説明

センサ調整用基準シート及びこれを用いたセンサ調整方法

【課題】紙葉類識別装置を構成するラインセンサの出力レベルを調整する際に発生し易い基準シートの位置ずれを効果的に解消する。
【解決手段】ラインセンサ28の検知面を覆う略長方形状の基準シート本体50と、基準シート本体の一方の長辺50aから平面状に突設された矩形状の張出しシート面51と、該張出しシート面の遊端縁中央部に形成された凹状の切欠き部52と、切欠き部の対向する2つの内壁に夫々紙葉類搬送方向と交差する方向へ切り込み52bを形成することによって形成される2つのフラップ部53と、を備え、基準シート本体によりラインセンサの検知面を覆った時に、各フラップ部を搬送ベルトの外側端縁から裏面側へ差し込むことにより、該搬送ベルトによって係止されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動販売機等に装備される紙葉類識別装置を調整する際に使用するセンサ調整用基準シートの改良に関し、特に紙葉類識別装置を構成するラインセンサの出力レベルを基準シートを用いて調整する際に発生し易い基準シートの位置ずれを効果的に解消することができるセンサ調整用基準シート及びこれを用いたセンサ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置は、利用者によって紙幣挿入口から挿入された紙幣を引き込んで装置内部に搬送する過程でその紙幣長、真贋、金種を判定し、正規の紙幣である場合にはこれを受入れて更に奥部に配置された紙幣収納部に収納したり、釣銭や返却金銭を払い出す紙幣処理装置と、利用者が操作するための操作スイッチ類、ディスプレイを備えた操作ボードと、利用者との間の取引が成立した場合に物品やサービスの提供を行う物品等提供部と、を備える。紙幣処理装置は、識別装置を備え、挿入された紙幣が識別装置によって偽札、或いは正規の長さを有していない等と判定された場合には、これをリジェクトして紙幣挿入口から返却する。
【0003】
図9(a)及び(b)は従来の紙幣処理装置の開放状態を示す斜視図であり、この紙幣処理装置100は紙幣の真贋、金種等を判別する識別装置110を有する。
紙幣処理装置100は、下側のベースユニット101に対して、上側の開閉ユニット105を奥側に設けた軸支部Aによって開閉自在に軸支した構成を有している。ベースユニット101の上面中央部には搬送ベルト102が配置され、開閉ユニット105の下面中央部には搬送ベルト106が配置され、各ベルトは図示しないモータによって駆動され、紙幣の上面と下面に夫々接して搬送する。ベースユニット上に開閉ユニットを閉じた状態で両ユニットの対向面間に形成される紙幣搬送経路内に、矢印で示した方向から紙幣を挿入することによって、紙幣は各ベルト102、106によって紙幣識別装置110へ向けて搬送される。
識別装置110は、ベースユニット101の上面に配置された反射型のラインセンサ(イメージセンサ)120と、開閉ユニット105の下面に配置された反射型のラインセンサ125と、から構成される。各ラインセンサ120、125は、紙幣の搬送経路の上側と下側に夫々搬送方向位置をずらして配置され、下側のラインセンサ120は紙幣の下面を読み取り、上側のラインセンサ125は紙幣の上面を読取る。
【0004】
各ラインセンサ120、125は、図示の如き直方体状をなしており、各ラインセンサはベースユニット101の上面に設けた凹所103と、開閉ユニット105の下面に設けた凹所107内に嵌合配置され、各ラインセンサの検知面が搬送経路側に突出しないように位置決め固定される。
また、各ラインセンサ120、125の検知面を通過する紙幣が搬送経路からはみ出すことがないように、ベースユニット上面及び開閉ユニット下面には夫々紙幣両端縁をガイドする突起状の搬送ガイド130、131が突設されている。
図9(c)はラインセンサ120の両端部の構成を示す要部拡大図であり、ラインセンサ120を凹所103に嵌合した時にその両端部はベースユニット101の両側面から突出した状態となっている。このラインセンサ両端の突出部120bに樹脂製のカバー135を被せることにより、カバー135に一体形成された搬送ガイド130をラインセンサの検知面120aの両端縁に沿って突設させることができる。このカバーを利用した搬送ガイドの取付けは、上側のラインセンサ125用の搬送ガイド131についても同様に行われる。
【0005】
