説明

センサ付真空断熱パネル

【課題】真空断熱材で形成される断熱空間内の温度を管理することは有効であるが、これを実現するためにはバッテリの寿命の問題、温度センサの計測結果を取得する難しさの問題を解決する必要がある。本願発明の課題は、断熱機能に優れ、しかも周辺温度を計測するとともにその計測温度を送信できる真空断熱パネルを提供することによって、これらの問題を解消することにある。
【解決手段】本願発明は、温度計測という性質上、通常は断熱環境に置かれることのない温度センサを、あえて真空断熱材内に設置するという発想に基づいて行われたものであり、具体的には、周辺温度の計測が可能なセンサ部を有する無線センサが設置されたセンサ付真空断熱パネルについて開発したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、真空断熱材を利用した真空断熱パネルに関するものであり、より具体的には、無線センサを備えたセンサ付真空断熱パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、断熱材として発泡スチロールよりも断熱性能の高い真空断熱材が多用されている。この真空断熱材は、内部に多くの空隙をもつ多孔体からなる芯材に、ガスバリア性の外被材を被せて減圧し、外被材の開口部を熱溶着(ヒートシール)したものである。このように減圧により内部を真空状態(真空度の高い状態)とすることで、断熱性能を高めた断熱材である。なお、真空断熱材の熱伝導率は0.002〜0.01w/mkであり、発泡スチロールの0.02〜0.03w/mk、空気の0.02w/mkに比べると、その断熱性能が顕著であることがわかる。
【0003】
この真空断熱材は、冷蔵庫や魔法ビンなどに利用されるほか、冷凍室の壁に用いられる建材としても利用されるなど、多くの分野で採用されており、外部から断熱される空間を形成するための壁材(パネル)としてあらゆる場面で使用されるものである。
【0004】
一方で、外部から断熱された空間(以下、「断熱空間」という。)内の温度を管理するという需要もある。しかしながら次のような理由から、従来、断熱空間内にバッテリ式の温度センサを配置した温度管理という手法が採用されることはなかった。第一に、バッテリの寿命の問題が挙げられる。バッテリは、低温(高温)環境や高湿環境では劣化が進みやすく、極端に寿命が短くなることが知られている。一般に断熱空間内は、低温環境あるいは高温環境であり、場合によってはドライアイスなどの設置に伴い高湿環境になることから、バッテリを設置するには極めて劣悪な環境である。
【0005】
第二に、温度センサの計測結果を確認する難しさの問題が挙げられる。断熱空間は、外部との熱交換を避ける必要があり、温度センサの計測結果を確認するたびに断熱空間の一部(例えば、蓋や扉など)を開閉することは許されない。つまり、断熱空間内に温度センサを設置すると、その計測結果を確認することが容易でなくなる。
【0006】
このような理由から、真空断熱材を使用し、かつ温度センサ等によって温度管理するといった技術について提案されることがこれまでなかった。むしろ、特許文献1のように、真空断熱材の断熱性能を高める技術について提案されることが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3885742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、真空断熱材で形成される断熱空間内の温度を管理することは、やはり有益であり、これを実現するためには前記した2つの問題、すなわちバッテリの寿命の問題、温度センサの計測結果を確認する難しさの問題を解決する必要がある。特許文献1をはじめとする真空断熱材に関する従来の技術では、このような問題を解決することができなかった。
【0009】
本願発明の課題は、断熱機能に優れ、しかも周辺温度を計測するとともにその計測温度を、通信できる真空断熱パネルを提供することによって、前記問題を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、温度計測という性質上、通常は断熱環境に置かれることのない温度センサを、あえて真空断熱材内に設置するという発想に基づいて行われたものであり、具体的には、周辺温度の計測が可能なセンサ部を有する無線センサが設置されたセンサ付真空断熱パネルについて開発したものである。
