説明

センサー利用のための、部位選択的にタグ付および鋳造された分子インプリントポリマー

本発明は、アナライトの検出のための分子的にインプリントされたポリマー(MIP)、MIPを作製する方法、およびMIPを用いてアナライトを検出する方法を提供する。MIPは、レポーター化合物が鋳造された部位に選択的に付着され、部位選択的にタグ付および鋳造されたMIPを提供し得るように、アナライトの擬態を用いて形成された鋳型サイトを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、開示内容を本明細書中に引用により組み込む2003年12月8日に出願された米国仮出願第60/527,661号の優先権を主張する。
この仕事は、ナショナル・サイエンス・ファウンデーションからの承諾No.CHE-0078101およびCHE-0315129の基金によりなされた。当該管理団体が本発明の所定の権利を有する。
【0002】
本発明は、選択的にタグ付および鋳造された分子的にインプリントされたポリマー(SSTT-MIP)の使用によるアナライト(analytes)の検出の分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
アメリカは、化学物質の検出および定量に、毎年数十億ドルを費やしている。これらの測定の殆どは、充分にアウトフィットされた研究所において行われ、熟練者、多量の高価な試薬および長い分析時間を必要とする。また、クリニカルポイント-オブ-ケア試験における使用またはフィールド展開の需要は、小さな、集積された分析プラットフォームを必要とする。多くのこれらの必要性により、化学センサーの開発が刺激されてきた [1]。同様に、サンプル中の「全てのもの」を同時に測定することに関して益々増加している必要性[2]により、化学的および生化学的センサーアレイ法[4-10]に依る人工的な「鼻」や「舌」の開発[3]が押し進められてきた。
【0004】
現在、現在用いられている方法の不都合を克服する新規手段の開発が必要とされている。1サンプル中の複数のアナライトの同時定量を可能とする検出法は、安価で、組立および操作がより簡単で、迅速で、精密かつ信頼性があり、適当な検出限度を提供し、特に、アナライト検出の分野において歓迎される進歩であろう。
概して、試みられている方法は、「バイオセンサー」の使用である。遺伝子的バイオセンサーでは、固定化されたバイオ認識エレメント(例えば、抗体、アプタマー、DNAオリゴヌクレオチド、酵素、レクチン、シグナリングタンパク質、輸送タンパク質)が、標的アナライトを選択的に認識するのに役立ち、結合またはコンバーション(当該アナライトが基質である場合)の現象は、サンプル内のアナライト濃度に関連する光学的、質量的、熱的または電子化学的応答を導く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオセンサーの開発は単純であるように思われるかもしれないが、分析的に有用なバイオセンサーを開発することに伴う多くの基本的な事柄がある。例えば、伝統的な方法は、標的アナライトを選択的に認識することができる適当なバイオ認識エレメントを同定することに依存する。適当な検出/形質導入法を用い、かつ、その本来の活性/アフィニティおよび選択性を保持するように、バイオ認識エレメントを固定化する[11-13]。バイオ認識エレメント−これは、伝導的な設計におけるバイオセンサーの心臓である−は、長時間安定を維持することを必要とし、標的アナライトがバイオ認識エレメントに接近させられることを必要とし、そして、アナライト-バイオ認識エレメントの会合/相互作用が、可逆的または少なくとも容易に解離され/次に続く各測定をリセットすることを必要とする。前記欠点は、アナライトの検出におけるバイオセンサーの適用を制限してきた。
【0006】
過去十年間に渡り、官能性モノマーのテンプレート指向性架橋結合による、合成ポリマー内での特異的結合ドメインの導入が、かなりの注目を引きつけてきた [15]。分子インプリンティングは、テンプレート(擬似標的アナライトまたは実際の標的アナライト)の周りに重合可能な官能性モノマーを配置し、この後、重合およびテンプレート除去を行うことを含む。配置は典型的には、(i)非共有相互作用(例えば、H-結合、イオン対相互作用)または(ii)可逆性共有相互作用により達成される。テンプレートを除去した後、これらの分子的にインプリントされたポリマー(MIP)は、特定の化学種(即ち、テンプレートまたはテンプレートアナログ)を認識および結合することができる。
【0007】
MIP-に基づく物質の潜在的な利益には、以下のものが含まれる。:バイオ認識エレメントに匹敵する特異性;過激な化学的および物理的条件下での強さおよび安定性;および、適当なバイオ認識エレメントを欠くアナライトのための認識部位を設計し得ること。MIPは、(完全な列挙ではないが)タンパク質、アミノ酸誘導体、糖およびその誘導体、ビタミン、ヌクレオチド塩基、殺虫剤、医薬、および多環芳香族炭化水素に関して開発されている。しかし、Lam[16]によれば、MIPに基づくバイオ擬態センサーの開発における主要な問題の一つは、シグナル導入である。
【0008】
当該導入形態としてルミネセンスを利用するMIPに基づくセンサーに関していくつかの報告がある。例えば、Powellグループ[17a]は、トランス-4-[p-(N,N-ジメチルアミノ)ストリル]-N-ビニルベンジルピリミジニウムクロライド(フルオロフォア)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよびイニシエーター、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いることにより、cAMP被インプリント有機ポリマーを形成した。これらのMIPは、1ミリモルのcAMPの存在下で蛍光の20%の変化を示し、かつ、それらはcGMPよりも cAMPに関して選択的であった。Murrayグループ[17b]は、Eu(R)3(NO3)3(R=ピナコリルメチルホスホネート又はジビニルメチルベンゾエート)(フルオロフォア)、スチレンおよびAIBNを用いることにより、ソマン(Soman)-被インプリント有機ポリマーを調製した。これらのMIPは、1000兆当たり750部を下るソマンを検出することができ、有機リン殺虫剤からの干渉は最少限度であった。当該センサー応答時間は8分であった。Takeuchiグループ[17c]は、9-エチルアデニン(9-EA)の検出のための蛍光に基づくMIPセンサーを報告した。このセンサーは、5,10,15-トリス(4-イソプロピルフェニル)-20-(4-メタアシルオイルオキシフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)(フルオロフォア)およびメタクリル酸を用いて9-EAを鋳造することに基づくものであった。CH2Cl2中で、これらのポリマーは7.5×105M-1の9-EA結合アフィニティを示し、アデニン、4-アミノピリジンおよび2-アミノピリジンよりも選択的であり、250ミクロモルの9-EAの存在下で40%の蛍光の変化を生じた。Wangグループ[17d]は、ダンシル化ジメチルアクリル酸モノマー(フルオロフォア)、エチレングリコールジメチルアクリレート、およびAIBNを用いた、L-トリプトファンを検出するための蛍光に基づくMIPセンサーを報告した。操作において、著者等は、ダンシル発光を消滅させる可動性のクエンチャー、4-ニトロベンズアルデヒド(4-NB)を、MIPへとロードした。L-トリプトファンの添加時、4-NBのいくらかが遊離し、ダンシル基をアクセスすることから遮断され、ダンシル蛍光が増加した。10ミリモルのL-トリプトファンを添加した際の蛍光の変化は45%であった。等量のD-トリプトファン、L-フェニルアラニンおよびL-アラニンの存在により、蛍光の32%、27%および<9%の変化が生じた。Lamグループ[16]は、光誘導性電子トランスファー(PET)法を用いて、鋳造されたゾル-ゲル誘導性キセロゲル内に、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)の検出のための蛍光に基づくMIPを形成した。この仕事において、著者等は、3-[N,N-ビス(9-アントリルメチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン(フルオロフォア)をテトラエトキシシラン(TEOS)およびフェニルトリメトキシシラン(PtrMES)と、2,4-Dを鋳型として用いてコポリマー化した。このように形成されたMIPは、pHと共に蛍光の変化を示し(見かけのpKa 7.2付近)、750ミクロモルの2,4-Dの存在下で、蛍光の15%の低下を生じた。安息香酸および酢酸を同様の濃度で用いた試験は、有意な干渉を生じなかった。
