説明

セルロース分散液の製造方法

【課題】微細化処理された酸化セルロース繊維を含む、透明性の高い水分散液を得ることができる微細酸化セルロース繊維水分散液の製造方法の提供。
【解決手段】セルロース繊維を、該セルロース繊維(絶対乾燥基準)1gに対して、2.0mmol〜10mmolの酸化剤を用いて、酸化して、セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2.0mmol/gである酸化セルロース繊維を得る工程と、前記酸化セルロース繊維を機械的処理することで、平均繊維径が200nm以下の酸化セルロース繊維を得る工程を有する酸化セルロース繊維分散液の製造方法であって、前記機械的処理が、回転体を有する高速回転式分散機を用い、前記回転体の翼先端部の周速が15m/s以上で処理する、酸化セルロース繊維分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均繊維径が200nm以下の微細酸化セルロース繊維を含む、透明性の高い微細酸化セルロース繊維分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品、構造材料、化粧品、食品、ガスバリア材料等において、生分解性があり、微細なセルロース分散液を製造することが検討されている。
【0003】
特許文献1は、セルロース分散液の調製方法について記載されているが、セルロースのカルボキシル基含有量については記載されていない。また、超高圧ホモジナイザーと媒体ミルを併用することから、簡易的な製造方法とはいえない。
【0004】
特許文献2は、セルロースのカルボキシル基含有量については記載されていない。実質的にグラインダーと高圧ホモジナイザーを併用していることから、セルロース繊維の損傷が大きくなるものと考えられる。
【0005】
特許文献3は、セルロースのカルボキシル基含有量については記載されていない。高圧ホモジナイザーで処理を行っており、処理後の繊維幅は1μm以上となっている。
【0006】
特許文献4は、過ヨウ素酸又はその塩を用いて、セルロースにカルボキシル基を導入していることが記載されているが、実質グラインダーと高圧ホモジナイザーを用いていることから、セルロース繊維の損傷が大きくなるものと考えられ、処理後の数平均繊維長も0.05〜0.3mmとかなり大きい。
【0007】
非特許文献1は、水中で臭化物および2,2,6,6−テトラメチルヒ゜ヘ゜リシ゛ン−1−オキシラシ゛カルの存在下、酸化剤を用いて、セルロースの表面を酸化した後、Waring Blenderを用いて透明性の高い分散液が得られることが記載されているが、操作条件に関する記載が無く、0.1%分散液の光(λ:550nm)の透過率は、77%に留まっている。
【0008】
非特許文献2は、0.1%分散液の光透過率が90%以上を示すことが記載されているが、マグネットスターラーで10日間も攪拌していることから、非常に効率が悪い。
【特許文献1】特許3262917号公報
【特許文献2】特開2004−41119号公報
【特許文献3】特開2005−270891号公報
【特許文献4】特開2002−194691号公報
【非特許文献1】Bio MACROMOLECULES Volume7, Number6,2006年6月,Published by the American Chemical Society
【非特許文献2】Bio MACROMOLECULES Volume8, Number8,2007年8月,Published by the American Chemical Society
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、微細化処理された酸化セルロース繊維を含む、透明性の高い分散液を得ることができる、微細酸化セルロース繊維分散液の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、課題の解決手段として、下記の各発明を提供する。
【0011】
請求項1の発明は、セルロース繊維を、該セルロース繊維(絶対乾燥基準)1gに対して、2.0mmol〜10mmolの酸化剤を用いて、酸化して、セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2.0mmol/gである酸化セルロース繊維を得る工程と、
前記酸化セルロース繊維を機械的処理することで、平均繊維径が200nm以下の酸化セルロース繊維を得る工程を有する酸化セルロース繊維分散液の製造方法であって、
