説明

センサーの性能比較ツール

【課題】煩雑な作業に拠らず、簡単な操作により機種毎に仕様の異なるセンサーの性能比較を可能とする性能比較ツールを実現する。
【解決手段】夫々に仕様の異なる比較対象センサーの機種を選択する比較機種選択手段101、共通の単位系を選択する単位系選択手段102、共通の比較条件を設定する比較条件設定手段103、を備える入力処理部100と、該前記入力処理部100から取得したデータに基づいて機種毎に使用するレンジを算出するレンジ算出手段201、算出されたレンジ情報に基づいて機種毎の性能算出に必要な項目のパラメータ抽出と精度算出を実行する項目精度算出手段202、算出された前記項目精度情報に基づいて機種毎の性能を算出する性能算出手段203、を備える計算処理部200と、機種毎に算出される性能情報を取得して比較表示する比較表示部300と、よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス制御における物理量のセンサーである差圧伝送器、圧力伝送器、流量計、温度伝送器などで、複数の機種間の性能を比較検討する場合に使用される性能比較ツールに関するものであり、特に比較対象の機種間でメーカの違いなどにより夫々の仕様が異なる場合に有効なセンサーの性能比較ツールを提供するものである。
【0002】
この場合の性能比較とは、比較対象の機種毎に定義の異なる仕様書から抽出したパラメータによるレンジの選定、単位の換算、温度や圧力などの精度に影響を及ぼす数値の計算、総合的な精度の計算および校正周期の計算、グラフなどを言う。
【背景技術】
【0003】
比較対象センサーとして差圧伝送器を例に取れば、比較性能として校正周期を計算するには総合精度を算出する必要があり、総合精度を算出するためには、比較対象の機種毎に次の6項目(a)〜(f)の精度を求める必要がある。
(a)基準精度
(b)周囲温度の影響
(c)静圧の影響(ゼロ)
(d)静圧の影響(スパン)
(e)過大圧の影響
(f)長期安定性
【0004】
更に、上記5項目a)〜e)で求められるデータに対して二乗和平方根を計算することで、総合精度を求める必要がある。上記6項目(a)〜(f)の計算には、以下の問題が存在している。
【0005】
自社機種と他社機種間では仕様書に記述される仕様の定義が異なる。また自社機種間、他社機種間でも仕様の定義が統一されていない場合がある。この場合、記述の不統一だけでなく、読み取り辛い(読み間違いを誘発する)記述が多々ある。例えば、レンジ1〜4に対する仕様を記す場面で、レンジ1から4またはその逆に順序良く記されていないことがほとんどで、レンジ2〜3、レンジ1、レンジ4の順序で記してある場合もある。
【0006】
同じ精度項目であるのに、機種が異なる場合やレンジが異なる場合、それぞれ計算式が異なる場合がある。更に、同一機種内でも、機器の適用レンジに応じて精度パラメータと計算式が複雑に変化する場合がある。
【0007】
また、仕様書に記述された単位系が、SI単位系(Paや℃など)だけでなく、CGS単位系およびポンド・ヤード系(barやpsiや °Fなど)があり、かつ、顧客や市場に合わせてどちら単位系でも計算できることが求められている場合がある。
【0008】
人が計算する従来の手法では、次のステップS1〜S7を経る。自社製品の場合も他社製品の場合も同じ手順である。
S1:比較検討する機種の仕様書の入手。
S2:比較条件の決定。
S3:比較検討するレンジの決定。
S4:比較検討に必要な計算項目のパラメータ抽出と、各項目の精度値計算。
S5:使用する単位を統一するため単位換算。
S6:S4の精度値を計算式に代入して性能計算。
S7:性能計算結果の比較と検討。
【0009】
図7は、従来手法によるセンサー3機種の性能比較処理手順(ステップS1〜S7)を説明する機能ブロック図である。ステップS1では、自社製品モデルAの仕様書、他社製品モデルBの仕様書、他社製品モデルCの仕様書を入手する。
【0010】
ステップS2では、3機種に共通な比較条件である校正スパン、周囲温度範囲、静圧を決定する。ステップS3では、機種毎に比較検討するレンジを決定する。
【0011】
ステップS4では、機種毎に決定されたレンジにおいて性能計算に必要な項目のパラメータを仕様書から抽出し、項目毎の精度を計算する。抽出されるパラメータによる計算対象の項目は、基準精度、周囲温度による影響、静圧の影響(ゼロ)、静圧の影響(スパン)、過大圧の影響、長期安定性の6項目である。
