説明

セルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸およびその製造方法

【課題】 ドライな風合いと自然な杢調を有した織編物を得ることができるセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を提供する。
【解決手段】 繊度変動値(U%)が5〜20%であり、繊維軸方向における太さ斑変動ピーク値が20%以下であり、マルチフィラメントを構成する単糸の繊度CV%が5〜20%であることを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維軸方向に太繊度部と細繊度部が存在したセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテートやセルローストリアセテート繊維などのセルロースエステル繊維は、優雅な光沢、鮮明な発色性、肌に優しい自然な質感、適度な吸湿性等の特性を有していることから、ポリエステルやポリアミド等の合成繊維とは異なるファション性の高い衣料素材として位置づけられている。しかしながら近年消費者ニーズの多様化、高級化に伴い、セルロースエステル繊維への新規機能性の付与が多数検討されており、例えば繊維の長手方向に太細斑を付与して、自然な杢調を発現させるものが挙げられる。
【0003】
従来より繊維の長手方向に太細斑(繊度斑)のある太細糸については、ポリエステルやポリアミド繊維を中心に数多く提案されている。ポリエステル繊維に関しては、繊維の長手方向に太細を形成させる方法として、未延伸糸を特定条件下で不完全な延伸を行う方法が多数提案されている。
【0004】
一方、セルロースエステル繊維の太細糸に関しては、乾式紡糸において吐出後の引取での引取速度(250〜500m/分)を特定条件下で間欠的にかつランダムに低速にすることにより太細糸を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながらこの方法で得られる太細糸を用いた布帛は確かにドライな風合いを有しているものの、その効果はまだまだ不十分であった。更には該太細糸は低引取速度のため生産性に問題があり、これらの改善が切望されていた。
【0005】
セルロースエステル繊維の溶融紡糸に関しては、優れた機械的特性および繊度斑の小さいセルロース脂肪酸混合エステル繊維およびその製造方法が提案されている。(特許文献2参照)該文献では、繊度変動値(U%)が3.2%である繊維が例示されているが、この繊維を用いて布帛を作成したところ、この程度の太細斑ではドライな風合いがほとんど発現せず、また外観は杢調のない無地調のものしか得られなかった。
【0006】
このようにドライな風合いと太細斑による自然な杢調を有したセルロース脂肪酸混合エステル太細マルチフィラメント糸を生産性および製糸性良く得ることはこれまで達成されていなかった。
【特許文献1】特開2001−32128号公報(第1〜4頁)
【特許文献2】特開2004−211278号公報(第16頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、織編物にした時にドライな風合いと太細斑による自然な杢調を有したものが得られるセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記した課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の溶融紡糸条件のもとで繊維化することにより、繊維軸方向に太繊度部と細繊度部が存在するセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は以下の構成を採用するものである。
[1]セルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物からなるマルチフィラメントであって、該マルチフィラメントの繊維軸方向に太繊度部と細繊度部が存在し、かつ下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸。
【0010】
(1)繊度変動値(U%)が5〜20%である。
【0011】
(2)繊維軸方向における繊維の太さ斑変動ピーク値が20%以下である。
【0012】
(3)マルチフィラメントを構成する単糸の繊度CV%が5〜15%である。
[2]マルチフィラメントの繊維軸方向における5%以上の太さ斑変動ピーク数が10mあたり1〜50個であることを特徴とする上記[1]に記載のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸。
[3]セルロース脂肪酸混合エステルがセルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートであることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸。
[4]セルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物を溶融紡糸するに際し、下記式(1)〜(3)を満たす条件を用いることを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の製造方法
(1)紡糸口金の背面圧が4MPa以下である。
(2)冷却開始点での糸速度(Vc)と紡糸速度(Vs)の関係が下記式を満たす。
【0013】
(Vc/Vs)×100≧85
(3)紡糸口金面と冷却開始点までの距離が5〜50cmである。
[5]上記[1]〜[3]のいずれかに記載のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を織編物中に50重量%以上用いてなることを特徴とする織編物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定の溶融紡糸条件を採用することにより、繊維軸方向に太繊度部と細繊度部を有するセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を得ることができる。該太細糸を用いることにより、ドライな風合いと自然な杢調を有した織編物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸について詳細に説明する。
【0016】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルとは、セルロースのグルコースユニットに存在する3つの水酸基が2種類以上のアシル基により封鎖されたものである。セルロース脂肪酸混合エステルの具体例としては、アセチル基とプロピオニル基が結合したセルロースアセテートプロピオネート、アセチル基とブチリル基が結合したセルロースアセテートブチレートが好ましい。この場合、アセチル基およびアシル基(プロピオニル基またはブチリル基)の平均置換度は、下記式を満たすことが好ましい。なお平均置換度とはセルロースのグルコース単位あたりに存在する3つの水酸基のうちアシル基が化学的に結合した数を指す。
【0017】
2.0≦(アセチル基の平均置換度+アシル基の平均置換度)≦3.0
1.5≦(アセチル基の平均置換度)≦2.5
0.5≦(アシル基の平均置換度)≦1.5
上記式を満たすセルロース脂肪酸混合エステルは、織編物とした場合、熱軟化温度が高く、適度な吸湿性、良好な寸法安定性を有するものとなるため好ましい。
【0018】
