説明

セルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維

【課題】
本発明は、アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルをブレンドすることで、高伸度かつ高収縮率を有する繊維を提供するものである。
【解決手段】
アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルからなるブレンド繊維であって、該ブレンド繊維の伸度が55.0〜100.0%であり、沸騰水収縮率が5.0〜20.0%であることを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高伸度を有し、かつ熱水における収縮率が高いセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維に関するものである。更に詳しくは、アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルが特定比率でブレンドされてなる、高伸度かつ高収縮率を有するセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース系のフィラメントとしてはビスコース、キュプラなどの再生セルロース繊維、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート繊維が知られている。これらの繊維はセルロース由来であることによって、良好な光沢、発色性や吸放湿性など衣料用繊維として非常に良好な特性を有しているが、繊維の伸度はたかだか30%程度であるため、延伸工程や仮撚工程等の付加価値を付与する後工程に制約を受けるといった問題があった。更には熱水中での繊維の収縮率が低いため、前記繊維からなる布帛に対して熱水処理を行っても繊維が十分に収縮せず、布帛にふくらみ感などの表面変化を発現させることが困難であった。
【0003】
高伸度のセルロース系繊維を得る方法として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1では、伸度を向上させたセルローストリアセテート繊維が記載されている。ここでは、セルローストリアセテートを芯に配し、セルロースジアセテートを鞘に配した芯鞘型複合繊維の鞘部を溶解あるいは除去して、高伸度のセルローストリアセテート繊維を得ている。しかしながら得られる繊維は確かに高伸度ではあるものの、熱水中での収縮率は小さいままであり、高伸度化および高収縮率化を両立しているものではなかった。
【0004】
高収縮率のセルロース系繊維を得る方法として、例えば特許文献2〜3が知られている。
【0005】
特許文献2では、繊維として良好な機械的特性を有するセルロース脂肪酸混合エステル繊維の提案がなされており、溶融紡糸の際、特定の紡糸条件を採用することにより、高収縮率を有する繊維が提案されている。しかしながら該文献では、熱水中における収縮率は高いものの、得られる繊維の伸度は50%以下であり、50%よりも高い伸度を有する繊維は得られていない。
【0006】
一方、特許文献3では、高い収縮率を有するセルロース脂肪酸混合エステル繊維が提案されている。該文献では、セルロース脂肪酸混合エステルを延伸したり、あるいはセルロース脂肪酸混合エステルにマレイミド系化合物を添加することで高収縮率化を達成しているものの、該繊維の伸度は35%以下であり、高伸度化は達成できていない。
このように高伸度化および高収縮率化の両方が可能なセルロース脂肪酸混合エステル繊維はこれまで得られていなかった。
【特許文献1】特開平9−132821号公報
【特許文献2】特開2004−211278号公報
【特許文献3】特開2006−241664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決しようとするものであり、延伸や仮撚などの後工程に供することができ、また布帛に表面変化を与えることができる、高伸度かつ高収縮率を有するセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記した課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルを特定比率でブレンドした組成物を繊維化することで、高伸度かつ高収縮率を有する繊維を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の構成を要旨とするものである。
【0010】
本発明の第1の発明は、アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルを少なくとも含むブレンド繊維であって、該ブレンド繊維の伸度が55.0〜100.0%であり、沸騰水収縮率が5.0〜20.0%であることを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維である。
【0011】
第2の発明は、アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルが、アセチル基平均置換度が0.1〜0.5のセルロースアセテートプロピオネート(A)とアセチル基の平均置換度が1.5〜2.5のセルロースアセテートプロピオネート(B)であることを特徴とする上記第1の発明に記載のセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維である。
【0012】