【0012】
ステップS5では、計算に使用する単位を統一するため抽出されたパラメータのデータに対して単位換算を実行する。ステップS6では、機種毎に算出された6項目のデータを計算式に代入した計算を実行し、機種毎に総合精度、精度の長期安定性、校正周期を算出する。
【0013】
ステップS7では、機種毎に計算された総合精度、精度の長期安定性、校正周期を表、グラフ手段により表示してユーザに提示し比較検討する。
【0014】
ステップS1〜S7を自動化する場合には、機種毎に複雑に絡まった仕様であるため、仕様書どおりに対処すると、処理が極めて複雑になる。これをExcelに代表されるスプレッドシートにおいてワークシート関数などで実現する場合でも、VBA(=Visual Basic for Application)に代表されるマクロプログラムで記述する場合でも条件判定が複雑化し、記述も保守も多大の工数を要するものとなる。
【0015】
特許文献1には、制御弁の性能を評価し、評価結果を表示するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−65812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
人手による従来手法では、次のような問題点がある。
(1)メーカにより、仕様書に記載する項目やその考え方に違いがあり、単純に性能比較できない場合がほとんどである。
(2)性能比較を可能にするためには、単位を統一し、計算条件を揃える必要がある。
(3)レンジの選定、パラメータの抽出、単位の統一、計算の一連の作業が手作業であり、間違える可能性がある。
(4)製品についての理解度が深くない場合には前記の作業が困難である。
(5)手作業のため多大の工数を要する。
(6)人手による作業では、使用条件(校正圧力スパンや静圧、周囲温度、機器の適用レンジ、要求精度)から最終結果である校正周期を算出するまでに少なくとも数時間を要し、顧客と対面しながら結果を提示することは事実上不可能である。
【0018】
本発明の目的は、煩雑な作業に拠らず、簡単な操作により機種毎に仕様の異なるセンサーの性能比較を可能とする性能比較ツールを実現することにある。
【0019】
具体的には、次の機能達成を目的としている。
(1)作業の簡便化。
(2)作業の高速化。
(3)作業の正確化。
(4)わかりやすい操作性。
(5)わかりやすい結果の視覚化とグラフ表示。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)夫々に仕様の異なる比較対象センサーの機種を選択する比較機種選択手段、共通の単位系を選択する単位系選択手段、共通の比較条件を設定する比較条件設定手段、を備える入力処理部と、
該前記入力処理部から取得したデータに基づいて機種毎に使用するレンジを算出するレンジ算出手段、算出されたレンジ情報に基づいて機種毎の性能算出に必要な項目のパラメータ抽出と精度算出を実行する項目精度算出手段、算出された前記項目精度情報に基づいて機種毎の性能を算出する性能算出手段、を備える計算処理部と、
機種毎に算出される性能情報を取得して比較表示する比較表示部と、
よりなるセンサーの性能比較ツール。
【0021】
(2)前記計算処理部は、比較する機種間の精度計算に必要な項目を包括したデータにより予め作成された1個または複数個のテーブル手段にアクセスし、前記レンジ算出、前記項目のパラメータ抽出および精度算出、前記性能算出を実行することを特徴とする(1)に記載のセンサーの性能比較ツール。
【0022】
(3)前記複数個のテーブル手段は、一律のアクセス情報に基づいて算出結果を取得できることを特徴とする(2)に記載のセンサーの性能比較ツール。
【0023】
(4)前記性能算出手段は、算出された前記項目の精度情報に基づいて機種毎の総合精度と、精度の長期安定性と、校正周期を算出することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のセンサーの性能比較ツール。
【0024】
(5)前記比較表示部は、機種毎に算出された前記項目の精度値、前記校正周期の表、前記校正周期のグラフの少なくともいずれかを比較表示することを特徴とする(4)に記載のセンサーの性能比較ツール。
