説明

センサ融合を提供するシステム

【課題】フォールス・ポジティブな警告を減らす医療監視システムを構築する。
【解決手段】偽のデータおよび決定的でないデータから生ずるフォールス・ポジティブな警告を減らすことによって監視の特異性を増加させるために、医療監視システム内に、患者パラメータの自然な関係を取り入れるシステムを備える。本発明はまた、患者パラメータから得られるデータを使用して、直接監視を通常妨げる患者パラメータを無侵襲で監視するために、患者パラメータの自然な関係を取り入れるシステムを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、包括的に、センサ融合に関し、より詳細には、複数の患者パラメータの複数のモニタを組み込む医療デバイスにおけるセンサ融合に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法119条(e)の下で、2002年10月3日に出願され、その全体が参照により本明細書に援用される米国仮特許出願第60/415,523号「Systems and Methods for Providing Sensor Fusion」に対する優先権を主張する。
【0003】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載]
該当なし
【0004】
[「マイクロフィッシュ」の参照]
該当なし
【背景技術】
【0005】
[発明の背景]
監視された偽のデータによって、そのデータに頼るシステムが、危険に稼動し、重大な状態において稼動するのに失敗し、または、不必要に警告する場合がある。たとえば、鎮静および鎮痛システムは、心電図(ECG)が不安定になると、ECGによって患者の心拍数を監視している場合がある。単一のモニタに基づいて、鎮静および鎮痛システムは、たとえば、不安定なECGデータが実際に偽である時に、極端に低い心拍数を指示する警告を信号で送信する場合がある。これらのフォールス・ポジティブな警告の頻度が高いことは臨床医を悩ませ、本当に生命にかかわる状況に対して注意が払われることが少なくなる場合がある。
【0006】
センサ融合は、患者の状態を規定するパラメータの感度および特異性を増加させるために、第1患者パラメータを与える少なくとも1つのセンサからの監視されたデータおよび情報を、第2患者パラメータを与える少なくとも1つの他のセンサからのデータと共に分析することとして本明細書で規定される。感度の高いシステムは、本当に重大な事象が発生した時にその事象を見逃さないことを保証する。特異性の高いシステムでは、警告が実際に鳴る時、警告は、本当に重大な事態を表し、偽のデータに基づいていない。ECGなどの単一のモニタを設けて心拍数を監視する結果、鎮静および鎮痛システムが低い特異性を有し、たとえば、臨床医の外科フィールド(surgical field)での動きにより、ECGが心室細動と解釈する場合がある分裂的な電気活動が増える可能性がある。ECGによって提示されるデータを検証する任意の手段なしで、モニタは、データがたとえ偽であっても、生命にかかわる事態が起こる可能性があることを担当の臨床医に報知するように警告することになる。
【0007】
監視の問題はまた、たとえば、カプノメータなどのモニタが、患者の状況に関する結論付けしない形跡を提供する時に起こる場合がある。吸気中に肺に運ばれる空気は通常、大気内の標準ガス濃度のために、ごく少量の二酸化炭素を保持する。大気は、肺内を通るにつれて、肺胞膜にわたってガス移動に関与することになり、酸素が血液に取り込まれ、二酸化炭素が、体から除去するために排出される。除去される二酸化炭素は通常、患者の呼吸数を確認するため、患者が十分なガス交換を受けているかどうかを確定するため、および、他の換気の理由のために、カプノメータによって使用される。カプノメトリについて監視されると、正常に呼吸する健康な患者は、一連の波形を有するカプノグラムを生成することになる。それぞれの波形のピークは、呼吸終期の二酸化炭素(EtCO2)レベルとして知られる。それぞれの呼気の終わりのピークは一般に、肺胞レベルで発生するガス交換を最もよく表し、呼気の終わりに吐き出されたガスは、肺胞ガス交換が起こる肺の最も深い部分で、最も長い時間部分の間保持されている。そのため、呼吸終期の二酸化炭素は、患者の血液の二酸化炭素レベルを表すものとして臨床的に解釈され、血液の二酸化炭素レベルの傾向が、所定期間にわたる患者の換気状態を反映する。
【0008】
吸気中、標準カプノメトリ波形は、その後、一般に、(低い大気ガス濃度による)吸気中のごくわずかな二酸化炭素を有する期間と、その後の、呼気の始まり(ここでは、ガスは、ガス交換に関与しない気道の上部領域から排出される)の間のごくわずかな二酸化炭素を有する第2の期間として見られることができる。吸気および呼気の始まりに続いて、二酸化炭素レベルを指示する波形は急に上昇し、プラトー(plateau)に達し始め、最終的に呼気の終わりでEtCO2のピークに達することになる。呼気に続いて、吸気がもう一度始まる時に、二酸化炭素レベルがごくわずかなレベルに急に降下することになる。
【0009】
カプノメータは一般に、上述した患者のパラメータを確認する時に使用され、役立つが、カプノメトリのみを使用して、過剰換気(重大でない問題であることが多い)と低換気(非常に重大で、かつ、生命にかかわる可能性のある状況)を区別することは難しい場合がある。過剰換気は一般に、浅く、速く、短い呼吸が特徴であり、患者の過剰換気状態が血液に蓄積する二酸化炭素を減少させるのに役立つため、カプノメータは、吐き出される二酸化炭素の劇的な減少を示すことになる。
【0010】