前記機械的処理が、回転体を有する高速回転式分散機を用い、前記回転体の翼先端部の周速が15m/s以上で処理する、酸化セルロース繊維分散液の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、微細な酸化セルロース繊維を含む、非常に透明度の高い水分散液を得ることができるほか、前記透明度を所望レベルに制御することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、微細酸化セルロース繊維分散液の本発明の製造方法を工程ごとに説明する。
【0014】
<酸化処理工程>
まず、酸化処理をする前の前処理工程として、原料となる天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して、約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理して、スラリーにする。
【0015】
原料となる天然セルロース繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、コットン、絹、羊毛、キチン、キトサン、アルギン酸、コラーゲン、再生セルロース、バクテリアセルロース等を用いることができる。
【0016】
次に、前記スラリー中のセルロース繊維を酸化して、セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2.0mmol/gである酸化セルロース繊維を得る。
【0017】
セルロース繊維を酸化する方法としては、例えば、触媒として2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)を使用し、更に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、臭化ナトリウム等の臭化物を併用して酸化する方法を適用できる。
【0018】
TEMPOの使用量は、原料として用いたセルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜8質量%、更に好ましくは、0.4〜5質量%である。0.1質量%以上であると酸化反応が円滑に進行し、10質量%以下であると、後工程における除去負担が軽減される。
【0019】
酸化剤としては、次亜ハロゲン酸又はその塩、亜ハロゲン酸又はその塩が使用できる。次亜ハロゲン酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウムが挙げられる。亜ハロゲン酸塩としては、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムが挙げられる。酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合、セルロース繊維に対して使用する割合を多くすると、カルボキシル基の導入量が多くなり、繊維間の静電反発力が強くなったり、直接繊維に化学的に作用したりすることにより、繊維の分散性が向上し、透明性が促進される。
【0020】
酸化剤の使用量は、原料として用いたセルロース繊維(絶対乾燥基準)1gに対して、2.0mmol〜10mmol、好ましくは2.3mmol〜9mmol、更に好ましくは2.5mmol〜8mmol、更に好ましくは3.0mmol〜7.5mmolである。2.0mmol以上であると酸化反応が円滑に進行し、透明な分散液を得ることができ、10mmol以下であると、後工程における除去負担が軽減される。
【0021】
臭化物としては、臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム等が挙げられ、臭化ナトリウムが好ましい。
【0022】
臭化物の使用量は、原料として用いたセルロース繊維(絶対乾燥基準)1gに対して、0.1mmol〜10mmol、好ましくは0.5mmol〜7mmol、更に好ましくは0.7mmol〜5mmolである。0.1mmol以上であると酸化反応が円滑に進行し、5mmol以下であると、後工程における除去負担が軽減される。
【0023】
pHは、酸化反応を効率良く進行させる点から9.0〜12.0の範囲が好ましい。更に好ましくは、pH9.5〜11.5である。
【0024】
酸化処理の温度(前記スラリーの温度)と時間は、1〜50℃で、1〜300分間が好ましい。
【0025】
本工程の処理が終了後、使用した触媒等を水洗等により除去し、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。
【0026】