【0011】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、芯材にガスバリア性の外被材を被せた真空断熱パネルであって、周辺温度の計測が可能な温度センサ部、温度センサ部による計測結果を無線通信可能な通信部、及びバッテリが、前記外被材の内側に設置されたものである。
【0012】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品から選ばれる一つの部品又は全ての部品が別体であるものとすることもできる。
【0013】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品を有する無線センサが、外被材の内側に設置されたものとすることもできる。
【0014】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、芯材の一部に、温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品のうち少なくとも一つの部品が嵌合可能な埋設凹部が設けられ、前記埋設凹部内に、温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品のうち少なくとも一つの部品が設置されたものとすることもできる。
【0015】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、板状の芯材の一方の面に、バッテリが配置され、板状の芯材の他方の面に、温度センサ部が配置されたものとすることもできる。
【0016】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、外被材が、熱伝導性素材と電波透過性素材を組み合わせて形成されたものであり、前記外被材のうち、通信部を覆う範囲が電波透過性素材であるものとすることもできる。
【0017】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、外被材が、熱伝導性素材と電波透過性素材を組み合わせて形成されたものであり、前記外被材のうち、温度センサ部を覆う範囲が熱伝導性素材であるものとすることもできる。
【0018】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、温度センサ部に加え、加速度センサ部を備えたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルには、次のような効果がある。
(1)真空断熱材を使用しているので断熱性に優れ、かつ、無線センサを備えているので周辺の温度を計測することができる。
(2)無線センサが真空断熱材内に設置されているので、低温環境で使用してもバッテリが低温に曝されることがなく、バッテリの劣化が促進されることもない。
(3)無線センサが真空断熱材内に設置されているので、結露が生ずるといった高湿環境で使用してもバッテリが直接高湿下に曝されることがなく、バッテリの劣化が促進されることもない。
(4)表面が外被材に覆われているため洗浄することができて、衛生状態を維持するのが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】無線センサを芯材に埋設した場合のセンサ付真空断熱パネルを示す断面図。
【図2】無線センサを芯材の表面に配置した場合のセンサ付真空断熱パネルを示す断面図。
【図3】本体部とアンテナ部を芯材の表面にバッテリを芯材に埋設した場合のセンサ付真空断熱パネルを示す断面図。
【図4】アンテナ部とバッテリを芯材の一方の表面に配置し温度センサ部を芯材の他方の表面に配置した場合のセンサ付真空断熱パネルを示す断面図。
【図5】アンテナ部とバッテリを芯材の一方の表面近くに埋設し温度センサ部を芯材の他方の表面に配置した場合のセンサ付真空断熱パネルを示す断面図。
【図6】無線センサを説明するための詳細平面図。
【図7】保冷容器を正面から見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態1]
本願発明のセンサ付真空断熱パネルの実施形態の一例を図に基づいて説明する。図1〜図5は、本願発明のセンサ付真空断熱パネル1を示す断面図である。これらの図に示すようにセンサ付真空断熱パネル1は、芯材2と外被材3を備えた真空断熱材に無線センサ4を取り付けたものであり、図1〜図5はそれぞれ無線センサ4の取付け方が異なるセンサ付真空断熱パネル1を示すものである。
【0022】
(製造方法)
