のディスプレイにより利益を得る。
【0011】
効率は、特に、電池式携帯端末といった携帯電源を利用する用途において問題である。電池式ディスプレイの動作寿命は電力消費に反比例するため、ディスプレイの効率の改善は電力源の寿命に直接影響する。しかし、効率はまた、大型の非携帯ディスプレイに関する問題でもある。従来のプラズマディスプレイパネルは通常、例えば、典型的にはピクセルに供給される電力の約1%を可視光に変換するという、低効率で動作する。この効率の改善は、ディスプレイ産業における優先事項であるが、従来のプラズマディスプレイの効率を向上するには、動作に必要な既に大きい維持電圧のさらなる増加を必要とするであろう。現在の研究は、プラズマディスプレイパネルガス混合物中のキセノン含有量を増加することに重点が置かれており、これは、付随する維持電圧の上昇を必要とすると予測され、ディスプレイの駆動電子回路のコストに悪影響を与える。プラズマディスプレイパネルおよび液晶ディスプレイパネルはまた、ディスプレイを密封するためにガラスを使用することから重くなる傾向があり、若干脆くなる可能性がある。
【0012】
マイクロキャビティプラズマデバイスの使用を可能にする実用的な設計はフラットパネルディスプレイ産業の将来の展望を変えると予測される。標準的なフラットパネルディスプレイ技術と比較すると、マイクロプラズマデバイスは例えばより小さいピクセルサイズの可能性を提供する。小さいピクセルサイズはより高い空間分解能と直接つながる。加えて、試験結果では、マイクロプラズマデバイスは、プラズマディスプレイパネルにおける従来のピクセル構造において可能な効率に比べて高い効率で電気エネルギーを可視光に変換することを示した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、セラミック基板内に画定されるマイクロキャビティアレイの構造体を提供するセラミック基板に形成されるマイクロキャビティプラズマアレイである。セラミック基板はまたセラミック基板内に埋め込まれている電極からマイクロキャビティを電気的に絶縁し、マイクロキャビティを相互に物理的に分離する。電極はセラミック基板内に埋め込まれ、電極間に時間変化電圧を印加することによりマイクロキャビティアレイ内のマイクロキャビティ中の放電を点火するように配置される。本発明の実施形態は電極のマイクロキャビティ配置を含み、これにより、個々のマイクロキャビティまたはマイクロキャビティ群のアドレス指定を可能にする。好ましい実施形態では、アドレス電極はマイクロキャビティの上に位置するか、またはマイクロキャビティを取り囲む。他の好ましい実施形態では、マイクロキャビティの列はセラミックに埋め込まれているペアの実質的に同一平面上の平行な電極間に形成される。
【0014】
本発明のマイクロキャビティ・プラズマデバイス・アレイの好ましい実施形態はセラミック基板内に形成され、このセラミック基板はセラミック内に画定されるマイクロキャビティのための構造体を提供する。セラミック基板はまたセラミック基板内に埋め込まれる電極からマイクロキャビティを電気的に絶縁する。セラミックにより提供される別の機能は、マイクロキャビティ壁面の形状が、セラミックの誘電定数およびマイクロキャビティ内のガス圧力と合わせて、マイクロキャビティ内の電場の形状における制御、したがって、マイクロキャビティ内に生成される放射の空間依存性を提供することである。電極は電極間に時間変化電圧を印加して、マイクロキャビティアレイ内のマイクロキャビティ中の放電を点火するように配置されている。本発明の実施形態は、個々のマイクロキャビティまたはマイクロキャビティ群のアドレス指定を可能にする電極マイクロキャビティ配置を含む。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態のマイクロキャビティ・プラズマデバイス・アレイは、セラミック基板内に配置されるマイクロキャビティアレイを有するセラミック基板を含む。第1電極はセラミック基板に配置されるセラミック内に埋め込まれる。第1電極はセラミック基板内に埋め込まれ、アレイ内の複数のマイクロキャビティに近接して配置される。第2電極は、第1電極が近接しているマイクロキャビティの少なくとも1つに近接しており、またセラミック基板内に埋め込まれ、これにより、マイクロキャビティと他の電極の両方から電極を電気的に絶縁する。第1および第2電極は、第1電極と第2電極間に時間変化電圧を印加して、少なくとも1つのマイクロキャビティ内の放電を点火するように配置される。
【0016】
好ましい実施形態では、電極は同一または実質的に同一平面にあり、相互に平行である。本発明のデバイスは、好ましくは低温焼成セラミック(LTCC)、すなわち積み重ねて所望の構造体を実現できる薄いシートにして利用可能な材料を用いて形成される。好ましい実施形態のデバイスのセラミックパッケージは、キャパシタ、レジスタおよび能動デバイスといった電子デバイスと容易に一体化される。
【0017】
次に、好ましい実施形態が図面に関して説明される。図面は概略図を含み、これら図面は、当業者であれば添付の説明を参照して完全に理解されるであろう。特徴は説明の目的で強調されることもある。好ましい実施形態から、当業者は本発明のより広範な態様を認識するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に図面、詳細には図1を参照する。図1は、好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイ10の一部の部分的な透視概略図であり、狭い間隔を空けたマイクロキャビティ12がセラミック基板14内に形成されている。1対の電極16および18がセラミック基板内に埋め込まれている。マイクロキャビティ12の断面は円筒形であり、例えば、少なくとも20μmの小さい直径、しかし典型的には500μm以下の直径を有する。各マイクロキャビティ内にプラズマ(放電)が生成される。電極16、18はマイクロキャビティ12からある距離だけ間隔を空けており、これによりマイクロキャビティ12内に含まれる放電媒体(プラズマ)から電極16、18を絶縁する。この配置によって、電極16、18間に時間変化(AC、RF、二極性またはパルス状DC他)電圧を印加することにより、ガス状または蒸気媒体を励起して、各マイクロキャビティ内にマイクロプラズマを生成できる。
【0019】
セラミック材料14は好ましくは低温焼成セラミック(LTCC)であり、このセラミックはマイクロプラズマから電極16、18を保護する。これは、デバイスの寿命を制限する、電極のスパッタリングを回避する。この設計の利点は、LTCCの処理に対する技術が進歩していることである。図1の構造体を再現して、高密度のマイクロキャビティ12を大きなアレイとして実現してもよい。マイクロキャビティ12は円筒形として示されているが、長方形の溝といった他の断面もまた適用できる。低温焼成セラミックから構成される構造体は薄い層から、1度に1つの層で形成されてもよく、全体のプロセスは自動化されてもよい。電極のスクリーン印刷を含むこれらのプロセスは、例えば、自動車電子機器および携帯電話産業において広範に使用される。図1の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイ10は、マイクロキャビティ12の列12が堅牢な一体構造で同時に励起されるディスプレイを製作できる。
【0020】
あるいは、単一マイクロキャビティをアドレス指定することを達成できる。図2は、例えばピクセルを構成する、個々のマイクロキャビティのアドレス指定可能性を提供する好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマアレイを示している。個々のアドレス指定可能性は様々な用途、詳細にはディスプレイ用途および生物医学診断において重要である。デバイスは図2に示されており、LTCC材料の多重層22a、22bから形成されている。層22aは層22bと基本的に同一であり、複数の整列したマイクロキャビティ24を画定する。層22bは薄く、平行平面を横方向に走る、第1電極26および第2電極28を形成するためのベース体を提供するのに役立つ。
【0021】
第1電極26は一般に相互に平行であり、同一平面または実質的に同一平面にあり、第2電極28も同様である。図示された実施形態では、マイクロキャビティ24の列は各隣接するペアの第1電極26間に配置される。マイクロキャビティ24の列がすべての隣接するペアの第1電極26間に位置してもよいが、これは必ずしも必要ではない。各マイクロキャビティはまた隣接するペアの第2電極28により境界を定められている。すなわち、いずれかのマイクロキャビティ24の軸に沿って見た場合、そのマイクロキャビティは隣接するペアの第1電極26と隣接するペアの第2電極28との間にあることが確認される。マイクロキャビティの軸は、第1電極26および第2電極28により画定される平面に名目上垂直である。