低換気は一般に、呼吸低下が特徴であり、低換気は、たとえば、薬剤の過剰な投与量および気道閉塞によって引き起こされる場合がある。内在する患者の生理機能は、過剰換気と比較すると、低換気では全く異なるが、状況は、カプノメータと驚くほど似ている可能性がある。過剰換気と同様に、部分的なまたは完全な気道閉塞によって引き起こされる低換気はまた、しばしば、一連のカプノグラフィの低下した波形、および、呼吸終期の二酸化炭素の低レベルとして現れるであろう。低換気の場合、カプノグラフィの低下した波形は、気道閉塞を通る空気の不適切な呼気によって引き起こされる。過剰換気の患者の状態と低換気の患者の状態の両方のカプノメトリ波形は、非常に似ているように現れる可能性があるため、監視がカプノメトリのみによって行われると、両方の患者状態において警告する以外に、監視アルゴリズムの選択は存在せず、生命にかかわる低換気事象を見逃す可能性が回避される。しかしながら、こうしたシステムにより、過剰換気の良性の状況に基づいて、フォールス・ポジティブの警告が頻繁に生じる場合がある。
【0011】
心拍数、カプノメトリ、パルスオキシメトリ、血圧、および他のものなどの患者パラメータは一般に、患者の状況を判断する時に、個々に監視されるが、こうしたパラメータは、或るものに関する情報が、別のものを監視することによって収集されることを可能にする、内在する生理学的依存性および相関を有することが多い。たとえば、心電図(ECG)によって監視される心拍数は、パルスオキシメトリの監視に生理学的に関連する。心室の電気活動は、パルスオキシメータの監視部位の下の、血液運動の拍動性の波を表すプレチスモグラムと1:1の関係で、ECG上で検出される主要な波形(QRS)を示す。2つの波形を比較すると、ECGのQRS部分は一般に、プレチスモグラム波形のパルスの前の数ミリ秒で発生する。心室細動に伴う分裂などの、心拍出量の深刻な分裂が発生する場合、プレチスモグラムは、ECGと1:1では、もはや相互に関連せず、不規則になるであろう。したがって、ECGの読みが、生命にかかわる可能性のある患者事象が発生していることを指示する場合、プレチスモグラムもまた、こうしたネガティブな事象を指示する可能性があるであろう。これら2つの個別のモニタからの情報が一緒に処理される場合、出力は、警告アルゴリズムの特異性を大幅に増加させる可能性がある。さらに、ECGが、たとえば、外科フィールドにおける臨床医の動きによって不安定になる場合、プレチスモグラムは、規則的なままである可能性があり、そのため、不規則なECGが偽であり、本当に生命にかかわる患者事象の結果ではないことが推論される場合がある。
【0012】
人の体内への侵襲性があるために、測定することが難しいが、患者の状況の有益な指標として役立つ場合がある患者パラメータが存在することが多い。たとえば、体血管抵抗(SVR)は、直接測定される場合、不快な監視デバイスを患者の血管内に挿入ことを必要とする場合がある。こうした侵襲性の処置は、臨床医がこうした監視デバイスを使用するのを妨げる場合があり、患者の心臓血管の状況または血液力学的状況に関する重要である可能性のある情報が監視されないままになることになる。
【発明の概要】
【0013】
[発明の概要]
本発明は、偽のデータおよび決定的でないデータから生ずるフォールス・ポジティブな警告を減らすことによって監視の特異性を増加させるために、医療監視システム内に、心拍数およびパルスオキシメトリなどの患者パラメータの自然な関係を取り入れるシステムを備える。本発明はまた、患者パラメータから得られるデータを使用して、直接監視を通常妨げる患者パラメータを無侵襲で監視するために、患者パラメータの自然な関係を取り入れるシステムを備える。このシステムは、システムの特異性を増加させ、臨床的な作業負荷を軽減するために、パラメータの監視および比較を自動的に制御するようにプログラムされたコントローラを含む。
【0014】
そのため、本発明は、低換気などの状況の発生を検出する際に依然として感度を保持しながら、カプノメータなどのモニタからのデータアーチファクトを検出することによって、特異性を増加させた監視システムを備える。本発明のシステムは、システムの特異性を増加させ、フォールス・ポジティブな警告応答の確率を減らすために、患者パラメータ間に自然な関係を取り入れる。本発明はまた、正確で、かつ、患者にとって快適な方法で、SVRなどの直接的な監視を一般に妨げる患者パラメータを監視することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を組み込むことができる代表的な鎮静および鎮痛システムを示すブロック図である。
【図2】本発明によって利用される2つの波形の間の関係を表す、ECG波形およびパルスオキシメータ波形を示す図である。
【図3】本発明による、センサ融合を提供し使用して、フォールス・ポジティブな警告の確率を減らす方法の一実施形態を示す図である。
【図4A】本発明によって利用されるデータを表す二酸化炭素分圧波形を示すカプノグラムの一実施形態を示す図である。
【図4B】本発明によって利用されるデータを表す二酸化炭素分圧波形を示すカプノグラムのさらなる実施形態を示す図である。
【図5A】本発明によって利用されるデータを表す、二酸化炭素分圧波形が換気圧波形と重なっているカプノグラムの一実施形態を示す図である。
【図5B】本発明によって利用されるデータを表す、二酸化炭素分圧波形が換気圧波形と重なっているカプノグラムのさらなる実施形態を示す図である。
【図6】本発明による、センサ融合を採用する方法の一実施形態を示す図である。
【図7】本発明による、容易に監視される患者パラメータの複数のモニタを使用して、監視することが難しい場合がある第3パラメータを計算する方法の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発明の詳細な説明]
