説明

セルロース充填の熱可塑性複合物

本発明は、ポリオレフィンと、セルロース充填材と、15mgKOH/gより高い酸価を有するカルボン酸および/またはカルボン酸無水物グラフトポリオレフィンと、複合物の重量に基づいて5乃至25重量%の量で存在する基本の反応性充填材とからなる熱可塑性複合物を提供する。このような複合物は、構造的および非構造的な用途に用いられてよく、改良された機械的特性、熱特性および/または耐生分解性を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造的および非構造的な用途で用いるためのセルロース充填の熱可塑性複合物に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース充填材と粒状オレフィンシリーズの熱可塑性材料との混成から成る複合材料は圧縮成形、回転成形、押出成形または射出成形によって成形され、そのような複合材料は、例えば、パーツ、パネル、光線、板およびシートなど様々な構造的な用途で幅広く使用される。このような複合材料の機械的特性(例えば、張力特性、屈曲特性および衝撃強度)は、構造的な用途でそれらを用いるための重要な点である。当該技術において、このような複合物の機械的特性を改善する継続した必要性がある。加えて、当該技術において、このような複合物のサービス温度(service temperature)、耐火性、耐生物性を改善する継続した必要性がある。
【0003】
木質のセルロース充填材の水分が最終的に2乃至5重量%になるために、木質のセルロース充填材と、無水マレイン酸および慎重に算出された酸化カルシウム量によって改変されたプロピレンとからなる剛性率を改良する作用剤を有するオレフィンシリーズのプラスチックとからなる複合材料が開示される(例えば、特許文献1参照)。湿度が場所によって変化するので、木質の正確な湿度として、上記の開示の方法は困難であり、決定するのが必ずしも容易でない。本願はまた、CaOの使用がCaOの表層処理を必要とすることを教示する。
【特許文献1】米国特許第6,066,278号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の態様によると、ポリオレフィンと、セルロース充填材と、15mgKOH/gより高い酸価を有するカルボン酸および/またはカルボン酸無水物グラフトポリオレフィンと、複合物の重量に基づいて5乃至25重量%の量で存在する基本の反応性充填材とからなる熱可塑性複合物が提供される。
【0005】
本発明の別の態様によると、本発明の熱可塑性複合物からなる製品が提供される。
【0006】
本発明のまた別の態様によると、熱可塑性複合物を生成するための方法が提供され、その方法は、混合物を形成するためにポリオレフィンと、セルロース充填材と、15mgKOH/gより高い酸価を有するカルボン酸および/またはカルボン酸無水物グラフトポリオレフィンと、複合物の重量に基づいて5乃至25重量%の基本の反応性充填材との混合と、当該混合物の成形とからなる。
【0007】
驚くべくことに、本発明のセルロース充填の熱可塑性複合物において、約5乃至25重量%の量の基本の反応性充填材と、約15mgKOH/gより高い酸価を有するカルボン酸および/またはカルボン酸無水物グラフトポリオレフィンの組み合わせが、例えば、特許文献1に記載の複合物である従来技術のセルロース充填の熱可塑性複合物と比較して、複合物の強化した性能を導くことが分かった。本発明の複合物はまた、強化された熱屈折温度、耐火性および/または耐生分解性(例えば、昆虫、腐食、シロアリ)を導く。さらに、驚くべきことに、特許文献1に開示されるような従来の複合物と違って、本発明の複合物で有用である基本の反応性充填材の量が、セルロース充填材の湿度レベルに対する依存が少ないことが分かった。加えて、本発明の複合物は、従来の複合物に対して、改善された屈曲性、強度および/または衝撃特性を表す。また、幅広く様々な基本の反応性充填材は、従来技術の複合物で活用されるよりも、本発明の複合物で使用されてよい。さらに、基本の反応性充填材は、使用前に、表面処理を必要としない。
【0008】
本発明のさらなる特徴が記載され、下記の詳細な記載によって明白となるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書および特許請求の範囲で、明確に記載がなくとも、単数形の記載は、複数の関係を含む。
【0010】