第3の発明は、アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロースアセテートプロピオネート(A)および(B)のブレンド比率(重量%)が(A)/(B)=70/30〜98/2であることを特徴とする上記第2の発明に記載のセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定のアセチル基の平均置換度を有する2種のセルロース脂肪酸混合エステルを特定比率でブレンドすることにより、高伸度かつ高収縮率を有するセルロース脂肪酸混合エステル繊維を得ることができる。該繊維は高伸度であるため、延伸や仮撚等の付加価値を付与する後工程に供することができ、さらには製糸の際、毛羽の発生を抑制することができる。また高収縮率であるため、該繊維を用いた布帛に収縮処理を施すことで布帛表面に変化を与えることが可能となり、衣料用繊維として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維について詳細に説明する。
【0015】
本発明のセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維は、アセチル基の平均置換度の異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルからなるブレンド繊維であり、該ブレンド繊維の伸度が55.0〜100.0%であり、かつ沸騰水収縮率が5.0〜20.0%である。
【0016】
本発明で用いるセルロース脂肪酸混合エステルとは、セルロースのグルコースユニットに存在する3つの水酸基が2種類以上のアシル基により封鎖されたものをいう。セルロース脂肪酸混合エステルの具体例としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートオレートなどが挙げられ、なかでも熱可塑性、溶融流動性、製糸操業性、コスト面等の観点からセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
【0017】
アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルとは、一つがアセチル基の平均置換度が0.1〜0.5のセルロースアセテートプロピオネート(A)であり、もう一つがアセチル基の平均置換度が1.5〜2.5のセルロースアセテートプロピオネート(B)であることが好ましい。
【0018】
セルロースアセテートプロピオネート(A)および(B)の平均置換度を上記範囲内とすることで、溶融流動性、溶融時の耐熱分解性が良好となり、また2種のセルロースアセテートプロピオネートの溶融粘度差により、得られる繊維の高伸度化および沸騰水における高収縮率化ができるため好ましい。
【0019】
なお平均置換度とはセルロースのグルコース単位あたりに存在する3つの水酸基のうちアシル基が化学的に結合した数を指す。
【0020】
また、アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロースアセテートプロピオネート(A)および(B)のブレンド比率(重量%)は(A)/(B)=70/30〜98/2であることが好ましい。ブレンド比率(A)/(B)をこの範囲とすることで、紡糸して得られる繊維の伸度が特異的に高くなり延伸や仮撚等の付加価値を付与する後工程に供することが可能となり、さらには製糸の際、毛羽の発生を抑制することができる。また沸騰水中での収縮率が特異的に高くなるため、布帛に表面変化を与えることが可能となる。
【0021】
本発明で用いるセルロース脂肪酸混合エステルは可塑剤を含有していても良い。可塑剤は特に限定されるものではなく、例えばポリアルキレングリコール系化合物、グリセリン系化合物、カプロラクトン系化合物などが挙げられるが、特にセルロース脂肪酸混合エステルとの相溶性が良好であり、溶融紡糸の可能な熱可塑化効果が顕著に現れるポリアルキレングリコール系化合物が好ましい。ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、重量平均分子量が200〜4000であるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
【0022】
また製糸操業性および得られる繊維の機械的特性の観点から、可塑剤の含有量は、5.0〜25.0重量%であることが好ましく、8.0〜22.0重量%がより好ましく、10.0〜20.0重量%がさらに好ましい。
【0023】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルは、リン系酸化防止剤を含有していることが好ましく、特にペンタエリスリトール系化合物が好ましい。リン系酸化防止剤を含有している場合、紡糸温度が高い範囲および低吐出領域においてもセルロース脂肪酸混合エステルの熱分解防止効果が非常に顕著であり、繊維の機械的特性の悪化が抑制され、得られる繊維の色調が良好になる。リン系酸化防止剤の配合量は、溶融紡糸組成物に対して0.005重量%〜0.500重量%であることが好ましい。
【0024】
セルロース脂肪酸混合エステルの重量平均分子量は、機械的特性、製糸操業性、ポリマーの耐熱分解性の観点から5.0万〜30.0万であることが好ましく、8.0万〜27.0万であることがより好ましく、10.0万〜25.0万であることが更に好ましい。
【0025】
アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルをブレンドすることで、得られる繊維の伸度を55.0〜100.0%とすることができ、また繊維の沸騰水収縮率を5.0〜20.0%とすることができる。前記繊維特性を満足することで、紡糸工程での毛羽数を抑制でき、また紡糸工程以降の取扱性の向上や後加工に供することが可能となり、かつ布帛とした場合に布帛表面に変化を与えることができる。
【0026】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維の伸度は55.0〜100.0%である。伸度55.0%以上とすることで、紡糸の際、毛羽の発生を抑制することができ、また紡糸工程以降の工程通過性が向上し、延伸工程や仮撚工程等の付加価値を付与する後工程への制限がなくなる。更には他繊維との複合化を容易にできる。なお伸度の上限値は100.0%であり、現行技術では100.0%より高くすることは困難である。伸度は60.0%以上であることがより好ましく、65.0%以上であることが更に好ましい。