セルロース脂肪酸混合エステルの重量平均分子量(Mw)は5.0万〜25.0万であることが好ましい。Mwが5.0万未満の場合、溶融紡糸時の熱分解が顕著となるため、また溶融紡糸して得られる繊維の機械的特性(特に引張強度)が低下してしまうため、実用レベルに到達しなかったり、また溶融粘度が非常に低くなるため得られる繊維の単糸の繊度CV%が大きく悪化してしまうため好ましくない。一方、Mwが25.0万を越えると、溶融粘度が非常に高くなるため、溶融紡糸による安定した繊維化が行えなくなったり、また得られる繊維の強伸度特性が悪化してしまう。良好な機械的特性、安定した溶融紡糸性の観点から、Mwは6.0万〜22.0万であることがより好ましく、8.0万〜20.0万であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)とは、GPC測定により算出した値をいい、実施例にて詳細に説明する。
【0019】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物には、可塑剤を含有していても良く、可塑剤としては、多価アルコール系化合物が好ましい。具体的にはセルロース脂肪酸混合エステルとの相溶性が良好であり、また溶融紡糸可能な熱可塑化効果が顕著に現れるポリアルキレングリコール、グリセリン系化合物、カプロラクトン系化合物などであり、なかでもポリアルキレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、重量平均分子量が200〜4000であるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
【0020】
また可塑剤の含有量は、5〜25重量%であることが好ましい。可塑剤の含有量を5〜25重量%とすることで、セルロース脂肪酸混合エステルの熱流動特性が向上するため生産効率の高い溶融紡糸法での生産が可能となり、また繊維断面を精密かつ任意に制御することが可能となり、また得られる繊維特性も良好なものとなる。可塑剤の含有量は、より好ましくは8〜22重量%、最も好ましくは10〜20重量%である。
【0021】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物には、リン系酸化防止剤を含有していることが好ましく、特にペンタエリスリトール系化合物が好ましい。リン系酸化防止剤を含有している場合、紡糸温度が高い範囲および低吐出領域においても熱分解防止効果が非常に顕著であり、繊維の機械的特性の悪化が抑制され、得られる繊維の色調が良好になる。リン系酸化防止剤の配合量は、組成物に対して0.005重量%〜0.500重量%であることが好ましい。
【0022】
本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸は、繊維軸方向に太繊度部と細繊度部が存在するものであり、特定の繊度変動値(U%)、特定の太さ斑変動ピーク値およびマルチフィラメントを構成する単糸の繊度CV%を有している。
【0023】
本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の繊度変動値(U%)は5〜20%である。繊度変動値(U%:Normalモード)は繊維の長手方向における太さ斑(繊度斑)の指標であり、ツェルベガーウースター社製ウースターテスターにより求めることができる。なお繊度変動値の測定条件は実施例にて詳細に説明する。
【0024】
繊度変動値(U%)を5%以上とすることで、染色した時の外観が均質なものとはならずに自然な杢調を有したものとなる。また織編物表面に微少な凹凸感を有することになり、ドライ感が発現する。一方、繊度変動値(U%)を20%以下とすることで、染色した時に濃淡差が強調されないため、ナチュラルな外観を維持することができる。またマルチフィラメントに毛羽やたるみ等が発生しないため、高次加工工程の通過性が悪化しない。更には織編物の表面状態(品位)も悪化しない。繊度変動値(U%)は6〜18%であることがより好ましく、7〜15%であることが更に好ましい。
【0025】
本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の繊維軸方向における太さ斑変動ピーク値は20%以下である。繊維軸方向における太さ斑変動ピーク値とは、繊度変動値(U%:Normalモード)測定で得られる波形の最大ピーク値である。
【0026】
太さ斑変動ピーク値を20%以下とすることで、製品間の繊度変動値ばらつきが大きくなりすぎないため、例えばタテスジなどの筋斑が生じないし、また緯糸に使用しても杢感が大きくばらつかず、同一な外観を有する織編物を安定して得ることができる。太さ斑変動ピーク値は18%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましい。
【0027】
本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の繊維軸方向における5%以上の太さ斑変動ピーク数は10mあたり1〜50個である。太さ変動ピーク数は、繊度変動値測定で得られたチャート上で、平均太さ5%の値に線を引き、この線以上に存在するピークトップ数を読みとった値である。
【0028】
太さ斑変動ピーク数を10mあたり1個以上とすることで、ドライ感を有する織編物を得ることが可能となる。また太さ斑変動ピーク数を10mあたり50個以下とすることで、太部が多くなりすぎないため、得られる織編物は有効な濃淡コントラストを有しているものとなる。5%以上の太さ斑変動ピーク数は10mあたり3〜45個であることがより好ましく、5〜40個であることが更に好ましい。
【0029】
本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を構成する単糸の繊度CV%は5〜15%である。単糸の繊度CV%は、マルチフィラメントの断面方向における構成繊維の直径斑の指標であり、単糸の繊度CV%が大きい場合、平均繊度よりも太い繊度のフィラメントおよび細い繊度のフィラメントが存在することとなる。
【0030】
単糸の繊度CV%を5%以上とすることで織編物にした際、外観が自然な杢調を有したものとなり、また本発明の目的とするドライ感が発現する。
【0031】
単糸の繊度CV%を15%以下とすることで、織編物に加工する際、平均繊度よりも細繊度のフィラメント部が切れて毛羽になりやすいという問題やまた平均繊度よりも太い繊度のフィラメントが染色したときに濃染になり強い筋斑となるといった問題を防止できる。単糸の繊度CV%は6〜14%であることがより好ましく、7〜13%であることが更に好ましい。なお単糸の繊度CV%とは、マルチフィラメントを構成する単糸の繊度を下式により算出した値を言う。
【0032】
単糸繊度CV%=(σ/X)×100
ただしXはマルチフィラメントを構成する単糸繊度の平均値およびσは標準偏差である。