ところで、各ラインセンサ120、125の感度、回路定数等は識別装置ごとにバラツキがあり一定でないため、出荷前に全ての識別装置のラインセンサ出力特性を一定にするために、紙幣と等価な反射率を有するセンサ調整用の基準シート(基準紙)140を用いてセンサ出力(発光素子出力)の調整を行う。センサ出力の調整は、基準シートからの反射光量の値を読み取り、その出力レベルがある一定の範囲に収まるように発光素子の発光量を調整するものである。
従来の基準シート140は、各ラインセンサ120、125の検知面全体を覆うに足る縦横寸法を有した長方形(例えば、縦87mm、横51mm)である。この基準シート140を用いて下側のラインセンサ120のセンサ出力を調整する際には、ラインセンサ120の検知面を覆うように基準シート14を下側の搬送ガイド130間に単にセットした上で、開閉ユニット105を閉じて調整を行えばよい。一方、基準シート140を用いて上側のラインセンサ125のセンサ出力を調整する場合には、基準シートが落下しないように開閉ユニット下面の搬送面に固定することができないため、基準シートをラインセンサ125が対面するベースユニット101上面の搬送面にセットした上で開閉ユニット105を閉じて調整を行っている。
【0006】
しかし、ラインセンサ125と対面するベースユニット101の上面の搬送面には搬送ガイド130を配置するスペースがないため、基準シート140を正しく位置決めする手段がない。従って、基準シートのセット位置がずれると搬送経路からはみ出した状態となり、この状態で開閉ユニット105を閉じると上側のガイド131に基準シートが挟まれて一部がラインセンサ125の検知面から浮き上がった状態となり、正確な調整ができなくなる虞がある。
このため、上側のラインセンサ125のセンサ出力を調整する際には、基準紙のセットの仕方と、開閉ユニットの閉じ方に細心の注意が必要とされ、作業性を著しく悪化させる原因となっていた。
特許文献1には、識別装置を構成する反射型光センサの出力調整を基準シートを用いずに行う手法として、紙幣搬送経路の上下位置に夫々配置された反射型光センサの出射面(受光面)をミラーモードと透明モードとに選択可能な調光ミラーガラスで覆うようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−280027公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、反射型光センサの検知面に調光ミラーガラスを配置すると識別装置の大型化を招くばかりでなく、コストアップを招くことが明かである。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、紙葉類識別装置を構成するラインセンサの出力レベルを調整する際に発生し易い基準シートの位置ずれを効果的に解消することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1の発明に係るセンサ調整用基準シートは、ベースユニットと、該ベースユニット上面に対して下面を近接(対向)させることによって両面間に紙葉類搬送経路を形成する上側の開閉ユニットと、少なくとも前記開閉ユニットの下面に配置されて前記紙葉類搬送経路を搬送される紙葉類の上面を読取るラインセンサと、前記ラインセンサの検知面を回避した前記開閉ユニットの下面中央部に沿って配置されて前記紙葉類搬送経路内の紙葉類の上面と接してこれを搬送する搬送ベルトと、を備えた紙葉類識別装置において使用され、前記ラインセンサの検知面を着脱自在に覆うセンサ調整用基準シートであって、前記ラインセンサの検知面を覆う略長方形状の基準シート本体と、該基準シート本体の一方の長辺から平面状に突設された矩形状の張出しシート面と、該張出しシート面の遊端縁中央部に形成され且つ前記搬送ベルトの外側端縁間の距離よりも狭い幅を有した凹状の切欠き部と、前記切欠き部の対向する2つの内壁に夫々紙葉類搬送方向と交差する方向へ切り込みを形成することによって形成される2つのフラップ部と、を備え、前記基準シート本体により前記ラインセンサの検知面を覆った時に、前記各フラップ部を前記搬送ベルトの外側端縁から裏面側へ差し込むことにより、該搬送ベルトによって位置決めされ且つ係止されるように構成したことを特徴とする。