【0009】
ごく最近、Edmistonおよび共働者[17e]は、犠牲スペーサー(SS)スキーム[18]を用いることにより、殺虫剤1,1-ビス(4-クロロフェニル)2,2,2-トリクロロエタン(DDT)の検出のための蛍光に基づくキセロゲルMIPを作成するための方法を報告し、その中で彼らは、3-イソシアナトプロピルトリエチオキシシランを4,4'-エチリデンビスフェノールと反応させて、SSを形成した。彼らは次いで、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)をフルオロフォア4-クロロ-7-ニトロベンゾフラザン(NBD)と反応させること(NBDをAPTESアミンに結合すること、NBD-APTES)により、蛍光モノマーを調製した。インプリントされたキセロゲルを次いで、NBD-APTES、SSおよびビス(トリメトキシシリル)ベンゼンと混合した後、典型的な酸加水分解プロトコルにより形成した。一度キセノゲルが形成されるや、著者等は、希釈したLiAlH4でSSカルバメート結合を切断し、鋳型部位内にアミン残基を形成し、SSをキセロゲルから遊離させた。当該センサーはDDTに反応し(NBD蛍光の3%の変化)、鋳造されたキセロゲルは潜在的な干渉物質(例えば、アントラセン(A)、2,2-ビス(4-クロロフェニル)-1,1-ジクロロエチレン(p,p-DDE)、1-(2-クロロフェニル)-1-(4-クロロフェニル)-2,2-ジクロロエタン(o,p-DDD)、2,2-ビス(4-クロロフェニル)-1,1-ジクロロエタン(p,p-DDD)、ジフェニルメタン(DPM)、4,4'-ジブオモビフェニル(DBBP)、4.4'-ビス(クロロメチル)-1,1'-ビフェニル(BCP))よりもDDTに関して選択性を示した。DDTの検出限度は、10億当たり一桁のレベルであった。
しかし、ルミネセンスに基づくMIPセンサーに関する全ての従来の研究では、アナライトの結合が生じるときに、ルミネスセントレポーター分子が現にアナライトのすぐ近くに接近していることを確認する方法が開発されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、部位選択的にタグ付および鋳造された分子的にインプリントされたポリマーに基づく信頼性ある化学センサープラットフォームを形成するための方法を提供するものである。本方法において用いられるSSTT-MIP法により、アナライトに特異的な鋳型サイトを有し、当該部位においてレポーター分子をさらに結合し得るMIPを作成する方法が提供される。この方法では、アナライトの検出は、そのような位置づけのための手段を用いない方法と比較してより高い効率で行われ得る。本発明を用いて、シグナル対バックグラウンドおよびシグナル対ノイズ比等の測定特性が、Edmistonにより記載されている方法等の同様のMIP法の測定特性よりも改善されることが期待される。
【0011】
当該方法は、以下のステップを含む。本明細書において犠牲スペーサー分子テンプレート(SSMT)と呼ぶ、当該アナライトの擬態物を同定または作製する。次に、未重合の成分の重合をSSMTの存在下に開始し、SSMTが複数の反応基により結合される鋳型サイトを有するポリマープラットフォームの形成を得ることにより、SSMTをポリマープラットフォームへと組み込む。SSMTを次いで当該ポリマープラットフォームから除去し、当該プラットフォーム内に、標的アナライトおよび1種以上のレポーター分子のための1個以上の鋳型サイトを作製する。SSMTは、当該SSMTの除去により、アナライトおよび少なくとも一つのレポーター分子の結合のための反応基が鋳型部位に残るように選択する。SSMTの除去の後、鋳型部位をそれに結合するアナライトと接触させ、レポーターの結合(即ちタギング)をなすべき基を除く全反応基をブロックする。この複合体を次いでレポーター分子にさらす。アナライトを除去し、そして、生じたポリマープラットフォームは部位選択的にタグ付および鋳造された分子的にインプリントされたポリマー(SSTT-MIP)である。
【0012】
本発明はまた、鋳増部位が特定のアナライトのために形成されている、分子的にインプリントされたポリマープラットフォームを提供する。一態様では、鋳型サイトが、当該部位における反応基に結合した少なくとも一つのレポーター分子を有するポリマープラットフォームを提供することができる。一態様では、当該ポリマープラットフォームは、キセロゲルまたはエアロゲルを含む。
本方法を用いて、公知の生物学的な認識分子が報告されていないアナライトを含む広範なアナライトの検出のためのセンサーを開発することができる。
【0013】
発明の詳細な記載
本発明により、部位選択的にタグ付および鋳造された分子的にインプリントされたポリマー(SSTT-MIP)が提供される。SSTT-MIPは、アナライトの検出の効率を高めるために戦略的に設けられたレポーター分子を有する。理論に拘束されることを意図しないが、レポーター分子を囲んで当接するミクロ環境(本明細書中、レポーターのサイボタクティック領域と呼ぶ)の物理化学的特性(例えば、誘電率、屈折率、動態等)の変化が、レポーター分子の吸収、励起および発光スペクトル、励起状態のルミネセンスの寿命および/またはルミネセンス偏光の変化を生じる。結果として、レポーター分子およびMIP鋳型部位が、レポーター分子のサイボタクティック領域の一部ないし全てを共有する場合、レポーター吸収/ルミネセンス特性(即ち、分析シグナル)の大きな変化が現れると考えられる。ゆえに、アナライト分子がMIP鋳型部位に結合し、それによりMIP鋳型部位の物理化学的特性が変化すると、当該結合が、MIP鋳型部位のレポーター分子により同時に探知される。
【0014】
本発明の一態様では、レポーター分子は専ら鋳型部位に存在し、それにより、シグナル対ノイズ比およびシグナル対バックグラウンド比を減じる。この態様において、ポリマーマトリックス(即ち、鋳型サイト以外)に存在するレポーター分子は、殆どまたは全く存在しない。
本発明により、アナライトの検出中に、レポーター分子がアナライトに間近に接近して(即ち、レポーター分子のサイボタクティック領域内に)位置づけられるように、レポーター分子を選択的に鋳型サイトに取り付け得る、MIPを作成するための方法も提供される。
【0015】
本明細書中に用いる、「分子的にインプリントされたポリマー」または「MIP」は、概して、複数分子規模の鋳型サイトを有し、当該鋳型サイトの各々が1つのアナライト分子に特異的に結合する能力を有するゲルまたはポリマー鋳型様構造を意味する。鋳型サイトは、アナライト分子の少なくとも一部分の形状に相補する。さらに、鋳型サイトは、アナライトの部分(複数)の空間配置に適合する位置づけを有する相互作用部分(複数)を含む。鋳型サイトにおける当該部分(複数)は、アナライトにおける当該部分(複数)と相補的である。相補的な、により、鋳型サイトにおける部分がアナライトにおける位置的に対応する部分と相互作用して、結合ないし他の魅力的な会合、例えば静電気、共有、イオン、疎水性、水素結合または他の相互作用を形成し得ることを意味する。
【0016】
当該分野の専門家により理解されるように、MIPは典型的には、分析分子を1種またはそれ以上の官能性モノマーと混合し、インプリント/モノマー複合体を形成することにより、形成される(インプリント分子は共有、イオン、疎水性、水素結合または他の相互作用により、官能性モノマーの相補的部分と相互作用または結合している)。モノマー/アナライト複合体を次いで、架橋結合したポリマーマトリックスへと重合する。アナライト分子を次いで官能性モノマーから解離/切断し、これによりポリマーマトリックスから除去して、鋳造された認識部位を残す。鋳型サイトは、アナライトに特異的な形状を有する。当該分子規模の空洞部は、アナライトに選択的に結合する能力を当該空洞部に付与する、アナライト分子に相補的な部分を含む。