本明細書において、範囲は、“約”若しくは“ほぼ”の一つの特定の値および/または、そこから“約”若しくは“ほぼ”の別の特定の値まで表されてよい。そのような範囲が表される場合、別の実施態様は、一つの特定の値および/または、そこから別の特定の値まで含む。同様に、値が近似値として表される場合、先の“約”を用いて、特定の値が他の実施態様を形成すると理解される。
【0011】
本発明の熱可塑性複合物はポリオレフィンを含む。ポリオレフィンは、単一ポリオレフィンまたは、2つ以上のポリオレフィンの混成であってよい。また、ポリオレフィンは、他のタイプの熱可塑性物質およびエラストマーと混合されてよい。ポリオレフィンは、他の成分が分散される複合物のためのマトリックスバインダーとして作用する。ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン(例えば、LDPE、HDPE、LLDPE、UHMWPE、XLPE)、他のモノマーとエチレンのコポリマー、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、またはそれらの混成を含む。ポリプロピレンと高密度のポリエチレン(HDPE)は、特に注目に値する。再利用されたポリオレフィンが本発明において用いてもよいことは、特に注目に値する。ポリオレフィンの成分は、任意の適切な量で複合物に存在してよい。例えば、ポリオレフィンは、複合物の重量に基づいて、全重量の約20乃至90%、30乃至70%または40乃至60%の量が存在してよい。これらは、複合物の他の成分のための効果的なマトリックスバインダーとして作用するために存在する充分なポリオレフィンでなければならない。
【0012】
本発明の熱可塑性複合物は、セルロース充填材を含む。セルロース充填材は、複合物での強化材として作用する。セルロース充填材は、セルロースの任意の供給源から得られてよい。幾つかの適切なセルロースの供給源は、例えば、木の供給源(例えば、パルプ、軟材および/または硬材からのおがくず、木の削りくずなどの木粉)、農業的な供給源(例えば、果物、穀物収穫、野菜、アサ、草、米わら等)および再生紙、ボール紙等を含む。セルロースファイバーは、特に注目に値する。セルロースファイバーは複合物の最終用途および複合物の所望の特性に依存して任意の適切なサイズ分配であってよい。セルロース充填材は単独で使用できるか、または異なるセルロースの供給源と混合できる。約0.1乃至20mm、より好ましくは約0.1乃至5mmの平均粒子サイズを有するセルロース充填材が適切である。セルロース充填材が繊維性である場合、平均粒子サイズはファイバーの平均の長さをいう。セルロース充填材は、任意の適切な強化量で複合物に存在してよい。例えば、セルロース充填材は、複合物の重量に基づいて、全重量の約30乃至80%、30乃至60、または35乃至50乃至%の量が存在してよい。
【0013】
本発明の熱可塑性複合物は、約15mgKOH/gより高い酸価を有するカルボン酸および/またはカルボン酸無水物グラフトポリオレフィンを含む。カルボン酸および/またはカルボン酸無水物グラフトポリオレフィンは、非極性の疎水性ポリオレフィンと親水性セルロース充填材の成分との相互作用を改善する結合剤として作用し、それによって、複合物の性能が改善することが考えられている。
【0014】
グラフトポリオレフィンのポリオレフィン部分は、複合物のポリオレフィンマトリックスの成分において上述したように任意の適切なポリオレフィンであってよい。グラフトポリオレフィンのポリオレフィン部分は、複合物のポリオレフィンマトリックスの成分と可能な限り互換性があることが一般的には好ましい。例えば、グラフトポリオレフィンで使用されるポリオレフィンがポリオレフィンマトリックスの成分と同じである場合、優れた互換性が達成できる。
【0015】
適切なカルボン酸および/またはカルボン酸無水物は、グラフトポリオレフィンで用いられてよい。数多の適切なカルボン酸は、例えば、アクリル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸、フマル酸、イタコン酸、ナディック酸(nadic acid)およびメチルナディック酸(methylnadic acid)を含む。数多の適切な無水物は、例えば、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水イタコン酸、無水ナディック酸(nadic anhydride)および無水メチルナディック酸(methylnadic anhydride)を含む。無水マレイン酸は、特に注目に値する。
【0016】
