セルガイド用形鋼の製造方法
【課題】セルガイドとして使用するにあたってコンテナ船内におけるコンテナの収容効率を高めるとともにセルガイドの軽量化を達成し、かつ熱間圧延で安定して大量に製造することによって製造コストを削減できるセルガイド用形鋼の製造方法を提供する。
【解決手段】矩形断面の鋼素材を所定の温度に加熱した後、孔型を有する圧延ロールを用いて圧下を施して、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部7を有しかつ湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部8とその脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部9とを有する中間素材とし、さらに続く孔型により中間素材の湾曲部を曲げて脚部を互いに平行に形成する。
【解決手段】矩形断面の鋼素材を所定の温度に加熱した後、孔型を有する圧延ロールを用いて圧下を施して、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部7を有しかつ湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部8とその脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部9とを有する中間素材とし、さらに続く孔型により中間素材の湾曲部を曲げて脚部を互いに平行に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のコンテナを海上輸送するためのコンテナ船で使用するセルガイドに好適な形鋼(以下、セルガイド用形鋼という)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンテナ船は多数のコンテナを海上輸送するための船舶であり、その船体内には複数の隔壁が設けられる。コンテナは船積みされる際に、クレーンによって隔壁に沿って上方から下方へ移動し、積み出される際には隔壁に沿って下方から上方へ移動する。そのため図10に示すように、コンテナの4隅を案内するための部材(以下、セルガイドという)を隔壁に配設する。
【0003】
従来からセルガイド1には形鋼が使用されており、とりわけ図12に示すような等辺山形鋼4をリブ5に溶接したものが広く使用されている。図11は、このセルガイド1の斜視図である。等辺山形鋼4は、辺の長さ130〜150mm程度,厚みが15mm程度のものが一般的である。リブ5は、厚み10〜15mm程度の鋼板をT字型に切断したものであり、等辺山形鋼4を隔壁3に固定する役割を担う。なお、等辺山形鋼4の外側面同士の間隔Lは、最近では60mm程度とすることが多い。この図12に示すセルガイドを製造する際には、鋼板を切断してリブ5を製造し、さらにそのリブ5に等辺山形鋼4を溶接する。等辺山形鋼4の2辺とリブ5とを溶接するので、狭い空間での溶接作業となるばかりでなく、溶接部が長くなり、セルガイド1の製造過程で生産性低下の問題が生じる。
【0004】
これに対して特許文献1には、図13に示す形状の形鋼を用いるセルガイドが開示されている。この技術は、図13に示す形状のセルガイド用形鋼6を用いるので、セルガイドの強度を高めるとともに、リブ(図示せず)の形状を矩形あるいは台形にすることによって溶接箇所を減少させることができる。その結果、セルガイドの製造に要する所要時間の短縮と製造コストの削減を達成できる。なお特許文献1では、セルガイド用形鋼6を製造する過程で図15に示すような孔型を有する圧延ロール(いわゆるカリバーロール)を順次使用する。そして、得られるセルガイド用形鋼6の脚部8の外側面同士の間隔Lは90mmである。
【0005】
脚部8の外側面同士の間隔Lが大きくなると、図10に示すコンテナ2の隙間が広がるので、コンテナの収容効率が低下する。コンテナの収容効率を高めるためには、脚部8の外側面同士の間隔Lを小さくしなければならない。
特許文献1に開示された技術を用いて図13に示すようなセルガイド用形鋼6を製造するにあたって、脚部8の外側面同士の間隔Lを60mm程度とするためには、図18に示すような孔型を有する圧延ロールを使用する必要がある。しかも、図13,14に開示されたセルガイド用形鋼6の底辺10は平坦であり、その底辺10を平坦に形成するためには、図18の上ロールの凸部先端の平面が底辺10に接触する必要がある。