【0033】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の引張強度は0.9cN/dtex以上であることが好ましい。引張強度が0.9cN/dtex以上であれば、製織や製編時など高次加工工程の通過性が良好であり、また最終製品の強力も不足することがないため好ましい。良好な引張強度特性の観点から、引張強度は高ければ高いほど実用範囲が広がり各種用途に展開できるため好ましいが、現状では2.0cN/dtex程度が上限である。引張強度は1.0cN/dtex以上であることがより好ましく、1.1cN/dtex以上であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の伸度は15〜50%であることが好ましい。伸度が15%以上である場合には、紡糸工程で毛羽が発生せず、また製織や製編時など高次加工工程において毛羽や糸切れ等が多発することがなく、高次加工工程での通過性が良好となる。また伸度は50%以下であることが好ましく、50%以下の場合、繊維は低い応力であれば変形することがなく、製織時の緯ひけなどによる最終製品の染色欠点を生じることがない。伸度は、18%〜45%であることがより好ましく、20〜40%であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を構成する単糸の繊度は、0.5dtex〜30.0dtexであることが好ましい。単糸繊度を0.5dtex〜30.0dtexとすることで、溶融紡糸法によって製糸性よく繊維を得ることができ、また繊維構造物の適度な曲げ剛性により、ソフトさが要求される衣料用織編物などにも適用することができる。単糸繊度はより好ましくは1.0dtex〜20dtexであり、更に好ましくは1.5dtex〜10.0dtexである。
【0036】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の単糸断面形状に関しては特に限定されるものではなく、例えば通常の円形断面、三角形、四角形などの多角形状断面、扁平断面などを採用することができる。また2種類以上の断面を混繊した断面ミックスマルチフィラメント糸であっても良い。
【0037】
本発明において、セルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物を溶融成形した後、温水、熱水等の水処理や有機溶剤等を用いた薬液処理でセルロース脂肪酸混合エステル太細マルチフィラメント糸に含有されている可塑剤を溶出させても良い。最終製品におけるセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸に含まれる可塑剤含有量は0〜25重量%であることが好ましい。可塑剤の含有量がこの範囲にある場合、最終製品の強力が不足することがなくなり製品耐久性が向上し、また熱軟化温度も高くなり製品の取扱性が向上する。
【0038】
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸には、その物性を損なわない範囲で艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、着色防止剤、着色顔料、染料、制電剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有することができる。
【0039】
次に本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の製造方法について説明する。
【0040】
図1は、本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の製造方法に用いる装置の一実施態様を示す図である。図1において、1はスピンブロック、2は溶融紡糸パック、3は紡糸口金、4は冷却開始点、5は冷却装置、6は紡出糸条、7は給油装置、8は第1ゴデットローラー、9は第2ゴデットローラー、10は巻取糸である。なおLは紡糸口金面と冷却開始点間の距離である。
【0041】
溶融されたセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物は、スピンブロック1に装着された溶融紡糸パック2の下部に取り付けられた紡糸口金3の吐出孔より押し出される。押し出された紡出糸条6は、冷却開始点4より冷却装置5により室温まで冷却され、給油装置7により仕上げ剤が付与され、所定の速度で回転する第1ゴデットローラー8、第2ゴデットローラー9を介して、巻取機によって巻き取られる。なおスピンブロック1と冷却装置5の間に、加熱筒や保温筒などの装置を設置しても構わない。
【0042】
本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を得るためには、セルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物を溶融紡糸するに際し、下記式(1)〜(3)を満たすことが重要である。
(1)紡糸口金の背面圧が4MPa以下である。
(2)冷却開始点での糸速度(Vc)と紡糸速度(Vs)の関係が下記式を満たす。
【0043】
(Vc/Vs)×100≧85
(3)紡糸口金面と冷却開始点までの距離が5〜50cmである。
【0044】
本発明では、紡糸口金の背面圧が4.0MPa以下であることが重要である。セルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物の溶融紡糸の際、紡糸口金の背面圧と単糸の繊度CV%の関係について鋭意検討したところ、紡糸口金の背面圧を4.0MPa以下に制御することで、マルチフィラメントを構成する単糸繊度のバラツキが大きくなり、本発明の必須要件である単糸の繊度CV%が5%以上となることが分かった。紡糸口金の背面圧は、紡糸口金の孔径および/または孔深度、組成物の溶融粘度に関与するため、所望範囲となるように任意に選択することができる。
【0045】
紡糸口金面の背面圧は3.8MPa以下であることがより好ましく、3.6MPa以下であることが更に好ましい。なお本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を溶融紡糸法にて操業性良く得るためには、紡糸口金の背面圧は1.0MPa以上であることが好ましい。なお紡糸口金の背面圧とは、予め紡糸温度と同温度で予熱した溶融紡糸パックをスピンブロックに取り付け、ポリマーが紡糸口金より吐出し始める寸前に上昇した圧力上昇幅を言う。
【0046】
本発明では、冷却開始点での糸速度(Vc)と紡糸速度(Vs)の関係が下記式を満たす。
【0047】
(Vc/Vs)×100≧85
ここでいう冷却開始点とは、冷却装置から吹き出される冷却風の吹出部の最上端点を指し、また紡糸速度とは第1ゴデットローラーの速度を指す。
【0048】
繊維長手方向における太さ斑の均一性に優れた繊維では、冷却開始点においても巻取機にて巻取られた繊維の最終糸径には到達しておらず、上記式での値は85未満である。この場合、繊度変動値が5%未満の繊維しか得ることができず、該繊維を用いて作成した織編物は、非常にフラット(無地調)で本発明の目的である自然な杢調を有したドライな風合いのもとはならない。
【0049】
本発明における溶融紡糸に供する組成物はポリエステルやポリアミド等のような熱可塑性ポリマーに比べると伸長粘度の温度依存性が非常に高い。すなわち紡糸口金より吐出された組成物は急速に固化が進行する。この特性に注目したうえで、紡糸口金より吐出された紡出糸条の冷却開始点での糸速度に関して鋭意検討した結果、上記式において85以上であることが本発明を達成するうえで重要であることがわかった。
【0050】
すなわち85以上とすることで、冷却装置から吹き出される冷却風により紡出糸条が均一冷却される前に巻取糸に近い最終糸径となる。この場合、冷却装置により強制的に糸条を均一冷却する前に巻取糸の糸径に近い糸径になるが、紡糸口金から冷却開始点までの空間では、走行糸条がもつ気流や上記空間に流れ込む気流(冷気)等が入り混じり乱流状態となっているため、マルチフィラメントを構成する単糸の均一冷却は不可能となる。したがって得られる繊維は、繊維長手方向にランダムな太さ斑を有したものとなり、本発明での必須要件である特定の繊度変動値(U%)および特定の繊維軸方向における太さ斑変動ピーク値、太さ斑変動ピーク数を満たすことが可能となる。
