説明

セラミック繊維及びセラミックビーズの製造方法

セラミック繊維及びセラミックビーズを製造する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は無機セラミック繊維及び無機セラミックビーズを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機酸化物セラミック溶解物の、作業温度、相対的に急勾配である粘性特性、又は結晶化する性質のため、従来の繊維形成技術を用いて、ある無機セラミック組成物を繊維に引き抜くことは実質上不可能である。これらの無機セラミック組成物から繊維を形成する試みに幾つかの技術を用いることができるであろうが、無機酸化物セラミック溶解物の作業温度、相対的に急勾配である粘性特性、及び/又は結晶化する性質のため、それらの技術は、1つ以上の処理上の障害に遭遇する可能性が極めて高い。例えば、湯だまりを残す無機セラミック組成物噴出流の液体シャーリングと繊維生成は、噴出流に高速流体(例えば、空気高速噴出)を吹き付ける又は噴出させることによっておそらく達成可能であろう。可能性のある別の技術は、湯だまり内又は湯だまり開口部で無機酸化物セラミック溶解物を充分に過冷却して繊維形成粘度に達することを試み、その後、従来の繊維引き抜き技術を用いて溶解物を引き抜く試みであろう。なお別の可能性のある技術では、所定の無機セラミック組成物の噴出流周囲に外側シース(例えば、炭素シース)を形成することによって無機組成物の噴出流を安定化させ、従来の繊維引き抜き工程を用いて噴出流から繊維を引き抜くことができる可能性がある。しかし、上記に指摘したように、無機酸化物セラミック溶解物の作業温度、相対的に急勾配である粘性特性、及び/又は結晶化する性質のため、これらの可能な繊維形成技術は失敗する可能性が極めて高い。
【0003】
加えて、再び無機酸化物セラミック溶解物の作業温度、相対的に急勾配である粘性特性、及び/又は結晶化する性質のため、従来のビーズ形成技術を用いてある無機質組成物からビーズを形成することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の繊維引き抜き工程では引くことが不可能であるセラミック繊維を製造する方法の必要性が当該技術分野に存在する。更に、従来のビーズ形成工程では形成が不可能であるセラミックビーズを製造する方法の必要性が当該技術分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、セラミック繊維及びセラミックビーズ、並びにセラミック繊維及びセラミックビーズを形成する方法に関する。開示される方法は、(i)従来の繊維引き抜き技術を用いて繊維を引き抜くことが不可能である、あるいは(ii)従来のビーズ形成技術を用いてビーズを形成することが不可能である、組成物からセラミック繊維及びセラミックビーズを製造するために特に好適である。開示される方法は、1つ以上の金属酸化物、1つ以上の希土類金属酸化物、及びこれらの組み合わせを含む組成物から様々なセラミック繊維及びセラミックビーズを形成するために用いることができる。
【0006】
1つの例示の実施形態では、セラミック繊維を製造する方法は、溶融無機物質を回転軸を有する回転部材の外表面に噴出する工程と、外表面上に溶融無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプールを形成する噴出工程と、少なくとも一部の過冷却流体を外表面から除去して除去された過冷却流体からセラミック繊維を形成するために、回転部材を回転軸に沿って回転させ、外表面に配置された過冷却流体に遠心力を提供する工程と、を含む。一部の過冷却流体が回転部材の上面から除去されるにつれて、除去された部分は過冷却流体の所定のプールから追加過冷却流体を引いて、追加過冷却流体を回転部材の外表面の上方のセラミック繊維内に向かわせる、あるいは引き抜く。1つ以上の形状的特徴を回転部材の外表面に沿って配置することができ、1つ以上の形状的特徴は、回転部材の外表面に沿って1つ以上の過冷却流体のプールの形成を可能とする。この例示の方法で形成されるセラミック繊維は、熱処理など更に処理してセラミック繊維の特性を修正(例えば、多結晶構造の形成)することができる。
【0007】
別の例示の実施形態では、セラミック繊維を製造する方法は、回転軸を有する回転部材の外表面上に溶融無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプールを形成する工程と、回転部材を回転軸に沿って回転させて少なくとも一部の過冷却流体を遠心力で外表面から除去して、除去された過冷却流体からセラミック繊維を形成する工程とを含む。セラミック繊維を製造するこの例示の方法は、無機物質の液相温度以上の溶融温度に無機物質を加熱して均質な溶融無機物質を形成する工程と、均質な溶融無機物質の流れを開口部から外表面に噴出させて過冷却無機物質の1つ以上のプールを形成する工程と、繊維形成に続いて、任意にセラミック繊維を熱処理して多結晶質繊維を形成する工程と、を更に含むことが可能である。ある例示の方法では、回転軸は回転部材の外表面を通って延び、回転部材の外表面は回転部材の上面である。
【0008】
尚、更なる例示の実施形態では、セラミック繊維を製造する方法は、外表面と回転軸を有する回転部材を備える工程と、回転部材が回転する一方で、無機物質の液相温度以上の溶融温度を有する溶融無機物質を開口部を通じて回転部材の外表面に噴出する工程と、それぞれのプールの少なくとも一部は過冷却流体であるが完全に固化していない、外表面上に無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプールを形成する工程と、外表面の回転によって、せん断力を過冷却流体に提供して、少なくとも一部の過冷却流体をセラミック繊維に引き抜く又は引っ張る工程とを含む。
【0009】
本発明は更に、セラミックビーズを製造する方法に関する。1つの例示の実施形態では、セラミックビーズを製造する方法は、回転軸を有する回転部材の外表面上に溶融無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプールを形成する工程と、回転部材を回転軸に沿って回転させて少なくとも一部の過冷却流体を、外表面に付着する固化した過冷却流体の残りの部分から遠心分離的に除去させる工程と、過冷却流体の除去された部分を外表面に沿って回転させる回転速度に回転部材を維持して、除去された過冷却流体から1つ以上のセラミックビーズを形成する工程と、を含む。
【0010】
本発明は本明細書に開示される方法によって形成されるセラミック繊維及びセラミックビーズに更に関する。セラミック繊維及びセラミックビーズは様々な用途に有用であり、断熱、感応及び連結用途、補強、並びに高温用途が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
本発明のこれら及びその他の特徴及び利点は、以下に開示される実施態様の詳細な説明及び添付の請求項の検討後に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面を参照しながら本発明を更に説明する。
【図1A】本発明に準じてセラミック繊維及びセラミックビーズを製造するために好適な例示の装置。
【図1B】図1Aに示される矢印Aの方向から見た、図1Aに示される例示の装置の回転部材の上面の平面図。
