説明

センサー装置の製造方法及びセンサー装置

【課題】焦電センサーとボンディングパッドとを同一の基板に効率良く形成することができ、また、特別なプロセスを追加することなくボンディングパッドの剥離を抑制できるようにしたセンサー装置の製造方法及びセンサー装置を提供する。
【解決手段】基板上の第1領域に第1導電部を形成する工程と、第1導電部上に焦電体を形成する工程と、焦電体上に第2導電部を形成する工程と、第2導電部上及び、基板上の第2領域にそれぞれ第1絶縁膜を形成する工程と、第1絶縁膜の一部を除去して、第1領域に第2導電部を底面とする第1開口部を形成し、第2領域に第2開口部を形成する工程と、第1開口部及び第2開口部にそれぞれ第3導電部を埋め込む工程と、第1領域において焦電体を覆い、第2領域において第3導電部を覆う第2絶縁膜を形成する工程と、第2絶縁膜の一部を除去して第3導電部を底面とする第3開口部を形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサー装置の製造方法及びセンサー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。即ち、特許文献1には、焦電膜(強誘電体膜)と、焦電体の下側に接続された下部電極と、焦電体の上側に接続された上部電極と、を有する構造の焦電型光検出素子が開示されている。
焦電型光検出素子は、焦電体の温度による分極状態を焦電流で捉える。すなわち、焦電型光検出素子に光(例えば、赤外線等)が照射されると焦電体の温度が変化する。焦電体では、温度変化があると自発分極量に変化が生じて表面電荷量に変化が生じ、温度変化がないと表面電荷は中和する。焦電体の表面電荷量が変化することに伴い、上部電極と下部電極との間には焦電流が流れる。焦電型赤外線検出素子は、この焦電流を検出することによって、照射された赤外線等の光量を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−153851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、焦電型光検出素子が形成される基板には、通常、焦電型光検出素子(又は、基板に形成される他の素子)と外部端子とを電気的に接続するためのボンディングパッドも形成される。特許文献1には、焦電型光検出素子(以下、焦電センサーともいう。)と同一の基板に搭載されることに適した構造のボンディングパッドと、その形成方法とに関して、具体的な開示がなかった。
【0005】
そこで、本発明者は、上記のボンディングパッドを、焦電センサーの下部電極又は上部電極を形成する工程で同時に形成する方法を考えた。この方法によれば、下部電極又は上部電極の形成工程を利用してボンディングパッドを形成するため、ボンディングパッドを形成するための専用工程を少なくすることができる。このため、焦電センサーとボンディングパッドとを同一の基板に効率良く形成できる、という顕著な効果を奏する。
【0006】
しかしながら、上記の方法において、焦電センサーの下部電極又は上部電極に白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属が含まれている場合は、ボンディングパッドにも貴金属が含まれることとなる。ボンディングパッドにPt、Ir等の貴金属が含まれていると、ボンディングパッドと基板側(例えば、基板の表面を覆うシリコン酸化膜(SiO2)等)との密着性が十分でなく、ワイヤーボンディングの際にボンディングパッドが基板側から剥がれてしまう可能性が考えられた。また、このような可能性を低減するために、ボンディングパッドに剥離防止を目的とした特別なプロセスを追加することも考えられるが、その場合は、工程数が増えて製造方法が複雑となる。
【0007】
