説明

セルロースエステルを基材とする製品及びその製造方法

本発明は、セルロースエステル繊維を含む第1の成分及び/又はセルロースエステルを含む第2の成分を可塑化溶剤に暴露することによる、2種又はそれ以上の成分の接着方法を提供する。次いで、この2成分を接触させて複合構造を形成し、次に複合構造を硬化させることによって2成分を接着させる。本発明は、フィルター、特にタバコフィルターの形成及び多層自動車ヘッドライナーの形成に有利に使用される。本発明はまた、車両のパッセンジャーコンパートメントの天井へのセルロースエステル含有自動車ヘッドライナーの接着方法を提供する。この実施態様において、セルロースエステル含有組成物は、ヘッドライナーの取り付け前に車両のコンパートメントの天井に適用する。次いで、ヘッドライナーおよび/又は車両のパッセンジャーコンパートメントの天井を可塑化溶剤に暴露し、それらを接触させ、次に硬化させ、それによってヘッドライナーを接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状セルロースエステル含有成分を第2のセルロースエステル含有成分に接着させる方法、更に詳しくは酢酸セルローストウを紙に接着させてタバコフィルターを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸セルロースは、精製セルロースから得られる。酢酸セルロースは、衣料品、紙類、ライナー、厚地カーテン、(椅子・クッションなどの)室内装飾品及びフィルター(例えばタバコ用の)の製造のような様々な工業的用途に望ましくなるような多数の特性を有する。このような特性には、例えば、柔軟さ、比較的速い乾燥性、防縮性、防かび性及び一部の成分を気体流から除去する能力などがある。
【0003】
酢酸セルロースは精製セルロースを硫酸のような鉱酸の存在下で酢酸及び無水酢酸と反応させることによって製造することができる。続いて、得られる材料は、加水分解によって精製して鉱酸を除去し且つアセテート基の数を調整して酢酸セルロースの物理的性質を調整する。セルロース中の反復モノマーは、3個のヒドロキシル基を有するアンヒドログルコース単位である。典型的な形態の酢酸セルロースにおいては、平均して3個のヒドロキシル基のうち約2個がアセチル化される。次の工程で、依然として粗製形態であると考えられる酢酸セルロースが典型的には溶媒に溶解され且つ紡糸口金において押出されて、酢酸セルロース繊維を生成する。これらの繊維は集めて束にし且つクリンプ加工して酢酸アセテートのトウを形成し、次いでこれを乾燥し且つベールにする。
【0004】
タバコフィルターのロッドの製造において、酢酸セルロースのトウは、プラグメーカーと称される機械を用いて加工する。プラグメーカーは、ベールから酢酸セルロース繊維のバンドを取り、それを一連のエアジェット及び被動ロールに通し、繊維のバンドをブルームさせ且つ弛緩させる。次いで、プラグメーカーは、繊維のバンドに可塑化溶剤の噴霧適用を行い、繊維の束を円筒形にする。可塑化溶剤を束に適用して、酢酸セルロース繊維が互いに結合し、その結果、許容され得る程度に堅い酢酸セルロースロッドが得られる。次に、酢酸セルロースのトウに、プラグラップとして知られる紙を巻き付けて、フィルターロッドの形状の維持を助け、且つその加工がし易くなる。
【0005】
典型的には、プラグラップは接着剤の1つ又はそれ以上の層を用いて繊維束に固定する。接着剤は通常、繊維束に巻き付ける前にプラグ製造機によって紙に適用する。先行技術のタバコフィルター製造方法は、ほどほどによく機能するが、接着層がしばしば多くの問題を引き起こす。例えば、紙からの接着剤の漏出は、プラグ製造装置の後の空気圧コンベヤーラインを経て輸送される間にフィルターロッドを目詰まりさせる。接着層はまた、最終製品中の多孔性プラグラップ紙において望ましい通気を妨げるおそれがある。最後に、接着層の対称性の欠如は、トウがロッド中で弛緩する際に収縮力を生じ、ロッドを曲げ且つロッドに皺を寄せる。
【0006】
酢酸セルロースはまた、自動車ヘッドライナーの製造に使用できる。自動車ヘッドライナーは、自動車のパッセンジャーコンパートメントの天井にライニングを施すのに用いられる。典型的なヘッドライナーは、1層又はそれ以上のフォーム層及び1層又はそれ以上の繊維含有層(通常はガラス繊維含有層)を有する多層構造である。多層ヘッドライナーは、層を結合させるための別個の接着層を必要とすることが多い。普及型のヘッドライナーは、装飾布、布上に配置された薄く、柔軟で且つフレキシブルなフォーム層、フォーム層上に配置されたウレタンフィルム層及び最後にウレタンフィルム層上に配置された硬質ポリウレタンフォーム層を含む。別のヘッドライナーの設計においては、発泡ポリウレタン層が2つのガラス繊維含有艶消し面の間に挟む。