説明

センサ装置および検知方法

【課題】 外圧の状態または水分の状態を正確に判定するセンサ装置およびその検知方法を提供すること。
【解決手段】 センサ装置は,第1の発生部115a〜第6の発生部115f,OTDR120,判定部125および出力部130から構成される。発生部115は,光ファイバ110に隣接して設けられ,外圧に応じて光ファイバ110内に伝送されるパルス光にて発生されるフレネル反射を増大させ,OTDR120は,光ファイバ110にパルス光を入射し,出射されたパルス光の反射光の変化を測定してOTDR出力として出力する。判定部125は,OTDR出力に含まれるパルス光の反射光の変化に基づいて光ファイバ110に作用している外圧の状態を判定し,出力部130は,その判定結果を出力する。このようにして判定された外圧の状態からコンクリートの充填状況を判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,外圧の状態または水分の状態を判定するセンサ装置およびその検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物内部にコンクリートを打設する際,コンクリートの充填状況を判定するセンサ装置が従来から知られている。この装置によれば,光ファイバ内の後方散乱光を利用することにより構造物に設置された光ファイバの温度が計測され,計測された光ファイバの温度が気温と異なるとき,光ファイバがコンクリートと接触したと判定されていた。また,光ファイバがコンクリート中に埋没すると,これに応じて光ファイバの埋没部分に変形が生じるため,この変形によってコンクリートが構造物のどの位置まで充填されたかを判定することによりコンクリートの充填状況が監視されていた(たとえば,特許文献1を参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−327535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,従来の装置によれば,コンクリートの温度と気温との差が大きい場合には正確にコンクリートの充填状況を判定することができるが,その温度差が小さい場合にはその状況を正確に判定することができないという問題があった。
【0005】
また,従来の装置によれば,コンクリートが充填されたときに光ファイバが大きく変形するように光ファイバが構造物に設置されているときには,コンクリートの充填状況を正確に判定することができる。しかし,H鋼の構造物の隅部に光ファイバが設置されているときのように,コンクリートが充填されても光ファイバが大きく変形しないときには,その充填状況を正確に判定することができなかった。換言すれば,従来の装置によれば,コンクリートの充填状況が正確に判定されるか否かは,光ファイバが設置される構造物の形状に左右されるという問題があった。
【0006】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,光ファイバ近傍の外圧の状態または光ファイバ近傍の媒質の状態を正確に判定するセンサ装置およびその検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,光ファイバの近傍に設けられ,外圧に応じて上記光ファイバ内に伝送される光信号に状態変化を発生させる発生部と,上記光ファイバに光信号を入射し,上記入射された光信号に対して上記発生させた光信号の状態変化を測定する測定部と,上記測定された光信号の状態変化に基づいて上記光ファイバに作用する外圧の状態を判定する判定部とを備えるセンサ装置が提供される。
【0008】
光ファイバに作用する外圧により光ファイバが折曲されたり,傷付けられると,光ファイバ内に伝送される光の状態に変化が生じる。これによれば,このような光の性質を利用して,光ファイバ内に伝送される光の状態変化を測定することにより光ファイバの一部に作用する外圧の状態を簡易かつ正確に判定することができる。
【0009】
この場合,上記測定部は,上記光ファイバにパルス光を入射し,出射されたパルス光の反射光のパワーの変化を測定することにより同反射光のパワーに応じた値を出力し,上記判定部は,上記測定部から出力された反射光のパワーに応じた値に基づいて上記光ファイバに作用している外圧の状態を判定することができる。
【0010】
反射光のパワーに応じた値としては,光ファイバに入射されたパルス光に対し出射された反射光の反射量(すなわち,発生部にて生じる反射光の反射量,光強度)が挙げられる。また,反射光のパワーに応じた値は,入射パルス光に対する反射光の割合であってもよい。要するに,反射光のパワーに応じた値は,入射パルス光のパワーに対する反射光のパワーの割合または入射パルス光のパワーに対する反射光のパワーの変化値を評価することができれば,どんな物理量であってもよい。実際には,測定部として機能するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)により測定された,光ファイバから出射される反射光の波形に基づいて上記反射光の反射量や上記反射光の割合を得ることができる。
【0011】
また,上記発生部は,表面に1または2以上の凹部または凸部の少なくともいずれか一方を有する板状部材を含み,上記板状部材は,上記1または2以上の凹部または凸部の少なくともいずれか一方が上記光ファイバに接触するように設けられていてもよい。また,上記板状部材は,上記光ファイバに外圧が作用したとき,上記凸部により上記光ファイバに傷を付けるように設けられていてもよい。また,上記発生部は,外圧を上記光ファイバに伝達する圧力伝達板を含んで構成されていてもよい。
【0012】
これによれば,光ファイバが板状部材の凹部または凸部の少なくともいずれか一方により折曲される,または,板状部材の凸部により押圧される,または,板状部材の凸部により光ファイバが傷付けられる,あるいは,外圧が圧力伝達板を介して光ファイバに作用することにより光ファイバが折曲することにより,光ファイバ内に伝送される光信号のフレネル反射が増大する。これにより,光ファイバ内に伝送される光の状態の変化量を増幅することができる。この結果,光ファイバに作用する外圧の状態をより正確に判定することができる。なお,板状部材の一例としては,凹部または凸部の少なくともいずれか一方を有するテープやシールやシートまたはやすりが挙げられる。
【0013】
また,上記判定部は,上記判定された外圧の状態により上記光ファイバの周囲に充填される物質の充填状況を判定することができる。
【0014】
また,上記センサ装置は,構造物に設けられた上記発生部を複数備えるとともに,上記各発生部に対応する上記構造物の位置をそれぞれ記憶した位置対応情報テーブルを備えていてもよい。この場合,位置対応情報テーブルを用いてパルス光の反射光が発生された発生部に対応する構造物の位置を特定することができる。
【0015】
この場合,上記判定部は,上記測定部から出力される,上記光信号の状態変化が生じた位置情報に基づいて上記複数の発生部から所定の発生部を選択し,選択された発生部から上記位置対応情報テーブルに基づいて構造物の位置を特定することにより,特定された構造物の位置に物質が充填されているか否かを判定することができる。
【0016】
また,上記複数の発生部は,上記構造物の異なる位置に設けられ,上記判定部は,上記各発生部に対応する上記構造物の各位置に物質が充填されているか否かをそれぞれ判定し,上記センサ装置は,さらに,上記判定された物質の充填位置と上記構造物の形状とから,充填されるべき上記構造物の位置に上記物質が充填されていないと判断されるとき,警告を出力する出力部を備えていてもよい。
【0017】
これによれば,複数の発生部が,構造物の床や基礎部分の異なる位置に設けられている場合であって,判定された物質の充填位置と構造物の形状とから,充填されるべき上記構造物の位置に上記物質が充填されていないと判断されるとき,物質の充填が不完全である旨の警告が出力される。たとえば,物質がコンクリートであり,H鋼の異なる位置に複数の発生部が設けられている場合,判定されたコンクリートの充填位置からH鋼の下にコンクリートが回りこんでいないと判断されるとき,その旨が警告される。
【0018】
また,たとえば,複数の発生部が,構造物の異なる高さに設けられている場合,物質が充填されていると判定された構造物の位置が,物質が充填されていないと判定された構造物の位置より高い位置であるとき,物質の充填が不完全である旨の警告が出力される。これにより,管理者は,この警告に応じて迅速に対応することができる。この結果,物質の充填状況の悪化を抑止することができる。
