説明

センサ

【課題】物体に作用する力を検出する新規な構造のセンサを提供する。
【解決手段】センサ1は、対向して設けられたベース2、テーブル3と、これらの間を連結するパラレルリンク機構4とを備えている。パラレルリンク機構4の各リンク機構5は、ロッド部9とアーム部6とを有して構成されている。ベース2、テーブル3よりも剛性が低く、弾性変形するアーム部6は、ベース2で片持ち支持されている。ベース2、テーブル3よりも剛性が低く、弾性変形するロッド部9は、一端がアーム部6と直接接続され、他端がテーブル3と直接接続されている。このセンサ1は、アーム部6の変形を検出する歪み計11を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関し、特に、物体が受ける外力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出する力覚センサや、物体が受ける慣性力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出する運動センサなど、物体に力が作用したかを検出するセンサに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
力覚センサは、例えば、ロボットハンドにおいて人間の指先の触覚を実現するために用いられている。また、運動センサである加速度センサは、質量を持つ物体の加速度を検出でき、例えば、ロボットの姿勢制御や、自動車のエアバッグの衝突検知などに用いられている。また、運動センサである角速度センサ(例えばジャイロセンサ)は、質量を持つ物体が回転する角速度を検出でき、例えば、産業用ロボットや、自動車の横転検出などに用いられている。
【0003】
これら力覚センサおよび運動センサに関する技術が、特許第4389001号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1には、対向して設けられた一対の対向物(ベースおよびテーブル)と、該一対の対向物間を連結するパラレルリンク機構とを備えたセンサが記載されている。このパラレルリンク機構の各リンク機構は、一端がベースに固定されたアームと、アームの他端と接続された2自由度の軸受けと、一端がこの2自由度の軸受けと接続されたロッドと、ロッドの他端と接続され、テーブルに固定された3自由度の軸受けとを備えている。このセンサによれば、テーブルに作用する力を、アームが一方向に変形した変形量から検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4389001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような軸受けとして、例えば、鋼球を球面で保持し、多自由度で可動できる球面軸受けを用いることができる。球面軸受けは、軸部(ロッド)にジャーナルとしての鋼球が連結され、この鋼球を包み込むようにレースが設けられたものである。しかしながら、このような球面軸受けでは、軸部からの力がジャーナルに伝わると、ジャーナルとレースとの摺動抵抗は増加し、力のロスが発生してしまう。また、ジャーナルとレースとの間には内部すきまが存在し、この内部すきまによってガタを発生させてしまう。
【0006】
また、このような球面軸受けの他に、ジャーナルとしての鋼球(太陽球)とレースの間に小さな鋼球(遊星球)を入れて摺動抵抗を抑えた球面軸受けとして、転がり球面軸受けがある。しかしながら、転がり球面軸受けは、鋼球同士が点接触であるため衝撃に弱く、転がるためには内部すきまを完全になくすことはできない。すなわち、内部すきまによってガタを発生させてしまう。また、転がり球面軸受けであっても、摺動箇所があるため、摺動抵抗を完全に除去することはできない。
【0007】
このように実際には、軸受けに摺動抵抗があるため、特許文献1に記載のようなセンサでは、テーブルに加わった力を取り除いたとき、完全に力を加える前の状態に戻らず、ヒステリシスが生じてしまう。また、軸受けにガタがあるため、テーブル位置が固定されず、テーブルにあそびが生ずるおそれもある。このようなヒステリシスやテーブルにあそびが生ずる場合、センサの検出精度は低下してしまう。
【0008】
本発明の目的は、物体に力が作用したかを検出する新規な構造のセンサを提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明に係るセンサは、対向して設けられた一対の対向物と、該一対の対向物間を連結するパラレルリンク機構とを備えている。前記パラレルリンク機構の各リンク機構は、アーム部およびロッド部を有して構成されている。前記一対の対向物よりも剛性が低く、弾性変形する前記アーム部は、前記一対の対向物の一方で片持ち支持されている。前記一対の対向物よりも剛性が低く、弾性変形する前記ロッド部は、一端が前記アーム部と直接接続され、他端が前記一対の対向物の他方と直接接続されている。前記アーム部の変形または変位を検出する検出部を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。物体に力が作用したかを検出する新規な構造のセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1におけるセンサの正面図である。
【図2】図1に示すセンサの右側面図である。
【図3】図1に示すセンサの左側面図である。
【図4】図1に示すセンサの上面図である。
【図5】図1に示すセンサの下面図である。
【図6】図1に示すセンサの俯瞰図である。
【図7】図1に示すセンサの演算部の回路構成図である。
【図8】図1に示すセンサにFx成分の力を作用させたときの状態図である。
【図9】図1に示すセンサにFy成分の力を作用させたときの状態図である。
【図10】図1に示すセンサにFz成分の力を作用させたときの状態図である。
【図11】図1に示すセンサにMx成分の力を作用させたときの状態図である。
【図12】図1に示すセンサにMy成分の力を作用させたときの状態図である。
【図13】図1に示すセンサにMz成分の力を作用させたときの状態図である。
【図14】図1に示すセンサに6成分の力を作用させたときの各検出部で検出したアームの撓み方向の結果表である。
【図15】図1に示すセンサの一測定条件の表である。