【0017】
先行技術のMIP法と異なり、本発明の方法では、本明細書中で犠牲スペーサー分子テンプレート(SSMT)と呼ぶアナライトの擬態を同定または作成し、次いでポリマープラットフォーム内に組み込む。SSMTは好ましくは標的アナライトに対して近似した構造的類似性を有する。さらに、SSMTは、結合されるアナライトにより形成される結合の数よりも多くの、ポリマープラットフォームとの結合を形成するように選択する。SSMTは、意図されるアナライトと比べて追加的な部位でポリマーマトリックスに結合し得るように、少なくとも一つの追加的な反応基を有するべきである。一態様では、SSMTをポリマープラットフォームに結合するSSMT上の反応基の数は、対応するアナライトにおける反応基の数よりも少なくとも1個多い。さらなる態様において、SSMTは、ポリマープラットフォームに結合する反応基の数および同一性を除き、アナライトと構造上同一である。SSMT-ポリマー結合に関与する基は、SSMTに含まれてよい。これらのSSMTポリマー結合は、SSMTの除去において最終的には切断される。
【0018】
概して、アナライトおよび対応するSSMTは構造上類似するが、SSMTにおける追加の官能基の存在によりしばしば異なる。しかし、化学的に異なる分子が同様に形作られてもよく、よって、近似の構造類似性がアナライトとSSMTの間の関連を完全に特定しなくてもよい。さらに、所定のアナライトに関して許容されるSSMTを生じ得る多くのわずかな構造上の変更が存在する。アナライト分子に対して結合選択性を示す他の効果、分子内水素結合、イオン相互作用、集合、カプセル化、ダイマー化などが、SSTT-MIPに生じてもよい。
【0019】
SSMTの除去により、本明細書中で簡便のために空洞と呼ぶ鋳型サイトが、ポリマープラットフォーム内に生じる。各鋳型サイトには、標的アナライト認識の役割を果たす反応基を露出させる。しかし、前記追加の反応基の結果として、SSMTを空洞から切断すると、空洞はアナライト分子を結合するのに必要とされる基よりも1個以上多くの反応基を有する。当該余分な基(1個または複数)を、レポーター分子と結合するのに用いる。一度レポーター分子(1個または複数)が鋳型サイトに結合されたら、SSTT-MIPからの吸収/ルミネセンスを測定し、レポーターのUV、可視またはIR吸収/ルミネセンス特性(例えば、吸収スペクトル、励起および発光スペクトル、励起状態のルミネセンスの寿命および/またはルミネセンス偏光)の変化は、鋳型サイトでのアナライト分子の存在を示す。吸収/ルミネセンスにおけるトータルの変化は一般に、サンプル中の分析分子の濃度に比例する。つまり、アナライト依存性の検量曲線を容易に構築することができる。
【0020】
一態様では、SSMTは、アナライトDDTおよび適当なSSMT分子、化合物1のケースにおいて図1にも示すように、その標的アナライトと比して一つの追加的官能基を有する。化合物1は4つの(EtO)3-Si-を先端に付けたカルバメート含有基を有するDDTのアナログである。これに対してDDTは、化合物1における前記基の位置の3つに類似する位置に3つのClを含む官能基を有する。MIPは1種以上の官能性モノマーを用いた重合を行うことにより作成され、有効なアルコキシド官能基により化合物1に結合する。重合はSSMTの周囲で生じ、(EtO)3-Siカルバメート基によりSSMTに結合されたポリマープラットフォームを生じる。SSMTを次いで、重合したプラットフォームから切断し、鋳型サイトを有するMIPが得られ、各部位は、その中へ伸長している4つのアミノ基を有する。このMIPを次いでDDTにさらし、このDDTは、ポリマーの組成およびその調製プロトコルに部分的に依存するアフィニティで当該鋳型部位に結合する。DDT分子は、鋳型部位における4つのアミノ基の3つと相互作用することによってさらに、鋳型部位に結合する(即ち、DDTにおける3つのCl基が、鋳型部位内の-NH2基に水素結合する)。化合物1における「余剰の」-OH基のために、前記ステップを用いて鋳造された空洞からこれが切断された時、アナライト、DDTを結合するのに必要とされるものに加えて一つのアミン残基が、鋳型部位に形成される。こうして、鋳型部位内に、アナライト、DDTに結合しない単一の遊離アミン基が存在する。当該遊離アミン残基は、アナライト、DDTの存在によりブロックされない。鋳型部位内部のこの遊離アミン基を次いで、レポーター分子、例えばリサミン(Lissamine)(登録商標)またはローダミンBスルホニルクロライドで部位選択的にタグ付し、そのサイボタクティック領域が、アナライトが結合する鋳型サイトを大きくオーバーラップするように、レポーター分子を位置づける。アナライトおよびあらゆる未反応のルミネセントプローブを次いで、重合化したプラットフォームから洗浄し、SSTT-MIPを作成する。ヒドロキシル基およびカルバメートケミストリーの使用は説明的な例であり、当業者は他の方法を理解するであろう。好ましくは、ポリマープラットフォームの完全性に評価し得る程の影響を及ぼすことなく用いることができるケミストリーが好ましく、カルバメート結合の使用が最も好ましい。
【0021】
SSTT-MIPからの解離後、SSMTは変更されてもよいことに注意すべきである。例えば、図1の例において、当該結合が切断されるとき、各カルバメート結合から窒素原子がアミン残基として後に残る。変更されたSSMT分子は、本明細書中、SSMT'(SSMTプライム)と呼ぶ。
本発明は、重合前に作成される官能性モノマーとSSMTの間の結合が、SSMTの放出に際して解離/切断されるケミストリーと共に用いることができる。そのような状況は、例えばヒドロキシル含有官能性モノマーの場合に生じ得、このモノマーはカルボキシル酸含有SSMTとエステル結合を形成し、この結合がSSMTの放出に際して、重合官能性モノマーから成るSSTT-MIPから切断される。しかし、(図1においてなしたように)切断されるべき、SSMTとの完全な結合(前記実施例に示すようなカルバメート)を組み込むことが好ましい。そのような場合、SSTT'は、アナライトと結合するための空洞に結合されたままの結合の一部を欠くので、特徴づけられる。
【0022】
多くの異なるタイプのポリマーシステムを本発明の方法で用いることができる。実施例の如く、ゾル-ゲル誘導性キセロゲルを用いることができる。しかし、当該アプローチを、エアロゲルまたは天然または合成ポリマーシステムに基づく他のMIPに対して容易に適合することができる。しかし、キセロゲルは、プレカーサーの選択および参考文献19〜28に記載されるようなプロセシングプロトコルにより調整可能な物理化学的特性および孔サイズを有するナノ多孔性材料であるので、ゾル-ゲル誘導性キセロゲルおよびエアロゲルが便利である。
【0023】
概して、本発明の方法で用いるポリマーは、重合化の前に、選択されたSSMTが少なくともいくつかのその成分モノマーと結合するかないしは化学的に相互作用することができるようなものであるべきである。つまり、例えば、図1に示す(EtO)3-Si-カルバメート基等の末端(EtO)3-Si-基を含む結合基を有するSSMTを、このアルコキシドに基づくSSMTとの加水分解によりシロキサンを形成し得る重合プレカーサーを含む重合システムと共に用いることができる。許容される重合プレカーサーの無制限の例は、図に示すような(EtO)3-Si-R'-Si-(EtO)3および(EtO)3-Si-R''基である。他の例は、当該分野の専門家に公知である(参考文献19〜28をご参照)。
【0024】
複数の反応部位を含む犠牲スペーサー分子テンプレート(SSMT)に関して、これらの追加部位は保護基を用いて遮断(保護)することができる。そのような保護基の例は、ベンジルオキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル(t-BOC)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)又はフェニル-SO2Clである。そのような保護/脱保護は当該分野の専門家に公知であり、文献29に記載されている。