図1は、本発明を組み込むことができる代表的なシステムを示すブロック図である。鎮静および鎮痛システム22は、ユーザインタフェース12、ソフトウェア制御式コントローラ14、周辺機器15、電源16、外部通信機10、圧力送出器11、患者インタフェース17、および薬剤送出器19を含み、鎮静および鎮痛システム22は、鎮静および/または鎮痛を患者18に提供するためにユーザ13によって操作される。鎮静および鎮痛システム22の例は、1999年6月3日に出願され、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願第09/324,759号に開示され、使用可能にされる。鎮静および鎮痛システム22は代表的なシステムであるが、本発明は、患者パラメータの自然な関係を医療監視システムに取り込むことによって利益を得る可能性がある任意のシステムに組み込まれることができる。
【0017】
図1の代表的なシステムにおいて、患者インタフェース17は、限定はしないが、無侵襲血圧モニタ、パルスオキシメータ、カプノメータ、ECG、患者意識評価システム、換気流量モニタ、換気圧モニタ、インピーダンスプレチスモグラフ(IPG)、ガス分析器、換気温度モニタ、換気湿度モニタ、および音響モニタを含む、生命徴候モニタおよび意識モニタなどの、2つ以上の患者健康状態モニタ(図示せず)を含む。患者インタフェース17の患者モニタは、コントローラ14に電子的に結合され、患者の実際の生理学的状況を示す信号を提供することができる。本発明の一実施形態において、少なくとも1つのモニタは、第1患者パラメータを監視し、一方、少なくとも1つの他のモニタは、第2の関連する患者パラメータを監視し、第1患者パラメータと第2患者パラメータは関連する。
【0018】
第1患者パラメータの監視されたデータが、第2の関連する患者パラメータからのデータに関して分析される、2つのモニタのセンサ融合を提供することによって、鎮静および鎮痛システム22は、偽のデータの作用を減らし、いずれかの患者パラメータが、他のパラメータと個別に監視された場合に起こると考えられる、決定的でないデータを制限する(qualify)ことによって特異性を増加させる。このセンサ融合は、システム感度をさらに増加させる場合があり、第1センサによって見過ごされる重大な事態を、関連する患者パラメータを監視するセンサによって検出することができる。コントローラ14は、患者インタフェース17からの電気的出力を、メモリデバイスに格納されたデータと比較してもよく、こうしたデータは、たとえば、ECGとパルスオキシメータによって監視されるプレチスモグラフの間の安全な関係、および、望ましくない関係などの、1つまたは複数の、安全な、および、望ましくない患者の生理学的状況パラメータの比較のセットを示してもよい。これらのデータのセットはまとめて、安全データセットと呼ばれる。比較に基づいて、コントローラ14は、安全で、費用効果的で、最適化された値の、こうしたパラメータに従って、薬剤送出器および/または他の適切な実行器の保存的な適用を命令することができる。
【0019】
図2は、実質的にリアルタイムで2つの波形の間の関係を表す、ECG波形(心電図)30およびパルスオキシメータ波形(プレチスモグラム)31を示す。ECG波形30は第1心拍35を含み、本明細書でQRS波40と呼ぶ第1心拍35は、部分的に、Q波32、R波33、およびS波34を含む。QRS波40は、左心室の収縮中に記録される電気活動を表す。プレチスモグラム31はパルス39を含み、パルス39は、部分的に、傾斜38およびピーク37を含む。健康な患者では、プレチスモグラム31のパルスおよびECG30のQRS波は、1:1の関係を有し、全てのQRS波40について、対応するパルス39が存在することになる。パルス39は、正常で健康な患者では、QRS波40の後で数ミリ秒だけ遅れることになり、全てのQRS波40について、対応するパルスは、左心室の収縮から、その結果生ずる血液パルスがパルスオキシメータプローブの下の毛細血管床に達するまでの時間経過により、ぴったりと後ろに続くことになる。
【0020】
ECGおよびパルスオキシメータは、それぞれ、異なる患者パラメータ、電気心臓活動および血液酸素飽和レベルを監視するが、両者の間の相互の関連は、監視システムの特異性を増加させるために患者データを分析する時に使用されることができる。互いに比較されると、QRS波とプレチスモグラムパルスの間に、明確な1:1の関係が確立される。さらに、患者の心臓が、ECG30が標準的なQRS波を示さないことになる、心室細動を受ける場合、プレチスモグラム31は一般に、パルスの低下またはパルスの消失を示すことになる。同様に、プレチスモグラム31が、心室細動の結果として、パルスの低下またはパルスの消失を検出する場合、ECG30は、QRS波の低下または消失を示すことになる。両方のモニタからのデータによって異常が提示される場合、データが、偽のデータの結果ではなく、本当の患者状況を示している可能性が高い。
【0021】
先に示した関係に基づくと、患者の心臓の状況を監視するECG30が、不安定になって、心室細動の可能性を指示するが、プレチスモグラム31が、パルスの正常なレベルおよび数を示す場合、ECGデータは、たとえば、外科フィールドにおける臨床医の動きの結果であり、生命にかかわる可能性のある事態の結果ではない可能性が高い。同様に、プレチスモグラム31が、おそらく心室細動を指示する不安定な波形を表示するが、ECG30は正常な波形を表示する場合、プレチスモグラムデータは、たとえば、パルスオキシメータの設置が悪い結果であり、生命にかかわる可能性のある事態の結果ではない可能性が高い。
【0022】
さらに図2を参照すると、本発明は、たとえば、電気心臓活動およびパルスオキシメトリなどの、関連する患者パラメータの分析を一体にすることを含み、こうした分析は、フォールス・ポジティブな警告応答の確率を減らす場合がある。たとえば、ECGとパルスオキシメトリのセンサ融合を組み込む、鎮静および鎮痛システム22、または、任意の他の適切な監視システムは、両方のモニタからのデータを分析し、それぞれで提示されたデータが、実際の患者状況を確実に指示することができる。鎮静および鎮痛システム22または、任意の他の適切な監視デバイス、または、一体化された送出システムにセンサ融合を組み込む方法が、本明細書でさらに開示されるが、示される相互に関連する患者パラメータは、例としてのみ開示され、本発明に従って、任意の他の適切な患者パラメータに関連する任意の適切な患者パラメータを使用してもよい。