【0027】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維の沸騰水収縮率は5.0〜20.0%である。沸騰水収縮率を5.0%以上とすることで、該繊維からなる布帛に対して熱水処理を行うことで繊維が十分に収縮し、布帛に対して優れたふくらみ感などの表面変化を与えることができる。沸騰水収縮率は6%以上であることがより好ましく、7.0%以上であることが更に好ましい。なお沸騰水収縮率の上限値は20.0%であり、20.0%を超えると、繊維の過度の収縮により布帛の硬化などが生じてしまうため好ましくない。
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維の引張強度は0.50cN/dtex以上であることが好ましい。引張強度が0.50cN/dtex以上であれば、製織や製編時など高次加工工程の通過性や取扱性が良好となる。良好な強度特性の観点から、強度は高ければ高いほど好ましいが、0.60cN/dtex以上であることがより好ましい。
【0028】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維の初期引張抵抗度は10.0〜25.0cN/dtexであることが好ましい。初期引張抵抗度が15.0cN/dtex未満では、ソフト感には優れるものの、繊維の強度が低く、また低応力で変形してしまうため加工工程における通過性が悪くなったり、実用上の問題が発生してしまう。一方、25.0cN/dtex以上では繊維の曲げ剛性が大きくなり、ソフト感に欠ける風合いとなる。
【0029】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維の交絡数は、1mあたり5〜50個であることが好ましい。1mあたり5個以上とすることで、繊維の収束性が良好であるため、後工程における繊維の解舒不良や製織時に糸条が割れて単繊維に分かれることによる、単糸切れを誘発することがなくなり、得られる織物や編物も毛羽やフィブリルの発生がないため高品位のものとなる。また1mあたり50個以下とすることで、ブレンド繊維の良好な光沢感が失われない。
【0030】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維の繊度変動値(U%)は1.5%以下であることが好ましい。繊度変動値(U%)は繊維長手方向における太さ斑の指標であり、ツェルベガーウースター社製ウースターテスターにより求めることができる。繊度変動値(U%)が1.5%以下であれば、繊維長手方向の均一性が優れていることを指し、織編物に加工する際、毛羽や糸切れが発生しにくく、また染色を行っても、部分的に強い染め斑、染め筋などの欠点が発生せず、高品位な織編物となる。繊度変動値(U%)は小さい程よく、より好ましくは1.3%以下、更に好ましくは1.0%以下である。なお繊度変動値(U%)の測定条件に関しては、実施例にて詳細に説明する。
【0031】
本発明のセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維において、単糸断面形形状に関しては特に限定されるものではなく、例えば円形や楕円形、三角や四角等の多角形、扁平や中空等の異型断面形状などを採用することができる。
【0032】
繊度についても特に制限はなく、必要特性に応じて任意に設定することが出来る。また、繊維の形態についても、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープル等のいずれの形態でも良い。
【0033】
本発明において、セルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維を溶融成形した後、温水、熱水等の水処理や有機溶剤等を用いた薬液処理でセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維に含有されている可塑剤を溶出させても良い。
【0034】
最終製品におけるセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維に含まれる可塑剤含有量は0〜25.0重量%であることが好ましい。可塑剤の含有量がこの範囲にある場合、最終製品の強力が不足することがなくなり製品耐久性が向上し、また熱軟化温度も高くなり製品の取扱性が向上する。
【0035】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維には、その物性を損なわない範囲で艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、着色防止剤、着色顔料、染料、制電剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有することができる。
【0036】
本発明のセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば以下のような方法を採用することができる。
【0037】
すなわち、アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルペレット(A)、(B)を真空乾燥した後、ブレンドし、ブレンドしたペレットをエクストルーダーにより溶融し、計量ポンプで計量後、紡糸ブロックに内蔵された紡糸パックに送り、パック内でポリマーを濾過した後、紡糸口金より吐出して糸条とする。
【0038】
紡出された糸条は冷却装置によって一旦冷却・固化した後、給油装置で油剤を付与し、ゴデットローラーで引き取り、交絡装置で交絡を与えた後、ゴデットローラーを介して、巻取機で巻き取って、巻取糸を得る。
【0039】
なお製糸安定性、機械的特性を向上させるために必要に応じて紡糸口金下に2〜20cmの加熱筒や保温筒を設置しても良い。
【0040】