そこで、この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、焦電センサーとボンディングパッドとを同一の基板に効率良く形成することができ、また、特別なプロセスを追加することなくボンディングパッドの剥離を抑制できるようにしたセンサー装置の製造方法及びセンサー装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンサー装置は、基板上の第1領域に焦電センサーを有すると共に、前記基板上の前記第1領域とは異なる第2領域にボンディングパッドを有するセンサー装置の製造方法であって、前記第1領域に第1導電部を形成する工程と、前記第1導電部上に焦電体を形成する工程と、前記焦電体上に第2導電部を形成する工程と、前記第2導電部上及び、前記第2領域にそれぞれ第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜の一部を除去して、前記第1領域に前記第2導電部を底面とする第1開口部を形成し、前記第2領域に第2開口部を形成する工程と、前記第1開口部及び前記第2開口部にそれぞれ第3導電部を埋め込む工程と、前記第1領域において前記焦電体を覆い、前記第2領域において前記第3導電部を覆う第2絶縁膜を形成する工程と、前記第2絶縁膜の一部を除去して前記第3導電部を底面とする第3開口部を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
このような製造方法であれば、焦電センサーにおいて第2導電部と第3導電部とを電気的に接続するための第1開口部と、ボンディングパッドにおいて第3導電部を埋め込むための第2開口部とを同時に形成することができる。また、焦電センサーに接続する第3導電部と、ボンディングパッドを構成する第3導電部と、を同時に形成することができる。また、焦電センサーを覆って光吸収膜として機能する第2絶縁膜と、ボンディングパッドの一部を覆って保護膜として機能する第2絶縁膜と、を同時に形成することができる。
【0010】
このように、上記の製造方法によれば、焦電センサーや、焦電センサーに接続される第3導電部、焦電センサーを覆って光吸収膜として機能する第2絶縁膜の各形成工程を利用して、ボンディングパッドや、ボンディングパッドの一部を覆う保護膜をそれぞれ形成することができる。従って、工程数の増加を抑えつつ、焦電センサーとボンディングパッドとを同一の基板上に効率良く形成できる。
【0011】
また、第2領域は、第1導電部及び第2導電部が残存せず、第3導電部が残存した構造に形成される。このため、第2領域において、例えば第1導電部が残存する場合と比べて、ボンディングパッドの高さを低くすることができる。さらに、第3導電部の構成材として、例えば窒化チタン(TiN)など、貴金属以外の材料を用いることができる。このため、ボンディングパッドと基板側との密着性を高く保持することができる。特別なプロセスを追加することなく、ボンディングパッドが基板側から剥離することを抑制することができる。なお、本発明の「基板」としては、例えば、後述するシリコン基板1が該当する。「第1領域」としては、例えば、後述するセンサー領域が該当する。「第2領域」としては、例えば、後述するパッド領域が該当する。「第1導電部」としては、例えば、後述する下部電極25が該当する。「第2導電部」としては、例えば、後述する上部電極29が該当する。
【0012】
また、上記のセンサー装置の製造方法において、前記第3開口部を埋め込むように前記第2領域の前記第2絶縁膜上に第4導電部を形成する工程と、前記第4導電部上及び前記第1領域の前記第2絶縁膜上にそれぞれ第3絶縁膜を形成する工程と、前記第3絶縁膜の一部を除去して前記第4導電部を底面とする第4開口部を形成する工程と、をさらに含むことを特徴としてもよい。このような製造方法であれば、ボンディングパッドに導電性ワイヤーの一端を密着性高く接合することができる。例えば、第3導電部が窒化チタン(TiN)であり、導電性ワイヤーが金(Au)線の場合でも、窒化チタンと金とが直に接することがないため、ボンディングパッドと導電性ワイヤーとの密着性を高めることができる。なお、本発明の「第4導電部」としては、例えば、後述する電極層37が該当する。
【0013】
また、上記のセンサー装置の製造方法において、前記第1導電部を形成する工程、前記焦電体を形成する工程及び前記第2導電部を形成する工程は、前記第1領域及び前記第2領域にそれぞれ第1導電部を形成し、前記第1導電部上に焦電体と第2導電部とを積層し、前記第2領域の前記第2導電部を除去して前記焦電体を露出させ、露出した前記焦電体を除去して前記第2領域の前記第1導電部を露出させ、露出した前記第1導電部を除去する工程、であることを特徴とする。このような製造方法であれば、第1領域には第1導電部と焦電体及び第2導電部が積層され、第2領域には第1導電部と焦電体及び第2導電部が存在しない構造を形成することができる。
【0014】