【0051】
紡糸口金面と冷却開始点までの距離は5〜50cmである。紡糸口金面と冷却開始点までの距離が5cm未満の場合、紡糸口金より吐出された紡出糸条は冷却風により均一冷却されるため、得られるセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸は、繊維長手方向に太さ斑のない均一性に優れたものとなってしまう。したがって本発明の必須要件である特定の繊度変動値(U%)を有した、繊維長手方向にランダムな太さ斑を有したセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を得ることができない。紡糸口金面と冷却開始点までの距離を50cm以下とすることで、紡糸口金より吐出された紡出糸条の不安定な溶融領域を回避できるため、糸切れ等のトラブルが発生せず、製糸操業性が良好となる。紡糸口金面と冷却開始点までの距離は8〜48cmであることがより好ましく、10〜45cmであることが更に好ましい。なお本発明では、紡糸口金面と冷却開始点までの距離を上記範囲に調整するため、スピンブロックと冷却装置の間に加熱筒や保温筒などを設置しても良い。
【0052】
セルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物を溶融紡糸法による繊維化の際、紡糸温度は220℃〜280℃であることが好ましい。紡糸温度を220℃以上とすることにより、紡糸口金より吐出された糸条の伸長粘度が十分に低下するため、紡糸口金より吐出した糸条の繊維微細構造が十分に発達し、繊維の機械的特性が良好となる。更には製糸操業性が安定する。また紡糸温度を280℃以下とすることにより、熱可塑性組成物の熱分解を抑制できるため、得られる繊維の分子量低下による機械的特性不良や着色による品位悪化が抑制できる。紡糸温度は230〜270℃であることがより好ましく、240〜260℃であることがさらに好ましい。
【0053】
紡糸速度は1000〜4000m/分であることが好ましい。紡糸速度を100〜4000m/分とすることで、得られる繊維の分子配向が十分に促進される紡糸応力が紡出糸条にかかり、繊維特性に優れた繊維を製糸操業性良く得ることができる。また紡糸口金より吐出された糸条の変形が急速に進行するため、得られる繊維は太細斑を有したものとなりやすい。紡糸速度は1200〜3500m/分であることがより好ましく、1500〜3000m/分であることがさらに好ましい。
【0054】
上記のように、本発明で得られるセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸は、繊維軸方向に太繊度部と細繊度部が存在している。本発明でいう織編物とは、本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸が織編物中に50重量%以上用いられていることが必要である。50重量%以上とすることで、ドライな風合いと太細斑による自然な杢調を付与した織編物を得ることが可能となる。
【0055】
本発明でいう織編物とは、織物、編物の形態をとることができ、セルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸以外の繊維、例えば、ポリ乳酸やポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等の生分解性繊維や、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維、レーヨンやアセテート等の再生繊維・化学繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタン等の合成繊維との混用品等でも良い。
【0056】
織編物として用いる場合には、織組織や編組織に何ら制限は無く、織物の場合には平組織、斜文組織、朱子組織やそれらの応用組織、編物の場合には平編(天竺編)、リブ編(ゴム編)、両面編、パール編等のよこ編組織や、デンビー編、アトラス編、コード編等のたて編等、通常用いられる織編組織を採用することができ、その使用用途に関しても何ら制限されるものではない。
【0057】
織編物を製編織する方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、シャトル、レピア、エアジェットルームおよびウオータージェットルームなどの織機や、横編機、丸編機およびたて編機などの編機を目的に合わせて任意に用いることができる。また、他の繊維を用いて複合織編物とすることもできる。その場合、他の繊維と交撚、交織、交編、混紡等任意に行うことができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めたものである。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
A.セルロース脂肪酸混合エステルの平均置換度
セルロースにアセチル基およびアシル基が結合したセルロース脂肪酸混合エステルの平均置換度の算出方法については下記の通りである。
【0060】
80℃で8時間の乾燥したセルロース脂肪酸混合エステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
【0061】
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace)]]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の平均置換度
DSacy:アシル基の平均置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
B.GPCによる重量平均分子量(Mw)測定
セルロース脂肪酸混合エステルの濃度が0.15重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件のもと、Waters2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0062】
カラム :東ソー製TSK gel GMHHR−Hを2本連結
検出器 :Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :1.0ml/分
注入量 :200μl
C.冷却開始点での糸速度
冷却開始点での糸速度は、TSI社製LDV(MODEL LS50 PROCESSOR)を用いて測定した。なお糸速度の測定におけるサンプリングは500回実施し、その平均値を糸速度(m/分)とした。
【0063】
D.紡糸口金の背面圧
予め紡糸温度と同温度で予熱した溶融紡糸パックをスピンブロックに取り付け、ポリマーが紡糸口金より吐出し始める時に上昇した圧力幅を紡糸口金の背面圧とした。
【0064】
E.繊度変動値(U%:Normalモード)
U%測定は、ツェルベガーウースター社製ウースターテスター4−CXにより、下記条件にて測定して求めた。なお、測定回数は5回であり、その平均値をU%とした。
【0065】
測定速度 :50m/分
測定時間 :2.5分
測定繊維長:100m
Twister:3000m-1、S
F.繊維軸方向における太さ斑変動ピーク値
繊度変動値(U%:Normalモード)測定で得られる波形の最大ピーク値を読みとり、その値を繊維軸方向における太さ斑変動ピーク値とした。なお最大ピーク値は、繊度変動値測定を実施した繊維長100mの中での値である、
G.繊維軸方向における5%以上の太さ斑変動ピーク数
