説明

センサ付真空断熱パネルとこれを用いた保冷容器

【課題】断熱機能に優れ、しかも周辺温度を計測するとともにその計測温度を送信できて、無線センサを構成する部品、とくにバッテリを低温、高湿といった厳しい環境から保護し、かつ無線センサの電源であるバッテリの交換が容易であるセンサ付真空断熱パネルを提供し、さらにこのセンサ付真空断熱パネルを用いた保冷容器を提供すること。
【解決手段】芯材8にガスバリア性の外被材9を被せた真空断熱材製パネル6と、周辺温度の計測が可能な温度センサ部5aと、温度センサ部5aによる計測結果を通信可能な通信部5bと、温度センサ部5aと通信部5b用のバッテリ5cと、を備え、前記温度センサ部5a、及び前記通信部5bが、前記真空断熱材製パネル6の外被材の内側に設置され、前記バッテリ5cが、前記パネル6の外被材9の外側に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、食材や食品、あるいは化粧品や薬品など、保冷を必要とする物品を搬送する際に用いられる保冷容器に関するものであり、より具体的には、無線センサを備えた真空断熱パネルとこれを用いた保冷容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、就業主婦の増加、高齢者世帯の増加に伴い、食材の宅配サービスの需要が拡大している。食材の宅配サービスとは、食材の販売事業者が需要者のもとに食材を届けるサービスであり、週に1回程度の頻度で需要者の注文に応じた食材を宅配するものである。
【0003】
宅配される食材には、常温管理できるものに限らず要冷蔵の食材や要冷凍の食材も含まれるため、発泡スチロールなどの断熱材を使用した保冷容器に収容して搬送している。また夏場に宅配されることもあり、あるいは需要者に手渡しされず指定された場所(例えば玄関前)に置いて帰ることもあるので、保冷容器の中には食材とともにドライアイスや蓄冷剤を入れているのが現状である。なお、多くの食材の宅配事業者では、「要冷凍食材」を宅配する場合にはドライアイスを保冷容器内に同梱し、「要冷蔵食材」を宅配する場合には蓄冷剤を同梱している。
【0004】
このように従来の保冷容器は、ドライアイスや保冷剤で冷却し、かつ発泡スチロールなどで断熱することによって、保冷容器内の食材を保冷する(冷却状態を保つ)ものである。しかしながら、発泡スチロールの熱伝導率は空気と同じ0.02〜0.03w/mk程度でそれほど断熱性に優れるものではなく、また時間とともにドライアイスや蓄冷剤の冷却能力も衰えていくので、従来の保冷容器では長時間にわたって食材を保冷することはできなかった。
【0005】
食材の宅配も通常の宅配と同様、一回の配送で複数の宅配先を訪れるため、交通事情によっては予想よりも長い時間がかかって届けられることもある。あるいは、需要者に手渡しする予定で宅配したにもかかわらず、その需要者が不在ということもある。このような場合、宅配者は、保冷容器内の温度状態を確認することができないので、そのまま食材を指定場所に置いていくか、あるいは持ち帰るべきか、判断に迷うこととなる。
【0006】
また、保冷容器の故障によって、あるいはドライアイスや蓄冷剤の入れ忘れによって、図らずも保冷されない状態で食材を届けてしまうことがある。通常、宅配者が保冷容器内を確認することはないので、この場合保冷されていない状態の食材をそのまま需要者が手にする結果となる。
【0007】
このような状況を回避するため、温度計測可能なセンサを有する無線センサを保冷容器内に配置するとともに品質(温度品質)管理センタを設置して、温度異常を生じた保冷容器は回収するようなシステムも考えられる。しかしこの場合、無線センサが保冷容器内で低温に曝され、ドライアイスや保冷剤による結露に曝される結果、無線センサを構成する部品、とくに電源であるバッテリが急速に劣化して早々に機能しなくなり、無線センサひいては前記システムそのものが適切に運用されなくなる。
【0008】
また、無線センサを保冷容器内に配置すると、時期をみてバッテリを交換しなければならないが、例えば、食材と接触しないよう無線センサを保冷容器の壁材に埋め込んだ場合、電池交換のためにわざわざ無線センサを壁材から取り出すという面倒な手間が生ずることとなる。これは、バッテリ交換に手間がかかるばかりでなく、壁材から取り出す際に無線センサを損傷させ、若しくは壁材を損傷させることとなって、保冷容器そのものを使用できない状態にしてしまうおそれもある。
【0009】
あるいは現状の改善策として、現在使用されている発泡スチロール製の保冷容器を、より断熱性の高い材料を用いた保冷容器に変更することも考えられる。この方法は有効であるが、食材の宅配サービスの需要拡大に伴って現在大量に保冷容器が使用されていることを考えると、全ての保冷容器に対応するには時間がかかるため即効性にやや欠けるうえ、保冷容器内の温度管理ができないという問題については解決できない。
【0010】
その他、保冷容器内に同梱するドライアイスや蓄冷剤を通常の設計量よりも多くして保冷可能期間を長引かせることも考えられるが、ドライアイスや蓄冷剤を多くした分だけ収容できる食材の量が減ることとなり、食材の宅配事業者としては採用し難い。そこで、特許文献1では、保冷容器の蓋部分に空間を設け、この空間内にドライアイスや蓄冷剤を格納できる宅配用保冷容器を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−154966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら特許文献1によれば、保冷容器全体の体積が大きくなり、その結果、一度の配送で多くの需要者宅を回ることができなくなるので、食材の宅配事業者としては採用し難い。そのうえ、保冷容器の故障やドライアイス等の入れ忘れによって、保冷されない状態で食材を届けてしまう問題、つまり保冷容器内の温度管理ができないという問題を解消することもできない。
【0013】