本発明の別の態様に係るセンサー装置は、基板上の第1領域に焦電センサーを有すると共に、前記基板上の前記第1領域とは異なる第2領域にボンディングパッドを有するセンサー装置であって、前記第1領域に形成された第1導電部と、前記第1導電部上に形成された焦電体と、前記焦電体上に形成された第2導電部と、前記第2導電部を覆うように前記基板の上方に形成され、前記第2導電部を底面とする第1開口部を有し、前記第2領域に第2開口部を有する第1絶縁膜と、前記第1開口部及び前記第2開口部にそれぞれ埋め込まれた第3導電部と、前記第1領域において前記焦電体を覆い、前記第2領域において前記第3導電部を覆い、前記第2領域の前記第3導電部を底面とする第3開口部を有する第2絶縁膜と、を備えることを特徴とする。このような構成であれば、上記の製造方法により製造可能なセンサー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るIRセンサー装置100の構成例を示す図。
【図2】IRセンサー装置100の製造方法を示す図(その1)。
【図3】IRセンサー装置100の製造方法を示す図(その2)。
【図4】IRセンサー装置100の製造方法を示す図(その3)。
【図5】IRセンサー装置100の製造方法を示す図(その4)。
【図6】本発明の第2実施形態に係るIRセンサー装置200の構成例を示す図。
【図7】IRセンサー装置200の製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その重複する説明は省略する。
(1)第1実施形態
(1.1)構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る焦電型赤外線センサー装置(以下、単にIRセンサー装置ともいう。)100の構成例を示す断面図である。このIRセンサー装置100は、焦電効果(即ち、温度変化によって焦電体の分極状態が変化する現象)を利用したものであり、焦電体の分極状態の変化を電圧又は焦電流で測定することにより、赤外線等の光を検出する装置である。
【0017】
図1に示すように、このIRセンサー装置100は、シリコン基板1と、シリコン基板1上に絶縁膜(図示せず)を介して設けられた第1配線層11と、シリコン基板1の上方に形成されて第1配線層11を覆う第1層間絶縁膜13と、第1層間絶縁膜13上に設けられた第2配線層17と、第1層間絶縁膜13上に形成されて第2配線層17を覆う第2層間絶縁膜19と、第2層間絶縁膜19上に設けられた支持層(即ち、メンブレン)21と、第1層間絶縁膜13を貫いて第1配線層11と第2配線層17とを間を電気的に接続する第1プラグ電極15と、第2層間絶縁膜19を貫いて第2配線層17を支持層21上に引きす第2プラグ電極23と、を備える。
【0018】
シリコン基板1は、例えばバルクの単結晶シリコン基板である。図示しないが、このシリコン基板1には、例えば、MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタ、キャパシタ、拡散抵抗等の各種素子が形成されており、これらの各種素子は図示しない絶縁膜によって覆われている。なお、シリコン基板1は、例えば、バルクの単結晶シリコン上に単結晶のシリコン層がエピタキシャル成長された構成であってもよい。この場合は、このエピタキシャル成長により形成された単結晶のシリコン層(即ち、エピタキシャル層)に、上記の各種素子が形成されている。
【0019】
第1配線層11及び第2配線層17は、例えば、上記の各種素子に電気的に接続する配線である。第1配線層11及び第2配線層17の材質は、例えば、窒化チタン(TiN)である。第1層間絶縁膜13及び第2層間絶縁膜19は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)若しくはシリコン窒化膜(Si34)、又は、これらを積層した積層膜である。第1プラグ電極15及び第2プラグ電極23の材質は、例えば、タングステン(W)である。
【0020】
また、図1に示すように、このIRセンサー装置100は、例えば、シリコン基板1上のセンサー領域(即ち、第1領域)に設けられた焦電センサー30と、シリコン基板1上であってセンサー領域とは異なる位置のパッド領域(即ち、第2領域)に設けられたボンディングパッド40と、第1絶縁膜31、第2絶縁膜35、第3絶縁膜41及び第3配線層33と、を備える。
【0021】