【0006】
すなわち特許文献1に開示された技術では、セルガイド用形鋼6の脚部8の外側面同士の間隔Lを狭めるために、図18に示すように上ロールの凸部の幅を小さくする必要があり、しかも、その上ロールの凸部を下ロールの凹部の深奥まで挿入しなければならない。セルガイド用形鋼6は熱間圧延で製造されるので、上ロールの凸部の温度は圧延中に著しく上昇し、変形や破損等が生じ易くなる。つまり特許文献1に開示された技術では、脚部8の外側面同士の間隔が狭いセルガイド用形鋼6を安定して大量に製造することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-274483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、セルガイドとして使用するにあたってコンテナ船内におけるコンテナの収容効率を高めるとともにセルガイドの軽量化を達成し、かつ熱間圧延で安定して大量に製造することによって製造コストを削減できるセルガイド用形鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、矩形断面の鋼素材を所定の温度に加熱した後、孔型を有する圧延ロールを用いて圧下を施して、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部とその脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有する中間素材とし、さらに続く孔型により中間素材の湾曲部を曲げて脚部を互いに平行に形成するセルガイド用形鋼の製造方法である。
【0010】
本発明のセルガイド用形鋼の製造方法においては、中間素材の湾曲部を曲げる際に、U字形部内に配置される圧延ロールの凸部先端と湾曲部の内面との間に隙間を設けることが好ましい。さらに中間素材の脚部と突出部が直角をなすことが好ましい。
なお本発明では、湾曲部が円弧状の形状を呈するが、必ずしも真円の円弧である必要はなく、楕円の円弧であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セルガイド用形鋼を熱間圧延で安定して大量に製造でき、製造コストの削減が可能である。また、セルガイドとして使用するにあたって、コンテナ船内におけるコンテナの収容効率の向上とセルガイドの軽量化を達成できるので、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法で得られるセルガイド用形鋼の例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示すセルガイド用形鋼を用いて製造したセルガイドの例を模式的に示す断面図である。
【図3】図2に示すセルガイドの斜視図である。
【図4】図1に示すセルガイド用形鋼の製造過程で使用する圧延ロールの孔型を順次示す断面図である。
【図5】発明例のセルガイド用形鋼の寸法を示す断面図である。
【図6】有限要素解析法のモデルを示す斜視図である。
【図7】有限要素解析法で求めたデータを示すグラフである。
【図8】比較のために製造したセルガイド用形鋼の例を模式的に示す断面図である。
【図9】比較のために製造したセルガイド用形鋼の例を模式的に示す断面図である。
【図10】従来のセルガイドを隔壁に配設する例を模式的に示す断面図である。
【図11】図10に示すセルガイドの斜視図である。
【図12】図10に示すセルガイドを拡大して示す断面図である。
【図13】従来のセルガイドの他の例を模式的に示す斜視図である。
【図14】図13に示すセルガイド用形鋼の断面図である。
【図15】図13に示すセルガイド用形鋼の製造過程で使用する圧延ロールの孔型を順次示す断面図である。
【図16】図12に示すセルガイドの寸法を示す断面図である。
【図17】比較のために製造したセルガイドの寸法を示す断面図である。
【図18】図13に示すセルガイド用形鋼の脚部の外側面同士の間隔を狭めるために使用する圧延ロールの孔型を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の製造方法で得られるセルガイド用形鋼について説明する。