装飾布層はこれらの艶消し面の少なくとも一方上に配置して、車両内部に取り付けた場合にヘッドライナーの目視可能な面を形成する。特許文献1は、ヘッドライナー用途に適当な「フィルム−フォーム」積層板を開示している。この積層板においては、酢酸セルロースを含むことができるフィルム層がフォーム層に接着される。特許文献1に開示されたフォーム層は、発泡型熱可塑性樹脂及び発泡型エラストマーのような連続気泡フォーム材料である。特許文献1は、この積層板が自動車ヘッドライナー中において吸音層として有用であると記載している。これらの自動車ヘッドライナーは典型的には、ステープルや鋲で留めるような、冗長な機械的方法によって車のパッセンジャーコンパートメントに取り付けられる。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,121,960号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、接着剤が紙から漏出せず且つロッドが曲がったり皺を寄せたりしない、フィルター、特にタバコフィルターの改良された製造方法が必要とされている。同様に、ヘッドライナー中の層を接着させるための改良方法、及び車両のパッセンジャーコンパートメントにヘッドライナーを取り付けるための改良方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は2種又はそれ以上の成分の接着方法を提供する。少なくとも1つの実施態様において、本発明の方法は、セルロースエステル繊維を含む第1の成分及びセルロースエステルを含む第2の成分の少なくとも一方を可塑化溶剤に暴露し、第1の成分と第2の成分とを接触させて複合構造を形成し、次いで続いて前記複合構造を硬化させて、第1の成分と第2の成分とが接着させることを含む。本発明の方法は、繊維成分が基体に接着されたフィルターの製造に有利に使用される。特に有用な用途においては、セルロースエステルを含むプラグラップ紙をセルロースエステル含有トウに接着させることによってタバコフィルターを製造する。本発明は、プラグラップをフィルターロッドに接着させるための別個の接着層を不要にする。
【0010】
本発明の別の実施態様において、車両のパッセンジャーコンパートメントの天井への自動車ヘッドライナーの接着方法が提供される。この変法においては、セルロースエステル繊維が自動車ヘッドライナーの表面層に組み込まれる。セルロース繊維が組み込まれる層は、ヘッドライナーの取り付け時にパッセンジャーコンパートメントの天井と対向する層である。この方法は更に、車両のパッセンジャーコンパートメント天井をセルロースエステル含有組成物を被覆することによって、車両の被覆された天井を形成することを含む。次いで、可塑化溶剤をヘッドライナーの表面層又は被覆された車両のパッセンジャーコンパートメントの天井のいずれか一方又は両方に適用して、ヘッドライナー−天井複合構造(compound structure)を形成する。最後に、ヘッドライナー−天井構造を硬化させて、ヘッドライナーが接着されたパッセンジャーコンパートメントの天井を形成する。
【0011】
本発明の別の実施態様においては、自動車ヘッドライナーの製造方法が提供される。この実施態様の方法は、セルロースエステルを多層自動車ヘッドライナーの第1層及び第2層に組み込むことを含む。次いで、可塑化溶剤を第1層又は第2層の一方又は両方に暴露する。次に、第1層及び第2層を互いに接触させてヘッドライナー二重層を形成する。次いで、ヘッドライナー二重層を硬化させて、第1層と第2層とが互いに接着された硬化ヘッドライナー二重層を形成する。多層ヘッドライナーの各層を接着させるために、この実施態様の方法を繰り返し使用できる。
【0012】
本発明の更に別の実施態様においては、本発明の方法は、フィルター、特にタバコフィルターの製造に使用する。この実施態様のフィルターは、セルロースエステル繊維の凝集体、セルロースエステル繊維凝集体の上に配置されたセルロースエステル含有基体、及びセルロースエステル繊維凝集体とセルロースエステル含有基体とを接着させる、セルロースエステル繊維凝集体とセルロースエステル含有基体との間の溶剤接着を含む。この実施態様の溶剤接着は、セルロースエステル繊維凝集体の表面又はセルロースエステル含有基体の表面の一方又は両方に可塑化溶剤を適用することによって形成する。
【0013】
本発明の更に別の実施態様においては、本発明の方法によって製造された自動車ヘッドライナーが提供される。この実施態様のヘッドライナーは、酢酸セルロースを含む第1層、酢酸セルロースを含む第2層及び第1層と第2層とを接着させる溶剤接着を含む。この実施態様の溶剤接着は、第1層又は第2層の一方又は両方の表面に可塑化溶剤を適用することによって形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここで、本発明の好ましい組成物又は実施態様及び方法に詳細に言及する。これらは、本発明者らが現在承知している本発明の最良の実施形態を構成する。