焦電センサー30は、支持層21上に形成された下部電極25と、下部電極25上に形成された焦電体27と、焦電体27上に形成された上部電極29と、を有する。下部電極25及び上部電極29の各材質は、導電性を有するものである。一例を挙げると、下部電極25は、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrOX)、白金(Pt)を、この順で下から積層した積層膜である。上部電極29は、白金、酸化イリジウム、イリジウムを、この順で下から積層した積層膜である。焦電体27の材質は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、又は、PZTにニオブ(Nb)を添加したPZTNである。
【0022】
また、焦電センサー30は、第1絶縁膜31で覆われている。第1絶縁膜31は、例えば、シリコン酸化膜である。さらに、センサー領域において、第1絶縁膜31には上部電極29を底面とする貫通した第1開口部51(図3(b)を参照)が設けられている。そして、この第1開口部51にセンサー領域の第3配線層33の一部が埋め込まれている。これにより、センサー領域の第3配線層33は上部電極29と電気的に接続されている。第3配線層33の材質は、例えば窒化チタンである。
【0023】
なお、支持層21は、例えば、シリコン酸化膜若しくはシリコン窒化膜、又は、これらを積層した積層膜である。センサー領域の支持層21直下であって、例えば、図1の紙面手前側又は紙面奥側には、図示しない空洞部が形成されている。この空洞部は、焦電センサー30とシリコン基板1との間を断熱するために設けられている。支持層21によって、焦電センサー30は空洞部の上方で支えられている。
【0024】
第2絶縁膜35は第3配線層33上に設けられている。第3絶縁膜41は第2絶縁膜35上に設けられている。第2絶縁膜35は例えばシリコン窒化膜であり、第3絶縁膜41は例えばシリコン酸化膜である。センサー領域において、第3絶縁膜41は、例えば赤外線等の光を吸収して熱に変換する膜として機能する。
一方、ボンディングパッド40は、支持層21上に形成された第3配線層33と、第3配線層33上に形成されたパッド用の電極層37と、を有する。電極層37は、例えば、窒化チタン(Ti)とアルミニウム(Al)合金とを、この順で下から積層した積層膜である。アルミニウム合金としては、例えば、アルミニウムに銅(Cu)を少量添加したAlCuなどが挙げられる。
【0025】
また、パッド領域において、支持層21と第3配線層33との間に第1絶縁膜31が配置されており、この第1絶縁膜31に第2プラグ電極23を底面とする貫通した第2開口部52(図3(b)を参照)が設けられている。そして、この第2開口部52にパッド領域の第3配線層33の一部が埋め込まれている。これにより、パッド領域の第3配線層33は第2プラグ電極23と電気的に接続されている。
【0026】
また、パッド領域において、第3配線層33と電極層37との間に第2絶縁膜35が配置されており、この第2絶縁膜35に下部電極25を底面とする貫通した第3開口部53(図4(b)を参照)が設けられている。そして、この第3開口部53に電極層37の一部が埋め込まれている。これにより、電極層37は、パッド領域の第3配線層33と電気的に接続されている。
【0027】
さらに、ボンディングパッド40上には第3絶縁膜41が設けられている。この第3絶縁膜41には、ボンディングパッド40の中央部を底面とする貫通した第4開口部54が設けられている。図示しないが、この第4開口部54の底面で露出しているボンディングパッド40の表面に、金線等のワイヤーが接合される。そして、この金線を介して、IRセンサー装置100は、例えば外部端子と電気的に接続される。次に、IRセンサー装置100の製造方法について説明する。
【0028】
(1.2)製造方法
図2(a)〜図5(b)は、本発明の第1実施形態に係るIRセンサー装置100の製造方法を示す断面図である。図2(a)に示すように、まず始めに、シリコン基板1を用意する。上述したように、このシリコン基板1の一方の面側には、例えば第1配線層11と、第1層間絶縁膜13と、第1プラグ電極15と、第2配線層17と、第2層間絶縁膜19とが形成されている。次に、図2(b)に示すように、第2層間絶縁膜19上に支持層21を形成する。支持層21の形成は、例えばCVD(chemical vapor deposition)法で行う。