前述のように、グラフトポリオレフィンは、約15mgKOH/gより高い酸価を有する。約35mgKOH/gより高い酸価であるか、約40mgKOH/gより高い酸価、より好ましくは、約40乃至50mgKOH/gの酸価を有するグラフトポリオレフィンが特に注目に値する。好ましくは、グラフトポリオレフィンは、約50,000g/mol未満の分子量(Mn)を有する。約20,000g/mol未満または約1000乃至10,000g/molの分子量が特に注目に値する。本発明で用いられるグラフトポリオレフィンは、低分子量を有し、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物の高グラフト量を有し、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物の高グラフト量は、ポリオレフィンマトリックスとセルロース充填材との間の改善された相互作用を導くセルロース充填材の表層および孔へのグラフトポリオレフィンの浸透を改良すると考えられる。単一タイプのグラフトポリオレフィンまたは2つ以上のタイプのグラフトポリオレフィンの混成が用いられてよい。他の結合剤がグラフトポリオレフィンとの接合に用いられてよい。
【0017】
グラフトポリオレフィンは、ポリオレフィンマトリックスとセルロース充填材との間の改良された相互作用を与えるように、任意の適切な量で複合物に存在する。例えば、グラフトポリオレフィンは、複合物の重量に基づいて約5重量%までの量で存在してよい。約0.5乃至4重量%または1乃至3重量%の量が特に言及される。
【0018】
本発明の熱可塑性合成物は、複合物の重量に基づき約5乃至25重量%で存在する基本の反応性充填材を含む。基本の反応性充填材は単独で用いてもよいし、他のタイプの反応性若しくは非反応性充填材と混合して用いてもよい。複数のタイプの基本の反応性充填材が共に用いられてもよい。任意の適切な基本の反応性充填材が、複合物で用いられてよい。例えば、数多の基本の反応性充填材は、CaO、MgO、Al、BaO、ZnO、または、それらの混成である。衝撃強度を失わずに複合物のすべての特質において改良するために、基本の反応性充填材はグラフトポリオレフィンの酸性部分とセルロース充填材の酸性状の成分の両者と反応することが考えられる。加えて、基本の反応性充填材は、複合物の劣化を最小限にするために、セルロース充填材の湿気を減少すると考えられる。従来技術と違って、基本の反応性充填材の表面処理は、本発明の複合物の組立において基本の反応性充填材を使用するために必要とされない。前述したように、基本の反応性充填材は、約25重量%の量で複合物に存在する。約8乃至20重量%の量が特に言及される。
【0019】
本発明の熱可塑性複合物は、さらに追加的な添加剤を含む。添加物の数多の例は、二次的な強化材(例えば、ガラスファイバー、ガラスファイバー/ポリオレフィンの複合物、カーボンナノチューブ、カーボンウィスカー、層状クレイ、金属酸化物ナノチューブなど)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸、PTFE、二硫化モリブデンなど)、衝撃改良剤(impact modifiers)(例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPR))、充填材(例えば、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラックなど)、顔料、色素、抗酸化剤、安定剤、難燃剤、再燃焼助剤(reheat aids)、結晶化助剤(crystallization aids)、アセトアルデヒド還元合成物、リサイクリングリリースエイド(recycling release aids)、酸素捕捉剤、可塑剤、柔軟剤、成核剤、発泡剤、離型剤および同様のもの、またはそれらの混成を含む。
【0020】
二次的な強化材、特に、合成強化材は、機械的な特性、特に強度および耐衝撃性を改良するので、特に注目に値する。添加剤は、意図される目的のための任意の適切な量で用いられてよい。一般的に、二次的な強化材は、約20重量%の量まで添加されてよい。一般的に、潤滑剤は約4重量%の量まで添加されてよい。一般的に、衝撃改良剤は、約10重量%の量まで添加されてよい。一般的に、充填材は約20重量%の量まで添加されてよい。
【0021】
本発明の熱可塑性複合物は、従来から既知で任意の適切に合成し成形する技術によって生成されてよい。そのような技術の記載は、下記の3つの文献に見られ、それら文献は、C. Rauwendaal, Polymer Mixing (Carl Hanser Verlag, 1998);I. Manas-Zloczower and Z.
