説明

セラミック製洗浄・研磨材

【課題】焦げ付き等の強固にこびり付いた汚れの剥離洗浄性に優れ、しかも使用によるそれ自体の汚れの残留の問題が少なく、衛生的に使用することができるセラミック製洗浄・研磨材を提供する。
【解決手段】内部連通構造を有する多孔質状のセラミック構造体よりなるセラミック製洗浄・研磨材。このセラミック構造体は、好ましくは内部連通空間を有する3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して上記合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着せしめた後、乾燥、焼成して得られる3次元網状骨格構造のセラミック多孔体よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック製洗浄・研磨材に係り、詳しくは、内部連通構造を有する多孔質状のセラミック構造体よりなる洗浄・研磨材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食器等の容易に汚れを落とすことができるものの洗浄には、スポンジ(軟質ポリウレタンフォーム)やナイロン不織布等が用いられているが、これらの洗浄材では、調理用の鉄板や鍋底の焦げ付きを擦り落とすことは困難である。これらの焦げ付きを擦り落とすための洗浄・研磨材としては、スポンジ表面に金属を蒸着したものや、研磨剤を付着させた不織布などが用いられているが、このような洗浄・研磨材でも、多種多様の材料が加熱により炭化して鉄板や鍋底に強固にこびり付いた焦げ付きを擦り落とすことは困難であった。また、これらの洗浄・研磨材では、鉄板や鍋底の焦げ付きを擦り落とすために使用した際、内部に汚れが侵入し、水洗してもこの汚れを落としきれず、このために、次回使用時には前回使用時に残留した汚れが腐敗して異臭を発生したり、また、菌が増殖して不衛生なものとなったりする問題もあった。
【0003】
金属線材を不織布状に絡ませた洗浄・研磨材(いわゆる金だわし)も市販されているが、このものは、発錆の問題がある上に、洗浄対象物の表面に傷を付け易く、洗浄対象物の光沢や美観を損ねてしまう欠点があった。
【0004】
なお、足裏等の皮膚の角質を削り落とすためには、一般に、天然の軽石が用いられている。軽石は、溶岩が急激に冷却されることで内部に多数の気泡が形成されたものであるが、天然の軽石は、気泡の大きさや数が不揃いで品質、性能にばらつきが多いという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の洗浄・研磨材の問題点を解決し、焦げ付き等の強固にこびり付いた汚れの剥離洗浄性に優れ、しかも使用によるそれ自体の汚れの残留の問題が少なく、衛生的に使用することができるセラミック製洗浄・研磨材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)のセラミック製洗浄・研磨材は、内部連通構造を有する多孔質状のセラミック構造体よりなることを特徴とする。
【0007】
請求項2のセラミック製洗浄・研磨材は、請求項1において、セラミック構造体は、内部連通空間を有する3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して上記合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着せしめた後、乾燥、焼成して得られる3次元網状骨格構造のセラミック多孔体であることを特徴とする。
【0008】
請求項3のセラミック製洗浄・研磨材は、請求項1において、該セラミック構造体はセラミックの不織マットであることを特徴とする。
【0009】
請求項4のセラミック製洗浄・研磨材は、請求項1において、該セラミック構造体はセラミック繊維を3次元網状に編んだものであることを特徴とする。
【0010】
請求項5のセラミック製洗浄・研磨材は、請求項1ないし4のいずれか1項において、該セラミック構造体の密度が0.25〜1.2g/cmであることを特徴とする。
【0011】
請求項6のセラミック製洗浄・研磨材は、請求項2において、該セラミック構造体の空孔数が5〜40個/25mmであり、空隙率が60〜95%であることを特徴とする。
【0012】
請求項7のセラミック製洗浄・研磨材は、請求項1ないし6のいずれか1項において、該セラミック構造体の10重量%以上を構成するセラミックが、アルミナ、シリカ、マグネシア、炭化珪素、及び窒化珪素よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項8のセラミック製洗浄・研磨材は、請求項1ないし7のいずれか1項において、厨房用洗浄・研磨材又は角質落とし用洗浄・研磨材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセラミック製洗浄・研磨材によれば、次のような効果が奏される。
(1) セラミック製であり、剛性が非常に高いため、こびり付いた焦げ付きなども容易に剥離洗浄することができる。
(2) 内部連通構造を有するため、使用時に孔内に侵入した汚れを容易に洗浄除去することができる。
(3) 材質や空隙率等を制御して硬度等を調整することにより、使用時に汚染された部分を削げ落としてゆくようにすることもできる。