【図16】図15に示す測定条件における測定結果表である。
【図17】本発明の実施形態2におけるセンサの側面図である。
【図18】本発明の実施形態3におけるセンサの側面図である。
【図19】本発明の実施形態4におけるセンサの上面図である。
【図20】本発明の実施形態5におけるセンサの上面図である。
【図21】本発明の実施形態6におけるセンサの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
また、実施形態で示す構成要素は、本発明において必ずしも必須のものとは限らない。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0014】
(実施形態1)
まず、本実施形態におけるセンサ1の構造について図1〜図7を参照して説明する。図1は本実施形態におけるセンサ1の正面図、図2はセンサ1の右側面図、図3はセンサ1の左側面図、図4はセンサ1の上面図、図5はセンサ1の下面図、図6はセンサ1の俯瞰図である。また、図7はセンサ1の演算部12の回路構成図である。図1などでは、三次元空間の直交座標系(x軸、y軸、z軸)にセンサ1が位置している。以下では、xy面方向を水平方向とし、z軸方向を鉛直方向として説明する。なお、図4、図5では、説明を明解にするために、一部を透視して破線で示している。
【0015】
本実施形態におけるセンサ1は、対向して設けられた一対の対向物2、3と、一対の対向物2、3間を連結(接続)するパラレルリンク機構4とを備えている。パラレルリンク機構4は、並列に各リンク機構5を制御してテーブル3の動きを特定することとなる。センサ1は、パラレルリンク機構4が6つのリンク機構で構成された場合、一対の対向物2、3のうち、一方を固定側、他方を可動側としたとき、一方に対して他方が6自由度(並進3自由度、回転3自由度の計6自由度)を有する。
【0016】
以下では、説明を明解にするために、一対の対向物2、3のうち、固定側を対向物2(物体)としてこれをベース2といい、可動側を対向物3(物体)としてこれをテーブル3という。対向して設けられたベース2およびテーブル3と、これらを6つのリンク機構5で連結するパラレルリンク機構4とを備えたセンサ1は、テーブル3の6自由度により、x軸、y軸、z軸の3軸方向の力成分Fx、Fy、Fzと、その3軸回りのモーメント成分Mx、My、Mzの計6成分を検出することができる。
【0017】
なお、リンク機構5が6つ未満であるとベース2、テーブル3を拘束する力が弱くなってパラレルリンク機構4の形が崩れてしまうので、リンク機構5は、6つ以上であれば良い。また、テーブル3に作用する6成分の力を検出するためには、リンク機構5は、6つ以上であれば良い。
【0018】
センサ1を構成するベース2は、例えばステンレス鋼(例えばSUS304)などの金属などから構成され、センサ1において高い剛性を有する物体(対向物)である。ベース2は、理論的にはセンサ1において剛体となるが、測定荷重精度に対して影響を与えない剛性をもっていれば良い。
【0019】
このベース2は、平板2a(例えば円形状の円板)を含んで構成されている。また、ベース2は、図5に示すように、円形状の平板2aの周縁に沿うように分割され、その平面からベース3側へ突起(図1参照)する複数(ここでは3個)の突起部2bを含んで構成されている。この突起部2bは、平面視(水平面を視ている)において円弧状となっている。これら平板2aと複数の突起部2bとは直接接続されるように、一体成形されている。
【0020】
テーブル3は、例えばステンレス鋼(例えばSUS304)などの金属などから構成され、センサ1において高い剛性を有する物体(対向物)である。テーブル3は、理論的にはセンサ1において剛体となるが、測定荷重精度に対して影響を与えない剛性をもっていれば良い。このテーブル3は、平板3a(例えば円形状の円板)を含んで構成されている。
【0021】
これら円形状のベース2とテーブル3は、平面視で同心円となるように、対向して設けられている(図4、図5参照)。そして、これらベース2とテーブル3との間に、パラレルリンク機構4が設けられている(図1参照)。
【0022】
パラレルリンク機構4の各リンク機構5は、アーム部6およびロッド部9を有して構成されている。ここで、アーム部6は、ベース2で片持ち支持され、ロッド部9は、一端がアーム部6と直接接続され、他端がテーブル3と直接接続されている。以下に、リンク機構5について具体的に説明する。
【0023】
まず、リンク機構5を構成するアーム部6の構成について説明する。センサ1は、パラレルリンク機構4の各リンク機構5のそれぞれに設けられ、ベース2で片持ち支持された複数(ここでは6本)のアーム部6を備えている。言い換えると、アーム部6は、リンク機構5を構成する一部となる。
【0024】
アーム部6は、図1に示すように、ベース2とテーブル3とが対向する方向(鉛直方向)と直交する方向(水平方向)に伸びるように、ベース2で片持ち支持されている。ベース2とテーブル3との間に設けられるパラレルリンク機構4のアーム部6を同一水平面内に設けることで、センサ1の薄型化を図ることもできる。
【0025】
アーム部6は、アーム基部7により構成されている。このアーム基部7は、図4に示すように、平面視円弧状に形成されている。本実施形態では、アーム基部7は、平面視円形状のベース2を3等分(図4では境界として軸Aを示す。)するようにベース2の平板2aの周縁に沿うように3つ設けられている。
【0026】
このアーム基部7は、ベース2の突起部2b上で支持されて設けられている(図1参照)。より具体的には、平面視円弧状の突起部2bより長い円弧のアーム基部7は、その中央部が突起部2bと接続されて、ベース2に支持されて設けられている。アーム基部7とベース2の突起部2bとは、一体成形もしくはネジ止め、溶接によって剛接合され、直接接続されている。
【0027】
突起部2bで支持された平面視円弧状のアーム基部7の両端部が、アーム部6として構成される。すなわち、1つのアーム基部7から2本のアーム部6が構成される。このため、アーム部6は、一端(先端)が自由端となり、ベース2の突起部2b側の他端(基端)が固定端となり、センサ1においてベース2に片持ち支持されて延在している。このようにして、アーム部6は、ベース2に直接接続されている。
