説明

セルラーゼの製造方法

【課題】
セルラーゼ誘導効果の高い2糖類含有溶液を製造し、さらに得られた2糖類含有溶液を含む培地で糸状菌を培養することにより、セルラーゼを製造することを課題とする。
【解決手段】
(1)グルコース含有溶液に好熱性菌由来β−グルコシダーゼを添加し、縮合反応により2糖類含有溶液を製造する工程、および(2)2糖類含有溶液を含む培地を使用して糸状菌培養によりセルラーゼを製造する工程を含む、セルラーゼの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2糖類含有溶液を製造する工程を含むセルラーゼの製造方法に関する。詳しくは、グルコース含有溶液に好熱性菌由来β−グルコシダーゼを添加後、縮合反応により2糖類含有溶液を製造する工程を含み、製造した2糖類含有溶液を含む培地を使用して糸状菌にセルラーゼを製造する工程に関する。
【背景技術】
【0002】
トリコデルマなどの糸状菌は、培養液中に数十種類の分解機構の異なるセルラーゼ成分を大量に分泌生産する微生物である。またトリコデルマ属細菌の産生するセルラーゼ成分は、特にリグノセルロースなどの結晶性の高いセルロース加水分解に有効であることが知られている。したがって、近年のセルロースから培養原料である糖を得る工程、すなわち糖化工程において、このトリコデルマ属細菌のセルラーゼが頻繁に使用されている。
【0003】
セルラーゼの生産は、トリコデルマなどの糸状菌を固体及び液体培養することにより行われている。セルラーゼを糸状菌によって効率的に製造するためには、セルラーゼ生産を誘導する適切な誘導物質を含む培地に糸状菌を培養する必要がある。こうしたセルラーゼ誘導物質としては、セルロース(固体)、ラクトース、セロビオース、ソホロース、ゲンチオビオース、ソルボースなどが知られている。
【0004】
セルロースは、安価な炭素源であり、かつセルラーゼ誘導物質でもあるが、固体であるため直接的なセルラーゼ誘導物質としては作用しない。したがって、セルロースによる糸状菌セルラーゼの誘導には高濃度のセルロースを含む培地を使用する必要があった。
【0005】
ソルボースは、2糖類より安価な単糖であり、かつセルラーゼ誘導物質であるが、ソルボース単体では誘導効果が低く、ラクトースやセルロースとともに添加する必要があった(非特許文献1)。したがって、糸状菌は高濃度のセルロースやラクトースを含む培地で培養する必要があった。
【0006】
ラクトースは、比較的安価な水溶性の2糖類であるが、セルラーゼ誘導効果が低いため、高濃度で含む培地を使用する必要があった(非特許文献1)。また、同じ2糖類であるソホロースおよびゲンチオビオースは、セルロースあるいはラクトースより強力なセルラーゼ誘導物質であり、少量でセルラーゼ誘導効果を得ることができることが知られている(非特許文献2)。しかしながら、ソホロースおよびゲンチオビオースは、非常に高価であるため、工業的なセルラーゼ製造には使用できないといった課題があった。
【0007】
ソホロースなどのセルラーゼ誘導効果の高い2糖類を得る方法として、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の生産するβ−グルコシダーゼを使用し、グルコースの縮合反応による製造する方法が開示されており、トリコデルマ属のセルラーゼ製造に使用できることが開示されている(特許文献1)。しかし、アスペルギルス・ニガー由来β−グルコシダーゼは、酵素活性が低く、熱安定性も低いため、縮合反応では、酵素活性を増強するためにβ−グルコシダーゼの使用量が多いといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−211883号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Morikawa Y.ら,Appl.Micro.Biotech.,44,106−111.1995参照
【非特許文献2】Nishizawa T.ら、J. Biochem.,70,375−385.1971参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、従来の方法よりも酵素使用量を削減し、かつ効率よくセルラーゼ誘導効果の高い2糖類含有溶液を製造し、得られた2糖類含有溶液を含む培地で糸状菌を培養することにより、セルラーゼを効率よく製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の[1]〜[10]で構成される。
【0012】
[1]セルラーゼの製造方法であって、(1)グルコース含有溶液に好熱性菌由来β−グルコシダーゼを添加し、縮合反応により2糖類含有溶液を製造する工程、および(2)2糖類含有溶液を含む培地を使用して糸状菌培養によりセルラーゼを製造する工程を含む、セルラーゼの製造方法。
【0013】
[2]好熱性菌由来β−グルコシダーゼが好熱性菌由来組換えβ−グルコシダーゼであることを特徴とする、[1]記載のセルラーゼの製造方法。
【0014】
[3]好熱性菌由来β−グルコシダーゼがパイロコッカス属(Pyrococcus)またはサーモプラズマ属(Thermoplasma)由来であることを特徴とする、[1]または[2]記載のセルラーゼの製造方法。
【0015】
[4]好熱性菌由来β−グルコシダーゼが配列番号2または4に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、[1]から[3]のいずれかに記載のセルラーゼの製造方法。
【0016】
[5]前記(1)工程が、グルコース含有溶液に好熱性菌由来β−グルコシダーゼを0.1〜20mg/mlの濃度範囲で添加し、40〜120℃で保温することによる縮合反応であることを特徴とする、[1]から[4]のいずれかに記載のセルラーゼの製造方法。
【0017】
[6]さらに(3)前記(1)工程で得られた2糖類含有溶液から好熱性菌由来β−グルコシダーゼを除去する工程を含む、[1]から[5]のいずれかに記載のセルラーゼの製造方法。
【0018】
[7]前記(3)工程が2糖類含有溶液から限外濾過膜により好熱性菌由来β−グルコシダーゼを回収する工程である、[6]に記載のセルラーゼの製造方法。
【0019】
[8]回収された好熱性菌由来β−グルコシダーゼを、前記(1)工程に再利用することを特徴とする、[6]または[7]に記載のセルラーゼの製造方法。
【0020】
[9]糸状菌がトリコデルマ・リーセイであることを特徴とする、[1]から[8]のいずれかに記載のセルラーゼの製造方法。
【0021】
[10]前記(2)工程が糸状菌を連続培養する工程である、[1]から[9]いずれかに記載のセルラーゼの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来技術に比べて少ない酵素量で高いセルラーゼ誘導効果を有する2糖類含有溶液を効率的に製造することが可能となる。また製造した2糖類含有溶液を含む培地に糸状菌を培養することで高いセルラーゼ誘導効果を得ることが可能である。以上の効果により、糸状菌を使用したセルラーゼ製造コストを低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、好熱性菌由来β−グルコシダーゼ遺伝子を挿入する位置と、挿入するpET30aベクターのマップである。
【図2】図2は、本発明で用いられる膜分離型の連続培養装置の一つの実施の形態を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
セルロースとは、グルコースがβ-1、4結合した糖ポリマーを含むものを指す。すなわち本発明におけるセルロースとは、セルロース純度の高いアビセル、αセルロース、パルプなどから、セルロース含有バイオマス、すなわち、バガス、スイッチグラス、コーンストーバー、稲わら、麦わら、などの草本系バイオマス、また樹木などの木質系バイオマスなどを含む。特に後者のセルロース含有バイオマスにおいては、セルロースに加え、ヘミセルロース、リグニンなども含んでなる。
【0025】
セルラーゼとは、前記セルロースあるいはセルロース含有バイオマスの分解に触媒する酵素群の総称である。すなわち、本発明のセルラーゼとは、セロビオハイドラーゼ、エンドグルカナーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、ガラクターゼ、β−グルコシダーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼなどの酵素、あるいはこれら酵素の混合物を指す。
【0026】
そして本発明は、後述する糸状菌が産生するセルラーゼを製造することを目的としている。なお、糸状菌由来のセルラーゼを製造する場合、糸状菌培養液に産生されるセルラーゼを回収することで達成されるが、一般的に糸状菌培養液にはセルラーゼと併せてセルラーゼとは異なる複数種の酵素も培養液中に産生されるため、本発明の製造対象物はセルラーゼを主成分とする酵素混合物であってもよい。セルラーゼを主成分とする酵素混合物に含まれる酵素種としては、セロビオハイドラーゼ、エンドグルカナーゼ、β−グルカナーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼを含んでなる。
