説明

セルスタック装置

【課題】発電出力が向上したセルスタック装置を提供する。
【解決手段】本発明のセルスタック装置1は、内部に一端から他端に貫通する反応ガスを流すための反応ガス流路12を有する燃料電池セル3の複数個を集電部材4を介して配列し、電気的に直列に接続されたセルスタック2と、燃料電池セル3の一端部を固定するとともに、燃料電池セル3に反応ガスを供給するためのマニホールド7とを備え、発電に使用されなかった余反応ガスを燃料電池セル3の他端部側で燃焼させる構成のセルスタック装置1であって、それぞれの燃料電池セル3の他端部同士がそれぞれの燃料電池セル3の一端部同士よりも近接して配置されていることから、セルスタック装置1の失火を抑制でき、発電出力性能の向上したセルスタック装置1とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルの複数個を立設して配列し、電気的に接続してなるセルスタック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、反応ガス(燃料ガス)と酸素含有ガス(通常、空気である。)とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルの複数個を立設して配列し、電気的に直列に接続してなるセルスタック装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上述のセルスタック装置としては、内部に一端から他端に貫通する反応ガスを流すための反応ガス流路を有する燃料電池セルの複数個を集電部材を介して立設させた状態で配列して電気的に直列に接続してなるセルスタックと、燃料電池セルに反応ガスを供給するためのマニホールドとを備え、発電に使用されなかった余剰の反応ガスを燃料電池セルの他端部側で燃焼させる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−308857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、セルスタック装置の低出力での作動時において、セルスタック装置に供給される反応ガスの量が少なくなり、それに伴って、発電に使用されなかった余剰の反応ガスの量が少なくなることで、失火が生じる場合がある。また、セルスタック装置の燃料利用率を向上させた時も同様に、発電に使用されなかった余剰の反応ガスの量が少なくなることで、失火が生じる場合がある。この場合、セルスタック装置の温度が低下し、セルスタック装置の発電出力が低下するおそれがある。
【0006】
それゆえ、本発明は、セルスタック装置の低出力での作動時や燃料利用率を向上させた作動時においても、失火が生じることを抑制し、発電出力の低下を抑制することができるセルスタック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセルスタックは、一端側に反応ガスが供給される供給口を、他端側に発電に使用されなかった反応ガスが排出される排気口を有する反応ガス流路を備えた燃料電池セルの複数個を配列してなるセルスタックであって、隣接する前記燃料電池セルは、前記排気口間の距離が前記供給口間の距離に比し近接するように配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のセルスタックは、前記燃料電池セルが放射状に配置されていることが好ましい。
【0009】
本発明のセルスタック装置は、内部に一端から他端に貫通する反応ガスを流すための反応ガス流路を有する燃料電池セルの複数個を集電部材を介して配列し、電気的に直列に接続されたセルスタックと、前記燃料電池セルの一端部を固定するとともに、前記燃料電池セルに反応ガスを供給するためのマニホールドとを備え、発電に使用されなかった余剰の
前記反応ガスを前記燃料電池セルの他端部側で燃焼させる構成のセルスタック装置であって、それぞれの前記燃料電池セルの他端部同士がそれぞれの前記燃料電池セルの一端部同士よりも近接して配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のセルスタック装置は、前記燃料電池セルが放射状に配置されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明のセルスタック装置は、前記燃料電池セルを側面から見たときの前記セルスタックの外形が円環状であることが好ましい。
【0012】
また、本発明のセルスタック装置は、平面視して、前記セルスタックの外形が円環状であるとともに、前記燃料電池セルの他端部の高さが前記一端部の高さよりも高いことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセルスタックによれば、各燃料電池セルから排出された発電に使用されなかった反応ガスの量が少ない場合においても、燃料電池セルの他端部側にて燃焼に用いられる余剰の反応ガスの量が不足することを抑制することができ、それにより、セルスタック装置の低出力作動時等のように、セルスタック装置に供給される反応ガスの量が少ない場合においても、失火することを抑制することができ、セルスタック装置の発電出力が低下することを抑制することができる。