【0029】
次に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、支持層21及び第2層間絶縁膜19を部分的に除去する(即ち、パターニングする)。これにより、パッド領域の支持層21及び第2層間絶縁膜19に、第2配線層17を底面とする(即ち、第2配線層17を露出する)開口部を形成する。そして、この開口部内に第2プラグ電極23を形成する。第2プラグ電極23の形成方法は、例えば以下の通りである。即ち、上記の開口部を埋め込むように支持層21上にタングステン膜を形成する。タングステン膜の形成は、例えばスパッタ法(即ち、スパッタリング)で行う。次に、このタングステン膜を研削して、開口部内にのみタングステン膜を残し、開口部の内側以外の領域(即ち、支持層21上)からタングステン膜を除去する。タングステン膜の研削は、例えばCMP(chemical mechanical polish)で行う。これにより、上記の開口部内に埋め込まれて、第2配線層17に電気的に接続した第2プラグ電極23を形成する。
【0030】
次に、図2(c)に示すように、第2プラグ電極23が形成された後の支持層21上に、下部電極25と焦電体27と上部電極29とを順次積層する。下部電極25及び上部電極29の形成は、例えばスパッタ法でそれぞれ行う。また、焦電体27の形成は、例えば、ゾルゲル法、スパッタ法又はMOCVD(metal organic CVD)法で行う。
次に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により、上部電極29、焦電体27及び下部電極25をパターニングする。このパターニング工程では、まず始めに、上部電極29、焦電体27をパターニングし、次に、上部電極29及び焦電体27下から露出した下部電極25をパターニングする。図示しないが、上部電極29及び焦電体27のパターニング時には、センサー領域を覆い、且つパッド領域を露出した(即ち、開口した)形状の第1のレジストパターンをマスクとして用いる。これにより、パッド領域の上部電極29を除去して焦電体27を露出させ、露出した焦電体27を除去して、パッド領域の下部電極25を露出させる。また、下部電極25のパターニング時には、センサー領域を覆い、且つパッド領域を露出した形状の第2のレジストパターンをマスクとして用いる。
【0031】
これにより、図3(a)に示すように、センサー領域では上部電極29、焦電体27及び下部電極25を有する焦電センサー30を形成すると共に、パッド領域では露出していた下部電極25が除去されて支持層21が露出した構造を形成する。この構造では、支持層21からプラグ電極23が露出している。
次に、図3(b)に示すように、シリコン基板1の上方に第1絶縁膜31を形成する。第1絶縁膜31の形成は、例えばCVD法で行う。第1絶縁膜31によって、センサー領域の焦電センサー30と、パッド領域の下部電極25との間が絶縁される。そして、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、第1絶縁膜31をパターニングする。これにより、センサー領域の第1絶縁膜31に上部電極29を底面とする第1開口部51を形成すると共に、パッド領域の第1絶縁膜31に第2プラグ電極を底面とする第2開口部52を形成する。
【0032】
次に、第1開口部51及び第2開口部52を埋め込むように、例えば窒化チタン等の導電膜を形成する。この導電膜の形成は、例えばスパッタ法で行う。そして、この導電膜を、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてパターニングする。これにより、図3(c)に示すように、センサー領域とパッド領域とにそれぞれ、互いに分離された第3配線層33を形成する。
【0033】
次に、図4(a)に示すように、シリコン基板1の上方に第2絶縁膜35を形成する。第2絶縁膜35の形成は、例えばCVD法で行う。第2絶縁膜35によって、第3配線層33が覆われる。そして、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、第2絶縁膜35をパターニングする。