本工程の処理により、セルロース構成単位のC6位を選択的にカルボキシル基に酸化することができ、セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2.0mmol/gにすることができる。前記含有量は、好ましくは0.4〜2.0mmol/g、より好ましくは0.5〜1.7mmol/g、更に好ましくは0.6〜1.7mmol/gにすることができる。前記のカルボキシル基含有量は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。なお、カルボキシル基含有量の下限値が0.1mmol/g未満であると、後述の繊維の微細化処理を行っても、セルロース繊維の平均繊維径が200nm以下とならず、固形分濃度0.1質量%の水分散液が透明にならない。更に、カルボキシル基含有量が前記範囲内であると、微細化処理による固形分濃度0.1質量%の水分散液の透明度(肉眼観察又は実施例に記載の透過率で評価される)を向上させることが容易になる。
【0027】
<機械的処理工程>
次に、前工程で得られた酸化セルロース繊維を機械的処理で平均繊維径が200nm以下にまで微細化する。本工程における機械的処理としては、次の方法を適用することができる。なお、酸化セルロース繊維は、固形分濃度0.01〜10質量%の水分散液、好ましくは0.05〜5質量%の水分散液にした後、機械的処理することが好ましい。
【0028】
機械的処理として、攪拌手段となる1又は2以上の回転体を有する高速回転式分散機を用い、前記回転体の翼先端部の周速(以下「周速」という)が15m/s以上で処理する方法である。周速は15m/s以上であり、20m/s以上がより好ましく、22m/s以上が特に好ましい。周速の上限は特に存在しないが、経済性や分散機の機械強度から100m/s以下が好ましい。
【0029】
処理時間は前記周速、処理槽の容量、1回の処理量等との関連において適宜設定することができる。例えば、回転体の周速が20m/s、処理槽の容量が1Lで、固形分濃度1質量%の水分散液500gを使用したとき、処理時間は1〜120分程度である。
【0030】
高速回転式分散機は、高速で回転する回転体近傍に生じるせん断力、衝撃力、キャビテーションにより、微細化するものである。回転体は、各種形状の攪拌羽根、槽自体が回転するもの等の公知のものである。
【0031】
高速回転式分散機は、回転体と固定部の間の空隙に処理対象となる酸化セルロース繊維を通過させて分散させるタイプのもの、一定方向に回転する内側回転体と内側回転体の外側を逆に回転する外側回転体とを有し、内側回転体と外側回転体の間の空隙に処理対象となる酸化セルロース繊維を通過させて分散させるタイプのものが好ましい。高速回転式分散機としては例えば、エム・テクニック社のクレアミックス、大平洋機工(株)のマイルダー、プライミクス(株)のTKロボミックス、大平洋機工(株)製の櫛歯型高速回転式分散機(キャビトロン)、大平洋機工(株)の高速回転式分散機(シャープフローミル)、プライミクス(株)製の薄膜旋回型高速回転式分散機(フィルミックス等を挙げることができる。
【0032】
このように高速回転させながら狭い空隙を通すことにより、高いせん断速度(単位s−1)を発生させることができるため、単に高速回転させた場合と比べて(即ち、家庭用のジューサーミキサーのように、上記空隙が大きくせん断速度が低い機械的手段を使用した場合と比べて)微細化処理が効果的に行える。上記空隙の大きさは5mm以下が好ましく、より好ましくは3mm以下、更に好ましくは2mm以下である。
【0033】
なお、高速回転式分散機で1回処理したものを再度処理することもでき、本発明では、1回処理することを1パス、1回処理した後、2回目の処理することを2パス、同様にして3回処理することを3パスと称する。パス回数は生産性の観点から1〜20パスが好ましく、1〜10パスがより好ましい。
【0034】
機械的処理工程における機械的処理として、媒体攪拌式分散機(メディアミル)を適用することもできる。メディアミルは、ミル内に充填したメディアを攪拌等により、流動させて処理液の分散を行う方法であり、例えば、次の各処理方法を適用できる。
【0035】
処理方法としては、
(i)メディアが充填されたミル内に処理液を注入した後、所定の時間処理し、処理液を抜き出すバッチ処理方法、
(ii)メディアが充填されたミル内を攪拌機で攪拌した状態で、別の槽内にある被処理液をポンプ等により連続的にミル内へ供給し、分散された処理液をもとの槽内に戻す循環方式方法、
(iii)処理液の全てを別の槽で受けるパス方式等による分散処理方法が挙げられる。分散処理時の分散速度は、メディアの粒径や充填率、メディアミルの攪拌周速、供給速度等によって調節することができる。