【0023】
図3は、本発明による、センサ融合を提供し使用して、フォールス・ポジティブな警告の確率を減らす方法100の一実施形態を示す。ステップ101は、電気心臓活動などの第1患者パラメータに対応する少なくとも1つの患者モニタ、および、パルスオキシメトリなどの第2患者パラメータに対応する少なくとも1つの患者モニタを設けることを含む。本発明は、相互に関連する、任意の適切な数の患者生理学的パラメータを使用することを含み、任意の適切な数のモニタを使用して、それぞれの患者パラメータを監視することができる。
【0024】
ステップ102は、少なくとも2つの相互に関連する患者パラメータを監視することを含み、監視されたデータは、コントローラ14によって処理され、ユーザインタフェース17上で表示され、または、その他の方法で、患者の安全を確保するために操作されることができる。たとえば、電気心臓活動およびプレチスモグラムを監視するのに使用されるECG波形は、担当の臨床医が、両方の波形が正常であり、2つが対応していることを検証するために、リアルタイムか、または、ほぼリアルタイムで表示されてもよい。複数の患者のパラメータを監視している間に、方法100はクエリ103へ進むことができる。
【0025】
クエリ103は、使用されているモニタの任意のモニタが、たとえば、心室細動などのネガティブな患者エピソードを示すデータを送信しているかどうかを確認することを含む。この確認は、モニタのそれぞれからのデータを安全データセットと比較することによって行われることができ、安全データセットは、たとえば、鎮静および鎮痛システム22内にプログラムされることができ、また、臨床医によってプログラムされることができる、通常許容される、安全な、かつ/または、安全でない患者パラメータ範囲に基づくことができ、または、その両方であってよい。たとえば、R波33(図2)についてのECG閾値を確立することができ、コントローラ14が第1心拍35(図2)を正常な心拍として登録するために、ECG波形は閾値を横切らなければならない。しかしながら、心臓活動が正常であることを監視する任意の適切な手段は本発明に従う。同様に、閾値を、プレチスモグラム31(図2)について確立することができ、パルスオキシメトリの妥当性を指示するために、パルス39(図2)が所与の閾値を横切らなければならない。プレチスモグラム31は、たとえば、パルス39の傾斜38またはピーク37(図2)によってなど、任意の他の適切な手段によって評価されることができる。
【0026】
さらに、クエリ103を参照すると、モニタのいずれかによって提示されるデータが、安全データセット以外でない場合、方法100は、ステップ108に進むことができる。ステップ108は、担当の臨床医に報知し、有害である可能性のある事態から患者を回復させるように設計された警報および/または他の動作器が無い状態で、正常なシステム機能を提供することを含む。ステップ101に関連するモニタのうちの任意のモニタが安全データセット以外のデータを指示する場合、方法100はクエリ104に進むことができる。
【0027】
クエリ104は、関連するパラメータのモニタが互いに一致するかどうかを確認することを含み、それぞれのモニタは、有害である可能性のある患者事象を示すデータを送信する。たとえば、ECGおよびパルスオキシメトリが使用され、ECGおよびプレチスモグラムが、1:1の関係を有し、共に、必要とされる閾値未満で現れる場合、警告についての理由が存在すると判断することができる。心室ディフィブリレーションの場合、両方のモニタは、患者が、おそらく、生命にかかわる可能性のある状況を経験しており、データはアーチファクトによるものでないことを指示するこうした閾値に適合するのに失敗する可能性がある。監視された患者パラメータが危険である可能性のある事態を指示していると、モニタが承認する場合、方法100はステップ105に進むことができる。
【0028】
ステップ105は、臨床医にネガティブな患者事象を指示する検出されたデータを報知するための任意の適切な処置、ならびに、患者を安全な状態に保つための任意の自動または半自動処置を始動することを含む。たとえば、ステップ105の動作器は、限定はしないが、警告すること、薬剤レベルを下げること、酸素を送出すること、たとえばオピオイド拮抗剤に対する薬剤を変更すること、より多くのデータを収集するように鎮静および鎮痛システム22などの監視システムを要求すること、患者の反応性を試験すること、および/または、正の気道圧を送出することを含む。こうしたアクションは、おそらく、有害である可能性のある患者状況が存在するかどうかについて一致する複数の患者パラメータを監視する複数のモニタ間の一致によるクエリ104に続いて、非常に高い特異性を有することになる。ステップ105が発生している間、方法100は、ステップ101にループバックし続けることができ、患者の監視は、ステップ105の持続期間にわたって発生することができる。クエリ103への「いいえ」の応答に続いて、次に、方法100は、ステップ108の正常なシステム使用可能状態に戻ることができる。
【0029】
クエリ104に戻ると、ステップ101のモニタは、たとえば、こうしたモニタのうちの一方が閾値未満であるが、他方が閾値未満でない場合、一致しないと判断される場合がある。両方のモニタが、必要とされる閾値を達成するが、互いに1:1の関係を維持していない場合、一致の欠如が生ずる場合もある。2つの監視されるパラメータの間の関係により、たとえば、ECGが不安定になるが、プレチスモグラムが一定である可能性はなく、その逆もない。したがって、こうした場合、重大となる可能性のある患者事象を検出する不安定なモニタが、動きによる擾乱、不適切な設置、または、偽のデータを作成する何らかの他の手段にさらされた可能性がある。こうした事態の間、患者の安全が依然として高い感度を保持することを保証するために、方法100はステップ106に進むことができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、警告または他の動作器のアクションが行われない所定期間の間、ステップ106は、ステップ101に関連するモニタからデータを収集し続けることを含む。たとえば、外科フィールドにおける臨床医の動きが停止するため、モニタ間の不一致が解決されることになることが多い。ステップ105へ移動する前に、たとえば、10秒の遅延を与えることによって、偽のデータにより不安定であるモニタは、正常な機能を取り戻すことができ、それによって、こうした偽のデータによるフォールス・ポジティブな警告が回避される。ステップ106に続いて、次に、方法100は、クエリ107に進むことができる。
