説明

セーバソー

【課題】 被切断材に合わせベース12の位置を移動することにより、切断の際に容易に切断を行うことができるようなセーバソーを提供すること。
【解決手段】 モータを内蔵するハウジングと、前記モータの回転をプランジャの往復動に変換する往復動変換機構と、前記プランジャに設けられ、切断材料を切断可能なブレードと、前記ブレードと空間的に交わるように延びる部分を有するベースとを有するセーバソーであって、前記ベースは、前記ハウジングより略前記プランジャの往復動方向へと延びる第2の部材と、少なくとも該第2の部材に対してブレードと空間的に交わる範囲で移動可能な第1の部材とを有し、移動前の前記第1の部材と前記ブレードとが交わる角度と、移動後の前記第1の部材と前記ブレードとが交わる角度が略同等であることを特徴とするセーバソーによって、解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅やビルの建築、設備、改装、解体工事等において木材、鋼材、パイプ等の切断材料を切断するセーバソーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気により駆動されるモータの回転力によって往復動を起こし、その往復動により鋸刃(以下、ブレードという)を往復動させ切断を行う電動工具としてセーバソーがある。セーバソーは、電気のこぎりや、レシプロソーなどと呼ばれることもある。セーバソーは、一般にブレードを先端に装着した往復動軸(以下プランジャという)を往復駆動させブレードによって切断するものである。例えば、特許文献1、特許文献2参照。
【0003】
図6に従来のセーバソーを示す。セーバソー101は、ハウジング102及びハンドル104を有している。ハウジング102の内部には、モータ103が内設されている。モータ103の回転によって、プランジャ109を往復動させる往復動変換機構108がハウジングの内部に設けられていた。プランジャ109は、ブレード111を往復動させ、切断材料を切断していた。
【0004】
この場合に、図7に示すように、セーバソー101で切断材料Wをベース112にガイドさせながら切断を行うものであったが、その際に、プランジャ109及びそれに取付けられるブレード111が矢印R1の方向へと移動する際に、切断を行うものであった。
【0005】
ブレード111に貫通されるベース112は、第1の部材112A及び第2の部材112Bを有していた。作業者は、図示しない機構により、ベース112をプランジャ109の軸方向に移動させることができ、ベース112を好みの位置に位置させることができるようになっていた。また、第1の部材112Aは、第2の部材112Bに対して回動可能に保持されており、作業者が切断を行う際に切断材料Wを押し付けることによって、第1の部材112Aが第2の部材112Bに対して回動することができるようになっていた。
【0006】
【特許文献1】特開2007−090503号公報
【特許文献2】特許第3709748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のセーバソーにおいては大きな切断材料を切断する際に、ベース112Aが切断材料をガイドできない場合があった。また、セーバソーの製品として、ブレードを上下逆に付けるものがあって、その場合には更にセーバソーのベース112でガイドできないようになってしまうものであった。
【0008】
本発明の目的は、上記したような従来のセーバソーの問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、モータを内蔵するハウジングと、前記モータの回転をプランジャの往復動に変換する往復動変換機構と、前記プランジャに着脱可能に設けられ、切断材料を切断可能なブレードと、前記ブレードと空間的に交わるように延びる部分を有するベースとを有するセーバソーであって、前記ベースは、少なくともブレードと空間的に交わる第1の部材と、前記ハウジングより延び、該第1の部材と接続される第2の部材とを有しており、前記第1の部材は、少なくとも前記ブレードと交わる方向へと移動可能であることを特徴とするセーバソーにより達成される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明のセーバソーの構成とすることにより、ベースのブレードと空間的に交わる第1の部材がブレードと交わる方向へと移動可能であるために、切断材料が大きい部材である場合にも切断材料をガイド可能なベースを有するコンパクトなセーバソーとすることができる。