本願発明の課題は、断熱機能に優れ、しかも周辺温度を計測するとともにその計測温度を送信できて、無線センサを構成する部品、とくにバッテリを低温、高湿といった厳しい環境から保護し、かつ無線センサの電源であるバッテリの交換が容易である真空断熱パネルを提供し、さらにこの真空断熱パネルを用いた保冷容器を提供することによって、前記問題を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、温度計測という性質上、通常は断熱環境に置かれることのない温度センサを、あえて真空断熱材内に設置するという発想に基づいて行われたものであり、具体的には、周辺温度の計測が可能なセンサ部を有する無線センサが設置されたセンサ付真空断熱パネルとこれを用いた保冷容器について開発したものである。
【0015】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、芯材にガスバリア性の外被材を被せた真空断熱材製パネルと、周辺温度の計測が可能な温度センサ部と、温度センサ部による計測結果を通信可能な通信部と、温度センサ部と通信部用のバッテリと、を備え、前記温度センサ部、及び前記通信部が、前記真空断熱材製パネルの外被材の内側に設置され、前記バッテリが、前記パネルの外被材の外側に設置されたものである。
【0016】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品が別体であるものとすることもできる。
【0017】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品が無線センサとして設置されたものとすることもできる。
【0018】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、芯材の一部に、温度センサ部又は/及び通信部が嵌合可能な本体嵌合凹部が設けられ、前記本体嵌合凹部内に、温度センサ部又は/及び通信部が設置されたものとすることもできる。
【0019】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、真空断熱材製パネル表面の一部に、バッテリが嵌合可能なバッテリ嵌合凹部が設けられ、前記バッテリ嵌合凹部内に、バッテリが設置されたものとすることもできる。
【0020】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、真空断熱材製パネルの一方の面に、バッテリが配置され、真空断熱材製パネルの他方の面に、温度センサ部が配置されたものとすることもできる。
【0021】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、温度センサ部の一部が、真空断熱材製パネルの外被材の外側に露出しているものとすることもできる。
【0022】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、外被材が、熱伝導性素材と電波透過性素材を組み合わせて形成されたものであり、前記外被材のうち、通信部を覆う範囲が電波透過性素材であるものとすることもできる。
【0023】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、外被材が、熱伝導性素材と電波透過性素材を組み合わせて形成されたものであり、前記外被材のうち、温度センサ部を覆う範囲が熱伝導性素材であるものとすることもできる。
【0024】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、温度センサ部に加え、湿度センサ部又は/及び加速度センサ部を備えたものとすることもできる。
【0025】
本願発明の保冷容器は、容器本体と蓋を備える容器の内部に、真空断熱材製パネルを配置してなる保冷容器であって、前記容器本体の内面及び前記蓋の内面のうち、一部若しくは全面に前記真空断熱材製パネルが配置され、これら配置された真空断熱材製パネルの一部又は全部が、本願発明のセンサ付真空断熱パネルとしたものである。
【0026】
本願発明の保冷容器は、真空断熱材製パネルで形成された容器本体と、真空断熱材製パネルで形成された蓋と、該容器本体と該蓋によって形成される収容空間と、を備え、前記容器本体及び前記蓋を形成する真空断熱材製パネルの一部又は全部が、本願発明のセンサ付真空断熱パネルとしたものとすることもできる。この場合、容器本体又は/及び蓋に、補強材が取り付けられたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0027】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルには、次のような効果がある。
(1)真空断熱材を使用しているので断熱性に優れ、かつ、無線センサを備えているので周辺の温度を計測することができる。
(2)無線センサが真空断熱材内に設置されているので、低温環境で使用しても無線センサを構成する部品が低温に曝されることがなく、これら部品の劣化が促進されることもない。
(3)無線センサが真空断熱材内に設置されているので、結露が生ずるといった高湿環境で使用しても無線センサを構成する部品が直接高湿下に曝されることがなく、これら部品の劣化が促進されることもない。
(4)バッテリが外被材の外側に設置されているので、バッテリの交換が容易であり、交換の際に無線センサを損傷させることもない。
(5)表面が外被材に覆われているため洗浄することができて、衛生状態を維持するのが容易である。
【0028】
本願発明の保冷容器には、次のような効果がある。
(1)真空断熱材を使用しているので断熱性に優れ、かつ、無線センサを備えているので容器内の食材温度を計測することができる。
(2)断熱性に優れていることから、同梱するドライアイスや蓄冷剤の量を従来よりも少量とすることができる。
(3)無線センサは真空断熱材内に設置されているので、低温環境で使用しても無線センサを構成する部品が低温に曝されることがなく、これら部品の劣化が促進されることもない。
