説明

センサ

【課題】低コストであり、試料の特性などを検査する検査モジュールとして汎用的に利用することができる。
【解決手段】検査装置1は、直列に接続された2つのCR並列回路と、前記2つのCR並列回路に矩形波電圧を印加する電源回路部と、前記2つのCR並列回路の接続部の電圧を検出する電圧検出部5と、を備えており、前記2つのCR並列回路のうち少なくとも一方の前記CR並列回路は、試料を挟んで対向する電極対11、12であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の特性を検査する検査モジュールとして使用可能なセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、気体や液体などの試料の種類や含有物の濃度などの特性を検査する検査モジュールとして、試料を一対の電極の間に挟んで、一対の電極に電圧を印加したときの電極間の抵抗や静電容量から試料の特性を検査するセンサが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、微生物を含有する液体が貯留された容器内に一対の電極を配置し、この電極間に矩形波電圧を印加したときの電極間の抵抗や静電容量から液体中に含有する微生物数を測定する微生物測定装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−330752号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、試料の特性の検査内容としては、上述した特許文献1に記載の微生物測定装置のように1つの試料の特性を検査する場合の他に、2つの試料の特性の類似性や相違性を検査する場合などが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の微生物測定装置では、例えば、2つの液体中に含有する微生物数が同じか否かなどを検査するためには、2つの装置でそれぞれの液体中に含有する微生物数を測定する必要があり、コストが増大してしまう。このような経緯から、低コストで、1つの試料の特性や2つの試料の特性の類似性や相違性などを検査可能な検査モジュールとして利用できるセンサが求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、試料の特性などを検査する検査モジュールとして汎用的に利用することができる低コストなセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセンサは、直列に接続された2つのCR並列回路と、前記2つのCR並列回路に矩形波電圧を印加する電源回路部と、前記2つのCR並列回路の接続部の電圧を検出する電圧検出部と、を備えている。前記2つのCR並列回路のうち少なくとも一方の前記CR並列回路は、試料を挟んで対向する電極対である。
【0008】
本発明のセンサによると、回路構成が簡単であるため、低コストであり、電圧検出部によって検出される電圧に基づいて試料の特性などを検査する検査モジュールとして汎用的に利用することができる。なお、試料の特性とは、試料が気体や液体である場合にはその種類や含有物の濃度などのことである。
【0009】
また、前記2つのCR並列回路のうち、一方の前記CR並列回路のみが前記電極対であり、前記電極対ではない他方の前記CR並列回路の抵抗及び静電容量が固定されていることが好ましい。これによると、一方のCR並列回路である電極対の間に挟まれた試料の特性と、他方のCR並列回路の抵抗や静電容量に対応した特性の同一性、類似度またはそれぞれの抵抗や静電容量の違いなどを判断することができる。
【0010】
また、前記2つのCR並列回路のうち、一方の前記CR並列回路のみが前記電極対であり、前記電極対ではない他方の前記CR並列回路の抵抗及び静電容量が可変であってもよい。これによると、例えば、一方のCR並列回路である電極対の間に挟まれた試料の特性に応じた抵抗や静電容量がわからない場合に、他方のCR並列回路の抵抗及び静電容量を変化させて、未知の試料の特性に対応した抵抗や静電容量を把握することもできる。
【0011】
また、前記2つのCR並列回路は、どちらも試料を挟んで対向する電極対で構成されていてもよい。これによると、電圧検出部によって検出される電圧から、一方のCR並列回路である電極対に挟まれた試料と他方のCR並列回路である電極対に挟まれた試料の同一性、類似度またはそれぞれの抵抗や静電容量の違いなどを判断することができる。
【0012】
このとき、2つの電極対のうち、一方の電極対は、流体が流れる流路の上流側に配置され、他方の電極対は前記流路の下流側に配置されていてもよい。これによると、上流側の電極対に挟まれた試料と下流側の電極対に挟まれた試料は、それぞれ上流側の流体及び下流側の流体に相当する。したがって、電圧検出部によって検出される電圧から、流路の上流側と下流側で流体の特性が変化したか否かを判断することができる。