【図1C】図1Aに示される、回転軸Aに対して垂直に見た、図1Aに示される例示の装置の回転部材の例示の断面図。
【図1D】図1Aに示される、回転軸Aに対して垂直に見た、図1Aに示される例示の装置の回転部材の別の例示の断面図。
【図2A】本発明に準じてセラミック繊維及びセラミックビーズを製造するために好適な別の例示の装置。
【図2B】図2Aに示される回転軸Aに沿って見た、図2Aに示される例示の装置の回転部材の側面図。
【図3A】本発明の方法によって形成される例示の繊維の正面図及び断面図。
【図3B】本発明の方法によって形成される例示の繊維の正面図及び断面図。
【図4A】本発明の方法によって形成される例示の熱処理繊維の横断図及び表面図をそれぞれ示す。
【図4B】本発明の方法によって形成される例示の熱処理繊維の横断図及び表面図をそれぞれ示す。
【図5】本発明の例示の繊維を形成するために用いられる例示のLAZ物質の赤外線透過率。
【図6】本発明の方法によって形成される例示のビーズ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、具体的な実施形態の観点から本明細書に記載しているが、本発明の趣旨から逸脱することなく種々の修正、置換及び代替が可能であることは当業者にはただちに明白であろう。したがって、本発明の範囲は、本明細書に添付する請求項によってのみ限定される。
【0014】
本発明は、セラミック繊維及びセラミックビーズ、並びにセラミック繊維及びセラミックビーズを製造する方法に関する。本発明の用途及び請求項にわたって使用されるとき、
「セラミック」は、非晶質物質、ガラス、結晶セラミック、ガラスセラミック、ナノ結晶セラミック、及びこれらの組み合わせを含む、非金属無機物質をいう。
【0015】
「非晶質物質」は、X線回折によって判定される長い結晶構造を有さず、及び/又は「示差熱分析」という名称で本明細書に記述するテストによって判定されるDTA(示差熱分析)によって判定される、非晶質物質の結晶化に対応する発熱ピークを有する、あるいはそのいずれかを有する、溶融相と気相の両方又はいずれかから得られる物質をいう。
【0016】
「ガラス」は、ガラス転移温度を示す非晶質物質をいう。
【0017】
「ガラスセラミック」は、熱処理非晶質物質によって形成される結晶を含むセラミックスをいう。
【0018】
「ナノ結晶セラミック」は、最大ナノメートル範囲の最大の大きさ(例えば、典型的に500ナノメートル未満かつ50ナノメートル以下まで)を有する結晶を含むセラミックスをいう。
【0019】
「REO」は、希土類酸化物をいう。
【0020】
「過冷却」は、流体を完全に固化又は結晶化させることなく、流体をその冷凍点まで冷却することをいう。
【0021】
「過冷却された」は、流体を完全に固化又は結晶化させることなく、流体をその冷凍点より低く冷却することをいう。
【0022】
セラミック繊維及びセラミックビーズを製造するために開示される方法では、図1Aに示される例示の装置などの装置を使用することができる。図1Aに示すように、例示の装置10は、上面112、及び上面112を通って延びる回転軸Aを有する回転部材11を含み、湯だまり12は、湯だまり注入口121及び上面112の上方に距離dを置いて配置される湯だまり開口部(すなわち、放出口)122、並びに湯だまり12の一部の周辺に配置される過熱コイル13を含む。
【0023】
図1Aに示すように、回転部材11は、回転軸Aに沿って、矢印Aが示す方向に回転する。1つの望ましい実施形態では、回転部材11の上面112は実質的に水平面にあり、回転軸Aは水平面に垂直に延びる(図1Aに図示)。回転部材11は、回転軸Aに沿って、下記に更に説明する多くの工程条件によって変化する回転速度(例えば、Hzによって測定)で回転することが可能である。
【0024】
図1Bに示すように、回転部材11の上面112は、1つ以上の形状的特徴を含み、上面12に沿って過冷却流水の1つ以上のプール115の形成を可能とし、過冷却流体の1つ以上のプール115は溶融セラミック又はセラミック前駆体物質15を含む。例えば、図1Bに示すように、回転部材11の上面112は、上面112の少なくとも一部に延びる1つ以上の溝110を含むことがある。例示の溝110は、回転軸Aから実質的に等しい距離dにある経路に沿って延びる。この例示の実施形態では、下記に更に説明するように、過冷却流体の1つ以上のプール115は、回転工程の間に、溝110内に少なくとも部分的に存在し、プール115から一部が除去される過冷却流体からセラミック繊維111の形成を可能にする。
【0025】
図1Cは、回転軸Aに対して垂直に見た、例示の装置10の回転部材11の断面図を示す。図1Cに示すように、例示の溝110は、深さd2で上面112に延び、幅wの溝を有する。注目すべきは、深さdと例示の溝110の溝幅wは望むように変更することができ、回転部材11の寸法による外にはいかなるようにも制限されないことである。典型的に、深さdと溝幅wはそれぞれ独立して約0.1mm〜約25mmの範囲にある。更に、三角形の形状(すなわち、2つの側壁と上面112との間隙)を有する例示の溝110を示しているが、上面112の溝は望ましいいかなる形状(例えば、円形、正方形、長方形など)を有することができる。
【0026】
更に、過冷却流体の1つ以上のプール115を上面112に沿って形成することを可能とする1つ以上の形状的特徴は、図1Dに示すように1つ以上の溝の形状内にある必要はない。形状的特徴は、過冷却流体の1つ以上のプール115を外表面に沿って形成することが可能である限り、いかなる形状的特徴も、回転部材(すなわち、回転部材11の上面112、又は下記に説明する回転部材21の外表面212)の外表面に沿って用いることができる。形状的特徴を有する別の例示の外表面の構成を図1Dに示す。
【0027】
図1Dに示すように、例示の回転部材18の断面図は、(i)例示の回転部材18の外側周域周辺に延びるへり部分185と、(ii)上面部分182と、上面部分182の外側周域に沿って延びる側壁181とによって画定されるくぼみ184と、を示す。この例示の実施形態では、くぼみ184は回転軸Aから距離dにわたって上面112に沿って延び、一方、例示の回転部材18は距離dが示す全体的な半径を有する。注目すべきは、距離dは、0を超えd未満の間で変化する望ましい長さをを有することができることである。
【0028】
所与の回転部材の外表面に存在し得る他の可能な形状的特徴としては、回転方向に沿って又は垂直に延びる、1つ以上のピラミッド様の構造、ウェル又は溝、所定の回転部材の外表面に沿って延びる一連のスパイク又は他の突出部が挙げられるが、これらに限定されない。上記に記載するとおり、形状的特徴は、過冷却流体の1つ以上のプール115を外表面に沿って形成することが可能である限り、いかなる形状的特徴又は形状的特徴の組み合わせも、回転部材(すなわち、回転部材11の上面112又は下記に説明する回転部材21の外表面212)の外表面に沿って用いることができる。
【0029】
ガラス繊維及びガラスビーズを製造するための開示する方法は、図2Aと2Bに示す例示の装置などの装置を使用することもできる。図2Aに示すように、例示の装置20は、上面212と、外表面212と実質的に平行に延びる回転軸Aとを有する回転部材21、湯だまり注入口121と、上面212の上方に距離dを開けて配置される湯だまり開口部(すなわち、放出口)122、及び一部の湯だまり12の周囲に配置される過熱コイル13を含む。