繊度変動値(U%:Normalモード)測定で得られたチャート上で平均太さ5%の値に線を引き、この線以上に存在するピークトップ数を繊維軸方向における5%以上の太さ斑変動ピーク数とした。なおピーク数は、繊度変動値測定を実施して得られたチャートにて、測定長5m分を解析し、読みとった個数を測定長で除した値とした。
【0066】
H.引張強度および伸度
温度20℃、湿度65%の環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS形を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除した値を引張強度(cN/dtex)とした。またそのときの伸度を伸度(%)とした。なお測定回数はそれぞれ10回とし、その平均値を引張強度、伸度とした。
【0067】
I.単糸の繊度CV%
セルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を繊維軸方向に対して垂直に切断し、その切断面を光学顕微鏡で撮影し、得られた画像からマルチフィラメントを構成する各単糸の単糸径を測定し、その値から各単糸の繊度を算出し、下式より単糸繊度CV%を算出した。
【0068】
単糸繊度CV%=(σ/X)×100
ただしXはマルチフィラメントを構成する単糸繊度の平均値およびσは標準偏差である。
【0069】
J.製糸操業性評価
連続6時間の紡糸を行い、下記の基準で評価し、◎および○を合格とした。
【0070】
◎:糸切れ回数が0〜1回(製糸操業性が極めて良好)
○:糸切れ回数が2〜3回(製糸操業性が良好)
×:糸切れ回数が4回以上(製糸操業性が不良)。
【0071】
K.杢感の評価
セルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を用いて織物を作成し、該織物について、下記の基準で評価し、◎および○を合格とした
◎:ナチュラルな杢感効果が極めて良好に発現している
○:ナチュラルな杢感効果が良好に発現している
×:杢感効果が不十分である(ナチュラルな外観が損なわれている、あるいは外観が無地調である)。
【0072】
L.風合いの評価
セルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を用いて織物を作成し、該織物についてパネラー10名で官能評価を実施し、下記の基準で評価した。なお◎および○を合格とした。
【0073】
織物を握った時、従来品と比較してドライ感に有意差があると感じたか。
【0074】
◎:9名以上が有意差ありと判定
○:7〜8名が有意差ありと判定
×:5名以下が有意差ありと判定。
【0075】
合成例1
セルロース(コットンリンター)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.9、0.7であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
【0076】
実施例1
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート82重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600:三洋化成社製)17.9重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(旭電化社製)0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて240℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw15.9万)を得た。
【0077】
このペレットを80℃、10時間の真空乾燥を行い、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量20.0g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.18mm、孔長0.54mm)を36ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧3.1MPa)。
【0078】
この紡出糸条を紡糸口金面より下方20.5cmの距離(冷却開始点での糸速度1701m/分)から、風速35m/分の冷却風(20℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、2000m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(100デシテックス−36フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0079】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは1回であり製糸操業性は極めて良好であった。
【0080】
この繊維を経糸および緯糸に用いてエアジェットルームで5枚朱子のサテン織物とした。このサテン織物を60℃の水で5分間洗浄して可塑剤を除去し、さらに精練を行って、油剤などの汚れを除去した。さらに160℃の中間セットを行った後、液流染色機を用いて下記処方でPH5において、常法により染色を行った(Cibacet Scarlet EL−F2G 0.5%owf(チバスペシャリティケミカルズ株式会社 製))。染色後は、下記条件でRC洗浄を行った。
【0081】
炭酸ナトリウム 1g/l
ハイドロサルファイト 2g/l
ソフタノールEP12030(日本触媒株式会社 製) 0.2g/l
さらに、乾燥後150℃の仕上げセットを行った。
【0082】
この織物の官能評価を実施したところ、ナチュラルな杢感効果が極めて良好に発現しており、更には極めてドライな風合いを有した高品位なものであった。
【0083】
実施例2
実施例1と同様のペレットを80℃、10時間の真空乾燥を行い、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量40.5g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.2mm、孔長0.8mm)を48ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧4.0MPa)。
【0084】
この紡出糸条はスピンブロック直下に設置した加熱筒(40cm:設定温度260℃)を通過した後、紡糸口金面より下方49.5cmの距離(冷却開始点での糸速度2760m/分)から、風速40m/分の冷却風(25℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、3000m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(135デシテックス−48フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0085】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは3回であり製糸操業性は良好であった。
【0086】
この繊維を用いて実施例1と同様に織物を作成し、官能評価を実施したところ、ナチュラルな杢感効果は良好に発現しており、極めてドライな風合いを有していた。
【0087】
実施例3