【0013】
また、前記電極対は、所定間隔をあけて配置された2枚の平板状電極からなることが好ましい。
【0014】
さらに、前記電圧検出部によって検出される電圧の特性を分析する特性分析手段と、前記特性分析手段の結果に基づき、前記試料の状態を判断する試料判断手段と、をさらに備えていることが好ましい。これによると、電圧検出部によって検出される電圧の特性から電極対に挟まれる試料の状態を判断することができる。
【0015】
このとき、前記特性分析手段は、前記電圧検出部によって検出される電圧の立ち上がり、立ち下がり、立ち上がりまたは立ち下がり状況、電圧印加時の初期電圧値、定常時における電圧値、フラットな電圧値のいずれか1つ、または、複数の組合せから特性を分析することが好ましい。
【0016】
また、前記特性分析手段によって、前記電圧検出部によって検出される電圧が、前記印加される電圧を1/2にした矩形波の電圧であると分析された場合には、前記試料判断手段が、前記2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗の両方が互いに同じであると判断することが好ましい。これによると、電圧波形を確認するだけで、容易に2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗の両方が互いに同じであると判断することができる。
【0017】
一方、回路的に行うことも可能である。本発明におけるセンサは、少なくとも一方は試料を挟んで対向する電極対である、直列に接続された2つのCR並列回路と、前記2つのCR並列回路に矩形波電圧を印加する電源回路部と、前記2つのCR並列回路の接続部の電圧を検出する電圧検出部と、前記2つのCR並列回路に印加された矩形波電圧を1/2に降圧して出力する電圧降圧回路と、前記電圧降圧回路によって1/2になった電圧と、前記電圧検出部によって検出される電圧とを比較して、その差の電圧を出力する比較回路と、前記比較回路から出力される電圧に基づいて、前記2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗の両方が互いに同じか否かを判断する判断手段と、を備えている。2つのCR並列回路の抵抗及び静電容量の両方が互いに同じであると、電圧検出部によって検出される電圧は、2つのCR並列回路の間に印加された矩形波の1/2となり、比較回路から出力される電圧はゼロとなる。また、2つのCR並列回路の抵抗や静電容量が異なっていると、比較回路から出力される電圧はゼロではなくなる。したがって、判断手段は比較回路から出力される電圧がゼロか否かによって、2つのCR並列回路の抵抗及び静電容量の両方が互いに同じか否かを容易に判断することができる。
【発明の効果】
【0018】
回路構成が簡単であるため、低コストであり、電圧検出部によって検出される電圧に基づいて試料の特性などを検査する検査モジュールとして汎用的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る検査装置の概略平面図である。
【図2】図1の等価回路図である。
【図3】電圧検出部から出力される電圧波形例である。
【図4】本実施形態に係るセンサの使用例を説明する浄水器の概略平面図である。
【図5】変形例における検査装置の等価回路図である。
【図6】オペアンプから出力される電圧波形例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、試料の特性を検査する検査装置の一部として利用するセンサに、本発明を適用したものである。なお、本実施形態においては、例えば、液体や気体などの流体を試料とし、その種類や含有物の濃度などを特性としている。
【0021】
まず、検査装置の概略構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、検査装置1は、試料の特性を検査するセンサ2と、試料13、14をそれぞれ貯留する2つの容器6、7と、を有している。
【0022】
センサ2は、2つの容器6、7にそれぞれ配置された2組の電極対11、12と、2組の電極対11、12の間の後述する電圧検出部5によって検出された電圧に基づいて種々の制御を行う制御部4と、2組の電極対11、12に矩形波の電圧を印加する矩形波発生器3と、を有している。
【0023】
電極対11は、試料13が貯留された容器6内に配置されており、導電性及び耐食性などに優れた金属材料からなり、所定の間隔をあけて配置された2枚の平板状の電極11a、11bを有している。この2枚の電極11a、11bは、試料13を挟んで対向している。電極対12は、試料14が貯留された容器7内に配置されており、導電性及び耐食性などに優れた金属材料からなり、所定の間隔をあけて2枚の平板状の電極12a、12bを有している。この2枚の電極12a、12bは、試料14を挟んで対向している。