【0019】
本発明の他の観点によれば,第1の光ファイバの一部であって通常の使用状態では水分が発生されない箇所に第2の光ファイバを結合して構成される光ファイバカプラと,上記光ファイバカプラの第1の光ファイバにパルス光を入射し,出射されたパルス光の反射光を測定することにより,上記第1の光ファイバと上記第2の光ファイバとのパルス光の分岐比を出力する測定部と,上記測定部から出力された所与の初期分岐比に対するパルス光の分岐比の変化値により上記光ファイバカプラ周辺の水分の状態を判定する判定部と,を備えるセンサ装置が提供される。
【0020】
コンクリートが光ファイバカプラ周りに充填されるとコンクリートの水分により光ファイバカプラの分岐比が変化する。これにより,所与の初期分岐比に対するパルス光の分岐比の変化値から光ファイバカプラ周辺の水分の状態を判定することができる。
【0021】
そして,上記判定部は,上記判定された水分の状態により上記光ファイバカプラの周囲に充填される物質の充填状況を正確に判定することができる。
【0022】
また,本発明の他の観点によれば,表面に1または2以上の凹部または凸部の少なくともいずれか一方を有する板状部材を用いることにより外圧に応じて光ファイバ内に伝送される光の状態変化を発生させ,上記光ファイバに光信号を入射し,上記入射された光信号に対して上記発生させた光の状態変化を測定し,上記測定された光の状態変化に基づいて上記光ファイバに作用する外圧の状態を判定する検知方法が提供される。
【0023】
これによれば,光ファイバに光信号が入射されると,光ファイバが板状部材の凸部に押圧される,板状部材の凹部または凸部の少なくともいずれか一方により折曲される等により,光ファイバ内に伝送される光信号に生じるフレネル反射が増大する。入射された光信号に対して,このように増大された光信号の状態変化を測定することにより,光ファイバに作用する外圧の状態をより正確に判定することができる。
【0024】
また,本発明の他の観点によれば,光信号を伝送する光ファイバであって,伝送される光信号の状態をこの光ファイバ近傍の媒質の状態に応じて変化させるように配置された光ファイバと,上記光ファイバに光信号を入射し,上記入射された光信号がこの光ファイバを伝送して出射された光信号の状態変化を測定する測定部と,上記測定された光信号の状態変化に基づいて上記光ファイバ近傍の媒質の変化を判定する判定部と,を備えたセンサ装置が提供される。
【0025】
これによれば,光ファイバを伝送して出射される光信号の状態変化が測定される。測定された光信号の状態(たとえば,フレネル反射量)は,光ファイバ近傍の媒質の屈折率に依存する。換言すれば,光ファイバ近傍の媒質が変化すると,出射される光信号の状態が変化する。これにより,特別なセンサを設けることなく,光ファイバから出射される光信号の状態変化のみに基づいて,光ファイバ近傍の媒質の状態を検知することができる。
【0026】
たとえば,通常の状態では,光ファイバの周囲が空気で満たされている場合(空気を媒質としている場合),その後,光ファイバの周囲がコンクリートで充填されると,媒質の状態が空気から水に変化する。これにより,光ファイバの周囲がコンクリートで充填されたと判定することができる。
【0027】
このとき,光ファイバは,この光ファイバの末端が通常の使用状態では水分が発生しない箇所に位置するように配置され,上記判定部は,上記測定された光信号の状態変化に基づいて上記光ファイバの末端近傍の水分の状態を判定するようにしてもよい。
【0028】
これによれば,光ファイバの末端が通常の使用状態では水分が発生しない箇所に位置するように光ファイバが配置されるため,この光ファイバの末端近傍に水分が発生すると,出射される光信号の状態が変化する。これにより,光ファイバの末端近傍の水分の状態を検知することができる。
【0029】
また,この光ファイバの表面の少なくとも一部に傷が設けられ,光ファイバは,その傷が設けられた部分が通常の使用状態では水分が発生しない箇所に位置するように配置され,上記判定部は,上記測定された光信号の状態変化に基づいて上記光ファイバの傷が設けられた部分近傍の水分の状態を判定するようにしてもよい。
【0030】
これによれば,光ファイバの表面が傷つけられた部分にて水分が発生すると,出射される光信号の状態が変化する。これにより,光ファイバの表面が傷つけられた部分近傍の水分の状態を検知することができる。
【0031】
また,上記測定部は,上記光ファイバにパルス光を入射し,出射されたパルス光の反射光の変化を測定することにより,同反射光のパワーに応じた値を出力し,上記判定部は,上記測定部から出力されたパワーに応じた値に基づいて上記光ファイバ近傍の媒質の状態を判定するようにしてもよい。
【0032】
このとき,上記センサ装置は,さらに,上記測定部により出力された反射光のパワーに応じた値の変化値を求める変化値演算部を備え,上記判定部は,上記変化値演算部により求められた反射光のパワーの変化値に基づいて上記光ファイバ近傍の媒質の状態を判定するようにしてもよい。
【0033】
これによれば,反射光のパワーの変化値を用いることにより,光ファイバ近傍の媒質の変化に伴って変化する光信号の状態の変化の状態をより顕著に検出することができる。この結果,上記光ファイバ近傍の媒質の状態をより精度よく検出することができる。
【0034】
また,本発明の他の観点によれば,光信号を伝送し,伝送される光信号の状態を媒質の状態変化に応じて変化させるように光ファイバを配置し,上記光ファイバに光信号を入射し,上記入射された光信号がこの光ファイバを伝送して出射された光信号の状態変化を測定し,上記測定された光信号の状態変化に基づいて上記光ファイバの近傍の媒質の状態を判定する検知方法が提供される。
【0035】
測定された光信号の状態は,光ファイバ近傍の媒質の屈折率に依存する。すなわち,光ファイバ近傍の媒質が変化すると,出射される光信号の状態が変化する。本発明によれば,この原理を利用して,光ファイバから出射される光信号の状態変化のみに基づいて,簡易に光ファイバ近傍の媒質の状態を検知することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように本発明によれば,光ファイバ内に伝送される光の状態変化から外圧の状態または媒質の状態を判定することにより,物質の充填状況を正確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0038】
(第一実施形態)
本実施形態のセンサ装置は,コンクリートの充填状況を監視するために構造物に設けられている。図1は,センサ装置に使用される光ファイバが設けられた構造物の斜視図である。また,図2は,コンクリートが充填される構造物の内部側面図である。
【0039】
構造物105の内部側面105aには,光ファイバ110が張り巡らされている。光ファイバ110の一端は側面上部にて終端されていて,光ファイバ110の一部には,複数(単数でも良い)の発生部115(第1の発生部115a〜第6の発生部115f)が構造物の異なる高さに設けられている。また,図1に示したように,コンクリート108が構造物の略中央まで充填されている。また,図2に示したように,光ファイバ110には後述するOTDR120が接続されている。
【0040】
センサ装置は,図3にその全体構成を示したように,第1の発生部115a〜第6の発生部115f,OTDR120,判定部125および出力部130から構成される。各発生部115は,光ファイバ上に隣接して設けられている。第1の発生部115aとOTDR120との間は,光ファイバ110により接続されている。
【0041】
図4および図5には,図2の平面1−1および平面2−2にて発生部115を切断した断面の構成が示されている。発生部115は,検出用凸状テープ1152およびシールテープ1154から構成されている。また,発生部115の内部では,光ファイバ110が,検出用凸状テープ1152およびシールテープ1154に隣接(または接触)しながら発生部115を貫通している。なお,シールテープ1154は,外圧を光ファイバ110に伝達する圧力伝達板の一例である。
【0042】
図5に示したように,検出用凸状テープ1152は,構造物の内部壁面105aに張り付けられ,その表面に鋭い凸部を有し,その上に光ファイバ110が設置される。検出用凸状テープ1152の一例としてはヤスリが挙げられる。シールテープ1154は,検出用凸状テープ1152および光ファイバ110の一部を覆うように貼り付けられている。
【0043】