【0022】
第1電極は一体として第1電極アレイを形成する。第2電極は一体として第2電極アレイを形成する。1つの実施形態では、各マイクロキャビティは第1電極アレイおよび第2電極アレイにより画定される平面と交差する。別の実施形態では、この交差は必ずしも必要ではない。アレイ内の個々のマイクロキャビティは、特定のペアの隣接する第1電極26と特定のペアの隣接する第2電極28とに適切な大きさの時間変化電圧を印加することによりアドレス指定される。1つのペア電極はアドレス電極として働き、1つのペア電極は維持電極として働く。各ペアの電極に印加される電圧の大きさは一般に等しくなく、マイクロキャビティ内のガス、ガス圧力、マイクロキャビティおよび電極アレイの大きさに依存する。
【0023】
当業者にはまた、マイクロキャビティ群もまたアドレス指定できることが理解されるであろう。マイクロキャビティ群の励起は、当業者により理解されるとおり、同時に複数の隣接する電極を励起することにより実現できる。多くの他のアドレス指定方式が、様々なアドレス指定方式を可能にする本発明の例の実施形態と同様に、当業者には明白であろう。
【0024】
セラミック薄板22aの両端には開口30が配置され、電極アレイ26および電極アレイ28の各電極に対する電気接続に対応する。なお、第1電極26は第2電極28に直角であるため、上位層22aの開口30は、下位層(または薄板)22aの開口部30とは異なる層22aの端部にある。第1電極26および第2電極28のアレイは様々なプロセスにより製作できる。1つの低コストの方法は白金または銀ペーストからのスクリーン印刷であるが、他の導電性材料もまた利用可能である。同様に、第1電極26および第2電極28のアレイへの電気接続は、金属ペーストの使用を含む、多くの既知の方法により生成できる。
【0025】
図2のデバイスを製作するために、薄板22aおよび22bは特定のサイズに切断され、穴のパターン(マイクロキャビティ24および開口30)がシート22aおよび22bに形成され、電極アレイ26および28がセラミック薄板22b上に形成される。シート22aおよび22bが位置合わせされた後、加熱しながら一緒に加圧される。この処理により、第1電極26および第2電極28がセラミックに埋め込まれ、ペアの隣接する電極がマイクロキャビティ24の各列の上に置かれる、一体構造のセラミック構造体を形成する。LTCC内にアレイを形成する利点は、自動化プロセスの利用可能性および高温および化学的活性環境におけるこの材料の安定性を含む。
【0026】
本発明のマイクロキャビティプラズマアレイは、様々なサイズ、幾何学的配置およびマイクロキャビティのアドレス指定方式において、当業者には理解されるとおり、このようなプロセスにより製作できる。単に例示目的のために、図2によるアレイは約50mmの長さおよび幅Xを有する。マイクロキャビティ24間のピッチは4mmである。マイクロキャビティ24のアレイと基板の縁部との間の距離Bは11mmである。マイクロキャビティの直径Cは0.115mm(115μm)である。電極の端部と基板の縁部との間の距離Fは10mmである。電極間の幅および間隔Gは2mmである。層22aの厚みHは0.5mmであり層22bの厚みIは0.2mmである。電極26および28の厚みは約0.2mmである。例示的な電極は金または銀の電極である。製作後のデバイスの全体の厚みは例えば約1.2から1.5mmである。上と同じく、寸法は単に例としての実施形態である。当業者には、より大きいおよびより小さいアレイが形成され、マイクロキャビティの直径およびピッチは広範囲にわたって変化してもよいことは認識されるであろう。当業者にはまた、大規模なアレイが小さいアレイの複製から形成されてもよいことは認識されるであろう。
【0027】
別の例として、図3は、製作され、検査されたマイクロプラズマデバイスアレイを示す。厳密には寸法は単に例示であり、製作され、検査されたアレイの詳細を提供するために示されている。図3Aおよび3Bに示されている例のアレイは図1の実施形態と一致する。図1において用いられている参照符号は、図3Aおよび3Bの例示的な実施形態の類似の特徴箇所を特定する。製作されたアレイにおいては、マイクロキャビティ12は、図示されているとおり、127μmまたは180μmのいずれかの直径を有する円筒形である。埋め込まれた電極16、18は実質的に同一平面上にあり、電極の内側端間の間隔は200μmである。試験用のデバイス電極16、18は露出した接触部31で終端する。
【0028】
試験は本発明のアレイの動作特性を立証するために実施された。図4は図3Aおよび3Bに示されている構造を有するアレイのV−I特性を示している。例としてのデバイスは72個のマイクロキャビティの単一列から成るアレイであった。各マイクロキャビティは127μmの直径を有した。図4に示されるデータは、アレイが20kHzの周波数を有する両極(パルス化DC)波形を用いて励起されるときの、400トールから700トールの圧力のネオンガスに対して得られた。図4に示される測定された電気特性は正勾配を有し、放電が異常グローモードで動作していることを示している。したがって、アレイに対して外部の安定器を供給することは必要ではない。
【0029】
本発明の別の利点は、マイクロキャビティ内に電場を生成できることである。詳細には、マイクロキャビティ壁面のセラミックの形状が、ガス圧力とガス(蒸気)自体の特質と合わせて、マイクロキャビティ内の電場強度の空間的変化を限られた範囲に決定する。
【0030】
図3Aおよび3Bの構造を有する試作デバイスが製作され、作動される。詳細には、2組のアレイが製作された。両方のアレイにおけるマイクロキャビティは127μmまたは180μmの直径を有する円筒形であった。マイクロキャビティ内で生成されるマイクロプラズマの画像はCCDカメラおよび光学望遠鏡を用いて記録された。放射(およびマイクロキャビティ内の関連電場)は複数の要因により決定されるある一定角度領域に集中され、これら要因の1つはマイクロキャビティ壁面の曲率半径であることが、これらの画像(マイクロ写真)から明白である。言い換えると、電場は、セラミック/プラズマ界面の曲率のために、集中すなわち「集束」できる。本発明の実施形態は、従来のマイクロキャビティデバイス(励起電極ペアが2つの異なる平面にあるか、またはこれら電極ペア間の垂直方向分離を有し、その目的が一般に方位角的に均一であるマイクロプラズマを生成することであった)とは大幅に異なる特性を提供する。本発明のこの特性の用途は広範囲であって、大きな電場強度が生成されることを必要とする、特定の原子または分子種の生成を含む。本発明の実施形態は、実質的に同一平面の電極ペアまたはマイクロキャビティの軸に対して直角に位置合わせされる電極ペアを有する。これにより電場の集中が可能になる。また、セラミック/プラズマ界面の形状は図1、2、3Aおよび3Bの円形から変更できる。セラミック/プラズマ界面の形状を変更することにより、他の放射パターンの生成が可能になる。
【0031】
本発明の追加の実施形態は、図5−9に概略的に示されている。図5−9では、図1−3Bからの同一参照符号が同様の部分を示すために用いられる。図5Aは実施形態の図5Bおよび5Cに適用できる、平面図の概略図である。図5Aに示された構造は、図1、3Aおよび3Bと同様に実質的に同一平面上の電極を含む。図5Bは電極16、18に電力を供給する方法を示す。詳細には、すべての他の電極は接地してもよい。図5Cは代替の実施形態を示しており、この実施形態では、2組の実質的に同一平面上の電極16、18および34、36が線形アレイの各マイクロキャビティ12の間に設けられている。第1電極、例えば16および34はマイクロキャビティ12を維持することに役立つのに対して、第2電極、例えば18および36は特定のマイクロキャビティ12をアドレス指定するために使用できる。
【0032】
図6には本発明の別の実施形態が示されている。マイクロキャビティ12の単一列が示されており、必要に応じて、列は図1−5と同様に複製できる。図6では、第1および第2電極38、40は、各電極とマイクロキャビティの最も近い縁部と間のセラミックの厚みが一定になるように、形成される。図6による好ましい実施形態では、第1および第2電極38、40は実質的に同一平面上にある。
【0033】