なお溶融紡糸には、原料となるセルロース脂肪酸混合エステルペレットを溶融紡糸前にエクストルーダー等で溶融混練しブレンドペレットとしたものを用いても良いし、またあらかじめ2種のペレットをブレンダー等でブレンドしたものを用いても良い。あるいは溶融紡糸の際に、各々のペレットをフィーダーで計量しながらエクストルーダ内で溶融混練させても良い。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
【0042】
A.セルロース脂肪酸混合エステルの平均置換度
80℃で8時間の乾燥を行ったセルロース脂肪酸混合エステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
【0043】
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace)]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の平均置換度
DSacy:アシル基の平均置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
B.セルロース脂肪酸混合エステルの重量平均分子量測定
試料をテトラヒドロフランに完全溶解させ、これを用いてWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー2690を用い、ポリスチレン換算で重量平均分子量を算出した。
【0044】
C.引張強度、伸度、初期引張抵抗度
温度20℃、湿度65%の環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS形を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力(cN)を初期繊度(dtex)で除した値を引張強度(cN/dtex)とした。またそのときの伸度を伸度(%)とした。なお測定回数は5回とし、その平均値を引張強度、伸度とした。また初期引張抵抗度は、JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.10(初期引張抵抗度)に基づいて算出した。
【0045】
D.沸騰水収縮率
試料をかせ取りし、0.09cN/dtexの荷重下で試料長L0を測定した後、無荷重の状態で15分間、熱水中(98℃)で処理を行う。処理後、風乾し0.09cN/dtexの荷重下で試料長L1を測定し、下式を用いて算出した。なお測定回数は5回であり、その平均値を沸騰水収縮率とした。
【0046】
沸騰水収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
E.交絡数
交絡数は、JIS1013:1999.8.15に記載の方法により測定を行った。なお測定回数は30回であり、その平均値を交絡数とした。
【0047】
F.繊度変動値(U%)
U%測定(ハーフモード)は、ツェルベガーウースター社製ウースターテスター4−CXにより、下記条件にて測定して求めた。なお測定回数は5回であり、その平均値をU%とした。
【0048】
測定速度 :200m/分
測定時間 :2.5分
測定繊維長:500m
撚り :S撚り、12000/m
G.毛羽数評価
東レ社製FRAY COUNTER(MODEL DT−104)を用いて、糸長10万mで評価を行い、毛羽数に応じて下記基準で評価し、○を合格とした。
【0049】
○:毛羽数0〜2個/10万m
△:毛羽数3〜5個/10万m
×:毛羽数6個以上/10万m
H.布帛の表面評価
セルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維を経糸および緯糸に用いてエアージェットルームにより経糸密度120本/2.54cm、緯糸密度95本/2.54cmのタフタ織物を製織した。その後、70℃で15分間精練処理した後、染色条件に相当する98℃で60分間の熱水処理を行った。乾燥後、下記基準で布帛の表面変化を評価し、◎および○を合格とした。
【0050】
◎:膨らみ感が非常に優れている。
【0051】
○:膨らみ感が優れている
×:膨らみ感が劣る(表面変化がない、あるいはほとんどない)。
【0052】
I.布帛のソフト性評価
タフタ織物をパネラー10名で官能評価を実施し、下記の基準で評価し、○を合格とした。
【0053】
○:9名以上がソフト感に優れていると判定
△:7〜8名がソフト感に優れていると判定
×:6名以下がソフト感に優れていると判定
製造例1
イーストマンケミカル社製セルロースアセテートプロピオネート(CAP482−20、アセチル基平均置換度0.2、プロピオニル基平均置換度2.5)93重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)7重量%を二軸エクストルーダーを用いて215℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレット(Mw18.0万)を得た。
【0054】
製造例2
セルロース(コットンリンター)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネート(CAP)のアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.9、0.7であった。
【0055】
このCAP80重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)19.8重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.2重量%を二軸エクストルーダーを用いて240℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレット(Mw16.1万)を得た。
【0056】
実施例1