【0024】
電極対11の一方の電極11aは、矩形波発生器3の電源端子と接続されている。矩形波発生器3の電源端子とは異なる他方の端子はグランド(GND)に接続されている。電極対11の他方の電極11bは、電極対12の一方の電極12aと接続されている。電極対12の他方の電極12bは、GNDと接続されている。
【0025】
矩形波発生器3は、+E(V)と−E(V)の矩形波電圧を交互に発生する電圧発生器である。電極対11の電極11bと電極対12の電極12aの接続部は、電圧検出部5となっており、この電圧検出部5によって検出された電圧は制御部4の後述する判断部32に出力される。ここでは、+E(V)と−E(V)の矩形波電圧を交互に発生させたが、正電圧または負電圧の片側電圧のみの矩形波電圧でもよい。
【0026】
電極対11は、2枚の電極11a、11bが所定の間隔をあけて対向して配置されていることから、この対向する間隔や電極11a、11b間に挟まれた試料の特性に応じた静電容量及び抵抗を有するCR並列回路とみなすことができる。電極対12についても、同様に電極12a、12b間の間隔や試料の特性に応じた静電容量及び抵抗を有するCR並列回路とみなすことができる。
【0027】
図2に示すように、検査装置1は、2つのCR並列回路が直列に接続され、矩形波発生器3によってこの2つのCR並列回路に矩形波電圧を印加したときの、2つのCR並列回路の接続部の電圧を電圧検出部5から検出する。そして、電圧検出部5によって検出された電圧から試料の特性を判断する。なお、以下の説明では、電極対11であるCR並列回路の抵抗をR1、コンデンサをC1とする。また、電極対12であるCR並列回路の抵抗をR2、コンデンサをC2とする。
【0028】
次に、検査装置1の制御系について説明する。図1に示す検査装置1の制御部4は、例えば、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、検査装置1の全体動作を制御するための各種プログラムやデータなどが格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)などを備え、ROMに格納されたプログラムがCPUで実行されることにより、以下に説明するような種々の制御を行う。あるいは、演算回路を含む各種回路が組み合わされたハードウェア的なものであってもよい。
【0029】
次に、電圧検出部5によって検出される出力電圧について説明する。各電極対の等価回路であるCR並列回路の静電容量及び抵抗は、2枚の電極の間に挟まれた試料の特性に応じた値となる。つまり、詳しくは後述するが、2つのCR並列回路の静電容量または抵抗の少なくとも一方が互いに異なっていると、2組の電極対がそれぞれ配置された2つの試料の特性は異なるものであると判断できる。
【0030】
矩形波発生器3から流れる全電流をiとし、抵抗R1に流れる電流をiaとし、コンデンサC1に流れる電流をibとし、抵抗R2に流れる電流をicとし、コンデンサC2に流れる電流をidとする。このとき、矩形波発生器3から印加された電圧は、1周期の半分の正電圧のみが印加されたものとする。また、t=0の電圧印加開始時には、コンデンサC1、C2には電荷がないものとする。
【0031】
すると、以下のような微分方程式及び積分方程式が得られる。
【0032】
【数1】

【0033】
この上述した4つの式をラプラス変換すると、以下のような式が成り立つ。
【0034】
【数2】

【0035】
この式をIc(s)について解くと、下記のような式となる。
【0036】
【数3】

【0037】
そして、この式をラプラス逆変換して解の導出を行うと、電圧検出部5によってグランド(GND)との間で検出される出力電圧Vpは、下記のような数式4になる。
【0038】
【数4】

【0039】
なお、上述した出力電圧Vpの導出式の特殊な事例について考察する。以下、矩形波発生回路3から印加される電圧はプラスの矩形波電圧であるとする。C1R1−C2R2>0、すなわち、C1R1>C2R2でVp(t)は立ち下がりの特性となる。逆に、C1R1−C2R2<0、すなわち、C1R1<C2R2ではVp(t)は立ち上がりの特性となる。立ち上がり、立ち下がりの傾斜程度は上記の式4におけるαに従う。C1R1−C2R2=0、すなわちC1R1=C2R2ではVp(t)は電圧値が一定のフラットな特性となる。また、t=0、すなわち、矩形波発生器3による電圧印加直後では、以下のような数式5になる。つまり、出力電圧Vp(t)は、コンデンサC1、C2の静電容量の比で示される。
【0040】
【数5】

【0041】
さらに、出力電圧Vpが定常状態となったとき(このとき、t=+∞と考える)、以下のような数式6になる。つまり、出力電圧Vp(t)は、抵抗R1、R2の抵抗の比で示される。
【0042】
【数6】

【0043】