【0028】
アーム部6(アーム基部7)は、例えば、リン青銅などの金属などから構成され、ベース2、テーブル3よりも剛性が低く、弾性変形する板バネ形状の物体となっている。アーム部6は、センサ1において弾性体となるが、荷重範囲内で塑性変形が起こらなければ良い。また、アーム部6の形状から剛性を調整し、アーム部6が弾性変形するようにしても良い。例えば、ベース2、テーブル3と同じ材料(例えばステンレス鋼)でアーム部6を構成する場合に有効で、形状を細くしたり、薄くしたりしてベース2、テーブル3よりも剛性を低くすることができる。
【0029】
次に、リンク機構5を構成するロッド部9の構成について具体的に説明する。センサ1は、パラレルリンク機構4の各リンク機構5のそれぞれに設けられ、アーム部6の先端とテーブル3とを連結する複数(ここでは6本)のロッド部9を備えている。言い換えると、ロッド部9は、リンク機構5を構成する一部となる。
【0030】
ロッド部9は、図1に示すように、水平方向に伸びるアーム部6の先端からテーブル3へ斜めに(鉛直方向と交差して)伸びるように、アーム部6上に起立してテーブル3へ連結(接続)されている。ロッド部9の一端とアーム部6の先端や、ロッド部9の他端とテーブル3は、例えば溶接などの接合によって剛接合されている。このため、ロッド部9は、両端が固定端として、センサ1において両持ち支持されて延在している。このようにして、ロッド部9は、一端がアーム部6と直接接続され、他端がテーブル3と直接接続されている。
【0031】
ロッド部9は、図4に示すように、一端が接続点c1でアーム部6の先端であって上面(テーブル3側の面)と直接接続され、他端が接続点c2でテーブル3の下面(ベース2側の面)と直接接続されている。軸Aを挟む接続点c1は軸Aと所定の角度θ1をなし、軸Aを挟む接続点c2は軸Aと所定の角度θ2(≠θ1)をなしている。このように接続点c1と接続点c2とは平面視においてずれており、ロッド部9は一端と他端が平面視で重ならないようにずれて設けられている。
【0032】
一端と他端が平面視で重なる場合は、ロッド部9がアーム部6の先端からテーブル3へ鉛直方向に平行に伸びていることになるが、テーブル3に作用する力のMz成分が検出し難くなってしまう。そこで、ロッド部9は一端と他端が平面視で重ならないようにずれて設けられ、具体的には、アーム部6の先端からテーブル3へ斜めに伸びるようにアーム部6上に起立してロッド部9が設けられ、テーブル3へ連結されている。
【0033】
ロッド部9は、例えばリン青銅などの金属などから構成され、ベース2、テーブル3よりも剛性が低く、弾性変形する柱状(円柱状であっても良い)の物体となっている。ロッド部9は、センサ1において弾性体となるが、荷重範囲内で塑性変形が起こらなければ良い。また、ロッド部9の形状から剛性を調整し、ロッド部9が弾性変形するようにしても良い。例えば、ベース2、テーブル3と同じ材料(例えばステンレス鋼)でロッド部9を構成する場合に有効で、形状を細くしたり、薄くしたりしてベース2、テーブル3よりも剛性を低くすることができる。
【0034】
次に、リンク機構5の動作について、テーブル3に力が作用し(荷重され)、テーブル3が倒れたり、捩れたりする場合を説明する。まず、テーブル3に力が作用すると、テーブル3と直接接続されたロッド部9は、テーブル3から倒れや捩れ成分の力を受けて弾性変形し、倒れたり捩れたりして動く。続いて、ロッド部9が動くと、ロッド部9と直接接続されたアーム部6は、ロッド部9からの力を受け、弾性変形する。
【0035】
ここで、アーム部6には、ロッド部9では取り切れなかった倒れや捩れ成分の力が作用する場合もある。この場合、アーム部6には、ロッド部9から、鉛直方向に押したり、引っ張ったり、水平方向に押したり、引っ張ったりする力が作用することも考えられる。この点、センサ1では、アーム部6がベース2で片持ち支持され、このアーム部6の自由端側でロッド部9が直接接続されているので、ロッド部9は自身が延在する方向の成分の力をアーム部6に伝え易い構成となり、この力を受けてアーム部6は一方向に撓み易い構成となっている。すなわち、アーム部6は、一方向に変形、変位し易い構成となっている。
【0036】
したがって、リンク機構5では、ロッド部9から力を受けて弾性変形したアーム部6は、主として一方向に撓んで、変形、変位する。本実施形態では、アーム部6は、水平方向に延在するようにベース2で片持ち支持されているので、鉛直方向に撓み易くなっており、すなわち鉛直方向に変形、変位し易くなっている。
【0037】
このアーム部6の変形、変位特性は、線形(比例)とみなすことができる。このため、例えばアーム部6に倒れや捻れの成分の力が発生したとしても、後述するキャリブレーション機能による補正を行うことで、これらの成分の力をキャンセルして一方向成分(撓み成分)の力を取り出すことができる。すなわち、センサ1は、キャリブレーション機能を備えることで、テーブル3に作用する力の検出精度を向上することができる。
【0038】
このように、アーム部6が倒れたり、捩れたりした場合でも、これらの方向をキャンセルして撓み方向(一方向)の成分の力が取り出せる検出方法(キャリブレーション機能)を備えていることが好ましい。言い換えると、キャリブレーション機能により一方向に撓むようにみなすことができるアーム部6であることが好ましい。
【0039】
本実施形態では、アーム部6をさらに一方向(鉛直方向)に撓み易くするために、アーム部6がロバーバル構造8を有している。具体的には、平面視円弧状のアーム部6の外側面と内側面とを水平方向に刳り貫いて貫通する2つの貫通孔が重なった開口部がアーム部6に形成されている。
【0040】
このように水平方向に貫通する開口部の周辺が薄くなって構成されたロバーバル構造8には、鉛直方向の一方向に撓み易くなり、倒れや捩れ方向には強いといった特性がある。このため、ロバーバル構造8を有するアーム部6は、鉛直方向でない方向の剛性が維持され、鉛直方向の剛性が低くなる。これにより、アーム部6は、より鉛直方向に撓む、すなわち一方向により変形、変位するように構成される。
【0041】
本実施形態におけるセンサ1は、鉛直方向(一方向)に撓むアーム部6の変形を検出する検出部として歪み計11を備えている。歪み計11は、最も変形するアーム部6のロバーバル構造8の周辺(刳り貫かれて薄くなった部分)に設けられている。これにより、アーム部6の変形量をより高精度に検出することができる。