概して、SSTT MIP法は、アナライトと比較して1個以上の余剰の官能基を有する適当なSSMTアナログを調製することができるアナライトに関して、特に適している。
SSTT-MIPはアナライトと会合または結合することができるべきである。例えば図1に示す会合は、(水素結合ならびに疎水性およびπ-π相互作用の)一例である。他のタイプの会合は、疎水性、水素結合などであり、アナライトおよびポリマーに基づくプラットフォームの特定の化学的側面を利用する相互作用の組合せである。
【0025】
本発明におけるレポーター分子は、ルミノフォアまたはクロモフォアであってよい。結合基をレポーター分子に結合することができ、またはいくらかのケースでは、レポーター分子は予め、結合基を結合されてもよい。SSTT-MIPの調製において、レポーター分子は鋳型部位に結合基により直接的に、または結合基とルミノフォア/クロモフォアの間に連結部分を用いることにより間接的に、結合されることができる。一態様では、レポーターは、連結基により結合基に結合されるルミノフォアである。結合基は、市場入手可能である(モレキュラープローブから等)。ルミノフォア、連結部分、および-SO2Cl結合基から成るレポーターの無制限の例を、特に図1および2に示す。
【0026】
ルミノフォアは有機または無機種であることができる。ルミノフォアの例には、フルオレセイン、BODIPY、ローダミンの様な有機種、トリス(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)([Ru(dpp)3]2+およびルミネセントナノ粒子(即ち、クアンタムドット (quantum dots))などの有機金属錯体が含まれる。クアンタムドットは、元素シリコン(Si)、カドミウムスルフィド(CdS)および亜鉛セレナイト(ZnSe)を有してよい。
(本明細書中、つなぎ鎖とも呼ぶ)連結部分は、ケミカルサイエンスにおいて互いに残基間に間隔を空けるのに用いられているあらゆる可能な天然または合成基の一つであり得る。連結部分の一般的な例は、メチレン鎖、エーテル鎖、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリスチレン鎖、アミノ酸鎖、およびあらゆる他の有機/無機オリゴマーである。
【0027】
鋳型サイトに結合される特定のタイプの基との結合を形成するのに用いることができる結合基の特定の例は、以下のようである。アミン残基をタグ付/標識するためには、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、カルボキシルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、カルボニルアジド、スルホニルクロライド、アリール化剤およびアルデヒドを用いることができ;チオール残基をタグ付/標識するためには、ヨードアセトアミド、マレイミド、アルキルハロゲン化物、アリール化剤、およびジスルフィドを用いることができ;アルコール基をタグ付/標識するためには、ジクロロトリアジン、N-メチルイサトイン無水物、アミノフェニルボロン酸、アシルアジドから調製されたイソシアネート、およびアシルニトリルを用いることができ;および、カルボン酸をタグ付/標識するためには、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンアミン、カルボジイミド、エステル化試薬、ジアゾアルカン、アルキルハロゲン化物、およびトリフルオロメタンスルホネートを用いることができる。
【0028】
連結部分は、鋳型部位に結合しているアナライト分子のクロモフォア/ルミノフォアにおける効果が検出するには小さすぎる程に、鋳型部位からクロモフォア/ルミノフォアを隔る程長くないことが好ましい。従って、レポーター分子のサイボタクティック領域と鋳型部位とがいくらかオーバーラップすることが望ましい。別法として、レポーター分子は、前記結合基の一つに直接結合することができる。
【0029】
レポーター分子は概して、UV、可視、および/またはIRにおいてルミネセンススペクトルを有するが、その物理化学的環境に反応する非ルミネセント性色素分子もレポーター分子としてSSTT-MIP法において用いることができる〔例えば、4-ニトロアニリンおよび2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート(レイチャードの色素30)、2,6-ジクロロ-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート(レイチャードの色素33)およびN,N-ジエチル-4-ニトロアニリン〕。クロモフォア/ルミノフォアの吸収および/または発光は、その局所環境の物理化学的特性に依存し、結果、モル吸収、吸収スペクトル、発光量子量、発光スペクトル、励起状態寿命および/またはルミネセンス偏光は(一つまたはすべて)、ある程度まで、レポーター分子を囲む局所的な物理化学的特性により変調される。物理化学的特性におけるこの変化は、アナライト分子の鋳型部位への結合により変調され、レポーター分子のモル吸収、吸収スペクトル、発光量子量、発光スペクトル、励起状態の寿命および/またはルミネセンス偏光の変化として検出される。適当なルミノフォアの例には、ダンシル、フルオレセイン、ローダミン、NBD、およびトリス(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)(Ru(dpp)3]2+が含まれる。適当なクロモフォアの例には、2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート(レイチャードの色素30)、2,6-ジクロロ-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート(レイチャードの色素33)、およびN,N-ジエチル-4-ニトロアニリンが含まれる。
【0030】
以下は、図1および2に示す本SSTT-MIP法により検出することができるアナライトの例である。可能なアナライト分子には、制限するものではないが、医薬、ステロイド、プロスタグランジン、グリコシド、デオキシリボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオチド等が含まれる。本方法により検出することができるアナライトおよびその犠牲スペーサー分子テンプレートを無制限に列挙したものを表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
SSTT-MIP法は、医薬(例えば、フェニトイン、コデイン、ヘロイン)、プロスタグランジン(例えば、A2、B2、F1a)、ステロイド(テストステロン、エストラジオール、プロゲステロン)およびグリコシド(メチル∀-D-グルコピラノシド、ジギトキシン、2-デオキシリボース)を検出および定量するためのセンサーの調製に特に有効である。しかし、当該方法は、広範なアナライトの検出のためのセンサーを調製するのに用いることができる。
【0033】
デオキシリボヌクレオチドの検出のために、バイナリー鋳造法を図2に示すように用いて、SSTT-MIPを作製することができる。塩基リボース犠牲スペーサー(塩基-リボース-SSTT)を、図1に示すカルバメート形成ケミストリーを用いて作成する。塩基-リボース-SSMTにおける塩基性基は、ウラシル(U)をテンプレートチミン(T)に対して用いる以外は、標的アナライトにおける塩基に適合するように選択することができる。塩基におけるアミン部位は必要に応じてFmoc保護/脱保護を用いて保護して、尿素の形成を防ぐことができる。塩基-リボース-SSMTは適当な第二の塩基テンプレート(塩基-2°-SSMT)およびキセロゲルの主成分(即ち、(EtO)3Si-R''-Si(EtO)3、Si(EtO)3および/または(EtO)4Si)と混合(1:1)することができ、鋳型キセロゲルを形成し、犠牲スペーサーを除去し、次いで鋳型部位を、クロモフォア/ルミノフォアで部位特異的にタグ付する。塩基-2°-SSMTにおける塩基残基は、標的アナライトにおける塩基と相補するように(Tに関してAおよびCに関してGおよびその逆)選択することができる。塩基-2°-SSMTは2つのステップで調製することができる。例として、レオナードの方法[30]を用いて、9-(3-クロロプロピル)アデニン、9-(3-クロロプロピル)グアニン、3-(3-クロロプロピル)チミンおよび3-(3-クロロプロピル)シトシンを作成することができる。誘導された塩基を次いで3-メルカプトプロピル-トリエチオキシシラン(MPTES)と反応させて、図2に示す塩基-2°-SSMTを形成する。