【0030】
図2Aに示すように、例示の回転部材21は、回転軸Aに沿って、矢印Aが示す方向に回転する。1つの望ましい実施形態では、図2Aに示すように、回転部材21の外表面212は回転部材21の外側周域を通って延びる回転軸Aと実質的に平行であるが、回転部材21の外表面212は回転軸Aと相対的に交角を形成する(例えば、三角錐形状の外表面)又は外表面212に沿ったある程度の湾曲を有することも可能である。
【0031】
例示の回転部材21は、外表面212に沿って過冷却流体の1つ以上のプールを形成を可能にする、1つ以上の形状的特徴を含む。具体的には、例示の回転部材21は、外表面212に沿って配置される溝210を含む。互いに間隔をあける溝210を示すが、外表面212全体を溝210で覆う、1つの溝から最大数の溝まで、いかなる数の溝210も外表面212に沿って配置することができることを理解すべきである。
【0032】
図2Bは、回転軸Aにに沿って見た、例示の装置20の回転部材21の側面図を示す。図2Bで示すように、例示の溝210は深さdで外表面212aの中に延び、溝幅wを有する。前述のように、深さdと例示の溝210の溝幅wは望むように変更することができ、回転部材21の寸法による外にはいかなるようにも制限されない。更に、例示の溝210は前述の形状(例えば、円形、正方形、長方形など)などのいかなる望ましい形状も有することができる。
【0033】
前述の例示の装置20の回転部材21のように、回転部材21は回転軸Aに沿って、多くの工程条件によって変化する回転速度で回転することができ、工程条件としては、例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14の構成、繊維又はビーズを形成するか、回転部材11又は21の寸法、そして特に回転部材11の上面112と回転部材21の外表面212の寸法、溶融セラミック又はセラミック前駆体物質15が湯だまり開口部122を出る時点から、少なくとも一部の溶融セラミック又はセラミック前駆体物質15が回転部材11の上面112又は回転部材21の外表面212で繊維形成粘度に達する時点までの、溶融セラミック又はセラミック前駆体物質の冷却率などが挙げられるが、これらに限定されない。溶融セラミック又はセラミック前駆体物質15がビーズ又は他の球状の形状に形成されること防ぐ又は少なくとも抵抗するために充分なように、繊維形成粘度は高いことが望ましい場合がある。
【0034】
望ましい回転速度を決定する前述の全ての要因は、外表面212に沿う過冷却流体の1つ以上のプール115又は外表面212の冷却率の程度に影響を及ぼす。外表面212に沿う過冷却流体の1つ以上のプール115の、又は外表面212の冷却率の程度は、例えば、溶解温度、ジェット放射(例えば図1Aと2Aで示す、噴出流15によって放射される熱の量と速度)、所定の装置を囲むチャンバに存在する気体の性質、紡ぎ車の回転速度、紡ぎ車の直径、紡ぎ車の温度、前述の紡ぎ車の半径に相対的な噴出流の止め位置によって影響を受ける。
【0035】
例えば、以下の実施例で用いるものと類似する装置について、セラミック繊維の形成時、回転部材11は回転軸Aに沿って、少なくとも約30Hz、より典型的には少なくとも約50Hzの回転速度で回転する。以下の実施例で用いるものと類似する装置について、セラミックビーズの形成時、回転部材11は回転軸Aに沿って、約1〜5Hzの回転速度で回転する。
【0036】
回転部材とその外表面(例えば、回転部材11と21、上面112と外表面212)は開示するセラミック又はセラミック前駆体組成物の相対的に高い溶融温度に耐え得る多数の物質を含む場合がある。好適な湯だまり用物質としては、グラファイト;銅、モリブデン、プラチナ、及びプラチナ/ロジウムなどの銅、アルミナ及び窒化ホウ素(BN)などのセラミックス、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。典型的に、回転部材とその外表面は銅又はステンレス鋼などの金属を含む。1つの例示の実施形態では、回転部材とその外表面はC110銅などの銅を含む。
【0037】
図1Aと1Bの例示の装置10と図2Aと2Bの例示の装置20などの装置を用いてセラミック繊維及びセラミックビーズを製造する方法の詳細な説明を以下に記す。
【0038】
セラミック繊維
本発明はセラミック繊維を製造する方法に関する。セラミック繊維を製造する方法は、無機組成物を溶解する工程、溶融無機組成物を噴出する工程、噴出した無機組成物を冷却する工程、少なくとも一部の無機組成物を1つ以上の繊維に形成する繊維工程など、多数の工程を含むことがある。その方法は、従来の繊維引き抜き工程を用いて繊維を引き抜くことが不可能である、セラミック及びセラミック前駆体組成物からセラミック繊維を形成するのに特に好適である。そのような無機組成物は典型的にその溶解点に近い、相対的に低い粘性を示し、溶解温度から冷却されるとたやすく結晶化する傾向がある。同時にこれらの組成物は、過冷却中、結晶化することなく、繊維生成に好適な粘性を有する過冷却流体を産出することが見出された。十分な冷却時間を所与されると、そのような過冷却流体は多結晶セラミック(すなわち、非繊維形成物質の製造)に転換される。しかし、本発明の方法は、開示するセラミック及びセラミック前駆体組成物にせん断力を適用して、開示するセラミック及びセラミック前駆体組成物の完全固化に先立ってセラミック繊維を形成する。
【0039】
前述の特性(例えば、過冷却工程中の繊維形成粘度)を有する好適なセラミック及びセラミック前駆体組成物としては、典型的に、(i)アルミナ、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅、三酸化鉄、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化ニッケル、REO、酸化スカンジウム、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、ジルコニア、及びこれらの複合金属酸化物からなる群から選択される第一金属酸化物、並びに(ii)アルミナ、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅、三酸化鉄、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化ニッケル、REO、酸化スカンジウム、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、ジルコニア、及びこれらの複合金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの第二金属酸化物を含む、セラミック組成物が挙げられるが、これらに限定されなずに、第一金属酸化物及び少なくとも1つの第二金属酸化物は、互いに異なっている。組成物はより典型的に、組成物の総重量を基準として、約20重量%(wt%)の二酸化ケイ素、酸化ホウ素、リン酸、二酸化テルル、酸化鉛、二酸化ゲルマニウム、又はこれらの組み合わせを含む。酸化ホウ素、二酸化ゲルマニウム、リン酸、二酸化ケイ素、二酸化テルル、酸化鉛、及びこれらの組み合わせが存在する場合、典型的に組成物の0wt%以上〜約20wt%(ある実施形態では、0〜15wt%又は0〜10wt%、更には0〜5wt%)の範囲で添加される。
【0040】