【0031】
本発明の一実施形態において、クエリ107は、ステップ101に関連するモニタのうちの任意のモニタが、ネガティブな患者状況を指示するかどうかを再評価することを含む。たとえば、モニタが依然として一致しないが、少なくとも一方が、安全データセット以外にあるままである場合、方法100は、ステップ105へ移行することができる。本発明の一実施形態において、ステップ105は、モニタが一致しない事態に対する中程度の、すなわち、警戒的な警告、および、両方のモニタが安全データセット以外のデータを登録する状況に対する、より強調した、すなわち、深刻な警告を含む。本発明は、ステップ105に関連した任意の適切な動作器を採用する任意の適切な数の警告をさらに含み、中程度、または、深刻な警告などの種々の動作器は、種々の患者およびモニタの状況に基づいて作動されることができる。クエリ107に関して、モニタからのデータが、安全データセット以外にあることがもはやない場合、方法100は、ステップ102へループバックすることができる。方法100は、担当の臨床医によっていつでも終了されることができる。
【0032】
図3の方法は、例としてのみ示され、任意の適切な関連する患者パラメータを採用して、データアーチファクト(artifact)に基づくフォールス・ポジティブな警告の確率を減らすことによって、鎮静および鎮痛システム22などの監視システムの特異性を増加させることができる。さらに、安全データセットは、種々の患者パラメータについて変動する場合があり、本発明に従って任意の適切な患者パラメータについて、任意の適切なデータセットを確立することができることが考えられる。
【0033】
図4Aは、カプノグラム50の一実施形態を示し、カプノグラム50は、分圧y軸54および時間軸53に基づく、全体的に正常な二酸化炭素分圧波形55を示す。健康な患者は一般に、二酸化炭素出力がゼロの期間51を有することになり、期間51は、吸気および呼気の早期段階による。そのため、期間51は一般に、二酸化炭素出力の期間52が後に続き、期間52は一般に、患者呼気を示す。全ての呼吸周期は一般に、第1期間51と、その後の期間52を含み、正常な患者は、図4Aに指示するようなパターンで呼吸し続けることになる。
【0034】
図4Bは、分圧y軸62および時間x軸61に基づく、二酸化炭素波形63を示すカプノグラム60のさらなる実施形態を示す。図4Aと同様に、図4Bはまた、全体的に正常な二酸化炭素波形63を表示し、対応する換気圧波形64は二酸化炭素波形63に重なる(overlay)。換気圧波形64は、吸気圧および呼気圧に基づき、こうした圧力は、二酸化炭素波形63について観察することができる呼吸周期に関連する。期間65に示すように、患者が吸気し始めると、患者はまた、患者の自発性呼吸努力によって引き起こされる大気以下の圧力に対応する負の換気圧の期間66を表示することになる。患者呼気を示す期間67について、換気圧波形64は期間68を表示し、期間68は、患者の気道から排出される空気流によって引き起こされる正の(大気以上の)換気圧の期間である。
【0035】
図4Bは、カプノメトリと換気圧の患者パラメータ間の関係を示す。センサ融合の例として、カプノメトリおよび換気圧が、方法100に従って使用されて、たとえば、鎮静および鎮痛システム22などの監視システムの特異性を増加させることができる。
【0036】
図5Aは、換気圧波形72を重ねた二酸化炭素分圧波形71を有する表示70を示す。データは、圧力y軸73および時間に基づくx軸に基づいてプロットされる。図5Aはさらに、波形72の期間75と関連する、呼吸する健康な患者を示す波形71の期間74を示す。期間74および75は一般に、健康な患者におけるカプノメトリと換気圧の相互関係を示す。図5Aはさらに、期間76を示し、期間76は、患者からの二酸化炭素分圧の低い呼気の期間である。カプノメータのみから収集したデータに基づいて評価される場合、患者が過剰換気または低換気を受けているかどうかを、波形71のみから確認することは難しい。上述したように、両方の状況、すなわち、呼吸が浅いことによる過剰換気および適当な換気の欠如(気道閉塞によることが多い)による低換気は一般に、低い二酸化炭素出力を生ずることになる。カプノメトリのみに基づくと、監視システムは一般に、たとえ過剰換気が一般に無害であっても、低換気、生命にかかわる可能性のある状況が確実に警告され回避されるように、いずれかの状況が発生した場合、警告しなければならないでああろう。決定的でないデータに基づいて両方の状況について警告することによって、一般に、たとえば、鎮静および鎮痛システム22などの監視システムの感度を低下させるフォールス・ポジティブな警告の頻度が高くなることになる。
【0037】
したがって、図5Aは、波形72を波形71の分析に取り込む本発明の一実施形態を示し、波形72から収集されたデータは、たとえば、カプノグラフが低換気または過剰換気を検出しているかどうかを識別するのに役立つ。図5Aは、低い出力レベルの二酸化炭素ならびに低い換気圧の両方によって見ることができる、患者が低換気を経験している事態を示し、過剰換気は一般に、低い二酸化炭素出力および高い換気圧によって特徴付けられる。上記分析に基づいて、鎮静および鎮痛システム22などの監視システムは、フォールスな警告の確率が低く、特異性が高い状態で、図5Aに示す状況に対する警告応答を誘発することができるであろう。