【0014】
本発明のセルスタック装置によれば、各燃料電池セルから排出された発電に使用されなかった余剰の反応ガスの量が少ない場合においても、燃料電池セルの他端部側にて燃焼に用いられる余剰の反応ガスの量が不足することを抑制することができ、それにより、セルスタック装置の低出力作動時等のように、セルスタック装置に供給される反応ガスの量が少ない場合においても、失火することを抑制することができ、セルスタック装置の発電出力が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のセルスタック装置の一例を示し、(a)は斜視図、(b)は燃料電池セルと集電部材との接続を示す要部を拡大した側面図、(c)は集電部材の斜視図である。
【図2】図1のセルスタック装置を示し、(a)はセルスタック装置を概略的に示す側面図、(b)は(a)のセルスタック装置の点線枠で囲った部分の一部を拡大して示す平面図である。
【図3】本発明のさらに他のセルスタック装置を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図4】本発明のさらに他のセルスタック装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態にかかるセルスタック装置1を示し、(a)は集電部材4を省略した斜視図であり、(b)は燃料電池セル3と集電部材4との接続を示す要部を拡大した側面図、(c)は集電部材4を示す斜視図である。図2は、図1のセルスタック装置1を示し、(a)はセルスタック装置1を概略的に示す側面図、(b)は(a)のセルスタック装置1の点線枠で囲った部分の一部を拡大して示す平面図である。導電部材5は、燃料電池セル3と判別しやすくするために網模様を付している。
【0017】
図1および図2に示すセルスタック装置1は、一対の対向する平坦面を有する柱状の導電性支持体13(以下、支持体と略す場合がある。)の一方側の平坦面上に内側電極層と
しての燃料極層8と、固体電解質層9と、外側電極層としての空気極層10とを順に積層してなる柱状(中空平板状)の燃料電池セル3の複数個を配列し、それぞれの燃料電池セル3を集電部材4を介して電気的に直列に接続し、燃料電池セル3の配列方向(以下、セル配列方向と略す場合がある。)の両端から複数の燃料電池セル3を挟持するように、電流引出部5bを有するが配置されてセルスタック2を構成しており、セルスタック2は燃料電池セル3を側面から見て扇状(図1では中心角180°の半円状)の形状を有している。それにより、それぞれの燃料電池セル3の他端部同士がそれぞれの燃料電池セル3の一端部同士よりも近接して配置されている。そして、セルスタック2の両端部配置された導電部材5の電流引出部5bによりセルスタック2によって発電した電流を外部に引出しており、燃料電池セル3と導電部材5の一端部(下端部)は、燃料電池セル3に反応ガス(燃料ガス)を供給するためのマニホールド7に固定されている。
【0018】
また、燃料電池セル3の他方側の平坦面上にはインターコネクタ11が設けられており、支持体13の内部には、燃料電池セル3の一端3a(下端)から他端3b(上端)まで貫通した燃料ガス(反応ガス)を流すための反応ガス流路12が所定の間隔をあけて複数設けられている。反応ガス流路12の一端側は反応ガスが供給される供給口となっており、反応ガス流路12の他端側は発電に使用されなかった反応ガスが排出される排気口となっている。なお、反応ガス流路12が複数設けられている場合、複数の反応ガス流路12のそれぞれの一端部を総称して供給口とし、複数の反応ガス流路12のそれぞれの他端部を総称して排出口とすることができる。
【0019】
そして燃料電池セル3の内部(反応ガス流路12)に燃料ガスを流し、酸素含有ガス(空気)を燃料電池セル3の外部に流すことにより、燃料電池セル3は発電する。また、燃料電池セル3から排出された発電に使用されなかった余剰の燃料ガス(以下、余剰の燃料ガスと略す場合がある。)を燃料電池セル3の他端部側(上端部側)にて燃焼させることにより、燃料電池セル3の他端部側が燃焼部となり、セルスタック装置1を効率よく温めることができ、セルスタック装置1の起動時間を短くすることや、効率のよい運転をすることができる。
【0020】
なお、本明細書において燃料電池セル3を側面から見てと示した場合、後述する燃料電池セル3の幅方向(以下、セル幅方向と略す場合がある。)から見ることを示す。
【0021】
インターコネクタ11の外面(上面)にはP型半導体層14を設けることもでき、図2においてはP型半導体層14を設けた例を示している。集電部材4をP型半導体層14を介してインターコネクタ11に接続させることにより、両者の接続がオーム接続となり、電位降下を少なくし、集電効率の低下を有効に回避することが可能となる。