【0027】
以下、本発明の詳細について工程順に説明する。
【0028】
本発明は、グルコース含有溶液に好熱性菌由来β−グルコシダーゼを添加し、縮合反応により2糖類含有溶液を製造する工程を含むことを特徴としている。ここでいうグルコース含有溶液とは、グルコースを主成分とする溶液のことであり、グルコース以外の単糖、2糖類、オリゴ糖類などを含んでいてもよい。したがって、本発明で使用するグルコース含有溶液は、純度の高いグルコース試薬を使用してもよいし、糖蜜、廃糖蜜、セルロース糖化液などグルコース以外の成分を含んでなる糖液を原料として使用してもよい。
【0029】
本発明で使用するグルコース含有溶液に含まれるグルコース濃度は、100〜900g/lの濃度で含まれていることが好ましく、より好ましくは、400〜800g/lである。本発明のグルコース含有溶液は、グルコースを50〜85℃に加温しながら水溶液に溶解することにより調整することができる。
【0030】
本発明で使用するグルコース含有溶液のpHは、特に限定されないが、pH3.0〜8.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは、pH4.5〜5.5の範囲である。こうしたpH範囲にあるグルコース含有溶液調製には、酸またはアルカリを使用することができるが、緩衝液を使用することが好ましい。使用する緩衝液は、前記pH範囲に調製可能な溶液であれば限定されないが、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液などを例示できる。
【0031】
本発明では、前記グルコース含有溶液に含まれるグルコースを好熱性菌由来β−グルコシダーゼにより縮合して、2糖類含有溶液を製造することを特徴としている。
【0032】
β−グルコシダーゼによる縮合反応とは、β−グルコシダーゼの触媒作用により、グルコースの縮合反応により種々の2糖類を合成する反応を指す。すなわち、本発明の縮合反応では、少なくとも、グルコースから、2糖類であるセロビオース、ゲンチオビオース、ラミナリビオース、ソホロースを合成する反応を指す。βーグルコシダーゼの縮合活性は、800g/lの試薬グルコースのみを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に、反応溶液と等量の適当に希釈した酵素液を加え50℃、20時間反応させたときに生成する2糖類総量から下記(式1)にてβ−グルコシダーゼ縮合活性を算出することでその活性を定義することができる。
【0033】
(式1)(20時間に1mg/mlの2糖類を生成する酵素量)=0.00015/1mg・ml−1の2糖類を生成するのに必要な酵素濃度(U/ml)。
【0034】
また好熱性菌とは、50℃以上で生育可能な微生物群の総称であり、本発明においては80℃以上で生育する微生物であることが好ましい。該好熱性菌としては、カルディビルグラ属(Caldivirgra)、サーモスファエラ属(Thermosphaera)、スルホロバス属(Sulofolobus)、サーモプラズマ属(Thermoplasma)、バシラス属(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)属、サーマス(Thermus)属、ピクロフィラス属(Picrophilus)、フェルビドバクテリウム属(Fervidobacterium)、パイロコッカス属(Pyrococcus)、などを例示することができる。
【0035】
カルディビルグラ属の微生物としては、カルディビルグラ・マキリンジェンシス(Caldivirga maquilingensis)が例示され、高温酸性温泉、火山の硫気噴気口などから単離することができる。
【0036】
サーモスファエラ属に属する微生物としては、90℃以上の極度の高温環境に分布する好熱菌の1種であり、海底火山、深海底熱水孔周辺から単離される微生物であり、サーモスファエラ・アグレガンス(Thermosphaera aggregans)が例示され、90℃以上の極度の高温環境(海底火山、深海底水孔周辺など)から単離される。
【0037】
スルホロバス属に属する微生物としては、好熱好酸菌の1種であり、温泉、火山、噴気孔、硫黄孔から単離されている微生物であり、スルフォロバス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)、スルフォロバス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus) 、スルフォロバス・トウコウダイ(Sulfolobus tokodaii )、スルフォロバス・メタリカス(Sulfolobus metallicus)、スルフォロバス・シバタ(Sulfolobus shibatae )が例示され、温泉、火山、噴気孔、硫黄孔から単離される。
【0038】
サーモプラズマ属に属する微生物としては、サーモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、サーモプラズマ・ボルカニウム(Thermoplasma volcanium)が例示され、温泉、ボタ山、その他硫黄環境から単離される。
【0039】
フェルビドバクテリウム属に属する微生物としては、90℃以上の極度の高温環境に分布する好熱菌の1種であり、海底火山、深海底熱水孔周辺から単離される微生物であり、フェルビドバクテリウム・ノドサム(Fervidobacterium nodosum)が例示され、90℃以上の極度の高温環境(海底火山、深海底水孔周辺など)から単離される。
【0040】
バシラス属に属する微生物としては、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス リケニフォルミス(Bacillus Licheniformis)が例示され、温泉、深海底水孔周辺から単離される。
【0041】
クロストリジウム属に属する微生物としては、クロストリジウム・スポロジェネス (Clostridium sporogenes)、クロストリジウム・サーモセラム (Clostridium thermocellum)が例示され、温泉から単離される。
【0042】
サーマス属に属する微生物としては、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)が例示され、温泉、噴気孔から単離される。
【0043】
ピクロフィラス属に属する微生物としては、ピクロフィラス・オシマエ(Picrophilus oshimae)、ピクロフィラス・トリダス(Picrophilus torridus)が例示され、噴気孔から単離される。
【0044】
パイロコッカス属の微生物としては、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、パイロコッカス・グリコボランス(Pyrococcus glycovorans)、パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、パイロコッカス・アビッシ(Pyrococcus abyssi)、パイロコッカス・ホエイセイ(Pyrococcus woessei)が例示され、深海の熱水噴出孔、油田などから単離される。
【0045】
本発明では縮合反応に使用するβ−グルコシダーゼの使用量を減らして、高いセルラーゼ誘導効果を有する2糖類含有溶液を製造するため、上記に例示されるような好熱性菌由来のβ−グルコシダーゼが用いられる。また、本発明においては好熱性菌由来のβ−グルコシダーゼであれば特に制限はないが、パイロコッカス属またはサーモプラズマ属由来のβ−グルコシダーゼが好ましく用いられる。また、本発明において好ましく用いられるパイロコッカス属またはサーモプラズマ属由来のβ−グルコシダーゼは特に限定されないが、好ましい具体例として、パイロコッカス・フリオサス由来のβ−グルコシダーゼ(配列番号2)またはサーモプラズマ・ボルカニウム由来のβ−グルコシダーゼ(配列番号4)が挙げられる。なお本発明においては、好熱性菌由来のβ−グルコシダーゼ活性を有する範囲であれば、該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたものであっても好熱性菌由来のβ−グルコシダーゼとして使用することができ、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有するものが使用される。なお、アミノ酸配列同一性についてはBLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて判定することができる。
【0046】
本発明で使用される好熱性菌由来β−グルコシダーゼは特に制限されず、前記好熱性菌を培養し、好熱性菌培養液あるいは好熱性菌体内に産生するβ−グルコシダーゼを単離、回収、精製して得られたものであっても、異種宿主を使用して生産した組換えβ−グルコシダーゼであってもよいが、組換えβ−グルコシダーゼが好ましく使用される。また、本発明で使用する好熱性菌由来β−グルコシダーゼは、好熱性菌由来のβ−グルコシダーゼ縮合活性を有する範囲であれば、β−グルコシダーゼを主成分とするタンパク質混合物であってもよい。