【0042】
歪み計11は、アーム部6の上面(テーブル3と対向する面)に設けられても良いが、その上面にはロッド部9が連結されているため、取り付けるスペースを考慮してアーム部6の下面(ベース2と対向する面)に設けている。なお、ロバーバル構造8を有しないアーム部6(例えば単なる板バネ形状)の場合では、最も変形するアーム部6の基端側に歪み計11を設けることが好ましい。
【0043】
センサ1では、検出部として歪み計11の代わりに、変位計を用いても良い。ベース2で片持ち支持されたアーム部6は、弾性変形により、例えばベース2に対して変位もするからである。変位計は、鉛直方向(一方向)に撓むアーム部6の変位を検出する検出部となる。この変位計は、ベース2の上面(テーブル3と対向する面)上であって各アーム部6の下方にそれぞれ設けられる。具体的には、変位計は、最も変位するアーム部6の先端の周辺に設けられることで、アーム部6の変位(距離)を高精度に検出することができる。
【0044】
ここで、図8〜図13のそれぞれに、Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzの各成分の力をテーブル3に作用させた(荷重した)ときのセンサ1の状態を示す。また、図14に、テーブル3に各成分を作用させたときの各歪み計11(CH1〜CH6の配置は図5を参照)で検出したアーム部6の撓み方向の結果を示す。図14では、アーム部6が水平面内にあるときを基準(初期状態)とし、テーブル3に力を作用させた状態において、水平面よりも鉛直方向上側に撓んだときを「+」、鉛直方向下側に撓んだときを「−」として示している。なお、図8〜図13では、説明を明解にするために、例えば図1で示した歪み計11や演算部12を図示していない。
【0045】
図14に示す結果は、内部すきまやガタがなく、摺動抵抗のない軸受けを用いて、テーブルとアームとを連結するロッドを剛体とした、理想的なセンサのシミュレーション結果と一致する。言い換えると、理想的な軸受けを備えたセンサでも、本実施形態のような軸受けを備えないセンサ1でも、アーム部6の撓み方向は一致する。
【0046】
したがって、各歪み計11(CH1〜CH6)により、鉛直方向に対して上側「+」または下側「−」を少なくとも検出できれば、テーブル3に作用する力がどの成分のものかを区別することができる。このように、本実施形態によれば、テーブル3(物体)にどのような力が作用したかを検出する新規な構造のセンサを提供することができる。
【0047】
さらに、本実施形態におけるセンサ1は、歪み計11による検出値(変形量)を参照してテーブル3に作用する力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を算出(検出)する演算部12(回路基板)を備えている。歪み計11と演算部12とは配線により電気的に接続されている。この演算部12は、ベース2の裏面(テーブル3と対向する面とは反対の面)に設けられている。なお、演算部12と歪み計11とは配線により接続されるので、例えば別に設けたフレームに演算部12を設けることもできる。
【0048】
図7に、演算部12の回路構成の一例を示す。演算部12では、各アーム部6の変形量を検出した各歪み計11(CH1〜CH6)からの信号(アナログ信号)を各アンプ13(AMP1〜AMP6)によって増幅した後、そのアナログ信号をA/D変換器14でデジタル信号に変換し、CPU15に送信する。CPU15では、メモリ16からの定数を参照して、キャリブレーションを行い、テーブル3に作用する6成分(Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mz)を算出する。このように演算部12は、歪み計11からの検出値を参照して補正するキャリブレーション機能を有している。これにより、センサ1のテーブル3に作用する力の検出精度を向上することができる。演算部12による結果は、CPU15からデジタル出力とし、またD/A変換器17を用いてアナログ出力として出力される。
【0049】
ところで、アーム部6の変形、変位を一方向で検出するようなセンサ1の構造であっても、誤差成分により他軸出力が生じてしまうことが考えられる。ここでの誤差成分とは、歪み計11(検出部)の測定誤差や、構成部品の加工精度、一体成形することにより理想軸受けとの特性のズレなどによる特性のズレとを指す。
【0050】
例えば、Fx成分のみをテーブル3に作用させた場合、本来であれば、検出特性としては、他の成分は出力(他軸出力)が0であり、Fx成分のみが線形(比例)で出力されなければならない。しかしながら、力成分Fxの他にも、他の成分による出力、すなわち他軸出力が生じてしまう。また、他の成分のみをテーブル3に作用させた場合も同様に、他軸出力が生じてしまう。
【0051】
そこで、他軸出力も線形で得られることに着目し、本実施形態におけるセンサ1では、キャリブレーション行列による補正を行うことで、他軸出力を抑え、本来の出力を得ることとしている。以下では、力の算出および補正方法について説明する。
【0052】
センサ1においてアーム部6の変形から力を算出するには、次式の計算が必要になる。ここでf、J、dθは行列を表している。fはセンサ1へ働く力の6成分、Jはセンサ1の構造によって決まる係数行列、dθは力が働いた時のアーム変位角(変形量)である。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【0053】
本実施形態では、実試験データを基にキャリブレーションを行い、力の6成分を得る手法を示す。キャリブレーション機能の実施として、例えば、1軸ずつ6軸の定格荷重におけるアーム部6の変形量を測定する。図15に測定条件を示し、図16に測定結果を示す。図15に示す測定条件1〜6によって、図16では各歪み計11(検出器)のそれぞれ(CH1〜CH6)で検出されるアーム部6の変形量の測定結果を示している。なお、図15の数値である「100」は定格荷重に対する割合(単位[%])を示している。
【0054】
これら図15に示す測定条件と図16に示す測定結果から、次式を得ることができる。
【数5】

【0055】