【0015】
本明細書中で使用する用語「セルロース」はグルコース単位からなる天然の多糖を意味する。セルロースは多くの植物中に、特に木材、黄麻、亜麻、大麻等に見られる。
【0016】
本明細書中で使用する「溶剤接着法(solvent bonding)」は、2種又はそれ以上の成分の表面の一つ又はそれ以上に溶剤を適用し且つそれらの成分を押しつけることによる、2種又はそれ以上の成分の接着方法を意味する。接着は材料表面中への溶剤の吸収及び/又は溶剤蒸発のメカニズムのうち1つ又はそれ以上によって行われる。
【0017】
本明細書中で使用する「溶剤接着層(solvent bond)」は溶剤接着法によって2つ又はそれ以上の成分を接着する接着を意味する。このような接着は材料表面中への溶剤の吸収及び/又は溶剤蒸発のメカニズムのうち1つ又はそれ以上によって形成される。
【0018】
本明細書中で使用する「可塑化溶剤」はポリマーのような材料への添加時に可撓性、加工性及び伸びを与える溶剤を意味する。
【0019】
本明細書中で使用する「硬化」は吸着及び/又は蒸発のようなメカニズムによる溶剤接着層の形成を可能にすることを意味する。硬化は場合によっては加熱によって促進することができる。
【0020】
本発明の一実施態様においては2種又はそれ以上の成分の接着方法が提供される。本発明のこの方法は、セルロースエステル繊維を含む第1の成分及びセルロースエステルを含む第2の成分の少なくとも一方を可塑化溶剤に暴露し、次いで第1の成分と第2の成分とを接触させて、第1の成分と第2の成分との複合構造を形成することを含む。複合構造は硬化させて、第1の成分と第2の成分とを接着させる。
【0021】
本発明の実施に使用できる適当なセルロースエステル繊維としては、例えば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含む繊維が挙げられる。酢酸セルロースを含むセルロースエステル繊維が特に好ましい。同様に、第2の成分としても、また酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ぶことができるセルロースエステルが挙げられる。好ましくは、第2の成分は酢酸セルロースを含む。有利には、セルロースエステルを含むこの第2の成分は、場合によっては更にセルロースを含む紙である。
【0022】
本発明の方法の実施には、多数の異なる型の可塑化溶剤を使用できる。このような可塑化溶剤は、溶剤接着層を形成できるように、第1の成分及び第2の成分中のセルロースエステルを少なくとも部分的に軟化させることができなければならない。適当な溶剤としては、ジメトキシエチルフタレート、トリアセチン(グリセロールトリアセテート又はGTA)、ポリエチレングリコール(種々の分子量)、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールモノプロピオネート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる溶剤が挙げられる。可塑化溶剤は、当業者に知られた多くの方法によって第1の成分及び第2の成分の一方又は両方に適用できる。このような方法としては、噴霧、浸漬、はけ塗又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。更に、可塑化溶剤は、第1の成分及び第2の成分が連続溶剤塗布によって塗布されるように適用することもできるし、あるいは一連のドット又はラインのようなパターンで成分の一方又は両方に適用することもできる。可塑剤の使用レベルは、可塑剤の適用と従来から関連する性質を依然として保持しながら、フィルターをプラグラップの内側の所定の位置に保持する所望の機能を達成するのに充分なものでなければならない。
【0023】
本発明の別の実施態様においては、フィルターの製造方法が提供される。この実施態様の方法は、セルロースエステル繊維の凝集体(aggregation)を可塑化溶剤に暴露して、セルロースエステル含有繊維の溶剤含有凝集体を形成することを含む。次いで、セルロースエステル含有繊維凝集体をセルロースエステル含有基体と接触させて、繊維凝集体と基体との複合構造を形成する。この複合構造を硬化させることにより、基体をセルロースエステル繊維の凝集体に接着させる。場合によっては、繊維凝集体をセルロースエステル含有基体に接触させる工程の前に、繊維凝集体、セルロースエステル含有基体又は繊維凝集体及び基体の両者を同一の又は異なる溶剤の1回又はそれ以上の適用に暴露する。この場合もやはり、前述のように、更なる追加溶剤適用を、例えば噴霧、浸漬、はけ塗又はそれらの組合せを含む多くの方法によって行うことができる。