請求項2の発明は、前記搬送ベルトに前記センサ調整用基準シートを係止した前記開閉ユニットを、前記ベースユニットに対して閉止した時に、該ベースユニットの一部と前記張出しシート面とが干渉する場合に、該張出しシート面の前記干渉部位を切除して非干渉部としたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係るセンサ調整方法は、請求項1又は2に記載のセンサ調整用基準シートを用いて、前記紙葉類識別装置の紙葉類上面を読取るラインセンサを調整する方法であって、前記開閉ユニットを開放し、前記紙葉類上面を読取るラインセンサの検知面を覆うように前記センサ調整用基準シートを装着するステップと、前記開閉ユニットを閉止するステップと、前記ラインセンサを構成する発光素子を発光させるステップと、前記ラインセンサを構成する反射型フォトセンサの出力を検知するステップと、予め設定されている基準値と前記反射型フォトセンサの出力とを比較し前記反射型フォトセンサの出力が基準値となるように前記発光素子の発光量を調整するステップと、前記開閉ユニットを開放し前記センサ調整用基準シートを取り除くステップと、を備えたことを特徴とする。
請求項4は、前記センサ調整用基準シートを装着するステップの後に、前記開閉ユニットを閉止した際に前記センサ調整用基準シートが対面する前記ベースユニットの上面にスポンジシートを配置するステップを、更に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙葉類識別装置を構成するラインセンサの出力レベルを調整するために調整時にラインセンサの検知面にセットされる基準シートを、上側搬送面を形成する開閉ユニットに設けた搬送ベルトに係止するように構成したので、調整時に発生し易い基準シートの位置ずれを効果的に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】紙葉類識別装置を搭載した自動券売機の外観を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に基準シートを使用する紙幣挿入機構を備えた紙幣処理装置の構成説明図である。
【図3】紙幣処理装置の内部構成を示す縦断面図である。
【図4】(a)及び(b)は紙幣処理装置を開放した状態を示す斜視図である。
【図5】一方のラインセンサを構成する反射型フォトセンサの出力信号レベルを基準シートを使用して調整するときの要部を示す図であり、(a)は側断面図であり、(b)は反射型フォトセンサ側から見た図であり、(c)は調整後の反射型フォトセンサから出力される出力信号波形を示す図である。
【図6】本発明に係る基準シートの構成を示す平面図である。
【図7】(a)及び(b)は基準シートを開閉ユニットにセットしていない状態と、セットした状態を斜め下から見た図である。
【図8】基準シートをセットした状態を示す底面図である。
【図9】(a)及び(b)は従来の紙幣処理装置の開放状態を示す斜視図であり、(c)はラインセンサ端部とカバーとの関係を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0014】
図1は紙葉類識別装置(以下、単に識別装置と呼ぶ)を搭載した自動券売機の外観を示す図である。この自動券売機1は、複数のアイテムに係る情報を表示するタッチパネルディスプレイ2と、選択された特定アイテムの価格に相当する金銭を投入するコイン投入口8及び紙幣挿入口5と、コイン投入と紙幣の挿入を解除するリジェクトボタン4と、つり銭がある場合に押すつり銭ボタン6と、つり銭を払出すつり銭口7と、決済された特定のアイテムに係る情報をコード化して記録した券を取り出す券取出口9と、制御ボードや電源装置等を収納する収納部10と、を備えて構成されている。尚、図1の自動券売機の詳細な動作については説明を省略する。
【0015】
図2は本発明の一実施形態に係る基準シートを適用する紙幣挿入機構を備えた紙幣処理装置の構成説明図であり、図3は紙幣処理装置の内部構成を示す縦断面図である。
紙幣処理装置20は、例えば食券等の自動券売機1(紙幣取扱装置)に装備されて紙幣の受け入れ処理、釣銭等としての紙幣の払い出し処理、リジェクト紙幣の返却処理等を行う機能を有する。
紙幣処理装置20は、紙幣挿入口(紙幣挿入部)5から挿入された紙幣Sを紙幣搬送経路Pに沿って装置内部に搬送するローラ対12a、搬送ベルト12b等の搬送部材12と、紙幣搬送経路P上に備えた装置本体11と、紙幣の真贋、金種を判定するためのラインセンサ27、28を配置してなる識別装置26と、を有する。
紙幣挿入口5は、装置本体11の前部に突出した紙幣ガイド皿15との協働により挿入される紙幣を紙幣搬送経路Pに導く。即ち、紙幣ガイド皿15はその上面に紙幣ガイド面15aを有し、利用者により紙幣挿入口に挿入される紙幣の底面を紙幣ガイド面15aによってガイドすることによってスムーズな挿入を可能にしている。
【0016】