【0038】
図5Bは、重なったさらなる表示70を示し、図5Bは、患者からの二酸化炭素分圧の低い呼気の期間である期間80をさらに含む。カプノメータのみから収集したデータに基づいて評価される場合、患者が、過剰換気または低換気を受けているかどうかを、波形71のみから確認することは難しい。上述したように、両方の状況、すなわち、呼吸が浅いことによる過剰換気および適当な換気の欠如(気道閉塞によることが多い)による低換気は一般に、低い二酸化炭素出力を生ずることになる。表示70はさらに、波形72の期間81を表示し、期間81は、期間75の間に見られる振幅より大きな振幅の期間80に対応する一連の圧力振動を表す。期間80の間において、波形71の振幅の減少から見て、波形72の振幅のこうした増加は一般に、過剰換気を示す。過剰換気は一般に無害な状況であることから、鎮静および鎮痛システム22などの監視システムは、2つのデータセットを比較することによって、警告を鳴らさないこと、および/または、安全動作器を始動しないことを決定することができる。これは、図5Bのデータが過剰換気を指示すると判断されたためである。
【0039】
個別ではあるが、関連する患者パラメータを比較することによって、本発明は、データアーチファクトおよび決定的でないデータに関連するフォールス・ポジティブな警告の数を減らすことによって、監視システムの特異性を増加するように機能する。こうしたセンサ融合を提供することは、フォールスな警告状態の数を減らすことができ、担当の臨床医は、警告が鳴らない時にはシステムを信頼する可能性が高くなる。示される概念は、例としてのみ開示され、或る関係を有する任意の適切な患者パラメータが一緒に分析されて、たとえば、アーチファクトおよび/または結論付けることができないデータによるフォールス・ポジティブな警告が減る場合がある。
【0040】
図6は、本発明によるセンサ融合を採用する方法200の一実施形態を示す。方法200のステップ201は、カプノメトリなどの、第1患者パラメータに対応する少なくとも1つの患者モニタ、および、換気圧などの、第2患者パラメータに対応する少なくとも1つの患者モニタを設けることを含む。本発明は、相互に関連する、任意の適切な数の患者の生理学的パラメータを使用することを含み、任意の適切な数のモニタを使用して、それぞれの患者パラメータを監視することができる。ステップ202は、少なくとも2つの相互に関連する患者パラメータを監視することを含み、監視されたデータは、コントローラ14によって処理され、ユーザインタフェース12上に表示され、または、その他の方法で、患者の安全を確保するために操作されることができる。たとえば、吐き出された二酸化炭素の分圧および換気圧波形を監視するのに使用されるカプノグラムは、担当の臨床医が、両方の波形が適切で、2つが対応していることを検証するために、リアルタイムか、または、ほぼリアルタイムで表示されてもよい。患者の複数の患者パラメータを監視している間に、方法200はクエリ203へ進むことができる。
【0041】
クエリ203は、ステップ201に関連するモニタのいずれかからのデータが、それ自体決定的であるかどうかを確認することを含む。たとえば、正常なカプノグラムは、カプノグラムの精度または意味を確保するために、換気圧のさらなる分析を必要としない場合がある。さらに、正常なカプノグラムは一般に、決定的でないデータを示さない。こうしたデータが決定的である場合、方法200は、ステップ208に進むことができ、ステップ208は、担当の臨床医に報知し、かつ/または、有害である可能性のある事態から患者を回復させるように設計された警報および/または他の動作器が無い状態で、正常なシステム機能を提供することを含む。ステップ208から、方法200は、患者の安全を継続して確保するために、ステップ202に連続してループバックする場合がある。
【0042】
さらに、クエリ203を参照すると、図5Aおよび図5Bに示すように、データが決定的でない場合、方法200は、ステップ204へ進むことができる。ステップ204は、相互に関連する患者パラメータからのデータを比較し、分析することを含み、1つのモニタが、少なくとも1つの他のモニタによって指示される重大になる可能性のある状況を肯定することができるか、または否定することができるかを判断する。こうした比較は、図5Aおよび図5Bに示した比較であってよく、あるいは、任意の適切な比較および分析が、コントローラ14または任意の他の適切なプログラム可能デバイスによって行われてもよく、あるいは、たとえば、相互に関連する患者パラメータからのデータは、臨床医が、ビジュアル表示に基づいて判断を行うために、臨床医に提示されてもよい。
【0043】
クエリ205は、決定的でないデータを、相互に関連する患者パラメータからのデータを取り込むことによって解明することができたかどうかを確認することを含む。たとえば、こうした解明は、図5Aおよび図5Bの環境に存在することになり、換気圧波形の使用によって、決定的でないカプノグラムが解明される。しかしながら、ステップ201に関連するモニタが、両方のモニタが不安定になった場合などで、決定的でないデータを解明することができない場合、方法200はステップ207へ進むことができる。
【0044】
ステップ207は、臨床医に、決定的でないデータを指示する検出されたデータまたはネガティブな患者事象を報知するための任意の適切な処置、ならびに、患者を安全な状態に保つための任意の自動または半自動処置を始動することを含む。たとえば、ステップ207の動作器は、限定はしないが、警告すること、薬剤レベルを下げること、酸素を送出すること、たとえばオピオイド拮抗剤に対する薬剤を変更すること、より多くのデータを収集するように鎮静および鎮痛システム22などの監視システムを要求すること、患者の反応性を試験すること、および/または、正の気道圧を送出することを含む。さらに、本発明は、ステップ207に従って異なる警告モードを提供することを含み、ステップ207の動作器は、たとえば、ステップ205に対する「いいえ」の応答についてよりも、ステップ206に対する「はい」の応答について、より深刻な警告を始動することができる。ステップ207の間で、方法200は、モニタが、正常なデータを指示するかどうか、かつ/または、患者の状況が回復したかどうかを判断するために、ステップ202へ連続してループバックすることができる。