この実施態様の方法を用いて、繊維フィルター成分が基体に接着された任意のフィルターを形成できる。このようなフィルターとしては、例えば加熱及び冷却系に使用されるエアフィルター並びにタバコフィルターが挙げられる。適当な基体としては、例えば、紙が挙げられる。この基体は、プロセスの最終製品がタバコフィルターである場合に特に有用である。本発明のこの特定の適用において、セルロースエステル繊維の凝集体を基体と接触させる工程は、セルロースエステル繊維の凝集体に基体を巻き付けること(全体的に又は部分的に被覆することを含む)を含む。従って、セルロースエステル含有基体は、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれた成分を含む。特に、セルロースエステル含有基体は酢酸セルロースを含む。
【0024】
好ましいタバコフィルター用途においては、セルロースエステルを含むプラグラップ紙をセルロースエテル含有トウに接着する。紙及びトウ中の好ましいセルロースエステルは酢酸セルロースである。プラグラップ中のセルロースエステルは、紙中の繊維の形態であるか又は紙表面上の被膜又はフィルムの形態であることができる。いずれの場合にも、セルロースエステルの使用量は、要求される接着力の大きさによって決まる。プラグラップ例の場合には、セルロースエステルの適当量は、フィルターロッド加工中にフィルターロッドをプラグラップに接着させると共に適度な機械力によるプラグラップからの抜き取りに耐える充分な量とする。本発明の方法は有利なことに、トウの周囲にほぼ均一に接着を実現することによって、ロッドの皺形成の問題を減少させる。更に、接着層の使用に関連する保守管理、掃除及び原料のコストの問題が排除される。適当な比率のセルロースエステル繊維を用いて製造されたプラグラップ紙は、従来型のプラグ製造機上で用いて、可塑化剤の接着作用によってプラグラップに接着されるロッドを製造できる。
【0025】
当然のことながら、乾燥酢酸セルローストウは、トリアセチン(グリコールトリアセテート又はGTA)のような接着用可塑化剤の作用を用いなければ、任意の量のセルロースアセテート繊維を含むプラグラップ紙に固定されない。同様に、酢酸セルローストウも、プラグラップ中又はプラグラップ上にセルロースエステルに含ませなければ、接着用可塑化剤単独で用いても従来型のプラグラップ紙に接着しないであろう。更に、セルロースエステル繊維、特に酢酸セルロース繊維はシート状ウェブの形成にも使用できるし、又は紙中の成分としても使用できることがわかっている。従って、第2の成分が紙である場合には、セルロースエステルは製紙プロセスにおいて紙中に組み込むことができる。別法として、紙にセルロースエステルの層を連続的に又は一定パターンで上塗りすることができる。このようにして製造された紙は、前記方法によってフィルタートウに溶剤接着することができる。
【0026】
本発明の別の実施態様においては、自動車のパッセンジャーコンパートメントの天井への自動車ヘッドライナーの接着方法が提供される。この変法においては、セルロースエステル繊維を自動車ヘッドライナーの表面層に組み込む。繊維を組み込む層は、ヘッドライナーの取り付け時にパッセンジャーコンパートメント天井と対向する、ヘッドライナーの層である。この実施態様の方法は、セルロースエステル含有組成物を車のパッセンジャーコンパートメント天井に適用して車両の被覆されたパッセンジャーコンパートメント天井を形成することを含む。次いで、表面層又は車両のパッセンジャーコンパートメントの被覆された天井のいずれか一方又は両方を可塑化溶剤に暴露する。表面層と車両のパッセンジャーコンパートメントの被覆された天井とを接触させて、ヘッドライナー−天井複合構造を形成する。最後に、ヘッドライナー−天井複合構造を硬化させて、表面層と車両のパッセンジャーコンパートメントの被覆された天井とを接着させる。パッセンジャーコンパートメントの天井に適用されるセルロースエステル含有組成物はセルロースエステル及び溶剤を含む。セルロースエステルは少なくとも部分的に溶剤に可溶である。適当な溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン及びエタノールが挙げられる。表面層に組み込まれるセルロースエステル繊維は、好ましくは酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれた成分を含む。同様に、セルロースエステル含有組成物も、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物から選ばれた成分を含む。より好ましくは、セルロースエステル繊維及びセルロースエステル含有組成物はいずれも、独立に、酢酸セルロースを含む。
【0027】