図1は、本発明の製造方法で得られるセルガイド用形鋼の例を模式的に示す断面図である。その断面は、セルガイド用形鋼の長手方向に垂直な面である。
図1に示すように、本発明の製造方法で得られるセルガイド用形鋼6は、円弧状の湾曲部7,湾曲部7の両端から互いに平行に延伸される2枚の脚部8,脚部8の先端から垂直方向かつ外側に延伸される2枚の突出部9からなる。つまり、脚部8の一端は湾曲部7に連結され、他端は突出部9に連結される。湾曲部7は、図14に示すセルガイド用形鋼のような平坦ではなく、湾曲した円弧状の形状である。この点については、セルガイド用形鋼6の製造方法に関連して後述する。なお、脚部8と湾曲部7を総称してU字形部と記す。
【0014】
このセルガイド用形鋼6をリブ5に溶接してセルガイドとする。図2は、そのセルガイドの例を示す断面図である。セルガイド用形鋼6は熱間圧延で一体的に成形されるので、十分な強度を有する。そのためセルガイドを製造するにあたってU字形部の内側にリブ5を充填する必要はなく、セルガイドの組立てが容易になる。つまり溶接する部位はセルガイド用形鋼6とリブ5との接触面のみとなり、図12に示すセルガイドに比べて溶接長さを大幅に減少できる。
【0015】
脚部8の外側面同士の間隔Lは30〜80mmの範囲内が好ましい。脚部8の外側面同士の間隔Lが30mm未満では、U字形部の内側が狭くなるので、熱間圧延でセルガイド用形鋼を製造することが困難になる。一方、間隔Lが80mmを超えると、湾曲部7の半径が大きくなるにつれて、脚部8の長さが短縮されるので、コンテナの4隅を案内する機能が低下するばかりでなく、図10に示すコンテナ2の隙間が広がるので、コンテナの収容効率が低下する。
【0016】
また、突出部9の厚みをT1 ,脚部8の厚みをT2 ,湾曲部7の厚みをT3 とすると、T1 >T2 >T3 とすることが好ましい。突出部9の厚みT1 を最も厚くすることよって、図2に示すようにリブ5に溶接して十分な強度を得ることが可能となる。一方で湾曲部7の厚みT3 を最も薄くすることによって、後述する熱間圧延にて湾曲部7を優先的に曲げることができる。脚部8は一端を湾曲部7に連結されるので剛性が高くなる。そのため、脚部8の厚みT2 を突出部9の厚みT1 より薄くして、セルガイド用形鋼の軽量化(すなわちセルガイドの軽量化)を図る。
【0017】
次に、本発明のセルガイド用形鋼の製造方法について説明する。
図4は、セルガイド用形鋼の製造過程で使用する圧延ロールの孔型を順次示す断面図である。
矩形の断面を有する鋼素材を所定の温度に加熱した後、圧延ロールで、図4の(a)〜(d)に示すように、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部とその脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有するW字形状を呈する中間素材を得る。その過程で、幅方向の中央(すなわちセルガイド用形鋼の湾曲部に該当する部位)を薄くする。この段階で、脚部と突出部が直角をなすように圧下を加えることが好ましい。
【0018】
さらに続く圧延ロールで、図4の(e)〜(f)に示すように中間素材の湾曲部を曲げて、脚部を互いに平行に配置して、湾曲部と脚部とからなるU字形部を形成して、セルガイド用形鋼を得る。このとき、幅方向の中央の厚みが薄い部位(すなわちセルガイド用形鋼の湾曲部に該当する部位)に曲げ変形が集中するので、容易にセルガイド用形鋼を製造できる。(e)〜(f)では、曲げ変形を安定させるために、数%程度の圧下率で圧下を加えることが好ましい。
【0019】
また、図4の(f)に示すように、U字形部内に配置される圧延ロールの凸部先端と湾曲部の内面との間に隙間を設けることが好ましい。この隙間を設けることによって、圧延ロールの凸部が対向する圧延ロールの凹部に進入する深さを浅くすることが可能となり、圧延ロールの凸部の変形や破損を抑制できる。
このようにして熱間圧延にてセルガイド用形鋼を製造すると、湾曲部には圧下が加えられず、曲げによって円弧状に湾曲したU字形状となる。なお湾曲部は、必ずしも真円の円弧である必要はなく、楕円の円弧であっても良い。
【0020】