【0025】
(6)前記入力処理部、計算処理部及び比較表示部のユーザインターフェースを1画面に表示することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のセンサーの性能比較ツール。
【0026】
(7)前記センサーは、差圧伝送器、圧力伝送器、流量計、温度伝送器の少なくともいずれかであることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載のセンサーの性能比較ツール。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)記述の揃っていない仕様書の読解能力、単位変換の手間、条件に合う測定レンジ選定や、各種精度の算出に必要なパラメータの抽出、計算間違いといった問題に煩わされることがない。
【0028】
(2)この結果、センサーとして差圧伝送器を対象とするとき、比較機種選択、単位系のグループ選択および要求精度、校正圧力スパン、静圧、周囲温度範囲の条件を選択または入力するだけで、6つの項目精度(基準精度、精度に対する周囲温度の影響、精度に対する静圧の影響(ゼロでの影響とスパンでの影響)、精度に対する過大圧力の影響、精度の長期安定性)および総合精度を計算し、最終目的である校正周期を数値およびグラフによって瞬時に視覚化できるようになる。
【0029】
(3)本発明の計算処理部は、比較する機種間の精度計算に必要な項目を包括した最大公約数的データにより予め作成された1個または複数個のテーブル手段にアクセスすることにより、レンジ算出、性能計算に必要な項目のパラメータ抽出と各項目の精度計算、性能算出を高速に実行することを可能としている。
【0030】
(4)更に、各項目の精度値を算出するだけでなく、精度計算に用いたパラメータおよび式(すなわち計算の背景)も同時に画面表示するユーザインターフェース機能を備えることにより、ユーザの視認性を向上させている。
【0031】
(5)この結果、これまでは事実上不可能であった仕様の異なる機種間の性能比較の結果提示を即時に実現することが可能となり、センサーの性能比較ツールの利便性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用したセンサーの性能比較ツールの一実施例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の信号処理手順を説明するフローチャートである。
【図3】本発明のユーザインターフェースを示すパーソナルコンピュータの画面表示例である。
【図4】比較条件を入力するポップアップ画面表示例である。
【図5】比較対象機種毎にレンジおよびURLを算出するためのテーブル手段の構成図である。
【図6】比較対象機種毎に温度精度のパラメータの抽出と精度を算出するためのテーブル手段の構成図である。
【図7】従来手法によるセンサーの性能比較処理手順を説明する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用したセンサーの性能比較ツールの一実施例を示す機能ブロック図である。基本的な処理の流れは、図7で示した従来手法とほぼ同一である。
【0034】
本発明の機能構成は、ユーザが機種毎に選択または設定する入力処理部100、入力処理部から取得されるデータに基づいて本発明特有のテーブル手段にアクセスして機種毎に複数項目の精度算出結果を取得する計算処理部200、機種毎の計算結果を取得して表またはグラフ表示する比較表示部300よりなる。
【0035】
本発明は、図3で後述するように、入力処理部100、計算処理部200、比較表示部300のユーザインターフェースをパーソナルコンピュータの1画面に表示する。
【0036】
ユーザが前記ユーザインターフェースを介して入力または設定する入力処理部100の機能構成は、比較機種選択手段101、単位系選択手段102、比較条件設定手段103よりなる。
【0037】
図示の比較機種選択手段101では、差圧伝送器の自社機種であるモデルA、他社機種であるモデルBおよびモデルCが選択されている。尚、機種選択の手法として、廉価版グループと高付加価値版グループなどの複数グループ毎に比較対象機種を予め決めておき、グループを選択することで機種(モデル)を自動的に選択するメニューを備えることも可能である。
【0038】