【0045】
クエリ205に戻ると、複数のモニタからのデータの分析が、決定的でないデータを解明することができる場合、方法200は、クエリ206へ進むことができる。クエリ206は、解明されたデータが、たとえば、コントローラ14(図1)内にプログラムされた安全データセットに基づいて、ネガティブな患者の状況を示すかどうかを確認することを含み、たとえば、ネガティブな患者事象は、図5Aに示した事象などの事象である。こしたネガティブな状況が存在すると判断される場合、方法200は、ステップ207へ進むことができる。解明されたデータから、図5Bの状況などの、危険になる可能性のある患者状況が存在しないと判断される場合、方法200は、ステップ202へ進むことができる。方法200は、臨床医によって、任意の適切な時点で終了するか、またはオーバーライドされてもよい。
【0046】
方法200は、方法100(図3に示す)と一体にされてもよく、その他の方法で患者の安全を確保するために、相互に関連する患者パラメータを使用して、データアーチファクトを始末し、決定的でないデータを解明し、または、センサ融合を取り入れることができる。本発明のさらなる実施形態は、無侵襲血圧カフによる血管擾乱パワーをパルスオキシメトリによって監視されるパルスの傾斜と一体にすることを含み、こうした相互の関連は、心臓の収縮性についての冗長な監視を提供することができる。しかしながら、本発明は、相互に関連する任意の適切な患者パラメータに関連する任意の適切なモニタのセンサ融合を備え、こうした一体化は患者の安全に利益を与える。
【0047】
図7は、容易に監視される患者パラメータの複数のモニタを使用して、監視することが難しい場合がある第3パラメータを計算する方法300の一実施形態を示す。方法300は、ステップ301を含み、ステップ301は、無侵襲血圧カフなどの適切な患者モニタによる、平均動脈圧などの第1患者パラメータを監視することを含む。ステップ302は、パルスオキシメータのプレチスモグラムによるなど、適切な患者モニタによる、血流または灌流などの第2患者パラメータを監視することを含む。方法300の一実施形態において、ステップ301および302は、医療処置の持続期間にわたって発生する。
【0048】
方法300はさらに、ステップ303を含み、ステップ303は、ステップ301およびステップ302から監視されたデータを使用して、第3患者パラメータを計算することを含む。たとえば、血流量を計算する式、すなわち、
(P−P)/R=F
に基づくと、Pは平均動脈圧(MAP)を表し、Pは平均血管圧(MVP)を表し、Rは体血管抵抗(SVR)を表し、Fは流量を表し、ここで、無侵襲の手段によって、Rを計算することが望ましい。ステップ301によれば、MAPは無侵襲血圧カフから推測され、ステップ302によれば、Fはパルスオキシメータのプレチスモグラムに基づいて推測され得る。本発明の一実施形態において、Pは、MVPの作用が式に対して無視できるため、式からなくすことができる。したがって、R(SVR)を求めるために、以下の式、すなわち、
MAP/F=R
を作ることができる。
【0049】
このように示された式に基づいて、本発明は、MAPを示す、無侵襲血圧カフなどの患者モニタから収集したデータを、パルスオキシメータから誘導されたプレチスモグラムなどの第2患者モニタから収集されるデータと組み合わせることによって、患者の体血管抵抗を計算することを含む。ステップ301およびステップ302の監視された患者パラメータを組み合わせることによって、本発明は、ステップ303に従って、体血管抵抗などの第3患者パラメータを計算することを含む。ステップ303の第3パラメータは、たとえば、コントローラ14によって計算されることができる。ステップ301およびステップ302に関連するセンサを融合させることによって、本発明は、ほとんどの医療処置において測定することが難しい第3患者パラメータを計算することができる。こうしたパラメータは、本明細書でさらに説明するように、患者の状況を評価する際に重要な値を有する場合がある。
【0050】
ステップ304は、患者を監視するために、ステップ303で計算された第3パラメータを使用することを含み、第3パラメータは、方法100(図3)に従って、方法200(図6)に従って、無関係に、または、任意の他の適切な手段のために患者パラメータとして使用することができる。たとえば、方法200に従って使用される場合、決定的でない血圧データを解明するために、体血管抵抗を使用することができる。たとえば、内部の胃腸出血がある患者は一般に、血圧の徐々の低下と、それに続くより顕著な血圧降下を示すことになり、徐々の低下は、全身の血管系を収縮させることによって体が血圧を維持する結果であり、顕著な降下は、大幅な血液喪失によって、収縮により血圧を維持することがもはやできない時に発生する。アナフィラキシーがある患者では、血圧状況は、胃腸出血中に示される状況と同じように現れるであろう。大量のヒスタミンを放出する大量の細胞顆粒消失につながるアナフィラキシーは、アレルゲンによって引き起こされ、こうしたアレルギー反応は一般に、血管抵抗性の劇的な低下を生じ、徐々の血圧降下と、それに続く急な降下を生じる。血圧のみに基づいたデータからは、2つの状況のいずれが存在するかを識別することは、難しいか、または、不可能であることもある。しかしながら、胃腸出血の場合、血管抵抗性は、収縮が発生すると、著しく増加することになり、一方、アナフィラキシーの場合、抵抗性は、ヒスタミンによって引き起こされる血管拡張によって低下することになる。したがって、体血管抵抗と共に血圧を分析することによって、普通なら、決定的でないであろうデータを解明することが可能である場合があり、いずれかがあれば、どの状況が存在するかに応じて、異なる動作器を始動することができる。