(4)無線センサが真空断熱材内に設置されているので、結露が生ずるといった高湿環境で使用しても無線センサを構成する部品が直接高湿下に曝されることがなく、これら部品の劣化が促進されることもない。
(5)蓋の内面にもセンサ付真空断熱パネルを貼り付けることができるので、この場合さらに確実に食材を保冷することができる。
(6)現在使用されている保冷容器にセンサ付真空断熱パネルを貼り付けることができるので、現状の保冷容器を無駄にすることがなく、経済的にも自然環境的にも好適である。
(7)バッテリが外被材の外側に設置されているので、バッテリの交換が容易であり、交換の際に無線センサや保冷容器の壁材を損傷させることもない。
(8)真空断熱パネルは表面が外被材に覆われているため洗浄することができるので、保冷容器内の衛生状態を維持することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】センサ付真空断熱パネルを用いた本願発明の保冷容器を示す斜視図。
【図2】現在利用されている保冷容器を示す断面図。
【図3】本願発明の保冷容器を正面から見た断面図。
【図4】センサ付真空断熱パネルを示す平面図。
【図5】センサ付真空断熱パネルを示す断面図で、(a)は芯材に設けられた本体嵌合凹部に温度センサ部と通信部を設置しパネル表面に設けられたバッテリ嵌合凹部にバッテリを設置した場合を示す断面図、(b)は芯材の表面と外被材との間に本体部とアンテナ部を設置しパネル表面に設けられたバッテリ嵌合凹部にバッテリを設置した場合を示す断面図、(c)は真空断熱材製パネルの一方の面に通信部とバッテリを設置し真空断熱材製パネルの他方の面に温度センサ部が設置された場合を示す断面図、(d)は真空断熱材製パネルの一方の面に通信部とバッテリを設置し真空断熱材製パネルの他方の面に温度センサ部を突出させた場合を示す断面図、(e)はバッテリ嵌合凹部を設けることなく外被材の外側にバッテリを設置した場合を示す断面図。
【図6】無線センサを説明するための詳細平面図。
【図7】蓋内にドライアイス等を収容することのできる保冷容器を正面から見た断面図。
【図8】センサ付真空断熱パネルに補強材を組み合わせた保冷容器を正面から見た断面図。
【図9】断熱材からなる壁材にセンサ付真空断熱パネルを内挿した保冷容器を正面から見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[実施形態1]
本願発明の保冷容器の実施形態の一例を図に基づいて説明する。図1は、本願発明の保冷容器1を示す斜視図である。この保冷容器1は、冷凍された食品(冷凍食品)や冷蔵された食品(冷蔵食品)などを収容することができるもので、容器本体2、蓋3、収容空間4、及び収容空間4内に配置される断熱パネルを備えている。この断熱パネルは、後に説明するように、無線センサ5(図6)を有するセンサ付真空断熱パネル6や、無線センサ5のない単純真空断熱材製パネル7である。なお、冷蔵食品や冷凍食品などは、消費されるまで低温状態を維持しておく必要があることから、これらを便宜上「保冷を必要とする物品」、あるいは単に「保冷食品」と呼ぶ。
【0031】
(保冷容器)
前記したように、保冷容器1は「保冷を必要とする物品」を収容して搬送することのできるものであり、その外形は容器本体2と蓋3によって形成されている。この容器本体2及び蓋3は新規に作成することもできるが、現在利用されている保冷容器B(図2に示す)をそのまま利用することもできる。現在大量に流通している既存の保冷容器Bを有効活用することによって、経済的な負担を軽減できるとともに、廃棄物を減らし自然環境にも配慮したものとなる。既存の保冷容器Bの容器本体2及び蓋3は、断熱性の材料が利用されており、代表的なものとしては発泡スチロールが挙げられるが、他にも各種ウレタン製のものが用いられることもある。
【0032】
図3は、本願発明の保冷容器1を正面から見た断面図である。この図及び図1に示すように容器本体2は、立設して対向する2枚の正面壁2aと、同じく立設して対向する2枚の側壁2bと、これら2枚の正面壁2a及び2枚の側壁2bの下端を塞ぐ底面壁2cによって形成され、これら壁面内には上部開放の収容空間4が設けられている。図1及び図3では、容器本体2を立設する4面の壁からなる平面視で長方形としているが、収容空間4を設けることができれば、この長方形に限らず他の形状、例えば平面視で多角形、長円形、その他の任意形状とすることができる。
【0033】
蓋3は、容器本体2の上方から被せて嵌合できるもので、容器本体2にこの蓋3を設置すると収容空間4が略密閉される。収容空間4内に収められる保冷食品F(図3)を外部の熱から遮断する(断熱する)ために、容器本体2と蓋3は確実に嵌合されることが望ましい。そのため、図3に示すように容器本体2の上部を凹形状にして蓋3の下側を凸形状にしたり、逆に容器本体2側が凸形状で蓋3の下側が凹形状としたり、一方に突起を設けて他方に溝部(孔部)を設けるなど種々の手段によることができるが、ここで例示したように蓋3の着脱が容易である手段が望ましい。
【0034】
図1や図3に示すように容器本体2の収容空間4を構成する正面壁2a、側壁2b、底面壁2c、及び蓋3の内面(以下、これらを総称して「収容空間4の構成面」という。)には、発泡スチロールなどに比べると断熱性に優れるパネル状の真空断熱材(以下、「真空断熱材製パネル」という。)が配置される。なお、正面壁2a、側壁2b、底面壁2c、及び蓋3の「内面」とは、各表裏面のうち収容空間4側の面を指す。
【0035】
収容空間4内の断熱性を考えると、収容空間4の構成面の全てに真空断熱材製パネルが配置されることが望ましいが、利用環境によっては収容空間4の構成面のうち一部にのみ真空断熱材製パネルを配置することもできる。これら配置された真空断熱材製パネルのうち一部又は全部が、無線センサ5が設置されたものであり、これによって収容空間4内の温度、つまり保冷食品Fの環境温度を計測することができる。なお便宜上、無線センサ5が設置された真空断熱材製パネルを「センサ付真空断熱パネル6」とし、無線センサ5のない真空断熱材製パネルを「単純真空断熱材製パネル7」とする。