【0034】
本発明の一態様において、複数の整調可能なセンサーを各標的アナライトに関して設計および開発することができる。ここでは、SSTT-MIPライブラリーの同時スクリーニングを行って、SSTT-MIP分析パーフォーマンスを最も効果的にし、反応特性が当該セット内にて、所定のアナライトに関して最大の相違を示すSSTT-MIPのセットを同定することができる。本反応データの一つの例を示し(図3)、SSTT-MIPが一つのアナライトに関して他よりも反応において実質的な差を生じ得ることを示す。第二の例を図4に示し、SSTT-MIPプラットフォームからの反応の有意な変化が、単にキセロゲルを形成するために用いるプレカーサーの一つを、(EtO)3-Si-(CH2)2-Si-(OEt)3から (EtO)3-Si-フェニル-Si-(OEt)3に、(EtO)3-Si-ビフェニル-Si-(OEt)3に変更して、3つの異なるキセロゲルに基づくSSTT-MIPを作成することにより可能であることを示す。
【0035】
このような複数のセンサーを協調的に使用することにより、全検出の正確さ、精度、および動作範囲を改良することができる。誤りのポジティブおよびネガティブも、複数の整調可能なセンサーおよび冗長性検出スキーマを用いることにより、より容易に検出することができる。
別個のSSTT-MIPに基づくセンサーエレメントのアレイを、光源の表面に形成することができ、アレイに基づくディテクターを用いて検出することができる。光発光ダイオード(LED)の表面におけるセンサーアレイの形成および複数のアナライトの同時検出は、出典明示により本明細書に組み込まれる米国特許第6,492,182号、第6,582,966号および第6,589,438号に記載されている。各SSTT-MIPに基づくセンサーエレメントは、特定の標的アナライトに関する個々のセンサーとして役立ち得る。操作において、LEDは光源として作用して、LED表面における全SSTT-MIPセンサーエレメント内のクロモフォア/ルミノフォアを同時に励起させ、全SSTT-MIPに基づくセンサーエレメントからの標的アナライトに依存する吸収/発光を、アレイディテクター(例えば、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体 (CMOS))により検出することができる。各SSTT-MIPに基づくセンサーエレメントからのレポーター分子吸収/ルミネセンスを次いで、サンプル中の対応する標的アナライト濃度に関連付ける。
【0036】
SSTT/MIPセンサーアレイからの吸収/ルミネセンスは、広範なフォトニックディテクターを用いて検出できる。フォトニックディテクターの例には、光ダイオード、光増幅チューブ、電荷結合素子 (CCD)またはCMOSに基づく画像ディテクターが含まれる。検出装置がアレイディテクターである場合、センサーエレメントの全SSTT-MIPアレイを同時に評価することができる。
他の態様では、ピンプリンティング法を用いて、同時マルチアナライト検出のためのセンサーアレイを開発することができる。これにより、直接的な、集積された励起/探知のために、外部光源(レーザー、ランプ)によりまたはLEDの表面において励起され得る基質上の複数のセンサーエレメントの高速インプリンティングが可能となる。
本発明を以下に記載の実施例にさらに記載するが、かかる実施例は説明としてのものであり、いかにしても限定を意図するものではない。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
本実施例では、標的アナライトとしてのDDTの選択的検出のためのSSTT-MIPの調製を記載する(図1)。まず、犠牲スペーサー分子テンプレート(SSMT)を合成した。この例に関しては、これは2ステップ法であった。ステップ1で、4,4',4''-トリヒドロキシトリフェニルメタノール(HBHE)をCushmanにより報告されている合成法[31]を用いて調製した。ステップ2で、完全なSSMTを、1等量の4,4',4''-トリヒドロイシトリフェニルメタノールを過剰の3-イソシアナトプロピルトリエチオキシシラン(IPTES)と乾燥THF中で記載のごとく反応させることにより形成し、テトラカルバメート、(化合物1)SSMTを形成した。1Hおよび13CNMR(500MHz)、IRおよびMSデータ(示さず)は、化合物1における全4つのカルバメート結合の形成と全て一致した。次いで、1等量の化合物1を100〜500等量の、いくつかのアルコキシドの一つと反応させることにより、鋳造されたキセロゲルを調製した(図1をご参照)。この混合物を数分間から数時間攪拌した。封じた容器中でゾルを加水分化させた後、薄いフィルム(プロフィロメトリーで測定して500〜800nm)を、溶解したシリカ基質上にスパンキャストし、次いでキセロゲルを暗中24〜48時間室温で形成させた。50〜200mMのLiAlH4を用いること[17e]により、鋳造されたキセロゲルからSSMTを除去し、次いでTHF、0.1M HClおよび0.1MNH3で連続的にリンスした。レポーター分子を鋳型サイトに付着するために、我々は鋳造されたキセロゲルフィルムをTHF中10〜200ppmのDDTと接触させ、接近可能な鋳型サイトをDDTで満たした。これにより、各鋳型サイト内に単一の遊離アミン残基が残った(図1)。レポーター分子を次いでTHF溶液にマイクロピペットで導入し、遊離アミンとレポーター中の結合基(-SO2Cl)との反応を暗中室温にて2時間進行させた。キセロゲルフィルムを次いで新鮮なTHFでリンスしてあらゆる未反応のレポーター分子およびDDTを除去し、SSTT-MIPを作成した。
【0038】
[実施例2]
本実施例では、実施例1に記載するように調製したSSMT-MIPの使用を記載する。図3に、DDTの検出のために設計した一揃えのキセロゲルに基づくSSTT-MIPフィルムからの反応特性をまとめる。これらの特定の実験のためのディテクターは光増幅チューブであった。これら特定のSSTT-MIPのために、ビフェニルをR'基として用いた(図1を参照されたい)。DDTをSSTT-MIPに添加したとき、蛍光はDDTの添加と共に徐々に低下した(クエンチング)。DDTに関するSSTT-MIPの選択性の初期試験として、これらのSSTT-MIPフィルムをTHF中で、過剰のフェニル-SO2Clと反応させ、いくつかの遊離アミンを有するスルホンアミドを形成した。フェニル-SO2Clで処理したSSTT-MIPフィルムの反応を次いで再度測定した。試験したDDTの濃度範囲に渡り、検出可能な反応はなかった。これらの結果は、フェニル-SO2ClがDDTの不在下ではSSTT-MIPの鋳型サイトに接近し、SSTT-MIP内部の接近可能なDDT鋳型部位内の1種以上の遊離アミン残基とスルホンアミドを形成したことを示す。第二の試験では、HBHEをDDTのために鋳造されたSSTT-MIPに導入した。HBHE、ヒドロキシル化DDTアナログは、SSTT-MIPにより容易に認識されたが、観察された反応特性は、DDTの反応と比較して完全に異なっていた。この結果は、アナライト依存性の反応特性がSSTT-MIPを用いて可能であることを示す。再び、これらのSSTT-MIPフィルムをフェニル-SO2Clで処理したとき、HBHEに対する反応はなかった(結果は示さず)。しかし、DDTに対して鋳造されたSSTT-MIPを、まず80ppbのHBHEを含むTHF溶液でチャレンジした後、(15分待って)250ppbのDDTを添加したとき、ルミネセンスは初期にはHBHEの存在下で125±3%まで増加し、次いでDDTを追加したとき、9±2%まで低下した。この結果は、DDTがHBHEのいくらかを置換できることを示唆する。同様に、DDTに対して鋳造されたSSTT-MIPを60ppbのDDTでチャレンジし、次いで85ppbのHBHEを添加した時、ルミネセンスはDDTの存在下で低下し、次いでHBHEを添加すると、122±4%まで増加した。この結果は、HBHEがDDTのいくらかを置換できることを示す。共に、これらの結果は、SSTT-MIP法を、アナライト選択的なルミネセンスに基づくセンサーを作製するのに用いることができることを示す。