構造物105にコンクリートが充填されると,シールテープ1154を介して光ファイバ110に外部から圧力がかかり,光ファイバ110は,検出用凸状テープ1152とシールテープ1154とにより押圧される。その結果,光ファイバ110は,検出用凸状テープ1152の凸部によってその表面が傷付けられる。
【0044】
たとえば,図1に示したように,構造物105にコンクリート108が充填されたとき,コンクリート108から第4の発生部115d,第5の発生部115eおよび第6の発生部115fに加わる圧力によってこれらの発生部に接触した光ファイバ110に傷が付く。
【0045】
以上のようにして,光ファイバ110に作用する外圧により光ファイバ110が傷付けられたり,折曲されたりすると,光ファイバ内に伝送されるパルス光に発生するフレネル反射が増大する。このようにして,発生部115は,パルス光の反射量を増大させることにより,光ファイバ内に伝送されるパルス光の状態を変化させるようになっている。
【0046】
OTDR120は,パルス光の反射光(後方散乱光)の変化を反射光のOTDR波形として測定する。具体的には,OTDR120は,所定の波長からなるパルス状の光信号(パルス光)を所定時間毎に光ファイバ110に入射すると共に,光ファイバ110から出射されたパルス光のOTDR波形から,OTDR波形の所定の変化の有無および変化が発生した遅延時間を評価する。OTDR120は,この評価に基づいて光ファイバ内のパルス光から発生されるフレネル反射による反射光の反射量およびその反射光が発生した位置情報を特定して出力(OTDR出力)するようになっている。なお,OTDR120は,光の状態変化を測定する測定部の一例である。
【0047】
判定部125は,OTDR出力から特定される反射光の反射量および位置情報から各発生部115に加わっている圧力の状態を算出する。また,後述する位置対応情報テーブルを用いてパルス光の反射光を発生させた発生部に対応する構造物の位置を特定する。判定部125は,このようにして求められた各発生部115の外圧状態および各発生部115と構造物105との位置関係から,構造物105の特定の位置にて外圧が加わっているか否かを判定する。そして,判定部125は,その判定結果から構造物105の各位置におけるコンクリートの充填状況を判定するようになっている。出力部130は,判定部125の判定結果を出力する。
【0048】
なお,センサ装置の判定部125および出力部130は,互いにバスで接続された図示しないCPU,ROM,RAMおよび入出力回路から主に構成されるコンピュータにより各機能をそれぞれ実現するようになっている。RAMには,各発生部115に対応する構造物105の位置をそれぞれ記憶した位置対応情報テーブルおよびつぎに後述する充填状況検知処理を実行するプログラムが記憶されている。
【0049】
次に,このように構成されたセンサ装置により実行される充填状況検知処理の動作を説明する。実際には,センサ装置のCPUが,図6のフローチャートにより示された充填状況検知処理ルーチン(プログラム)を所定時間の経過ごとに繰り返し実行するようになっている。
【0050】
なお,本処理が実行される前に,各種初期設定が行われる。具体的には,図7(a)にて点線で示したように,各発生部115が構造物内に設置された状態であってコンクリートが充填される前のOTDR出力から初期反射量Pinが設定される。
【0051】
また,図7(b)および図7(c)に示したように,コンクリートが充填されているか否かを判定するための閾値が,基準値Pthとして設定される。基準値Pthは,検出用凸状テープ1152の凸部の形状と発生部115に作用する外圧とから実験的に求められている。また,本実施形態では発生部115が6カ所に設けられているので,位置nの値は「6」に設定される。
【0052】
まず,図1に示したように,コンクリート108が構造物の略中央まで充填されている場合から説明する。充填状況検知処理がステップ600から開始されると,判定部125は,ステップ605にてOTDR出力(パルス光の反射光の波形)を入力し,ステップ610に進んで,入力したOTDR出力から各発生部115の位置n(n=1〜6)におけるパルス光の反射量Pdeを測定する。
【0053】
この状態では,図7(a)の実線にて示したように,反射量Pdeは,位置4,5,6にて示される第4の発生部115d〜第6の発生部115fの位置でそれぞれ増大している。なお,図の点線と実線は,実際には重なっている。
【0054】
次いで,判定部125は,ステップ615にて位置n(n=6)における初期反射量Pinと測定された反射量Pdeとの差分の絶対値DIFを求め,ステップ620に進んで,差分の絶対値DIF(n)が基準値Pthより大きいか否かを判定する。図7(b)に示したように,位置nが「6」のとき,差分の絶対値DIF(n)は基準値Pthより大きい。そこで,判定部125は,ステップ620にて「YES」と判定し,ステップ625に進んで,位置対応情報テーブルに基づき求められる第6の発生部115fに対応した構造物の位置までコンクリートが充填されていると判定する。
【0055】
次に,判定部125は,ステップ630にて位置nを1つ減算し,ステップ635にて位置nが「0」より小さいか否かを判定する。この時点で,位置nの値は「5」なので,位置nの値は,「0」より大きい。そこで,判定部125は,ステップ635にて「NO」と判定し,ステップ615に戻り,ステップ635にて位置nが「0」より小さくなるまでステップ615〜ステップ635の処理を繰り返す。以上により,コンクリートは,第6の発生部115f〜第4の発生部115dに対応する構造物の位置まで充填されていて,第3の発生部115c〜第1の発生部115aに対応する構造物の位置には充填されていないと判定される。
【0056】
その後,位置nが「0」より小さくなると,判定部125は,ステップ635にて「YES」と判定し,ステップ640に進んで,ステップ625にて判定した充填完了位置が連続しているか否かを判定する。この時点で,充填完了位置は,位置4,5,6なので連続している。そこで,判定部125は,ステップ640にて「YES」と判定し,ステップ695に進んで,本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0057】
次に,充填状況に,図7(c)に示したような異常が発生した場合について説明すると,判定部125は,ステップ600〜ステップ610に続くステップ615〜ステップ635の繰り返し処理にて充填完了位置を2,4,5,6と判定する。この時点で,位置3では充填未完了であるため充填完了位置は連続していない。そこで,判定部125は,位置nが「0」より小さくなったとき,ステップ635に続くステップ640にて「NO」と判定してステップ645に進み,出力部130は,ステップ645にて充填状況に異常が発生している旨の警告を出力する。
【0058】
以上に説明したように,本実施形態のセンサ装置によれば,外圧の変化がパルス光の反射量の変化として確実に測定されるので,構造物や構造物の内部の温度に関わりなく,構造物のどの部分までコンクリートが充填されたかを正確に判定することができる。特に,
コンクリートが充填されても光ファイバが大きく変形しないような部分に光ファイバが設置された場合でも,上記のような発生部115の構成により,コンクリートの充填状況を正しく判定することができる。
【0059】
(第一実施形態の変形例)
次に,本実施形態の変形例について図8および図9を参照しながら説明する。この変形例では,図8に示したように,発生部115が,構造物の内部側面105aに張り巡らされた光ファイバ110を覆うように1つ設けられ,図8の平面3−3にて発生部115を切断した断面である図9に示したように,検出用凸状シート1156および圧力伝達板1158により比較的長く光ファイバ110が覆われている点において,構造物の内部側面105aに複数個の発生部115が設けられ,検出用凸状テープ1152およびシールテープ1154により比較的短く光ファイバ110が覆われている第一実施形態と構成上相異する。よって,この相異点を中心に変形例に係るセンサ装置について説明する。
【0060】
検出用凸状シート1156は,構造物105の内部壁面に張り付けられ,その表面に図示しない鋭い凸部を有し,その上に光ファイバ110が張り巡らされている。圧力伝達板1158は,検出用凸状シート1156および検出用凸状シート1156上を蛇行する光ファイバ110を覆うように貼り付けられている。
【0061】