【0011】
請求項2記載の発明のセーバソーの構成とすることによって、ベースの第1の部材が軸部を有し、第2の部材が長穴部を有しており、軸部及び長穴部が係合しており、第1の部材が長穴部の所定の位置で係止可能であるために、簡単な構成で第1の部材がブレードと交わる方向へと移動することができるようになる。このため、構造が簡単なコンパクトなセーバソーとすることができる。
【0012】
請求項3記載の発明のセーバソーの構成とすることによって、軸部がその軸方向に第1の位置と、第2の位置を有するために、軸部を軸方向に移動させることによって、軸部と長穴部との係止及び非係止の位置とすることができる。このため、作業者が容易に第1の部材を第2の部材に対して移動させることができるセーバソーとすることができる。
【0013】
請求項4記載の発明のセーバソーの構成とすることによって、ベースの第1の部材が、第2の部材に対して回動可能に設けられているために、作業者が切断材料をベースに押し付けることにより、容易に切断をすることができる作業者にとって使い心地の良いセーバソーとすることができる。
【0014】
請求項5記載の発明のセーバソーの構成とすることによって、ブレードをプランジャに対して180度逆転した位置に取付けることができるために、ブレードを逆転した位置に取付けた際にも、ベースの第1の部材をブレードと交わる方向へと移動することにより容易に切断材料をガイドすることができるセーバソーとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のセーバソーの一実施形態の構成を、図1から図5を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明のセーバソーの一部断面正面図である。セーバソー1は、ハウジング2を有しており、ハウジング2の内部にはモータ3が内蔵される。ハウジング2は、モータ3を内部に収納する樹脂製のモータハウジング2Aと、後述する往復動変換機構8などを内部に収納する金属製のギヤハウジング2Bと、モータハウジング2A及びギヤハウジング2Bの少なくとも一部を覆うゴム製のフロントカバーハウジング2Cとを有する。モータハウジング2Aには、略「O」型をしたハンドル4が接続されている。ハンドル4には、「O」型の略内周面に設けられたトリガ5が設けられる。また、ハンドル4の下部には、図示しないプラグを一端に有する電源コード6が設けられている。
【0017】
モータ3の出力軸には、圧入により回転不能にファン3Bが設けられている。また、出力軸には、ピニオン3Aが設けられている。なお、ピニオン3Aは、ギヤハウジング2Bの内部に設けられており、ファン3Bは、モータハウジング2Aに設けられている。モータハウジング2Aとギヤハウジング2Bの間には、ファン3Bによりハウジング内の空気をハウジング外部へと排出可能とする隙間2A1が設けられている。
【0018】
ピニオン3Aは、中間軸7上に圧入によって回転不能に設けられる中間軸ギヤ7Aと噛合している。なお、モータの出力軸と中間軸7とは略平行になるように設けられている。中間軸7上には、中間軸7と回転不能に設けられる傾斜軸部7Bが設けられている。傾斜軸部7Bは、中間軸7の軸方向と約14度傾斜する部分を有している。傾斜軸部7Bと係合するように、レシプロプレート8がレシプロベアリング8Bを介して設けられている。なお、傾斜軸部7Bは、レシプロベアリング8Bを介して回転可能にレシプロプレート8に接続されている。レシプロプレート8には、球状部8Aが設けられており、プランジャ9と係合している。プランジャ9は、中間軸7の回転が、傾斜軸部7B、レシプロベアリング及びレシプロプレート8を介することによって往復動する。プランジャ9の反球状部8A側の端部には、ブレード保持部10が設けられており、ブレード11を図示しない機構によって、着脱可能に保持している。
【0019】
ブレード11と交わるように延びる第1の部材12Aを有するベース12がハウジング2の先端部付近に設けられている。ベース12は、略プランジャ9の軸方向に移動可能であり、固定部材12Cによって移動不能とすることができる。
【0020】
図1中に示すように、ベース12は、第1の部材12A及び第2の部材12Bを有している。
【0021】
図2にベース12の拡大正面図を示す。第1の部材12Aは、第1の部材本体12A1と、保持部12A2と、回動軸12A3と、保持軸12A4を有する。第1の部材本体12A1は、回動軸12A3によって保持部12A2に対して回動可能に保持されている。また、保持軸12A4は、保持部材12A2に、その軸方向に移動可能に設けられている。