【0047】
本発明で好ましく使用される好熱性菌由来の組換えβ−グルコシダーゼは、好熱性菌由来のβ−グルコシダーゼ遺伝子を、適切な発現プロモーターの下流に連結し、また適切な発現ベクターに組み込み、異種宿主に対して遺伝子組換えを行い、得られた異種宿主を培養することで組換えβ−グルコシダーゼを得ることができる。好熱性菌由来のβ−グルコシダーゼを生産するための異種宿主としては、特に限定されるものではないが、大腸菌(Escherichia coli)、酵母(saccharomyces)、トリコデルマ属(Trichoderma)、フミコラ属(Fumicola)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アクレモニウム属(Acremonium)、バチラス属(Bacillus)、ピキア属(Pichia)を例示することができ、中でも大腸菌、トリコデルマ属、アスペルギルス属、バシラス属が好ましく用いられる。
【0048】
本発明の2糖類含有溶液製造工程における好熱性菌由来β−グルコシダーゼ濃度は、0.1〜20mg/mlの範囲で添加することが好ましい。ここで使用する好熱性菌由来β−グルコシダーゼは、一般的に酵素が変性あるいは失活していない状態のもののことを指す。β−グルコシダーゼの濃度が、上記濃度範囲未満であると、縮合反応の効率が低くなる場合があり、また、上記濃度範囲を超えても縮合反応の効率は向上しない。
【0049】
縮合反応の温度条件は、40〜120℃の温度範囲で行うことが好ましい。40℃未満であると、縮合反応効率が低下する場合があり、一方、120℃を超える温度であると、β−グルコシダーゼの活性が低下するため反応効率が低下する場合がある。
【0050】
縮合反応で使用される好熱性菌由来β−グルコシダーゼ縮合活性は、前記(式1)の活性測定方法で測定した場合、β−グルコシダーゼ濃度1mg/mlで、0.5〜12.5U/mlのβ−グルコシダーゼ縮合活性を有することが好ましい。すなわち、好熱性菌由来β−グルコシダーゼ濃度が0.1〜20mg/mlの濃度範囲でのβ−グルコシダーゼ縮合活性は、0.05〜250U/mlであることが好ましい。好熱性菌由来β−グルコシダーゼの縮合活性が左記の数値範囲より外れてしまうと、十分な縮合反応が見られない場合がある。
【0051】
縮合反応の反応時間は、使用するβ−グルコシダーゼ濃度、またはグルコース含有溶液のグルコース濃度等によって最適な反応時間は変化するため特に限定されるものではないが、操作性の観点から、30分から48時間の範囲で設定されることが好ましく、さらに好ましくは、2時間から24時間の範囲である。
【0052】
縮合反応を行う反応装置は特に限定されないが、グルコース含有溶液を一定温度に保温でき、またグルコース含有溶液を攪拌する装置を備えたものであることが好ましい。
【0053】
上記工程により得られる2糖類含有溶液とは、少なくともその成分として、セルラーゼ生産を誘導する2糖類を含んでなる水溶液であり、2糖類含有溶液に含まれる2糖類としては、ソホロース、ゲンチオビオース、ラミナリビオース、セロビオースなどを例示することができる。こうした2糖類の内、ソホロースまたはゲンチオビオースを多く含んでいることが好ましい。また、こうした2糖類の組成は特に限定されないが、好ましくは2種以上の2糖類を含んでなる水溶液であり、さらに好ましくは、ソホロース、ゲンチオビオースの2種を含んでいることが好ましい。
【0054】
前記2糖類含有溶液はβ−グルコシダーゼを含んでいる。次のセルラーゼ製造工程に使用する際にはβ−グルコシダーゼを含んだままであってもよいが、好熱性菌由来β−グルコシダーゼが除去されていることが好ましい。なお、本発明においては好熱性菌由来β−グルコシダーゼを失活させる場合もβ−グルコシダーゼが除去されたと見なす。2糖類含有溶液から好熱性菌由来β−グルコシダーゼを除去する方法については特に限定はないが、本発明においては限外濾過膜を使用する方法が好ましく用いられる。
【0055】
2糖類含有溶液から限外濾過膜を使用してβ−グルコシダーゼを除去するとは、2糖類含有溶液を、限外濾過膜に通じて濾過し、好熱性菌由来β−グルコシダーゼを限外濾過膜で阻止分離し、膜側画分として好熱性菌由来β−グルコシダーゼを除去し、限外濾過膜の透過液として、好熱性菌由来β−グルコシダーゼが除去された2糖類含有溶液を得ることを意味する。
【0056】
限外濾過膜とは、本発明で使用する好熱性菌由来β−グルコシダーゼを阻止できる分画分子量を有していれば特に制限はないが、好熱性菌由来β−グルコシダーゼの分子量の観点から分画分子量が5000〜30000の範囲にあるものが好ましく使用できる。また、本発明における限外濾過膜の構造としては、中空糸膜、平膜、スパイラル膜、チューブラー膜を使用することができるが、これらの構造に限定されない。また、本発明における限外濾過膜の膜素材は、酢酸セルロース系ポリマー、芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができるが、耐久性・対汚性の観点で、ポリエーテルスルホンであることが好ましい。
【0057】
限外濾過膜の濾過方法としては、遠心濾過法、加圧濾過法、減圧濾過法を使用することができ、2糖類含有溶液から好熱性菌由来β−グルコシダーゼを阻止分離できれば特に制限はない。
【0058】
2糖類含有溶液から好熱性菌由来β−グルコシダーゼを除去する際に限外濾過膜を使用する利点として、限外濾過膜で除去した好熱性菌由来β−グルコシダーゼをグルコース含有溶液に添加して縮合反応に再利用できることが挙げられる。このような回収再利用の回数は特に限定されず、経済的に好ましい範囲でその回数を設定することができる。また再利用時において、回収された好熱性菌由来β−グルコシダーゼの活性が充分でない場合、その不足分の好熱性菌由来β−グルコシダーゼを新たに添加し、縮合反応を行ってもよい。
【0059】
次に、2糖類含有溶液を用いて糸状菌のセルラーゼを製造する工程について説明する。本発明で使用する糸状菌とは、鞭毛菌類、接合菌類、子嚢菌類、担子菌類、不完全菌のすべてを含み、特に、菌体が糸状を呈し、分生子と呼ばれる無性胞子を形成して増殖する糸状菌を指す。具体的には、モナスカス属(Genus Monascus)、ペニシリウム属(Genus Penicillium)、セファロスポリウム属(Genus Cephalosporium)、アクレモニウム属(Genus Acremonium)、ムコール属(Genus Mucor)、リゾプス属(Genus Rhizopus)、フザリウム属(Genus Fusarium)、エメリセラ属(Genus Emericella) トリコデルマ属(Genus Trichoderma)、アスペルギルス属(Genus Aspergillus)、クラビセプス属(Genus Claviceps)、フミコラ属(Genus Humicola)、カワラタケ属(Genus Trametes)、オオウズラタケ(Genus Fomitopusis)、ファネロカエテ属(Genus Phanerochaete)に属する微生物を例示することができる。ペリコニア属(Genus Periconia)、ニグロスポラ属(Genus Nigrospora)に属する糸状菌が好ましい例として挙げられる。
【0060】
また本発明で用いられる糸状菌のより好ましい例として、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・アクレタス(Aspergillus aculeatus)、アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium sp.)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、カワラタケ(Trametes versicolor)、ファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)、ファネロカエテ・クリソスポディウム(Phanerochaete chrysospodium)、さらに好ましい例としてトリコデルマ・リーセイが挙げられる。
【0061】
さらにトリコデルマ・リーセイにおいては、トリコデルマ・リーセイQM9414(Trichoderma reesei QM9414)、トリコデルマ・リーセイQM9123(Trichoderma reeseiQM9123)、トリコデルマ・リーセイRut C−30(Trichoderma reeseiRut C−30)、トリコデルマ・リーセイCL−847(Trichoderma reeseiCL−847)、トリコデルマ・リーセイMCG77(Trichoderma reesei MCG77)、トリコデルマ・リーセイMCG80(Trichoderma reeseiMCG80)、トリコデルマ・リーセイPC−3−7(Trichoderma reeseiPC3−7)、トリコデルマ・ビリデQM9123(Trichoderma viride9123)が例示される。
【0062】
なお、前記糸状菌に対し、突然変異処理、または遺伝子組換えなどの操作により生物機能を改変または向上させた糸状菌を使用することもできる。
【0063】