なお、図4(f)において、U字形部内に配置される圧延ロールの凸部を設けず、平坦な圧延ロールと凹部を有する圧延ロールとを用いてセルガイド用形鋼を製造すると、図9に示すようなU字形部の開口部がところどころ閉塞した形状となる。このような形状のセルガイド用形鋼は、脚部の平行が確保できないので、実用に適さない。湾曲部の開口部が閉塞するのを防止するためには、図4(f)の圧延ロールの凸部を、対向する圧延ロールの凹部の1/3〜2/3程度の深さに挿入することが好ましい。
【実施例】
【0021】
矩形断面の鋼素材を熱間圧延して、図5に示す寸法(単位はmm)を有するセルガイド用形鋼を製造した。圧延ロールは、図4に示す孔型を有するものを使用した。なお、図4(f)の圧延ロールの凸部が対向する圧延ロールの凹部の1/2程度の深さに挿入するように設定すると、鋼素材500トンを熱間圧延した後でも凸部の変形や破損は生じなかった。このセルガイド用形鋼を発明例1とする。
【0022】
また、図12に示すセルガイドに用いた等辺山形鋼(以下、比較例1という)の寸法(単位はmm)を図16に示す。
さらに、図17に示す寸法(単位はmm)を有するセルガイド用形鋼を製造した。圧延ロールは、図15に示す孔型を有するものを使用して熱間圧延を行なった。なお、図15(f)の圧延ロールの凸部を対向する圧延ロールの凹部の深奥まで挿入して、上ロールの凸部先端面と下ロールの凹部底面とによって底辺に圧下を施した。その結果、鋼素材120トンを熱間圧延した後で凸部が破損したので、熱間圧延を停止した。このセルガイド用形鋼を比較例2とする。
【0023】
なお、図15(f)の圧延ロールの凸部が対向する圧延ロールの凹部の1/2程度の深さに挿入するように設定すると、得られたセルガイド用形鋼は図8に示すように底辺に近い脚部が変形した。このような形状の脚部を有するセルガイド用形鋼は、脚部の平行が確保されず、セルガイドとして使用するには支障が生じる。
発明例1と比較例1,2の断面積は表1に示す通りである。発明例1の断面積が最も小さく、セルガイド用形鋼の軽量化(すなわちセルガイドの軽量化)に好適であることが分かる。
【0024】
【表1】
【0025】
次に、発明例1のセルガイド用形鋼をリブに溶接して図2に示すセルガイド(以下、発明例2という)を製造した。また図示を省略するが、比較例2のセルガイド用形鋼をリブに溶接したセルガイド(以下、比較例4という)を製造した。発明例2と比較例4のセルガイド、および比較例1の等辺山形鋼を用いた図12に示すセルガイド(以下、比較例3という)に荷重を加えた場合の変形量を、有限要素解析法で計算した。
【0026】
有限要素解析法で計算するにあたって、図6に示すようにコンテナの高さに相当する長さ2590mmのセルガイドを想定し、そのセルガイドの中央で横方向からセルガイド用形鋼あるいは等辺山形鋼に荷重を加えるモデルを作成した。境界条件はセルガイドの両端を完全拘束とし、荷重は9.8kN,19.6kN,29.4kN,39.2kNとして、横方向の変位(mm)の最大値を求めた。その結果を表2と図7に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2から明らかなように、発明例2のセルガイドは横方向の変位(mm)が比較例3の1/10以下であり、強度が著しく向上した。また発明例2のセルガイドは、比較例4に比べても横方向の変位(mm)が減少した。
つまり本発明を適用して製造したセルガイド用形鋼(発明例1)は断面積が最も小さく、そのセルガイド用形鋼を用いたセルガイド(発明例2)は強度が最も高かった。
【符号の説明】
【0029】
1 セルガイド
2 コンテナ
3 隔壁
4 等辺山形鋼
5 リブ
6 セルガイド用形鋼
7 湾曲部
8 脚部
9 突出部
10 底辺
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のコンテナを海上輸送するためのコンテナ船で使用するセルガイドに好適な形鋼(以下、セルガイド用形鋼という)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンテナ船は多数のコンテナを海上輸送するための船舶であり、その船体内には複数の隔壁が設けられる。コンテナは船積みされる際に、クレーンによって隔壁に沿って上方から下方へ移動し、積み出される際には隔壁に沿って下方から上方へ移動する。そのため図10に示すように、コンテナの4隅を案内するための部材(以下、セルガイドという)を隔壁に配設する。
【0003】