(4) (2),(3)より、衛生的に使用することができる。
(5) (3)より、洗浄対象物の形状に倣って削れてゆくため、洗浄対象面を密着性良く研磨、洗浄し、効率的に汚れを落とすことができる。
(6) 物理的洗浄能力が非常に高いため、洗剤や研磨剤を不要とすることができる。
(7) セラミック製であるため、発錆の問題もない。
(8) (3)のように硬度を調整したり、水中で洗浄したりすることにより、洗浄対象物への傷付きを防止することができる。
(9) 天然の軽石とは異なり、品質や性能にばらつきがなく、製造条件を調節することにより、所望の品質、性能のものを確実に得ることができる。
【0015】
本発明において、セラミック構造体としては、
[1] 内部連通空間を有する3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して上記合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着せしめた後、乾燥、焼成して得られる3次元網状骨格構造のセラミック多孔体
[2] セラミックの不織マット
[3] セラミック繊維を3次元網状に編んだもの
などが挙げられる。
【0016】
これらのセラミック構造体は、密度が0.25〜1.2g/cmであることが好ましく、特に、上記[1]の3次元網状骨格構造のセラミック多孔体にあっては、空孔数が5〜40個/25mmで、空隙率が60〜95%であることが好ましい。
【0017】
このようなセラミック構造体の10重量%以上を構成する主成分としてのセラミックとしては、アルミナ、シリカ、マグネシア、炭化珪素、及び窒化珪素よりなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0018】
本発明のセラミック製洗浄・研磨材は、厨房用洗浄・研磨材又は角質落とし用洗浄・研磨材として有用であるが、何らこれらに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明のセラミック製洗浄・研磨材の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明のセラミック製洗浄・研磨材は、内部連通構造を有する多孔質状のセラミック構造体よりなるものである。
【0021】
このセラミック構造体としては、
[1] 内部連通空間を有する3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して上記合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着せしめた後、乾燥、焼成して得られる3次元網状骨格構造のセラミック多孔体
[2] セラミックの不織マット
[3] セラミック繊維を3次元網状に編んだもの
などが挙げられる。
【0022】
このうち、上記[1]の3次元網状骨格構造のセラミック多孔体の製造に用いられる合成樹脂発泡体としては、内部連通空間を有する3次元網状骨格構造を有すればいずれのものも使用できるが、軟質ポリウレタンフォーム、特にセル膜のない軟質ポリウレタンフォームが好適に使用できる。このセル膜のないポリウレタンフォームとしては、発泡時のコントロールによりセル膜をなくしたもの、あるいはアルカリ処理、熱処理、水圧処理等によりセル膜を除去したものが使用でき、セル数、空孔率その他の物性は用途に応じて選択することができる。
【0023】
このセラミック多孔体は、上述した通り、合成樹脂発泡体をセラミックスラリー、即ち、セラミック粉体を水等の分散媒に分散させたスラリーに浸漬し、合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着せしめた後、乾燥、焼成し、該合成樹脂発泡体を熱分解又は焼却して得られる。
【0024】
用いるセラミックスラリーには、セラミック粉体の分散安定性を高めるために粘土を配合することができる。この粘土としては、例えば木節粘土、蛙目粘土などが使用できる。また、配合量は全セラミック成分に対し0〜15重量%とすることが好ましい。粘度の配合量が15重量%より多いとチクソトロピー指数が変化して目づまりの原因となる。
【0025】
その他、セラミックスラリーには必要に応じポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース等の結合剤を配合することによりチクソトロピー性を調整することもできる。
【0026】
なお、セラミックスラリーの粘度は目的とするセラミック多孔体のセルの大きさなどに応じ、水の添加量を加減して調節することができる。
【0027】
このようなセラミックスラリーに前述の3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体を浸漬してセラミックスラリーを含浸させ、次いで、余剰泥漿を除去した後乾燥し、その後、焼成炉で1000〜1500℃程度の温度で焼成する。これにより、合成樹脂発泡体の連続気孔に対応したセル構造の内部連通空間を有する3次元網状骨格構造のセラミック多孔体よりなるセラミック製洗浄・研磨材を得ることができる。
【0028】