本発明の別の実施形態は、図7に示されたマイクロキャビティプラズマデバイスの線形アレイの平面図により示されている。この実施形態では、主電極は上と同じく実質的に同一平面上にあるが、第1および第2電極42、44は、列になっているマイクロキャビティ12の間に突き出るセグメント42a、44aを含む。これらの電極セグメント42a、44aはアレイに対して点火電圧を低減するのに効果的である。図8の別の実施形態は、図7の実施形態と同様であるが、実質的に長方形断面を有するマイクロキャビティ46を含む。図9は、第3組の電極48が電極セグメント42aおよび42bと置き換わることを除いて、図7および8の実施形態と同様の別の実施形態を示している。第3電極48は実質的に同一平面上の第1または第2電極42、44のいずれにも電気的に接続されていない。これらの点火電極48はセラミックに埋め込まれ、電極42および44から電気的に絶縁され、分離された電源により駆動することができる。
【0034】
本発明の実施形態におけるマイクロキャビティはまた、セラミックの深さの関数として変化する断面を有することもできる。図10A、10Bおよび10Cは切頭円錐形状を有するテーパ形マイクロキャビティ50を含む本発明の実施形態を示している。図10Aの実施形態では、第1および第2埋込電極16、18は、例えば図1の実施形態と同様に実質的に同一平面上にある。断面が変化可能でいることにより、放電特性は電極の配置に強く依存する。Kの値は、各電極の内側端とマイクロキャビティ壁面との間のセラミックの厚みを決定する。セラミックの厚みの公称値は1μmと500μmの間である。図10Bの実施形態では、第1および第2電極52、54はマイクロキャビティ壁面と平行に向けられる。このような電極/マイクロキャビティ形状はいくつかの方法で製作でき、これらの方法の1つは円錐形のキャビティの内側上に金属を配置し、次に薄いセラミック層で金属をコーティングすることである。図10Cは、本発明の1つの実施形態を示しており、この実施形態では埋込電極56、58は少なくとも2つのセクションを有し、これらセクションうちの一方はマイクロキャビティ50と平行に位置する。
【0035】
図11Aおよび11Bに示される、本発明の別の実施形態では、マイクロプラズマデバイスは、図2の実施形態と同様の方法で個々にアドレス指定可能である。図11Aおよび11Bの実施形態では、アドレス電極26はマイクロキャビティ24を取り囲む。薄いセラミックリング56がマイクロキャビティ24の縁部からアドレス電極を絶縁する。リング56はマイクロキャビティから電極26を距離Tだけ分離する。維持電極28は実質的に同一平面上にあり、マイクロキャビティ24の間で電極26から距離Sの位置に配置される。アドレス電極および維持電極の両方はセラミック10に埋め込まれ、必要に応じて、図11の構造体は現在のPDPで使用されるものと同一の方法および電子回路により駆動できる。
【0036】
当業者であれば、本発明のマイクロキャビティプラズマアレイに関して多くの用途を認識するであろう。マイクロプラズマの低電力消費および高効率は、ディスプレイ用途に特に適したアレイを実現する。単一放電または放電群を組み合わせて、ディスプレイのピクセルを形成してもよい。放電により蛍光体を励起して、カラーディスプレイを形成してもよい。例えば色素標識付けされた生体分子の光励起といった生物医学診断は、これらのアレイに適した理想的な別の用途である。セラミックアレイはまた電子部品(キャパシタ、レジスタ、インダクタ他)と本発明のマイクロキャビティプラズマアレイとを一体化する可能性を提供する。
【0037】
本発明の様々な実施形態が図示され説明されてきたが、他の変更形態、置換形態および代替形態は当業者には明らかであることは理解されるべきである。このような変更形態、置換形態および代替形態は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく実現可能であり、これらは添付の特許請求の範囲から決定されるべきである。
本発明の様々な特徴は以下の特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好ましい実施形態のマイクロ放電アレイの概略図である。
【図2】本発明のマイクロキャビティプラズマデバイスの好ましい実施形態のアレイの分解斜視概略図である。
【図3】図3Aは、セラミック内に形成されたマイクロキャビティプラズマデバイスの2つの線形アレイの側面(真横)断面図、図3Bは、セラミック内に形成されたマイクロキャビティプラズマデバイスの2つの線形アレイの平面断面図である。
【図4】図4は、図3Aおよび図3Bの構造体を有する試験用のマイクロプラズマデバイスアレイの例示的なV−I特性を示している。
【図5】図5Aは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面断面図、図5Bは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図、図5Cは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図である。
【図6】本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面図である。
【図7】本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面図である。
【図8】本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面図である。
【図9】本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面図である。
【図10】図10Aは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図、図10Bは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図、図10Cは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図である。
【図11】図11Aは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面図、図11Bは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、堅牢であり個々にアドレス指定可能な、マイクロ放電またはマイクロプラズマデバイスとしても知られているマイクロキャビティプラズマデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロキャビティプラズマ、すなわち特性空間寸法<1mmを有するキャビティに限定されるプラズマは、従来のマクロ放電に勝るいくつかの明らかな利点を有する。例えば、マイクロキャビティプラズマデバイスは物理的寸法が小さいため、これらデバイスは、例えば蛍光ランプ内で生成されるマクロ放電で利用する圧力よりかなり高いガス圧力または蒸気圧力で動作することが可能になる。円筒形マイクロプラズマデバイスのマイクロキャビティの直径が、例えば約200−300μmのオーダー以下である場合、デバイスは大気圧以上の圧力で動作することができる。対照的に、標準の蛍光ランプは通常、大気圧の1%未満の圧力で動作する。また、マイクロプラズマデバイスは様々な放電媒体(ガス、蒸気またはこれらの組み合わせ)で動作して、スペクトルの可視、紫外線および赤外線部分の放射光を発生する。マイクロプラズマデバイスの別の固有の特徴、すなわちプラズマへの大電力集中(通常、数十kW/cm3またはそれ以上)は、既知の光放射源である原子および分子の効率的生成をもたらす一因である。結果的に、上述の高圧動作ならびに電子およびガス温度を含む、マイクロプラズマデバイスの特性のため、マイクロプラズマは効率的な光放射源である。
【0003】
マイクロキャビティプラズマデバイスは過去10年にわたり、広範囲な用途に対して開発されてきた。マイクロプラズマのアレイの例示的な用途はディスプレイ領域にある。例えば、10μmの小さい特性寸法(d)を有する単一の円筒形マイクロプラズマデバイスが実証されているため、デバイスまたはデバイス群はディスプレイにおけるピクセルに対して好ましい空間分解能を提供する。マイクロキャビティプラズマデバイスにおける発生の効率に加えて、プラズマディスプレイパネル(PDP)の中心における紫外光は、プラズマテレビにおいて現在使用されている放電構造体の効率を大幅に上回る。
【0004】
初期のマイクロプラズマデバイスは直流(DC)電圧により駆動され、金属電極へのスパッタリング損傷を含む、いくつかの理由のため寿命が短かった。デバイス設計および製作における改善は寿命を大幅に延ばしたが、材料コストを最小化および大型アレイの製作は引き続き重要な問題点である。また時間変化電圧により励起されるより最近開発されたマイクロプラズマデバイスは、寿命が第1の関心事である場合に好ましい。
【0005】