【0022】
第2の部材12Bは、プランジャ9の略軸方向に延びる軸部12B1と、軸部12B1と略直交する方向に延びる延伸部12B2とを有する。延伸部12B2には、長穴部12B3が設けられている。長穴部12B3には、その長穴の幅が大きい4つの大径部12B32及びその間に設けられる小径部12B31が設けられる。大径部12B32及び小径部12B31は、図2の通り連通している。
【0023】
図2に示すように、保持軸12A4と長穴部12B3とは係合しており、図3に示すように、係合位置を4つの長穴の大径部で変更可能である。
【0024】
図4及び図5に、図2のA−A線断面図を示す。第1の部材本体12A1は、回動軸12A3によって、保持部材12A2に回動可能に保持されている。これは、回動軸12A3と第1の部材本体12A1との間にわずかな回動しろが設けられているからである。保持軸12A4は、保持部材12A2及び長穴部12B3を貫通している。保持軸12A4には、保持軸12A4の軸と直交する方向に延びる2つの突出する第1突出部12A41及び第2突出部12A42を有する。第1突出部12A42と保持部材12A2の間には、それらか離間する方向に付勢するばね12A5が設けられている。保持軸12A4がばね12A5の付勢力によって離間することによって、第2突出部12A42は、第2の部材12Bと当接可能になっており、この第2突出部12A42と第2の部材12Bとの間の面接触による摩擦力によって、第1の部材12Aは、第2の部材12Bに対して移動不能となる。
【0025】
図5に保持軸12A4をその軸方向に移動させた状態を示す。これは、作業者が保持軸12A4をその軸方向にばね12A5の付勢力に抗して移動させることによる。第2突出部12A42と第2の部材12Bとは接触していない。このため、第2突出部12A42と第2の部材12Bとの間に力が働かないために、保持軸12A4は、長穴12B3内部で移動可能となる。
【0026】
本発明のセーバソーの一実施形態の動作について、説明する。
【0027】
作業者が電源コード6の図示しないプラグをコンセントに挿入した状態でハンドル4及びフロントカバーハウジング2Cを保持した状態で、トリガ4を操作すると、モータ3へと通電される。
【0028】
モータ3へと通電されると、モータ3はその電力により回転する。モータ3の回転により、モータ3に回転不能に設けられるファン3Bが回転し、モータの図示しない空気の流入口からハウジング2内部へ空気を取り込みハウジングの隙間2A1から取り込まれた空気は、モータ3を冷却しハウジング2の外部へと排気される。
【0029】
また、モータ3の回転によって、モータ3の出力軸上に設けられるピニオン3Aも回転する。この回転は、ピニオン3Aと噛合する中間軸ギヤ7Aを回転させる。この中間軸ギヤ7Aの回転によって、中間軸ギヤ7Aが回転不能に設けられる中間軸7が回転する。中間軸7には、傾斜軸部7Bが中間軸の軸方向と傾斜するように設けられているために、傾斜軸部7Bにレシプロベアリング8Bを介して取付けられるレシプロプレート8が中間軸7の軸方向へと揺動する。この揺動により、レシプロプレート8とその球状部8Aを介して係合するプランジャ9が往復動する。この往復動によって、プランジャ9の反球状部8A側に設けられるブレード取付け部10に設けられたブレード11が往復動する。
【0030】
切断の際には切断材料の大きさなどに応じて、ブレード11と空間的に交わるベースの位置を変更する。切断材料が小さい場合には、図2に示すように保持軸12A4と長穴部12B3の最もブレード11側に位置する大径部12B32に位置させる。切断材料が大きい場合には、図4に示すような状態である第2突出部12A41と第2の部材が当接する第1の位置から、保持軸12A4をばね12A5の付勢力に抗して、軸方向へと移動させることによって、図5に示すような状態にし、保持軸12A4と第2の部材12Bとの間の係止がされない状態で、長穴部12B3内で軸部を移動させる第2の位置へと保持軸12A4をその軸方向に移動させる。そして、例えば、図3の状態に示すように保持軸12A4と長穴部12B3の最もブレード11から遠い位置に位置する大径部12B32に位置させる。この場合には、第1の部材がブレードから最も遠い状態となる。このため、第1の部材本体12A1で、切断材料が大きい場合にも容易にガイドすることができるようになる。このような構成であるために、例えば、図2に示すような状態でベースの形状が大きくなることを抑制することができ、コンパクトなセーバソーとすることができる。また、保持軸12A4と、長穴部12B3とが係合している構成となっているために、簡単な構成で第1の部材が第2の部材に対して移動可能となる。このため、コンパクトなセーバソーとすることができる。さらに、保持軸12A4がその軸方向に前記したような第1の位置と、第2の位置を有するために、軸部を軸方向に移動させることによって、軸部と長穴部との係止及び非係止の位置とすることができる。このため、作業者が容易に第1の部材を第2の部材に対して移動させることができるセーバソーを提供することができる。