本発明では、前記2糖類含有溶液を糸状菌の培地に添加することで、セルラーゼの製造を行う。糸状菌の培養に使用する培地成分は、セルラーゼ誘導物質として前記2糖類含有溶液に含まれる2糖類の他に、糸状菌の生育およびセルラーゼの産生に必要な炭素源、窒素源、無機塩、金属塩、ビタミン、などの成分を含んでいれば限定されるものではない。また必要であれば消泡剤、界面活性剤などを含んでいてもよい。また、セルラーゼ誘導物質の供給源としては、前記2糖類含有溶液だけでなく、別途セルラーゼ誘導物質を用意し、これを併用してもよい。また、特に炭素源としてグルコースを使用する場合、前記2糖類含有溶液中に含まれるグルコースであってもよいし、あるいは別途グルコースを用意し、これを培地に添加してもよいが、糸状菌培地に含まれるグルコース濃度が高すぎると糸状菌によるセルラーゼ生産性の低下を招く可能性があるため、糸状菌培地に含まれるグルコース濃度を10g/L以下に維持することが好ましい。なお糸状菌の中でも、本発明において好ましく用いられる例のひとつであるトリコデルマ・リーセイの培養に使用する培地としては、Enz.Microb.Technol.9、739−743、1987年(Turkerら)、Canadian J.Chem.Engin.64、588−597、1986年(Mcleanら)、Biotechnol.Bioeng.28、41−50、1986年(Webbら)に開示してある培地を使用することができる。
【0064】
2糖類含有溶液を糸状菌培地に対してあらかじめ添加しておく、あるいは糸状菌培養期間中に糸状菌培養液に添加することで糸状菌のセルラーゼ生産を誘導・促進することができる。糸状菌培地または培養液に対する2糖類含有溶液の添加量は、所望のセルラーゼ誘導効果が得られれば特に限定されないが、糸状菌培地または培養液に含まれる2糖類含量が0.001〜1g/Lの範囲となるように2糖類含有溶液を添加することで、セルラーゼの生産性を高めることができるため好ましい。なお2糖類含有溶液は、糸状菌培地または培養液に添加する前に滅菌操作を施しておくことが好ましい。滅菌操作としては、特に限定されないが、オートクレーブ滅菌、フィルター滅菌などを使用することができる。
【0065】
糸状菌はこうした培地に植菌し、所定時間保温することで、培養することができる。糸状菌は、胞子または分生子の状態で培地に植菌してもよく、また菌糸または菌体の状態で植菌してもよい。また保温する温度は、使用する糸状菌の生育に適した温度を設定すれば良く、特にトリコデルマ属を使用する場合は、25℃〜30℃の範囲で設定すればよい。また培養する日数は、目的とするセルラーゼ生産が十分に行える日数であれば、特に限定されない。
【0066】
また、糸状菌の培養方法として、バッチ培養、フェドバッチ培養、連続培養などがあり特に限定されるものではないが、生産性の観点から連続培養であることが好ましい。糸状菌の連続培養方法としては、特開2009−39074号公報に記載の連続培養方法が好ましく例示される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(参考例1) 2糖類含有溶液中の2糖類総量の測定
以下参考例1として2糖類含有溶液中の2糖類総量の測定方法を記載する。本発明では、特に記載がないものに関しては、以下の測定条件により高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)により分析した。
【0069】
カラム:TSK−gel Sugar AXG 4.6mmI.D.×15cm(東ソー株式会社製)、移動相:0.5mol/lLほう酸カリウム緩衝液 pH8.7(流速0.4ml/min)、反応液:1w/v%アルギニン、3w/vほう酸(流速0.5ml/min)、検出方法:蛍光(Ex.320mm、Em.430mm)、温度:150℃。
【0070】
(参考例2) 2糖類含有溶液中のグルコース濃度の測定
以下参考例2として2糖類含有溶液中のグルコース濃度の測定方法を記載する。本発明では、特に記載がないものに関しては、以下の測定条件により高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)により分析した。
【0071】
カラム:TSK−gel Sugar AXG 4.6mmI.D.×15cm(東ソー株式会社製)、移動相:0.5mol/lほう酸カリウム緩衝液 pH7.7(流速0.5ml/min)、反応液:1w/v%アルギニン、3w/vほう酸(流速0.5ml/min)、検出方法:蛍光(Ex.320mm、Em.430mm)、温度:150℃。
【0072】
(参考例3) β−グルコシダーゼ縮合活性の測定
1mlの50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)、800g/lの試薬グルコースのみから成る反応液に1mlの適当に希釈した酵素液を加え50℃、20時間反応させた後、沸水中で酵素反応を停止し、氷水中で急冷した。次に参考例1記載の方法で2糖類を定性・定量した。さらに、得られた2糖類生成量をもとに、20時間に1mg/mlの2糖類を生成する量をβ−グルコシダーゼ縮合活性1単位(1U、ユニット)と定義し、次の(式1)に従ってβ−グルコシダーゼの縮合活性を測定した。
【0073】
(式1)(20時間に1mg/mlの2糖類を生成する酵素量)=0.00015/1mg・ml−1の2糖類を生成するのに必要な酵素濃度(U/ml)。
【0074】
(参考例4) セルラーゼ活性の測定
本発明でセルラーゼの生産性を評価する指標となる、セルラーゼ活性(U、ユニット)は次の方法で測定した。1mlの50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)、50mgのワットマンNo.1ろ紙から成る反応液に0.5mlの適当に希釈した糸状菌の培養液を加え50℃、60分間反応させた後、3mlのジニトロサリチル酸試薬(0.5%ジニトロサリチル酸、30%ロッシェル塩、1.6%水酸化ナトリウム水溶液)を添加、沸水中で5分間還元糖の発色を行った。氷水中で急冷し、20mlの脱イオン水を加え540nmにおける吸光度を測定し還元糖の生成量を算出した。尚、ブランクは酵素液を加えずに処理した反応液にジニトロサリチル酸試薬を加えた後、酵素液を添加し、同様に発色させたものを用意した。セルラーゼ活性1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmolのグルコース相当の還元糖を生成する量により定義し、次の(式2)によって計算した。
【0075】
(式2)セルラーゼ活性(1U)=0.37/2.0mgのグルコースを生成するのに必要な酵素濃度(U/ml)。
【0076】
(参考例5) トリコデルマ・リーセイの培養
以下参考例5としてトリコデルマ・リーセイの培養方法を記載する。本発明では、特に記載がないものに関しては、以下の培養方法により培養を実施した。
【0077】
供試菌として、トリコデルマ・リーセイRut C−30(Trichoderma reesei Rut C−30)株(ATCC56765)を使用した。まず供試菌をポテトデキストロース寒天斜面培地上で25℃、7日間培養した。寒天培地表面に生育した胞子を0.85%生理食塩水3mlに懸濁し、miracloth(コスモ・バイオ社製)でろ過することにより胞子を回収した。回収した胞子を表1の培地100mlが入った三角フラスコに10μl植菌し、28℃で所定期間トリコデルマ・リーセイRut C−30を培養した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
(参考例6) 2糖類生成効率の算出
酵素添加量当たりの2糖類の生成効率を下記(式3)にて算出した。
(式3)2糖類生成効率=縮合反応によって生成する2糖類総量(g/l)/縮合反応に添加したβ−グルコシダーゼ濃度(g/l)。
【0081】
(比較例1)アスペルギルス・ニガー由来β−グルコシダーゼを使用した縮合反応による2糖類含有溶液の製造
以下比較例として、常温菌であるアスペルギルス・ニガー由来のβ−グルコシダーゼ(AnBGL)を用いて2糖類含有溶液を製造した。反応条件は、特開平5−211883号公報の実施例記載方法に準じて、以下の条件で実施した。
【0082】
グルコース含有溶液は、試薬グルコースを80%となるように50mM酢酸緩衝液に加温しながら溶解させることで調製した。AnBGLはノボザイム188(シグマ社製)を使用し、脱塩カラムにより精製した。80%グルコース含有溶液に、AnBGLを最終濃度24g/lとなるように添加し、50℃で20時間反応を行って2糖類含有溶液を製造した。2糖類総量と2糖類生成効率を表3に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
(比較例2)2糖類含有溶液(比較例1)を使用したセルラーゼの製造
比較例1で得られた2糖類含有溶液を使用して、セルラーゼの生産が可能か検討した。比較例1で得られた2糖類含有溶液0.2mlを含む表1の培地100mlにトリコデルマ・リーセイを参考例5記載の方法で植菌した。培養3日目、5日目、7日目における培養液中のセルラーゼ活性を参考例4の方法で測定し、その結果を表4に示す。
【0085】
【表4】

