説明

センダンエキスの製造方法

【課題】含まれている水溶性・非水溶性の有効成分を余すことなく抽出でき、従来の薬としては勿論のことインフルエンザの予防・治療効果も充分期待できるセンダンエキスの製造方法の提供。
【解決手段】細断した原料センダン10に酸12及びアルカリ14を加えて繊維細胞を破壊するとともに中和し、次にミネラル16を添加したのち加熱殺菌し、次いで加熱殺菌した原料センダンに麹菌、酵母、クエン酸菌、乳酸菌、酢酸菌と繊維分解酵素26を加えて35℃〜40℃に保持することにより醗酵させる。得られた発酵センダン28にクエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸から選択されるカルボキシル基を有する有機酸30を加えて35℃〜40℃に保持して醗酵熟成させ、さらに得られた醗酵熟成液を殺菌濾過して抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はセンダンエキスの製造方法に関するものであり、一層詳細には、センダンの有効成分を効率よく抽出でき、従来から使用されている民間薬・生薬としてだけではなく、インフルエンザの予防・治療効果も期待することができるセンダンエキスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センダンはセンダン科(Meliaceae)の常緑または落葉の高木である。センダンの葉は奇数羽状複葉で小葉は対称につき、被針形で先端は細く尖り、縁には鋸歯がある。また花は白で蜜の香りがあり腋生の短い花柄に円錐花序がつく。果実は液果で、緑〜橙黄色をしており、中央に一個の種子を有する。種子はやわらかい果肉に包まれており、色は明るい灰色で表面は滑らかで絹のような光沢があり、味は苦い。
【0003】
そして、インドで生育するインドセンダン(neem)は高さ12〜15mに成長し、その葉は去たん剤、寄生虫の予防、解毒剤、腫瘍や虫刺されの薬として使用され、また、葉汁も駆虫剤、皮膚病の薬として使用され、果実は泌尿器の病気、じ、腸内寄生虫等に対して有効であり、種子は催吐剤、緩下剤、駆虫剤などとして民間薬・生薬として広く使用されている。
また、日本には、インドセンダンと同じ仲間のセンダン(栴檀)やトウセンダン(唐栴檀)があり、これらの根皮や樹皮は漢方で「苦楝皮」あるいは「川楝子」といわれ駆虫剤として、また、葉は殺虫剤として利用されている。
【0004】
このようなセンダンの有効成分としては各種の精油成分などがあげられるが、例えば、種子に多く含まれているアザジラクチン(azadirachtin)の場合は、乾燥した種子を粉砕して粗い粉末にのち、この粗粉末をメタノール、エタノール、塩化メチレン、クロロフォルム、ヘキサンなど種々の溶媒で抽出することにより利用されている。
【0005】
しかしながら、センダンの種子は水分含有量が多く、有効成分と水は同様の溶解性を有するため、有効成分を抽出する溶媒はそれに含まれる水分も抽出することになり、その結果、抽出物に含まれる高濃度の水分は溶液中における有効成分の分解要因にもなり調製剤の貯蔵安定性の面で解決すべき問題があった。
【0006】
そこで、センダンの粉砕種子をヘキサンなどの溶媒で抽出して水を含む有効成分の抽出溶液を調製し、次に結晶水を除いて3Å〜4Åの空隙を無数に形成した合成ゼオライトを素材とする分離剤ないしは吸着剤をこの抽出溶液に添加・接触させることにより、水分の含有量を少なくするようにした提案もなされているが(特許文献1)、分離剤ないしは吸着剤の添加量を有効成分を含む抽出溶液の初期の水量に応じて調整する必要があるため面倒であるという新たな問題点が指摘されている。
【0007】
ところで、ヒト、ウマ、ブタ、トリ等の動物に幅広く分布するインフルエンザウィルスは古くから多大な被害を与えている。
特に、トリをルーツとするA型ウイルスは人間の領域に奥深く根を張り、冬期を中心にして毎年世界的に流行しその被害は計り知れないものとなっている。
トリの世界においてもその危害は例外ではなく、例えば、H5トリインフルエンザのニワトリの領域での流行は経済的にも多大な損失が生じている。
さらに、このウィルスの人間の世界への登場は大きな恐怖となっており、このようなA型ウイルスだけでなく、人間の領域ではB型ウイルスも毎年のように流行している。
【0008】
人間領域におけるウィルスの感染症は、治療よりもワクチンによる予防が基本的な戦略であり、近時はこのようなワクチン予防法に加えてタミフル、アマンダジン、リマンダジンなどに代表される治療薬も利用できるようになってきているが、これらの薬に対する耐性ウィルスの出現速度が速いため、現実には有用な治療薬として使用することができなかった。
また、今日の世界において有効なインフルエンザ予防薬は未だ開発されていないことから、ヒト及びトリインフルエンザ、さらにB型インフルエンザにも有効な予防用ないしは坑インフルエンザ物質の開発が待望されている。
【0009】
このような状況の中で、直近の研究などによると、センダンの有効成分が予防用坑インフルエンザ物質として効果があるとの提案がなされている(特許文献2)。