【0039】
[実施例3]
本実施例では、SSTT-MIP操作原理のいくらかを説明する。DDTまたはHBHEを用いた場合および用いない場合の、(THFに浸された)SSTT-MIPフィルムの定常状態のルミネセンスアンイソトロピー(r)および振幅位相変調トレース(時間分解ルミネセンス強度減衰と同義)を記録した。結果を表2にまとめる。
【0040】
【表2】

【0041】
表はいくつかの重要な特性を示す。まず、リサミン(登録商標)ローダミンB(LRB)残基のルミネセンスアンイソトロピーは、アナライトを用いた場合のSSTT-MIPと比較してアナライトを用いない場合のSSTT-MIPに関してかなり小さい。次に、アナライトを用いない場合のSSTT-MIPに関する強度減衰の動態は明らかに分散しており、ルミノフォア(即ちLRB)がアナライトの不在下にSSTT-MIP鋳型部位内のミクロ環境/サイボタクティック領域の分散に遭遇していることを示す。第三に、DDTをSSTT-MIPに添加した場合、平均LRB寿命は変化しない。第四に、HBHEをSSTT-MIPに添加すると、平均LRB寿命は増す。最後に、SSTT-MIPにおけるアナライトの存在により、寿命が一次指数型となる。これらの結果は併せて以下のことを示す。アナライトを用いない場合のSSTT-MIP鋳型部位内のルミネセントレポート基は相対的に可動性であり、ミクロ環境/サイトタクティック領域の広い分散に遭遇する。DDTの存在下では、DDT分子は鋳型サイト内でルミノフォアの動きを妨げ、DDTが当該ルミノフォアをより離れたミクロ環境に押しやるか、他のミクロ環境への接近を制限し、DDTが静力学的な態様でルミノフォア蛍光を減衰させる(平均寿命は変化しないようである)。HBHEの存在下で、HBHE分子はルミノフォアの動きを妨げ、HBHEはルミノフォアをより離れたミクロ環境へと押しやり、そしてHBHEがルミノフォアをクエンチャーから保護し、および/または平均寿命の増加を生じる局所ミクロ環境の硬さ(rigidity)を増す。
【0042】
図3は、DDTに対して鋳造されたSSTT-MIPセンサーの、150ppbのDDTによる反復チャレンジに対する反応特性を示す。これらの連続的なフロー実験は、流動しているTHF流に、150ppbプラグのDDTを注入することにより行った。これら550±150nm厚のSSTT-MIPフィルムに関する応答時間(最大のシグナル変化の90%に送達する時間)は、20秒のオーダーであり、反応は4%以内まで可逆的である(20サイクル)。
【0043】
図4に、DDTに対して各々鋳造された3つの異なるSSTT-MIPセンサーフィルムに関する一連の反応実験をまとめる。これらの3つのSSTT-MIPフィルムの間の僅かな違いは、最終的なキセロゲルを形成するのに用いたプレカーサー((EtO)3-Si-(CH2)2-Si-(OEt)3、(EtO)3-Si-フェニル-Si-(OEt)3または(EtO)3-Si-ビフェニル-Si-(OEt)3)の選択であった。これらのデータの洞察は、いくつかの興味深い態様を示す。まず、これらのSSTT-MIPセンサーは多数の構造的に同様のアナライトよりもDDTに関して選択的である。第二に、R'基の選択(図1)を用いて、全センサーの選択性を整調することができる。特に、R'のサイズが低下するにつれて、全般的にDDT選択性が改良される。これらの結果は、SSTT-MIPに基づくセンサーエレメント(複数)のアレイであって、各センサーエレメントが所定のアナライトに関して設計され得るもの、および、当該アナライトのために仕立てられたセンサーエレメントの集合的反応を形成するための方法を明示する。この方法で、複数のセンサーを、同じアナライトの検出;自己チェック性の冗長的方法のために、設計することができる。
【0044】
[実施例4]
本態様において、2つの他のアナライト、即ちコデインおよびジギトキシン(モルフィネおよびジゴキシンを各々用いて、SSMTを形成した)の検出のためのSSMT-MIPを記載する。表3は、コデインおよびジギトキシンの検出のために設計された一対のSSTT-MIPに基づくセンサーに関する、キセロゲル組成、連結部分の長さおよびルミノフォア同一性などの変数の効果を示す。
【0045】
【表3】

【0046】
a)キセロゲルのモル組成
b)鋳型部位内の官能基/官能性結合基
c)D-ルミノフォアに対する結合基の直接結合、C3−結合基とルミノフォアの間のプロピルスペーサー、C6−結合基とルミノフォアの間のヘキシルスペーサー
d)45モル%のテトラエチルオルトシラン(TEOS)、5モル%のオクチルトリメトキシシラン(OTS)、および50モル%のビス(2-ヒドロキシ-エチル)アミノプロピルトリエトキシシラン(HAPTS)
e)85モル%のTEOS、5モル%のOTS、および10モル%のHAPTS
f)47モル%のTEOS、33モル%の3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(TFP-TMOS)、および20モル%のOTS
g)25%のTEOS、40モル%の(ペンタフルオロフェニル)-プロピルトリメトキシシラン(PFP-TMOS)および35モル%のTFP-TMOS
h)50モル%のTEOS、10モル%のPFP-TMOS、10モル%のTFP-TMOS、20モル%のOTS、および10モル%のTFP-TMOS
【0047】
特定の態様を本記載において示したが、当業者は通常の変更が当業者により、本発明の範囲から離れることなくなされ得ることを理解するであろう。
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31. Cushman, M.; Kanamathareddy, S.; De Clercq, E.; Schols, D.; Goldman, M. E.; Bowen, J. A.、「低分子量アウリントリカルボン酸フラグメントおよび関連化合物の合成および抗-HIV活性」,J. Med. Chem. 1991, 34, 337-42.
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、ゾル-ゲル誘導性キセロゲルプラットフォームに基づく部位選択的にタグ付および鋳造された分子的にインプリントされたポリマー(SSTT-MIP)を作製するための典型的な反応スキームを図示したものである。標的アナライトはDDTである。
【図2】図2は、デオキシヌクレオシド選択的SSTT-MIPセンサーエレメントを作製するためのバイナリー鋳造法を図示したものである。
【図3】図3は、DDTの検出のために設計された(図1を参照されたい)SSTT-MIPセンサーに関する反応曲線を図示したものである。HBHEは、1-ヒドロキシ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;DDTのヒドロキシル化アナログである。
【図4】図4は、100ppbの表示の分子を用いてチャレンジした場合の、DDTに対して各々鋳造された3つの別個のSSTT-MIPセンサーからの反応を図示したものである。3つのSSTT-MIPセンサーは、異なるR'基(例のR'基に関して全部ではないが列挙したものを、当該図および図1に示す)を有する別個のプレカーサーから誘導した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナライトの存在を検出するための分子的にインプリントされたポリマーであって、当該アナライトを選択的に結合可能な少なくとも一つの鋳型サイトを含み、当該鋳型サイトが露出反応基を有し、当該露出反応基の数が、前記アナライトを選択的に結合するのに必要とされる露出反応基の数よりも多い、分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項2】