【0086】
(実施例1)好熱性菌由来β−グルコシダーゼ(PfBGL)の調製
好熱性菌由来β−グルコシダーゼとして、パイロコッカス属に属するパイロコッカス・フリオサス由来のβ−グルコシダーゼ(PfBGL)を選定した。
【0087】
GenBankのアクセッションナンバーAE010167で登録されているパイロコッカス・フリオサス由来のβ−グルコシダーゼ遺伝子として、配列番号1記載の配列の5’末端にNcoI、3’末端にBamHIの制限酵素認識配列を付加したDNA配列を全合成した。全合成した遺伝子は、NcoI、BamHIで制限酵素処理し、pET30aのNcoIおよびBamHI部位にLigation High(東洋紡)を使用して連結した(図1)。連結したベクターは、大腸菌JM109株(タカラバイオ)に形質転換した。スクリーニングは、カナマイシンを抗生物質として含むLB寒天培地を用いて選抜し、形質転換されたJM109株より作成したベクターpET−PfBGLをミニプレップキット(キアゲン)により単離し、塩基配列解析により連結された遺伝子配列を確認した。pET−PfBGLは、発現用大腸菌BL21(DE3)pLysS株に形質転換し、BL21−PfBGL株を作製した。BL21−PfBGL株をカナマイシン含有LB培地10mlに植菌し、37℃で一晩振とう培養(前培養)を行った。本培養として、カナマイシン含有LB培地1Lに、前培養で得られた菌体を植菌し、波長600nmでの吸光度OD600が0.6となるまで振とう培養を行った。その後、最終濃度が0.4mMになるようにイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)を加え、さらに25℃で一晩培養した。培養後、菌体を遠心分離により回収し、トリスHCl緩衝液(50mM、pH8.0)に再懸濁した。この溶液を氷冷しながら、超音波破砕を行い、その上清を無細胞抽出液として遠心分離により回収した。得られた無細胞抽出液は、金属キレートレジンを用い精製を行った。精製した無細胞抽出液を分画分子量10000の再生セルロース製透析膜(スペクトラム・ラボラトリーズ製)を使用して、酢酸緩衝液(50mM、pH5.0)に透析した。透析の結果得られたタンパク質溶液は、95〜98%の精製純度を示しており、SDS−PAGEでシングルバンドが確認できた。このタンパク質溶液を、パイロコッカス・フリオサス由来β−グルコシダーゼ(PfBGL)として使用した。
【0088】
前記操作で得られたPfBGLのβ−グルコシダーゼ縮合活性は、0.1mg/mlで1Uであった。
【0089】
(実施例2)好熱性菌由来β−グルコシダーゼ(PfBGL)を使用した2糖類含有溶液の製造
実施例1で得られたパイロコッカス・フリオサス由来β−グルコシダーゼを使用して2糖類含有溶液を製造した。
【0090】
グルコース含有溶液(10ml)は、試薬グルコースを80%となるように50mM酢酸緩衝液に加温しながら溶解させることで調製した。得られたグルコース含有溶液に、PfBGLを0.01g/l、0.1g/l、1g/l、10g/l、20g/l、50g/lとなるように添加した。PfBGLを添加したグルコース含有溶液は、20℃、40℃、60℃、80℃、100℃、120℃の各温度で20時間反応を行った。縮合反応後氷上で急冷し、反応生成物を限外濾過膜(日本ミリポア社ポリエーテルスルホン製、10kDa)を使用して遠心分離し、PfBGL0.2mlを膜画分として除去し、9.7mlの透過液を得た。
【0091】
次に限外濾過膜の透過液として得られた2糖類含有溶液中の2糖類総量を参考例1記載の方法で測定した結果は表5の通りであり、縮合反応温度の範囲としては40℃以上が好ましいことが示された。一方、120℃であっても十分量の2糖類を含む2糖類含有溶液を製造できることが確認できた。また、縮合反応に添加するPfBGL濃度は、0.1g/l以上が好ましく、縮合反応に添加するPfBGL濃度が20g/lを超えると2糖類含有溶液中の2糖類が減少することが確認できた。すなわち、縮合反応に添加するPfBGL濃度は、0.1〜20g/lの範囲で添加することで、効率的な2糖類含有溶液の製造ができることが示された。
【0092】
【表5】