【0036】
(センサ付真空断熱パネル)
図4はセンサ付真空断熱パネル6を示す平面図で、図5(a)〜(e)はセンサ付真空断熱パネル6を示す断面図である。これらの図に示すようにセンサ付真空断熱パネル6は、芯材8と外被材9を備えた真空断熱材製パネルに無線センサ5を取り付けたものであり、図5(a)〜(e)はそれぞれ無線センサ5の取付け方が異なるセンサ付真空断熱パネル6を示すものである。なお本体部5aとバッテリ5cの配置は、図4に示すように、平面視で横並びにすることもできるし、これに代えて平面視で縦並びに(図4で左右方向に並ぶように)しても、断面視で上下に並べることもできる。
【0037】
(真空断熱材製パネルの製造方法)
単純真空断熱材製パネル7は真空断熱材をパネル状とした真空断熱材製パネルであり、センサ付真空断熱パネル6は真空断熱材製パネルに無線センサ5を設置して形成されるものである。この真空断熱材製パネルは、芯材8に外被材9で被せた状態で減圧し、外被材9の開口部を熱溶着(ヒートシール)して製造される。芯材8の内部には多くの空隙が設けられており、ローラによる空気の押し出し、あるいは吸気によりこの空隙内の空気が排出されることによって、真空断熱材製パネルの内部は減圧され真空状態となる。このとき芯材8が湿気を帯びているとその後の真空状態が保たれ難いので、空隙内からの空気排出作業は、乾燥空気を送りながら行うなど乾燥環境下で実施するのが望ましい。センサ付真空断熱パネル6を製造する場合、後に説明するように、あらかじめ芯材8と外被材9の間に無線センサ5のうち本体部5aとアンテナ部5bを設置しておく。そのうえで外被材9を被せた状態で減圧して外被材9の開口部を熱溶着し、外被材9の外側に無線センサ5のバッテリ5cを設置する。なお、ここでいう真空状態とは、必ずしも絶対真空状態に限らず、真空度の高い状態を指すもので、1〜200Pa、望ましくは1〜100Pa程度の真空度となる状態を意味する。
【0038】
(芯材)
より多くの空気を芯材8から排出できる方がより減圧され、つまりより高い真空度の真空断熱材製パネルが得られることとなる。そのため、芯材8の材質としては、内部に多くの空隙をもついわゆる多孔体が用いられ、例えば、ウレタンや粉末シリカグラスウールを素材とするもの、セラミックファイバー、ロックウールなどの繊維材からなるもの、などが挙げられる。スタイロホームも芯材8として利用できるが、割れやすいという面があるので使用状況によっては注意を要する。逆に、芯材8として利用するガラスウールは割れ難いという特性を有する。
【0039】
(外被材)
外被材9はフィルム状(又は板状)のものであり、減圧後の真空状態を保つためガスバリア性に富む材質で形成される必要がある。ガスバリア性のフィルム素材としては、ステンレススチール、アルミニウム、鉄といった金属箔や、プラスチックフィルム、あるいは金属箔とプラスチックフィルムのラミネートフィルム等が例示できる。もちろん、金属箔に限らず金属板(薄板)のものを利用することもできるが、この場合やや重量があるため使用する目的に応じて適宜採用することになる。
【0040】
アルミニウムをはじめとする金属製の素材を用いた外被材9は、熱伝導性が高いという特性がある半面、電波を吸収しやすいという特性もある。後に説明するように、真空断熱材製パネルの内部に入れられる無線センサ5のうち温度センサ部は周辺温度を計測するもので、アンテナ部5bはこの計測した結果を通信するものである。周辺温度を計測するという面ではアルミニウム素材は適しているが、通信するという面ではアルミニウム素材は適さない。
【0041】
一方、外被材9として、ナイロン系の素材を用いることもできるが、ナイロン系の素材は熱伝導性が低く、電波を透過しやすいという特性がある。つまり、アルミニウム素材とは逆で、通信するという面ではナイロン系の素材は適しているが、周辺温度を計測するという面ではナイロン系の素材は適さない。双方の特性を生かすべく、アルミニウム素材とナイロン系素材を組み合わせて外被材9とすることもできる。一例として、無線センサ5の温度センサ部に近接する(温度センサ部を覆う)範囲は熱伝導性の高いアルミニウム素材を用い、無線センサ5のアンテナ部に近接する(温度センサ部を覆う)範囲は電波透過性の良いナイロン系素材とする外被材9を用いることができる。
【0042】
芯材8の空隙内の空気が排出された状態、すなわち真空断熱材製パネルの内部が減圧された状態で外被材9の開口部がヒートシールされ、これによって真空度の高い状態を維持することができる。従って、外被材9は熱溶着可能な材料と組み合わされることが多い。例えば、アルミニウム箔の裏面(又は表裏面)にPET素材を重ねたものを、外被材9として用いることができる。PET素材は90℃程度で溶着され、これに対して無線センサ5は通常200℃程度までは溶けることがないので、無線センサ5にとっては好適である。
【0043】
なお、芯材8や外被材9は、ここで例示したものに限らず、従来から真空断熱材として用いられている素材、材質のものを使用することができる。
【0044】
(真空断熱材の断熱性能)
真空断熱材は、内部を真空状態(減圧状態)とすることで優れた断熱性能を有する。具体的には、真空断熱材の熱伝導率は0.002〜0.01w/mkであり、発泡スチロールの0.02〜0.03w/mk、空気の0.02w/mkに比べると、その断熱性能が顕著であることがわかる。この優れた断熱性能を有する真空断熱材を利用すれば、従来の保冷容器Bの断熱性能も格段に向上する。
【0045】
(無線センサ)