【0036】
メディアミルとしては、ビーズミル、サンドミル、ボールミル等が挙げられ、具体的には、ビスコミル(アイメックス(株)社製)、タワーミル、DCPスーパーフロー、コスモ(日本アイリッヒ(株)社製)、スターミル(アシザワ・ファインテック(株)社製)、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業(株)社製)、ピコミル(浅田鉄工(株)社製)、SCミル、MSCミル、アトライタ(三井鉱山(株)社製)等の公知のメディアミルが挙げられる。
【0037】
メディアの材質としては、スチール、クロム合金等の高硬度金属、アルミナ、ジルコニア、ジルコン、チタニア等の高硬度セラミックス、ガラス、超高分子量ポリエチレン、ナイロン等の高分子材料等が挙げられる。
【0038】
本発明の製造方法で得られる微細酸化セルロース繊維は、水分散液の透明度を高くする観点から、平均繊維径が200nm以下のものであり、好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜100nm、更に好ましくは1〜50nmのものである。平均繊維径は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。
【0039】
本発明の製造方法で得られる微細酸化セルロース繊維は、水分散液の透明度を高くする観点から、平均繊維長が40μm以下であるものが好ましい。
【0040】
本発明の製造方法で得られる微細酸化セルロース繊維は、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が10〜5,000のものが好ましく、より好ましくは10〜2,000、更に好ましくは10〜1,000、また更に好ましくは10〜500のものである。
【0041】
本発明の製造方法で得られる水分散液は、透明度が高く、実施例に記載の方法で測定した透過率を80%以上にすることができ、好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上にすることができる。
【0042】
前記透明度は、酸化処理と機械的処理における条件を適宜選択することにより、所望レベルに制御することができる。例えば、酸化処理において、酸化条件を選択することにより、セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量をより好ましい範囲になるようにして、機械的処理において、本発明の方法では周速、処理時間、処理量、パス回数を最適に設定することにより、透過率を最大限高めることができる。そして、前記酸化処理と前記機械的処理条件を緩和して行くことにより、透過率を最大値から所望レベルまで低下させることができる。
【0043】
本発明の製造方法により得られた微細化酸化セルロース繊維を含有する水分散液は、必要に応じて、使用した触媒等を水洗等により除去し、懸濁液状(目視的に無色透明又は不透明な液)又は必要に応じて乾燥処理した粉末状(但し、繊維状であり、粒を意味するものではない)にすることができる。なお、懸濁液にするときは、水のみを使用したものでもよいし、水と他の有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)や界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用したものでもよい。
【0044】
本発明の製造方法により得られた微細化酸化セルロース繊維を含有する水分散液は、例えば、酸素バリア膜や水蒸気バリア膜の製造材料として使用することができる。
【実施例】
【0045】
表1に示す各項目の測定方法は、次のとおりである。
【0046】
(1)平均繊維径
前処理として、サンプル分散液を、セルロース0.01〜0.005%にイオン交換水で希釈した。次に、マイカの壁開面に一滴滴下後、エアー等で水滴を吹き飛ばし、自然乾燥させた。測定は、原子間力顕微鏡(Veeco Dimension 3000 Tapping mode)によって撮影されたセルロース繊維の画像にて行った。繊維径は10点以上抽出し、各繊維の横断面の高さプロファイルから計測し、その平均値とした。
【0047】
(2)カルボキシル基含有量(mmol/g)