本発明の別の実施態様においては、自動車ヘッドライナーの製造方法が提供される。この実施態様の方法は、多層自動車ヘッドライナーの第1層及び第2層にセルロースエステルを組み込むことを含む。好ましくは、第1層及び第2層の一方又は両方がセルロースエステル繊維を含むものとする。次いで、可塑化溶剤を第1層又は第2層のいずれか一方又は両方に暴露する。次に、第1層及び第2層を接触させて、ヘッドライナー二重層を形成する。次いで、ヘッドライナー二重層を硬化させて、第1層と第2層とが接着された硬化ヘッドライナー二重層を形成する。この実施態様の方法を繰り返し用いて、多層ヘッドライナーの各層を接着させることができる。前述のように、典型的な自動車ヘッドライナーは、装飾布層、1層又はそれ以上の発泡層及び1層又はそれ以上のガラス繊維含有層を含むことができる。セルロースエステルは、好ましくはセルロースエステル繊維の形態であって、この実施態様の方法の実施時に少なくとも2層の隣接層中に組み込ませる。この実施態様に使用するセルロースエステル及び可塑化溶剤の選択については、前述と同様である。
【0028】
本発明の更に別の実施態様においては、前記方法によって製造されたフィルターが提供される。本発明のフィルターは、セルロースエステル繊維の凝集体、セルロースエステル繊維凝集体の上に配置されたセルロースエステル含有基体及びセルロースエステル繊維の凝集体とセルロースエステル含有基体とを接着させる、セルロースエステルの凝集体とセルロースエステル含有基体との間の溶剤接着を含む。この実施態様を特定の実施形態に限定するものではないが、溶剤接着層は、溶剤をセルロースエステル繊維凝集体の表面又はセルロースエステル含有基体の表面の一方又は両方に溶剤を吸収させることによって形成されると考えられる。溶剤接着を形成する別のメカニズムは、セルロースエステルの凝集体又はセルロースエステル含有基体の一方又は両方に適用された溶剤の蒸発によるものである。フィルターの実施態様は、繊維状濾過用成分が基体に貼り付けられた任意のフィルターである。例としては、加熱及び冷却系に使用されるエアフィルター及びタバコフィルターが挙げられる。この実施態様の好ましいフィルターはタバコフィルターである。これらのフィルター用途において、セルロースエステル繊維の凝集体は、好ましくは酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれた成分を含む。セルロース含有基体は、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含むことができる。基体は最も好ましくは酢酸セルロースを含んでなり且つ/又は更にセルロースを含むものとする。好ましいセルロースエステル含有基体は、1つ又はそれ以上の前記特性を有することができる紙である。
【0029】
本発明の更に別の実施態様においては、本発明の方法によって製造された自動車ヘッドライナーが提供される。この実施態様のヘッドライナーは、セルロースエステルを含む第1層、セルロースエステルを含む第2層及び第1層と第2層とを接着させる溶剤接着を含んでなる。好ましくは、第1層はセルロースエステル繊維を含む。この実施態様の溶剤接着は、第1層又は第2層の一方又は両方の表面に可塑化溶剤を適用することによって形成する。第1層及び第2層中のセルロースエステル及び可塑化溶剤の選択については前記と同様である。好ましくは、第1層及び第2層は共に酢酸セルロースを含む。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は、本発明の種々の実施態様を示す。当業者ならば、本発明の精神及び「特許請求の範囲」の範囲内において多くの変形がわかるであろう。
【0031】
実施例1
酢酸セルロースの薄いフィルムをガラスプレート上にキャストした。このフィルムは厚さが約5milであった。予め製造されたフィルターロッドを切り開き、プラグラップ紙を除去した。次いで、エアゾール噴霧器を用いてロッドに少量のトリアセチンを噴霧した。これらのロッドを、ガラスプレート上にキャストされた酢酸セルロースフィルム上に置き、1時間硬化させた。1時間後に、ロッドを検査し、フィルムに接着されていることがわかった。
【0032】
実施例2
実施例1と同様な実験において、一定の長さのプラグラップ紙をガラスプレート上にテープで貼り、紙の上に酢酸セルロースの薄いフィルムをキャストした。予め製造されたフィルターロッドをそれらのプラグラップからはぎ取り、エアゾール噴霧器を用いてそれに少量のトリアセチンを噴霧した。これらのロッドを紙のストリップ上に置き、1時間硬化させた。次いで、ロッドを検査して、被覆されたプラグラップ紙に接着されているのがわかった。
【0033】
実施例3
