説明

セルロースエーテルの成形方法

本発明は、穿孔を有するプレートに押し通すことで、既知のセルロースエーテルよりも高い嵩密度と、狭い粒子サイズ分布とを有するセルロースエーテルを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔を有するプレートに押し通すことで、既知のセルロースエーテルよりも高い嵩密度と、狭い粒子サイズ分布とを有するセルロースエーテルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースエーテルの製造において、成形工程は、生成物の特性に影響を与える重要な工程である。とりわけ、粒度曲線(grading curve)や嵩密度のような示強特性は、この成形工程に影響される。
【0003】
この工程は、一般に生成物の洗浄後で乾燥および粉砕(grinding)の前に実施される。
【0004】
従来技術では、成形は、水平振動式ミキサでの累積的な凝集により実施され、これにより、湿気のある生成物は凝集し、緻密になり、圧縮される(例えば、独国特許公開公報第20 28 310号、同第33 08 420 A1号を参照されたい。)
【0005】
この技術の欠点は、特に累積的な凝集が、ミキサ内での滞留時間に依存することであり、これは必然的に造粒機(granulator)の大きさ、および導入するエネルギーの限界とも関係する。ミキサ内での滞留時間を分割すると生成物は不均一になる。凝集は互いに緩くくっつき合っているだけであり、すぐに崩壊が起こる。この結果、所定のグレードにとって望ましくない非常に細かい粉末が相当の割合で生じる。従って、この影響を受ける嵩密度および粒度曲線の示強因子の向上は限定的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ本発明は、嵩密度を増やし、粒度曲線に所望の粒サイズを下回る粒体(granule)があるとしても、後の粉砕工程で僅かに形成されるだけであるように、洗浄後の繊維質の生成物が高度に圧縮され、緻密な粒子を形成する方法を提供することを目的とする。加えて、形成された粒体は可能な限り均一であるべきである。さらに、生成物の他の特性は影響を受けない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
意外にも、この目的は、セルロースエーテルを、穿孔を有するプレートに押し通す工程を含む方法により達成できることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の1つの実施形態では、セルロースエーテルを、垂直軸を含む装置内に供給する。軸には、直径と長さの比が規定された穿孔を有するプレート(またはディスク)が取り付けられている。このプレート上では、ローラ(エッジランナー、ホイール、ロール)が回転し、ローラはセルロースエーテルを穿孔内に押圧し、穿孔を通り抜けさせる。プレートの下では、セルロースエーテルは、回転するストリッパーによって切り離され、小さなペレットに分けられる。
【0009】
本発明の別の実施形態では、フラットダイプレス(flat die press)(「エッジランナーミル」ともいう)(またはフレットミル)のダイ(または金型、die)にセルロースエーテルを押し通す。フラットダイプレスでは、回転するエッジランナー(ホイール(wheel))が、穿孔を有するダイ(プレートまたはディスク)の上を動いている。ダイの下では、せん断装置が所望の長さにペレットを切断する。エッジランナーミルでは、少なくとも1つのエッジランナーが動く。通常は2つのエッジランナーを用いるが、また3つ以上のエッジランナーを用いることが可能である。これは、装置(ユニット)の大きさおよびエッジランナーの直径に依存する。
【0010】
また一方、さらに、可能なのは、直線状の、穿孔を有するダイの上で、ホイール(ロール、エッジランナー)が行き来することで、ダイにセルロースエーテルを押し通し、これによりセルロースエーテルを圧縮する。
【0011】
セルロースエーテルは、穿孔を通り抜ける際に圧縮される。圧縮の程度は、穿孔の形状により調整できる。これは圧縮工程に必要なエネルギーを規定する。成形体の断面形状は、穿孔の断面形状により決定される。
【0012】
円形の穿孔の場合、圧縮したセルロースエーテルのコンシステンシーは、圧縮率Pに依存する。圧縮率Pは、ダイにおける、穿孔の長さの穿孔の直径に対する比として定義される。圧縮率Pは、0.5〜5.0である必要があり、好ましくは2〜4.0である。
【0013】
穿孔は、また、正方形、長方形、楕円、異形の断面形状を有してもよい。プレートの単位面積あたりの穿孔の数は、プレートの安定度による。
【0014】
本発明にかかる方法を実施するのに適したセルロースエーテルの例は、イオン性および非イオン性セルロースエーテルである。イオン性セルロースエーテルの例は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスルホエチルセルロースおよびスルホエチルセルロースであり、好ましくはカルボキシメチルセルロースである。非イオン性セルロースエーテルの例は、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびメチルセルロースであり、好ましくはヒドロキシエチルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0015】