これを更に詳述すると、紙幣処理装置20の正面には紙幣挿入口5が配置されており、紙幣挿入口5の直下の装置外面からは紙幣ガイド皿15が突設されている。紙幣挿入口5から装置内部に続く紙幣搬送経路Pには、挿入検知センサ22、ソレノイドにより駆動されるシャッター23、ローラ対(搬送部材)12a、搬送ベルト(搬送部材)12b、長さ検知センサ25が順次配置されている。更に、長さ検知センサ25の奥部には紙幣の真贋、金種等を判別する識別装置26が配置され、識別装置26の奥部には図示しない紙幣収納部が配置されている。なお、紙幣挿入口5と、紙幣ガイド皿15は、紙幣挿入機構を構成している。
紙幣Sが紙幣挿入口5から挿入された場合には、挿入検知センサ22が紙幣先端を検知することによって図示しない制御部はソレノイドを駆動してシャッター23を開放し、更にモータを駆動してローラ対12a、搬送ベルト12bを回転させることにより紙幣を内部に搬送開始する。長さ検知センサ25は紙幣先端が進入してから後端が通過するまでの時間(パルス数)に基づいて紙幣の長さを判定し、正規の長さを有する場合には制御部は搬送ベルト12bを順方向へ駆動して当該紙幣を識別装置26に搬送する。
【0017】
図4(a)及び(b)は紙幣処理装置を開放した状態を示す斜視図である。
紙幣処理装置20は、下側のベースユニット40に対して、上側の開閉ユニット45を奥側に設けた軸支部Aによって開閉自在に軸支した構成を有している。ベースユニット40の上面中央部には二本の搬送ベルト41が配置され、開閉ユニット45の下面中央部には二本の搬送ベルト46が配置され、各ベルトは図示しないモータによって駆動され、紙幣の上面と下面に夫々接して搬送する。
識別装置26は、ベースユニット40の上面に配置された反射型のラインセンサ(イメージセンサ)27と、開閉ユニット45の下面に配置された反射型のラインセンサ28と、から構成される。各ラインセンサ27、28は、紙幣の搬送経路の上側と下側に夫々搬送方向位置をずらして配置され、下側のラインセンサ27は紙幣の下面を読み取り、上側のラインセンサ28は紙幣の上面を読取る。本例では下側のラインセンサ27を搬送方向手前側に配置し、上側のラインセンサ28を搬送方向奥側に配置している。
各ラインセンサ27、28は、図示の如き直方体状をなしており、各ラインセンサ27、28はベースユニット40の上面に設けた凹所40aと、開閉ユニット45の下面に設けた凹所45a内に夫々嵌合配置され、各ラインセンサの検知面が搬送経路側に突出しないように位置決め固定される。
【0018】
また、各ラインセンサ27、28の検知面を通過する紙幣が搬送経路からはみ出すことがないように、ラインセンサ27の検知面の幅方向両端縁、及びラインセンサ28の検知面の幅方向両端縁には夫々紙幣両端縁をガイドする突起状の搬送ガイド42、47が突設されている。各搬送ガイド42、47は図9(c)にて説明したように各ラインセンサの突出した両端部に被せるカバー42A、47Aと一体化されている。
【0019】
図5は一方のラインセンサ27を構成する反射型フォトセンサの出力信号レベルを基準シートを使用して調整するときの要部を示す図であり、図5(a)は側断面図であり、図5(b)は反射型フォトセンサ側から見た図であり、図5(c)は調整後の反射型フォトセンサから出力される出力信号波形を示す図である。
ラインセンサ27を構成する反射型フォトセンサ33の感度、回路定数等はラインセンサごとにバラツキがあり一定でないため、出荷前に全てのラインセンサ27のセンサ出力特性を一定にするために高反射率のセンサ調整用の基準シート31を用いて出力信号レベルの調整を行う必要がある。出力信号レベルの調整は、基準シート31からの反射光量の値を読み取り、その出力信号レベルがある一定の範囲に収まるように図示しないLEDの発光量を調整するものである。
【0020】
即ち、ラインセンサ27は、紙幣搬送路に沿って搬送される紙幣の面と対向配置された紙幣識別用の反射型フォトセンサ33と、反射型フォトセンサ33の検知範囲Y(受光素子が存在する有効読み取り範囲をいう)を全面的に覆うように配置される透光性の拡散板32と、を備え、反射型フォトセンサ33による幅方向検知範囲Y、及び拡散板32の幅方向寸法Zを、夫々紙幣搬送路を搬送される紙幣の幅方向両端部Xを越えて延在するように構成し、拡散板32の紙幣搬送路側に反射型フォトセンサ33の検知範囲全域Yに渡って低反射率部材(黒色板)30を対向配置し、出力信号レベルを調整するときは、紙幣搬送路に配置した紙幣と同じ幅を有した低反射率部材30より十分に高反射率のセンサ調整用基準シート(以下、単に基準シートと呼ぶ)31の面に拡散板32を介して反射型フォトセンサ33を構成する発光素子(LED)からの光を出射して反射光を受光素子によって読み取り、図5(c)のように出力信号レベルVbが基準値VtになるようにLED35の発光量を調整する。