一定の長さのプラグラップ紙をその末端の近くでガラスプレートにテープで貼り、紙の中央の下の幅4mmのストリップが依然として目視できるようにして、これを別の2枚の紙で被覆した。次いで、目視可能なストリップを被覆するように、5milの酢酸セルロースフィルムをキャストした。テンプレートを形成する2枚の紙を直ちに取り除き、中央の下に4mmの酢酸セルロースストリップを有する一定の長さのプラグラップを残した。次に、予め製造したロッドをそれらのプラグラップ紙からはぎ取り、エアゾール噴霧器を用いてそれに少量のトリアセチンを噴霧した。処理された紙をロッドの周囲に長手方向に巻き付けた。紙を巻き付けられたロッドを、適当な直径の小さいチューブに入れて、硬化させた。約1時間の硬化時間後、ロッドを検査し、処理された紙のストリップに接着されているのがわかった。
【0034】
実施例4
一定の長さのプラグラップを、実施例3に記載されたようにしてガラスプレートにテープで貼り、紙のテンプレートをその上に被せる。テンプレートに小さい丸孔を開ける。酢酸セルロースの薄いフィルムをテンプレート上にキャストし、テンプレートを除去して、プラグラップ紙上に酢酸セルロースフィルムの1組の丸いドットのみを残す。次いで、予め作られたロッドにトリアセチンエアゾールを噴霧し、紙に貼り付ける。
【0035】
本発明の実施態様を示し且つ説明したが、これらの実施態様は本発明の考えられる形態を全て示し且つ説明するものではない。むしろ、本明細書中に使用した用語は限定ではなく説明の用語であり、本発明の精神及び範囲から逸脱しないならば、種々の変更を行えることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)セルロースエステル繊維を含む第1の成分及びセルロースエステルを含む第2の成分の少なくとも一方を可塑化溶剤に暴露し;
b)第1の成分と第2の成分とを接触させて複合構造を形成し;そして
c)前記複合構造を硬化させることによって、第1の成分と第2の成分を一緒に接着させる
ことを含んでなる2種又はそれ以上の成分を一緒に接着する接着方法。
【請求項2】
前記セルロースエステル繊維が酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セルロースエステル繊維が酢酸セルロースを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2の成分が酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の成分が酢酸セルロースを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の成分が紙である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の成分が更にセルロースを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記可塑化溶剤がジメトキシエチルフタレート、トリアセチン、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールモノプロピオネート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一方の成分を可塑化溶剤に暴露する工程が噴霧、浸漬、はけ塗又はそれらの組合せを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の成分が多層自動車ヘッドライナーの第1層であり且つ前記第2の成分が多層ヘッドライナーの第2層である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の成分を第2の成分に接着させてフィルターを形成する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
a)セルロースエステル繊維の凝集体を可塑化溶剤に暴露し;
b)可塑化溶剤に暴露されたセルロースエステル繊維凝集体をセルロースエステル含有基体と接触させ;そして
c)基体に接触させられたセルロースエステル繊維凝集体を硬化させることによって、基体をセルロースエステル繊維凝集体に接着させる
ことを含んでなるフィルターの製造方法。
【請求項13】
前記工程b)の前に、繊維凝集体、セルロースエステル含有基体又は繊維凝集体及び基体の両方を、同一又は異なる溶剤の1回又はそれ以上の追加適用に暴露する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記可塑化溶剤がジメトキシエチルフタレート、トリアセチン、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールモノプロピオネート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