【0093】
また、反応温度40〜120℃、PfBGL添加量0.1〜20g/lの反応条件におけるPfBGLの2糖類生成効率は表6の通りであり、好熱性菌由来β−グルコシダーゼとして、PfBGLを縮合反応に使用した場合では、比較例1(表3)と比べて、極めて高い2糖類生成効率を得られることが判明した。
【0094】
【表6】

【0095】
(実施例3)2糖類含有溶液(実施例2)を使用したセルラーゼの製造1
実施例2において、反応温度80℃、PfBGL濃度1g/lの条件で得られた2糖類含有溶液を使用したセルラーゼの製造を実施した。
【0096】
実施例2で得られた2糖類含有溶液0.2mlを含む表1の培地100mlを使用して、トリコデルマ・リーセイを参考例5記載の方法で植菌した。培養3日目、5日目、7日目における培養液中のセルラーゼ活性を参考例4の方法で測定した結果は表7の通りであり、実施例2で得られた2糖類含有溶液を使用することで、大量のセルラーゼを製造することができることが示された。また、比較例1のアスペルギルス・ニガー由来β−グルコシダーゼよりも好熱性菌由来β−グルコシダーゼを使用することで、少ない酵素量で高いセルラーゼ生産性を得ることが可能であることが示された。
【0097】
【表7】

【0098】
(実施例4)好熱性菌由来β−グルコシダーゼ(PfBGL)を使用した2糖類含有溶液の製造2
縮合反応の条件は、実施例2と同様の方法で実施したが、限外濾過膜によるPfBGLの除去は行わず、以下の手順で実施した。
【0099】
グルコース含有溶液は、試薬グルコースを80%となるように50mM酢酸緩衝液に加温しながら溶解させることで調製した。得られたグルコース含有溶液に、PfBGLを0.01g/l、0.1g/l、1g/l、10g/l、20g/l、50g/lとなるように添加した。PfBGLを添加したグルコース含有溶液は、20℃、40℃、60℃、80℃、100℃、120℃の各温度で20時間反応を行った。縮合反応後氷上で急冷し、2糖類含有溶液として使用した。
【0100】
得られた2糖類含有溶液中の2糖類総量を参考例1記載の方法で測定した結果を表8に示す。限外濾過膜によりPfBGL除去しない場合では、2糖類総量に大きな差があることが示され、PfBGLを除去せずにしておくと、2糖類含有溶液中の2糖類総量が大きく減少することが確認された。すなわち、縮合反応終了後に、使用した好熱性菌由来β−グルコシダーゼを除去することが好ましいことが示された。
【0101】
【表8】

【0102】
また実施例2と同様に、2糖類生成効率を算出した結果は表9に示す通りであり、実施例2の結果(表6)と比べると2糖類生成効率が低いものの、比較例1の2糖類生成効率よりは高く、ここでも好熱性菌由来β−グルコシダーゼを使用した方が効率的に2糖類含有溶液を製造できることが示された。
【0103】
【表9】

【0104】
(実施例5) 好熱性菌由来β−グルコシダーゼ(PfBGL)の縮合反応への再利用
前記実施例2〜4の結果により、2糖類含有溶液よりPfBGLを限外濾過膜で除去する方がより多くの2糖類を製造することができ、またセルラーゼ誘導効果も高いことが確認できた。そこで、この限外濾過膜で除去、回収されたPfBGLを再度、縮合反応に再利用できないか以下手順で検討を行った。
【0105】
80%グルコース含有溶液(10ml)に最終濃度が1g/lになるようにPfBGLを添加し、80℃で20時間反応を行った。縮合反応後氷上で急冷し、反応生成物10mlを限外濾過膜で遠心分離し、透過液9.7mlを2糖類含有溶液1として、膜画分0.2mlをPfBGLとして回収した。回収したPfBGL0.2mlを、80%グルコース含有溶液(10ml)を用いた縮合反応に再度使用し、透過液9.7mlを2糖類含有溶液2として、膜画分0.2mlをPfBGLとして回収した。再回収したPfBGL0.2mlは80%グルコース含有溶液(10ml)に添加後縮合反応に使用し、透過液9.7mlを2糖類含有溶液3として、PfBGL0.2mlを膜画分として回収した。2糖類含有溶液1〜3を参考例1の方法で測定した結果は表10の通りであり、限外濾過膜で回収(除去)したPfBGLを、縮合反応に再利用できることが確認できた。
【0106】
【表10】