【0021】
次に、センサ調整用基準シートを用いてラインセンサ28を調整する方法について更に詳しく説明する。
このラインセンサ28の調整方法は、開閉ユニット45を開放し、紙葉類上面を読取るラインセンサ28の検知面を覆うようにセンサ調整用基準シート31を装着するステップと、開閉ユニット45を閉止するステップと、ラインセンサ28を構成する発光素子を発光させるステップと、ラインセンサ28を構成する反射型フォトセンサの出力を検知するステップと、予め設定されている基準値と反射型フォトセンサの出力とを比較し反射型フォトセンサの出力が基準値となるように発光素子の発光量を調整するステップと、開閉ユニットを開放しセンサ調整用基準シート31を取り除くステップと、を備えている。
【0022】
図6は本発明に係る基準シートの構成を示す平面図であり、図7(a)及び(b)は基準シートを開閉ユニットにセットしていない状態と、セットした状態を斜め下から見た図であり、図8は基準シートをセットした状態を示す底面図である。
基準シート31は、所定の高反射率を有した紙、樹脂等からなるシート材であり、開閉ユニット45の下面であってラインセンサ28の検知面と対応する位置に着脱自在に配置される。即ち、基準シート31は、上側のラインセンサ28の検知面を覆う略長方形状の基準シート本体50と、基準シート本体の一方の長辺50aから平面状に突設された矩形状の張出しシート面51と、張出しシート面の遊端縁51aの中央部に形成され且つ搬送ベルト46の外側端縁間の距離L1よりも狭い幅L2を有した凹状の切欠き部52と、切欠き部の対向する2つの内壁52aに夫々紙葉類搬送方向と交差する方向へ切り込み52bを形成することによって形成されるフラップ部53と、を備える。
【0023】
基準シート31は、基準シート本体50によりラインセンサ28の検知面を覆った時に、張出しシート面51が搬送ベルト46表面の一部を覆うと共に、フラップ部53を搬送ベルト46の裏側へ入れ込み可能に構成されている。
基準シート本体50は、ラインセンサの検知面を覆うに足る幅方向長と、搬送方向長を備えている。また、基準センサの幅方向長は、ラインセンサ28の検知面の両端部に夫々突設された搬送ガイド47の内側面間の距離と同等に設定されている。このため、ラインセンサの検知面全体を基準シート本体によって完全に覆うことができる。
各切り込み52bは、各フラップ部53を各搬送ベルト46の裏側へ外側から差し込むことにより、基準シート31を搬送ベルト46により保持(位置決め、係止)できるようにその長さ、及び切り込みの延びる方向を設定されている。
【0024】
このように張出しシート面51の中央部に2枚のフラップ部53を設け、各フラップ部53を各搬送ベルト46の裏面に外側から差し込んで係止されるようにしたので、基準シート13を開閉ユニット下面に正確に固定することができる。このため、開閉ユニット下面に基準シートを固定してから、開閉ユニット45をベースユニット40上に閉じた際にも基準シートの位置がずれることがなくなり、ラインセンサ出力を正確に調整することが可能となる。
基準シート本体50の幅寸法よりも、張出しシート面51の幅寸法を短くし、両部分の幅方向両端部にL字状の段差部を形成したのは、基準シート31を添設した状態の開閉ユニット45をベースユニット40上に閉止した時に、張出しシート面51の幅方向両端部がベースユニット40上面と干渉して挟み込まれて閉止状態が悪化することを防止するためである。即ち、張出しシート面51の幅方向寸法を基準シート本体50と同等に設定すると、開閉ユニットを閉止した時にベースユニット側の対応する部位と干渉する虞があるため、この虞を回避するための措置である。従って、このような干渉の虞がない場合には張出しシート面51の幅方向寸法を基準シート本体50と同等に設定しても差し支えない。
なお、開閉ユニットを閉じた際に基準シート本体50が対面するベースユニット40の上面にスポンジシートを配置しておくことにより、開閉ユニットを閉じた際にスポンジシートによって基準シート本体の面をラインセンサ28の検知面と密着させることが可能となる。
この場合には、センサ調整用基準シートを用いてラインセンサ28を調整する前記方法において、センサ調整用基準シート31を装着するステップの後に、開閉ユニットを閉止した際にセンサ調整用基準シートが対面するベースユニットの上面にスポンジシートを配置するステップを加えることとなる。
【0025】