これにより、図4(b)に示すように、パッド領域の第2絶縁膜35に第3配線層33を底面とする第3開口部53を形成する。次に、第3開口部53を埋め込むように、例えばAlCu/TiN等の導電膜を形成する。この導電膜の形成は、例えばスパッタ法で行う。そして、この導電膜を、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてパターニングする。これにより、図4(c)に示すように、パッド領域に電極層37を形成する。
【0034】
次に、図5に示すように、シリコン基板1の上方に第3絶縁膜41を形成する。上述したように、この第3絶縁膜41は、例えば赤外線等の光を吸収して熱に変換するための膜である。第3絶縁膜41の形成は、例えばCVD法で行う。第3絶縁膜41によって、焦電センサー30とボンディングパッド40の両方が覆われる。そして、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、第3絶縁膜41をパターニングする。
【0035】
これにより、パッド領域の第3絶縁膜41にボンディングパッド40を底面とする第4開口部54(図1を参照)を形成する。また、この第4開口部54の形成工程と前後して、支持層21下の図示しない犠牲層をエッチングして除去し、空洞部を形成する。この空洞部は、上述したように、焦電センサー30とシリコン基板1との間を断熱するための空洞部である。以上の工程を経て、図1に示したIRセンサー装置100が完成する。
【0036】
(1.3)第1実施形態の効果
本発明の第1実施形態によれば、焦電センサー30を構成する下部電極25と、ボンディングパッド40を構成する下部電極25と、を同時に形成することができる。また、焦電センサー30において上部電極29と第3配線層33とを電気的に接続するための第1開口部51と、ボンディングパッド40において下部電極25と第3配線層33とを電気的に接続するための第2開口部52と、を同時に形成することができる。さらに、焦電センサー30の上部電極29と電気的に接続する第3配線層33と、ボンディングパッド40を構成する第3配線層33と、を同時に形成することができる。また、焦電センサー30を覆って光吸収膜として機能する第2絶縁膜35と、ボンディングパッド40の一部を覆って保護膜として機能する第2絶縁膜35と、を同時に形成することができる。同様に、焦電センサー30を覆って光吸収膜として機能する第3絶縁膜41と、ボンディングパッド40の一部を覆って保護膜として機能する第3絶縁膜41と、を同時に形成することができる。
【0037】
このように、焦電センサー30や、焦電センサー30に接続される配線層等の形成工程を利用して、ボンディングパッド40を形成することができる。従って、工程数の増加を抑えつつ、ボンディングパッド40を効率良く形成することができる。
また、パッド領域は、下部電極25及び上部電極29が残存せず、第3配線層33が残存した構造に形成される。このため、パッド領域に下部電極25が残存する場合と比べて、ボンディングパッド40の高さを下部電極25の厚さ分だけ低くすることができる。これにより、図1に示すように、パッド領域とセンサー領域とにおいて、支持層21の表面から第3絶縁膜41の表面までの高さを、ほぼ同じ高さとすることができる。即ち、パッド領域の支持層21の表面から第3絶縁膜41の表面までの高さをh1とし、センサー領域の支持層21の表面から第3絶縁膜41の表面までの高さをh2としたとき、h1=h2とすることができる。例えば、高さh1を2.3μm程度とすることができる。
【0038】
さらに、第3配線層33の構成材として、例えば窒化チタン(TiN)など、貴金属以外の材料を用いることができる。このため、ボンディングパッド40と基板1側との密着性を高く保持することができる。特別なプロセスを追加することなく、ボンディングパッド40が基板1側から剥離することを抑制することができる。
また、本発明の第1実施形態によれば、ボンディングパッド40に導電性ワイヤーの一端を密着性高く接合することができる。例えば、IRセンサー装置100では、第3配線層33と導電性ワイヤーとの間に、AlCu/TiNからなる電極層37を介在させている。このため、第3配線層33が窒化チタンであり、導電性ワイヤーが金線の場合でも、窒化チタンと金とが直に接することがないため、ボンディングパッド40と導電性ワイヤーとの密着性を高めることができる。
【0039】
(2)第2実施形態