さらに、フラットな特性となるC1R1−C2R2=0のとき、電圧値は以下のような数式7になる。特に、C1=C2であり、且つ、R1=R2のときは、Vp=1/2・Eになる。
【0044】
【数7】

または、



【0045】
上述したような式で出力電圧Vpが導出される。そこで、これらの式を用いて導出される、2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗の違いによる出力電圧Vpの波形について、図3を参照して説明する。図3では、縦軸が出力電圧であり、横軸は時間である。また、電圧検出部5から出力される電圧波形を実線で示し、矩形波発生器3から印加される矩形波の1/2の電圧波形を破線で示している。
【0046】
図3(a)に示すように、2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗の両方が互いに同じ(C1=C2、R1=R2)であると、電圧検出部5によって検出される電圧は、矩形波発生器3から印加される電圧の1/2の矩形波と同じになる。
【0047】
また、図3(b)に示すように、2つのCR並列回路の抵抗は同じ(R1=R2)で、電極対11側のCR並列回路のコンデンサC1の静電容量が、電極対12側のCR並列回路のコンデンサC2の静電容量よりも大きい(C1>C2)と、数式5によって算出された出力電圧Vpから数式6によって算出された出力電圧Vpに緩やかに過渡的に立ち下がり、定常状態となる電圧波形となる。このときの立ち下がる傾きは、数式4のαによって決定される。
【0048】
また、図3(c)に示すように、2つのCR並列回路の抵抗は同じ(R1=R2)で、電極対11側のCR並列回路のコンデンサC1の静電容量が、電極対12側のCR並列回路のコンデンサC2の静電容量よりも小さい(C1<C2)と、数式5によって算出された出力電圧Vpから数式6によって算出された出力電圧Vpに緩やかに過渡的に立ち上がり、定常状態となる電圧波形となる。このときの立ち上がる傾きは、数式4のαによって決定される。
【0049】
また、図3(d)に示すように、2つのCR並列回路の静電容量は同じ(C1=C2)で、電極対11側のCR並列回路の抵抗R1が、電極対12側のCR並列回路の抵抗R2よりも小さい(R1<R2)と、緩やかに過渡的に立ち上がり、定常状態となる電圧波形となる。このときの立ち上がる傾きは、数式4のαによって決定される。また、定常状態における出力電圧Vpは、矩形波発生器3から印加された電圧の1/2よりも大きくなる。
【0050】
また、図3(e)に示すように、2つのCR並列回路の静電容量は同じ(C1=C2)で、電極対11側のCR並列回路の抵抗R1が、電極対12側のCR並列回路の抵抗R2よりも大きい(R1>R2)と、緩やかに過渡的に立ち下がり、定常状態となる電圧波形となる。このときの立ち下がる傾きは、数式4のαによって決定される。また、定常状態における出力電圧Vpは、矩形波発生器3から印加された電圧の1/2よりも小さくなる。
【0051】
これらから、R1C1>R2C2の場合には、出力電圧Vpの電圧波形に緩やかに過渡的に立ち下がるカーブが現れ、R1C1<R2C2の場合には、出力電圧Vpの電圧波形に緩やかに過渡的に立ち上がるカーブが現れることがわかる。
【0052】
また、出力電圧Vpの電圧波形を考察することで、出力電圧Vpが矩形波発生器3から印加された電圧の1/2と同じ矩形波の電圧である場合には、2つのCR並列回路の抵抗及び静電容量の両方が互いに同じであることがわかる。
【0053】
図1にしたがって制御部4の一例を説明する。制御部4は、記憶部31と判断部32とを有している。記憶部31は、矩形波発生器3によって印加される電圧を1/2にした矩形波の電圧を時系列の電圧データとして記憶している。判断部32は、電圧検出部5によって検出された出力電圧と記憶部31に記憶された電圧とを比較し、比較結果に基づいてLOW信号もしくはHI信号を出力する。
【0054】
本実施形態において、判断部32は、出力電圧Vpが矩形波発生器3から印加された電圧の1/2と同じ矩形波の電圧である場合、すなわち、電極対11と電極対12の2つのCR並列回路の抵抗及び静電容量の両方が互いに同じであるとき、HI信号を出力する。このとき注目すべき点は、2つのCR並列回路の抵抗R1、R2または静電容量C1、C2の値が当初の値から変化してもR1=R2、C1=C2であればHI信号を出力するという点である。
【0055】
また、定常状態における出力電圧Vpが矩形波発生器3から印加された電圧の1/2と異なる電圧である場合には、2つのCR並列回路の抵抗が異なっていることがわかる。さらに、定常状態における出力電圧Vpが矩形波発生器3から印加された電圧の1/2よりも大きい場合には、抵抗R1が抵抗R2よりも小さいことがわかる。加えて、定常状態における出力電圧Vpが矩形波発生器3から印加された電圧の1/2よりも小さい場合には、抵抗R1が抵抗R2よりも大きいことがわかる。このとき、本実施形態において、判断部32はLOW信号を出力する。