単位系選択手段102では、性能計算に共通に使用される単位系を、SI単位系(Pa/
℃)またはCGS単位系とヤード・ポンド法単位系の組み合わせ(bar/psi/°F)から選択する。比較条件設定手段103では、共通の条件を、要求精度、校正圧力スパン、静圧、温度範囲のデータで設定する。
【0039】
計算処理部200は、入力処理部100から取得したデータに基づき、機種毎に使用する最適レンジを算出するレンジ算出手段201、性能算出に必要な複数項目のパラメータを抽出して項目毎の精度を算出する項目精度選出手段202、算出された項目精度情報に基づいて機種毎の性能を算出する性能算出手段203を備える。
【0040】
本発明の特徴として、計算処理部200は、比較する機種間の精度計算に必要な項目を包括した最大公約数的データにより予め作成された1個または複数個のテーブル手段にアクセスしてレンジ算出、項目のパラメータ抽出および精度算出、性能算出を実行している。
【0041】
本発明では、計算処理部200の計算エンジンとして、予めオフラインで構築されたテーブル手段にアクセスすることにより計算結果を取得する手法を採用している。これにより、従来手法で述べたExcelに代表されるスプレッドシートにおいてワークシート関数、VBA(=Visual Basic for Application)に代表されるマクロプログラムで記述する場合などに比較し、シンプルで即座に計算結果を取得することを可能としている。
【0042】
レンジ算出手段201は、モデルA、モデルB、モデルC毎に使用する最適なレンジをテーブル手段にアクセスして算出する。項目精度算出手段202は機種毎に算出されたレンジ情報に基づいて、性能算出に必要な複数項目のパラメータの抽出と項目毎の精度算出を実行する。
【0043】
前記複数項目は、次の6項目である。これら6項目は、前記した従来手法による6項目(a)〜(f)と同一である。
(a)基準精度
(b)周囲温度の影響
(c)静圧の影響(ゼロ)
(d)静圧の影響(スパン)
(e)過大圧の影響
(f)長期安定性
【0044】
性能算出手段203は、機種毎に算出された前記6項目の精度情報に基づいて、総合精度、精度の総合安定性、校正周期を算出する。比較表示部300は、機種毎に算出される性能情報を取得し、算出項目精度値の表示手段301、校正周期表の表示手段302、校正周期のグラフ表示手段303を備えている。
【0045】
図2は、本発明の信号処理手順を説明するフローチャートである。破線で区切られた領域(イ)が入力処理部100の処理範囲、(ロ)が計算処理部200の処理範囲、(ハ)が表示処理部300の処理範囲を示している。
【0046】
入力処理部100の処理範囲(イ)において、ステップS1では、比較グループ(廉価版グループのモデルと高付加価値版グループのモデル)を選択し、そのグループに属する比較対象モデルを自動的に選択する。ステップS2では、共通に使用する単位系を選択する。ステップS3では、共通の比較条件である要求精度、校正圧力スパン、静圧、周囲温度範囲を入力する。
【0047】
計算処理部200の処理範囲(ロ)において、ステップS4では、機種毎のレンジとURL(レンジ最大値)が算出される。チェックステップS5では、算出されたレンジが適正範囲(URLを超えない)か否かがチェックされる。
【0048】
ステップS5のチェックで適正範囲であれば、ステップS6乃至ステップS10が並列もしくは任意の順序で実行され、(a)基準精度、(b)周囲温度影響、(c),(d)静圧影響(ゼロ/スパン)、(e)過大圧影響の5項目のパラメータ抽出ならびに精度算出、(f)長期安定性のパラメータ抽出(長期安定性の精度算出はステップS13で実行される)が実行される。
【0049】
ステップS11では、ステップS6の基準精度、ステップS7の周囲温度の影響、ステップS8の静圧の影響、ステップS9の過大圧の影響に関する各項目の算出精度値に基づいて、機種毎の総合精度が算出される。
【0050】
ステップS12では、総合精度がステップS3で入力した要求精度の条件を満たすか否かチェックされ、要求精度内であればステップS13に進み、ステップS10で抽出された長期安定性のパラメータ情報に基づき長期安定性の精度が算出される。更にステップS14では校正周期が算出される。
【0051】