従来からセルガイド1には形鋼が使用されており、とりわけ図12に示すような等辺山形鋼4をリブ5に溶接したものが広く使用されている。図11は、このセルガイド1の斜視図である。等辺山形鋼4は、辺の長さ130〜150mm程度,厚みが15mm程度のものが一般的である。リブ5は、厚み10〜15mm程度の鋼板をT字型に切断したものであり、等辺山形鋼4を隔壁3に固定する役割を担う。なお、等辺山形鋼4の外側面同士の間隔Lは、最近では60mm程度とすることが多い。この図12に示すセルガイドを製造する際には、鋼板を切断してリブ5を製造し、さらにそのリブ5に等辺山形鋼4を溶接する。等辺山形鋼4の2辺とリブ5とを溶接するので、狭い空間での溶接作業となるばかりでなく、溶接部が長くなり、セルガイド1の製造過程で生産性低下の問題が生じる。
【0004】
これに対して特許文献1には、図13に示す形状の形鋼を用いるセルガイドが開示されている。この技術は、図13に示す形状のセルガイド用形鋼6を用いるので、セルガイドの強度を高めるとともに、リブ(図示せず)の形状を矩形あるいは台形にすることによって溶接箇所を減少させることができる。その結果、セルガイドの製造に要する所要時間の短縮と製造コストの削減を達成できる。なお特許文献1では、セルガイド用形鋼6を製造する過程で図15に示すような孔型を有する圧延ロール(いわゆるカリバーロール)を順次使用する。そして、得られるセルガイド用形鋼6の脚部8の外側面同士の間隔Lは90mmである。
【0005】
脚部8の外側面同士の間隔Lが大きくなると、図10に示すコンテナ2の隙間が広がるので、コンテナの収容効率が低下する。コンテナの収容効率を高めるためには、脚部8の外側面同士の間隔Lを小さくしなければならない。
特許文献1に開示された技術を用いて図13に示すようなセルガイド用形鋼6を製造するにあたって、脚部8の外側面同士の間隔Lを60mm程度とするためには、図18に示すような孔型を有する圧延ロールを使用する必要がある。しかも、図13,14に開示されたセルガイド用形鋼6の底辺10は平坦であり、その底辺10を平坦に形成するためには、図18の上ロールの凸部先端の平面が底辺10に接触する必要がある。
【0006】
すなわち特許文献1に開示された技術では、セルガイド用形鋼6の脚部8の外側面同士の間隔Lを狭めるために、図18に示すように上ロールの凸部の幅を小さくする必要があり、しかも、その上ロールの凸部を下ロールの凹部の深奥まで挿入しなければならない。セルガイド用形鋼6は熱間圧延で製造されるので、上ロールの凸部の温度は圧延中に著しく上昇し、変形や破損等が生じ易くなる。つまり特許文献1に開示された技術では、脚部8の外側面同士の間隔が狭いセルガイド用形鋼6を安定して大量に製造することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-274483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、セルガイドとして使用するにあたってコンテナ船内におけるコンテナの収容効率を高めるとともにセルガイドの軽量化を達成し、かつ熱間圧延で安定して大量に製造することによって製造コストを削減できるセルガイド用形鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、矩形断面の鋼素材を所定の温度に加熱した後、孔型を有する圧延ロールを用いて圧下を施して、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部とその脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有する中間素材とし、さらに続く孔型により中間素材の湾曲部を曲げて脚部を互いに平行に形成するセルガイド用形鋼の製造方法である。
【0010】
本発明のセルガイド用形鋼の製造方法においては、中間素材の湾曲部を曲げる際に、U字形部内に配置される圧延ロールの凸部先端と湾曲部の内面との間に隙間を設けることが好ましい。さらに中間素材の脚部と突出部が直角をなすことが好ましい。