本発明において、セラミック構造体を構成するセラミックの種類については特に制限はないが、アルミナ、シリカ、マグネシア等の酸化物セラミックや、炭化珪素、窒化珪素等の非酸化物セラミック等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
このセラミック構造体の密度、空隙率等は、セラミック製洗浄・研磨材の用途、即ち、洗浄対象物に応じて適当な硬度が得られるように決定されるが、通常の場合、セラミック構造体の密度は0.25〜1.2g/cm、特に0.35〜0.70g/cmであることが好ましい。特に、前記[1]の3次元網状骨格構造のセラミック多孔体の場合、空孔数が5〜40個/25mm、特に6〜20個/25mmで、空隙率が60〜95%、特に75〜90%であることが好ましい。
【0030】
本発明のセラミック製洗浄・研磨材は、一般的には、4〜7.5cm×4〜7.5cm×1.5〜3cm程度の大きさの、直方体形状のものとして提供されるが、必要に応じて、これを把持部材等に固定して柄付き洗浄・研磨材とすることもできる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0032】
実施例1
バイヤー法アルミナ95重量部と、木節粘土5重量部と、ポリビニルアルコール4重量部と、水20重量部とを混合してセラミックスラリーを調製した。
【0033】
このセラミックスラリーに、1インチ(25mm)当たりセル数が10個のセル膜のない3次元網状骨格構造の軟質ポリウレタンフォームを浸漬して含浸させた。余分なスラリーを除去し、十分に乾燥し、次いで1300℃で10時間焼成を行って三次元網状骨格構造のセラミック多孔体を得た。このセラミック多孔体の平均空隙率は、86%で、空孔数は10個/25mmであり、密度は0.45g/cmであった。
【0034】
このセラミック多孔体(5cm×5cm×2cmの直方体形状)を用いて、鍋底にこびり付いた焦げ付きの研磨、洗浄を行ったところ、容易に洗浄除去することができた。
【0035】
しかも、研磨により、セラミック多孔体の表層部が削れ落ちることにより、汚れが除去され、使用後のセラミック多孔体は流水にさらすのみで容易に使用前の清浄なものにすることができ、衛生的に繰り返し使用することができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のセラミック製洗浄・研磨材は、厨房用セラミック製洗浄・研磨材として、コンロ周辺の焦げ付き落とし、鍋底の焦げ付き落とし、換気扇及びその周辺の汚れ落とし等として用いることができる。
【0037】
また、ひじ、ひざ等の角質落とし用セラミック製洗浄・研磨材としても快適に使用することができる。
【0038】
更に、これに限らず、便器の尿石、金属製品の錆、水垢、湯垢、水系の硬度成分の付着層など、強固にこびり付いた汚れの研磨洗浄に有効に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部連通構造を有する多孔質状のセラミック構造体よりなることを特徴とするセラミック製洗浄・研磨材。
【請求項2】
請求項1において、セラミック構造体は、内部連通空間を有する3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して上記合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着せしめた後、乾燥、焼成して得られる3次元網状骨格構造のセラミック多孔体であることを特徴とするセラミック製洗浄・研磨材。
【請求項3】
請求項1において、該セラミック構造体はセラミックの不織マットであることを特徴とするセラミック製洗浄・研磨材。
【請求項4】
請求項1において、該セラミック構造体はセラミック繊維を3次元網状に編んだものであることを特徴とするセラミック製洗浄・研磨材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該セラミック構造体の密度が0.25〜1.2g/cmであることを特徴とするセラミック製洗浄・研磨材。
【請求項6】
請求項2において、該セラミック構造体の空孔数が5〜40個/25mmであり、空隙率が60〜95%であることを特徴とするセラミック製洗浄・研磨材。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、該セラミック構造体の10重量%以上を構成するセラミックが、アルミナ、シリカ、マグネシア、炭化珪素、及び窒化珪素よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするセラミック製洗浄・研磨材。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、厨房用洗浄・研磨材又は角質落とし用洗浄・研磨材であることを特徴とするセラミック製洗浄・研磨材。

【公開番号】特開2006−340908(P2006−340908A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169675(P2005−169675)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(591049055)ブリヂストン化成品東京株式会社 (9)
【Fターム(参考)】