比較表示部300の処理範囲(ハ)において、ステップS15では、ステップS14で算出された校正周期の表とグラフが表示される。ステップS16では、前記各項目(a)〜(f)で算出する精度の計算式の表示と非表示が選択され、ステップS17の分岐で表示の場合には、ステップS18で精度計算値と式が表示される。ステップS17の分岐で計算式の非表示の場合には、ステップS19で精度計算値のみが表示される。
【0052】
図3は、本発明のユーザインターフェースを示すパーソナルコンピュータの画面表示例である。画面(イ)は、入力処理部100のユーザインターフェース、画面(ロ)は、計算処理部200のユーザインターフェース、画面(ハ)は、比較表示部300のユーザインターフェースであり、これらユーザインターフェースが1画面で表示される。
【0053】
尚、項目(a)〜(f)の精度算出のための計算式の表示は、比較表示部300の項目精度表示手段301の機能が、計算処理部200のユーザインターフェース画面(ロ)に反映され、算出された精度データと一体に画面表示させることでユーザの視認性を高めている。
【0054】
図4は、比較条件を入力するポップアップ画面表示例である。図5は、比較対象機種毎にレンジおよびURLを算出するためのテーブル手段の構成図である。図6は、比較対象機種毎に温度精度のパラメータの抽出と精度を算出するためのテーブル手段の構成図である。以下、図3乃至図6を用いて本発明ツールの操作手順を以下の(a)〜(g)により説明する。
【0055】
(a)画面(イ)のグループ選択欄(Comparison Group Select)にて、比較したいグループを選択する(廉価機種グループと高付加価値機種グループから一方を選択)。例えば「高付加価値モデルグループ」を選択する。
【0056】
(b)(a)で選択されたグループ名の3つの機種名称(例:Model A、Model B、Model C)が、それぞれの欄に表示される。
(c)画面内の条件入力用画面(シート)を表示するためのボタンをクリックする。
【0057】
(d)このクリックで、図4に示す条件入力画面(シート)がポップアップ表示されるので、その画面で以下の条件(d1)〜(d5)を選択または入力する。
(d1)要求精度(例:0.75 )を入力する。
(d2)入力に使用する単位系のグループを選択(Paや℃系かbarや°F系)する。例えば、[ Pa ] and [ deg C ] を選択する。
(d3)校正圧力スパン(例:100 [kPa] )を入力する。
(d4)静圧(例:2.4 [MPa] )を入力する。
(d5)周囲温度範囲(例: 0 [Deg C]と 80 [Deg C] )を入力する。
【0058】
(e)結果一覧画面(シート)を表示するための(戻るための)ボタンをクリックする。
【0059】
(f)以下の結果(f1)〜(f9)が計算され、計算処理部のユーザインターフェース画面(ロ)に表示される。(f2)〜(f6)に関しては、計算された精度値だけではなく、それを算出するのに用いられたパラメータおよび計算式が同時に表示される。かつ、そのパラメータおよび式の表示をするかしないかを選択することができる。
(f1)条件に合う測定レンジおよびそのときのURL値が、レンジとして「M Capsule」「Range 3」「Range 3」、URLとして「100」kPa、「249」kPa、「249」kPa が算出される。
(f2)基準精度0.005 % of span、0.025 % of span、0.050 % of spanが算出される。
(f3)精度に対する周囲温度の影響、0.140 % of span、0.135 % of span、0.268 % of spanが算出される。
(f4)精度に対する静圧の影響(ゼロでの影響)、0.007 % of span、0.022 % of span、0.043 % of spanが算出される。
(f5)精度に対する静圧の影響(スパンでの影響)、0.026 % of span、0.035 % of span、0.035 % of spanが算出される。
(f6)精度に対する過大圧力の影響、0.030 % of span、0.149 % of span、0.149 % of spanが算出される。
(f7)総合精度を示す、(f2)〜(f6)の二乗和平方根、0.147 % of span、0.211 % of span、0.320 % of spanが算出される。