なお本発明では、湾曲部が円弧状の形状を呈するが、必ずしも真円の円弧である必要はなく、楕円の円弧であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セルガイド用形鋼を熱間圧延で安定して大量に製造でき、製造コストの削減が可能である。また、セルガイドとして使用するにあたって、コンテナ船内におけるコンテナの収容効率の向上とセルガイドの軽量化を達成できるので、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法で得られるセルガイド用形鋼の例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示すセルガイド用形鋼を用いて製造したセルガイドの例を模式的に示す断面図である。
【図3】図2に示すセルガイドの斜視図である。
【図4】図1に示すセルガイド用形鋼の製造過程で使用する圧延ロールの孔型を順次示す断面図である。
【図5】発明例のセルガイド用形鋼の寸法を示す断面図である。
【図6】有限要素解析法のモデルを示す斜視図である。
【図7】有限要素解析法で求めたデータを示すグラフである。
【図8】比較のために製造したセルガイド用形鋼の例を模式的に示す断面図である。
【図9】比較のために製造したセルガイド用形鋼の例を模式的に示す断面図である。
【図10】従来のセルガイドを隔壁に配設する例を模式的に示す断面図である。
【図11】図10に示すセルガイドの斜視図である。
【図12】図10に示すセルガイドを拡大して示す断面図である。
【図13】従来のセルガイドの他の例を模式的に示す斜視図である。
【図14】図13に示すセルガイド用形鋼の断面図である。
【図15】図13に示すセルガイド用形鋼の製造過程で使用する圧延ロールの孔型を順次示す断面図である。
【図16】図12に示すセルガイドの寸法を示す断面図である。
【図17】比較のために製造したセルガイドの寸法を示す断面図である。
【図18】図13に示すセルガイド用形鋼の脚部の外側面同士の間隔を狭めるために使用する圧延ロールの孔型を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の製造方法で得られるセルガイド用形鋼について説明する。
図1は、本発明の製造方法で得られるセルガイド用形鋼の例を模式的に示す断面図である。その断面は、セルガイド用形鋼の長手方向に垂直な面である。
図1に示すように、本発明の製造方法で得られるセルガイド用形鋼6は、円弧状の湾曲部7,湾曲部7の両端から互いに平行に延伸される2枚の脚部8,脚部8の先端から垂直方向かつ外側に延伸される2枚の突出部9からなる。つまり、脚部8の一端は湾曲部7に連結され、他端は突出部9に連結される。湾曲部7は、図14に示すセルガイド用形鋼のような平坦ではなく、湾曲した円弧状の形状である。この点については、セルガイド用形鋼6の製造方法に関連して後述する。なお、脚部8と湾曲部7を総称してU字形部と記す。
【0014】
このセルガイド用形鋼6をリブ5に溶接してセルガイドとする。図2は、そのセルガイドの例を示す断面図である。セルガイド用形鋼6は熱間圧延で一体的に成形されるので、十分な強度を有する。そのためセルガイドを製造するにあたってU字形部の内側にリブ5を充填する必要はなく、セルガイドの組立てが容易になる。つまり溶接する部位はセルガイド用形鋼6とリブ5との接触面のみとなり、図12に示すセルガイドに比べて溶接長さを大幅に減少できる。
【0015】
脚部8の外側面同士の間隔Lは30〜80mmの範囲内が好ましい。脚部8の外側面同士の間隔Lが30mm未満では、U字形部の内側が狭くなるので、熱間圧延でセルガイド用形鋼を製造することが困難になる。一方、間隔Lが80mmを超えると、湾曲部7の半径が大きくなるにつれて、脚部8の長さが短縮されるので、コンテナの4隅を案内する機能が低下するばかりでなく、図10に示すコンテナ2の隙間が広がるので、コンテナの収容効率が低下する。
【0016】
また、突出部9の厚みをT1 ,脚部8の厚みをT2 ,湾曲部7の厚みをT3 とすると、T1 >T2 >T3 とすることが好ましい。突出部9の厚みT1 を最も厚くすることよって、図2に示すようにリブ5に溶接して十分な強度を得ることが可能となる。一方で湾曲部7の厚みT3 を最も薄くすることによって、後述する熱間圧延にて湾曲部7を優先的に曲げることができる。脚部8は一端を湾曲部7に連結されるので剛性が高くなる。そのため、脚部8の厚みT2 を突出部9の厚みT1 より薄くして、セルガイド用形鋼の軽量化(すなわちセルガイドの軽量化)を図る。
【0017】