これから、キャリブレーション行列Cを算出すれば良い。すなわち、キャリブレーション行列Cは式(5)の両辺へ測定結果の逆行列を掛けることで求めることができる。
【数6】

【0056】
得られたキャリブレーション行列Cを用いて、センサ1の演算部12によって、各歪み計11からの検出値に対してキャリブレーションを行う。これにより、例えば、Fx成分のみをテーブル3に作用させた場合、他軸出力はキャンセルされて、Fx成分のみが線形で出力されることとなる。また、他の成分のみをテーブル3に作用させた場合も同様に、各成分のみが線形で出力されることとなる。
【0057】
センサ1では、他軸出力のアーム変位特性が線形であるため、キャリブレーション行列による補正を行うことで、他軸出力を抑えて本来の出力を得ることができる。したがって、鉛直方向(一方向)で撓んで変形、変位するアーム部6から、センサ1のテーブル3(物体)に作用する力の検出精度を向上することができる。
【0058】
このように、センサ1は、特許文献1で開示されたセンサが備える球面軸受けなどの自由度を有する軸受けを設けずとも、テーブル3(物体)に作用する力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出することができる。これは、弾性変形するロッド部9を用いることで、このロッド部9が軸受け相当の機能(倒れや捩れを吸収する機能)を果たすからである。また、アーム部6がベース2に対して一方向に変形、変位するからである。さらに、歪み計11(検出部)による検出値を演算部12でキャリブレーション機能により補正することで、より正確な値とするからである。
【0059】
よって、センサ1は、軸受けが有する内部抵抗やガタによる検出精度の低下を免れることができる。また、軸受けの部材が不要であるため、センサ1の小型化を図ることができ、製造コストも低減することができる。また、センサ1は、パラレルリンク機構4が軸受けを備えなくとも、閉リンク構造を構成することができ、高剛性、高速駆動を実現することができる。
【0060】
次に、センサ1を力覚センサに適用した場合の動作について説明する。例えば、センサ1のテーブル3に対してFz成分が加重された場合、図10に示すように、Fz成分の力によりテーブル3は+z方向(鉛直方向上側)に移動しようとする。テーブル3には、6つのリンク機構5がロッド部9の他端(接続点c2)で連結されているため、各リンク機構5を構成するロッド部9の軸方向にFz成分の力が6等分されて加わる。
【0061】
このロッド部9の一端(接続点c1)はアーム部6の先端と連結され、アーム部6はベース2で水平面方向に延在して固定されているため、アーム部6が+z方向(鉛直方向上側)に撓み、ベース2に対して一方向(鉛直方向)に変形し、変位する。アーム部6の変形を検出した歪み計11(検出部)からの検出値を参照して演算部12では、キャリブレーション機能による補正を行う。これにより、力覚センサとしてのセンサ1は、テーブル3(物体)が受ける外力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出することができる。
【0062】
次に、センサ1を運動センサの加速度センサに適用した場合の動作、例えばz軸方向の加速度azの検出について説明する。例えば、センサ1を固定された水平な台にベース2側で置いた時、センサ1は重力加速度を受ける。この時、センサ1内部では、各アーム部6にテーブル3とロッド部9の質量mが係っており、アーム部6が−z方向(鉛直方向下側)に撓み、ベース2に対して一方向(鉛直方向)に変形し、変位する。
【0063】
この変形量(変位量)がz軸方向の力Fzであるから、運動方程式m・az=Fzにより、z軸方向の加速度azを検出(計算)することができる。アーム部6の変形を検出した歪み計11(検出部)からの検出値を参照して演算部12では、キャリブレーション機能による補正および加速度azの計算を行う。これにより、運動センサとしてのセンサ1は、テーブル3(物体)が受ける慣性力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出することができる。
【0064】
次に、センサ1を運動センサの角速度センサに適用した場合の動作、例えばz軸方向の角速度ωzの検出について説明する。例えば、水平方向に置かれた回転テーブルの中心にベース2側でセンサ1を取り付け、その回転テーブルに回転運動を与えると、回転起動時にベース2とテーブル3との間に、捩れが生じる。この時、図13に示すように、隣り合う2つのアーム部6において、一方のアーム部6にはベース2に近づく方向の変位、もう一方のアーム部6にはベース2から離れる方向に変形、変位が現れ、z軸回りの力のモーメントMzが検出できる。
【0065】
この力のモーメントMzと慣性モーメントIとの間には、I・az=Mzの関係が成り立つことから角加速度azが計算できる。よって、微小時間ごとに角加速度azを計算し積分することで、角速度ωzを得ることができる。アーム部6の変形を検出した歪み計11(検出部)からの検出値を参照して演算部12では、キャリブレーション機能による補正および角速度ωzの計算を行う。これにより、運動センサとしてのセンサ1は、テーブル3(物体)が受ける慣性力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出することができる。
【0066】
(実施形態2)
前記実施形態1におけるセンサ1では、図4の接続点c2に示すように、各リンク機構5(ロッド部9)の他端がテーブル3の平面内で異なる位置で接続される場合について説明した。本実施形態では、そのセンサ1の構成において、隣接するリンク機構5の他端どうしを共有の接続点c2でテーブル3に直接接続する場合について図17を参照して説明する。図17は本実施形態におけるセンサ1の側面図である。なお、図17では、説明を明解にするために、一部を省略している。
【0067】
図17に示すように、ロッド部9は、一端がアーム部6と接続点c1で直接接続され、他端がテーブル3と接続点c2で直接接続されている。そして、隣接するリンク機構5の各ロッド部9(1つのアーム基部7の両端から起立する2つのロッド部9)の他端どうしが、共有の接続点c2で直接接続されている。
【0068】