(f8)精度の長期安定性、0.0008 % of span per month、0.0043 % of span per month、0.0058 % of span per monthが算出される。
(f9)校正周期(何カ月おきに校正が必要かを示す数値)、724 Month、124 Month、75 Month が算出される。
【0060】
(g)(f9)の算出と同時に、(f9)に関する表とグラフも比較表示部(ハ)に、Model A, Model B, Model Cの順に校正周期の比較表(302)およびグラフ(301)が表示される。
【0061】
本発明の実施例では、(d)の条件設定時に、不適切な値入力や選択、または計算結果として、本実施例で比較できないレンジになった場合や、総合精度が必要とされる精度を満たさなかった場合には、警告が適宜表示される。例えば、図3の画面(ロ)内の[show alert*]欄に、「結果が要求仕様を満たさない」などを表示する。尚、図4の入力条件の場合には、警告は出ない。
【0062】
なお、図4で示される比較条件を入力する画面の表示手段はポップアップに限るものではなく、比較条件の入力が操作者に求められていることを明確に示す表示であればよい。ポップアップ以外の表示手段としては次に列挙するような手段でもよい。画面の切り替え、ワークシートの切り替え、同じワークシートの表示領域の変更、ポップアップと似ているがオーバーレイ手法、更には図3の中央のみならず上下左右のいずれかに図4が現れる表現でもよく、その場合に図3の画面が変化しない場合も、図3が図4の表示に伴って幅や尺度が狭まるような表現がされても良い。
【0063】
本発明は、スプレッドシートのワークシート関数やVBAに代表されるマクロプログラムなどで自動化する際の複雑さを回避するために、計算処理部200は、比較する機種間の精度計算に必要な項目を包括した最大公約数的データにより予め作成された1個または複数個のテーブル手段にアクセスし、レンジ算出、総合精度算出に必要な項目のパラメータ抽出および精度算出、性能算出を実行することを特徴とする。
【0064】
本発明で使用されるテーブル手段の具体的な特徴は、以下の(1)〜(4)である。
(1)比較する機種間の精度計算に必要な項目を包括した最大公約数的なデータによりテーブル手段を構築する。
【0065】
自社機種と競合機種間だけでなく、自社機種間および競合機種間でも条件が異なるため、それぞれの仕様でテーブルを作るだけでは、計算に必要なパラメータを選ぶことが極めて困難であり、いずれの機種でも同じような仕組みでパラメータおよび計算値を選び取れる構造のテーブル構造としている。
【0066】
(2)複数の項目(=テーブル)に対して一律なアクセスでパラメータおよび計算値が取得できるテーブルを構築している。各項目で(1)を実施するだけでは、最終結果を求める際に、各項目からパラメータおよび計算値を選び取る複雑さは解決されないので、全項目でほぼ同じ仕組みでパラメータを選べる統一した構造としている。
【0067】
(3)投機的実行/アウト・オブ・オーダーの実行:
条件が複雑なため、(1)および(2)によりパラメータおよび計算値の取得を容易にしただけでは計算処理の分岐の複雑さは解決されない。各項目および各条件での計算を投機的に実施(最終結果に反映されず、捨てることが分かっている、必要のない計算も実施)し、実際に条件を満たすパラメータおよび計算値だけを拾うことにより算出結果を出力する。
【0068】
(4)比較のための入力条件と計算結果とグラフを一覧できる画面構成としている。
【0069】
尚、(1)および(2)で述べたテーブル手段は、見た目が表の様相を呈していなくても構わない。例えばマクロプログラムが内容をメモリ上の配列に取り込んだ結果として、同じテーブル構成となる構造でありさえすればよい。
【0070】
以下、計算処理部200で実行される算出処理の内、前記の動作説明(f)の計算処理における、条件に合う測定レンジ算出(f1)および周囲温度の影響(f3)を例にとって説明する。なお、その他の計算処理(f2)および(f4)〜(f6)の計算処理は、(f3)と同様の手法で算出することができる。
【0071】
まず、条件に合う測定レンジの算出(f1)に付き、図5に示すテーブルにより説明する。図5(イ)はモデルAのテーブル手段、(ロ)はモデルBのテーブル手段、(ハ)はモデルCのテーブル手段を示す。
【0072】