本明細書に準じる繊維及びビーズを製造するために有用なセラミック組成物の例としては、REO−酸化チタン、REO−ジルコニア−酸化チタン、REO−アルミナ、REO−アルミナ−ジルコニア、及びREO−アルミナ−ジルコニア−二酸化ケイ素、並びにこれらの前駆体を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。特に有用なセラミック組成物としては、共晶組成物にある、又は共晶組成物に近いものが挙げられる。
【0041】
本発明の開示に準じる繊維及びビーズの製造に有用なセラミック組成物の他の例としては、(1)(i)酸化ランタン、(ii)酸化ジルコニウム、及び、(iii)酸化アルミニウム若しくは酸化チタンのいずれかを含むセラミック組成物、並びに(2)(i)酸化ランタン、(ii)酸化ジルコニウム、(iii)酸化アルミニウム、及び、(iv)酸化ガドリニウムを含むセラミック組成物が挙げられるが、これらに限定されない。あるセラミック組成物では、いかなるケイ酸塩も実質的に存在しないセラミック組成物である。
【0042】
本発明の方法を用いて繊維に形成され得る他の好適なセラミック組成物としては、連続番号10/211577号、10/211638号、10/211034号、10/21684号、10/358772号、10/901638号、及び11/521913号を有し、それぞれの発明の要旨が本明細書に参考として組み込まれている、同一所有者の米国特許出願に開示されるセラミック組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
所定のセラミック組成物内のそれぞれの金属酸化物の分量は要望どおりに変更することができる。典型的に、所定のセラミック組成物内のそれぞれの金属酸化物は、約20wt%未満のレベルで存在する前述のもの以外、セラミック組成物の総重量を基準として少なくとも約5.0wt%(又は少なくとも約5.0wt%、又は少なくとも約10.0wt%、又は少なくとも約20.0wt%)の量で存在する。ある実施形態では、1つの金属酸化物が所定のかなりの部分のセラミック組成物に相当する場合がある。例えば、酸化ランタン、酸化アルミニウム、又は酸化チタンが存在する場合、それぞれの酸化ランタン、酸化アルミニウム、及び酸化チタンは典型的に、セラミック組成物の総重量を基準として少なくとも約30wt%の量で存在し、典型的に約30wt%〜約60wt%の範囲にわたる。
【0044】
他の金属酸化物は所定のセラミック組成物の小さい部分のみに相当する場合がある。例えば、酸化ジルコニウム又は酸化ガドリニウムが存在する場合、それぞれの酸化ジルコニウム及び酸化ガドリニウムは典型的に、セラミック組成物の総重量を基準として約20wt%未満の量で存在し、典型的に約5wt%〜約20wt%の範囲にわたる。
【0045】
前述のセラミック組成物のいずれも、本明細書に説明するセラミック繊維に形成することができる。図1Aと2Aを参照し、均質の溶融無機組成物を望ましく形成するため、例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14を溶解温度に加熱する。望ましくは、溶解温度は例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物の液相温度と等しい又は液相温度を超える。溶解温度は所定のセラミック又はセラミック前駆体組成物によって変化するが、溶解温度は典型的に、約1000〜約2000℃、典型的に1250℃を超える、より典型的に1500℃を超える範囲にわたる。
【0046】
例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14は、例えば、例示の湯だまり12などの湯だまり内で加熱することができる。1つの例示の実施形態では、例示の湯だまり12はグラファイト製湯だまりを備えるが、湯だまり12は前述のものを含むがこれらに限定されない他の高温物質を含むことができる。
【0047】
例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14は、例示の加熱コイル13などの外部熱源を通じて例示の湯だまり12内で加熱することができる。例示の加熱コイル13は、グラファイト製又は金属製コイル/要素を包含する従来の加熱要素を含むことができるが、これらに限定されない。1つの望ましい実施形態では、例示の加熱コイル13は、例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14を例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14の液相温度以上の溶解温度に加熱するように操作可能に適合されたRFコイルを備える。
【0048】
溶融セラミック又はセラミック前駆体組成物の望ましくない反応性を回避するため、例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14は、典型的に、制限環境内で望ましい溶解温度に加熱される。好適な制限環境としては、真空下環境、窒素環境(例えば、典型的に前述の溶解温度範囲のより低い温度)、及び不活性ガス環境が挙げられるが、これらに限定されない。1つの例示の実施形態では、ヘリウム(He)ガスを用いて加熱工程の不活性ガス環境を提供する。他の好適な不活性ガス環境としてはアルゴンが挙げられる。
【0049】
溶解物を形成する酸化物供給源は、例えば、第一乾式若しくは湿式製粉、続いて任意に乾燥及び粒状化された、又は、例えば噴霧乾燥によって粒状化された、例えば、混合微粉末の形状であり得る。溶解物を形成する酸化物供給源は、粒状の粉末供給物質を供給するために、例えば、以前融合されて、並びに任意で、その後更に粉砕され得る。溶解物を形成する酸化物供給源は、例えばプラズマ溶射又は他の火炎形成技術によって製造された、例えば以前に球状化された物質であり得る。
【0050】
ひとたび例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14が望ましい溶解温度に加熱されると、図1Aと2Aで矢印Aで示すように、湯だまり12の上部開口部121を通じて、湯だまり12内部の例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14に噴出圧がかかる。噴出圧は例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14を湯だまり12の開口部122を通じて強制的に押し出し、溶融無機物質の噴出流15が形成される。セラミック又はセラミック前駆体組成物及び開口部122の形状と寸法(例えば、直径)を含むがこれらに限定されない、多数の工程要因によって噴出圧の量は変化するが、典型的に、溶融無機物質の噴出流15を形成するために必要な噴出圧の量は、約120.0〜約140.0kPa(1224〜約1428gf/cm(約900〜約1050torr)である。
【0051】
湯だまり12の開口部122の形状と寸法は変化し得るが、典型的に、湯だまり12の開口部122は開口部直径が約0.30〜約0.60mmの範囲にある、円形横断面の形状を有する。他の可能な開口部の形状としては、長方形形状、正方形形状、及び三角形形状が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