本発明者およびイリノイ大学の同僚による研究は、マイクロキャビティプラズマデバイス分野の先駆であり、この分野を発展させてきた。この研究の結果は、1つまたは複数の重要な特徴および構造を備える実用デバイスを実現している。これらのデバイスの大半は数十kW−cm−3から100kW−cm−3を超える電力負荷で連続的に動作することができる。実現されているこのようなデバイスの1つは、光増幅器およびレーザを励起するために設計されるマイクロプラズマの多重セグメント線形アレイである。また、半導体におけるガス(または蒸気)相プラズマと正孔プラズマとを整合する能力が実証されている。半導体および微小電気機械システム(MEMs)により大きく発展した製作プロセスは、これらのマイクロキャビティプラズマデバイスの多くを製作するのに利用されている。
【0006】
本発明者およびイリノイ大学の同僚による研究の結果は、例示的な実用デバイスを実現している。例えば、半導体製作プロセスを利用して、均一な放射特性を示す高密度のマイクロプラズマデバイスのアレイを実証してきた。シリコン内に形成されるアレイは、有効面積25cm2内に250,000個ものマイクロプラズマデバイスを備え、アレイ内の各デバイスは通常50μm×50μmの放射開口を有する。このようなアレイを用いてプラズマディスプレイパネルに類似する方法で蛍光体を励起でき、かつ、従来のプラズマディスプレイパネルでは現在まで達成されていない発光有効性の値が得られることが実証されている。別の重要なデバイスは高感度を示すマイクロキャビティプラズマ光検出器である。アレイ内に分散されるマイクロプラズマの位相ロッキングもまた実証されている。
【0007】
以下の米国特許および特許出願は、これらの研究成果から得られるマイクロキャビティプラズマデバイスを記載している。すなわち、米国特許出願公開第20050148270号明細書「マイクロ放電デバイスおよびアレイ(Microdischarge devices and arrays)」;米国特許出願公開第20040160162号明細書「マイクロ放電デバイスおよびアレイ(Microdischarge devices and arrays)」;米国特許出願公開第20040100194号明細書「マイクロ放電光検出器(Microdischarge photodetectors)」;米国特許出願公開第20030132693号明細書「テーパ形マイクロキャビティを有するマイクロ放電デバイスおよびアレイ(Microdischarge devices and arrays having tapered microcavities)」;米国特許第6,867,548号明細書「マイクロ放電デバイスおよびアレイ(Microdischarge devices and arrays)」;米国特許第6,828,730号明細書「マイクロ放電光検出器(Microdischarge photodetectors)」;米国特許第6,815,891号明細書「マイクロ放電を励起する方法および装置(Method and apparatus for exciting a microdischarge)」;米国特許第6,695,664号明細書「マイクロ放電デバイスおよびアレイ(Microdischarge devices and arrays)」;米国特許第6,563,257号明細書「多層セラミックマイクロ放電デバイス(Multilayer ceramic microdischarge device)」;米国特許第6,541,915号明細書「高圧アークランプ補助型始動デバイスおよび方法(High pressure arc lamp assisted start up device and method)」;米国特許第6,194,833号明細書「マイクロ放電ランプおよびアレイ(Microdischarge lamp and array)」;米国特許第6,139,384号明細書「マイクロ放電ランプ形成プロセス(Microdischarge lamp formation process)」;および米国特許第6,016,027号明細書「マイクロ放電ランプ(Microdischarge lamp)」、に記載されている。
【0008】
米国特許第6,541,915号明細書は、個々のデバイスが、セラミックを含む材料から機械加工されたアセンブリに組み込まれているマイクロキャビティ・プラズマデバイス・アレイを開示している。金属電極は、マイクロキャビティ内および電極間に生成されるプラズマ媒体に曝される。米国特許第6,194,833号明細書もまた、基板がセラミックであり、シリコンまたは金属フィルムがその上に形成されるアレイを含む、マイクロキャビティ・プラズマデバイス・アレイを開示している。キャビティの上部および底部に形成される電極ならびにシリコン、セラミック(またはガラス)マイクロキャビティ自体はプラズマ媒体と接触する。米国特許出願公開第2003/0230983号明細書は低温セラミック構造体内で生成されるマイクロキャビティプラズマを開示している。積重ねセラミック層はキャビティを形成するように構成および微細加工され、中間導体層はプラズマ媒体を励起する。米国特許出願公開第2002/0036461号明細書は、電極がプラズマ/放電媒体と接触する、中空の陰極放電デバイスを開示している。
【0009】
マイクロキャビティプラズマデバイスの開発はディスプレイ市場に重点をおいて続けられている。ディスプレイにおけるマイクロキャビティプラズマデバイスの最終的な有用性は、有効性(以前に述べた)、寿命およびアドレス指定可能性を含む、いくつかの重要な要素によって決まる。アドレス指定可能性は特に大半のディスプレイ用途において不可欠である。例えば、ピクセルを有するマイクロキャビティ放電群については、各マイクロプラズマデバイスは個別にアドレス指定可能でなければならない。
【0010】
現在のフラットパネルディスプレイの問題解決方法には多くの欠点がある。広く利用されているフラットパネルディスプレイ技術は、液晶ディスプレイ(LCD)およびプラズマディスプレイパネルを含む。これらの技術は、テレビといった大画面方式に広く利用されている。LCDはまたコンピュータディスプレイに利用されている。小型電子デバイスもまた高コントラスト、高輝度、高分解能ディスプレイの必要性を有する。例えば、携帯情報端末(PDA)および携帯電話機は高コントラスト、高分解能および高輝度のディスプレイにより利益を得る。
【0011】
効率は、特に、電池式携帯端末といった携帯電源を利用する用途において問題である。電池式ディスプレイの動作寿命は電力消費に反比例するため、ディスプレイの効率の改善は電力源の寿命に直接影響する。しかし、効率はまた、大型の非携帯ディスプレイに関する問題でもある。従来のプラズマディスプレイパネルは通常、例えば、典型的にはピクセルに供給される電力の約1%を可視光に変換するという、低効率で動作する。この効率の改善は、ディスプレイ産業における優先事項であるが、従来のプラズマディスプレイの効率を向上するには、動作に必要な既に大きい維持電圧のさらなる増加を必要とするであろう。現在の研究は、プラズマディスプレイパネルガス混合物中のキセノン含有量を増加することに重点が置かれており、これは、付随する維持電圧の上昇を必要とすると予測され、ディスプレイの駆動電子回路のコストに悪影響を与える。プラズマディスプレイパネルおよび液晶ディスプレイパネルはまた、ディスプレイを密封するためにガラスを使用することから重くなる傾向があり、若干脆くなる可能性がある。
【0012】
マイクロキャビティプラズマデバイスの使用を可能にする実用的な設計はフラットパネルディスプレイ産業の将来の展望を変えると予測される。標準的なフラットパネルディスプレイ技術と比較すると、マイクロプラズマデバイスは例えばより小さいピクセルサイズの可能性を提供する。小さいピクセルサイズはより高い空間分解能と直接つながる。加えて、試験結果では、マイクロプラズマデバイスは、プラズマディスプレイパネルにおける従来のピクセル構造において可能な効率に比べて高い効率で電気エネルギーを可視光に変換することを示した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、セラミック基板内に画定されるマイクロキャビティアレイの構造体を提供するセラミック基板に形成されるマイクロキャビティプラズマアレイである。セラミック基板はまたセラミック基板内に埋め込まれている電極からマイクロキャビティを電気的に絶縁し、マイクロキャビティを相互に物理的に分離する。電極はセラミック基板内に埋め込まれ、電極間に時間変化電圧を印加することによりマイクロキャビティアレイ内のマイクロキャビティ中の放電を点火するように配置される。本発明の実施形態は電極のマイクロキャビティ配置を含み、これにより、個々のマイクロキャビティまたはマイクロキャビティ群のアドレス指定を可能にする。好ましい実施形態では、アドレス電極はマイクロキャビティの上に位置するか、またはマイクロキャビティを取り囲む。他の好ましい実施形態では、マイクロキャビティの列はセラミックに埋め込まれているペアの実質的に同一平面上の平行な電極間に形成される。