構造物105にコンクリートが充填されると,圧力伝達板1158を介して光ファイバ110に外部から圧力がかかり,光ファイバ110は検出用凸状シート1156に押圧される。このようにして,光ファイバ110は検出用凸状シート1156の凸部によって傷付けられたり,折曲されたりすると,光ファイバ内に伝送されるパルス光の状態が変化する。本変形例によれば,このパルス光の反射光の変化およびこの変化が生じた位置を測定することにより,光ファイバに作用する外圧の状態を判定し,その判定結果から構造物105のどの位置までコンクリートが充填されているかを判定することができる。
【0062】
なお,第一実施形態にて使用した検出用凸状テープ1152およびシールテープ1154は,凹部または凸部の少なくともいずれか一方を有する板状部材の一例である。板状部材は,外圧により光ファイバを板状部材の凹部または凸部の少なくともいずれか一方により折曲させる,または,板状部材の凸部により光ファイバを傷付けるように発生部115に設けられていればよい。また,あるいは,圧力伝達板は,外圧が圧力伝達板を介して光ファイバに作用することにより光ファイバを折曲させるように発生部115に設けられればよい。
【0063】
したがって,発生部115は,光ファイバ110の近傍に配設され,フレネル反射の発生を増大させることができれば,外圧が加わらない状態にて検出用凸状テープ1152,シールテープ1154,検出用凸状シート1156および圧力伝達板1158を光ファイバ110に接触させるようにそれぞれ設ける必要はない。また,検出用凸状テープ1152および検出用凸状シート1156の凸形状は,刃のように鋭角になっているほうが好ましいが,先端が丸くまたは平面になっていてもよい。
【0064】
また,発生部115は,外圧に応じて光ファイバ内に伝送される光の状態変化を発生させることができれば,検出用凸状テープ1152やシールテープ1154や検出用凸状シート1156や圧力伝達板1158をすべて設ける必要はない。
【0065】
(第二実施形態)
第二実施形態のセンサ装置は,図10に示したように,発生部115に第2の光ファイバ150(光ファイバ110に対する他の光ファイバに相当)を設けることによって光ファイバカプラを構成する点において,第一実施形態におけるセンサ装置の発生部と構成上相異する。また,第二実施形態のセンサ装置は,パルス光の分岐比の変化に基づいて光ファイバカプラ周辺の水分の状態を判定することによりコンクリートの充填状況を判定する点において,パルス光の反射量に基づいて光ファイバに作用する外圧の状態を判定することによりコンクリートの充填状況を判定する第一実施形態のセンサ装置と動作上相異する。よって,この相異点を中心に第二実施形態のセンサ装置について説明する。
【0066】
具体的には,第一実施形態と同様に構造物の内部側面105aに光ファイバ110が配置され,光ファイバ上に複数(単数でも良い)の発生部115が設けられている。発生部115は,光ファイバ110の一部であって通常の使用状態では水分が発生されない箇所に第2の光ファイバ150を結合して構成される光ファイバカプラ145を含んで構成される。発生部115は,図11に示したように,2本の光ファイバ(光ファイバ110および光ファイバ150)を結合部1451にて延伸し,融着結合した光ファイバカプラ145から構成されている。
【0067】
図12の上部は,図10の平面4−4にて発生部115を切断した断面の構成を示し,図12の下部は,図12の上部の光ファイバカプラ145の拡大図であって図11の平面5−5にて光ファイバカプラ145の結合部1451を切断した断面の構成を示している。発生部115は,光ファイバカプラ145および水分を浸透するテープ1159から構成されている。光ファイバカプラ145は,テープ1159により構造物の側面105aに貼り付けられている。
【0068】
次に,本実施形態のセンサ装置が,パルス光の分岐比の変化に基づいて光ファイバカプラ周辺の水分の状態を判定する原理について説明する。図12の下部に示したように,光ファイバカプラ145の結合部1451は,コア部1452およびコア部1452の外周に位置するクラッド部1453から構成される。
【0069】
コア部1452の直径は,光ファイバ110および光ファイバ150が延伸・融着する前の通常の状態における直径の約1/10以下(約1μm以下)であるため,図11のポート1から入射された光信号P1は,コア部1452内部に閉じ込められずにクラッド部1453全体に拡がる。ここで,光ファイバ110および光ファイバ150の構造パラメータが等しいものと仮定し,かつ,光ファイバカプラ145の結合部1451の断面形状は,点線にて示された短形状によって近似されるものとする。
【0070】
「光ファイバとファイバ形デバイス」(川上他著 培風館)等の文献に示されているように,最低次の偶数次伝搬モードと奇数次伝搬モードとの間の干渉に基づいて,図11に示したポート3およびポート4からそれぞれ出射される光信号P2および光信号P3は,式(1)および式(2)によりそれぞれ示される。
【0071】
P2=cos(CL)・・・(1)
P3=sin(CL)・・・(2)
【0072】
ここで,Lは,図11に示したように,結合部1451の長さである。また,Cは結合係数(定数)であり,光ファイバカプラ145にて光信号P1が光信号P2と光信号P3とに分岐される割合を示す結合度を決定する。結合係数Cは,式(3)により示される。
C=(3πλ/32n・d)・{1/(1+1/ν)}・・・(3)
【0073】
式(3)において,λは光信号P2または光信号P3の波長(式(1)および式(2)にそれぞれ適用)である。また,図12の下部に示したように,nはクラッド部1453の屈折率,dは光ファイバカプラ145の断面の短辺の長さである。また,νは規格化周波数であり,式(4)により示される。
【0074】
ν=d・(2π/λ)・(n−n1/2・・・(4)
ここで,nは光ファイバカプラ145の周囲媒質の屈折率である。
【0075】
式(3)および式(4)から分かるように,結合係数Cは,光ファイバカプラ145の周囲媒質の屈折率nの関数である。たとえば,周囲媒質が空気である場合,その屈折率nの値は「1」となり,周囲媒質が水である場合,その屈折率nの値は「1.33」となる。したがって,光ファイバカプラ145の結合部1451の周囲媒質が空気である場合,図11に示したように,ポート1から入射された光信号P1は,第2の光ファイバ150に分岐されず,ほとんどそのまま光信号P2として第1の光ファイバ110内を伝送される。
【0076】
これに対し,周囲媒質が水である場合,ポート1から入射された光信号P1は,光信号P3として第2の光ファイバ150に分岐され,第1の光ファイバ110内にはほとんど伝送されない。
【0077】
以上に説明した原理に基づき,本実施形態の判定部125は,コンクリートが光ファイバカプラ145周りに充填されるとコンクリートの水分により光ファイバカプラ145の分岐比が変化することを利用して,パルス光の分岐比の所与の初期分岐比に対する変化値により光ファイバカプラ周辺の水分の状態を判定するようになっている。
【0078】
次に,このように構成されたセンサ装置により実行される充填状況検知処理の動作を説明する。センサ装置は,図13のフローチャートにより示された充填状況検知処理ルーチン(プログラム)を所定時間の経過ごとに繰り返し実行するようになっている。なお,第一実施形態の充填状況検知処理と同一処理を行うステップには,同一ステップ番号が付けられている。
【0079】
第一実施形態と同様に,コンクリート108が構造物の略中央まで充填されている場合について説明する。なお,本処理が実行される前に,各種初期設定が行われる。具体的には,図14(a)に示したように,各発生部115が構造物内に設置され,コンクリートの充填は開始されていない状態であって光ファイバ110に光ファイバ150が融着されていない状態でのOTDR出力と,コンクリートが充填される前の状態であるが光ファイバ110に光ファイバ150が融着されている状態でのOTDR出力と,の差分ΔAの絶対値ΔA1〜ΔA6が設定される。
【0080】
なお,このようにして設定された差分の絶対値ΔA1〜ΔA6は,図11のポート1から光ファイバ110に伝達される光信号P1が光ファイバカプラ145にて光信号P2と光信号P3とに分岐される(その分岐比を,以下,初期分岐比という)ために,OTDR出力に損失が発生することに起因して生じる。
【0081】
充填状況検知処理がステップ1300から開始されると,判定部125は,ステップ605およびステップ610に続くステップ1305にて各位置1〜6におけるOTDR出力の差分ΔB1〜ΔB6を演算する。
【0082】