次に、本発明のセルガイド用形鋼の製造方法について説明する。
図4は、セルガイド用形鋼の製造過程で使用する圧延ロールの孔型を順次示す断面図である。
矩形の断面を有する鋼素材を所定の温度に加熱した後、圧延ロールで、図4の(a)〜(d)に示すように、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部とその脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有するW字形状を呈する中間素材を得る。その過程で、幅方向の中央(すなわちセルガイド用形鋼の湾曲部に該当する部位)を薄くする。この段階で、脚部と突出部が直角をなすように圧下を加えることが好ましい。
【0018】
さらに続く圧延ロールで、図4の(e)〜(f)に示すように中間素材の湾曲部を曲げて、脚部を互いに平行に配置して、湾曲部と脚部とからなるU字形部を形成して、セルガイド用形鋼を得る。このとき、幅方向の中央の厚みが薄い部位(すなわちセルガイド用形鋼の湾曲部に該当する部位)に曲げ変形が集中するので、容易にセルガイド用形鋼を製造できる。(e)〜(f)では、曲げ変形を安定させるために、数%程度の圧下率で圧下を加えることが好ましい。
【0019】
また、図4の(f)に示すように、U字形部内に配置される圧延ロールの凸部先端と湾曲部の内面との間に隙間を設けることが好ましい。この隙間を設けることによって、圧延ロールの凸部が対向する圧延ロールの凹部に進入する深さを浅くすることが可能となり、圧延ロールの凸部の変形や破損を抑制できる。
このようにして熱間圧延にてセルガイド用形鋼を製造すると、湾曲部には圧下が加えられず、曲げによって円弧状に湾曲したU字形状となる。なお湾曲部は、必ずしも真円の円弧である必要はなく、楕円の円弧であっても良い。
【0020】
なお、図4(f)において、U字形部内に配置される圧延ロールの凸部を設けず、平坦な圧延ロールと凹部を有する圧延ロールとを用いてセルガイド用形鋼を製造すると、図9に示すようなU字形部の開口部がところどころ閉塞した形状となる。このような形状のセルガイド用形鋼は、脚部の平行が確保できないので、実用に適さない。湾曲部の開口部が閉塞するのを防止するためには、図4(f)の圧延ロールの凸部を、対向する圧延ロールの凹部の1/3〜2/3程度の深さに挿入することが好ましい。
【実施例】
【0021】
矩形断面の鋼素材を熱間圧延して、図5に示す寸法(単位はmm)を有するセルガイド用形鋼を製造した。圧延ロールは、図4に示す孔型を有するものを使用した。なお、図4(f)の圧延ロールの凸部が対向する圧延ロールの凹部の1/2程度の深さに挿入するように設定すると、鋼素材500トンを熱間圧延した後でも凸部の変形や破損は生じなかった。このセルガイド用形鋼を発明例1とする。
【0022】
また、図12に示すセルガイドに用いた等辺山形鋼(以下、比較例1という)の寸法(単位はmm)を図16に示す。
さらに、図17に示す寸法(単位はmm)を有するセルガイド用形鋼を製造した。圧延ロールは、図15に示す孔型を有するものを使用して熱間圧延を行なった。なお、図15(f)の圧延ロールの凸部を対向する圧延ロールの凹部の深奥まで挿入して、上ロールの凸部先端面と下ロールの凹部底面とによって底辺に圧下を施した。その結果、鋼素材120トンを熱間圧延した後で凸部が破損したので、熱間圧延を停止した。このセルガイド用形鋼を比較例2とする。
【0023】
なお、図15(f)の圧延ロールの凸部が対向する圧延ロールの凹部の1/2程度の深さに挿入するように設定すると、得られたセルガイド用形鋼は図8に示すように底辺に近い脚部が変形した。このような形状の脚部を有するセルガイド用形鋼は、脚部の平行が確保されず、セルガイドとして使用するには支障が生じる。
発明例1と比較例1,2の断面積は表1に示す通りである。発明例1の断面積が最も小さく、セルガイド用形鋼の軽量化(すなわちセルガイドの軽量化)に好適であることが分かる。
【0024】
【表1】
【0025】
次に、発明例1のセルガイド用形鋼をリブに溶接して図2に示すセルガイド(以下、発明例2という)を製造した。また図示を省略するが、比較例2のセルガイド用形鋼をリブに溶接したセルガイド(以下、比較例4という)を製造した。発明例2と比較例4のセルガイド、および比較例1の等辺山形鋼を用いた図12に示すセルガイド(以下、比較例3という)に荷重を加えた場合の変形量を、有限要素解析法で計算した。