Tadmor, Mixing and Compounding of Polymers (Carl Hanser Verlag, 1994);Jean-Michel Charrier,
Polymeric Materials Processing: Plastics, Elastomers and Composites (Carl
Hanser Verlag, 1991)であり、これらの開示のすべては、ここに参照として組み込まれる。そのような技術は当業者にとって周知であり、詳細な記載は必要としない。熱可塑性複合物の形成に適切な技術の数多の実施例は、下記で概説される。
【0022】
押出/射出成形で、熱可塑性複合物の成分は、成分を合成するために、乾燥状態で混合され、高温度でツインスクリュー押出機によって押し出された。押出しされた混合物は、射出機によって高温度で、複合物が所望の物品に形成される型に射出された。
【0023】
乾燥状態の混合射出において、熱可塑性複合物の成分は、乾燥状態で混合されて、複合物が所望の物品に形成される型に高温度で乾燥混合物を射出する射出機に対して直接的に供給される。
【0024】
圧縮成形において、熱可塑性複合物の成分は乾燥状態で混合されて、成形機に対して直接的に供給され、所望の物品を形成するように高温の圧力下で成形される。
【0025】
本発明の熱可塑性複合物は、様々な適用、特に、構造的な適用で使用されてよい。例えば、熱可塑性複合物の一部、板、パネル、中空の外形、材木およびシートは、住宅、オフィスビルにおける構造産業において有用であり、同様に、自動車部品、特に、内装部品における自動車産業で有用である。
【実施例】
【0026】
材料:
表1Aは、材料の性質と供給源に関する情報を提供する。表1Bは、微細なトウヒおがくず、トウヒおがくず、モミおがくずのサイズ分配を提供する。MAgPPは、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンを意味する。CFはセルロース充填材を意味する。
【0027】
合成/処理プロセス
セルロース充填の熱可塑性複合物は、押出射出、乾燥混合射出、または圧縮技術によって調製された。乾燥混合射出および圧縮技術において、ポリオレフィンとグラフトポリオレフィンの混合物は、他の成分との乾燥混合に先立ち、押出しによってなされてよい。
【0028】
押出射出において、押出しは、ツインスクリュー押出機、L/D=40;速度=150乃至175rpm;Tmax=185℃を有するExtrusion SpecW&P30mmで実行され、射出は、T=200℃でBOY(登録商標)30A射出機を用いて実行された。典型的な押出/射出プロセスにおいて、セルロース充填材(例えば、トウヒおがくず)、基本の反応性充填材(例えば、CaO)、ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンおよび任意の他の所望の強化材または充填材は、ツインスクリュー押出機による押出し前に、まず最初に、共に乾燥混合された。次いで、押出し物は、射出機によって型に射出された。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】


乾燥混合射出において、射出は、T=200℃でBOY(登録商標)30A射出機を用いて実行された。典型的な乾燥混合射出プロセスにおいて、セルロース充填材(例えば、トウヒおがくず)、基本の反応性充填材(例えば、CaO)、ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンおよび任意の他の所望の強化材または充填材は、射出機によって型に射出される前に、まず最初に、共に乾燥混合された。
【0032】
圧縮において、成形は、T=200℃、P=100psi、t=5分間でWabasch(登録商標)機を用いて実行され、次いで、大気で6分間、水で10分間において室温まで冷却された。典型的な圧縮成形プロセスにおいて、セルロース充填材(例えば、トウヒおがくず)、基本の反応性充填材(例えば、CaO)、ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンおよび任意の他の所望の強化材または充填材は、圧縮成形前に、まず最初に、共に乾燥混合された。
【0033】
特徴
張力特性(ASTM D638)は、5mm/分の試験速度でイヌの骨タイプI試験を用いて測定された。
【0034】
屈曲特性(ASTM D790)は、長さが12.5mm、試験速度が1.3mm/分および幅が48mmであった曲げ試験を用いて測定された。
【0035】
耐衝撃性(ASTM D256)は、アンノッチIZOD衝撃試験を用いて測定された。
【0036】
サンプルは、1乃至7日間の異なる期間、水での調整前後において、雰囲気温度で試験された。
【0037】