鋳型サイトに前記アナライトを選択的に結合するのに必要とされない一露出反応基に結合された一レポーター分子を前記鋳型サイトにさらに含む、請求項1に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項3】
前記鋳型サイトにおける前記露出反応部位の数が、前記アナライトを選択的に結合するのに必要とされる前記反応基の数より1個多い、請求項1に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項4】
前記1個以上の露出反応基に結合されたアナライト分子をさらに含む、請求項1に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項5】
前記アナライトが、医薬、プロスタグランジン、ステロイド、グリコシド、デオキシリボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオチドから成る群から選択される、請求項1に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項6】
前記レポーターが、ルミノフォアまたはクロモフォア、連結基および結合基を含む、請求項1に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項7】
前記ルミノフォアが、ダンシル、フルオレセイン、BODIPY、ローダミン、トリス(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)([Ru(dpp)3]2+およびクアンタムドットから成る群から選択される、請求項6に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項8】
前記クロモフォアが、4-ニトロアニリン;2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート(レイチャードの色素30);2.6-ジクロロ-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート;およびN,N-ジエチル-4-ニトロアニリンから成る群から選択される、請求項6に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項9】
前記連結基がメチレン鎖、エーテル鎖、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリスチレン鎖またはアミノ酸鎖である、請求項6に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項10】
前記結合基が、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、カルボキシルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、カルボニルアジド、スルホニルクロライド、アリール化剤、アルデヒド、ヨードアセトアミド、マレイミド、アルキルハロゲン化物、ジスルフィド、ジクロロトリアジン、N-メチルイサトイン無水物、アミノフェニルボロン酸、アシルアジドから調製されたイソシアネート、アシルニトリル、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンアミン、カルボジイミド、エステル化試薬、ジアゾアルカン、アルキルハロゲン化物、およびトリフルオロメタンスルホネートから成る群から選択される、請求項6に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項11】
前記医薬が、フェイトイン、コデイン、ヘロイン、コカイン、Δ9-THC、テトラサイクリン、モルフィネから成る群から選択され、前記SSMTが、5-(p-ヒドロキシフェニル)又は-5-フェニルヒダントイン、モルフィネ、3-アセチルモルフィネ、p-ヒドロキシコカイン、8-α-ヒドロキシ-Δ9-THC、オキシテトラサイクリンおよびナルブフィンから成る群から各々選択される、請求項5に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項12】
前記プロスタグランジンが、プロスタグランジンA2、プロスタグランジンB2、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE2、プロスタグランジンF1a、プロスタグランジンF2a、プロスタグランジンF2aから成る群から選択され、前記SSMTが、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンA2、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンB2、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンE1、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンE2、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンF1a、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンF2aおよび19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンF2aから成る群から各々選択される、請求項5に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項13】
前記ステロイドが、テストステロン、エストラジオール、プロゲステロン、コレステロールから成る群から選択され、前記SSMTが、4-ヒドロキシテストステロン、4-ヒドロキシエストラジオール、17-α-ヒドロキシプロゲステロンおよび22(r)-ヒドロキシコレステロールから成る群から各々選択される、請求項5に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項14】
前記グリコシドが、メチルα-D-グルコピルノシド、メチルβ-D-グルコピルノシド、ジギトキシン、2-デオキシリボースから成る群から選択され、前記SSMTが、α-D-グルコピラノース、β-D-グルコピラノース、ジゴキシンおよびリボースから成る群から各々選択される、請求項5に記載の分子的にインプリントされたポリマー。
【請求項15】
アナライトを特異的に検出するための、部位選択的にタグ付され分子的にインプリントされたポリマーを調製するための方法であって、以下のステップを含む方法:
a)未重合のポリマー成分を1種以上の犠牲スペーサー分子テンプレート(SSMT)分子と結合させるステップ;ここで、前記SSMT分子は前記アナライトよりも少なくとも1個多い反応基を有する、
b)前記未重合の成分を重合させ、これにより、前記ポリマー中に鋳型サイトを形成するステップ;ここで、各鋳型サイトは複数の結合により一SSMT分子に結合される、
c)前記鋳型サイトから前記SSMT分子を放し、これにより、複数の露出反応基を有する鋳型サイトを、各鋳型サイトにおける前記露出反応基の数が、前記アナライト分子における反応基の数よりも多くなるように形成するステップ、
d)前記アナライト分子の、複数の露出反応基を有する前記鋳型サイトへの結合をもたらすステップ;ここで、各鋳型サイトにて少なくとも1つの露出反応基が遊離状態に置かれる、
e)一レポーター分子の前記露出遊離反応基への結合をもたらすステップ、および、
f)前記アナライト分子を放し、これにより、試験サンプル中の前記アナライトの存在を特異的に検出することができる部位選択的にタグ付された分子的にインプリントされたポリマーを提供するステップ。
【請求項16】