【0056】
また、電圧印加直後の出力電圧Vpが矩形波発生器3から印加された電圧の1/2と異なる電圧である、または、緩やかに経時変化するカーブを有する電圧波形である場合には、2つのCR並列回路の抵抗または静電容量の少なくともいずれか一方が異なっていることがわかる。このとき、本実施形態において、判断部32はLOW信号を出力する。
【0057】
すなわち、判断部32は、2つのCR並列回路の抵抗及び静電容量の両方が互いに同じときには、HI信号を出力し、異なるときには、LOW信号を出力する。このように、判断部32は、電圧検出部5によって検出される電圧が、上述したような矩形波か否かを判断するだけで、2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗の両方が互いに同じか否かを容易に判断して、判断結果を出力することができる。
【0058】
このような2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗の相違から、以下に説明するように、各CR並列回路である電極対に挟まれた試料の特性を判断することができる。
【0059】
まず、2つの容器6、7にそれぞれ貯留された試料13、14が同じか否かを判断することができる。例えば、2つの未知の試料を2つの容器6、7にそれぞれ貯留して、判断部32から出力された信号がHI信号であるときには、2つの試料は同一であることがわかる。このとき、電極対11、12の抵抗R1、R2または静電容量C1、C2の値が当初の値から変化してもR1=R2、C1=C2であればHI信号を出力するので、試料13、14が相対的に変化してもこれらの試料が同じか否かを判断することができる。また、判断部32から出力された信号がLOW信号であるときには、2つの試料は異なっていることがわかる。
【0060】
また、2つの容器6、7にそれぞれ貯留された試料13、14のうち試料13の特性をユーザが把握しているものとする。このとき、試料13を基準試料として、試料14が試料13と同じか否かを判断することができる。判断部32からHI信号が出力された場合には、基準試料13と試料14は同じ特性であると判断することができる。また、判断部32からLOW信号が出力された場合には、基準試料13と試料14は異なる特性であると判断することができる。また、判断部32からLOW信号が出力され、仮に、試料13、14の材料は同じで、濃度が異なる場合(例えば、濃度に係る物質が電導度、つまり抵抗に変化を与える場合)には、判断部32からHI信号が出力されるように、試料14の濃度を変化させることで、試料14を基準試料13と同じ特性になるように調整することができる。
【0061】
また、図4に示すように、例えば、浄水器40の浄水処理部41の上流側と下流側にそれぞれ電極対11、12を配置して、水道水を流したときに、浄水処理部41による浄化が正常に行われているかを判断することもできる。浄水処理部41による浄化が正常に行われていると、浄水処理部41よりも上流側の水道水と下流側の浄水で異なる特性になり、判断部32からはLOW信号が出力される。しかしながら、浄水処理部41内部のフィルターの劣化や目詰まりなどで、浄化が正常に行われていないと、浄水処理部41よりも上流側の水道水と下流側の浄水の特性が変化せず同じとなり、判断部32からはHI信号が出力される。この判断部32からの信号で浄水部41が正常に動作しているか否かを判断することができる。このとき、浄水処理部41の上流側の水道水と下流側の浄水を相対比較しているだけなので、電極対11、12の抵抗R1、R2または静電容量C1、C2の値が当初の値から変化してもR1=R2、C1=C2であればHI信号を出力し、水質や水温などの影響を受けずに判断することができる。
【0062】
また、本実施形態における検査装置1は、直列に接続された2つのCR並列回路のうち、いずれか一方を電極対ではなく、抵抗器とコンデンサを並列に接続した電気回路により構成することが可能である。そして、このとき、この電気回路の抵抗器の抵抗値とコンデンサの静電容量は固定であってもよいし、可変であってもよい。それぞれの場合の検査装置の使用例について説明する。
【0063】
まず、電気回路の抵抗器の抵抗値とコンデンサの静電容量が固定の場合について説明する。例えば、ある試料を挟んだ電極対からなるCR並列回路の抵抗や静電容量が分かっているものとする。そして、その抵抗や静電容量を一方の電極対ではないCR並列回路の固定された抵抗及び静電容量とすることで、電圧検出部5によって検出される電圧から、判断部32により他方のCR並列回路の電極対の間に挟まれた試料の特性が、一方のCR並列回路の抵抗や静電容量に対応した特性と同じか否かを判断することができる。また、判断部32からの出力信号がHI信号となるように、他方のCR並列回路の電極対の間に挟まれた試料の特性を調整することで、他方のCR並列回路の電極対の間に挟まれた試料の特性を一方の電極対からなるCR並列回路の抵抗や静電容量に対応する特性に調整することができる。