複合物のミクロ構造的な観察は、JEOL JSM−6100(登録商標)走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてなされた。セルロース充填材とポリオレフィンマトリックスとの間の分散の観察は、Leitz Dialux(登録商標)20光学偏光顕微鏡(OM)と走査型電子顕微鏡(SEM)を用いたそれらのインターフェイスを用いてなされた。
【0038】
密度測定は、比重瓶AccuPyc(登録商標)1330でなされた。水分吸収は、サンプルを1乃至4日間において水に浸漬した後に重量の増加または損失を測定することによって決定された。基本の反応性充填材とグラフトポリオレフィンとの間の相互作用は、4cm−1の解像度で、Nicolet Magna(登録商標)フーリエ変換計測器において室温(25℃まで)で、伝達赤外線のスペクトロスコーピーによって研究された。
【0039】
基本の反応性充填材とグラフトポリオレフィンとの間の相互作用は、4cm−1の解像度で、Nicolet Magna(登録商標)フーリエ変換計測器において室温(25℃まで)で、伝達赤外線のスペクトロスコーピーによって研究された。
【0040】
高温での材料の機械的な特質は、レオメトリックサイエンティフィックインストルメント(Rheometric Scientific instrument)を用いて、動的な機械の熱分析(DMTA)によって決定された。サンプルは、−50乃至120℃の1Hzの周波数におけるトーションモード下にさらされた。
【0041】
複合物の熱安定性は、科学的で工業的な機器のSetaram(登録商標)TG96熱解析システムによって評価された。サンプルは、10℃/分の加熱速度で、25乃至500℃のアルゴンの下で加熱された。
【0042】
難燃能を評価するために、サンプルは水平に配置され、サンプルの一端はブタンガスのノズルのちょうど真上にし、サンプルの下面からの距離はノズルヘッドから20mmであった。サンプルは、雰囲気下で一端から燃焼され、燃焼の長さは各時間間隔で決定された。
【0043】
結果:
表2は、研究される様々な複合物における形態を提供する。含有量は、複合物の重量に基づいて、重量パーセントで与えられる。文字“C”から始まる実施例の番号は、比較例である。
【0044】
【表4】


表3は、各複合物において特徴的な様々なパラメータの結果を提供する。
【0045】
【表5】


表2および3を参照するに、実施例2および3に実施例C1を比較することは、本発明のセルロース充填の熱可塑性複合物(実施例2および3)が類似した比較の複合物(実施例1)に対して、かなり改良された機械的な特徴を有することを例証する。比較の複合物は、基本の反応性充填材(例えば、CaO)を有しない。さらに、本発明の複合物によって提供された改善レベルは、米国特許第6,066,278号に報告された結果と比較した場合に優れている。
【0046】
実施例2および3を比較例C4、C5およびC6に比較すると、基本の反応性充填材(例えば、CaO)の使用が、類似の複合物における衝撃改良剤(例えば、EPR)または簡素な充填材(例えば、CaCO)の使用よりも、張力および屈曲特性で著しい改善を提供することも証明される。
【0047】
実施例7および8によって証明されるように、基本の反応性充填材としてAlの使用は、複合物の屈曲特性および耐衝撃性における著しい改善を提供する。屈曲特性および耐衝撃性に対する改善レベルがCaOにおけるほど高くないが、Alの使用は、破損において、CaOより多くの張力の改善を提供する。したがって、CaOまたはAlの使用は、複合物がおかれる特定の応用に依存する。
【0048】
同様の結果は、実施例3、9、C13、C15、17および19によって証明されるように、異なるセルロース充填材および再利用のポリプロピレンを用いて得られる。
【0049】
図9および10を参照するに、CaOの量が5重量%から10重量%に高まることは、機械的な特質(破損における張力を除く)における減少とはならず、むしろ、機械的な特質の多大な改善となる。加えて、CaOの量が15重量%である場合、そのような機械的な特質において減少はない。これは、米国特許第6,066,278号の教示と正反対であり、それはCaOの量が慎重に制御されて、わずかに保たれることを必要とするか、または、複合物の機械的特性の減少があることを教示する。
【0050】
E3015からなる複合物でのCaOの存在は、CaOが5重量%存在する場合に機械的な特質に対して重要な改善を提供するが、CaOの量が5重量%を越えて増加するにつれて、改善はごくわずかになることを比較例C11、C12およびC13が例示する。これは、複合物の基本の反応性充填材の量とグラフトポリオレフィンの酸価とのバランスが、セルロース充填の熱可塑性複合物の機械的な特性に対する改善に関して重要な点であることを例示する。
【0051】
基本の反応性充填材の量とグラフトポリオレフィンの酸価との重要なバランスがさらに、E3003が使用される、実施例C14およびC15によって例示される。E3003は、E3015よりもさらに低い酸価を有する。CaOの追加を有する率でわずかな改善がある一方、複合物におけるCaOのすべてのレベルにおいて強度と耐衝撃性の両者で著しい減少がある。