実施例1と同様のペレットを80℃、10時間の真空乾燥を行い、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量12.5g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.23mm、孔長0.6mm)を72ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧1.1MPa)。
【0088】
この紡出糸条を紡糸口金面より下方5cmの距離(冷却開始点での糸速度1228m/分)から、風速30m/分の冷却風(25℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1250m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(100デシテックス−72フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0089】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは3回であり製糸操業性は良好であった。
【0090】
この繊維を用いて実施例1と同様に織物を作成し、官能評価を実施したところ、ナチュラルな杢感効果が良好に発現しており、また良好なドライ風合いを有していた。
【0091】
実施例4
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート80重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600:三洋化成社製)19.9重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(旭電化社製)0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw16.1万)を得た。このペレットを80℃、10時間の真空乾燥を行い、メルター温度247℃にて溶融させ、紡糸温度247℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量15.0g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.25mm、孔長0.625mm)を48ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧1.8MPa)。
【0092】
この紡出糸条をスピンブロック直下に設置した保温筒(5.5cm)内を通過させた後、紡糸口金面より下方15.5cmの距離(冷却開始点での糸速度1799m/分)から、風速35m/分の冷却風(20℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、2000m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(75デシテックス−48フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0093】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは1回であり製糸操業性は極めて良好であった。
【0094】
この繊維を用いて実施例1と同様に織物を作成し、官能評価を実施したところ、ナチュラルな杢感効果が極めて良好に発現しており、更には極めてドライな風合いを有した高品位なものであった。
【0095】
実施例5
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート86重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600:三洋化成社製)13.8重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(旭電化社製)0.2重量%を二軸エクストルーダーを用いて245℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw15.3万)を得た。このペレットを80℃、10時間の真空乾燥を行い、メルター温度270℃にて溶融させ、紡糸温度270℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量27.5g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.23mm、孔長0.46mm)を24ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧2.5MPa)。
【0096】
この紡出糸条を紡糸口金面より下方8.0cmの距離(冷却開始点での糸速度2324m/分)から、風速45m/分の冷却風(20℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、2500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(110デシテックス−24フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0097】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは0回であり製糸操業性は極めて良好であった。
【0098】
この繊維を緯糸として、公知の方法で紡糸し、延伸して得たポリ乳酸繊維(84デシテックス−24フィラメント)を経糸として平織物を作成し(セルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の含有量53%)、実施例1と同様に可塑剤除去、精練、染色等を行った。
【0099】
得られた平織物の官能評価を実施したところ、ナチュラルな杢感効果が極めて良好に発現していた。またドライな風合いを有していた。
【0100】
合成例2
セルロース(コットンリンター)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸5重量部をエステル化触媒として加えて、180分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、90℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.8、0.8であり、重量平均分子量(Mw)は11.8万であった。
【0101】
実施例6
合成例2で製造したセルロースアセテートプロピオネート90重量%と平均分子量1000のポリエチレングリコール(PEG1000:三洋化成社製)10重量%を二軸エクストルーダーを用いて245℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw9.9万)を得た。このペレットを80℃、10時間の真空乾燥を行い、メルター温度265℃にて溶融させ、紡糸温度265℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量20.3g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.23mm、孔長0.30mm)を36ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧3.7MPa)。
【0102】