前記ポリマーがキセロゲルまたはエアロゲルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記SSMT分子における前記少なくとも1個多い反応基がヒドロキシル基を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ステップa)における前記未重合の成分を1タイプよりも多いSSMT分子と結合し、当該SSMT分子の各タイプが同じアナライトの擬態であり、これにより、部位選択的にタグ付された分子的にインプリントされたポリマーであって、前記同じアナライトに関する異なる検出限度を有する鋳型サイトを有するものを形成する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
鋳型サイトを形成するのに用いられる前記SSMTが、化学的残基を離すことなく除去される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記SSMTが、ステップc)で、前記鋳型部位における化学的残基を離すことなく前記鋳型サイトから放される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記残基がアミノ基である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記レポーターが、ルミノフォアまたはクロモフォア、連結基および結合基を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記レポーターが、ダンシル、フルオレセイン、BODIPY、ローダミン、トリス(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)([Ru(dpp)3]2+およびクアンタムドットから成る群から選択されるルミノフォアである、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
クロモフォアが、4-ニトロアニリン;2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート(レイチャードの色素30);2,6-ジクロロ-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート;およびN,N-ジエチル-4-ニトロアニリンから成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記連結基が、メチレン鎖、エーテル鎖、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリスチレン鎖およびアミノ酸鎖から成る群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記結合基が、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、カルボキシルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、カルボニルアジド、スルホニルクロライド、アリール化剤、アルデヒド、ヨードアセトアミド、マレイミド、アルキルハロゲン化物、ジスルフィド、ジクロロトリアジン、N-メチルイサトイン無水物、アミノフェニルボロン酸、アシルアジドから調製されたイソシアネート、アシルニトリル、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンアミン、カルボジイミド、エステル化試薬、ジアゾアルカン、アルキルハロゲン化物、およびトリフルオロメタンスルホネートから成る群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記アナライトが、医薬、プロスタグランジン、ステロイド、グリコシド、デオキシリボヌクレオシド、およびデオキシリボヌクレオチドから成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記医薬が、フェイトイン、コデイン、ヘロイン、コカイン、Δ9-THC、テトラサイクリン、モルフィネから成る群から選択され、前記SSMTが、5-(p-ヒドロキシフェニル)又は-5-フェニルヒダントイン、モルフィネ、3-アセチルモルフィネ、p-ヒドロキシコカイン、8-α-ヒドロキシ-Δ9-THC、オキシテトラサイクリンおよびナルブフィンから成る群から各々選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記プロスタグランジンが、プロスタグランジンA2、プロスタグランジンB2、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE2、プロスタグランジンF1a、プロスタグランジンF2a、プロスタグランジンF2aから成る群から選択され、前記SSMTが、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンA2、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンB2、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンE1、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンE2、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンF1a、19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンF2aおよび19(R)-ヒドロキシプロスタグランジンF2aから成る群から各々選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記ステロイドが、テストステロン、エストラジオール、プロゲステロン、コレステロールから成る群から選択され、前記SSMTが、4-ヒドロキシテストステロン、4-ヒドロキシエストラジオール、17-α-ヒドロキシプロゲステロンおよび22(r)-ヒドロキシコレステロールから成る群から各々選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
前記グリコシドが、メチルα-D-グルコピルノシド、メチルβ-D-グルコピルノシド、ジギトキシン、2-デオキシリボースから成る群から選択され、前記SSMTが、α-D-グルコピラノース、β-D-グルコピラノース、ジゴキシンおよびリボースから成る群から各々選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項32】
試験サンプル中のアナライトの存在を検出するための方法であって、以下のステップ:
a)前記アナライトに特異的な少なくとも一つの鋳型部位を有し、当該鋳型部位がそれに結合した少なくとも一つのレポーター分子を有する部位選択的にタグ付された分子的にインプリントされたポリマーと前記試験サンプルを接触させるステップ;
b)前記試験サンプルに曝した際の前記レポーター分子からの発光の変化を検出するステップ、
を含み、レポーター分子からの前記発光の変化が、前記試験サンプル中の前記アナライトの存在を示す方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−525570(P2007−525570A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544056(P2006−544056)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/041560
【国際公開番号】WO2005/056613
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506194117)ザ リサーチ ファウンデイション オブ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク (11)
【Fターム(参考)】