比較すべき3機種は、それぞれの企業の都合による単位系によって仕様が記述されており、そのままでは入力条件からレンジを選定することが困難であるため、全機種に対して、扱う全レンジと同じ単位系の仕様値とを対応させたテーブル手段を構成している。この実施例では、kPaに換算されている。
【0073】
選定すべきレンジは、校正圧力スパンが最小スパン以上の範囲で、且つ校正圧力スパンがレンジの最大値(=URL)範囲以下の両方を満たす最小のレンジである。校正圧力スパンとして100 kPaが設定された場合には、Model Aを例に取ると最小スパンで適合するのはL, M, H, Vの全レンジで、レンジの最大値以下に適合するのはM, H, Vのレンジであるため、適正レンジは「M Capsule」として算出される。
【0074】
Model B, Cも同様の判定により、ともに「Range 3」として算出される。その際のそれぞれのURLはModel Aで100 kPa、Model B,Cで249 kPaと算出される。入力時に[ bar ] and [deg F ]を選択して、校正圧力スパンを1000 mbarと設定した場合でも、テーブル手段の参照時点で 100 kPa に換算されて、同じ結果を得る。
【0075】
なお、レンジを選定した際にメーカ間および機種間でレンジ名称が異なると、他の項目の精度を算出する際のアクセスが容易に行えないので、本実施例ではテーブルの先頭から何行目であるかを同時にインデックスとして算出して利用する。先の例でのそれぞれの行インデックスはModel Aで3、Model B,Cで5である。
【0076】
次に、周囲温度の影響の算出(f3)に付き、図6に示すテーブル手段により説明する。図6(イ)はモデルAのテーブル手段、(ロ)はモデルBのテーブル手段、(ハ)はモデルCのテーブル手段を示す。
【0077】
周囲温度の影響は、校正圧力スパン、レンジ、URLから算出する必要があるが、レンジ毎に、URLに対する校正スパンの大きさによって、精度算出パラメータや計算式が変化する。
【0078】
例えば、Model BのRange 3を例に取ると、校正圧力スパンがURL〜URL/5の範囲ならば(0.0125% URL+0.0625% Span) per 28℃、URL/5〜URL/100の範囲ならば(0.025% URL+0.125% Span) per 28℃、URL/100未満ならば仕様未規定となる。
【0079】
これは一例に過ぎず、同じ機種のレンジ内で、全く別の計算式を適用しなくてはならない場合もある。パラメータだけを取得して、最後にまとめて計算する方法を採用すると、再度どの式を適用すべきかの条件判断が必要になり、処理が煩雑となる。
【0080】
そこで、本発明例ではテーブルの時点で条件を満たすパラメータと式を特定の行列に求めておき、それを取得するだけで済むようにしている。具体的には、Model Bを例に取ると、11列目に精度の計算結果、12列目に適用する式が算出されるように構成されている。
【0081】
これにより、校正圧力スパンが100 kPaの場合は、適用レンジがRange 3、URLが249 kPaであり、算出した行インデックスが5であることから5行目11列目の0.268%が計算された精度、5行目12列目の(0.0125% URL+0.0625% Span) per 28℃が適用された式として求められる。
【0082】
なお、単位換算も前記11列および12列への算出時点で行われており、仮に前記(b2)にて[ bar ] and [ deg F ]を選択した場合は、5行目11列目に計算された精度の0.268%、5行目12列目に適用された式(0.0125% URL+0.0625% Span) per 50 °F が求められることとなる。
【0083】
また図6の表記から分かるとおり、本実施例では実際には採用されないはずのレンジにも精度や式が算出されているが、これは適用されるレンジに応じて都度計算するか否かの条件分岐の煩雑さを回避するための工夫であり、無駄な計算を承知で投機的に実行することによって、条件分岐なしに結果を得る(拾い出す)ことを実現する手段である。
【0084】
なお、投機的な計算は、精度算出のプロセスをシンプルにするために有効な手法であるが、投機的実行手法を用いなくとも実現は可能である。例えば、プログラム言語にて記述する場合には、入力条件と選定されたレンジとURLを元にして精度の計算結果や式を出力するモジュールを構築すれば可能である。