溶融無機物質の噴出流15は、湯だまり12の開口部122から回転部材11の上面112(又は回転部材21の外表面212)まで距離dを移動する。典型的に、距離dは約10〜約25mmの範囲にわたるが、例示のセラミック又はセラミック前駆体組成物14の構成によって変化し得る。溶融無機物質の噴出流15が湯だまり12の開口部122から回転部材11の上面112(又は回転部材21の外表面212)まで距離dを移動するにつれて、(i)噴出流15の熱放射、及び(ii)噴出流15と周囲の気体環境(例えば、ヘリウム)との間の伝熱、によって噴出流15は直ちに冷却し、噴出流15の粘度を急速に上昇させるひとたび溶融無機物質の噴出流15が回転部材11の上面112(又は回転部材21の外表面212)に当たると、噴出流15と回転部材11の上面112(又は回転部材21の外表面212)との間の伝熱によって、噴出流15は更に冷却する(そして粘度は更に上昇する)。
【0053】
ひとたび噴出流15が望ましい回転速度で回転している回転部材11の上面112(又は回転部材21の外表面212)に接触すると、溶融無機物質の1つ以上のプール115が上面112(又は外表面212)上に形成され、1つ以上のプールの少なくとも一部は過冷却流体であるが完全に固化されていない(すなわち、部分的な固化と結晶化の両方又はいずれかが存在する)。回転部材11の上面112(又は回転部材21の外表面212)に接触しているそれぞれのプール115は急速に固化し、少なくとも一時的に上面112(又は外表面212)に付着すると考えられる。上面112(又は外表面212)と接着していないそれぞれのプール115の上部は液相状態に留まる。それぞれのプール115のこの上部(すなわち、過冷却流体)は、繊維形成に好適である粘度に到達する。上面112(又は外表面212)が回転するにつれて、過冷却流体にせん断力が提供され、上面112(又は外表面212)に付着しているプール115の残りの部分から、プール115の一部116が除去される。プール115の除去された一部116がプール115の残り部分から離れるにつれて、除去された一部116はプール115から追加物質を引張って、除去された一部116とプール115の残りの部分との間に繊維111を形成する。言い換えれば、繊維111の繊維形成は、主として、回転部材11の上面112(又は回転部材21の外表面212)ではなく、回転部材11の上面112(又は回転部材21の外表面212)の上方で起こる。
【0054】
本発明のある実施形態では、回転部材(例えば、回転部材11と21)は付着工程中(すなわち、溶融無機物質による、回転部材11の上面112への付着)に冷却する、又はほぼ一定の温度に維持することができる。回転部材の冷却、又はほぼ一定の温度での維持は、冷却媒体(例えば、水)を回転部材の1つ以上の内部空洞を通じて循環操作させるように適合された、中空の回転部材を備える工程、回転部材の外表面(例えば、上面112若しくは外表面212)に空気若しくは他の液体を吹き付ける工程、又はこれらの組み合わせなどを含むが、これらに限定されない従来の方法のいずれかによって行うことができる。
【0055】
回転部材の外表面の溶融無機物質の冷却を調整することに加えて、回転部材の外表面に付着する溶融無機物質の量を調整し、それによって結晶化を回避し、前述のように過冷却流体を繊維に引き抜くことを可能とする、充分な過冷却流体物質を得ることができる。所定の無機組成物の付着率は、組成物、冷却率、紡ぎ車の回転速度、紡ぎ車の直径、紡ぎ車の温度、紡ぎ車の半径に相対する噴出止め(すなわち、接触)位置などを含むがこれらに限定されない多くの要因による。
【0056】
図示していないが、複数の湯だまり12を用いて溶融無機物質の複数の噴出流15を形成することができると理解されるべきである。(Although not shown in the figures, it should be understood that multiple crucibles 12 may be used to form multiple jetting streams 15 of molten inorganic material, wherein the multiple jetting streams 15 of molten inorganic material)典型的に、前述のように、溶融無機物質の複数の噴出流15は回転部材11の上面112(回転部材21の外表面212)に接触して、引き続き前述の繊維を形成する、過冷却流体の複数のプール115を形成する。
【0057】
1つの例示の実施形態では、セラミック繊維を製造する方法は、上面112を通って延びる回転軸Aを有する回転部材11の上面112に溶融無機物質15を噴出する工程と、上面112に、溶融無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプールを形成する噴出工程と、少なくとも一部の過冷却流体116を上面112から除去して、除去された過冷却流体からセラミック繊維111を形成するために、回転部材11を回転軸に沿って回転させて、上面112に位置する過冷却流体に遠心力を提供する工程とを含む。この例示の実施形態では、回転部材11の上面112と接触する少なくとも一部の無機物質は、繊維形成中及び繊維形成に続いて上面112に留まる。前述のように、この例示の方法は、溶融無機物質から従来通りに繊維を引き抜かれることを妨げる粘性/温度特性を総じて有する、1つ以上の金属酸化物及び/又はREOを含む溶融無機物質が含まれる場合に、特に好適である。
【0058】
別の例示の実施形態では、セラミック繊維を製造する方法は、上面112と、上面112を通って実質的に垂直に延びる回転軸Aとを有する回転部材11を備える工程と、回転部材11を回転させる一方で、無機物質の液相温度より高い溶解温度を有する溶融無機物質15を開口部122を通じて回転部材11の上面112に射出する工程と、1つ以上のプール115の少なくとも一部が過冷却流体であるが固化されていない、上面112上の溶融無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプール115を形成する工程と、上面112の回転によって過冷却流体の少なくとも一部をセラミック繊維に引き抜くために又は伸張するために、せん断力を過冷却流体に提供する工程とを含む。この例示の実施形態では、その方法は、射出工程後、上面112と接触するに先立って溶融無機物質を冷却させるため、溶融無機物質を強制冷却媒体(例えば、ヘリウム)と接触させる工程を更に含むことが可能である。
【0059】
更に別の例示の実施形態では、セラミック繊維を製造する方法は、上面112を通って延びる回転軸Aを有する回転部材11の上面112に溶融無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプール115を形成する工程と、回転部材11を回転軸Aに沿って回転させて、上面112から過冷却流体の少なくとも一部の116を遠心分離的に除去して、除去された過冷却流水から1つ以上のセラミック繊維111を形成する工程とを含む。この例示の実施形態では、方法は、無機物質の液相温度以上の溶融温度にセラミック又はセラミック前駆体物質を加熱して均質な融無機物質を形成する工程と、均質な溶融無機物質の流れ15を開口部122から上面112に噴出させて過冷却無機物質の1つ以上のプール115を形成する工程と、繊維形成に続いて、セラミック繊維を熱処理して多結晶質繊維を形成する工程とを更に含むことが可能である。
【0060】