図6は、無線センサ5を説明するための詳細平面図である。この図に示すようには無線センサ5は、本体部5aと、アンテナ部5bと、バッテリ5cからなる。本体部5aの先端側(図6では上側)には、温度を計測することができる温度センサ部を内蔵しており、本体部5aの他端側には、温度センサ部による計測結果を通信することができる通信部(アンテナ部5bを含む)が備えられている。このように、本体部5aにはアンテナ部5bが取り付けられているが、温度センサ部と通信部の電源であるバッテリ5cは、本体部5aやアンテナ部5bとは分離した別体構造となっている。近年、無線センサ5は小型化が進み、その外寸(長さ)が2〜4mmのものまである。センサ付真空断熱パネル6に用いられる無線センサ5も小型の方が望ましいが、真空断熱材製パネルの内部に設置することのできるものであれば、その大きさや形状は任意に選択できる。なお、センサ付真空断熱パネル6は、本体部5a、アンテナ部5b、バッテリ5cの三つの部品を備えることができればよく、格別無線センサ5として備える必要はない。すなわち、本体部5a、アンテナ部5b、バッテリ5cの三つの部品が、それぞれ別体の部品として備えられてもよく、あるいは、本体部5aとアンテナ部5bが一体でバッテリ5cだけを別体とすることもできる。ここでは便宜上、センサ付真空断熱パネル6が、無線センサ5(本体部5a、アンテナ部5b、バッテリ5cの三つの部品を有するとともに、本体部5aとアンテナ部5bが一体でバッテリ5cが別体の無線センサ5)を備えた場合で説明する。
【0046】
無線センサ5は、著しい低温環境や高湿環境では劣化しやすく、通常このような厳しい環境で利用されることはない。とくにバッテリ5cとして多用されるリチウム電池等は、一般に低温環境や高湿環境では劣化が進みやすく、極端に寿命が短くなることが知られている。一方、保冷食品Fを搬送する保冷容器1内に無線センサ5を設置できれば、搬送中であっても保冷食品Fの環境温度を管理することができて好適である。しかしながら、保冷容器1内にはドライアイスD等が置かれるため、上記のとおり低温や高湿環境による無線センサ5の劣化(短寿命)問題が生じることとなって、従来では保冷容器1内に無線センサ5が設置されることはなかった。そこで本願発明では、保冷容器1内に配置される真空断熱材製パネルの内部(外被材9の内側)に無線センサ5を設置することとした。ところが、バッテリ5cまで真空断熱材製パネルの内部に設置してしまうと、バッテリ5c交換を行うときに真空断熱材製パネルの内部からバッテリ5cを取り出すこととなって手間がかかるばかりでなく、外被材9を破る必要があり真空断熱材製パネルを再び利用することができなくなる。よって、無線センサ5のうち温度センサ部と温度センサ部(本体部5aとアンテナ部5b)は外被材9の内側に設置して低温や高湿環境から保護することとし、無線センサ5のうちバッテリ5cは外被材9の外側に設置してバッテリ5c交換が容易に行えるようにした。ただし、バッテリ5cも低温や高湿環境から保護するために、センサ付真空断熱パネル6を保冷容器1内に配置する場合、センサ付真空断熱パネル6の表裏面のうちバッテリ5cが設置された面が外側(収容空間4の構成面とならない面)となるよう配置することが望ましい。
【0047】
センサ付真空断熱パネル6に用いられる無線センサ5は、専用のものとして別途作成してもよいが、市販されているものを使用することもできる。また、市販されている無線センサ5には、温度を計測することができる温度センサのほかに、湿度を計測することができる湿度センサや、振動の程度を計測できる加速度センサを備えたものもある。このように、温度センサに加え、湿度センサと加速度センサ(あるいはどちらか一方)を備えた無線センサ5を、センサ付真空断熱パネル6に採用すると、例えば保冷容器1で保冷食品Fを搬送している間、保冷食品F周辺の湿度や振動状況が把握できるので、品質管理上から考えるとさらに好適である。
【0048】
無線センサ5を真空断熱材に設置する方法は、種々選択することが可能であり、その例を図5(a)〜(e)に示す。
【0049】
図5(a)は、芯材8に設けられた本体嵌合凹部10に温度センサ部と通信部(本体部5aとアンテナ部5b)を設置し、パネル表面に設けられたバッテリ嵌合凹部11にバッテリ5cを設置した場合を示す断面図である。この本体嵌合凹部10には本体部5aだけを設置し、アンテナ部5bは芯材8の表面と外被材9の間に配置することもできる。この場合、あらかじめ芯材8に本体嵌合凹部10を設け、これに本体部5aとアンテナ部5b(若しくは本体部5a)を設置し、その後に外被材9を被せて減圧し、外被材9の開口部をヒートシールし、さらにパネル表面に設けられるバッテリ嵌合凹部11にバッテリ5cを設置することで、センサ付真空断熱パネル6を完成させる。なお、バッテリ5cを設置した後、バッテリ嵌合凹部11の開口部に落下防止用のシール材12を貼り付けることもできる(シール材12は他の図でも同様に採用できる)。また、本体部5aとアンテナ部5b(若しくは本体部5a)を設置した後の本体嵌合凹部10にできる空隙部は、外被材9を被せる前に熱伝導性の高い充填剤で注入しておくことも、あるいはそのまま空隙として残しておくこともできる(他図も同様)。
【0050】
図5(b)は、芯材8の表面と外被材9との間に本体部5aとアンテナ部5bを設置し、パネル表面に設けられたバッテリ嵌合凹部11にバッテリ5cを設置した場合を示す断面図である。この場合、芯材8の表面に本体部5aとアンテナ部5bを配置し、その後に外被材9を被せて減圧し、外被材9の開口部をヒートシールし、さらにパネル表面に設けられるバッテリ嵌合凹部11にバッテリ5cを設置することで、センサ付真空断熱パネル6を完成させる。
【0051】