【0022】
なお、燃料極層8、固体電解質層9および空気極層10がこの順に積層された部位(発電部)において、燃料電池セル3は発電する。また、以降の説明において、特に断りのない限り、内側電極層を燃料極層8とし、外側電極層を空気極層10として説明し、燃料電池セル3の上端部側(上方)において余剰の燃料ガスを燃焼させる構成のセルスタック装置を用いて説明する。
【0023】
また、支持体13を燃料極層8を兼ねるものとし、その一方側表面上に固体電解質層9および空気極層10を順次積層して燃料電池セル3を構成することもできる。
【0024】
なお、本発明において燃料電池セル3としては、各種燃料電池セルが知られているが、発電出力のよい燃料電池セル3とする上で、固体酸化物形燃料電池セルとすることができる。それにより、単位電力に対してセルスタック装置1を小型化することができるとともに、家庭用燃料電池で求められる変動する負荷に追従する負荷追従運転を行なうことがで
きる。
【0025】
以下に、図2において示すセルスタック装置1を構成する各部材について説明する。
【0026】
燃料極層(内側電極層)8は、一般的に公知のものを使用することができ、多孔質の導電性セラミックス、例えばYやYb等の希土類元素が固溶しているZrO(部分安定化ジルコニアまたは安定化ジルコニア)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
【0027】
燃料極層8において、NiおよびNiOのうち少なくとも一方と、希土類元素が固溶しているZrOの含有量は、焼成−還元後における体積比率が、NiO:希土類元素が固溶しているZrO(例えば、NiO:YSZ)が35:65〜65:35(Ni/(Ni+Y)がモル比で65〜86mol%)の範囲にあるのが好ましい。さらに、この燃料極層8の気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのが好ましく、その厚みは、1〜30μmであるのが好ましい。
【0028】
固体電解質層9は、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有しているとともに、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有することが必要とされ、3〜15モル%のY、Yb、Sc、Ca等の希土類元素が固溶したZrOから形成される。なお、上記特性を有する限りにおいては、他の材料等を用いて形成してもよい。
【0029】
さらに、固体電解質層9は、ガス透過を防止するという点から、相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に95%以上の緻密質であることが望ましく、かつその厚みが5〜50μmであることが好ましい。
【0030】
空気極層(外側電極層)10は、導電性セラミックス(例えば、ABO型のペロブスカイト型酸化物)から形成することができ、ガス透過性を有する必要があることから、気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。さらに、空気極層10の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが好ましい。
【0031】
インターコネクタ11は、導電性セラミックスから形成することができるが、燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガス(空気等)と接触するため、耐還元性及び耐酸化性を有することが必要であり、それゆえランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)が好適に使用される。インターコネクタ11は支持体13に形成された複数の反応ガス流路12を流通する燃料ガス、および支持体13の外側を流通する酸素含有ガスのリークを防止するために緻密質でなければならず、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好ましい。
【0032】
また、インターコネクタ11の厚みは、ガスのリーク防止と電気抵抗の増大を抑制するという理由から、10〜50μmであることが好ましい。この範囲よりも厚みが薄いと、ガスのリークを生じやすく、またこの範囲よりも厚みが大きいと、電気抵抗が大きく、電位降下により集電機能が低下してしまうおそれがある。
【0033】
支持体13としては、燃料ガスを燃料極層8まで透過するためにガス透過性であること、さらには、インターコネクタ11を介して集電するために導電性であることが要求される。したがって、支持体13としては、かかる要求を満足するものを材質として採用する必要があり、例えば導電性セラミックスやサーメット等を用いることができる。
【0034】
また、支持体13は、所要ガス透過性を備えるために開気孔率が30%以上、特に35