この紡出糸条を紡糸口金面より下方10cmの距離(冷却開始点での糸速度1290m/分)から、風速30m/分の冷却風(20℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.09cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(135デシテックス−36フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0103】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは3回であり製糸操業性は良好であった。
【0104】
この繊維を用いて実施例1と同様に織物を作成し、官能評価を実施したところ、ナチュラルな杢感効果が良好に発現しており、更にはドライな風合いを有した高品位なものであった。
【0105】
合成例3
セルロース(コットンリンター)100重量部に、酢酸100重量部とプロピオン酸200重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸150重量部と無水プロピオン酸350重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、160分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で1.5時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.5、0.9であり、重量平均分子量(Mw)は20.8万であった。
【0106】
実施例7
合成例3で製造したセルロースアセテートプロピオネート75重量%と平均分子量400のポリエチレングリコール(PEG400:三洋化成社製)25重量%を二軸エクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw19.0万)を得た。このペレットを80℃、12時間の真空乾燥を行い、メルター温度230℃にて溶融させ、紡糸温度230℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量35.0g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.3mm、孔長0.45mm)を12ホール有した紡糸口金より紡出した。
【0107】
この紡出糸条をスピンブロック直下に設置した円筒形の保温筒(15cm)内を通過させた後、紡糸口金面より下方25cmの距離(冷却開始点での糸速度3080m/分)から、風速30m/分の冷却風(20℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、3500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.09cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(100デシテックス−12フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0108】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは3回であり製糸操業性は良好であった。
【0109】
この繊維を用いて実施例1と同様に織物を作成し、官能評価を実施したところ、ナチュラルな杢感効果が極めて良好に発現しており、更には極めてドライな風合いを有した高品位なものであった。
【0110】
実施例8
実施例4で得られた繊維(75デシテックス−48フィラメント)を、公知の方法で紡糸し、延伸して得たポリ乳酸(33デシテックス−12フィラメント)と交絡処理し、混繊糸を得た(108デシテックス−60フィラメント)。
【0111】
この繊維を経糸に、緯糸に実施例4で得た繊維を用いて平織物を作成し(セルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の含有量78%)、実施例1と同様に可塑剤除去、精練、染色等を行った。得られた平織物の官能評価を実施したところ、ナチュラルな杢感効果が良好に発現しており、更にはドライな風合いを有した高品位なものであった。
【0112】
比較例1
実施例1と同様のペレットを80℃、10時間の真空乾燥を行い、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量20.0g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.18mm、孔長0.63mm)を36ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧5.2MPa)。
【0113】
この紡出糸条を紡糸口金面より下方4.5cmの距離(冷却開始点での糸速度1563m/分)から、風速25m/分の冷却風(20℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、2000m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(100デシテックス−36フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0114】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは0回であり製糸操業性は極めて良好であった。
【0115】
この繊維を用いて実施例1と同様に織物を作成し、官能評価を実施したところ、織物表面は無地調であり(杢調のないものであり)、ドライ感は全く発現していなかった。
【0116】
比較例2
実施例1と同様のペレットを80℃、10時間の真空乾燥を行い、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量15g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.18mm、孔長0.54mm)を36ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧2.7MPa)。
【0117】
この紡出糸条を紡糸口金面より下方20.5cmの距離(冷却開始点での糸速度1196m/分)から、風速20m/分の冷却風(20℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(100デシテックス−36フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0118】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは1回であり製糸操業性は極めて良好であった。
【0119】
この繊維を用いて実施例1と同様に織物を作成し、官能評価を実施したところ、織物表面は無地調に近く、ドライな風合いを全く有していなかった。
【0120】
比較例3
実施例4と同様のペレットを80℃、10時間の真空乾燥を行い、メルター温度247℃にて溶融させ、紡糸温度247℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量16.9g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.18mm、孔長0.63mm)を48ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧3.1MPa)。
【0121】