図5(c)は、真空断熱材製パネルの一方の面に通信部(本体部5aの一部とアンテナ部5b)とバッテリ5cを設置し、真空断熱材製パネルの他方の面に温度センサ部(本体部5aの一部)が設置された場合を示す断面図である。この図に示すように、芯材8の一方の表面側に通信部を設置し、これとは反対側の芯材8の表面に本体部5aの先端にある温度センサ部を配置することができる。この場合、あらかじめ芯材8の一方の表面(図では上面)に本体嵌合凹部10を設け、これに本体部5aの一部を設置し、芯材8の表面にアンテナ部5bを配置し、本体部5aの先端にある温度センサ部を芯材8の他方の表面(図では下面)まで伸ばして配置し、その後に外被材9を被せて減圧し、外被材9の開口部をヒートシールし、さらにパネル表面に設けられるバッテリ嵌合凹部11にバッテリ5cを設置することで、センサ付真空断熱パネル6を完成させる。なお本体部5aの先端にある温度センサ部は、芯材8に設けた貫通孔や貫通溝の中を通過させて反対側の表面まで伸ばすことができる。図では、通信部とバッテリ5cをパネルの同一面(図では上面)側に配置し、これとは異なる面(図では下面)に温度センサ部を配置しているが、通信部と温度センサ部をパネルの同一面側に配置し、これとは異なる面にバッテリ5cを配置することもできる。また図では、本体嵌合凹部10に本体部5aの一部を設置しているが、これに加えアンテナ部5bも設置することもできるし、本体嵌合凹部10を設けず通信部(本体部5aの一部とアンテナ部5b)全体を芯材8の表面と外被材9との間に配置することもできる。
【0052】
図5(d)は、真空断熱材製パネルの一方の面に通信部とバッテリ5cを設置し、真空断熱材製パネルの他方の面に温度センサ部を突出させた場合を示す断面図である。この図に示すように、芯材8の一方の表面側に通信部を設置し、これとは反対側の芯材8の表面に本体部5aの先端にある温度センサ部を配置し、さらに温度センサ部の一部(又は全部)を外被材9の外側に突出させることができる。この場合、あらかじめ芯材8の一方の表面(図では上面)に本体嵌合凹部10を設け、これに本体部5aの一部を設置し、芯材8の表面にアンテナ部5bを配置し、本体部5aの先端にある温度センサ部を芯材8の他方の表面(図では下面)まで伸ばして配置し、その後に外被材9を被せるとともに外被材9の所定位置で温度センサ部の一部(又は全部)を外側に突出させたうえで減圧し、外被材9の開口部をヒートシールし、さらにパネル表面に設けられるバッテリ嵌合凹部11にバッテリ5cを設置することで、センサ付真空断熱パネル6を完成させる。なお本体部5aの先端にある温度センサ部は、芯材8に設けた貫通孔や貫通溝の中を通過させて反対側の表面まで伸ばすことができるし、温度センサ部の外被材9からの突出部はガスバリア性を維持するべく従来技術を用いてシーリングすることもできる。図では、通信部とバッテリ5cをパネルの同一面(図では上面)側に配置し、これとは異なる面(図では下面)に温度センサ部を配置しているが、通信部と温度センサ部をパネルの同一面側に配置し、これとは異なる面にバッテリ5cを配置することもできる。また図では、本体嵌合凹部10に本体部5aの一部を設置しているが、これに加えアンテナ部5bも設置することもできるし、本体嵌合凹部10を設けず通信部(本体部5aの一部とアンテナ部5b)全体を芯材8の表面と外被材9との間に配置することもできる。
【0053】
図5(e)は、バッテリ嵌合凹部11を設けることなく、外被材9の外側にバッテリ5cを設置した場合を示す断面図である。この場合、温度センサ部と通信部(本体部5aとアンテナ部5b)を設置し、減圧後に外被材9の開口部をヒートシールしたパネル表面にバッテリ5cを設置することで、センサ付真空断熱パネル6を完成させる。バッテリ5cをパネル表面に取り付ける手段は、図に示すようにテープ材13で固定することもできるし、バンドとネジを併用するなど従来から用いられている手段を採用することもできる。なお、図5(e)は、バッテリ5cの設置手段が異なるだけで他は図5(c)と同様であるが、図5(c)に代えて図5(a)や、図5(b)、図5(d)とすることもできる。
【0054】
図5(c)〜図5(e)に示すセンサ付真空断熱パネル6は、パネルの一方の表面(図では上面)にバッテリ5cが配置され、これとは反対側の面(図では下面)であって外被材9の内側に温度センサ部が配置されているので、例えばこのセンサ付真空断熱パネル6を保冷容器1の収容空間4に配置する場合、温度センサ部がある面(図では下面)を保冷容器1の収容空間4の構成面側となるように配置すると、無線センサ5が低温・高湿環境から保護されるという点において好適である。すなわち、温度センサ部と通信部は外被材9の内側に配置されているので低温・高湿環境から保護され、バッテリ5cは収容空間4との間に真空断熱材製パネルが介在しているので低温・高湿環境から保護される。また、温度センサ部は収容空間4の構成面側にあるので温度計測という点においても好適である。
【0055】
温度センサ部による温度計測、及びアンテナ部5bによる通信を考えた場合、本体部5aの先端にある温度センサ部やアンテナ部5b付近に用いられる外被材9の素材の選択が重要になる。前記したように、アルミニウムをはじめとする金属製の素材は熱伝導性が高いという特性がある半面、電波を吸収しやすいという特性があり、一方ナイロン系の素材は熱伝導性が低く、電波を透過しやすいという特性がある。従って図5(c)〜図5(e)に示すセンサ付真空断熱パネル6の場合、アンテナ部5bが配置された面(図では上面)は電波透過性のナイロン系の素材を用い、温度センサ部が配置された面(図では下面)は熱伝導性の高い金属製の素材を用いた外被材9とすることが望ましい。
【0056】
図5(a)〜(b)に示すセンサ付真空断熱パネル6の場合、全体を熱伝導性の高い金属製の素材とし、アンテナ部5bを覆う範囲だけ部分的に電波透過性のナイロン系の素材を用いた外被材9とすることもできる。あるいは、全体を電波透過性のナイロン系の素材とし、温度センサ部を覆う範囲だけ部分的に熱伝導性の高い金属製の素材を用いた外被材9とすることもできる。部分的に異なる素材のものとする(全体が金属製素材で一部ナイロン系素材、又はその逆とする)場合、当該部分を含む孔状や溝状となるように異なる素材部分を設けることができる。
【0057】
(センサ付真空断熱パネルの配置)