真空断熱材は、芯材2に外被材3で被せた状態で減圧し、外被材3の開口部を熱溶着(ヒートシール)したものである。芯材2の内部には多くの空隙が設けられており、ローラによる空気の押し出し、あるいは吸気によりこの空隙内の空気が排出されることによって、真空断熱材の内部は減圧され真空状態となる。このとき芯材2が湿気を帯びているとその後の真空状態が保たれ難いので、空隙内からの空気排出作業は、乾燥空気を送りながら行うなど乾燥環境下で実施するのが望ましい。なお、ここでいう真空状態とは、必ずしも絶対真空状態に限らず、真空度の高い状態を指すもので、1〜200Pa、望ましくは1〜100Pa程度の真空度となる状態を意味する。
【0023】
(芯材)
より多くの空気を芯材2から排出できる方がより減圧され、つまりより高い真空度の真空断熱材が得られることとなる。そのため、芯材2の材質としては、内部に多くの空隙をもついわゆる多孔体が用いられ、例えば、ウレタンや粉末シリカグラスウールを素材とするもの、セラミックファイバー、ロックウールなどの繊維材からなるもの、などが挙げられる。スタイロホームも芯材2として利用できるが、割れやすいという面があるので使用状況によっては注意を要する。逆に、芯材2として利用するガラスウールは割れ難いという特性を有する。
【0024】
(外被材)
外被材3はフィルム状(又は板状)のものであり、減圧後の真空状態を保つためガスバリア性に富む材質で形成される必要がある。ガスバリア性のフィルム素材としては、ステンレススチール、アルミニウム、鉄といった金属箔や、プラスチックフィルム、あるいは金属箔とプラスチックフィルムのラミネートフィルム等が例示できる。もちろん、金属箔に限らず金属板(薄板)のものを利用することもできるが、この場合やや重量があるため使用する目的に応じて適宜採用することになる。
【0025】
アルミニウムをはじめとする金属製の素材を用いた外被材3は、熱伝導性が高いという特性がある半面、電波を吸収しやすいという特性もある。後に説明するように、真空断熱材の内部に入れられる無線センサ4は、周辺温度を計測するとともに、この計測した結果を通信することができるものであり、周辺温度を計測するという面ではアルミニウム素材は適しているが、通信するという面ではアルミニウム素材は適さない。
【0026】
一方、外被材3として、ナイロン系の素材を用いることもできるが、ナイロン系の素材は熱伝導性が低く、電波を透過しやすいという特性がある。つまり、アルミニウム素材とは逆で、通信するという面ではナイロン系の素材は適しているが、周辺温度を計測するという面ではナイロン系の素材は適さない。双方の特性を生かすべく、アルミニウム素材とナイロン系素材を組み合わせて外被材3とすることもできる。一例として、無線センサ4の温度センサ部に近接する(温度センサ部を覆う)範囲は熱伝導性の高いアルミニウム素材を用い、無線センサ4のアンテナ部に近接する(温度センサ部を覆う)範囲は電波透過性の良いナイロン系素材とする外被材3を用いることができる。
【0027】
芯材2の空隙内の空気が排出された状態、すなわち真空断熱材の内部が減圧された状態で外被材3の開口部がヒートシールされ、これによって真空度の高い状態を維持することができる。従って、外被材3は熱溶着可能な材料と組み合わされることが多い。例えば、アルミニウム箔の裏面(又は表裏面)にPET素材を重ねたものを、外被材3として用いることができる。PET素材は90℃程度で溶着され、これに対して無線センサ4は通常200℃程度までは溶けることがないので、無線センサ4にとっては好適である。
【0028】
なお、芯材2や外被材3は、ここで例示したものに限らず、従来から真空断熱材として用いられている素材、材質のものを使用することができる。
【0029】
(断熱性能)
真空断熱材は、内部を真空状態(減圧状態)とすることで優れた断熱性能を有する。具体的には、真空断熱材の熱伝導率は0.002〜0.01w/mkであり、発泡スチロールの0.02〜0.03w/mk、空気の0.02w/mkに比べると、その断熱性能が顕著であることがわかる。
【0030】
(無線センサ)