このような構成であっても、センサ1は、テーブル3に力が作用したかを歪み計11(検出部)で検出することができる。また、センサ1は、歪み計11による検出値を参照して演算部12(図7参照)でキャリブレーション機能による補正を行うことで、テーブル3に作用する6成分の力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出することができる。
【0069】
また、このような構成であれば、センサ1の小型化を図ることができる。小型化するにつれ、隣接するロッド部9間が狭まるため、隣接するリンク機構5(ロッド部9)の他端どうしを共有の接続点で直接接続することは有用となるからである。
【0070】
(実施形態3)
前記実施形態1におけるセンサ1では、図4の接続点c2に示すように、各リンク機構5(ロッド部9)の他端がテーブル3の平面内で異なる位置で接続される場合について説明した。本実施形態では、そのセンサ1の構成において、隣接するリンク機構5の他端どうしを共有の接続点c2でテーブル3に直接接続するプレート部を用いる場合について図18を参照して説明する。なお、図18では、説明を明解にするために、一部を省略している。
【0071】
図18に示すように、センサ1は、アーム部6の先端とテーブル3とを連結し、テーブル3よりも剛性が低く、弾性変形をするものとして、三角形状のプレート部10を備えている。言い換えると、プレート部10は、リンク機構5を構成する一部である。このセンサ1では、隣接するリンク機構5の各ロッド部9を含んで一体に形成されたプレート部10が設けられていることとなる。なお、6つのリンク機構5を構成するにあたり、3枚のプレート部10を用いる。
【0072】
プレート部10は、例えばステンレス鋼(例えばSUS304)などの金属などから構成され、プレート本体がセンサ1において高い剛性を有する物体である。このプレート部10には、三角形状のプレート部10の水平方向に沿う底辺部側の2つの頂点には、それぞれアーム部6と接続されるくびれ部10aが形成されている。また、三角形状のプレート部10の鉛直方向上側の1つの頂点には、テーブル3と接続されるくびれ部10bが形成されている。
【0073】
これらくびれ部10a、10bは、細くしたり、薄くしたりしてベース2、テーブル3よりも剛性が低くなり、弾性変形をするものとなっている。すなわち、プレート部10は、くびれ部10a、10bに、軸受け相当の機能(倒れや捩れを吸収する機能)を持たせている。
【0074】
このような三角形状のプレート部10は、斜辺部が鉛直方向と交差するようにくびれ部10bを介してテーブル3と、くびれ部10aを介してアーム部6とにより両持ち支持される。これにより、テーブル3の動きを受けて、プレート部10が倒れや捩れるように構成されている。
【0075】
プレート部10は、三角形状に形成されており、くびれ部10aが接続点c1でアーム部6の先端と直接接続され、くびれ部10bが接続点c2でテーブル3と直接接続されている。プレート部10のくびれ部10aとアーム部6の先端や、くびれ部10bとテーブル3は、例えば溶接などの接合によって剛接合されている。なお、くびれ部10a、10bを有しているのであれば、プレート部10は、四角形状などの多角形状であっても良い。
【0076】
このような構成であっても、センサ1は、テーブル3に力が作用したかを歪み計11(検出部)で検出することができる。また、センサ1は、歪み計11による検出値を参照して演算部12(図7参照)でキャリブレーション機能による補正を行うことで、テーブル3に作用する6成分の力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出することができる。
【0077】
また、このような構成であれば、センサ1の小型化を図ることができる。小型化するにつれ、隣接するロッド部9間が狭まるため、隣接するリンク機構5(ロッド部9)の他端どうしを共有の接続点で直接接続することは有用となるからである。また、前記実施形態2のように、ロッド部9でセンサ1の小型化を図る場合、ロッド部9がより細くなって線状となり、加工が困難な場合もある。これに対して、プレート部10であれば、面状であるため、センサ1の小型化に際しても加工が容易となる。
【0078】
(実施形態4)
前記実施形態1におけるセンサ1では、6つのリンク機構5を有する場合について説明した。本実施形態では、そのセンサ1の構成において、8つのリンク機構5を有する場合について図19を参照して説明する。図19は、本実施形態におけるセンサ1の上面図である。なお、図19では、説明を明解にするために、一部を透視して破線で示している。
【0079】
図19に示すように、本実施形態におけるセンサ1のパラレルリンク機構4は、8つのリンク機構5を備えている。各リンク機構5は、それぞれアーム部6およびロッド部9を有して構成される。すなわち、パラレルリンク機構4は、8本のアーム部6および8本のロッド部9を備えている。
【0080】
アーム部6を構成するアーム基部7は、平面視円弧状に形成されている。図19に示すように、4個のアーム基部7が、平面視円形状のベース2を4等分するようにベース2の周縁に沿うように設けられている。また、アーム基部7は、ベース2の突起部2b上で支持されて設けられている(図1と同様)。突起部2bで支持された平面視円弧状のアーム基部7の両端部が、アーム部6として構成される。1つのアーム基部7から2本のアーム部6が構成され、センサ1では8本のアーム部6が構成される。これら8本のアーム部6とそれぞれに対応する8本のロッド部9とによって、8つのリンク機構5が構成される。
【0081】
このような構成であっても、センサ1は、テーブル3に力が作用したかを検出部で検出することができる。また、センサ1は、検出部による検出値を参照して演算部12(図7参照)でキャリブレーション機能による補正を行うことで、テーブル3に作用する6成分の力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出することができる。本実施形態では、前記実施形態1よりも多い8つのリンク機構5によってパラレルリンク機構4を構成しているので、より多くの検出値を得ることができる。
【0082】
(実施形態5)