前記したとおり、保冷容器1の収容空間4の構成面の全部又は一部は、センサ付真空断熱パネル6と単純真空断熱材製パネル7で構成される。例えば、図1及び図3に示すように、側壁2bの内面をセンサ付真空断熱パネル6とし、正面壁2a、底面壁2c、及び蓋3の内面を単純真空断熱材製パネル7とすることができる。あるいは底面壁2cと蓋3の内面にセンサ付真空断熱パネル6を配置し、正面壁2aと側壁2bの内面に単純真空断熱材製パネル7を配置することもできる。要は、正面壁2aの2面のうちどちらか1面、側壁2bの2面のうちどちらか1面、底面壁2c、及び蓋3の内面の中から選ばれる少なくとも1面にセンサ付真空断熱パネル6を配置すれば、センサ付真空断熱パネル6と単純真空断熱材製パネル7は任意の組み合わせとすることができる。なお、センサ付真空断熱パネル6を配置しない内面には、全て単純真空断熱材製パネル7を配置することが望ましいが、単純真空断熱材製パネル7の配置を一部省略することもできる。
【0058】
「収容空間4の構成面」にセンサ付真空断熱パネル6を配置する場合、図3に示すような配置とすることが望ましい。すなわち、本体部5aの先端にある温度センサ部が収容空間4に近い位置となるように配置すると温度を計測する上で好適であり、収容空間4から見て側壁2b等の背面側となるように(収容空間4とバッテリ5cの間に断熱パネルが介在するように)バッテリ5cを配置すると、バッテリ5cが低温・高湿環境から守られるという点において好適である。
【0059】
現在流通している既存の保冷容器には、図7のように蓋3内にドライアイスD等を収容するタイプのものもある。このようなタイプの既存保冷容器を利用して、センサ付真空断熱パネル6と単純真空断熱材製パネル7を配置することで本願発明の保冷容器1を作成することもできる。この場合、蓋3の内面に配置されるセンサ付真空断熱パネル6は、バッテリ5cが収容空間4側となるように配置されることが望ましい。これによって、蓋3内にあるドライアイスや蓄冷剤による低温・高湿環境から、センサ付真空断熱パネル6がバッテリ5cを保護することができて好適である。
【0060】
以下、本願発明の保冷容器1を使用して保冷食品Fを宅配する場合について、一例を示す。
需要者から注文を受けると、指定された保冷食品Fが冷凍庫や冷蔵庫から取り出される。この低温状態の保冷食品Fは、ドライアイスDとともに保冷容器1の収容空間4内に入れられて蓋3が嵌められる。
保冷食品Fを収容した保冷容器1は搬送車に搭載されて、需要者のもとまで配送される。配送中、センサ付真空断熱パネル6の優れた断熱性能により、収容空間4内の保冷食品Fは長時間にわたって低温状態を維持することができる。
また、保冷容器1への収容時、搬送中、搬送先、それぞれの状況で収容空間4内の温度が計測されるとともに、その計測温度がアンテナ部5bによって発信され、例えば品質管理センタなど離れた場所で計測温度を受信できるので、搬送される食材の温度管理を容易に行うことができる。
なお、バッテリ5cを交換する場合は、保冷容器1からセンサ付真空断熱パネル6を取り外し、パネルの外側(外被材9の外側)に取り付けられているバッテリ5cを取り出し、新たなものと交換する。バッテリ5cが交換されたセンサ付真空断熱パネル6は、再び保冷容器1の所定位置に配置される。
【0061】
[他の実施形態]
本願発明の保冷容器の他の実施形態を、図8及び図9に基づいて説明する。図8は、センサ付真空断熱パネル6に補強材14を組み合わせた保冷容器1を正面から見た断面図であり、図9は、断熱材にセンサ付真空断熱パネル6を内挿した壁材で構成された保冷容器1を正面から見た断面図である。
【0062】
本願発明の保冷容器1は、現在利用されている保冷容器B、あるいは新規に作成された容器本体2及び蓋3の内面に、センサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7を配置して形成される場合に限らず、センサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7自体によって容器本体2を形成し、センサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7によって蓋3を形成することもできる。すなわち、センサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7をそのまま正面壁2a、側壁2b、底面壁2cとし、蓋3とする。この場合、全てをセンサ付真空断熱パネル6とすることもできるし、一部のみをセンサ付真空断熱パネル6として他を単純真空断熱材製パネル7とすることも可能で、その配置・組合せは任意に設計できる。また、保冷容器1としての強度を補強する目的で、図8に示すように、センサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7で形成された容器本体2の外周に補強材14を取り付けることもできる。同じく、センサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7で形成された蓋3も補強材14で補強することができる。
【0063】
また本願発明の保冷容器1は、図9に示すように、新規に作成される容器本体2及び蓋3の中にセンサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7を埋設することによって形成することもできる。すなわち、正面壁2a、側壁2b、底面壁2c、蓋3、それぞれの部材内にセンサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7を内挿して、保冷容器1を完成させる。この場合、どの部材にセンサ付真空断熱パネル6を内挿し、どの部材に単純真空断熱材製パネル7を内挿するかは、任意に設計できる。
【0064】
その他、正面壁2a、側壁2b、底面壁2c、蓋3を発泡スチロールなどで形成する際に、同時にセンサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7を組み込むことによって、容器本体2や蓋3を作成することもできる。あるいは、正面壁2a、側壁2b、底面壁2c、蓋3に、センサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7を嵌めこむことのできる嵌合凹部を設け、この嵌合凹部にセンサ付真空断熱パネル6又は単純真空断熱材製パネル7を設置して容器本体2や蓋3を作成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、床材や外壁材といった建材としても利用できるとともに、本願発明の保冷容器は、食材の宅配用のほか化粧品や薬品などの搬送用としても応用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 保冷容器