具体的には,図14(b)に示したように,コンクリートが充填される前の状態であって,光ファイバ110に光ファイバ150が融着されていない状態でのOTDR出力と,光ファイバ110に光ファイバ150が融着され,コンクリートの充填が開始された後の状態でのOTDR出力と,の差分の絶対値ΔB1〜ΔB6が演算される。
【0083】
つぎに,判定部125は,ステップ1310にてΔA6とΔB6との差分DIFを求め,ステップ1315に進んで,差分DIFの値が「0」に等しいか否かを判定する。
【0084】
この時点で,第6の発生部145fの周囲にはコンクリートが充填され,光ファイバカプラ145の周囲媒質nが空気から水へと変わっている。これにより,光ファイバ110と光ファイバ150とのパルス光の分岐比が変化し,初期分岐比と異なる値となるため,OTDR出力の損失が変化し,差分の絶対値ΔA6と差分の絶対値ΔB6とは異なる値となるため差分DIFの値は「0」に等しくない。
【0085】
そこで,判定部125は,ステップ1315にて「NO」と判定し,ステップ625にて位置6は充填完了と判定し,ステップ630,ステップ635に進んだ後,ステップ1310に戻り,位置nの値が「0」より小さくなるまでステップ1310,ステップ1315,ステップ625〜ステップ635の処理を繰り返す。
【0086】
その後,位置nの値が「0」より小さくなると,判定部125は,ステップ635にて「YES」と判定し,充填完了と判定された位置4,5,6は連続しているため,ステップ640にて「YES」と判定し,ステップ1395に進んで,本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0087】
位置1〜位置3において,光ファイバカプラ145の周囲媒質の屈折率nは,初期設定時の屈折率と同一となる。これにより,初期分岐比に対するパルス光の分岐比は変化しない。この結果,OTDR出力の損失は,初期分岐比を求めたときの損失と変わらない。このため,図14(a)および図14(b)に示したように,位置1〜位置3における差分DIFの値は「0」に等しくなる。
【0088】
一方,位置4〜位置6において,コンクリートに含まれる水分により,屈折率nは,初期設定時の屈折率と異なる。これにより,初期分岐比に対するパルス光の分岐比は変化する。この結果,OTDR出力の損失は,初期分岐比を求めたときより大きくなる。このため,位置4〜位置6における差分DIFの値は「0」に等しくならない。
【0089】
よって,コンクリートは,第4の発生部115d〜第6の発生部115fに対応する構造物の位置まで充填されていて,第1の発生部115a〜第3の発生部115cに対応する構造物の位置には充填されていないと判定される。
【0090】
なお,充填状況に異常が発生した場合,第二実施形態のセンサ装置は,第一実施形態と同様にステップ640,ステップ645にて充填状況の異常を検知する。
【0091】
また,各発生部115の光ファイバカプラ145は,融着された3本以上の光ファイバからそれぞれ構成されていてもよい。
【0092】
(第三実施形態)
つぎに,本発明の第三実施形態にかかるセンサ装置について説明する。本実施形態のセンサ装置には,前述した発生部115が設けられておらず,光ファイバ110がパルス光を伝送するとともに発生部115としても機能する点において,光ファイバ110の周辺に発生部115が設けられている第一実施形態のセンサ装置と構成および機能上相異する。また,本実施形態のセンサ装置は,パルス光の状態変化により光ファイバ近傍の媒質(水分)の状態を判定する点において,パルス光の状態変化により光ファイバ近傍の外圧の状態を判定する第一実施形態のセンサ装置と動作上相異する。よって,この相異点を中心に本実施形態のセンサ装置について説明する。
【0093】
図15(a)に示したように,本実施形態のセンサ装置は,光ファイバ110,OTDR120,判定部125および出力部130を含んで構成されている。本実施形態のセンサ装置では,第一実施形態と同様に構造物の内部側面105aに光ファイバ110が配置され,さらに,その末端が通常の使用状態では水分が発生しない箇所であってコンクリート108の充填状況を確認したい部分に位置するように配置される。
【0094】
光ファイバ110に接続されたOTDR120は,光ファイバ110に光信号(パルス光)を入射する。この入射された光信号が,光ファイバ110を伝送して末端まで到達すると,末端にてフレネル反射が発生する。このフレネル反射により発生したパルス光の反射光は,OTDR120に向かって伝播する。OTDR120は,この反射光を測定するようになっている。
【0095】
OTDR120が精度よく反射光を測定できるように,光ファイバ110の末端は,フレネル反射が大きく発生するように処理されている。その処理方法としては,光ファイバ110の末端をカッターで切断する方法が挙げられる。また,光ファイバ110の末端をはさみでギザギザに切ったり,斜めに切ってもよい。ただし,光ファイバ110の端面を直角に切るとフレネル反射が最大となるので好ましい。
【0096】
このフレネル反射による反射量は,光ファイバ110の周囲の媒質の屈折率に依存する。よって,光ファイバ110の周囲の媒質が変化すると,OTDR120が測定する反射量(OTDR出力)も変化する。たとえば,図15(b)に示したように、光ファイバ110の末端の媒質が空気である場合と水である場合とでは光の屈折率が異なるため,フレネル反射量も異なる。
【0097】
具体的には,初期状態において,光ファイバ110の末端の媒質は空気である。このとき,OTDR120は,フレネル反射量を初期反射量Pin(点線にて図示)として測定する。その後,光ファイバ110の末端周辺にコンクリート108が充填され,光ファイバ110の末端の媒質が水になると,実線にて示したように,光ファイバ110の末端にて発生するフレネル反射の反射量が減少する。判定部125は,このようなパルス光の状態変化に基づいて光ファイバ110近傍の媒質の状態変化を判定するようになっている。
【0098】
次に,このように構成されたセンサ装置により実行される充填状況検知処理の動作を説明する。実際には,センサ装置のCPUが,図16のフローチャートにより示された充填状況検知処理ルーチン(プログラム)を所定時間の経過ごとに繰り返し実行するようになっている。
【0099】
なお,本処理が実行される前に,各種初期設定が行われる。具体的には,センサ装置は,図15(b)にて点線で示したように,光ファイバ110が構造物内に設置された状態であってコンクリートが充填される前のOTDR出力を初期反射量Pinとして設定する。
【0100】
まず,コンクリート108が充填されていない場合(光ファイバ110の末端の媒質が空気である場合)から説明する。図16の充填状況検知処理がステップ1600から開始されると,判定部125は,ステップ605にて(OTDR120により測定された)OTDR出力(パルス光の反射光の波形)を入力し,ステップ1605に進んで,入力したOTDR出力からパルス光の反射量Pdeを測定する。このとき,測定された反射量Pdeは,図15(b)の点線にて示したように,初期反射量と同様に,光ファイバ110の末端にて増大する。
【0101】
次いで,判定部125は,ステップ1610にて初期反射量Pinと測定された反射量Pdeとの差分の絶対値DIFを求め,ステップ620に進んで,差分の絶対値DIFが基準値Pthより大きいか否かを判定する。このとき,反射量Pdeは初期反射量Pinにほぼ等しい。したがって,差分の絶対値DIFは,基準値Pthより小さい。
【0102】
そこで,判定部125は,ステップ620にて「NO」と判定し,ステップ1620に進んで,コンクリート108は,光ファイバ110の末端に充填されていないと判定し,ステップ1695に進んで,本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0103】
その後,光ファイバ110の末端にコンクリート108が充填されると(光ファイバ110の末端の媒質が水になると),初期反射量Pinと測定された反射量Pdeとの差分の絶対値DIFは,基準値Pthより大きくなる。そこで,判定部125は,ステップ1600,ステップ605,ステップ1605,ステップ1610に続くステップ620にて「YES」と判定してステップ1615に進み,コンクリート108が,光ファイバ110の末端に充填されたと判定し,出力部130は,同ステップ1615にて充填完了を出力する。ついで,判定部125は,ステップ1695に進んで,本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0104】