この紡出糸条を紡糸口金面より下方8.0cmの距離(冷却開始点での糸速度864m/分)から、風速25m/分の冷却風(20℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1250m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(135デシテックス−48フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0122】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは0回であり製糸操業性は極めて良好であった。
【0123】
この繊維を用いて実施例1と同様に織物を作成し、官能評価を実施したところ、織物表面は無地調であり、ドライな風合いを全く有していなかった。
【0124】
比較例4
実施例1と同様のペレットを80℃、10時間の真空乾燥を行い、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量33.8g/分の条件で吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.2mm、孔長0.6mm)を72ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧2.3MPa)。
【0125】
この紡出糸条を紡糸口金面より下方51.5cmの距離(冷却開始点での糸速度2016m/分)から、風速20m/分の冷却風(20℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、2250m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(150デシテックス−72フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0126】
また連続製糸を実施したところ、糸切れが7回発生し、製糸操業性は不良であった。
【0127】
この繊維を用いて実施例1と同様に織物を作成し、官能評価を実施したところ、織物は極めてドライな風合いを有していた。しかしながら織物表面は染色濃淡差が強調されすぎてナチュラルな外観が損なわれており、織物品位は非常に低いものであった。
【0128】
比較例5
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度:0.1、プロピオニル基の置換度:2.6、重量平均分子量:16.0万;イーストマンケミカル社製CAP−482−20)75重量%とグリセリンジアセテートモノラウレート25重量%を二軸エクストルーダーを用いて185℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸エステル組成物ペレットを得た。
【0129】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度220℃にて溶融させ、紡糸温度220℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量13.3g/分の条件で、吐出孔(紡糸口金スペック:孔径0.27mm、孔長0.54mm)を48ホール有した紡糸口金より紡出した(紡糸口金背面圧0.8MPa)。
【0130】
この紡出糸条はスピンブロック直下に設置した加熱筒(15cm:設定温度205℃)内部を通過した後、紡糸口金面より下方19.5cmの距離(冷却開始点での糸速度567m/分)から、風速18m/分の冷却風(25℃)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、800m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(166デシテックス−48フィラメント)は、表1記載の特性を有していた。
【0131】
また連続製糸を実施したところ、糸切れは5回であり製糸操業性は不良であった。
【0132】
この繊維を用いて実施例1と同様に織物を作成し、官能評価を実施したところ、織物表面は無地調に近いものであり、更にはドライな風合いを全く有していなかった。
【0133】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0134】
得られる繊維は、繊維軸方向に太繊度部と細繊度部が存在しており、該太細糸を用いることにより、ドライな風合いと自然な杢調を有した織編物を得ることができ、特に衣料用繊維に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の製造方法に用いる溶融紡糸装置の一実施態様を示す図
【符号の説明】
【0136】
1:スピンブロック
2:溶融紡糸パック
3:紡糸口金
4:冷却開始点
5:冷却装置
6:紡出糸条
7:給油装置
8:第1ゴデットローラー
9:第2ゴデットローラー
10:巻取糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物からなるマルチフィラメントであって、該マルチフィラメントの繊維軸方向に太繊度部と細繊度部が存在し、かつ下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸。
(1)繊度変動値(U%)が5〜20%である。
(2)繊維軸方向における繊維の太さ斑変動ピーク値が20%以下である。
(3)マルチフィラメントを構成する単糸の繊度CV%が5〜15%である。
【請求項2】
マルチフィラメントの繊維軸方向における5%以上の太さ斑変動ピーク数が10mあたり1〜50個であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸。
【請求項3】
セルロース脂肪酸混合エステルがセルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートであることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸。
【請求項4】
セルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物を溶融紡糸するに際し、下記式(1)〜(3)を満たす条件を用いることを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸の製造方法。
(1)紡糸口金の背面圧が4MPa以下である。
(2)冷却開始点での糸速度(Vc)と紡糸速度(Vs)の関係が下記式を満たす。
(Vc/Vs)×100≧85
(3)紡糸口金面と冷却開始点までの距離が5〜50cmである。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のセルロース脂肪酸混合エステル系太細マルチフィラメント糸を織編物中に50重量%以上用いてなることを特徴とする織編物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−332495(P2007−332495A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165828(P2006−165828)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)/溶融紡糸により得られる天然物由来新規繊維の研究」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】