【0085】
実施例では、自社製品の1機種と他社製品の2機種(合計3機種)間の精度比較を、廉価モデル間と、高付加価値モデル間の2グループそれぞれで性能比較を実施している。もちろん比較機種数は3機種に制限されるわけではなく、比較機種数を3機種以上に増やすことが可能である。同様に、グループ数も2グループ以上に増やすことが可能である。
【0086】
以上、差圧伝送器を例に取りセンサーの性能比較ツールの実施例を説明したが、同様な手法により圧力伝送器、流量計、温度伝送器に本発明を適用することができる。更に次のような応用に本発明を展開することができる。
【0087】
(1)他社、自社のRemote Seal付き伝送器の精度,応答速度を計算/比較するツール。
(2)他社、自社のModel Codeより定まるハードウェア構成からその質量を計算し、比較するツール。
(3)他社、自社のModel Codeより定まるハードウェア構成からその値引き可能範囲を計算し、比較するツール。
(4)他社、自社の製品で構成した制御ループの精度を計算し、比較するツール。
【0088】
なお本発明は、実施例のように別々に定義された仕様を基に手計算で次元を合わせて計算して比較していたようなものに一般的に応用可能である。また計算、比較以外にも単純な計算に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
100 入力処理部
101 比較機種選択手段
102 単位系選択手段
103 比較条件設定手段
200 計算処理部
201 レンジ算出手段
202 項目精度算出手段
203 性能算出手段
300 比較表示手段
301 算出項目精度値の表示手段
302 校正周期表の表示手段
303 校正周期グラフの表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々に仕様の異なる比較対象センサーの機種を選択する比較機種選択手段、共通の単位系を選択する単位系選択手段、共通の比較条件を設定する比較条件設定手段、を備える入力処理部と、
該前記入力処理部から取得したデータに基づいて機種毎に使用するレンジを算出するレンジ算出手段、算出されたレンジ情報に基づいて機種毎の性能算出に必要な項目のパラメータ抽出と精度算出を実行する項目精度算出手段、算出された前記項目精度情報に基づいて機種毎の性能を算出する性能算出手段、を備える計算処理部と、
機種毎に算出される性能情報を取得して比較表示する比較表示部と、
よりなるセンサーの性能比較ツール。
【請求項2】
前記計算処理部は、比較する機種間の精度計算に必要な項目を包括したデータにより予め作成された1個または複数個のテーブル手段にアクセスし、前記レンジ算出、前記項目のパラメータ抽出および精度算出、前記性能算出を実行することを特徴とする請求項1に記載のセンサーの性能比較ツール。
【請求項3】
前記複数個のテーブル手段は、一律のアクセス情報に基づいて算出結果を取得できることを特徴とする請求項2に記載のセンサーの性能比較ツール。
【請求項4】
前記性能算出手段は、算出された前記項目の精度情報に基づいて機種毎の総合精度と、精度の長期安定性と、校正周期を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセンサーの性能比較ツール。
【請求項5】
前記比較表示部は、機種毎に算出された前記項目の精度値、前記校正周期の表、前記校正周期のグラフの少なくともいずれかを比較表示することを特徴とする請求項4に記載のセンサーの性能比較ツール。
【請求項6】
前記入力処理部、計算処理部及び比較表示部のユーザインターフェースを1画面に表示することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のセンサーの性能比較ツール。
【請求項7】
前記センサーは、差圧伝送器、圧力伝送器、流量計、温度伝送器の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のセンサーの性能比較ツール。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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