セルロースエステル繊維凝集体を可塑化溶剤に暴露する工程が噴霧、浸漬、はけ塗又はそれらの組合せを含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記セルロースエステル含有基体が紙である請求項12に記載の方法。
【請求項17】
セルロースエステル繊維凝集体を基体と接触させる工程がセルロースエステル繊維凝集体に基体を巻き付けることを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
フィルターがタバコフィルターである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記セルロースエステル含有基体が酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含む請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記セルロースエステル含有基体が酢酸セルロースを含む請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記セルロースエステル繊維が酢酸セルロースを含む請求項12に記載の方法。
【請求項22】
セルロースエステル繊維凝集体;セルロースエステル繊維凝集体上に配置されたセルロースエステル含有基体;並びにセルロースエステル繊維凝集体とセルロースエステル含有基体とを接着させる、セルロースエステル繊維凝集体とセルロースエステル含有基体との間の溶剤接着を含んでなるフィルター。
【請求項23】
前記溶剤接着がセルロースエステル繊維凝集体又はセルロースエステル含有基体の一方又は両方に適用された溶剤を蒸発させることによって形成される請求項22に記載のフィルター。
【請求項24】
前記溶剤接着が、セルロースエステル繊維凝集体の表面又はセルロースエステル含有基体の表面の一方又は両方に溶剤を吸収させることによって形成される請求項22に記載のフィルター。
【請求項25】
前記セルロースエステル繊維が酢酸セルロースを含む請求項22に記載のフィルター。
【請求項26】
前記セルロース含有基体が酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含む請求項22に記載のフィルター。
【請求項27】
前記セルロース含有基体が紙である請求項22に記載のフィルター。
【請求項28】
前記セルロース含有基体が酢酸セルロースを含む請求項22に記載のフィルター。
【請求項29】
前記セルロースエステル含有基体が更にセルロースを含む請求項28に記載のフィルター。
【請求項30】
タバコフィルターであり且つ前記セルロースエステル含有基体が酢酸セルロース及びセルロースを含む紙である請求項25に記載のフィルター。
【請求項31】
車両のパッセンジャーコンパートメントの天井にヘッドライナーを取り付ける方法であって、前記ヘッドライナーが酢酸セルロース繊維が組み込まれた表面層を有し且つ前記方法が
a)セルロースエステル含有組成物を車両のコンパートメントの天井に適用して、被覆された車両コンパートメントの天井を形成し;
b)表面層又は車両コンパートメントの被覆天井の少なくとも一方を可塑化溶剤に暴露し;
c)表面層と車両コンパートメントの被覆天井とを接触させて、複合ヘッドライナー−天井構造を形成し;そして
d)複合ヘッドライナー−天井構造を硬化させることによって、表面層と車両コンパートメントの被覆天井とを接着させる
ことを含んでなる方法。
【請求項32】
前記セルロースエステル繊維が酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記セルロースエステル含有組成物が、独立に、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートブチレート及びそれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含む請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記セルロースエステル繊維が酢酸セルロースを含み且つ前記セルロース含有組成物が酢酸セルロールを含む請求項31に記載の方法。
【請求項35】
請求項31に記載の方法に従って製造されたヘッドライナー。

【公表番号】特表2007−503510(P2007−503510A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524715(P2006−524715)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/026706
【国際公開番号】WO2005/019314
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】