この提案に係るセンダン由来の予防用坑インフルエンザ物質は、原料センダンを60℃程度の熱水で抽出したのち濾過膜で精製したものであるが、センダンに含まれている非水溶性の有効成分の活用は企図していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−38505号公報
【特許文献2】特許第4307459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明では水溶性・非水溶性にかかわらず、センダンの有効成分を余すことなく抽出でき、従来から使用されている民間薬・生薬としては勿論のことインフルエンザの予防・治療効果をも充分期待することができるセンダンエキスの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ところで、本発明者は、わが国で古くから実践されており、安全性についても折り紙つきの味噌、醤油の類の発酵技術に着目し、澱粉および/または穀類と種子と卵殻などの原材料を粉砕混合したのち加水分解して麹菌などで醗酵熟成することにより、原材料中に含まれているミネラル成分をイオン化(解離)して効率よく抽出する方法を開発し、この方法によって得られたイオン化ミネラル含有液は、通常の水あるいは対象となる材料にほんの少量添加するだけで水の分子集団が細分化され、その結果、水分子の単集団がミネラルイオンを取り囲んで分散し、細分化された水とともにカルシウムやマグネシウムなどのミネラルイオンの吸収性が飛躍的に高まるだけでなく原材料中における成分の有効性も向上させることができることが確認されている。
【0013】
そこで、本発明では、ミネラルを添加した原料センダンを麹菌および繊維分解酵素などを使用して醗酵させ、得られた醗酵センダンに有機酸を加えて熟成し、さらに殺菌濾過する手順を採用することにより、所期の目的を達成しようとするものである。
【0014】
具体的には、好ましくは、細断した原料センダンに酸およびアルカリを加えて繊維細胞を破壊するとともに中和し、次にこの原料センダンの3重量%〜5重量%のミネラルを添加したのち加熱殺菌し、次いで加熱殺菌した原料センダンに麹菌、酵母、クエン酸菌、乳酸菌、酢酸菌を単独でまたはこれらの2種以上の混合物と繊維分解酵素を加えて35℃〜40℃に保持することにより醗酵させ、得られた発酵センダンにクエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸から選択されるカルボキシル基を有する有機酸を単独でまたはこれらの2種以上の混合物を加えて35℃〜40℃に保持して醗酵熟成させ、さらに得られた醗酵熟成液を殺菌濾過して抽出する手順を採用するものである。
【0015】
この場合、ミネラルとしては、イオン化ミネラルを使用するのが好適であり、具体的には、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを所定の割合で混合した原料を粉砕し、次いでこれに浄化水と麹菌を加えて醗酵熟成することにより原料中に含まれているカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどのミネラルを解離させたのち濾過することにより得られた醗酵熟成液を使用するものである。
【0016】
また、本発明は上記方法・手順により得られたセンダンエキス自体も包含するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明方法によればセンダンに含まれている水溶性および非水溶性の有効成分を簡便な手順により余すことなく抽出することができるので、従来からの民間薬・生薬として効率よくかつ有効に使用することができるものである。
【0018】
また、得られたセンダンエキスは、試験結果からも明らかなように、インフルエンザウィルスの不活化を達成できるので、原液だけでなく希釈液であっても予防用も含めインフルエンザウィルスの不活化物質としても好適に使用することが可能となる。具体的には、鼻腔から侵入するインフルエンザに対する予防用噴霧剤やマスクへの噴霧剤、インフルエンザ予防用うがい液、家庭用インフルエンザ予防用の噴霧液、会社や病院、あるいは駅や養鶏場などの大規模施設などにおける消毒薬などとして活用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るセンダンエキスの製造方法の好適な実施の形態を示す概略手順説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係るセンダンエキスの製造方法の好適な実施の形態につき以下詳細に説明する。
図1において、本発明に係るセンダンエキスの製造方法では、まず、原料として乾燥したセンダン10を用意し、この乾燥センダンを公知の裁断機などを使用して細かく裁断したのち、酸12、例えば、塩酸(HCL)およびアルカリ14、例えば、苛性ソーダ(NaOH)を加えて混合・攪拌することにより、原料センダン10の繊維細胞を破壊するとともに中和する。
この場合、原料センタンと酸とアルカリの割合としては、重量比で1.0:1.1:1.0に設定するのが好ましい。