図6は、無線センサ4を説明するための詳細平面図である。この図に示すようには無線センサ4は、本体部4aと、アンテナ部4bと、バッテリ4cからなる。本体部4aの先端側(図6では上側)には、温度を検知して計測することができる温度センサ部を内蔵しており、本体部4aの他端側には、温度センサ部による計測結果を通信することができる通信部(アンテナ部4bを含む)が備えられている。近年、無線センサ4は小型化が進み、その外寸(長さ)が2〜4mmのものまである。本願発明のセンサ付真空断熱パネル1に用いられる無線センサ4も小型の方が望ましいが、真空断熱材の内部に設置することのできるものであれば、その大きさや形状は任意に選択できる。なお、本願発明のセンサ付真空断熱パネル1は、本体部4a、アンテナ部4b、バッテリ4cの三つの部品を備えることができればよく、格別無線センサ4として備える必要はない。すなわち、本体部4a、アンテナ部4b、バッテリ4cの三つの部品が、それぞれ別体の部品として備えられてもよく、あるいは、本体部4aとアンテナ部4bが一体でバッテリ4cだけを別体とするなど、これら三つの部品のうち一つの部品のみ別体とすることもできる。ここでは便宜上、センサ付真空断熱パネル1が無線センサ4(本体部4a、アンテナ部4b、バッテリ4cの三つの部品を有する)を備えた場合で説明する。
【0031】
バッテリ4cは、アンテナ部4bが情報を通信する際の電源となるもので、リチウム電池などが多用されている。リチウム電池等は、一般に低温環境や高湿環境では劣化が進みやすく、極端に寿命が短くなることが知れられている。そのため無線センサ4は、常温環境であって高湿とならない環境で利用されることが多い。
【0032】
(保冷容器での利用)
一方で、真空断熱材を利用した真空断熱パネルで構成される断熱空間内の温度を管理することは有益である。この断熱空間の具体的な例としては、冷凍された食品(冷蔵食品)や冷蔵された食品(冷凍食品)などを収容して配送することができる保冷容器5が挙げられる。図7は、保冷容器5を正面から見た断面図である。この図に示すように保冷容器5は、側壁6と蓋7がセンサ付真空断熱パネル1で形成され、底板8が無線センサを備えない真空断熱パネルで形成されている。なお図7に示す保冷容器5は、側壁6、蓋7、及び底板8の、外面が補強材9で補強されている。側壁6、蓋7、及び底板8に囲まれて形成される収容空間10には、冷蔵食品などの食材Fが収容されるとともに、冷却用のドライアイスDも収められる。
【0033】
保冷容器5を図7の構造とすることによって、収容空間10内(断熱空間内)を外部から断熱したうえで、さらに収容空間10内(断熱空間内)の温度を管理することができる。すなわち、センサ付真空断熱パネル1の内部に設置された無線センサ4のバッテリ4cは外部から断熱されているため、低温環境・高湿環境に伴うバッテリ4cの劣化(短寿命化)の問題を解消できる。また、無線センサ4のアンテナ部4bによって計測温度が通信されるので、蓋7を開閉することなく容易に収容空間10内(断熱空間内)の温度を確認することができる。なお、図7に示すように、センサ付真空断熱パネル1のアンテナ部4bは、芯材2に設けた貫通孔や貫通溝の中を通過させて反対側の表面(図7では収容空間10側)まで伸ばすこともできる。もちろん、アンテナ部4bを反対側まで伸ばさず、図1〜5に示すようにアンテナ部4b全体を芯材2の同一面に配置することもできる。
【0034】
センサ付真空断熱パネル1に用いられる無線センサ4は、専用のものとして別途作成してもよいが、市販されているものを使用することもできる。また、市販されている無線センサ4には、温度を計測することができる温度センサのほかに、振動の程度を計測できる加速度センサを備えたものもある。このように、温度センサに加え、加速度センサを備えた無線センサ4を、センサ付真空断熱パネル1に採用すると、例えば図7に示す保冷容器5で食材Fを搬送する際、食材Fの振動状況が把握できるので、品質管理上から考えるとさらに好適である。
【0035】
無線センサ4を真空断熱材の内部に設置する方法は、種々選択することが可能であり、その例を図1〜図5に示す。
【0036】
図1は、無線センサ4を芯材2に埋設した場合を示す断面図である。この図に示すように、芯材2に設けられた埋設凹部11に無線センサ4を設置することができる。あるいは、本体部4a、アンテナ部4b、バッテリ4cの三つの部品のうちいずれか一つの部品を埋設凹部11に設置することもできるし、これら三つの部品から選ばれる二つの部品を埋設凹部11に設置することもできる。この場合、あらかじめ芯材2に埋設凹部11を設け、これに無線センサ4(又は前記三つの部品のうち少なくとも一つの部品)を設置し、その後に外被材3を被せて減圧し、外被材3の開口部をヒートシールすることで、センサ付真空断熱パネル1を完成させる。無線センサ4(又は前記三つの部品のうち少なくとも一つの部品)を設置した後の埋設凹部11にできる空隙部は、外被材3を被せる前に熱伝導性の高い充填剤で注入しておくことも、あるいはそのまま空隙として残しておくこともできる。バッテリ4cが埋設凹部11に設置された場合、バッテリ4cは芯材2の略中心部に配置されることになるので、確実に外部の低温・高湿環境から守られる。