本実施形態によれば,光ファイバ110の末端にて生じるフレネル反射により変化するパルス光の状態が測定される。これにより,光ファイバ110の末端近傍に水分が発生したときに生じるパルス光の状態変化に基づいて,光ファイバの末端近傍の水分の状態が検知される。この結果,光ファイバ110の末端にてコンクリート108が充填されたか否かを判定することができる。
【0105】
(第四実施形態)
つぎに,本発明の第四実施形態にかかるセンサ装置について説明する。本実施形態のセンサ装置では,光ファイバ110の表面の少なくとも一部に傷が設けられ,その傷部分にて生じるフレネル反射に伴うパルス光の状態変化に基づいて傷が設けられた部分近傍の水分の状態が判定される点において,光ファイバ110の末端により生じるフレネル反射に伴うパルス光の状態変化に基づいてその末端近傍の水分の状態を判定する第三実施形態のセンサ装置と動作上相異する。よって,この相異点を中心に本実施形態のセンサ装置について説明する。
【0106】
図17(a)に示したように,本実施形態のセンサ装置では,構造物に配置された光ファイバ110の表面の一部に傷が設けられていて,その傷が通常の使用状態では水分が発生しない箇所であってコンクリート108の充填状況を確認したい部分に位置するように配置される。
【0107】
傷は,光ファイバ110の表面にヤスリ等で一様につけられ,光ファイバ110の円周方向に向かって光ファイバ内部まで水が浸透する程度につけられればよい。光ファイバ内部まで水が浸透するとは,コア部またはクラッド部まで水が浸透していることをいう。ただし,傷がコア部まであると,反射レベルが大きくなるため好ましい。
【0108】
OTDR120から入射された光信号が,光ファイバ110に傷が設けられている部分まで達すると,傷が設けられた部分にてフレネル反射が発生する。OTDR120は,このフレネル反射により発生した反射光を測定するようになっている。
【0109】
OTDR120が測定するOTDR出力は,光ファイバ110からのフレネル反射量を示していて,通常の光ファイバでは,光ファイバ長に対しほぼ一定の割合で低下していく。すなわち,光ファイバ110に傷がない場合,図17(b)に点線にて示したように,OTDR出力は,光ファイバ長に対してほぼ一定の割合で低下する。
【0110】
しかし,OTDR出力(フレネル反射量)は,光ファイバ110周辺の媒質の屈折率に依存する。よって,光ファイバ110の表面に傷をつけると周囲媒質の屈折率が変化し,これに伴ってOTDR出力も変化する。図17(b)の実線のs部分にて示したように,光ファイバ110に傷がない部分と傷がある部分でOTDR出力が変化しているのはこのためである。
【0111】
さらに,傷がある部分が水とが接触すると,光ファイバ110の周囲の媒質が空気から水に変化する。このため,周囲媒質の屈折率が変化し,これによって,OTDR出力もさらに変化する。図17(b)の実線のt部分にて示したように,光ファイバ110に傷がある部分であって周囲媒質が空気から水に変化した部分でOTDR出力が変化しているのはこのためである。
【0112】
判定部125は,図18(a)に示したように,光ファイバ110の周囲媒質が空気または水であるときの図18(b)のOTDR出力を比較する。そして,判定部125は,比較の結果,OTDR出力が変化したとき,コンクリート108が光ファイバ110の傷部分近傍にて充填されたと判定し,OTDR出力が変化していないとき,コンクリート108は,光ファイバ110の傷部分近傍に充填されていないと判定するようになっている。
【0113】
具体的には,センサ装置により実行される図16の充填状況検知処理にて,判定部125は,ステップ1610にて,初期反射量Pinと測定された反射量Pdeとの差分の絶対値DIFを求め,ステップ620に進んで,差分の絶対値DIFが基準値Pthより大きいか否かを判定する。反射量Pdeが初期反射量Pinにほぼ等しいとき,差分の絶対値DIFは,基準値Pthより小さくなる。
【0114】
そこで,判定部125は,ステップ620にて「NO」と判定し,ステップ1620に進んで,コンクリート108は光ファイバ110の傷部分近傍にて充填されていないと判定し,ステップ1695に進んで,本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0115】
その後,光ファイバ110に傷をつけた範囲の一部にコンクリート108が充填されると(光ファイバ110の傷部分の媒質が水になると),初期反射量Pinと測定された反射量Pdeとの差分の絶対値DIFは,基準値Pthより大きくなる。
【0116】
そこで,判定部125は,ステップ620にて「YES」と判定し,ステップ1615に進んで,コンクリート108は光ファイバ110の傷部分近傍にて充填されたと判定し,ステップ1695に進んで,本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0117】
本実施形態によれば,光ファイバ110の傷部分が通常の使用状態では水分が発生しない箇所に位置するように光ファイバ110が配置され,光ファイバ110の傷部分にて生じるフレネル反射により変化するパルス光の状態が測定される。これにより,光ファイバ110の傷部分近傍に水分が発生したときに生じるパルス光の状態変化に基づいて,光ファイバの傷部分近傍の水分状態を検知することができる。この結果,光ファイバ110の傷部分にてコンクリート108が充填されたか否かを判定することができる。
【0118】
なお,本実施形態では,光ファイバ110の表面の一部に傷が設けられたが,これに限られず,光ファイバ110の表面のすくなくとも一部(すなわち,光ファイバ110の表面の一部または全部)に傷が設けられていればよい。
【0119】
(第四実施形態の変形例)
つぎに,本発明の第四実施形態の変形例にかかるセンサ装置について説明する。本変形例のセンサ装置では,第四実施形態のセンサ装置に微分回路が設けられている点において,微分回路が存在しない第四実施形態のセンサ装置と構成上相違する。また,本変形例では,判定部125が,OTDR出力の微分値と微分基準値とを比較することによりコンクリートが充填されているか否かを判定する点で,OTDR出力と基準値とを比較することによりコンクリートが充填されているか否かを判定する第四実施形態のセンサ装置と動作上相異する。よって,この相異点を中心に本変形例のセンサ装置について説明する。
【0120】
図18(a)に示したように,本変形例のセンサ装置では,第四実施形態のセンサ装置の構成にさらに微分回路135を含んで構成される。微分回路は,OTDR120により測定されたOTDR出力の微分値を求める変化値演算部の一例である。
【0121】
判定部125は,図18(c)に示した微分値の絶対値と所与の微分基準値とを比較し,微分値の絶対値が所与の微分基準値より大きくなった場合,コンクリート108が光ファイバ110の傷部分近傍に充填されていると判定し,それ以外の場合,コンクリート108は,光ファイバ110の傷部分近傍に充填されていないと判定するようになっている。
【0122】
このように構成されたセンサ装置により実行される本変形例にかかる充填状況検知処理の動作を説明する。実際には,センサ装置のCPUが,図19のフローチャートにより示された充填状況検知処理ルーチン(プログラム)を所定時間の経過ごとに繰り返し実行するようになっている。
【0123】
この充填状況検知処理では,ステップ1900から処理が開始され,ステップ605,ステップ1605に続くステップ1905にて,微分回路135が,反射量Pdeの微分値Bdeを求める。
【0124】
つぎに,判定部125は,ステップ1910にて微分値Bdeの絶対値|Bde|が微分基準値Bthより大きいか否かを判定する。光ファイバ110の傷部分にコンクリートが充填されていない場合,屈折率が変化しないので反射変化量はほとんど変化しない。このため,微分値の絶対値|Bde|は,微分基準値Bthより小さくなる。
【0125】
そこで,判定部125は,ステップ1910にて「NO」と判定し,ステップ1620に進んで,コンクリート108は光ファイバ110の傷部分近傍に充填されていないと判定し,ステップ1995に進んで,本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0126】
その後,光ファイバ110に傷をつけた範囲の一部にコンクリート108が充填されると,屈折率が変化するので反射変化量も変化する。このため,微分値の絶対値|Bde|は,微分基準値Bthより大きくなる。
【0127】