また、原料となるセンダンとしては、センダン科植物の乾燥した葉、茎、枝、樹皮、根皮、実及び種子などを適宜使用することができ、その形状や大きさは特に限定されるものではなく、いくらか破砕したものでも問題なく使用することができる。
【0021】
次に、このようにして繊維細胞を破壊した原料センダン10に、3重量%〜5重量%、好ましくは、4重量%のミネラル16を添加したのち95℃で20分間ほど加熱することにより殺菌処理を行う。
なお、この場合、ミネラル16としては、例えば、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを所定の割合で混合した原料を粉砕し、次いでこれに浄化水と麹菌を加えて醗酵熟成することにより原料中に含まれているカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどのミネラルを解離させたのち濾過することにより得られた醗酵熟成液からなるイオン化ミネラル20を好適に使用することができる。
また、原料センダン10に加えるミネラル16が3重量%以下になると有効成分の溶出を充分に達成することが難しくなり、5重量%以上加えると費用対効果の面から問題が生じることになってしまう。
【0022】
このような原料センダン10の処理は、センダンの殺菌だけでなくセンダンが含有する水溶性の有効成分、カリウム、マンガン、さらには一部のカルシウムのほか水溶性の食物繊維なども好適に溶出させることができるものである。
【0023】
殺菌処理をした原料センダン10の温度が30℃〜35℃程度まで低下したら、この処理済センダン22に対して、酒麹菌、醤油麹菌、味噌麹菌などの麹菌、酵母、クエン酸菌、乳酸菌、酢酸菌を単独でまたはこれらの2種以上の混合物24およびセルラーゼなどの繊維分解酵素26を加え、35℃〜40℃に保持することにより処理済センダン22を醗酵させる。
この場合、加える麹菌、酵母、クエン酸菌、乳酸菌、酢酸菌あるいはこれらの2種以上の混合物24および繊維分解酵素26は処理済センダン22の醗酵状況に応じて適宜加減するのが好ましいが、その分量としては10重量%〜20重量%の範囲に設定するのが好適である。
なお、麹菌あるいは麹菌などの混合物24および繊維分解酵素26の分量が10重量%未満になると醗酵を充分に行うことができないだけでなく醗酵に長時間を要し、また30重量%を超えると量が多すぎて経済性が低下することになる。
また、前記麹菌あるいは麹菌などの混合物24を加える際にはこの麹混合物とほぼ同量(10重量%〜20重量%)の糖質を添加する。
さらにまた、前記繊維分解酵素26は、例えば、セルラーゼ入り麹菌に代替することもできる。
【0024】
次に、このようにして得られた醗酵センダン28に、例えば、クエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸から選択されるカルボキシル基を有する有機酸溶液30を所定量加え、加熱ヒータによって35℃〜40℃に保持した状態で静電磁場および遠赤外線照射雰囲気においてゆっくり攪拌しながら流動させて電解磁化処理および太陽光照射を行うことにより熟成し、原材料としてのセンダンに含まれている各種の有効成分を醗酵溶出させるとともに解離(イオン化)する。
なお、この場合、醗酵センダン28に加える有機酸溶液30の量としては醗酵原料(醗酵センダン28)の2倍量〜10倍量に設定するのが好ましく、有機酸溶液30が醗酵原料(醗酵センダン)の2倍量以下だと醗酵熟成に長時間を必要とし、また10倍量を超えると量が多すぎて熟成がうまくできず経済性も低下し、強酸臭が発生してしまう。
また、本実施の態様においては、得られた発酵原料28に有機酸溶液30を加えたが、代案として、酢酸菌、乳酸菌などを培養した菌体溶液を加えてもよく、この場合は菌体数にもよるが、発酵原料の10重量%〜20重量%程度にするのが好適である。
【0025】
そして、このようにして得られた醗酵熟成液を加熱あるいは紫外線照射などの手段で再び殺菌して3週間〜4週間静置したのち精密濾過することにより、センダンミネラルエキス32として抽出する。
このようにして得られたセンダンミネラルエキス32は、水溶性繊維、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどのミネラルとともに鉄、亜鉛をはじめとする微量ミネラルなどのほかにセンダン本来のアザジラクチン(azadirachtin)をはじめ精油成分などの有効成分が豊富に含まれた「まるごと抽出液」として調製される。
なお、センダンミネラルエキス32を抽出した後の残渣については常温で6ヶ月程度放置したが、各種の空中菌に晒されていたにも関わらず腐敗などの不都合が生じることはまったくなかった。
【吸収性試験】
【0026】
次に、このようにして得られたセンダンミネラルエキス32と従来のセンダンエキスの吸収性を比較した。
具体的には、まず、裁断した原料センダン100gに210ccの純水(逆浸透膜を使用して水道水から予め塩素やミネラルをできるだけ除去した水)を加えて適宜の加熱手段により95℃で20分間ほど加熱しさらにこれを自然冷却することにより比較用の熱水抽出センダンエキスAを用意する。