上記の第1実施形態では、パッド領域の第1絶縁膜31の一部に、第2プラグ電極23を底面とする第2開口部52を形成する場合について説明した。しかしながら、本発明において、第2開口部52を形成する領域は、パッド領域の一部に限定されるものではない。本発明では、パッド領域の全域、又はほぼ全域に第2開口部52を形成してもよい。即ち、パッド領域の第1絶縁膜を全て除去してもよい。第2実施形態では、このような例について説明する。
【0040】
(2.1)構成
図6は、本発明の第2実施形態に係るIRセンサー装置200の構成例を示す断面図である。このIRセンサー装置200は、第1実施形態で説明したIRセンサー装置100と同様に、焦電効果を利用したものであり、焦電体の分極状態の変化を電圧又は焦電流で測定することにより、赤外線等の光を検出する装置である。
図6に示すように、このIRセンサー装置200は、シリコン基板1と、シリコン基板1上に絶縁膜(図示せず)を介して設けられた第1配線層11と、シリコン基板1の上方に形成されて第1配線層11を覆う第1層間絶縁膜13と、第1層間絶縁膜13上に設けられた第2配線層17と、第1層間絶縁膜13上に形成されて第2配線層17を覆う第2層間絶縁膜19と、第2層間絶縁膜19上に設けられた支持層21と、第1層間絶縁膜13を貫いて第1配線層11と第2配線層17とを間を電気的に接続する第1プラグ電極15と、第2層間絶縁膜19を貫いて第2配線層17を支持層21上に引きす第2プラグ電極23と、を備える。
【0041】
また、図6に示すように、このIRセンサー装置200は、例えば、シリコン基板1上のセンサー領域に設けられた焦電センサー30と、シリコン基板1上であってセンサー領域とは異なる位置のパッド領域に設けられたボンディングパッド40と、第1絶縁膜31、第2絶縁膜35、第3絶縁膜41及び第3配線層33と、を備える。
ここで、図6に示すように、パッド領域には第1絶縁膜31は形成されていない。即ち、後述の図7(b)に示すように、第1絶縁膜31が有する第2開口部52は、パッド領域の全域に形成されている。そして、パッド領域の第3配線層33は支持層21上に直接配置されている。これにより、IRセンサー装置200は、第1実施形態で説明したIRセンサー装置100と比べて、パッド領域の支持層21の表面から第3絶縁膜41の表面までの高さh1がより低くなっている。次に、IRセンサー装置200の製造方法について説明する。
【0042】
(2.2)製造方法
図7(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係るIRセンサー装置100の製造方法を示す断面図である。図7(a)において、第1絶縁膜31を形成する工程までは第1実施形態と同じである。第1絶縁膜31を形成した後で、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、第1絶縁膜31をパターニングする。これにより、図7(b)に示すように、センサー領域の第1絶縁膜31に上部電極29を底面とする第1開口部51を形成すると共に、パッド領域から第1絶縁膜31を全て除去する。即ち、第1絶縁膜31に、パッド領域の全域に第2開口部52を形成する。
【0043】
次に、第1開口部51及び第2開口部52を埋め込むように、例えば窒化チタン等の導電膜を形成する。この導電膜の形成は、例えばスパッタ法で行う。そして、この導電膜を、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてパターニングする。これにより、図7(c)に示すように、センサー領域とパッド領域とにそれぞれ、互いに分離された第3配線層33を形成する。
これ以降の工程は、第1実施形態と同じである。即ち、第2絶縁膜35を形成し(図4(a)参照)、第3開口部53を形成し(図4(b)参照)、電極層37を形成し(図4(c)参照)、第3絶縁膜41を形成する(図5参照)。その後、第4開口部54を形成する。これにより、図6に示したセンサー装置200が完成する。
【0044】
(2.3)第2実施形態の効果
本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第1実施形態の効果に加えて、下記の効果を奏する。
即ち、本発明の第2実施形態によれば、パッド領域の第3配線層33は支持層21上に直接配置されている。このため、パッド領域の支持層21の表面から第3絶縁膜41の表面までの高さh1を、下部電極25及び第1絶縁膜31の各厚さ分だけ低くすることができ、高さh1を第1実施形態よりもさらに低くすることができる。例えば、h1<h2とすることができ、高さh1を2μm程度とすることができる。