製造例1で得たセルロースアセテートプロピオネート(A)/ポリエチレングリコール組成物と製造例2で得たセルロースアセテートプロピオネート(B)/ポリエチレングリコール組成物を各々80℃で真空乾燥し、セルロースアセテートプロピオネート(A)/(B)のブレンド比率(ポリエチレングリコールを除いたセルロースアセテートプロピオネートの純分)が75/25となるように二軸エクストルーダーに供給し溶融させ、紡糸温度260℃で紡糸口金(吐出孔直径0.2mm、丸断面)より吐出させた。この紡出糸条を風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(速度1000m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。なお第1ゴデットローラーと第2ゴデットローラー間で圧空圧0.2MPaの条件で交絡処理を行った。
【0057】
得られた繊維の物性は表1の通りであり、伸度は57.5%、沸騰水収縮率は8.6%であり、高伸度および高収縮率のものであった。また毛羽数は10万mあたり2個であり、品質の優れたものであった。
【0058】
このブレンド繊維(100デシテックス−36フィラメント)を経糸および緯糸に用いてエアージェットルームにより経糸密度120本/2.54cm、緯糸密度95本/2.54cmのタフタ織物を作成した。その後、70℃で15分間精練処理した後、98℃で60分間の熱水処理を行った。処理後の布帛の膨らみは非常に優れており、またソフト性に優れていた。
【0059】
実施例2〜3
セルロースアセテートプロピオネート(A)/(B)のブレンド比率(ポリエチレングリコールを除いたセルロースアセテートプロピオネートの純分)を表1のように変更する以外は実施例1と同様に紡糸を行った。
【0060】
実施例2で得られた繊維の伸度および沸騰水収縮率は、各々80.1%、10.5%であり、高伸度、高収縮の繊維であった。また毛羽数は10万mあたり0個であり、品質の優れたものであった。
【0061】
実施例3で得られた繊維の伸度および沸騰水収縮率は、各々56.4%、8.8%であり、高伸度および高収縮の繊維であった。また毛羽数は10万mあたり2個であり、品質の優れたものであった。
【0062】
このブレンド繊維を用い、実施例1と同様にタフタ織物を作成し、精練、熱水処理を行ったところ、実施例2および3ともに、熱水処理後の布帛の膨らみは非常に優れており、またソフト性に優れていた。
【0063】
製造例3
セルロース(コットンリンター)100重量部に、酢酸303重量部とプロピオン酸68重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸106重量部と無水プロピオン酸247重量部をエステル化剤として、硫酸3.5重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸300重量部と水100重量部を加えて、60℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、酢酸マグネシウム6重量部を含む水溶液を加えて、系内の硫酸を中和した。析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネート(CAP)のアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々2.2、0.7であった。
【0064】
このCAP80重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.9重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて240℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw17.9万)を得た。
【0065】
実施例4
製造例1で得たセルロースアセテートプロピオネート(A)/ポリエチレングリコール組成物と製造例3で得たセルロースアセテートプロピオネート(B)/ポリエチレングリコール組成物を各々80℃で真空乾燥し、セルロースアセテートプロピオネート(A)/(B)のブレンド比率(ポリエチレングリコールを除いたセルロースアセテートプロピオネートの純分)が80/20となるように二軸エクストルーダーに供給し溶融させ、紡糸温度265℃で紡糸口金(吐出孔直径0.2mm、丸断面)より吐出させた。この紡出糸条を風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(速度1000m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。なお第1ゴデットローラーと第2ゴデットローラー間で圧空圧0.2MPaの条件で交絡処理を行った。得られた繊維の物性は表1の通りであり、伸度は64.7%、沸騰水収縮率は9.0%であり、高伸度および高収縮であった。また毛羽数は10万mあたり1個であり、品質の優れたものであった。
【0066】
このブレンド繊維(100デシテックス−36フィラメント)を実施例1と同様にタフタ織物を作成し、精練、熱水処理を行ったところ、熱水処理後の織物の膨らみは非常に優れており、またソフト性に優れていた。
【0067】
製造例4
セルロース(コットンリンター)に、酢酸/酪酸を加え、50℃で30分間混合した。この混合物を室温まで冷却し、氷浴中で冷却した無水酢酸と無水酪酸をエステル化剤として、硫酸をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸/水混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸/水混合溶液を加えて、60℃で1.5時間加熱撹拌した。反応終了後、酢酸マグネシウムを含む水溶液を加えて、系内の硫酸を中和した。析出したセルロースアセテートブチレートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートブチレート(CAB)のアセチル基およびブチリル基の平均置換度は各々0.1、2.6であった。
【0068】