【0051】
方法300は、ステップ301およびステップ302に関連する任意の適切なパラメータを監視することに基づいて、ステップ303に従って、任意の適切なパラメータを計算することを含む。方法300はさらに、ステップ303に関連する患者パラメータを計算するのに使用される任意の適切な数の患者モニタを備え、こうしたモニタは、任意の適切な数の患者パラメータを監視することができる。
【0052】
本発明の例示的な実施形態が、本明細書において、示され、述べられたが、こうした実施形態は、例としてのみ示されることは、当業者には明白であろう。出願人によって本明細書で開示される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの、非現実的な変形、変更、および置換が、ここで、当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲が認められる限りにおいて、添付の特許請求の範囲による、その精神および範囲によってのみ制限されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者監視システムであって、
患者に結合し、該患者の生理学的状況の第1パラメータを反映する第1信号を生成するようになっている第1患者健康状態モニタデバイスと、
前記患者に結合し、該患者の生理学的状況の第2パラメータを反映する第2信号を生成するようになっている第2患者健康状態モニタデバイスであって、前記第1パラメータおよび前記第2パラメータが関連する、第2患者健康状態モニタデバイスと、
前記第1および第2の患者健康状態モニタに相互接続される電子コントローラであって、前記第1および第2の生理学的状況のパラメータを反映するデータセットを有する、電子コントローラと
を備え、
該電子コントローラは、前記第1および第2のパラメータを前記データセットと比較して、前記第1および第2の両方の患者健康状態モニタデバイスからの望ましくない信号を検出する時に応答を始動する患者監視システム。
【請求項2】
前記第1および第2の患者健康状態モニタデバイスは、無侵襲血圧モニタ、パルスオキシメータ、カプノメータ、ECG、患者意識評価システム、換気流量モニタ、換気圧モニタ、インピーダンスプレチスモグラフ(IPG)、ガス分析器、換気温度モニタ、換気湿度モニタ、および音響モニタからなる群からそれぞれ個別に選択される請求項1に記載の患者監視システム。
【請求項3】
前記応答は、警告すること、薬剤レベルを下げること、酸素を送出すること、薬剤を変更すること、より多くのデータを収集するようにシステムに要求すること、患者の反応性を試験すること、および、正の気道圧を送出することのうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載の患者監視システム。
【請求項4】
前記データセットは、第3の生理学的状況のパラメータをさらに反映し、
前記電子コントローラは、前記データセットに対して比較される第3の患者パラメータを計算するために、前記第1の患者パラメータおよび前記第2の患者パラメータについて監視されたデータを使用する請求項1に記載の患者監視システム。
【請求項5】
前記警告する応答は、前記データが、患者の可能性のある重大な状況を示すことを結論付けるか、結論付けないかに応じて変わる、異なる警告モードを提供することを含む請求項3に記載の患者監視システム。
【請求項6】
前記第1の患者パラメータはカプノメトリデータを含み、
前記第2の患者パラメータは換気圧を含む請求項1に記載の患者監視システム。
【請求項7】
前記第1パラメータは血圧であり、
前記第2パラメータはパルスオキシメトリデータであり、
前記第3パラメータは体血管抵抗である請求項4に記載の患者監視システム。
【請求項8】
前記システムは、鎮静および鎮痛システムに組み込まれている請求項1に記載の患者監視システム。
【請求項9】
前記システムは、前記応答が始動される前に、好ましくない信号を検知した後に、所定期間の間、前記モニタからのデータを収集し続ける請求項3に記載の患者監視システム。
【請求項10】
前記第1の患者パラメータは電気心臓活動を含み、
前記第2の患者パラメータはパルスオキシメトリデータを含む請求項1に記載の患者監視システム。
【請求項11】
前記第1および第2の患者パラメータからのデータが決定的でない場合、
前記電子コントローラは、前記第1および第2の患者パラメータからの前記データを分析し、
1つのモニタが、少なくとも1つの他のモニタによって示された、患者の可能性のある重大な状況を確認できるかどうかを判断する請求項1に記載の患者監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−264272(P2010−264272A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156801(P2010−156801)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2004−541711(P2004−541711)の分割
【原出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【出願人】(502451904)スコット・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】SCOTT LABORATORIES, INC.
【住所又は居所原語表記】2804 N. Loop 289, Lubbock, Texas 79415, United States of America
【Fターム(参考)】