得られる、本発明のセラミック繊維は典型的に、少なくとも約1:1000の縦横比、約10mm〜約200mmの繊維長、及び約5μm〜約20μmの範囲にある平均繊維直径を有する。典型的に、得られるセラミック繊維は実質的に円形の横断面構成と、所定の繊維長に沿って延びる実質的に一定の直径を有する。(例えば、実施例1で形成し図3Aと3Bで示す、例示のセラミック繊維を参照)。
【0061】
前述の繊維形成工程に続き、得られる繊維を更に処理して繊維の1つ以上の特性を変更することができる。例えば、得られるセラミック繊維を熱処理して多結晶繊維を形成することができる。典型的な熱処理条件は、例えば、得られるセラミック繊維を約750℃〜約1500℃の範囲にある熱処理温度で約5〜約60分以上の範囲にある時間、加熱する工程を含む。
【0062】
ある事例では、セラミック繊維の多結晶構造は、(1)前述の繊維形成工程中(例えば、除去された一部の116がプール115から追加物質を引き抜いて、除去された一部の116とプール115の残りの部分との間に繊維を生成する)、(2)続く冷却工程中、又は(3)(1)と(2)の両方から(したがって追加熱処理工程は不必要となる)直接生成されることがある。結晶化に対してより大きい不安定性を有する組成物は、そのような特性を示す可能性が高いと考えられている。
【0063】
得られる、本発明のセラミック繊維は完全なガラス質、結晶質、及び/又は部分的に結晶質であり得る。本発明に準じるセラミック繊維に存在するいかなる結晶相も、繊維形成工程中に自然発生的に形成される場合、又は、繊維形成工程後の熱処理によって意図的に誘導される場合がある。熱処理工程中に誘導された結晶化の程度は、望ましい繊維特性(例えば、強度、硬度など)、及び熱処理の温度、時間、並びにセラミック繊維の組成物による。
【0064】
セラミック繊維は、典型的に1マイクロメートル未満、0.5マイクロメートル未満、又は更に0.3マイクロメートル未満の平均的大きさの結晶を有する。ある実施形態では、本発明に準じるセラミック繊維は、約200ナノメートル未満、又は約100ナノメートル未満、又は更に約50ナノメートル未満の平均的大きさの結晶(すなわち、ナノ結晶構造)を有する。
【0065】
セラミックビーズ
図1Aと1Bの例示の装置10と図2Aと2Bの例示の装置20もセラミックビーズを形成するために使用することができる。1つの例示の実施形態では、セラミックビーズを製造する方法は、上面112を通って延びる回転軸Aを有する回転部材11の上面112上に溶融無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプール115を形成する工程と、回転部材11を回転軸Aに沿って回転させて、少なくとも一部の過冷却流体を、上面112に付着する固化した過冷却流体の残りの部分から遠心分離的に除去させる工程と、除去された過冷却流体の一部が上面112に沿って回転する回転速度を回転部材11に維持させて、除去された過冷却流体から1つ以上のセラミックビーズを形成する工程とを含む。
【0066】
セラミックビーズを形成する方法は、1つ以上の金属酸化物を含む前述のセラミック又はセラミック前駆体組成物のいずれからもビーズを形成するために用いることができる。1つの望ましい実施形態では、セラミックビーズは、(i)酸化ランタン及び酸化ジルコニウム、並びに任意で(iii)酸化アルミニウム又は酸化チタンを含む、セラミック又はセラミック前駆体組成物から形成することができる。別の望ましい実施形態では、セラミックビーズは、(i)酸化ランタン、(ii)酸化ジルコニウム、(iii)酸化アルミニウム、及び(iv)酸化ガドリニウムを含む、セラミック又はセラミック前駆体組成物から形成することができる。
【0067】
セラミックビーズを製造する方法は、前述のセラミック繊維を形成する方法と2、3の点で異なる。例えば、セラミックビーズの形成時、回転部材11(又は回転部材20)は、典型的にセラミック繊維を形成するために用いる前述の回転率と比較して、より低い回転率で回転する。以下の実施例に用いる装置などの装置を用いてセラミックビーズを形成する際、典型的に回転部材11は、回転軸Aに沿って約1〜約5Hzの回転速度で回転する。
【0068】
更にある実施形態では、セラミックビーズの形成工程中、回転速度を変更することが望ましいことがある。例えば回転速度を相対的に高速(例えば、5Hz)で開始して、その後、より低い速度(例えば、1Hz)に変更し、続いて相対的に高速(例えば、5Hz)に戻すことができる。回転速度の変化は、溶融無機物質の過冷却、プール物質の一部除去、又は両方の一助となることがある。
【0069】
セラミック繊維を形成する前述の方法のように、セラミックビーズを形成する方法は、均質の溶融無機物質を形成するためにセラミック物質をセラミック又はセラミック前駆体物質の液相温度より高い溶解温度に加熱する工程、過冷却無機物質の1つ以上のプール115を形成するために、均質の溶融無機物質のストリーム15を開口部122から上面112(又は外表面212)に噴出させる工程と、ビーズ形成に続いて、前述の熱処理条件と類似するものを用いてセラミックビーズを熱処理して多結晶質ビーズを形成する工程と、を更に含むことが可能である。別の実施形態では、冷却工程中の結晶質形成により、多結晶質ビーズを形成する熱処理工程は不必要である。
【0070】
得られるセラミックビーズは、典型的には実質的に球状の形状と約0.5mm〜約3.0mmの範囲にある平均直径を有する。更に、得られるセラミックビーズは、前述の繊維に類似する結晶構造を有する。具体的には、セラミックビーズは典型的に1マイクロメートル未満、0.5マイクロメートル未満、又は更には0.3マイクロメートル未満の平均的大きさの結晶を有する。ある実施形態では、セラミックビーズは、約200ナノメートル未満、又は約100ナノメートル、又は更には約50ナノメートル未満の平均的な大きさの結晶(すなわち、ナノ結晶構造)を有する。
【0071】
本発明は上述され、かつ以下の例によって更に例示されるが、いかなる意味においても本発明の範囲を限定すると解されるべきではない。それとは逆に、本明細書の説明を読んだ後、本発明の趣旨と添付の請求項の範囲の両方又はいずれかから逸脱することなく多種多様な他の実施形態、修正、及びその等価物を有し得ることが当業者に明らかになるであろうことは、明確に解されるべきである。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
以下の表1に示す構成成分からバッチ組成物を調整した。
【0073】
【表1】

【0074】
図1に示す例示の装置10に類似する装置を用いて、以下の表2に示す工程パラメータを用いて、表1に示すLAZ組成物からセラミック繊維を調整した。
【0075】
【表2】

【0076】
表1に示すセラミック繊維組成物をグラファイト製湯だまりで溶解温度に加熱して、均質の液体溶解物を生成した。液体溶解物を噴出圧でグラファイト製湯だまり開口部を通じて強制的に押し出して、液体噴出流を形成した。液体噴出流が湯だまり開口部を出て行くにつれて、液体噴出流は放射(すなわち、液体噴出流からの熱放射)を通じて冷却され、液体噴出流の粘度は急速に減少した。液体噴出流は前述の回転速度で回転する回転紡ぎ車と接触して、過冷却流体のプールを形成した。回転紡ぎ車の表面に接触した液体噴出流の一部は即座に固化して、紡ぎ車の表面に付着した。回転紡ぎ車の表面に位置する過冷却流体の上部はいまだ液相状態にあり、繊維形成に好適な粘度に急速に到達した。遠心力により、過冷却流体の小さな部分が過冷却流体の残りの部分から除去されて、無機物質の固化した部分が回転紡ぎ車表面に付着した。過冷却流体の小さな部分が回転する回転紡ぎ車から除去されるにつれて、小さな部分が過冷却流体の残りの部分から微細繊維を引っ張り、無機組成物の微細繊維を形成した。