【0052】
実施例17は、本発明と一致する機械的な特質に対する類似の改善が、別のタイプの再利用のポリプロピレンを使用して獲得できることを例示する。加えて、実施例18は、ガラスファイバーの添加が、機械的な特質、特に、強度と耐衝撃性をさらに高めることができることを例示する。
【0053】
また、使用されるポリプロピレンのタイプの効果が考慮された。混合物のないポリプロピレンは、実施例17および20によって例示されるように、再利用のポリプロピレンと比較して、より高い機械的な特質を導く。
【0054】
相当高いメルトインデックスと低性能の混合物のないポリプロピレンにおいて、CaOが使用される場合に機械的な特質での類似の改善がさらに得られる(実施例22と比較した実施例C21)。実施例22が乾燥木材(2%未満の相対湿度)を用いてなされ、一方で実施例23が湿った木材(約19%の相対湿度)を用いてなされたこと以外、実施例23は、実施例22のように同一タイプの成分と形態を有する。表3に示されるように、実施例23の機械的な特質は、実施例22のそれに比較して劣っている。したがって、本発明の複合物が、従来の複合物よりもセルロース充填材の湿度にそれほど依存していない一方で、セルロース充填材での最大湿量は複合物の機械的な特質で幾らかの劣化を導く。
【0055】
表4は、本発明の複合物がさらに高温度での機械的な特質が改善されて、複合物のより高いサービス温度を可能にすることを例証する。
【0056】
【表6】


表5は、TGAにより測定されるように、10重量%(T10%)および20重量%(T20%)の重量損失での高温度並びに500℃での重量損失によって反映されるように、本発明の複合物が温度の劣化に対して、さらに耐性であることを例証する。
【0057】
【表7】


表6は、本発明の複合物がさらなる耐火性であることを例示する。1分間(L)および5分間(L)での実施例22の燃料率は、実施例C21の燃焼率よりも小さい。用いられた燃焼試験が標準試験でなくとも、質的に複合物の難燃能を示す。
【0058】
【表8】


表7は、様々なセルロースが充填された熱可塑性複合物での吸水性試験の結果を提供する。成分の量は、複合物の重量に基づき重量パーセントで与えられる。文字“C”から始まる実施例の番号は、比較例である。指定‘粘土’は層状粘土の強化材に関し、一方で、‘clayexf’は、エクスフォリエートされた(exfoliated)同じ粘土に関連する。用いられた粘度は、サザンクレイプロダクツ(Southern Clay Products)のCloisite(登録商標)15Aであった。
【0059】
【表9】


CaOなどの基本の反応性充填材が10重量%程度で複合物に存在するが、吸水性の範囲は狭く保たれ、米国特許第6,066,278号の教示とは正反対であることが表7から証明される。さらに、実施例103および104の複合物の機械的特性は、7日間までの水中状態後であっても、変化しないで維持された。
【0060】
FTIR研究は、セルロース充填の熱可塑性複合物の押出し中に、E43の無水マレイン酸群と基本の反応性充填材(CaOまたはAl)との間の化学反応が発生することが確定された。
【0061】
本発明に固有である他の効果は、当業者に明白である。
【0062】
特定の特徴および下位の組合せが有用であり、他の特徴および下位の組合せに関係なく使用されることができると理解される。これは熟考されて、請求項の範囲内である。
【0063】
本発明の多くの可能な実施例が、本発明の範囲から逸脱せずになされてよいので、本願明細書において記載されるか、添付の図面に示される全ての事項は、例証するが限定的でなく解釈されることが理解される。
【0064】
この出願は、2003年7月11日に出願され、本明細書にその全体が参照として組み込まれる、米国特許出願第10/617,185の利益を主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオレフィンと、
(b)セルロース充填材と、
(c)15mgKOH/gより高い酸価を有するカルボン酸および/またはカルボン酸無水物グラフトポリオレフィンと、
(d)複合物の重量に基づいて5乃至25重量%の量で存在する基本の反応性充填材と、
からなる熱可塑性複合物。
【請求項2】
前記グラフトポリオレフィンの酸価は、35mgKOH/gより高いことを特徴とする請求項1に記載の複合物。
【請求項3】
前記グラフトポリオレフィンの酸価は、40mgKOH/gより高いことを特徴とする請求項1に記載の複合物。
【請求項4】
前記グラフトポリオレフィンの酸価は、40乃至50mgKOH/gより高いことを特徴とする請求項1に記載の複合物。
【請求項5】
前記グラフトポリオレフィンは、50,000g/mol未満の分子量を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項6】