このCAB75重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)24.9重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて200℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw25.4万)を得た。
【0069】
製造例5
セルロース(コットンリンター)に、酢酸/プロピオン酸を加え、50℃で30分間混合した。この混合物を室温まで冷却し、氷浴中で冷却した無水酢酸と無水プロピオン酸をエステル化剤として、硫酸をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸/水混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸/水混合溶液を加えて、60℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、酢酸マグネシウムを含む水溶液を加えて、系内の硫酸を中和した。析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネート(CAP)のアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々2.4、0.3であった。
【0070】
このCAP78重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)21.9重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw9.2万)を得た。
【0071】
実施例5
製造例4で得たセルロースアセテートブチレート(A)/ポリエチレングリコール組成物と製造例5で得たセルロースアセテートプロピオネート(B)/ポリエチレングリコール組成物を各々80℃で真空乾燥し、(A)/(B)のブレンド比率(ポリエチレングリコールを除いたセルロース脂肪酸混合エステルの純分)が85/15となるように二軸エクストルーダーに供給し溶融させ、紡糸温度258℃で紡糸口金(吐出孔直径0.2mm、丸断面)より吐出させた。この紡出糸条を風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(速度1000m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。なお第1ゴデットローラーと第2ゴデットローラー間で圧空圧0.2MPaの条件で交絡処理を行った。得られた繊維の物性は表1の通りであり、伸度は85.4%、沸騰水収縮率は14.0%であり、高伸度および高収縮であった。また毛羽数は10万mあたり1個であり、品質の優れたものであった。
【0072】
このブレンド繊維(100デシテックス−36フィラメント)を実施例1と同様にタフタ織物を作成し、精練、熱水処理を行ったところ、熱水処理後の織物の膨らみは非常に優れており、またソフト性に優れていた。
【0073】
製造例6
セルロース(コットンリンター)に、酢酸/プロピオン酸を加え、50℃で30分間混合した。この混合物を室温まで冷却し、氷浴中で冷却した無水酢酸と無水プロピオン酸をエステル化剤として、硫酸をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸/水混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸/水混合溶液を加えて、70℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、酢酸マグネシウムを含む水溶液を加えて、系内の硫酸を中和した。析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネート(CAP)のアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々0.4、2.0であった。
【0074】
このCAP85重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)14.9重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw12.7万)を得た。
【0075】
製造例7
セルロース(コットンリンター)に、酢酸/プロピオン酸を加え、50℃で30分間混合した。この混合物を室温まで冷却し、氷浴中で冷却した無水酢酸と無水プロピオン酸をエステル化剤として、硫酸をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸/水混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸/水混合溶液を加えて、65℃で1.5時間加熱撹拌した。反応終了後、酢酸マグネシウムを含む水溶液を加えて、系内の硫酸を中和した。析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネート(CAP)のアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.6、1.0であった。
【0076】
このCAP77重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)22.9重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて215℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw20.4万)を得た。
【0077】
実施例6