【0037】
図2は、無線センサ4を芯材2の表面に配置した場合を示す断面図である。この図に示すように、芯材2と外被材3との間に無線センサ4を設置することができる。この場合、あらかじめ芯材2の表面(図では上面)に無線センサ4を取付け、その後に外被材3を被せて減圧し、外被材3の開口部をヒートシールすることで、センサ付真空断熱パネル1を完成させる。本体部4aとアンテナ部4bは外被材3のみで覆われているので、温度計測や通信という点では好適である。このセンサ付真空断熱パネル1は、表面近くにバッテリ4cがあることから、バッテリ4cが配置されていない面(図では下面)が低温・高湿環境となる(具体的には保冷容器5の収容空間10側となる)ように配置して利用することが望ましい。
【0038】
図3は、無線センサ4のうち本体部4aとアンテナ部4bを芯材2の表面に、バッテリ4cを芯材2に埋設した場合を示す断面図である。この場合、あらかじめ芯材2の一部にバッテリ4cを埋設するとともに、芯材2の表面に本体部4aとアンテナ部4bを取付け、その後に外被材3を被せて減圧し、外被材3の開口部をヒートシールすることで、センサ付真空断熱パネル1を完成させる。本体部4aとアンテナ部4bは外被材3のみで覆われているので、温度計測や通信という点では好適である。しかもバッテリ4cは、芯材2の内部に配置されるので、外部の低温・高湿環境から守られる。なお、この図のセンサ付真空断熱パネル1も、バッテリ4cが配置されていない面(図では下面)が低温・高湿環境となる(具体的には保冷容器5の収容空間10側となる)ように配置して利用することが望ましい。
【0039】
図4は、無線センサ4のうちアンテナ部4bとバッテリ4cを芯材2の一方の表面に配置し、本体部4aの先端にある温度センサ部を芯材2の他方の表面に配置した場合を示す断面図である。この場合、芯材2の一方の表面(図では上面)にアンテナ部4bとバッテリ4cを設置し、本体部4aの先端にある温度センサ部を芯材2の他方の表面(図では下面)まで伸ばして配置し、その後に外被材3を被せて減圧し、外被材3の開口部をヒートシールすることで、センサ付真空断熱パネル1を完成させる。なお本体部4aの先端にある温度センサ部は、芯材2に設けた貫通孔や貫通溝の中を通過させて反対側の表面まで伸ばすことができる。
【0040】
図5は、無線センサ4のうちアンテナ部4bとバッテリ4cを芯材2の一方の表面近くに埋設し、本体部4aの先端にある温度センサ部を芯材2の他方の表面に配置した場合を示す断面図である。この場合、芯材2の一方の表面(図では上面)付近にバッテリ4cを埋設するとともにアンテナ部4bを設置し、本体部4aの先端にある温度センサ部を芯材2の他方の表面(図では下面)まで伸ばして配置し、その後に外被材3を被せて減圧し、外被材3の開口部をヒートシールすることで、センサ付真空断熱パネル1を完成させる。なお本体部4aの先端にある温度センサ部は、芯材2に設けた貫通孔や貫通溝の中を通過させて反対側の表面まで伸ばすことができる。
【0041】
図4及び図5のセンサ付真空断熱パネル1は、アンテナ部4bが外被材3のみで覆われているので、通信という点で好適である。また、一方の芯材2表面(あるいは表面付近)にバッテリ4cが配置され、他方の芯材2表面に温度センサ部が配置されるので、例えばこのセンサ付真空断熱パネル1を、温度センサ部がある面(図4、5では下面)を保冷容器5(図7)の収容空間10側となるように配置して利用すると、温度計測という点で好適であるとともに、バッテリ4cを低温・高湿環境から守るという点においても好適である。
【0042】
温度センサ部による温度計測、及びアンテナ部4bによる通信を考えた場合、本体部4aの先端にある温度センサ部やアンテナ部4b付近に用いられる外被材3の素材の選択が重要になる。前記したように、アルミニウムをはじめとする金属製の素材は熱伝導性が高いという特性がある半面、電波を吸収しやすいという特性があり、一方ナイロン系の素材は熱伝導性が低く、電波を透過しやすいという特性がある。従って図4や図5に示すセンサ付真空断熱パネル1の場合、アンテナ部4bが配置された面(図では上面)は電波透過性のナイロン系の素材を用い、温度センサ部が配置された面(図では下面)は熱伝導性の高い金属製の素材を用いた外被材3とすることが望ましい。
【0043】