【0045】
なお、上記のIRセンサー装置100、200は、例えば、赤外線を受光することにより人体の存在を検出する人感センサーや、人体の温度分布などを検出する温度センサー等を一例とする各種機器と、その製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 シリコン基板、11 第1配線層、13 第1層間絶縁膜、15 第1プラグ電極、17 第2配線層、19 第2層間絶縁膜、21 支持層、23 第2プラグ電極、25 下部電極、27 焦電体、29 上部電極、30 焦電センサー、31 第1絶縁膜、33 第3配線層、35 第2絶縁膜、37 電極層、40 ボンディングパッド、41 第3絶縁膜、51 第1開口部、52 第2開口部、53 第3開口部、54 第4開口部、100 、200 IRセンサー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の第1領域に焦電センサーを有すると共に、前記基板上の前記第1領域とは異なる第2領域にボンディングパッドを有するセンサー装置の製造方法であって、
前記第1領域に第1導電部を形成する工程と、
前記第1導電部上に焦電体を形成する工程と、
前記焦電体上に第2導電部を形成する工程と、
前記第2導電部上及び、前記第2領域にそれぞれ第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜の一部を除去して、前記第1領域に前記第2導電部を底面とする第1開口部を形成し、前記第2領域に第2開口部を形成する工程と、
前記第1開口部及び前記第2開口部にそれぞれ第3導電部を埋め込む工程と、
前記第1領域において前記焦電体を覆い、前記第2領域において前記第3導電部を覆う第2絶縁膜を形成する工程と、
前記第2絶縁膜の一部を除去して前記第3導電部を底面とする第3開口部を形成する工程と、を含むことを特徴とするセンサー装置の製造方法。
【請求項2】
前記第3開口部を埋め込むように前記第2領域の前記第2絶縁膜上に第4導電部を形成する工程と、
前記第4導電部上及び前記第1領域の前記第2絶縁膜上にそれぞれ第3絶縁膜を形成する工程と、
前記第3絶縁膜の一部を除去して前記第4導電部を底面とする第4開口部を形成する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のセンサー装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1導電部を形成する工程、前記焦電体を形成する工程及び前記第2導電部を形成する工程は、
前記第1領域及び前記第2領域にそれぞれ第1導電部を形成し、前記第1導電部上に焦電体と第2導電部とを積層し、前記第2領域の前記第2導電部を除去して前記焦電体を露出させ、露出した前記焦電体を除去して前記第2領域の前記第1導電部を露出させ、露出した前記第1導電部を除去する工程、であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサー装置の製造方法。
【請求項4】
基板上の第1領域に焦電センサーを有すると共に、前記基板上の前記第1領域とは異なる第2領域にボンディングパッドを有するセンサー装置であって、
前記第1領域に形成された第1導電部と、
前記第1導電部上に形成された焦電体と、
前記焦電体上に形成された第2導電部と、
前記第2導電部を覆うように前記基板の上方に形成され、前記第2導電部を底面とする第1開口部を有し、前記第2領域に第2開口部を有する第1絶縁膜と、
前記第1開口部及び前記第2開口部にそれぞれ埋め込まれた第3導電部と、
前記第1領域において前記焦電体を覆い、前記第2領域において前記第3導電部を覆い、前記第2領域の前記第3導電部を底面とする第3開口部を有する第2絶縁膜と、を備えることを特徴とするセンサー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113833(P2013−113833A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263440(P2011−263440)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】