本発明にかかる方法により圧縮されたセルロースエーテルは従来技術の処理をされたセルロースエーテルより大きい嵩密度を有し、より安定な粒体を形成し、他の特性は同じである。また、粒子サイズの分布はより均一で、ふるい(screen)のサイズ(mm)と、分布関数(%)との間の相関係数Kが略1(すなわち実質的には直線関係)であるという特徴を有する。
【0016】
本発明にかかる方法で圧縮された、商業的に有用なセルロースエーテルの代表的な嵩密度は400g/l〜800g/lである。これらのセルロースエーテルは、粒子サイズの平均が500μmであり、標準的な粒子サイズの分布は、125μm〜1000μmである。
【0017】
圧縮していない材料が、計量供給装置(例えば、スクリューまたはベルト)を介しエッジランナーミルに導入される。また、エッジランナーミルを例えば窒素や二酸化炭素により不活性にすることが可能である。
【実施例】
【0018】
限定するものではない、以下の実施例により本発明にかかる方法を説明する。
【0019】
・比較例(従来技術により製造)
CMC CRT 40000製品(置換度(DS)0.9、含水率42%、2%水溶液の粘度40,000mP・s)を、繊維質のアルコールフリーの原材料として、水平ミキサの内部に入れ、連続的に造粒する。得られたグラニュールをバッチ式の装置内で乾燥し、そして、スクリーニングバスケットを備えた衝撃式粉砕機(impact pulverizer)により所定の微粉度に粉砕する。得られた生成物を約1mmでふるい分けする。
【0020】
嵩密度は621g/l、直径が0.125mm以下の割合は18wt%、相関係数Kは0.979である。
【0021】
・実施例1(本発明による)
水平ミキサを使用する代わりに、本発明にかかる方法(6mmの穿孔、P=4)によりCMC CRT 40000製品(含水率42%)を圧縮、造粒し、そして上述の方法で乾燥し、粉砕する。
【0022】
嵩密度は711g/l、直径が0.125mm以下の割合は14wt%、相関係数Kは0.995である。
【0023】
・実施例2
水平ミキサを用いる代わりに、本発明にかかる方法(6mmの穿孔、P=3)により、CMC CRT 10000製品(含水率40%、2%水溶液の粘度10,000mP・s)を圧縮、造粒し、そして上述の方法で乾燥し、粉砕する。
【0024】
嵩密度は680g/l、直径が0.125mm以下の割合は12wt%、相関係数Kは0.999である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔を有するプレートにセルロースエーテルを押し通す工程を含むことを特徴とするセルロースエーテルの製造方法。
【請求項2】
圧縮率Pが0.5〜5.0であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
圧縮率Pが2.0〜4.0であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
1以上の回転するエッジランナーによりセルロースエーテルを穿孔に押し通すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
1以上の振動するホイールによりセルロースエーテルを穿孔に押し通すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ロールによりセルロースエーテルを穿孔に押し通すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
圧縮されたセルロースエーテルをプレートの下で、所定の長さのピースに切断することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
圧縮されるセルロースエーテルが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスルホエチルセルロース、スルホエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびメチルセルロースよりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得ることができる生成物。

【公表番号】特表2008−528773(P2008−528773A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553497(P2007−553497)
【出願日】平成18年1月21日(2006.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000528
【国際公開番号】WO2006/081955
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(503166780)ヴォルフ セルロシックス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】Wolff Cellulosics GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】29656 Walsrode, Germany
【Fターム(参考)】