一方、同様に逆浸透膜を使用して水道水から予め塩素やミネラルをできるだけ除去して浄化した無味無臭の試験水(純水)を用意する。
【0027】
そして、まず、水質検査器(ハンナインスツルメンツ・ジャパン株式会社製)を使用して、前記試験水(純粋)の導電率(電気伝導率)を計測したところ、0.49μS/cm(20℃)であった。
次に、二つの容器X、Y、に前記試験水100.0ccを夫々用意し、容器Xの試験水には本発明方法で得られたセンダンミネラルエキス32を1.0ccを添加するとともに容器Yの試験水には熱水抽出センダンエキスAを同様に1.0cc添加し、夫々を撹拌して30分間静置したのち、各容器X、Yの試験水の20℃における導電率を計測した。
その結果、センダンミネラルエキス32を溶かした容器Xの水の導電率は1640μS/cmを示したのに対し、熱水抽出センダンエキスAを添加した容器Yの水の導電率は20.4μS/cmであった。
【0028】
すなわち、熱水抽出センダンエキスAを添加した水(Yの水)の導電率は、もとの試験水(純水)の導電率(0.49μS/cm)よりも40倍程度上昇しただけであるのに対し、本発明方法で得られたセンダンミネラルエキス32を添加した水(容器Xの水)の導電率はもとの試験水(純水)の導電率の3300倍以上に上昇している。
この事実は、容器Xの水に溶けているセンダンミネラルエキス32にはセンダンに含まれるカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムや鉄、亜鉛をはじめとする微量ミネラルなどのミネラルも含め水溶性および非水溶性の各種有効成分が醗酵工程および熟成工程を経ることにより、容器Yの水に溶けている熱水抽出センダンに比べてはるかに多量に溶解解離(イオン化)しているということである。
【0029】
また、熱水抽出センダンエキスAを溶かした容器Yの水の導電率とセンダンミネラルエキス32を加えた容器Xの水の導電率とを比較してみると、容器Xの水は容器Y水の80倍以上の数値を示しており、従って、センダンミネラルエキス32の吸収性が飛躍的に向上することも明白である。
【不活化試験】
【0030】
次に、前記の製造方法により調製されたセンダンミネラルエキス32のインフルエンザウィルスに対する不活化試験を行った(財団法人 日本食品分析センター)。
【0031】
この試験の概要は、センダンミネラルエキス(検体)原液とこの原液に精製水を加えて希釈した検体希釈液を試験液とし、これらの試験液にインフルエンザウィルスのウィルス浮遊液を添加、混合して作用液とし、室温における作用液の所定時間後のウィルス感染価を測定するものである(なお、ウィルス感染価の測定方法については、細胞維持培地で作用液を検体原液は100倍、検体の10倍希釈液は10倍に希釈することにより、検体の影響を受けずにウィルス感染価が測定できることを予備試験により確認した)。
【0032】
〔1〕ウィルス浮遊液の調整
▲1▼細胞増殖培地(日水製薬(株)のイーグルMEN培地に牛胎仔血清を10%加えたもの)を用い、使用細胞[大日本製薬(株);MDCK(NBL−2)細胞ATCCCCL−34株]を組織培養用フラスコ内に単層培養し
▲2▼単層培養後にフラスコ内から細胞増殖培地を除き、試験ウィルス[インフルエンザウィルスA型(HINI)]を接種した。
次に、細胞維持培地を加えて37℃±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度:5%)内で1〜5日間培養した。
細胞維持培地の組成
イーグルMEN培地(日水) 1000ml
10%NaHCO3 14ml
L−グルタミン(30g/l) 9.8ml
100×MEN用ビタミン液 30ml
10%アルブミン 20ml
0.25%トリプシン 20ml
▲3▼培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞に形態変化(細胞変性効果)が起こっていることを確認した。次に培養液を遠心分離(3000rpm/min.10分間)し、得られた上澄み液をウィルス浮遊液とした。
【0033】
〔2〕試験操作
検体原液(センダンミネラルエキス)と、検体希釈液(検体原液に精製水を用いて調製した検体の10倍希釈液)を試験液とした。
試験液1mlにウィルス浮遊液0.1mlを添加、混合し、作用液とした。
室温で作用させ、1分、5分、15分後に細胞維持培地を用いて希釈した(但し、作用液の希釈は予備試験により確認した濃度で行った)。
なお、精製水を対照として同様に試験し、開始及び15分後に測定を行った。
【0034】
〔3〕ウィルス感染価の測定
細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養用マイクロプレート(98穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に作用液の希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度:5%)内で4〜7日間培養した。
培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed−Muench法により、50%組織培養感染量(TCID50)を算出して作用液1ml当たりのウィルス感染価に換算したところ、作用液のウィルス感染価の測定結果は表1の通りであった。