【0064】
次に、電気回路の抵抗器の抵抗値とコンデンサの静電容量が可変の場合について説明する。例えば、一方のCR並列回路の電極対の間に挟まれた試料の特性に応じた抵抗や静電容量がわからない場合に、他方の電極対ではないCR並列回路の抵抗及び/または静電容量を変化させて、判断部32からの出力信号がHI信号になるようにする。そして、判断部32からの出力信号がHI信号になると、2つのCR並列回路の静電容量や抵抗が同じとなったと判断することができ、一方のCR並列回路の電極対の間に挟まれた試料の特性は、他方のCR並列回路の抵抗及び静電容量に対応した特性と同じになる。これにより、未知の試料の特性に対応したCR並列回路の抵抗や静電容量を把握することができる。
【0065】
本実施形態の検査装置1によると、上述したように試料の特性をさまざまな方法により検査することができる。また、検査装置1のセンサ2は、回路構成が簡単であるため、低コストである。したがって、このセンサ2は、低コストであり、電圧検出部5によって検出される電圧に基づいて試料の特性などを検査する検査モジュールとして汎用的に利用することができる。
【0066】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0067】
上述した実施形態においては、制御部4は、記憶部31と判断部32とを有し、上述したようにLOW信号もしくはHI信号を出力するものであるが、以下のような構成であってもよい。図1の制御部4で特性分析手段及び試料判断手段を備えているものとする。上述した実施形態では、特徴的な例である出力電圧Vpが矩形波発生器3から印加された電圧の1/2である場合(C1=C2、R1=R2)との比較から述べたものであるが、以下についても同様に試料特性の判断をすることができる。
【0068】
特性分析手段は、出力電圧Vpの立ち下がりの特性、立ち上がりの特性、立ち上がりまたは立ち下がりの傾斜程度、電圧印加直後、定常状態、フラットな特性を分析するものである。試料判断手段は、特性分析手段の結果に基づき試料の静電容量と抵抗の特性を判断するものである。具体的には、特性分析手段が、出力電圧Vpの立ち下がりの特性(C1R1>C2R2)、立ち上がりの特性(C1R1<C2R2)、立ち上がりまたは立ち下がりの傾斜程度(α:傾斜度合い 急峻・緩傾性)、電圧印加直後(t=0)、定常状態(t=+∞)、フラットな特性(C1R1−C2R2=0、または、C1=C2、R1=R2)から波形パターンを分別する。
【0069】
特性分析手段による分別結果が立ち下がりの特性であれば、試料判断手段は、C1R1側試料の静電容量と抵抗の積が、C2R2側試料の静電容量と抵抗の積より大きい(C1R1>C2R2)と判断する。また、特性分析手段による分別結果が立ち上がりの特性であれば、試料判断手段は、C1R1側試料の静電容量と抵抗の積が、C2R2側試料の静電容量と抵抗の積より小さい(C1R1<C2R2)と判断する。また、試料判断手段は、電圧印加直後(t=0)の検出電圧値より、両側の試料の静電容量比(C1/C1+C2)を判断し、定常状態(t=+∞)の検出電圧値より、両側の試料の抵抗比(R2/R1+R2)を判断する。さらに、試料判断手段は、検出電圧値がフラットな特性であれば、両側の試料の静電容量と抵抗の積が同じ(C1R1−C2R2=0)であると判断し、特に検出電圧値が1/2であるフラットな特性であれば、両側の試料の静電容量が同じであり、且つ、抵抗が同じである(C1=C2、R1=R2)と判断する。
【0070】
加えて、試料判断手段は、電圧印加直後の電圧値が1/2Eであれば、両側の試料の静電容量が同じ(C1=C2)であること、及び、両側の試料の抵抗比(R2/R1+R2)を判断し、定常状態の電圧値が1/2Eであれば、両側の試料の抵抗が同じ(R1=R2)であること、及び、両側の試料の静電容量比(C1/C1+C2)を判断する。さらに、立ち上がりまたは立ち下がりの傾斜程度(α:傾斜度合い 急峻・緩傾性)と、電圧印加直後(t=0)の検出電圧値と、定常状態(t=+∞)の検出電圧値により、仮に、電圧印加直後(t=0)の検出電圧の分析で静電容量の比(C1/C1+C2)、及び、定常状態(t=+∞)の検出電圧値の分析で抵抗の比(R2/R1+R2)が同じ場合であっても、立ち上がりまたは立ち下がりの傾斜程度(α:傾斜度合い 急峻・緩傾性)により、静電容量及び抵抗のそれぞれの値が異なれば、試料判断手段は、両側の試料について静電容量と抵抗が異なると判断する。
【0071】
このように、特性分析手段により分析される電圧の立ち上がり、立ち下がり、立ち上がりまたは立ち下がり状況、電圧印加時の初期電圧値、定常時における電圧値、フラットな電圧値のいずれか一つ、または、複数の組合せから、試料判断手段は、試料の各種特性を判断することができる。