【0107】
さらに、2糖類含有溶液1〜3を使用してセルラーゼ製造を検討した。前記2糖類含有溶液1〜3を0.2ml含む表1の培地100ml培地に、トリコデルマ・リーセイを参考例5記載の方法で植菌した。培養3日目、5日目、7日目における培養液中のセルラーゼ活性を参考例4の方法で測定した結果は表11の通りであり、PfBGLの再利用によって得られた2糖類含有溶液2または3を使用してもセルラーゼの効率的な製造が可能であることが示された。
【0108】
【表11】

【0109】
(実施例6)好熱性菌由来β−グルコシダーゼの調製2
好熱性菌由来β−グルコシダーゼとして、サーモプラズマ・ボルカニウム由来のβ−グルコシダーゼ(TvBGL)を選定した。
【0110】
GenBankのアクセッションナンバーBA000011で登録されているサーモプラズマ・ボルカニウム由来β−グルコシダーゼ遺伝子として、配列番号3記載の配列の5’末端にNcoI、3’末端にBamHIの制限酵素認識配列を付加したDNA配列を全合成した。全合成した遺伝子は、NcoI、BamHIで制限酵素処理し、pET30aのNcoIおよびBamHI部位にLigation High(東洋紡)を使用して連結した。連結したベクターは、JM109(タカラバイオ)に形質転換した。スクリーニングは、カナマイシンを抗生物質として含むLB寒天培地を用いて選抜し、形質転換されたJM109株より作成したベクターpET−TvBGLをミニプレップキット(キアゲン)により単離し、塩基配列解析により連結された遺伝子配列を確認した。pET−TvBGLは、発現用大腸菌BL21(DE3)pLysS株に形質転換し、BL21−TvBGLP株を作製した。BL21−TvBGL株をカナマイシン含有LB培地10mlに植菌し、37℃で一晩振とう培養(前培養)を行った。本培養として、カナマイシン含有LB培地1lに、前培養で得られた菌体を植菌し、波長600nmでの吸光度OD600が0.6となるまで振とう培養を行った。その後、最終濃度が0.4mMになるようにイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)を加え、さらに25℃で一晩培養した。培養後、菌体を遠心分離により回収し、トリスHCl緩衝液(50mM、pH8.0)に再懸濁した。この溶液を氷冷しながら、超音波破砕を行い、その上清を無細胞抽出液として遠心分離により回収した。得られた無細胞抽出液は、金属キレートレジンを用い精製を行った。精製した無細胞抽出液を分画分子量10000の再生セルロース製透析膜(スペクトラム・ラボラトリーズ製)を使用して、酢酸緩衝液(50mM、pH5.0)に透析した。透析の結果得られたタンパク質溶液は、95〜98%の精製純度を示しており、SDS−PAGEでシングルバンドが確認できた。このタンパク質溶液を、サーモプラズマ属由来β−グルコシダーゼ(TvBGL)として使用した。
【0111】
前記操作で得られたTvBGLのβ−グルコシダーゼ活性は、0.1mg/mlで0.7Uであった。
【0112】
(実施例7)好熱性菌由来β−グルコシダーゼ(TvBGL)を使用した2糖類含有溶液の製造
好熱性菌由来β−グルコシダーゼとして、実施例6で得られたサーモプラズマ・ボルカニウム由来β−グルコシダーゼを使用し、実施例2と同様に2糖類含有溶液を製造した。限外濾過膜により、TvBGL0.2mlを膜画分として除去し、9.7mlの透過液を得た。
【0113】
次に限外濾過膜の透過液として得られた2糖類含有溶液中の2糖類総量を参考例1記載の方法で測定した結果は表12に示す通りであり、縮合反応温度の範囲としては40℃以上が好ましいことが示された。一方、120℃であっても十分量の2糖類を含む2糖類含有溶液を製造できることが示された。また、縮合反応に添加するTvBGL濃度は、0.1g/l以上が好ましく、縮合反応に添加するTvBGL濃度が20g/Lを超えると、2糖類含有溶液中の2糖類が減少することが確認示された。すなわち、縮合反応に添加するTvBGL濃度は、0.1〜20g/lの範囲で添加することで、効率的な2糖類含有溶液の製造ができることが示された。
【0114】
【表12】

【0115】
また、反応温度40〜120℃、TvBGL添加量0.1〜20g/lの反応条件におけるTvBGLの2糖類生成効率は表13の通りであり、好熱性菌由来β−グルコシダーゼとして、TvBGLを縮合反応に使用した場合では、比較例1(表3)と比べて、極めて高い2糖類生成効率を得られることが示された。
【0116】
【表13】

【0117】
(実施例8)2糖類含有溶液(実施例7)を使用したセルラーゼの製造1
実施例7において、反応温度80℃、TvBGL濃度1g/lの条件で得られた2糖類含有溶液を使用したセルラーゼの製造を実施した。
【0118】
実施例7で得られた2糖類含有溶液0.2mlを含む表1の培地100mlにトリコデルマ・リーセイを参考例5記載の方法で植菌した。培養3日目、5日目、7日目における培養液中のセルラーゼ活性を参考例4の方法で測定し、その結果は表14の通りであり、実施例7で得られた2糖類含有溶液を使用することで、大量のセルラーゼを製造することができることが判明した。また、比較例1のアスペルギルス・ニガー由来β−グルコシダーゼよりも好熱性菌由来β−グルコシダーゼを使用することで、少ない酵素量で高いセルラーゼ生産性を得ることが可能であることが示された。
【0119】
【表14】

【0120】
(実施例9)好熱性菌由来β−グルコシダーゼ(TvBGL)を使用した2糖類含有溶液の製造2
縮合反応の条件は、実施例8と同様の方法で実施したが、限外濾過膜によるTvBGLの除去は行わず、実施例4と同様の手順で実施した。得られた2糖類含有溶液中の2糖類総量を参考例1記載の方法で測定した結果は表15の通りであり、実施例4の結果と同様に、縮合反応終了後に好熱性菌由来β−グルコシダーゼを除去することが好ましいことが示された。
【0121】
【表15】

【0122】
次に実施例7と同様に、2糖類生成効率を算出した結果は表16の通りであり、実施例7の結果(表13)と比べると、2糖類生成効率が低いことが確認された。しかしながら、比較例1の2糖類生成効率よりは高く、ここでも好熱性菌由来β−グルコシダーゼを使用した方が、効率的に2糖類含有溶液を製造できることが確認された。
【0123】
【表16】

【0124】
(実施例10) 好熱性菌由来β−グルコシダーゼ(TvBGL)の縮合反応への再利用
実施例5と同様に限外濾過膜で除去、回収されたTvBGLを再度、縮合反応に再利用できないか検討を行った。限外濾過膜で回収されたTvBGL0.2ml全量を再利用に使用し、透過液(2糖類含有溶液1〜3)9.7mlを得た。2糖類含有溶液1〜3を参考例1の方法で測定した結果は表17の通りであり、限外濾過膜で回収(除去)したTvBGLを、縮合反応に再利用できることが確認できた。
【0125】
【表17】