【0026】
有限要素解析法で計算するにあたって、図6に示すようにコンテナの高さに相当する長さ2590mmのセルガイドを想定し、そのセルガイドの中央で横方向からセルガイド用形鋼あるいは等辺山形鋼に荷重を加えるモデルを作成した。境界条件はセルガイドの両端を完全拘束とし、荷重は9.8kN,19.6kN,29.4kN,39.2kNとして、横方向の変位(mm)の最大値を求めた。その結果を表2と図7に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2から明らかなように、発明例2のセルガイドは横方向の変位(mm)が比較例3の1/10以下であり、強度が著しく向上した。また発明例2のセルガイドは、比較例4に比べても横方向の変位(mm)が減少した。
つまり本発明を適用して製造したセルガイド用形鋼(発明例1)は断面積が最も小さく、そのセルガイド用形鋼を用いたセルガイド(発明例2)は強度が最も高かった。
【符号の説明】
【0029】
1 セルガイド
2 コンテナ
3 隔壁
4 等辺山形鋼
5 リブ
6 セルガイド用形鋼
7 湾曲部
8 脚部
9 突出部
10 底辺
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形断面の鋼素材を所定の温度に加熱した後、孔型を有する圧延ロールを用いて圧下を施して、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ前記湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部と前記脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有する中間素材とし、さらに続く孔型により前記中間素材の前記湾曲部を曲げて前記脚部を互いに平行に形成することを特徴とするセルガイド用形鋼の製造方法。
【請求項2】
前記中間素材の前記湾曲部を曲げる際に、前記U字形部内に配置される圧延ロールの凸部先端と前記湾曲部の内面との間に隙間を設けることを特徴とする請求項1に記載のセルガイド用形鋼の製造方法。
【請求項3】
前記中間素材の前記脚部と前記突出部が直角をなすことを特徴とする請求項1または2に記載のセルガイド用形鋼の製造方法。
【請求項1】
矩形断面の鋼素材を所定の温度に加熱した後、孔型を有する圧延ロールを用いて圧下を施して、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ前記湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部と前記脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有する中間素材とし、さらに続く孔型により前記中間素材の前記湾曲部を曲げて前記脚部を互いに平行に形成することを特徴とするセルガイド用形鋼の製造方法。
【請求項2】
前記中間素材の前記湾曲部を曲げる際に、前記U字形部内に配置される圧延ロールの凸部先端と前記湾曲部の内面との間に隙間を設けることを特徴とする請求項1に記載のセルガイド用形鋼の製造方法。
【請求項3】
前記中間素材の前記脚部と前記突出部が直角をなすことを特徴とする請求項1または2に記載のセルガイド用形鋼の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−161845(P2012−161845A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86917(P2012−86917)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2007−238278(P2007−238278)の分割
【原出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2007−238278(P2007−238278)の分割
【原出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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