〜50%の範囲にあるのが好適であり、そしてまたその導電率は50S/cm以上、より好ましくは300S/cm以上、特に440S/cm以上であるのが好ましい。
【0035】
P型半導体層14としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物からなる層を例示することができる。具体的には、インターコネクタ11を構成するランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)よりも電子伝導性が大きいもの、例えば、BサイトにMn、Fe、Coなどが存在するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物などの少なくとも一種からなるP型半導体セラミックスを使用することができる。このようなP型半導体層14の厚みは、一般に、30〜100μmの範囲にあることが好ましい。
【0036】
そして、複数個の燃料電池セル3は、図1(b)、(c)に示すように、集電部材4を介して電気的に直列に接続されている。集電部材4は、隣接する一方の燃料電池セル3の空気極層(外側電極層10)に接続される一方の集電部4aと、隣接する他方の燃料電池セル3のインターコネクタ11に接続される他方の集電部4aと、一対の集電部4aの一端部同士を接続する接続部4bとからなり、平面視してU字形状に形成されている。集電部4aには燃料電池セル3の長手方向(以下、セル長手方向と略す場合がある。)に所定の間隔をあけて複数のスリット(切欠部)が設けられており、燃料電池セル3の空気極層10に酸素含有ガスを供給することができるようになっている。
【0037】
集電部材4の集電部4aの幅および長さは、空気極層10の幅および長さと同じかそれ以上が集電性の点から好ましい。集電部4aの幅および長さやスリットの数等はセルスタック装置1の構成に合わせて適宜設定することができる。なお、集電部材4は、一枚の平板にプレス加工等により所定の位置にスリットを設け、折り曲げることにより容易に作製することができる。
【0038】
また、集電部材4は、高温な酸化雰囲気に曝されるため、耐熱性および耐酸化性を備えることが好ましく、Crを10〜30質量%含有する合金等により形成されることが好ましく、さらにはペロブスカイト型酸化物等の耐酸化性コーティングを施すことがより好ましい。
【0039】
なお、集電部材として平面視してU字形状の集電部材4を例示したが、一対の集電部4aの中央部同士を接続し、平面視してH字形状の集電部材としてもよいし、一対の集電部4aの一端部と他端部同士を接続し、平面視してN字形状の集電部材としてもよい。さらに、集電部4aを板部材にセル長手方向に所定の間隔をあけてスリットを設けて形成した例を示したが、燃料電池セル3の幅方向(以下、セル幅方向と略す場合がある。)に沿った帯状の集電片を集電部として、それぞれの集電片を複数の接続部にて接続した構成としてもよい。
【0040】
そして、集電部材4を介して複数個の燃料電池セル3を電気的に直列に接続し、セル配列方向の両端から挟持するように導電部材5を配置することでセルスタック2が形成されており、これら燃料電池セル3および導電部材5の下端部側を燃料電池セル3に燃料ガスを供給するためのマニホールド7に固定することで、セルスタック装置1が構成されている。
【0041】
導電部材5は、セルスタック2の端部に配置された燃料電池セル3と対向する板状部5aと、セル幅方向に沿って外側に向けて延びた形状で、セルスタック2(燃料電セル3)の発電により生じる電流を引出すための電流引出部6を具備しており、セルスタック2で発電した電流を電流引出部6から外部に取り出すことができる。なお、導電部材5を形成する部材は、前述した集電部材4と同様のものを用いることができ、集電部材4と同様に
耐酸化性コーティングを施すことが好ましい。
【0042】
また、図1および図2においては、それぞれの電流引出部5bは同じ方向に設けられているが、セル幅方向に沿ってそれぞれの電流引出部6を逆方向に設けてもよいし、セル配列方向に沿ってセルスタック2の後方に向けて延びるように設けてもよい。
【0043】
マニホールド7は、箱状部材を湾曲させた外形であり、内側に複数個の燃料電池セル3を立設するための1つの大きな開口を有している。この開口の内部に、複数個の燃料電池セル3および導電部材5の下端部がマニホールド7と接触しないように挿入し、ガラス等のシール材(図示せず)により燃料電池セル3および導電部材5の下端部をマニホールド7に対して絶縁した状態で固定することで、ガスシールされたマニホールド7とすることができる。
【0044】
また、燃料電池セル3の外形より大きく、燃料電池セル3の外形または導電部材5の外形と相似形状の開口をマニホールド7に複数設け、それぞれの開口に燃料電池セル3および導電部材5の下端部を挿入してシール材により固定することで、マニホールド7にセルスタック2を固定してもよい。
【0045】