【0014】
本発明のマイクロキャビティ・プラズマデバイス・アレイの好ましい実施形態はセラミック基板内に形成され、このセラミック基板はセラミック内に画定されるマイクロキャビティのための構造体を提供する。セラミック基板はまたセラミック基板内に埋め込まれる電極からマイクロキャビティを電気的に絶縁する。セラミックにより提供される別の機能は、マイクロキャビティ壁面の形状が、セラミックの誘電定数およびマイクロキャビティ内のガス圧力と合わせて、マイクロキャビティ内の電場の形状における制御、したがって、マイクロキャビティ内に生成される放射の空間依存性を提供することである。電極は電極間に時間変化電圧を印加して、マイクロキャビティアレイ内のマイクロキャビティ中の放電を点火するように配置されている。本発明の実施形態は、個々のマイクロキャビティまたはマイクロキャビティ群のアドレス指定を可能にする電極マイクロキャビティ配置を含む。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態のマイクロキャビティ・プラズマデバイス・アレイは、セラミック基板内に配置されるマイクロキャビティアレイを有するセラミック基板を含む。第1電極はセラミック基板に配置されるセラミック内に埋め込まれる。第1電極はセラミック基板内に埋め込まれ、アレイ内の複数のマイクロキャビティに近接して配置される。第2電極は、第1電極が近接しているマイクロキャビティの少なくとも1つに近接しており、またセラミック基板内に埋め込まれ、これにより、マイクロキャビティと他の電極の両方から電極を電気的に絶縁する。第1および第2電極は、第1電極と第2電極間に時間変化電圧を印加して、少なくとも1つのマイクロキャビティ内の放電を点火するように配置される。
【0016】
好ましい実施形態では、電極は同一または実質的に同一平面にあり、相互に平行である。本発明のデバイスは、好ましくは低温焼成セラミック(LTCC)、すなわち積み重ねて所望の構造体を実現できる薄いシートにして利用可能な材料を用いて形成される。好ましい実施形態のデバイスのセラミックパッケージは、キャパシタ、レジスタおよび能動デバイスといった電子デバイスと容易に一体化される。
【0017】
次に、好ましい実施形態が図面に関して説明される。図面は概略図を含み、これら図面は、当業者であれば添付の説明を参照して完全に理解されるであろう。特徴は説明の目的で強調されることもある。好ましい実施形態から、当業者は本発明のより広範な態様を認識するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に図面、詳細には図1を参照する。図1は、好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイ10の一部の部分的な透視概略図であり、狭い間隔を空けたマイクロキャビティ12がセラミック基板14内に形成されている。1対の電極16および18がセラミック基板内に埋め込まれている。マイクロキャビティ12の断面は円筒形であり、例えば、少なくとも20μmの小さい直径、しかし典型的には500μm以下の直径を有する。各マイクロキャビティ内にプラズマ(放電)が生成される。電極16、18はマイクロキャビティ12からある距離だけ間隔を空けており、これによりマイクロキャビティ12内に含まれる放電媒体(プラズマ)から電極16、18を絶縁する。この配置によって、電極16、18間に時間変化(AC、RF、二極性またはパルス状DC他)電圧を印加することにより、ガス状または蒸気媒体を励起して、各マイクロキャビティ内にマイクロプラズマを生成できる。
【0019】
セラミック材料14は好ましくは低温焼成セラミック(LTCC)であり、このセラミックはマイクロプラズマから電極16、18を保護する。これは、デバイスの寿命を制限する、電極のスパッタリングを回避する。この設計の利点は、LTCCの処理に対する技術が進歩していることである。図1の構造体を再現して、高密度のマイクロキャビティ12を大きなアレイとして実現してもよい。マイクロキャビティ12は円筒形として示されているが、長方形の溝といった他の断面もまた適用できる。低温焼成セラミックから構成される構造体は薄い層から、1度に1つの層で形成されてもよく、全体のプロセスは自動化されてもよい。電極のスクリーン印刷を含むこれらのプロセスは、例えば、自動車電子機器および携帯電話産業において広範に使用される。図1の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイ10は、マイクロキャビティ12の列12が堅牢な一体構造で同時に励起されるディスプレイを製作できる。
【0020】
あるいは、単一マイクロキャビティをアドレス指定することを達成できる。図2は、例えばピクセルを構成する、個々のマイクロキャビティのアドレス指定可能性を提供する好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマアレイを示している。個々のアドレス指定可能性は様々な用途、詳細にはディスプレイ用途および生物医学診断において重要である。デバイスは図2に示されており、LTCC材料の多重層22a、22bから形成されている。層22aは層22bと基本的に同一であり、複数の整列したマイクロキャビティ24を画定する。層22bは薄く、平行平面を横方向に走る、第1電極26および第2電極28を形成するためのベース体を提供するのに役立つ。
【0021】
第1電極26は一般に相互に平行であり、同一平面または実質的に同一平面にあり、第2電極28も同様である。図示された実施形態では、マイクロキャビティ24の列は各隣接するペアの第1電極26間に配置される。マイクロキャビティ24の列がすべての隣接するペアの第1電極26間に位置してもよいが、これは必ずしも必要ではない。各マイクロキャビティはまた隣接するペアの第2電極28により境界を定められている。すなわち、いずれかのマイクロキャビティ24の軸に沿って見た場合、そのマイクロキャビティは隣接するペアの第1電極26と隣接するペアの第2電極28との間にあることが確認される。マイクロキャビティの軸は、第1電極26および第2電極28により画定される平面に名目上垂直である。
【0022】
第1電極は一体として第1電極アレイを形成する。第2電極は一体として第2電極アレイを形成する。1つの実施形態では、各マイクロキャビティは第1電極アレイおよび第2電極アレイにより画定される平面と交差する。別の実施形態では、この交差は必ずしも必要ではない。アレイ内の個々のマイクロキャビティは、特定のペアの隣接する第1電極26と特定のペアの隣接する第2電極28とに適切な大きさの時間変化電圧を印加することによりアドレス指定される。1つのペア電極はアドレス電極として働き、1つのペア電極は維持電極として働く。各ペアの電極に印加される電圧の大きさは一般に等しくなく、マイクロキャビティ内のガス、ガス圧力、マイクロキャビティおよび電極アレイの大きさに依存する。
【0023】
当業者にはまた、マイクロキャビティ群もまたアドレス指定できることが理解されるであろう。マイクロキャビティ群の励起は、当業者により理解されるとおり、同時に複数の隣接する電極を励起することにより実現できる。多くの他のアドレス指定方式が、様々なアドレス指定方式を可能にする本発明の例の実施形態と同様に、当業者には明白であろう。
【0024】
セラミック薄板22aの両端には開口30が配置され、電極アレイ26および電極アレイ28の各電極に対する電気接続に対応する。なお、第1電極26は第2電極28に直角であるため、上位層22aの開口30は、下位層(または薄板)22aの開口部30とは異なる層22aの端部にある。第1電極26および第2電極28のアレイは様々なプロセスにより製作できる。1つの低コストの方法は白金または銀ペーストからのスクリーン印刷であるが、他の導電性材料もまた利用可能である。同様に、第1電極26および第2電極28のアレイへの電気接続は、金属ペーストの使用を含む、多くの既知の方法により生成できる。
【0025】
図2のデバイスを製作するために、薄板22aおよび22bは特定のサイズに切断され、穴のパターン(マイクロキャビティ24および開口30)がシート22aおよび22bに形成され、電極アレイ26および28がセラミック薄板22b上に形成される。シート22aおよび22bが位置合わせされた後、加熱しながら一緒に加圧される。この処理により、第1電極26および第2電極28がセラミックに埋め込まれ、ペアの隣接する電極がマイクロキャビティ24の各列の上に置かれる、一体構造のセラミック構造体を形成する。LTCC内にアレイを形成する利点は、自動化プロセスの利用可能性および高温および化学的活性環境におけるこの材料の安定性を含む。