前記実施形態1におけるセンサ1では、水平方向にベース2で片持ち支持されたアーム部6が平面視円弧状の場合について説明した。本実施形態では、そのセンサ1の構成において、アーム部6が平面視直線状の場合について図20を参照して説明する。図20は、本実施形態におけるセンサ1の上面図である。なお、図20では、説明を明解にするために、一部を透視して破線で示している。
【0083】
図20に示すように、本実施形態におけるセンサ1は、対向して設けられた一対のベース2、テーブル3を備えている。これらベース2とテーブル3は平面視円形状であり、平面視で同心円となるように、対向して設けられる。そして、これらベース2とテーブル3との間に、パラレルリンク機構4が設けられる。図20では、テーブル3よりベース2は直径が大きい場合を示している。
【0084】
本実施形態におけるセンサ1は、パラレルリンク機構4の各リンク機構5のそれぞれにおいて、ベース2で片持ち支持された複数(ここでは6本)のアーム部6と、アーム部6の先端とテーブル3とを連結する複数(ここでは6本)のロッド部9とを備えている。
【0085】
アーム部6は、アーム基部7Aにより構成されている。このアーム基部7Aは、中央部から放射状にアーム部6が伸びるように形成されている。このアーム基部7Aは、ベース2の中央部で突起する突起部(図示しない)上で支持されて設けられている。アーム基部7Aとベース2の突起部とは、一体成形もしくはネジ止め、溶接によって剛接合され、直接接続されている。
【0086】
ベース2の突起部で支持された平面視直線状のアーム基部7Aから水平方向に放射状に伸びた部分が、アーム部6として構成される。すなわち、1つのアーム基部7Aから6本のアーム部6が構成される。このため、アーム部6は、一端(先端)が自由端とし、ベース2の突起部側の他端(基端)が固定端となり、センサ1においてベース2に片持ち支持されて延在している。このようにして、アーム部6は、ベース2に直接接続されている。
【0087】
ロッド部9は、水平方向に伸びるアーム部6の先端からテーブル3へ斜めに(鉛直方向と交差して)伸びるように、アーム部6上に起立してテーブル3へ連結(接続)されている。ロッド部9の一端とアーム部6の先端や、ロッド部9の他端とテーブル3は、例えば溶接などの接合によって剛接合されている。このため、ロッド部9は、両端が固定端として、センサ1において両持ち支持されて延在している。このようにして、ロッド部9は、一端がアーム部6と直接接続され、他端がテーブル3と直接接続されている。
【0088】
なお、ロッド部9が円形状のテーブル3の中心上に向いてしまう(放射線上にある)と、Mz成分の力を検出できなくなってしまうため、このセンサ1では、テーブル3の中心方向からずらしてロッド部9を延在させている。
【0089】
このような構成であっても、センサ1は、テーブル3に力が作用したかを検出部で検出することができる。また、センサ1は、検出部による検出値を参照して演算部12(図7参照)でキャリブレーション機能による補正を行うことで、テーブル3に作用する6成分の力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出することができる。
【0090】
(実施形態6)
前記実施形態1におけるセンサ1では、アーム部6は水平方向にベース2で片持ち支持された場合について説明した。本実施形態では、アーム部6が水平方向と交差するようにベース2で片持ち支持される場合について図21を参照して説明する。図21は、本実施形態におけるセンサ1の側面図である。
【0091】
図21に示すように、アーム部6は、水平方向と交差してテーブル3側に伸びるように、ベース2の平面からベース3側へ突起する突起部2bにおいて片持ち支持されている。このアーム部6の先端では、ロッド部9の一端が直接接続されている。また、ロッド部9の他端がテーブル3に直接接続されている。
【0092】
また、本実施形態では、一方向に撓むアーム部6の変位を検出する検出部として変位計11Aを備えている。変位計11Aは、ベース2上であって各アーム部6の先端の下方にそれぞれ設けられる。これにより、アーム部6の先端が最も変位するため、アーム部6の変位量を高精度に検出することができる。
【0093】
このような構成であっても、センサ1は、テーブル3に力が作用したかを検出部で検出することができる。また、センサ1は、検出部による検出値を参照して演算部12(図7参照)でキャリブレーション機能による補正を行うことで、テーブル3に作用する6成分の力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出することができる。
【0094】
以上、本発明を実施形態に基づく具体的に説明したが、概略すれば、次のとおりである。
【0095】
センサ1は、対向して設けられたベース2、テーブル3(一対の対向物)と、これらの間を連結するパラレルリンク機構4とを備えている。パラレルリンク機構4の各リンク機構5は、アーム部6およびロッド部9を有して構成されている。ベース2、テーブル3よりも剛性が低く、弾性変形するアーム部6は、ベース2(一方の対向物)で片持ち支持されている。ベース2、テーブル3よりも剛性が低く、弾性変形するロッド部9は、一端がアーム部6と直接接続され、他端がテーブル3(他方の対向物)と直接接続されている。このセンサ1は、アーム部6の変形を検出する歪み計11または変位を検出する変位計11A(検出部)を備えている。
【0096】
これにより、可動側のテーブル3(他方の対向物)に作用する力を受けたロッド部9は、弾性変形により、倒れたり、捩れたりして、アーム部6が一方向に撓むような力を、アーム部6へ伝え易い構成となっている。言い換えると、アーム部6が、固定側のベース2(一方の対向物)に対して一方向に撓んで変形、変位し易い構成となる。このため、センサ1は、各リンク機構5が軸受けで構成されない新規な構造であって、テーブル3(対向物)に力が作用したかをアーム部6の変形、変位によって検出することができる。
【0097】
なお、センサ1では、可動側をベース2(一方の対向物)として、固定側をテーブル3(他方の対向物)として、ベース2に作用する力をアーム部6の撓み方向の一方向で検出することもできる。この場合、アーム部6が、テーブル3に対して一方向に撓んで変形、変位する構成となる。ベース2に作用する力を受けたロッド部9は、弾性変形により、倒れたり、捩れたりして、アーム部6が一方向に撓むような力を、アーム部6へ伝え易い構成となっているからである。