さらに、1つまたは複数個の開口が設けられた燃料電池セル3の側面から見て湾曲した外形を有する板部材(セル保持部材)に、シール材によりセルスタック2を固定した後、一面が開口し、かつ湾曲した箱部材を接合してマニホールド7を作製してもよい。なお、マニホールド7には、マニホールド7に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給管15が接続されており、外部から供給された燃料ガスを燃料電池セル3に供給している。
【0046】
マニホールド7を形成する部材は、集電部材4や導電部材5と同様にCrを含有する合金を用いることができるが、マニホールド7に集電部材4や導電部材5(電流引出部6)が接触すると電気的に短絡してしまうため、マニホールド7の燃料電池セル3側の表面、より好ましくは全表面に絶縁性のコーティングを施すことが好ましい。
【0047】
上記のように構成されるセルスタック装置1は、マニホールド7により燃料電池セル3の内部(反応ガス流路12)に燃料ガスが供給され、酸素含有ガス導入部材(図示せず)により燃料電池セル3の外部に酸素含有ガスが供給されることにより、燃料電池セル3が発電し、余剰の燃料ガスを燃焼させることにより、セルスタック装置の起動や発電を効率よく行なうことができる。
【0048】
ここで、セルスタック装置を低出力で作動させた場合や、燃料利用率を高く設定して作動させた場合に、余剰の燃料ガスの量が少なくなり、失火が生じるおそれがある。
【0049】
図1および図2に示すセルスタック装置1は、燃料電池セル3が放射状に配置されており、燃料電池セル3の側面から見たときのセルスタック2の外形が扇状となっていて、燃料電池セル3が中心角180°の扇状に配置されている。すなわち、セルスタック2を構成するそれぞれの燃料電池セル3の他端部同士が、それぞれの燃料電池セル3の一端部同士よりも近接して配置されている。そのため、隣接する燃料電池セル3の反応ガス流路12の排気口間の距離が、反応ガス流路12の供給口間の距離に比べて、近接するようになる。
【0050】
それにより、各燃料電池セル3の燃焼部同士が近づくことにより、余剰の燃料ガスの量が少ない場合においても、燃料電池セル3の他端部側にて余剰の燃料ガスの量が不足することを抑制できる。そのため、セルスタック装置1の失火を抑制することができ、セルスタック装置1の温度が低下することを抑制できることから、セルスタック装置1の発電出
力が低下することを抑制できる。
【0051】
なお、反応ガス流路12が複数形成されている場合、隣接する燃料電池セル3の一方の燃料電池セル3における、隣接する他方の燃料電池セル3側に配置される反応ガス流路12の排出口と、隣接する燃料電池セル3の他方の燃料電池セル3における、隣接する一方の燃料電池セル3側に配置される反応ガス流路12の排出口が近接していることを示す。
【0052】
また、セルスタック装置1は、図示したとおり、燃料電池セル3の側面から見て、燃料電池セル3が扇状または円環状に配置されているため、複数のセルスタック装置1を燃料電池装置内に併設しても燃料電池装置が大型化することを抑制できる。さらに、複数のセルスタック装置1同士を導電部材5の電流引出部5bによって、容易に電気的に接続することができる。
【0053】
なお、酸素含有ガス導入部材としては、セルスタック装置1の側方に配置され、内部を酸素含有ガスが流れる中空の部材であり、セルスタック装置1に酸素含有ガスを供給するため、セルスタック装置1側の面に複数の吹出口が設けられた酸素含有ガス導入部材を例示することができる。このような酸素含有ガス導入部材としては、セルスタック装置1と燃料電池セル3の側面から見て同様の外形のものが好ましい。セルスタック装置1と燃料電池セル3の側面から見て同様の外形のものを用いることにより、燃焼により生じた熱により効率よく酸素含有ガスを温めることができる。
【0054】
また、酸素含有ガス導入部材の吹出口は、燃料電池セル3の下端部側に位置するように設けることが好ましい。それにより、十分な量の酸素含有ガスを燃料電池セル3に供給することができる。
【0055】
なお、本明細書において、扇状とは中心角が0°<中心角<360°の扇形のものを示す。
【0056】
また、燃料電池セル3の側面から見たときの外形が扇状(半円状)であるセルスタック装置1を示したが、直方体状のマニホールドに、燃料電池セル3が、燃料電池セルがセル配列方向の中心に向けて傾斜して配置した構成のセルスタック装置とすることもできる。その場合においても、それぞれの燃料電池セル3の他端部同士が、それぞれの燃料電池セル3の一端部同士よりも近接して配置されることにより、余剰の燃料ガスが少ない場合においても、失火することを抑制できる。さらに、セルスタック装置は、燃料電池セル3の側面から見たときのセルスタックの外形が半円状ではなく、例えば中心角が180°以下の扇状でもいいし、180°以上の扇状のセルスタックを用いてもよい。
【0057】