【0026】
本発明のマイクロキャビティプラズマアレイは、様々なサイズ、幾何学的配置およびマイクロキャビティのアドレス指定方式において、当業者には理解されるとおり、このようなプロセスにより製作できる。単に例示目的のために、図2によるアレイは約50mmの長さおよび幅Xを有する。マイクロキャビティ24間のピッチは4mmである。マイクロキャビティ24のアレイと基板の縁部との間の距離Bは11mmである。マイクロキャビティの直径Cは0.115mm(115μm)である。電極の端部と基板の縁部との間の距離Fは10mmである。電極間の幅および間隔Gは2mmである。層22aの厚みHは0.5mmであり層22bの厚みIは0.2mmである。電極26および28の厚みは約0.2mmである。例示的な電極は金または銀の電極である。製作後のデバイスの全体の厚みは例えば約1.2から1.5mmである。上と同じく、寸法は単に例としての実施形態である。当業者には、より大きいおよびより小さいアレイが形成され、マイクロキャビティの直径およびピッチは広範囲にわたって変化してもよいことは認識されるであろう。当業者にはまた、大規模なアレイが小さいアレイの複製から形成されてもよいことは認識されるであろう。
【0027】
別の例として、図3は、製作され、検査されたマイクロプラズマデバイスアレイを示す。厳密には寸法は単に例示であり、製作され、検査されたアレイの詳細を提供するために示されている。図3Aおよび3Bに示されている例のアレイは図1の実施形態と一致する。図1において用いられている参照符号は、図3Aおよび3Bの例示的な実施形態の類似の特徴箇所を特定する。製作されたアレイにおいては、マイクロキャビティ12は、図示されているとおり、127μmまたは180μmのいずれかの直径を有する円筒形である。埋め込まれた電極16、18は実質的に同一平面上にあり、電極の内側端間の間隔は200μmである。試験用のデバイス電極16、18は露出した接触部31で終端する。
【0028】
試験は本発明のアレイの動作特性を立証するために実施された。図4は図3Aおよび3Bに示されている構造を有するアレイのV−I特性を示している。例としてのデバイスは72個のマイクロキャビティの単一列から成るアレイであった。各マイクロキャビティは127μmの直径を有した。図4に示されるデータは、アレイが20kHzの周波数を有する両極(パルス化DC)波形を用いて励起されるときの、400トールから700トールの圧力のネオンガスに対して得られた。図4に示される測定された電気特性は正勾配を有し、放電が異常グローモードで動作していることを示している。したがって、アレイに対して外部の安定器を供給することは必要ではない。
【0029】
本発明の別の利点は、マイクロキャビティ内に電場を生成できることである。詳細には、マイクロキャビティ壁面のセラミックの形状が、ガス圧力とガス(蒸気)自体の特質と合わせて、マイクロキャビティ内の電場強度の空間的変化を限られた範囲に決定する。
【0030】
図3Aおよび3Bの構造を有する試作デバイスが製作され、作動される。詳細には、2組のアレイが製作された。両方のアレイにおけるマイクロキャビティは127μmまたは180μmの直径を有する円筒形であった。マイクロキャビティ内で生成されるマイクロプラズマの画像はCCDカメラおよび光学望遠鏡を用いて記録された。放射(およびマイクロキャビティ内の関連電場)は複数の要因により決定されるある一定角度領域に集中され、これら要因の1つはマイクロキャビティ壁面の曲率半径であることが、これらの画像(マイクロ写真)から明白である。言い換えると、電場は、セラミック/プラズマ界面の曲率のために、集中すなわち「集束」できる。本発明の実施形態は、従来のマイクロキャビティデバイス(励起電極ペアが2つの異なる平面にあるか、またはこれら電極ペア間の垂直方向分離を有し、その目的が一般に方位角的に均一であるマイクロプラズマを生成することであった)とは大幅に異なる特性を提供する。本発明のこの特性の用途は広範囲であって、大きな電場強度が生成されることを必要とする、特定の原子または分子種の生成を含む。本発明の実施形態は、実質的に同一平面の電極ペアまたはマイクロキャビティの軸に対して直角に位置合わせされる電極ペアを有する。これにより電場の集中が可能になる。また、セラミック/プラズマ界面の形状は図1、2、3Aおよび3Bの円形から変更できる。セラミック/プラズマ界面の形状を変更することにより、他の放射パターンの生成が可能になる。
【0031】
本発明の追加の実施形態は、図5−9に概略的に示されている。図5−9では、図1−3Bからの同一参照符号が同様の部分を示すために用いられる。図5Aは実施形態の図5Bおよび5Cに適用できる、平面図の概略図である。図5Aに示された構造は、図1、3Aおよび3Bと同様に実質的に同一平面上の電極を含む。図5Bは電極16、18に電力を供給する方法を示す。詳細には、すべての他の電極は接地してもよい。図5Cは代替の実施形態を示しており、この実施形態では、2組の実質的に同一平面上の電極16、18および34、36が線形アレイの各マイクロキャビティ12の間に設けられている。第1電極、例えば16および34はマイクロキャビティ12を維持することに役立つのに対して、第2電極、例えば18および36は特定のマイクロキャビティ12をアドレス指定するために使用できる。
【0032】
図6には本発明の別の実施形態が示されている。マイクロキャビティ12の単一列が示されており、必要に応じて、列は図1−5と同様に複製できる。図6では、第1および第2電極38、40は、各電極とマイクロキャビティの最も近い縁部と間のセラミックの厚みが一定になるように、形成される。図6による好ましい実施形態では、第1および第2電極38、40は実質的に同一平面上にある。
【0033】
本発明の別の実施形態は、図7に示されたマイクロキャビティプラズマデバイスの線形アレイの平面図により示されている。この実施形態では、主電極は上と同じく実質的に同一平面上にあるが、第1および第2電極42、44は、列になっているマイクロキャビティ12の間に突き出るセグメント42a、44aを含む。これらの電極セグメント42a、44aはアレイに対して点火電圧を低減するのに効果的である。図8の別の実施形態は、図7の実施形態と同様であるが、実質的に長方形断面を有するマイクロキャビティ46を含む。図9は、第3組の電極48が電極セグメント42aおよび42bと置き換わることを除いて、図7および8の実施形態と同様の別の実施形態を示している。第3電極48は実質的に同一平面上の第1または第2電極42、44のいずれにも電気的に接続されていない。これらの点火電極48はセラミックに埋め込まれ、電極42および44から電気的に絶縁され、分離された電源により駆動することができる。
【0034】
本発明の実施形態におけるマイクロキャビティはまた、セラミックの深さの関数として変化する断面を有することもできる。図10A、10Bおよび10Cは切頭円錐形状を有するテーパ形マイクロキャビティ50を含む本発明の実施形態を示している。図10Aの実施形態では、第1および第2埋込電極16、18は、例えば図1の実施形態と同様に実質的に同一平面上にある。断面が変化可能でいることにより、放電特性は電極の配置に強く依存する。Kの値は、各電極の内側端とマイクロキャビティ壁面との間のセラミックの厚みを決定する。セラミックの厚みの公称値は1μmと500μmの間である。図10Bの実施形態では、第1および第2電極52、54はマイクロキャビティ壁面と平行に向けられる。このような電極/マイクロキャビティ形状はいくつかの方法で製作でき、これらの方法の1つは円錐形のキャビティの内側上に金属を配置し、次に薄いセラミック層で金属をコーティングすることである。図10Cは、本発明の1つの実施形態を示しており、この実施形態では埋込電極56、58は少なくとも2つのセクションを有し、これらセクションうちの一方はマイクロキャビティ50と平行に位置する。
【0035】
図11Aおよび11Bに示される、本発明の別の実施形態では、マイクロプラズマデバイスは、図2の実施形態と同様の方法で個々にアドレス指定可能である。図11Aおよび11Bの実施形態では、アドレス電極26はマイクロキャビティ24を取り囲む。薄いセラミックリング56がマイクロキャビティ24の縁部からアドレス電極を絶縁する。リング56はマイクロキャビティから電極26を距離Tだけ分離する。維持電極28は実質的に同一平面上にあり、マイクロキャビティ24の間で電極26から距離Sの位置に配置される。アドレス電極および維持電極の両方はセラミック10に埋め込まれ、必要に応じて、図11の構造体は現在のPDPで使用されるものと同一の方法および電子回路により駆動できる。