2 容器本体
2a (本体の)正面壁
2b (本体の)側壁
2c (本体の)底面壁
3 蓋
4 収容空間
5 無線センサ
5a (無線センサの)本体部
5b (無線センサの)アンテナ部
5c (無線センサの)バッテリ
6 センサ付真空断熱パネル
7 単純真空断熱材製パネル
8 芯材
9 外被材
10 本体嵌合凹部
11 バッテリ嵌合凹部
12 シール材
13 テープ材
14 補強材
B (既存の)保冷容器
D ドライアイス
F 保冷食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材にガスバリア性の外被材を被せた真空断熱材製パネルと、周辺温度の計測が可能な温度センサ部と、温度センサ部による計測結果を通信可能な通信部と、温度センサ部と通信部用のバッテリと、を備え、
前記温度センサ部、及び前記通信部が、前記真空断熱材製パネルの外被材の内側に設置され、
前記バッテリが、前記パネルの外被材の外側に設置されたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項2】
請求項1記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品が別体であることを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項3】
請求項1記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品が無線センサとして設置されたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3記載のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
芯材の一部に、温度センサ部又は/及び通信部が嵌合可能な本体嵌合凹部が設けられ、
前記本体嵌合凹部内に、温度センサ部又は/及び通信部が設置されたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4記載のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
真空断熱材製パネル表面の一部に、バッテリが嵌合可能なバッテリ嵌合凹部が設けられ、
前記バッテリ嵌合凹部内に、バッテリが設置されたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5記載のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
真空断熱材製パネルの一方の面に、バッテリが配置され、
真空断熱材製パネルの他方の面に、温度センサ部が配置されたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6記載のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
温度センサ部の一部が、真空断熱材製パネルの外被材の外側に露出していることを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
外被材が、熱伝導性素材と電波透過性素材を組み合わせて形成されたものであり、
前記外被材のうち、通信部を覆う範囲が電波透過性素材であることを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
外被材が、熱伝導性素材と電波透過性素材を組み合わせて形成されたものであり、
前記外被材のうち、温度センサ部を覆う範囲が熱伝導性素材であることを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
温度センサ部に加え、湿度センサ部又は/及び加速度センサ部を備えたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項11】
容器本体と蓋を備える容器の内部に、真空断熱材製パネルを配置してなる保冷容器であって、
前記容器本体の内面及び前記蓋の内面のうち、一部若しくは全面に前記真空断熱材製パネルが配置され、
これら配置された真空断熱材製パネルの一部又は全部が、請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルであることを特徴とする保冷容器。
【請求項12】
真空断熱材製パネルで形成された容器本体と、真空断熱材製パネルで形成された蓋と、該容器本体と該蓋によって形成される収容空間と、を備え、
前記容器本体及び前記蓋を形成する真空断熱材製パネルの一部又は全部が、請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルであることを特徴とする保冷容器。
【請求項13】
請求項12記載の保冷容器において、
容器本体又は/及び蓋に、補強材が取り付けられたことを特徴とする保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−51608(P2012−51608A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194661(P2010−194661)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000155045)株式会社本宏製作所 (41)
【Fターム(参考)】