【0072】
2つのCR並列回路のうち、片側が電極対ではないCR並列回路であり、抵抗及び静電容量が固定である構成、2つのCR並列回路のうち、片側が電極対ではないCR並列回路であり、抵抗及び静電容量が可変である構成、または2つのCR並列回路は、どちらも試料を挟んで対向する電極対である構成としてもよい。これら各構成によれば、上述したように、両側のCR並列回路の静電容量と抵抗の同一性(C1=C2、R1=R2)の判断のみではなく、類似度またはそれぞれの抵抗や静電容量の違いなどを(C1R1>C2R2)、(C1R1<C2R2)、(α)、(C1/C1+C2)、(R2/R1+R2)、(C1R1−C2R2=0)のいずれかまたはその組合せから判断する。
【0073】
実施形態において上述した浄水器例においても、特性分析手段及び試料判断手段を備えていれば以下のことが言える。ここで、水道水と浄水処理した水の特性について補足する。一般的に、浄水処理部41の上流側の水道水は、下流側の浄水に比べて、誘電率及び導電率が高い。すなわち、浄化が正常に行われている場合には、上流側の電極対11であるCR並列回路のコンデンサC1の静電容量は、下流側の電極対12であるCR並列回路のコンデンサC2の静電容量よりも大きい。また、上流側の電極対11であるCR並列回路の抵抗R1は、下流側の電極対12であるCR並列回路の抵抗R2よりも小さい。
【0074】
仮に、浄水部41のフィルターが2つあり、一方のフィルターが水道水の誘電率を変化させるものであり、他方のフィルターが水道水の導電率を変化させるものであるとする。このとき、2つのCR並列回路の静電容量と抵抗のどちらが同じか把握できれば、どちらのフィルターが劣化しているか把握することも可能である。2つのCR並列回路の静電容量が同じであれば、一方のフィルターが劣化していると把握できる。また、2つのCR並列回路の抵抗が同じであれば、他方のフィルターが劣化していると把握できる。
【0075】
また、本実施形態においては、電圧検出部5によって検出された出力電圧Vpと記憶部31に記憶された矩形波発生器3によって印加された電圧の1/2の電圧とを判断部32により比較していたが、比較結果を出力する回路を構成し、この回路から出力された比較結果を判断部32に入力してもよい。例えば、図5に示すように、矩形波発生器3のプラス端子をオペアンプOP1の非反転端子に接続し、電圧検出部5によって検出された電圧をボルテージフォロアとして機能するオペアンプOP2の非反転端子に接続する。そして、オペアンプOP1の出力を2つの抵抗R3で1/2の電圧とした出力を、オペアンプOP2の反転端子に接続する。そして、このオペアンプOP2の出力電圧Voを判断部32に出力する。
【0076】
オペアンプOP2から出力された出力電圧Voの出力波形について図6を参照して説明する。図6では、縦軸が出力電圧Voであり、横軸は時間である。図6(a)に示すように、2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗がほぼ同じであれば、オペアンプOP2から出力される出力電圧Voはほぼゼロとなる。また、図6(b)に示すように、2つのCR並列回路の静電容量または抵抗の少なくとも一方が異なれば、オペアンプOP2から出力される出力電圧Voはゼロから大きく離れた値となる。したがって、オペアンプOP2から出力される出力電圧Voがゼロか否かによって、2つのCR並列回路の抵抗や静電容量が同じか否かを容易に検出することができる。なお、本実施形態におけるオペアンプOP1、オペアンプOP2、2つの抵抗R3からなる回路が、本発明における電圧降圧回路と比較回路とを組み合わせた回路に相当する。
【0077】
また、マイクロコンピュータ(マイコン)でCとRを可変調整して試料の絶対的な特性値を計算、表示する測定器として構成してもよい。2つのCR並列回路のうち、一方のCR並列回路のみが電極対であり、電極対ではない他方のCR並列回路の抵抗及び静電容量が可変である構成で、他方のCR並列回路の可変抵抗と可変コンデンサをマイコンにより制御して電圧検出部5によって検出された出力電圧を記憶部31に記憶している、矩形波発生器3によって印加される電圧を1/2にした矩形波の電圧を時系列の電圧データと同じになるように判断部32へフィードバック処理を行う。これにより、試料の抵抗値と静電容量値を得ることが可能となる。ここでは、他方のCR並列回路の抵抗及び静電容量を双方とも可変させ制御させたが、片側のいずれかのみを可変制御させ、他方を固定としてもよい。
【0078】
また、電極対の形状は、平板状に限らず、所定の間隔をあけて、CR並列回路を構成可能な形状であれば、いかなる形状であってもよい。
【0079】
さらに、試料とは、CR並列回路である電極対の間に挟むことで、何も挟んでない場合に比べてCR並列回路の静電容量や抵抗が異なる固有の値となる物質であれば、流体に限らず、何であってもよい。