以上のように本発明によれば、紙葉類識別装置を構成するラインセンサの出力レベルを調整するために、調整時にラインセンサの検知面にセットされる基準シートを、上側搬送面を形成する開閉ユニットに設けた搬送ベルトに係止できる構成としたので、調整時に発生し易い基準シートの位置ずれを効果的に解消することができる。
なお、本発明に係る基準シートは紙幣識別装置のみならず、チケット類、証明書類等々の紙葉類の種類、真贋等を識別する装置一般に適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…自動券売機、2…タッチパネルディスプレイ、4…リジェクトボタン、5…紙幣挿入口、6…銭ボタン、7…銭口、8…コイン投入口、9…券取出口、10…収納部、11…装置本体、12…搬送部材、12a…ローラ対、12b…搬送ベルト、13…基準シート、14…基準シート、15…紙幣ガイド皿、15a…紙幣ガイド面、20…紙幣処理装置、22…挿入検知センサ、23…シャッター、25…検知センサ、26…識別装置、27…ラインセンサ、28…ラインセンサ、30…低反射率部材、31…基準シート、32…拡散板、33…反射型フォトセンサ、35…LED、40…ベースユニット、40a…凹所、41…搬送ベルト、42…搬送ガイド、42A、47A…カバー、45…開閉ユニット、45a…凹所、46…搬送ベルト、47…搬送ガイド、50…基準シート本体、50a…長辺、51…張出しシート面、51…基準シート、51a…遊端縁、52a…内壁、53…フラップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースユニットと、該ベースユニット上面に対して下面を近接(対向)させることによって両面間に紙葉類搬送経路を形成する上側の開閉ユニットと、少なくとも前記開閉ユニットの下面に配置されて前記紙葉類搬送経路を搬送される紙葉類の上面を読取るラインセンサと、前記ラインセンサの検知面を回避した前記開閉ユニットの下面中央部に沿って配置されて前記紙葉類搬送経路内の紙葉類の上面と接してこれを搬送する搬送ベルトと、を備えた紙葉類識別装置において使用され、前記ラインセンサの検知面を着脱自在に覆うセンサ調整用基準シートであって、
前記ラインセンサの検知面を覆う略長方形状の基準シート本体と、該基準シート本体の一方の長辺から平面状に突設された矩形状の張出しシート面と、該張出しシート面の遊端縁中央部に形成され且つ前記搬送ベルトの外側端縁間の距離よりも狭い幅を有した凹状の切欠き部と、前記切欠き部の対向する2つの内壁に夫々紙葉類搬送方向と交差する方向へ切り込みを形成することによって形成される2つのフラップ部と、を備え、
前記基準シート本体により前記ラインセンサの検知面を覆った時に、前記各フラップ部を前記搬送ベルトの外側端縁から裏面側へ差し込むことにより、該搬送ベルトによって位置決めされ且つ係止されるように構成したことを特徴とするセンサ調整用基準シート。
【請求項2】
前記搬送ベルトに前記センサ調整用基準シートを係止した前記開閉ユニットを、前記ベースユニットに対して閉止した時に、該ベースユニットの一部と前記張出しシート面とが干渉する場合に、該張出しシート面の前記干渉部位を切除して非干渉部としたことを特徴とする請求項1に記載のセンサ調整用基準シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサ調整用基準シートを用いて、前記紙葉類識別装置の紙葉類上面を読取るラインセンサを調整する方法であって、
前記開閉ユニットを開放し、前記紙葉類上面を読取るラインセンサの検知面を覆うように前記センサ調整用基準シートを装着するステップと、
前記開閉ユニットを閉止するステップと、
前記ラインセンサを構成する発光素子を発光させるステップと、
前記ラインセンサを構成する反射型フォトセンサの出力を検知するステップと、
予め設定されている基準値と前記反射型フォトセンサの出力とを比較し前記反射型フォトセンサの出力が基準値となるように前記発光素子の発光量を調整するステップと、
前記開閉ユニットを開放し前記センサ調整用基準シートを取り除くステップと、
を備えたことを特徴とするセンサ調整方法。
【請求項4】
前記センサ調整用基準シートを装着するステップの後に、
前記開閉ユニットを閉止した際に前記センサ調整用基準シートが対面する前記ベースユニットの上面にスポンジシートを配置するステップを、更に備えたことを特徴とする請求項3に記載のセンサ調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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