【0126】
さらに、2糖類含有溶液1〜3を使用してセルラーゼ製造を検討した。2糖類含有溶液1〜3を0.2ml含む表1の培地100mlにトリコデルマ・リーセイを参考例5記載の方法で植菌した。培養3日目、5日目、7日目における培養液中のセルラーゼ活性を参考例4の方法で測定した結果は表18の通りであり、TvBGLの再利用によって得られた2糖類含有溶液2または3を使用してもセルラーゼの効率的な製造が可能であることが示された。
【0127】
【表18】

【0128】
(実施例11)連続培養によるセルラーゼの製造
本発明のセルラーゼの製造方法における連続培養での実施例として、特開2009−39074号公報に記載の連続培養装置を使用した実施例を以下に示す。
【0129】
連続培養装置としては、特開2009−39074号公報に記載の装置(図2)を使用した。セルラーゼの分泌生産能力を有する糸状菌として前記実施例と同様のトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)Rut C−30株を用いた。
【0130】
培地には表1に示す培地を用い、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌処理して用いた。分離膜エレメント部材として、ステンレスおよびポリサルホン樹脂の成形品を用いた。分離膜には、特開2009−39074号公報に記載のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする多孔性膜を用いた。該多孔性膜の平均細孔径は0.1μmであり、純水透過係数は50×10-9/m/s/paである。この実施例11における運転条件は、特に断らない限り下記のとおりである。
培養反応槽容量:1.0(l)
・膜分離槽容量:0.5(l)
・使用分離膜:PVDF濾過膜
・膜分離エレメント有効濾過面積:120cm
・温度調整:28(℃)
・培養反応槽通気量:1.0(l/min)
・培養反応槽攪拌速度:600(rpm)
・膜分離槽通気量:1.0(l/min)
・滅菌:分離膜エレメントを含む培養槽、および使用培地は総て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
・pH調整:1N NaOHによりpH5.0に調整
・膜透過水量制御:膜分離槽水頭差により流量を制御(水頭差は2m以内で制御した。)。
【0131】
まず、ポテトデキストロース寒天培地で固体静地培養したRut C−30株の胞子を、試験管で表1に示す100mlの培地で3日間(28℃)振とう培養した(前培養)。前培養液を、図2に示す連続培養装置の1.0Lの培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって600rpmで攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整と温度調整を行い、72時間培養を行った。
【0132】
前培養完了後、実施例3で使用した2糖類含有溶液を500倍になるように希釈し、希釈した2糖類含有溶液を含む表1の培地を作成した。この培地を連続供給し、培養液循環ポンプ11によって培養反応槽1と膜分離槽12の間を培養液の循環を行い、連続培養装置の培養液量が2Lとなるように膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続培養による生産されたセルラーゼの製造を行った。連続培養試験を行うときの膜透過水量の制御は、水頭差制御装置3により、培養反応槽水頭を最大2m以内、すなわち膜間差圧が20kPa以内となるように適宜水頭差を変化させることにより行った。適宜、濾液中の生産されたセルラーゼの生産量を測定した。濾液はすべて回収し、この濾液中に含まれるセルラーゼ活性を表19に示した。144時間の培養試験を行った結果、特開2009−39074号公報に記載の連続培養装置を用いることにより、セルラーゼの連続培養による製造が可能であることを確認することができた。
【0133】
(実施例12)バッチ培養によるセルラーゼの製造
糸状菌を用いた培養形態として最も典型的なバッチ培養を2リットル容のジャーファーメンターを用いて行い、セルラーゼの生産性を評価した。培地には表1に示す増殖培地を用い、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌処理して用いた。運転条件は、次の通りである。
・培養反応槽容量(培養液量):1.0(l)
・温度調整:28(℃)
・培養反応槽通気量:1.0(l/min)
・培養反応槽攪拌速度:600(rpm)
・pH調整:1N NaOHによりpH5.0に調整。
【0134】
まず、ポテトデキストロース寒天培地で固体静地培養したRut C−30株の胞子を、試験管で表1に示す100mlの培地で3日間(28℃)振とう培養した(前培養)。前培養液を、図2に示す連続培養装置の1.0Lの培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機5によって600rpmで攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整と温度調整を行い、バッチ培養を実施した。バッチ培養の結果を、実施例11の連続培養試験で得られたセルラーゼ生産性と比較して表19に示す。
【0135】
【表19】

【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、セルラーゼ誘導効果の高い2糖類含有溶液を安価に製造し、得られた2糖類含有溶液を糸状菌のセルラーゼ製造に利用することができる。さらにセルラーゼ誘導効果の高い2糖類含有溶液を安価に製造することにより、セルラーゼ生産コストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0137】
1 培養反応槽
2 分離膜エレメント
3 水頭差制御装置
4 気体供給装置
5 攪拌機
6 レベルセンサ
7 培地供給ポンプ
8 pH調整溶液供給ポンプ
9 pHセンサ・制御装置
10 温度調節器
11 培養液循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラーゼの製造方法であって、(1)グルコース含有溶液に好熱性菌由来β−グルコシダーゼを添加し、縮合反応により2糖類含有溶液を製造する工程、および(2)2糖類含有溶液を含む培地を使用して糸状菌培養によりセルラーゼを製造する工程を含む、セルラーゼの製造方法。
【請求項2】
好熱性菌由来β−グルコシダーゼが好熱性菌由来組換えβ−グルコシダーゼであることを特徴とする、請求項1記載のセルラーゼの製造方法。
【請求項3】
好熱性菌由来β−グルコシダーゼがパイロコッカス属(Pyrococcus)またはサーモプラズマ属(Thermoplasma)由来であることを特徴とする、請求項1または2記載のセルラーゼの製造方法。
【請求項4】
好熱性菌由来β−グルコシダーゼが配列番号2または4に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のセルラーゼの製造方法。
【請求項5】
前記(1)工程が、グルコース含有溶液に好熱性菌由来β−グルコシダーゼを0.1〜20mg/mlの濃度範囲で添加し、40〜120℃で保温することによる縮合反応であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のセルラーゼの製造方法。
【請求項6】
さらに(3)前記(1)工程で得られた2糖類含有溶液から好熱性菌由来β−グルコシダーゼを除去する工程を含む、請求項1から5のいずれかに記載のセルラーゼの製造方法。
【請求項7】
前記(3)工程が2糖類含有溶液から限外濾過膜により好熱性菌由来β−グルコシダーゼを回収する工程である、請求項6に記載のセルラーゼの製造方法。
【請求項8】
回収された好熱性菌由来β−グルコシダーゼを、前記(1)工程に再利用することを特徴とする、請求項6または7に記載のセルラーゼの製造方法。
【請求項9】
糸状菌がトリコデルマ・リーセイであることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のセルラーゼの製造方法。
【請求項10】
前記(2)工程が糸状菌を連続培養する工程である、請求項1から9いずれかに記載のセルラーゼの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−227032(P2010−227032A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78978(P2009−78978)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】