図1〜図5に示すセンサ付真空断熱パネル1の場合、全体を熱伝導性の高い金属製の素材とし、アンテナ部4bを覆う範囲だけ部分的に電波透過性のナイロン系の素材を用いた外被材3とすることもできる。あるいは、全体を電波透過性のナイロン系の素材とし、温度センサ部を覆う範囲だけ部分的に熱伝導性の高い金属製の素材を用いた外被材3とすることもできる。部分的に異なる素材のものとする(全体が金属製素材で一部ナイロン系素材、又はその逆とする)場合、当該部分を含む孔状や溝状となるように異なる素材部分を設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、床材や外壁材といった建材としても応用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 センサ付真空断熱パネル
2 芯材
3 外被材
4 無線センサ
4a (無線センサの)本体部
4b (無線センサの)アンテナ部
4c (無線センサの)バッテリ
5 保冷容器
6 (保冷容器の)側壁
7 (保冷容器の)蓋
8 (保冷容器の)底板
9 (保冷容器の)補強材
10 (保冷容器の)収容空間
11 埋設凹部
D ドライアイス
F 食材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材にガスバリア性の外被材を被せた真空断熱パネルであって、
周辺温度の計測が可能な温度センサ部、温度センサ部による計測結果を無線通信可能な通信部、及びバッテリが、前記外被材の内側に設置されたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項2】
請求項1記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品から選ばれる一つの部品又は全ての部品が別体であることを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項3】
請求項1記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品を有する無線センサが、外被材の内側に設置されたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3記載のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
芯材の一部に、温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品のうち少なくとも一つの部品が嵌合可能な埋設凹部が設けられ、
前記埋設凹部内に、温度センサ部、通信部、及びバッテリの三つの部品のうち少なくとも一つの部品が設置されたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4記載のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
板状の芯材の一方の面に、バッテリが配置され、
板状の芯材の他方の面に、温度センサ部が配置されたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
外被材が、熱伝導性素材と電波透過性素材を組み合わせて形成されたものであり、
前記外被材のうち、通信部を覆う範囲が電波透過性素材であることを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
外被材が、熱伝導性素材と電波透過性素材を組み合わせて形成されたものであり、
前記外被材のうち、温度センサ部を覆う範囲が熱伝導性素材であることを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のセンサ付真空断熱パネルにおいて、
温度センサ部に加え、加速度センサ部を備えたことを特徴とするセンサ付真空断熱パネル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−31987(P2012−31987A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268286(P2010−268286)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【分割の表示】特願2010−173919(P2010−173919)の分割
【原出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000155045)株式会社本宏製作所 (41)
【Fターム(参考)】