製造例5で得たセルロースアセテートプロピオネート(A)/ポリエチレングリコール組成物と製造例5で得たセルロースアセテートプロピオネート(B)/ポリエチレングリコール組成物を各々80℃で真空乾燥し、(A)/(B)のブレンド比率(ポリエチレングリコールを除いたセルロースアセテートプロピオネートの純分)が78/22となるように二軸エクストルーダーに供給し溶融させ、紡糸温度255℃で紡糸口金(吐出孔直径0.2mm、丸断面)より吐出させた。この紡出糸条を風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(速度1000m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。なお第1ゴデットローラーと第2ゴデットローラー間で圧空圧0.2MPaの条件で交絡処理を行った。得られた繊維の物性は表1の通りであり、伸度は55.3%、沸騰水収縮率は5.7%であり、高伸度および高収縮であった。また毛羽数は10万mあたり2個であり、品質の優れたものであった。
【0078】
このブレンド繊維(100デシテックス−36フィラメント)を実施例1と同様にタフタ織物を作成し、精練、熱水処理を行ったところ、熱水処理後の織物の膨らみは優れており、またソフト性に優れていた。
【0079】
【表1】

【0080】
比較例1
製造例1のセルロースアセテートプロピオネート/ポリエチレングリコール組成物のみを用い、実施例1と同様に紡糸を行った。得られた繊維の伸度および沸騰水収縮率は、各々、25.6%、3.8%であり、低伸度および低収縮のものであった。更に毛羽数は10万mあたり7個であり、品質の劣るものであった。
【0081】
この繊維を用い、実施例1と同様にタフタ織物を作成し、精練、熱水処理を行ったところ、紡糸して得た繊維の沸騰水収縮率が小さいため、熱水処理後の布帛の膨らみ感は劣っていた。またソフト性も劣っていた。
【0082】
比較例2
製造例2のセルロースアセテートプロピオネート/ポリエチレングリコール組成物のみを用い、実施例1と同様に紡糸を行った。得られた繊維の伸度および沸騰水収縮率は、各々、22.0%、4.0%であり、低伸度および低収縮のものであった。更に毛羽数は10万mあたり9個であり、品質の劣るものであった。
【0083】
この繊維を用い、実施例1と同様にタフタ織物を作成し、精練、熱水処理を行ったところ、紡糸して得た繊維の沸騰水収縮率が小さいため、熱水処理後の織物の膨らみ感は劣っていた。またソフト性も劣っていた。
【0084】
比較例3〜4
セルロースアセテートプロピオネート(A)/(B)のブレンド比率(ポリエチレングリコールを除いたセルロースアセテートプロピオネートの純分)を表1のように変更する以外は実施例1と同様に紡糸を行った。
【0085】
比較例3で得られた繊維の伸度および沸騰水収縮率は、45.0%、6.0%であった。また毛羽数は、10万mあたり5個であり、品質のやや劣るものであった。
【0086】
一方、比較例4で得た繊維の伸度および沸騰水収縮率は36.0%、4.8%であり、低伸度および低収縮のものであった。また毛羽数は10万mあたり6個であり、品質が劣るものであった。
【0087】
この繊維を用い、実施例1と同様にタフタ織物を作成し、精練、熱水処理を行ったところ、比較例3の布帛は膨らみ感は優れており、またソフト性も優れていた。
【0088】
一方、比較例4の布帛は膨らみ感が劣っており、またソフト性もやや劣るものであった。
【0089】
比較例5
平均酢化度61.6%のセルローストリアセテートと平均酢化度55.2%のセルロースジアセテートをそれぞれ塩化メチレン/メタノール(91/1)混合溶剤に溶解し、それぞれ溶液濃度22重量%のセルローストリアセテート紡糸原液及びセルロースジアセテート紡糸原液を調製した。
【0090】
これらの紡糸原液を用い、芯/鞘比(重量)20/80に芯鞘複合紡糸口金を用いて乾式紡糸し、圧空圧0.2MPaの条件で交絡処理を行い、84デシテックス−20フィラメントの繊維を得た。
【0091】
得られた繊維の毛羽数は10万mあたり1個であり、品質の優れたものであった。
【0092】
鞘成分のセルロースジアセテートを除去するため、得られた繊維を溶剤処理(処理液アセトン70vol%、処理温度25℃、処理時間10分、浴比1:500)を施した。
【0093】
処理後、得られた繊維は、平均酢化度61.6%のセルローストリアセテートからなる繊維であり、その繊維物性は表2に示す通りであり、伸度が51.0%と高伸度であったが、沸騰水収縮率は3.0%と低いものであった。
【0094】
この繊維を用い、実施例1と同様にタフタ織物を作成し、精練、熱水処理を行った。熱水処理後の布帛の膨らみ感は劣ったものであった。またソフト性も劣っていた。
【0095】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0096】
高伸度かつ高収縮率を有するセルロース脂肪酸混合エステルブレンドは、衣料用繊維をはじめとして各種用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルを少なくとも含むブレンド繊維であって、該ブレンド繊維の伸度が55.0〜100.0%であり、沸騰水収縮率が5.0〜20.0%であることを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維。
【請求項2】
アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロース脂肪酸混合エステルが、アセチル基平均置換度が0.1〜0.5のセルロースアセテートプロピオネート(A)とアセチル基の平均置換度が1.5〜2.5のセルロースアセテートプロピオネート(B)であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維。
【請求項3】
アセチル基の平均置換度が異なる2種類のセルロースアセテートプロピオネート(A)および(B)のブレンド比率(重量%)が(A)/(B)=70/30〜98/2であることを特徴とする請求項2に記載のセルロース脂肪酸混合エステルブレンド繊維。

【公開番号】特開2009−127162(P2009−127162A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306344(P2007−306344)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】