なお、図1および図2に示すセルスタック装置1においては、マニホールド7の一方の端部(セル配列方向の端部)に1本の燃料ガス供給管15が接続されている例を示したが、他方の端部に燃料ガス供給管15を接続してもよい。その場合、燃料ガス供給管15の位置を対称の位置とすることにより、セルスタック2を構成する各燃料電池セル3に効率よく燃料ガスを供給することができる。さらに、マニホールド7の端部(図1ではマニホールド7の上面)に燃料ガス供給管15を設けたが、マニホールド7のどの面に接続してもよく、例えば、マニホールド7の側面に燃料ガス供給管15を設けてもよく、セルスタック装置1の構成に合わせて適宜位置や数を決め設ければよい。
【0058】
図3は、本発明の他の実施形態にかかるセルスタック装置16を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。また、同一の部材については同一の番号を付するものとし、以下同様とする。なお、図2において、(b)は(a)で示した点線枠で囲った部分に対応する部分を明確とするために矢印にて示している。セルスタック装置16は、燃料電池セ
ル3の側面から見たときの外形が円環状のセルスタック2が、燃料電池セル3の側面から見たときの外形が円環状(周回状)のマニホールド7に接続されている。すなわち、円環状のマニホールド7に、円環の中心に向けて放射状に燃料電池セル3が円環状に配置されている。セルスタック装置16を構成する集電部材4や導電部材5等はセルスタック装置1と同様のものを用いることができる。さらに、燃料ガス供給管15がマニホールド7の上面(セル幅方向と直交する面)に接合されており、その他の構成はセルスタック装置15と同様である。セルスタック装置16は、平面視して(紙面に対して垂直方向から見て)、セルスタック2の外形が円環状であるため、安定な状態でセルスタック装置16を燃料電池装置内に収容することができる。
【0059】
マニホールド7は、燃料電池セル3の側面から見たときの外形が円環状の湾曲された箱状部材からなり、内側(円環の中心側)に複数個の燃料電池セル3を立設するための1つの大きな開口を有している。そして、その開口に燃料電池セル3および導電部材5の下端部が挿入されセルスタック装置16を構成する。
【0060】
また、酸素含有ガス導入部材(図示せず)は、内部を酸素含有ガスが流れる中空の円柱状であり、セルスタック装置16に酸素含有ガスを供給するため、セルスタック装置16側の面に穴を形成すればよい。なお、円の直径がセルスタック2の直径と同等なことが好ましく、セルスタック装置16の下方に配置することがより好ましい。それにより、効率よく酸素含有ガスを燃料電池セル3に供給することができる。
【0061】
ここで、セルスタック装置16は、平面視して燃料電池セル3が円環状に配置されていることから、酸素含有ガス導入部材をセルスタック装置16の下方に設けた場合に、各燃料電池セル3に効率よく酸素含有ガスを供給することができ、各燃料電池セル3の発電量のばらつきを抑制することができ、発電出力の向上したセルスタック装置16とすることができる。
【0062】
セルスタック装置16は、それぞれの燃料電池セル3の他端部が1箇所(円環状であるマニホールド7の中心)に集中することとなり、さらに失火を抑制することができ、発電出力が低下することを抑制できるセルスタック装置16とすることができる。
【0063】
セルスタック装置16は燃料電池セル3の側面から見たときの円環状であるため、余剰の反応ガスの燃焼による燃焼熱が各燃料電池セル3に効率よく伝熱され、燃料電池セル3の配列方向における温度分布を均一に近づけることができる。そのため、発電出力の向上したセルスタック装置とすることができる。
【0064】
また、図3に示すように、それぞれの燃料電池セル3同士の間隔を均一にすると、セルスタック2を構成する各燃料電池セル3の間隔および各燃料電池セル3が隣り合う燃料電池セル3の数が等しくなることとなる。そのため、セルスタック2のセル配列方向における温度分布をさらに均一に近づけることができ、さらに発電出力が向上したセルスタック装置16とすることができる。
【0065】
なお、セルスタック装置16は、内側に1つまたは複数の開口を有する燃料電池セル3の側面から見たときの外形が円環状をした板部材(セル保持部材)にシール材により燃料電池セル3および導電部材5を固定し、一面が開口した箱状部材を開口が内側になるように燃料電池セル3の側面から見たときの円環状に湾曲させた部材を接合することで作製することができる。さらに、内側が開口した箱状の部材に、燃料電池セル3と導電部材5とを開口内に挿入し、シール材により固定することで作製することもできる。
【0066】
また、燃料電池セル3の側面から見たときのセルスタック2の外形が円環状であるセル
スタック装置16の例を示したが、燃料電池セル3の側面から見たときのセルスタック2の外形が半円状(扇状)であるセルスタックを平面視して(鉛直方向から見て)セルスタックが扇状になるように2つ並べて配置し、2つのセルスタック装置が全体的に見て、平面視して円環状となるように配置してもよい。個の場合においても、セルスタック装置を安定に配置することができるとともに、燃料電池セル3の他端部を近接させることができ、失火を抑制することができる。