前記グラフトポリオレフィンは、20,000g/mol未満の分子量を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項7】
前記グラフトポリオレフィンは、1000乃至10,000g/molの分子量を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項8】
前記グラフトポリオレフィンは、複合物の重量に基づいて5重量%までの量で存在することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項9】
前記グラフトポリオレフィンは、複合物の重量に基づいて1乃至3重量%の量で存在することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項10】
前記カルボン酸および/またはカルボン酸無水物グラフトポリオレフィンは、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項11】
前記基本の反応性充填材は、複合物の重量に基づいて8乃至20重量%の量で存在することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項12】
前記基本の反応性充填材は、CaO、MgO、Alおよびそれらの混成からなる群から選択されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項13】
前記ポリオレフィンは、複合物の重量に基づいて20乃至90重量%の量で存在することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項14】
前記ポリオレフィンはポリプロピレンまたはポリエチレンであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項15】
前記セルロース充填材は、複合物の重量に基づいて30乃至80重量%の量で存在することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項16】
前記セルロース充填材は、繊維質であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項17】
前記セルロース充填材は、木粉であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項18】
二次的な強化材、潤滑剤、衝撃改良剤、充填材、顔料、色素、抗酸化剤、安定剤、難燃剤、再燃焼助剤、結晶化助剤、アセトアルデヒド還元合成物、リサイクリングリリースエイド、酸素捕捉剤、可塑剤、柔軟剤、成核剤、発泡剤、離型剤、またはそれらの混成をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項19】
(a)ポリプロピレンと、
(b)セルロース充填材と、
(c)35mgKOH/gより高い酸価を有する無水マレイン酸グラフトポリプロピレンと、
(d)複合物の重量に基づいて8乃至20重量%の量で存在する基本の反応性充填材と、
からなる熱可塑性複合物。
【請求項20】
前記基本の反応性充填材は、CaO、MgO、Alおよびそれらの混成からなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の複合物。
【請求項21】
前記無水マレイン酸グラフトポリプロピレンは、20,000g/mol未満の分子量を有することを特徴とする請求項19または20に記載の複合物。
【請求項22】
前記無水マレイン酸グラフトポリプロピレンは、複合物の重量に基づいて1乃至3重量%の量で存在することを特徴とする請求項19乃至21のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項23】
ガラスファイバーをさらに含むことを特徴とする請求項19乃至22のいずれか一項に記載の複合物。

【公表番号】特表2007−505167(P2007−505167A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517919(P2006−517919)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000984
【国際公開番号】WO2005/005531
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500343625)ナショナル、リサーチ、カウンシル、オブ、カナダ (1)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL RESEARCH COUNCIL OF CANADA
【Fターム(参考)】