【0080】
また、試料の特性とは、試料の種類や含有物の濃度に限らず、例えば、固体であれば大きさや密度などCR並列回路の静電容量や抵抗が可変する要因となるものであれば、何であってもよい。
【0081】
さらに、検査装置1が制御部4を備えずに、電圧検出部5によって検出された出力電圧をオシロスコープなどでモニタリングし、オシロスコープに表示された波形をユーザが観測して試料の特性を判断してもよい。このような場合においても、電圧検出部5によって検出された出力電圧が、矩形波となっているか否かは視覚的に容易に判断可能であり、2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗の両方が互いに同じか否かを容易に判断することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 検査装置
2 センサ
3 矩形波発生器
4 制御部
5 電圧検出部
11、12 電極対
13、14 試料
32 判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された2つのCR並列回路と、
前記2つのCR並列回路に矩形波電圧を印加する電源回路部と、
前記2つのCR並列回路の接続部の電圧を検出する電圧検出部と、を備えており、
前記2つのCR並列回路のうち少なくとも一方の前記CR並列回路は、試料を挟んで対向する電極対であることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記2つのCR並列回路のうち、一方の前記CR並列回路のみが前記電極対であり、前記電極対ではない他方の前記CR並列回路の抵抗及び静電容量が固定されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記2つのCR並列回路のうち、一方の前記CR並列回路のみが前記電極対であり、前記電極対ではない他方の前記CR並列回路の抵抗及び静電容量が可変であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記2つのCR並列回路は、どちらも試料を挟んで対向する電極対で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
2つの電極対のうち、一方の電極対は、流体が流れる流路の上流側に配置され、他方の電極対は前記流路の下流側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記電極対は、所定間隔をあけて配置された2枚の平板状電極からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記電圧検出部によって検出される電圧の特性を分析する特性分析手段と、
前記特性分析手段の結果に基づき、前記試料の状態を判断する試料判断手段と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに1項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記特性分析手段は、前記電圧検出部によって検出される電圧の立ち上がり、立ち下がり、立ち上がりまたは立ち下がり状況、電圧印加時の初期電圧値、定常時における電圧値、フラットな電圧値のいずれか1つ、または、複数の組合せから特性を分析することを特徴とする請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記特性分析手段によって、前記電圧検出部によって検出される電圧が、前記印加される電圧を1/2にした矩形波の電圧であると分析された場合には、前記試料判断手段が、前記2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗の両方が互いに同じであると判断することを特徴とする請求項7に記載のセンサ。
【請求項10】
少なくとも一方は試料を挟んで対向する電極対である、直列に接続された2つのCR並列回路と、
前記2つのCR並列回路に矩形波電圧を印加する電源回路部と、
前記2つのCR並列回路の接続部の電圧を検出する電圧検出部と、
前記2つのCR並列回路に印加された矩形波電圧を1/2に降圧して出力する電圧降圧回路と、
前記電圧降圧回路によって1/2になった電圧と、前記電圧検出部によって検出される電圧とを比較して、その差の電圧を出力する比較回路と、
前記比較回路から出力される電圧に基づいて、前記2つのCR並列回路の静電容量及び抵抗の両方が互いに同じか否かを判断する判断手段と、を備えていることを特徴とするセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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