【0067】
図5は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセルスタック装置17を示す側面図である。
【0068】
セルスタック装置17は、平面視してセルスタック2の外形が円環状であり、水平方向から見て、燃料電池セル3の他端部の高さが、燃料電池セル3の一端部の高さより高くなるように構成されている。その他の構成はセルスタック装置16と同様である。
【0069】
それにより、燃料電池セル3における反応ガス流路12の出口の位置が、反応ガス流路12の入口の位置よりも高い位置に配置されることとなり、水平方向から見て燃焼部の位置が高くなる。そのため、下方から酸素含有ガスを供給する場合に、酸素含有ガスが燃焼部にて不足することを抑制することができ、各燃料電池セル3の他端部側から排出される燃料ガスが不完全燃焼することを抑制できるため、発電出力が低下することを抑制できる。
【0070】
また、燃料電池セル3の他端部の高さが燃料電池セル3の一端部の高さより高くなることから、燃料電池セル3の他端部(燃焼部)燃焼部をセルスタック2(燃料電池セル3の他端部)から遠ざけることができ、燃料電池セル3の他端部に生じる熱応力を緩和することができることから、セルスタック装置17の発電出力が低下することを抑制することができる。
【0071】
なお、セルスタック装置17では、燃料電池セル3の他端部が、燃料電池セル3の一端部より高い位置に配置する例を示したが、反応ガス流路12を流れた燃料ガスを、燃料電池セル3の他端側から水平方向より上方に向けて流れ出ればよく、例えば、反応ガス流路12の出口(燃料電池セル3の他端側)を水平方向より上方に傾けて設けてもよい。
【0072】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0073】
例えば、上述したセルスタック装置1においては、燃料電池セル3内の反応ガス流路12に燃料ガスを供給し、燃料電池セル3の外側に酸素含有ガスを供給する例を示しているが、反応ガス流路12に酸素含有ガスを供給し、燃料電池セル3の外側に燃料ガスを供給する構成としてもかまわない。その場合においては、内側電極層を空気極層10とし、外側電極層を燃料極層8とする構成の燃料電池セル3とし、酸素含有ガス導入部材の代わりに燃料ガス導入部材とすればよい。
【符号の説明】
【0074】
1、16、17:セルスタック装置
2:セルスタック
3:燃料電池セル
4:集電部材
5:導電部材
7:マニホールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に反応ガスが供給される供給口を、他端側に発電に使用されなかった反応ガスが排出される排気口を有する反応ガス流路を備えた燃料電池セルの複数個を配列してなるセルスタックであって、
隣接する前記燃料電池セルは、前記排気口間の距離が前記供給口間の距離に比し近接するように配置されていることを特徴とするセルスタック。
【請求項2】
前記燃料電池セルが放射状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセルスタック。
【請求項3】
内部に一端から他端に貫通する反応ガスを流すための反応ガス流路を有する燃料電池セルの複数個を集電部材を介して配列し、電気的に直列に接続されたセルスタックと、前記燃料電池セルの一端部を固定するとともに、前記燃料電池セルに反応ガスを供給するためのマニホールドとを備え、発電に使用されなかった余剰の前記反応ガスを前記燃料電池セルの他端部側で燃焼させる構成のセルスタック装置であって、
それぞれの前記燃料電池セルの他端部同士がそれぞれの前記燃料電池セルの一端部同士よりも近接して配置されていることを特徴とするセルスタック装置。
【請求項4】
前記燃料電池セルが放射状に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のセルスタック装置。
【請求項5】
前記燃料電池セルを側面から見たときの前記セルスタックの外形が円環状であることを特徴とする請求項3に記載のセルスタック装置。
【請求項6】
平面視して、前記セルスタックの外形が円環状であるとともに、前記燃料電池セルの他端部の高さが前記一端部の高さよりも高いことを特徴とする請求項3に記載のセルスタック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−233342(P2011−233342A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102122(P2010−102122)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】