【0098】
そして、センサ1は、アーム部6がロバーバル構造8を有していることが好ましい。これにより、アーム部6は、より一方向に撓んで変形、変位し易い構成となる。具体的には、アーム部6では、ロバーバル構造8により、撓み方向でない方向の剛性が維持され、撓み方向の剛性を低くすることができる。
【0099】
そして、センサ1では、一対のベース2とテーブル3が対向する鉛直方向と直交する水平方向にアーム部6が延在していることが好ましい。これにより、アーム部6は、より一方向である鉛直方向に撓んで変形、変位し易い構成となる。また、センサ1の薄型化を図ることができる。
【0100】
そして、センサ1のロッド部9は、隣接するリンク機構5の各ロッド部9の他端どうしが、共有の接続点c2でテーブル3と直接接続されていることが好ましい。これにより、センサ1の小型化を図ることができる。
【0101】
そして、センサ1では、隣接するリンク機構5の各ロッド部9を含んで一体に形成されたプレート部10が設けられていることが好ましい。また、プレート部10は、アーム部6と接続される箇所でくびれたくびれ部10aが形成され、接続点c2で直接接続される箇所でくびれたくびれ部10bが形成されていることが好ましい。また、ロッド部9を含むプレート部10は、くびれ部10a、10bにおいて一対のベース2、テーブル3よりも剛性が低く、弾性変形することが好ましい。これにより、センサ1を小型化する際の加工が容易となる。
【0102】
そして、センサ1では、歪み計11による検出値を参照してテーブル3(またはベース2)に作用する力を算出する演算部12を備えていることが好ましい。また、演算部12は、歪み計11による検出値を参照して補正を行うキャリブレーション機能を有していることが好ましい。これにより、歪み計11による検出値の誤差成分をキャンセルし、テーブル3に作用する力の検出精度を向上することができる。
【0103】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0104】
例えば、前記実施形態では、6つ以上のリンク機構を有するパラレルリンク機構を備えたセンサに適用して説明した。これに限らず、より少ないリンク機構を有するパラレルリンク機構を備えたセンサにも適用することができる。例えばテーブルが平面上のみ可動し、一方向の加速度を検出するセンサ(一軸加速度センサ)であれば、2本のリンク機構を有するパラレルリンク機構を備えていれば良い。
【0105】
例えば、前記実施形態では、リンク機構を構成する一部では、一対の対向物よりも剛性が低く、弾性変形を有する一部を、金属で構成する場合について説明した。これに限らず、測定荷重が10N以下の低負荷であれば、例えばポリアセタールなどの樹脂で一部を構成することもできる。
【0106】
例えば、前記実施形態では、一方向におけるアームの変形または変位を検出する検出部として、歪み計または変位計を適用した場合について説明した。これに限らず、アームに圧電素子や、ベースに静電容量素子、光素子(例えばレーザ)、磁気識別素子などを設けても良い。また、アームに水晶を埋め込み、固有振動の変化を捉えることもできる。
【符号の説明】
【0107】
1 センサ
2 ベース(対向物)
3 テーブル(対向物)
4 パラレルリンク機構
5 リンク機構
6 アーム部
7、7A アーム基部
8 ロバーバル構造
9 ロッド部
10 プレート部
10a、10b くびれ部
11 歪み計(検出部)
11A 変位計(検出部)
12 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して設けられた一対の対向物と、該一対の対向物間を連結するパラレルリンク機構とを備えたセンサであって、
前記パラレルリンク機構の各リンク機構は、アーム部およびロッド部を有して構成されており、
前記一対の対向物よりも剛性が低く、弾性変形する前記アーム部は、前記一対の対向物の一方で片持ち支持されており、
前記一対の対向物よりも剛性が低く、弾性変形する前記ロッド部は、一端が前記アーム部と直接接続され、他端が前記一対の対向物の他方と直接接続されており、
前記アーム部の変形または変位を検出する検出部を備えていることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
請求項1記載のセンサにおいて、
前記アーム部が、ロバーバル構造を有していることを特徴とするセンサ。
【請求項3】
請求項1または2記載のセンサにおいて、
前記一対の対向物が対向する方向と直交する方向に前記アーム部が延在していることを特徴とするセンサ。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のセンサにおいて、
隣接する前記リンク機構の各ロッド部の他端どうしが、共有の接続点で前記一対の対向物の他方と直接接続されていることを特徴とするセンサ。
【請求項5】
請求項4記載のセンサにおいて、
隣接する前記リンク機構の各ロッド部を含んで一体に形成されたプレート部が設けられており、
前記プレート部は、前記接続点で接続される箇所と前記アーム部と接続される箇所でくびれたくびれ部が形成されており、
前記ロッド部を含む前記プレート部は、前記くびれ部において前記一対の対向物よりも剛性が低く、弾性変形することを特徴とするセンサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサにおいて、
前記検出部による検出値を参照して前記一方または他方の対向物に作用する力を算出する演算部を備えており、
前記演算部は、前記検出部による検出値を参照して補正を行うキャリブレーション機能を有していることを特徴とするセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2013−64706(P2013−64706A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204935(P2011−204935)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(511228023)
【出願人】(511228034)
【Fターム(参考)】