絶乾パルプ約0.5gを100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて0.83質量%パルプ懸濁液とし、パルプが十分に分散するまでスターラーにて攪拌した。そして、0.1M塩酸を加えてpH2.5〜3.0としてから、自動滴定装置(AUT−501、東亜デイーケーケー(株)製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で注入し、パルプ懸濁液の1分ごとの電導度とpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続けた。そして、得られた電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、カルボキシル基含有量を算出した。
【0048】
(3)透過率(%)
得られたセルロースの水分散液を純水で希釈し、0.1質量%の水分散液を得る。得られた分散液を測定用セルに入れ、分光光度計(UVmini1240,島津製作所製)により、光波長550nmにおける透過率を測定した。
【0049】
実施例1
セルロース繊維原料として、針葉樹の漂白クラフトパルプ(製造会社:フレッチャー チャレンジ カナダ、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を用いた。
【0050】
<前処理工程>
まず、上記の針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維3gを297gのイオン交換水で十分攪拌し、ある程度解繊した。
【0051】
<酸化処理工程>
その後、パルプ質量3gに対し、TEMPO(製造会社:ALDRICH、Free radical 98質量%)が1.25質量%となる量、次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業(株),Cl濃度5質量%)2.5mmol/g−ハ゜ルフ゜、臭化ナトリウム(和光純薬工業(株))3.6mmol/g−ハ゜ルフ゜をこの順で添加した。その後、pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムにて滴下を行い、pHを10.5、温度25℃に保持し、60分間酸化反応を行い、酸化パルプを得た。前記酸化パルプをイオン交換水にて十分洗浄し、脱水処理を行った。
【0052】
<機械的処理工程>
次に、得られた酸化パルプの固形分濃度を0.5質量%に調整した水分散液600gを用い、高速回転式分散機(クレアミックス、型番:CLM−1.5S、エム・テクニック社製、回転数17500rpm、回転翼周速26m/s、処理槽の容量1L、回転体と固定部の間の空隙は0.2mm)にて処理した。60分処理した水分散液の透過率は92%であった。また、平均繊維径は2.7nmであった。なお、機械的処理工程前の水分散液の透過率は60%であった。
【0053】
実施例2
次亜塩素酸ナトリウム濃度を表1に示す濃度としたほかは、実施例1と同様にして、酸化パルプを得た。次に、得られた酸化パルプの固形分濃度を0.5質量%に調整した水分散液2500gを用い、高速回転式分散機(マイルダー、型番:MDN303V、大平洋機工(株)製,回転数15000rpm、回転翼周速24m/s、処理槽の容量4L、回転体と固定部の間の空隙は0.5mm)により、処理した。10分処理した水分散液の透過率は81%であった。また、平均繊維径は2.9nmであった。
【0054】
実施例3
高速回転式分散機による処理時間を60分としたほかは実施例2と同様にして製造した。水分散液の透過率は91%であった。また、平均繊維径は2.6nmであった。
【0055】
実施例4
次亜塩素酸ナトリウム濃度を表1に示す濃度としたほかは、実施例1と同様にして、酸化パルプを得た。次に、得られた酸化パルプの固形分濃度を0.5質量%に調整した水分散液5000gを用い、櫛歯型高速回転式分散機(キャビトロン,大平洋機工(株)製,回転数11200rpm、回転翼周速40m/s,処理槽の容量20L)により、処理した。10パス処理を行った水分散液の透過率は98%であった。また、平均繊維径は3.5nmであった。
【0056】
実施例5
次亜塩素酸ナトリウム濃度を表1に示す濃度としたほかは、実施例1と同様にして、酸化パルプを得た。次に、得られた酸化パルプの固形分濃度を1.0質量%に調整した水分散液3000gを用い、高速回転式分散機(シャープフローミル,大平洋機工(株)製,回転数10000rpm、回転翼周速68m/s,処理槽の容量5L)により、処理した。1パス処理した水分散液の透過率は98%であった。また、平均繊維径は4.8nmであった。
【0057】
実施例6