【0036】
当業者であれば、本発明のマイクロキャビティプラズマアレイに関して多くの用途を認識するであろう。マイクロプラズマの低電力消費および高効率は、ディスプレイ用途に特に適したアレイを実現する。単一放電または放電群を組み合わせて、ディスプレイのピクセルを形成してもよい。放電により蛍光体を励起して、カラーディスプレイを形成してもよい。例えば色素標識付けされた生体分子の光励起といった生物医学診断は、これらのアレイに適した理想的な別の用途である。セラミックアレイはまた電子部品(キャパシタ、レジスタ、インダクタ他)と本発明のマイクロキャビティプラズマアレイとを一体化する可能性を提供する。
【0037】
本発明の様々な実施形態が図示され説明されてきたが、他の変更形態、置換形態および代替形態は当業者には明らかであることは理解されるべきである。このような変更形態、置換形態および代替形態は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく実現可能であり、これらは添付の特許請求の範囲から決定されるべきである。
本発明の様々な特徴は以下の特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好ましい実施形態のマイクロ放電アレイの概略図である。
【図2】本発明のマイクロキャビティプラズマデバイスの好ましい実施形態のアレイの分解斜視概略図である。
【図3】図3Aは、セラミック内に形成されたマイクロキャビティプラズマデバイスの2つの線形アレイの側面(真横)断面図、図3Bは、セラミック内に形成されたマイクロキャビティプラズマデバイスの2つの線形アレイの平面断面図である。
【図4】図4は、図3Aおよび図3Bの構造体を有する試験用のマイクロプラズマデバイスアレイの例示的なV−I特性を示している。
【図5】図5Aは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面断面図、図5Bは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図、図5Cは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図である。
【図6】本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面図である。
【図7】本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面図である。
【図8】本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面図である。
【図9】本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面図である。
【図10】図10Aは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図、図10Bは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図、図10Cは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図である。
【図11】図11Aは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの平面図、図11Bは、本発明の追加の実施形態のマイクロキャビティプラズマデバイスアレイの側面断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板(14、22a、22b)と、
前記セラミック基板内に配置されるマイクロキャビティのアレイ(12、24、46、50)と、
前記セラミック基板に埋め込まれた第1電極(16、26、34、38、42、52、56)であって、前記第1電極は前記マイクロキャビティアレイ内の複数のマイクロキャビティに近接して配置され、前記第1電極は前記セラミック基板により前記複数のマイクロキャビティから絶縁されている、第1電極と、
前記セラミック基板に埋め込まれた第2電極(18、28、36、40、44、54、58)であって、前記第2電極は前記複数のマイクロキャビティの少なくとも1つに近接して配置され、前記第2電極は前記セラミック基板により前記複数のマイクロキャビティの前記少なくとも1つから電気的に絶縁され、前記第2電極は前記第1電極と協働するように配置され、前記第1電極と前記第2電極間に時間変化電圧を印加することにより、前記複数のマイクロキャビティの前記少なくとも1つ内の放電を点火する、第2電極と、
を備えるマイクロキャビティプラズマデバイス。
【請求項2】
前記第1電極および前記第2電極は実質的に同一平面上にあって平行であり、前記複数のマイクロキャビティの両側に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくとも1つは、前記複数のマイクロキャビティうちの1つの列のマイクロキャビティの隣接するマイクロキャビティの間に突き出ている電極セグメントを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記複数のマイクロキャビティうちの1つの列のマイクロキャビティの隣接するマイクロキャビティの間に配置された第3電極(44a、48)をさらに備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記複数のマイクロキャビティのそれぞれが、前記セラミック基板の深さにより変化する断面を有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記複数のマイクロキャビティのそれぞれが、前記セラミック基板の深さにより変化する断面を有し、前記第1電極および前記第2電極は前記複数のマイクロキャビティの壁面に平行に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記複数のマイクロキャビティのそれぞれが切頭円錐形マイクロキャビティを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1電極および前記第2電極のそれぞれの形状は、前記第1および第2電極のそれぞれと、前記複数のマイクロキャビティのうちの最も近いマイクロキャビティの縁部との間のセラミック基板の厚みが一定となるように、形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1電極および前記第2電極は平行平面に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1電極および前記第2電極は相互に交差する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1電極および前記第2電極のうちの一方は、前記複数のマイクロキャビティを取り囲み、前記セラミック基板の薄いリング部分により前記複数のマイクロキャビティのそれぞれの縁部から分離されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記マイクロキャビティのアレイはマイクロキャビティの列を備え、
前記第1電極は前記複数のマイクロキャビティのうちのマイクロキャビティ列に近接して配置された複数のアドレス電極を備え、
前記第2電極は前記マイクロキャビティの列に近接して配置された複数の維持電極を備える、
請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記複数の第1電極は第1電極接触部で終端し、前記セラミック基板は前記第1電極接触部に対して第1コネクタを画定し、
前記複数の第2電極は第2電極接触部で終了し、前記セラミック基板は前記第2電極接触部に対する第2コネクタを画定する、
請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記複数の第1電極のそれぞれは前記マイクロキャビティの行のうちのそれぞれのマイクロキャビティより大きい直径を有する第1穴を含み、前記マイクロキャビティの行のうちの前記マイクロキャビティは前記第1穴のそれぞれの穴を通過し、
前記複数の第2電極のそれぞれは、前記マイクロキャビティの列のうちのそれぞれのマイクロキャビティより大きい直径を有する第2穴を含み、前記マイクロキャビティの列のうちの前記マイクロキャビティは前記第2穴のそれぞれの穴を通過する、
請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