【0077】
得られた繊維は約5μm〜約20μmの範囲にある繊維直径と約5〜200mmの範囲にある繊維長を有した。更に、得られた繊維は3μm未満の繊維直径を有する微細繊維後部を有しておらず、したがって非呼吸性繊維であった。図3Aと3Bは実施例1で形成した例示の繊維の繊維形状を示す。
【0078】
繊維を1250℃で30分間熱処理して、図4Aと4Bに示す微結晶質構造を有する繊維を形成した。図4Aは熱処理した繊維の断面図を提供し、図4Bは熱処理した繊維の繊維表面図を提供する。両方の数字はナノメートルの範囲にあるキメを示す。
【0079】
繊維の引張り強度は1.2GPa〜2.5GPaの範囲にあることが分かった。引張り強度の追加データを以下の表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
熱処理した繊維は良好な光学特性を有することも分かった。バルクLAZ物質の赤外線透過率を観察し、図5にグラフで示す。LAZ物質から形成した繊維は赤外線撮像及び検出用の赤外線繊維、並びに他の光学用途に用いることができる。
【0082】
(実施例2)
以下の表4に示す構成成分からバッチ組成物を調整した。
【0083】
【表4】

【0084】
表4に示すLZT組成物を有するセラミック繊維を実施例1に説明した装置と方法工程を用いて調整した。得られた繊維は約5μm〜約20μmの範囲にある繊維直径と約10〜約200mmの範囲にある繊維長を有した。更に、得られた繊維は3μm未満の繊維直径を有する微細繊維後部を有しておらず、したがって非呼吸性繊維であった。
【0085】
得られた繊維は630ナノメートルで約2.0という相対的に高い屈折率も有した。繊維は、ジャイロスコープ検出、レーザー結合、及び発光ダイオード(LED)結合などの検出及び結合用途を含むが、これらに限定されない、高い屈折率を要求する多数の用途に用いることができる。
【0086】
(実施例3)
以下の表5に示す構成成分からバッチ組成物を調整した。
【0087】
【表5】

【0088】
実施例1に説明した装置と以下の表6に示す下記の工程条件を用いて、表4に示すLAZG組成物を有するセラミック繊維を調整した。
【0089】
【表6】

【0090】
得られた繊維は、約5μm〜約20μmの範囲にある繊維直径と約10〜200mmの範囲にある繊維長を有した。更に、得られた繊維は3μm未満の繊維直径を有する微細繊維後部を有しておらず、したがって非呼吸性繊維であった。
【0091】
(実施例4)
実施例1に説明した装置と以下の表7に示す下記の工程条件を用いて、表5に示すLAZG組成物を有するセラミックビーズを調整した。
【0092】
【表7】

【0093】
液体溶解物を噴出圧でグラファイト製湯だまり開口部を通じて強制的に押し出して、液体噴出流を形成した。液体噴出流が湯だまり開口部を出て行くにつれて、液体噴出流は放射及びヘリウムガスとの接触を通じて冷却され、液体噴出流の粘度は急速に減少した。液体噴出流は前述の回転速度で回転する回転紡ぎ車と接触して、過冷却流体の1つ以上のプールを形成した。回転紡ぎ車の表面と接触する液体噴出流の一部は即座に固化して、紡ぎ車の表面に付着した。回転紡ぎ車の表面に位置する過冷却流体の上部はいまだ液相状態にあり、ビーズ形成に好適な粘度に急速に到達した。遠心力により、過冷却流体の小さな部分が過冷却流体の残りの部分(すなわち、回転紡ぎ車表面に付着した無機物質の固化部分)から除去された。過冷却流体の小さな部分が過冷却流体の残りの部分から除去されるにつれて、小さな部分は回転部材の上面に沿って回転を開始し、ガラスビーズを形成した。
【0094】
得られたビーズは実質的に球状の形状を有し、ビーズ直径は約0.5mm〜約2.5mm以上の範囲であった。
【0095】
本明細書は、特定の実施形態について詳細に説明しているが、当然のことながら、当業者は、前述のものを理解することによって、これらの実施形態に対する代替、変化、及び同等物を用容易に想起できるであろう。したがって、本発明の範囲は添付特許請求の範囲及び任意のその等価物として評価されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック繊維を製造する方法であって、
溶融無機物質を回転軸を有する回転部材の外表面に噴出する工程であって、前記噴出工程が前記外表面上に前記溶融無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプールを形成する、噴出工程と、
少なくとも一部の前記過冷却流体を前記外表面から除去して前記除去された過冷却流体からセラミック繊維を形成するために、前記回転部材を回転軸に沿って回転させ、前記外表面に配置された前記過冷却流体に遠心力を提供する工程と、を含む製造方法。
【請求項2】
前記回転部材の前記外表面が内部に、前記外表面に沿って過冷却流体の1つ以上のプールの形成を可能とする、1つ以上の形状的特徴を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の形状的特徴は、前記回転軸から実質的に等しい距離にある経路に沿って少なくとも部分的に延びる1つ以上の溝を含み、前記過冷却流体の1つ以上のプールは、前記回転工程の間に、前記溝内に少なくとも部分的に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
繊維形成は、前記回転部材の前記外表面上ではなく前記回転部材の前記外表面の上方で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記回転部材の前記外表面に接触する少なくとも一部の前記無機物質は、繊維形成中及び繊維形成に続いて前記外表面上に留まる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記噴出工程後、前記外表面との接触に先立ち、前記溶融無機物質を冷却するために前記溶融無機物質を強制冷却媒体と接触させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融無機物質が、(i)アルミナ、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅、三酸化鉄、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化ニッケル、REO、酸化スカンジウム、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、ジルコニア、及びこれらの複合金属酸化物からなる群から選択される第一金属酸化物、並びに(ii)アルミナ、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅、三酸化鉄、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化ニッケル、REO、酸化スカンジウム、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