次亜塩素酸ナトリウム濃度を表1に示す濃度としたほかは、実施例1と同様にして、酸化パルプを得た。次に、得られた酸化パルプの固形分濃度を0.5質量%に調整した水分散液250gを用い、薄膜旋回型高速回転式分散機(フィルミックス,プライミクス(株)製,回転数12500rpm、回転翼周速50m/s,処理槽の容量0.6L)により、処理した。3分処理した水分散液の透過率は98%であった。また、平均繊維径は6.2nmであった。
【0058】
実施例7
酸化処理工程にて、次亜塩素酸ナトリウム濃度を3.8mmol/g−ハ゜ルフ゜としたほかは、実施例1と同様にして、酸化パルプを得た(カルボキシ基量1.51mmol/g)。
【0059】
次に、機械的処理工程にて、得られた酸化パルプの固形分濃度を0.5質量%に調整した水分散液3000gを用い、媒体攪拌型分散機(SCミル,三井鉱山(株)製,回転数rpm、回転翼周速13m/s,使用したビーズ:800μmφジルコニアビーズ、処理槽の容量5L)により、処理した。10分処理した水分散液の透過率は88%であった。また、平均繊維径は4.7nmであった。
【0060】
比較例1
実施例1において、高速回転式分散機(TKロボミックス、プライミクス(株)製、回転数10000rpm、翼周速13m/s)で、30分処理したほかは実施例1と同様に製造した。処理後の水分散液の透過率は68%であった。また、平均繊維径は3.6nmであった。
【0061】
比較例2
比較例1において、120分処理を行ったほかは同様にして製造した。処理後の水分散液の透過率は76%であった。また、平均繊維径は3.4nmであった。
【0062】
比較例3
実施例1において酸化反応を行わない濃度0.25質量%のパルプスラリーを調製したほかは実施例1と同様にして製造した。処理後の水分散液の透過率は31%であった。平均繊維径は非常に大きいため、光学顕微鏡観察により行った。平均繊維径は、20μmであった。
【0063】
比較例4
実施例1において酸化反応を行わない濃度0.25質量%のパルプスラリーを調製した後、高圧式分散機(ナノマイザー、型番:YSNM−1500AR、吉田機械工業(株)製)にて、圧力50MPaで処理をしようとしたが、詰まってしまい処理ができなかった。
【0064】
比較例5
次亜塩素酸ナトリウム濃度を表1に示す濃度としたほかは、実施例1と同様にして、酸化パルプを得た。次に、得られた酸化パルプの固形分濃度を0.5質量%に調整した水分散液5000gを用い、櫛歯型高速回転式分散機(キャビトロン,大平洋機工(株)製,回転数11200rpm、回転翼周速40m/s,処理槽の容量20L)により、処理した。10パス処理を行った水分散液の透過率は52%であった。また、平均繊維径は4.0nmであった。
【0065】
比較例6
次亜塩素酸ナトリウム濃度を表1に示す濃度としたほかは、実施例1と同様にして、酸化パルプを得た。次に、得られた酸化パルプの固形分濃度を1.0質量%に調整した水分散液3000gを用い、高速回転式分散機(シャープフローミル,大平洋機工(株)製,回転数10000rpm、回転翼周速68m/s,処理槽の容量5L)により、処理した。1パス処理した水分散液の透過率は40%であった。また、平均繊維径は5.2nmであった。
【0066】
比較例7
次亜塩素酸ナトリウム濃度を表1に示す濃度としたほかは、実施例1と同様にして、酸化パルプを得た。次に、得られた酸化パルプの固形分濃度を0.5質量%に調整した水分散液250gを用い、薄膜旋回型高速回転式分散機(フィルミックス,プライミクス(株)製,回転数12500rpm、回転翼周速50m/s,処理槽の容量0.6L)により、処理した。3分処理した水分散液の透過率は38%であった。また、平均繊維径は6.8nmであった。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を、該セルロース繊維(絶対乾燥基準)1gに対して、2.0mmol〜10mmolの酸化剤を用いて、酸化して、セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2.0mmol/gである酸化セルロース繊維を得る工程と、
前記酸化セルロース繊維を機械的処理することで、平均繊維径が200nm以下の酸化セルロース繊維を得る工程を有する酸化セルロース繊維分散液の製造方法であって、
前記機械的処理が、回転体を有する高速回転式分散機を用い、前記回転体の翼先端部の周速が15m/s以上で処理する、酸化セルロース繊維分散液の製造方法。

【公開番号】特開2009−161723(P2009−161723A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89361(P2008−89361)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】