【0035】
【表1】

【0036】
表1の結果から、センダンミネラルエキス32は原液だけでなく希釈液であっても抗インフルエンザウイルス効果は極めて有意義なものであることが確認された。
今日までワクチンやタミフルのようなインフルエンザ治療薬が利用できるようになったことの有利さは確かに大きな進歩であるが、感染を事前に食い止めることはより重要であることに変わりはない。この意味で、前記知見を根拠に考察すると、センダンの有効成分を含有する本発明のセンダンミネラルエキス32はインフルエンザウィルスを不活化する能力を持っていることが強く示唆され、従って、鼻腔や口から侵入したウイルスを直接不活化できることが推測され、さまざまな型のインフルエンザ予防薬の開発に利用できると考えられる。
具体的には、鼻腔から侵入してくるインフルエンザに対する予防用噴霧剤やマスクへの噴霧剤、インフルエンザ予防用うがい液などに利用することができる。
加えて、家庭用インフルエンザ予防用の噴霧液、会社や病院、あるいは駅や養鶏場などの大規模施設などにおける消毒薬にも利用できる可能性も十分にあり、本発明のセンダンミネラルエキスはインフルエンザウィルスの不活化物質としてその利用価値は極めて高いものである。
【0037】
なお、本発明のセンダンミネラルエキス32を使用してインフルエンザ予防・治療剤とする場合、センダンミネラルエキスに加えて医薬上許容される各種の製剤用物質、例えば、賦形剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、可溶化剤等を補助剤として含むことができることは言うまでもない。具体的には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖類、タルク、ミルク蛋白、ゼラチン、澱粉、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、ポリエチレングリコール、グリセロールなどが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明方法で得られるセンダンミネラルエキスは水で希釈して飲用に供することもできるので、原液或いは適宜希釈したセンダンミネラルエキスを塗布することにより抗アトピー物質としても使用することができる。
また、天然物質なので化粧品素材などとしても利用可能となるものである。
【符号の説明】
【0039】
10・・センダン(原料)
12・・酸
14・・アルカリ
16・・ミネラル
20・・イオン化ミネラル
22・・処理済センダン
24・・麹菌あるいは麹菌などの混合物
26・・繊維分解酵素
28・・発酵センダン
30・・有機酸溶液
32・・センダンミネラルエキス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細断した原料センダンに酸およびアルカリを加えて繊維細胞を破壊するとともに中和し、次にこの原料センダンの3重量%〜5重量%のミネラルを添加したのち加熱殺菌し、次いで加熱殺菌した原料センダンに麹菌、酵母、クエン酸菌、乳酸菌、酢酸菌を単独でまたはこれらの2種以上の混合物と繊維分解酵素を加えて35℃〜40℃に保持することにより醗酵させ、得られた発酵センダンにクエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸から選択されるカルボキシル基を有する有機酸を単独でまたはこれらの2種以上の混合物を加えて35℃〜40℃に保持して醗酵熟成させ、さらに得られた醗酵熟成液を殺菌濾過して抽出することを特徴とするセンダンエキスの製造方法。
【請求項2】
ミネラルとして、イオン化ミネラルを使用することからなる請求項1に記載のセンダンエキスの製造方法。
【請求項3】
イオン化ミネラルは、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを所定の割合で混合した原料を粉砕し、次いでこれに浄化水と麹菌を加えて醗酵熟成することにより原料中に含まれているカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどのミネラルを解離させたのち濾過することにより得られた醗酵熟成液からなる請求項2に記載のセンダンエキスの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の方法により得られたセンダンエキス。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−92081(P2012−92081A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252282(P2010−252282)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(591135200)
【出願人】(505201788)
【出願人】(508328165)
【Fターム(参考)】