そこで,判定部125は,ステップ1910にて「YES」と判定し,ステップ1615に進んで,コンクリート108は光ファイバ110の傷部分近傍に充填されたと判定し,ステップ1995に進んで,本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0128】
本実施形態によれば,微分回路135によりOTDR出力の微分値が求められ,この微分値と微分基準値Bthとを比較することによりコンクリート108の充填状況が判断される。このようにOTDR出力の代わりにOTDR出力の微分値を用いることにより,光ファイバ110の傷部分近傍の媒質の変化に伴って変化するフレネル反射の変化量をより顕著に検出することができる。これにより,コンクリート108の充填状況をより精度よく検出することができる。
【0129】
なお,本変形例では,微分回路135を用いてOTDR出力の微分値によりコンクリートの充填状況を判断した。しかし,微分回路135に代えて差分回路を用いてOTDR出力の差分値を求め,差分値に基づいてコンクリート108の充填状況を判定してもよい。また,変化値演算部は,微分回路や差分回路のようにハードウェアとして構成されてもよく,ソフトウェアのプログラムモジュールとして構成されていてもよい。
【0130】
以上に説明したように,各実施形態のセンサ装置によれば,光ファイバ110内部で発生するフレネル反射の変化に伴う光信号の状態変化(パルス光の反射量)を測定して,外圧の状態または媒質(水分)の状態を判定することによりコンクリートの充填状況を正確に判定することができる。
【0131】
すべての実施の形態では,各構成要素の各動作はお互いに関連しており,各構成要素の動作は,上記に示された動作の関連を考慮しながら,一連の動作として置き換えることができる。そして,このように置き換えることにより,方法の発明の実施形態とすることができる。
【0132】
また,上記各構成要素の動作を,各構成要素の処理と置き換えることにより,プログラムの実施の形態とすることができる。また,プログラムを,プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶させることで,プログラムに記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施の形態とすることができる。
【0133】
したがって,表面に1または2以上の凹部または凸部の少なくともいずれか一方を有する板状部材を用いることにより外圧に応じて光ファイバ内に伝送される光の状態変化を発生させ,上記光ファイバに光信号を入射し,上記入射された光信号に対して上記発生させた光の状態変化を測定し,上記測定された光の状態変化に基づいて上記光ファイバに作用する外圧の状態を判定する検知方法の実施形態は,表面に1または2以上の凹部または凸部の少なくともいずれか一方を有する板状部材を用いることにより外圧に応じて光ファイバ内に伝送される光の状態変化を発生させる処理と,上記光ファイバに光信号を入射し,上記入射された光信号に対して上記発生させた光の状態変化を測定する処理と,上記測定された光の状態変化に基づいて上記光ファイバに作用する外圧の状態を判定する処理とをコンピュータに実行させる検知プログラム,および,この検知プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施形態とすることができる。
【0134】
また,第1の光ファイバの一部であって通常の使用状態では水分が発生されない箇所に第2の光ファイバを結合して構成される光ファイバカプラの第1の光ファイバにパルス光を入射し,出射されたパルス光の反射光を測定することにより,上記第1の光ファイバと上記第2の光ファイバとのパルス光の分岐比を出力し,所与の初期分岐比に対する上記測定部から出力されたパルス光の分岐比の変化値を求め,求められた変化値により上記光ファイバカプラ周辺の水分の状態を判定する検知方法の実施形態は,第1の光ファイバの一部であって通常の使用状態では水分が発生されない箇所に第2の光ファイバを結合して構成される光ファイバカプラの第1の光ファイバにパルス光を入射し,出射されたパルス光の反射光を測定することにより,上記第1の光ファイバと上記第2の光ファイバとのパルス光の分岐比を出力する処理と,所与の初期分岐比に対する上記測定部から出力されたパルス光の分岐比の変化値を求め,求められた変化値により上記光ファイバカプラ周辺の水分の状態を判定する処理とをコンピュータに実行させる検知プログラム,および,この検知プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施形態とすることができる。
【0135】
さらに,伝送される光信号の状態が媒質の状態に応じて変化するように光ファイバを配置し,上記光ファイバに光信号を入射し,上記入射された光信号がこの光ファイバを伝送して出射された光信号の状態変化を測定し,上記測定された光信号の状態変化に基づいて上記光ファイバの近傍の媒質の状態を判定する検知方法の実施形態は,伝送される光信号の状態が媒質の状態に応じて変化するように光ファイバを配置する処理と,上記光ファイバに光信号を入射し,上記入射された光信号がこの光ファイバを伝送して出射された光信号の状態変化を測定する処理と,上記測定された光信号の状態変化に基づいて上記光ファイバの近傍の媒質の状態を判定する処理とをコンピュータに実行させる検知プログラム,および,この検知プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施形態とすることができる。
【0136】
これらのプログラムの実施形態及びプログラムに記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施形態は,すべてコンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。プログラムの実施形態およびプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施形態における各処理はプログラムで実行されるが,このプログラムは,記録装置に記録されていて,ROMまたはRAMからCPUに読み込まれ,CPUによって,各フローチャートが実行されることになる。また,各実施形態のプログラムは,ソフトウェアで実現されていても,ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実現されていても構わない。
【0137】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0138】
例えば,以上の説明では,構造物の各位置におけるコンクリートの充填状況が判定されたが,外圧の変化もしくは光ファイバ近傍の媒質(たとえば,水)の変化を検出することにより流体状の放射性廃棄物等,流体状の物質の充填状況が判定されるようにしてもよい。
【0139】
また,以上の説明では,構造物にコンクリートが充填されていく状況が判定されたが,構造物から物質を取り除かれていく状況を判定することもできる。
【0140】
また,発生部115は,光ファイバの光の状態変化の発生を増大させ,その光の状態変化をセンサ装置により検知させる被検知部またはセンサ部と考えることもできる。
【0141】
また,センサ装置は,第一実施形態に示した発生部115と第二実施形態に示した発生部115とを両方備えていてもよく,この場合,各発生部115の周囲における外圧の状態および水分の状態を判定することにより,これらの判定から充填状況をより正確に判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は,構造物内部に流体物質を充填する際,その物質の充填状況を監視するセンサ装置として適用可能であり,特に構造物内部にコンクリートを打設する際,コンクリートの充填状況を監視するセンサ装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】第一実施形態における構造物の斜視図である。
【図2】第一実施形態における構造物の側面図である。
【図3】第一実施形態におけるセンサ装置の全体構成を示した説明図である。
【図4】図2の平面1−1にて発生部を切断した断面図である。
【図5】図2の平面2−2にて発生部を切断した断面図である。
【図6】第一実施形態にてセンサ装置が実行する充填状況検知処理ルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図7(a)は各位置nにて発生した反射量Pdeを示した図であり,図7(b)および図7(c)はそれぞれ,正常充填時および異常充填時において各位置nの差分DIFと基準値Pthとの関係を示した図である。