、ジルコニア、及びこれらの複合金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの第二金属酸化物を含み、前記第一金属酸化物及び前記少なくとも1つの第二金属酸化物が互いに異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溶融無機物質は、前記溶融無機物質の総重量を基準として約20重量%(wt%)以下の二酸化ケイ素、酸化ホウ素、五酸化リン、二酸化テルル、酸化鉛、二酸化ゲルマニウム、又はこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶融無機物質は、(i)酸化ランタン、(ii)酸化ジルコニウム、及び(iii)酸化アルミニウム若しくは酸化チタンのいずれか1つを含み、前記溶融無機物質は、前記溶融無機物質の総重量を基準として20wt%未満の二酸化ケイ素、酸化ホウ素、五酸化リン、二酸化テルル、酸化鉛、二酸化ゲルマニウム、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶融無機物質は酸化アルミニウム及び酸化ガドリニウムを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記セラミック繊維はガラス繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記セラミック繊維はナノ結晶繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記セラミック繊維を熱処理して多結晶繊維を形成する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記セラミック繊維は実質的に円形の断面形状及び前記繊維の長さに沿って延伸している実質的に一定の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記セラミック繊維は、少なくとも約1:1000の縦横比、約10mm〜約200mmの繊維長、及び約5μm〜約20μmの範囲にある平均繊維直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
セラミック繊維を製造する方法であって、
回転軸を有する回転部材の外表面上に溶融無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプールを形成する工程と、
少なくとも一部の前記過冷却流体を前記外表面から遠心分離的に除去し、前記除去された過冷却流体から1つ以上のガラス繊維を形成するために、前記回転部材を前記回転軸に沿って回転させる工程と、を含む製造方法。
【請求項17】
前記回転軸は前記外表面を通って延伸する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記無機物質を前記無機物質の液相温度より高い融解温度に加熱して均質の溶融無機物質を形成する工程と、
前記均質の溶融無機物質の流れを開口部から前記外表面に噴出させて、前記過冷却無機物質の1つ以上のプールを形成する工程と、
繊維形成に続いて、任意に前記セラミック繊維を熱処理して多結晶繊維を形成する工程と、を含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
セラミックビーズを製造する方法であって、
回転軸を有する回転部材の外表面上に溶融無機物質を含む過冷却流体の1つ以上のプールを形成する工程と、
前記回転部材を前記回転軸に沿って回転させて少なくとも一部の前記過冷却流体を、前記外表面に付着する固化した過冷却流体の残りの部分から遠心分離的に除去させる工程と、
前記過冷却流体の除去された部分を前記外表面に沿って回転させる回転速度に前記回転部材を維持して、前記除去された過冷却流体から1つ以上のセラミックビーズを形成する工程と、を含む製造方法。
【請求項20】
(i)前記溶融無機物質の冷却率を上昇させる、(ii)前記過冷却流体の一部を前記外表面から除去する、又は(iii)(i)と(ii)の両方を行う、ために、前記回転速度を変化させる工程を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記無機物質を、前記無機物質の液相温度より高い融解温度に加熱して均質の溶融無機物質を形成する工程と、
前記均質の溶融無機物質の流れを開口部から前記外表面上に噴出させ、過冷却無機物質の1つ以上のプールを形成する工程と、
ビーズ形成に続いて、任意に前記セラミックビーズを熱処理して多結晶ビーズを形成する工程と、を含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記溶融無機物質が、(i)アルミナ、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅、三酸化鉄、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化ニッケル、REO、酸化スカンジウム、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、ジルコニア、及びこれらの複合金属酸化物からなる群から選択される第一金属酸化物、並びに(ii)アルミナ、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅、三酸化鉄、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化ニッケル、REO、酸化スカンジウム、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、ジルコニア、及びこれらの複合金属酸化物からなる群から選択される、少なくとも1つの第二金属酸化物を含み、前記第一金属酸化物と前記少なくとも1つの第二金属酸化物が互いに異なる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記溶融無機物質は、前記溶融無機物質の総重量を基準として約20重量%(wt%)以下の二酸化ケイ素、酸化ホウ素、五酸化リン、二酸化テルル、酸化鉛、二酸化ゲルマニウム、又はこれらの組み合わせを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記無機物質は、(i)酸化ランタン及び酸化ジルコニウム、並びに任意で(ii)酸化アルミニウム又は酸化チタンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記セラミックビーズが実質的に球状の形状を有し、平均直径は約0.5mm〜約5.0mmの範囲にある、請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−508722(P2011−508722A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540812(P2010−540812)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/087593
【国際公開番号】WO2009/086052
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】