セラミック基板(14、22a、22b)と、
前記セラミック基板内に配置されたマイクロキャビティのアレイ(12、24、46、50)と、
前記セラミック基板内に埋め込まれた、前記マイクロキャビティから絶縁されるが、前記電極間の時間変化電圧を印加することにより、前記マイクロキャビティのアレイ内のマイクロキャビティ中で放電を点火するように配置された電極手段(16、18、26、28、34、36、38、40、42、44、52、54、56、58、44a、48)と、
を備えるマイクロキャビティプラズマアレイデバイス。
【請求項16】
前記電極手段は前記マイクロキャビティのアレイ内の個々のマイクロキャビティをアドレス指定するように配置されている、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記電極手段は維持電極群およびアドレス電極群を備える、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記電極手段は前記マイクロキャビティアレイ内の各マイクロキャビティ中でプラズマを点火する手段をさらに備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項1】
セラミック基板(14、22a、22b)と、
前記セラミック基板内に配置されるマイクロキャビティのアレイ(12、24、46、50)と、
前記セラミック基板に埋め込まれた第1電極(16、26、34、38、42、52、56)であって、前記第1電極は前記マイクロキャビティアレイ内の複数のマイクロキャビティに近接して配置され、前記第1電極は前記セラミック基板により前記複数のマイクロキャビティから絶縁されている、第1電極と、
前記セラミック基板に埋め込まれた第2電極(18、28、36、40、44、54、58)であって、前記第2電極は前記複数のマイクロキャビティの少なくとも1つに近接して配置され、前記第2電極は前記セラミック基板により前記複数のマイクロキャビティの前記少なくとも1つから電気的に絶縁され、前記第2電極は前記第1電極と協働するように配置され、前記第1電極と前記第2電極間に時間変化電圧を印加することにより、前記複数のマイクロキャビティの前記少なくとも1つ内の放電を点火する、第2電極と、
を備えるマイクロキャビティプラズマデバイス。
【請求項2】
前記第1電極および前記第2電極は実質的に同一平面上にあって平行であり、前記複数のマイクロキャビティの両側に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくとも1つは、前記複数のマイクロキャビティうちの1つの列のマイクロキャビティの隣接するマイクロキャビティの間に突き出ている電極セグメントを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記複数のマイクロキャビティうちの1つの列のマイクロキャビティの隣接するマイクロキャビティの間に配置された第3電極(44a、48)をさらに備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記複数のマイクロキャビティのそれぞれが、前記セラミック基板の深さにより変化する断面を有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記複数のマイクロキャビティのそれぞれが、前記セラミック基板の深さにより変化する断面を有し、前記第1電極および前記第2電極は前記複数のマイクロキャビティの壁面に平行に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記複数のマイクロキャビティのそれぞれが切頭円錐形マイクロキャビティを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1電極および前記第2電極のそれぞれの形状は、前記第1および第2電極のそれぞれと、前記複数のマイクロキャビティのうちの最も近いマイクロキャビティの縁部との間のセラミック基板の厚みが一定となるように、形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1電極および前記第2電極は平行平面に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1電極および前記第2電極は相互に交差する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1電極および前記第2電極のうちの一方は、前記複数のマイクロキャビティを取り囲み、前記セラミック基板の薄いリング部分により前記複数のマイクロキャビティのそれぞれの縁部から分離されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記マイクロキャビティのアレイはマイクロキャビティの列を備え、
前記第1電極は前記複数のマイクロキャビティのうちのマイクロキャビティ列に近接して配置された複数のアドレス電極を備え、
前記第2電極は前記マイクロキャビティの列に近接して配置された複数の維持電極を備える、
請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記複数の第1電極は第1電極接触部で終端し、前記セラミック基板は前記第1電極接触部に対して第1コネクタを画定し、
前記複数の第2電極は第2電極接触部で終了し、前記セラミック基板は前記第2電極接触部に対する第2コネクタを画定する、
請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記複数の第1電極のそれぞれは前記マイクロキャビティの行のうちのそれぞれのマイクロキャビティより大きい直径を有する第1穴を含み、前記マイクロキャビティの行のうちの前記マイクロキャビティは前記第1穴のそれぞれの穴を通過し、
前記複数の第2電極のそれぞれは、前記マイクロキャビティの列のうちのそれぞれのマイクロキャビティより大きい直径を有する第2穴を含み、前記マイクロキャビティの列のうちの前記マイクロキャビティは前記第2穴のそれぞれの穴を通過する、
請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
セラミック基板(14、22a、22b)と、
前記セラミック基板内に配置されたマイクロキャビティのアレイ(12、24、46、50)と、
前記セラミック基板内に埋め込まれた、前記マイクロキャビティから絶縁されるが、前記電極間の時間変化電圧を印加することにより、前記マイクロキャビティのアレイ内のマイクロキャビティ中で放電を点火するように配置された電極手段(16、18、26、28、34、36、38、40、42、44、52、54、56、58、44a、48)と、
を備えるマイクロキャビティプラズマアレイデバイス。
【請求項16】
前記電極手段は前記マイクロキャビティのアレイ内の個々のマイクロキャビティをアドレス指定するように配置されている、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記電極手段は維持電極群およびアドレス電極群を備える、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記電極手段は前記マイクロキャビティアレイ内の各マイクロキャビティ中でプラズマを点火する手段をさらに備える、請求項17に記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2009−524203(P2009−524203A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551475(P2008−551475)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/001733
【国際公開番号】WO2007/087285
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(503060525)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/001733
【国際公開番号】WO2007/087285
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(503060525)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (25)
【Fターム(参考)】
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