【図8】第一実施形態の変形例における構造物の側面図である。
【図9】図8の平面3−3にて発生部を切断した断面図である。
【図10】第二実施形態における構造物の側面図である。
【図11】第二実施形態における光ファイバカプラの結合部を示した説明図である。
【図12】図10の平面4−4および図11の平面5−5にて発生部および光ファイバカプラの結合部を切断した断面図である。
【図13】第二実施形態にてセンサ装置が実行する充填状況検知処理ルーチンを示したフローチャートである。
【図14】図14(a)は発生部の各位置nにて発生した反射量の初期差分ΔAを示した図であり,図14(b)は,コンクリート充填後,発生部の各位置nにて発生した反射量の差分ΔBを示した図である。
【図15】第三実施形態におけるセンサ装置の全体構成およびOTDR出力結果を示した図である。
【図16】同実施形態にてセンサ装置が実行する充填状況検知処理ルーチンを示したフローチャートである。
【図17】図17(a)は第四実施形態におけるセンサ装置の全体構成を示した図であり,図17(b)はOTDR出力結果を示した説明図である。
【図18】図18(a)は第四実施形態の変形例におけるセンサ装置の全体構成を示した図であり,図18(b)はOTDR出力結果を示した説明図であり,図18(c)はOTDR出力の微分値を示した説明図である。
【図19】同実施形態にてセンサ装置が実行する充填状況検知処理ルーチンを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0144】
105 構造物
110,150 光ファイバ
115 発生部
120 OTDR
125 判定部
130 出力部
135 微分回路
145 光ファイバカプラ
150 光ファイバ
1152 検出用凸状テープ
1154 シールテープ
1156 検出用凸状シート
1158 圧力伝達板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの近傍に設けられ,外圧に応じて前記光ファイバ内に伝送される光信号に状態変化を発生させる発生部と;
前記光ファイバに光信号を入射し,前記入射された光信号に対して前記発生させた光信号の状態変化を測定する測定部と;
前記測定された光信号の状態変化に基づいて前記光ファイバに作用する外圧の状態を判定する判定部と;を備えたセンサ装置。
【請求項2】
前記測定部は,
前記光ファイバにパルス光を入射し,出射されたパルス光の反射光の変化を測定することにより,同反射光のパワーに応じた値を出力し,
前記判定部は,
前記測定部から出力されたパワーに応じた値に基づいて前記光ファイバに作用している外圧の状態を判定する請求項1に記載されたセンサ装置。
【請求項3】
前記発生部は,
表面に1または2以上の凹部または凸部の少なくともいずれか一方を有する板状部材を含み,
前記板状部材は,
前記1または2以上の凹部または凸部の少なくともいずれか一方が前記光ファイバに接触するように設けられる請求項1または請求項2のいずれかに記載されたセンサ装置。
【請求項4】
前記板状部材は,
前記光ファイバに外圧が作用したとき,前記凸部により前記光ファイバに傷を付けるように設けられる請求項3に記載されたセンサ装置。
【請求項5】
前記発生部は,
外圧を前記光ファイバに伝達する圧力伝達板を含む請求項1,2,3または請求項4のいずれかに記載されたセンサ装置。
【請求項6】
前記判定部は,
前記判定された外圧の状態により前記光ファイバの周囲に充填される物質の充填状況を判定する請求項1,2,3,4または請求項5のいずれかに記載されたセンサ装置。
【請求項7】
前記センサ装置は,
構造物に設けられた前記発生部を複数備えるとともに,
前記各発生部に対応する前記構造物の位置をそれぞれ記憶した位置対応情報テーブルを備え,
前記測定部は,
前記光信号の状態変化が発生された位置情報を出力し,
前記判定部は,
前記位置情報に基づいて前記複数の発生部から所定の発生部を選択し,選択された発生部から前記位置対応情報テーブルに基づいて特定される構造物の位置に物質が充填されているか否かを判定する請求項1,2,3,4,5または請求項6のいずれかに記載されたセンサ装置。
【請求項8】
前記複数の発生部は,前記構造物の異なる位置に設けられ,
前記判定部は,
前記各発生部に対応する前記構造物の各位置に物質が充填されているか否かをそれぞれ判定し,
前記センサ装置は,さらに,
前記判定された物質の充填位置と前記構造物の形状とから,充填されるべき前記構造物の位置に前記物質が充填されていないと判断されるとき,警告を出力する出力部を備えたことを特徴とする請求項7に記載されたセンサ装置。
【請求項9】
第1の光ファイバの一部であって通常の使用状態では水分が発生しない箇所に第2の光ファイバを結合して構成される光ファイバカプラと;
前記光ファイバカプラの第1の光ファイバにパルス光を入射し,出射されたパルス光の反射光を測定することにより,前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとのパルス光の分岐比を出力する測定部と;
前記測定部から出力された所与の初期分岐比に対するパルス光の分岐比の変化値により前記光ファイバカプラ周辺の水分の状態を判定する判定部と;を備えたセンサ装置。
【請求項10】
前記判定部は,
前記判定された水分の状態により前記光ファイバカプラの周囲に充填される物質の充填状況を判定する請求項9に記載されたセンサ装置。
【請求項11】
表面に1または2以上の凹部または凸部の少なくともいずれか一方を有する板状部材を用いることにより外圧に応じて光ファイバ内に伝送される光信号の状態変化を発生させ,
前記光ファイバに光信号を入射し,前記入射された光信号に対して前記発生させた光の状態変化を測定し,
前記測定された光の状態変化に基づいて前記光ファイバに作用する外圧の状態を判定する検知方法。
【請求項12】
光信号を伝送する光ファイバであって,伝送される光信号の状態を前記光ファイバ近傍の媒質の状態に応じて変化させるように配置された光ファイバと;
前記光ファイバに光信号を入射し,前記入射された光信号が前記光ファイバを伝送して出射された光信号の状態を測定する測定部と;
前記測定された光信号の状態変化に基づいて前記光ファイバ近傍の媒質の状態を判定する判定部と;を備えたセンサ装置。
【請求項13】
前記光ファイバは,
同光ファイバの末端が通常の使用状態では水分が発生しない箇所に位置するように配置され,
前記判定部は,
前記測定された光信号の状態変化に基づいて前記光ファイバの末端近傍の水分の状態を判定する請求項12に記載されたセンサ装置。
【請求項14】
前記光ファイバは,
同光ファイバの表面の少なくとも一部に傷が設けられ,その傷が設けられた部分が通常の使用状態では水分が発生しない箇所に位置するように配置され,
前記判定部は,
前記測定された光信号の状態変化に基づいて前記光ファイバの傷が設けられた部分近傍の水分の状態を判定する請求項12または13のいずれかに記載されたセンサ装置。
【請求項15】
前記測定部は,
前記光ファイバにパルス光を入射し,出射されたパルス光の反射光の変化を測定することにより,同反射光のパワーに応じた値を出力し,
前記判定部は,
前記測定部から出力されたパワーに応じた値に基づいて前記光ファイバ近傍の媒質の状態を判定する請求項12,13または14のいずれか一項に記載されたセンサ装置。
【請求項16】
前記センサ装置であって,さらに,
前記測定部により出力された反射光のパワーに応じた値の変化値を求める変化値演算部を備え,
前記判定部は,
前記変化値演算部により求められた反射光のパワーの変化値に基づいて前記光ファイバ近傍の媒質の状態を判定する請求項15に記載されたセンサ装置。
【請求項17】
伝送される光信号の状態が媒質の状態に応じて変化するように光ファイバを配置し,
前記光ファイバに光信号を入射し,前記入射された光信号がこの光ファイバを伝送して出射された光信号の状態を測定し,
前記測定された光信号の状態変化に基づいて前記光ファイバ近傍の媒質の状態を判定する検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−126159(P2006−126159A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14596(P2005−14596)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】