【0031】
図6にブレード11をブレード保持部10により180度逆転した位置に取付けられている状態を示す。このように、ブレードを逆転した位置に取付けた際にも、ベース12の第1の部材を移動させることにより、切断材料をガイドすることができるようになる。従来のセーバソーであれば、ブレード11を通常の図1のような状態に取付けた際と、180度逆転したような図6に示すような状態に取付けた際とのいずれにおいても、良好にベース12により切断材料をガイドする必要があるために、ベースが大きくなる必要があった。しかし、本発明のように、ベースのブレードと空間的に交わる第1の部材がブレードと交わる方向へと移動可能であるために、切断材料が大きい部材である場合にも、通常のブレードの取付け及び180度逆転した取付け位置においても、切断材料をガイド可能なベースを有するために、よりコンパクトなセーバソーとすることができる。
【0032】
なお、本発明の実施形態においては、電源コードによってモータへと通電可能になる構成であったが、繰り返し充電可能な充電池によって、通電可能とする攻勢であっても、本発明の効果を奏し得ることができる。
【0033】
なお、本発明の実施形態においては、往復動変換機構を中間軸、レシプロプレートなどによって構成したが、これ以外の往復動変換機構により、プランジャを往復動させる機構を有しているセーバソーであっても本発明の効果を奏し得ることができる。すなわち、例えば、モータの回転をギヤに伝達し、ギヤの回転中心から偏心した位置でプランジャと係合している構成によって、プランジャを往復動させる機構であっても本発明の効果を奏し得ることができるものである。
【0034】
なお、本発明の一実施形態においては、第1の部材が軸部を有しており、第2の部材が長穴部を有している構成としたが、この関係が逆であっても本発明の効果を奏し得ることができるものである。すなわち、第1の部材が長穴部を有しており、第2の部材が軸部を有している構成であっても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態のセーバソーを示す一部断面正面図
【図2】本発明の一実施形態のセーバソーを構成するベースの拡大図
【図3】図2の状態から第1の部材を移動させた状態を示すベースの拡大図
【図4】図1のA−A線断面図
【図5】図4の状態から軸部を移動させた状態を示す図1のA−A線断面図
【図6】ブレードを180度逆向きに取付けた状態を示す一部断面正面図
【図7】従来のセーバソーの一部断面正面図
【図8】セーバソーの切断材料の切断の様子を示す一部断面正面図
【符号の説明】
【0036】
1はセーバソー、2はハウジング、3はモータ、4はハンドル、5はトリガ、6は電源コード、7は中間軸、8はレシプロプレート、9はプランジャ、10はブレード取付け部、11はブレード、12はベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを内蔵するハウジングと、
前記モータの回転をプランジャの往復動に変換する往復動変換機構と、
前記プランジャに着脱可能に設けられ、切断材料を切断可能なブレードと、
前記ブレードと空間的に交わるように延びる部分を有するベースとを有するセーバソーであって、
前記ベースは、少なくともブレードと空間的に交わる第1の部材と、前記ハウジングより延び、該第1の部材と接続される第2の部材とを有しており、
前記第1の部材は、少なくとも前記ブレードと交わる方向へと移動可能であることを特徴とするセーバソー。
【請求項2】
前記第1の部材は軸を有しており、
前記第2の部材は前記プランジャと交わるように延びる長穴を有しており、
前記軸と前記長穴とが係合しており、
前記第1の部材は、前記長穴の所定の位置で係止可能であることを特徴とする請求項1記載のセーバソー。
【請求項3】
前記軸は、その軸方向に、前記長穴と係止可能な第1の位置と、前記長穴と係止不可能な第2の位置とを有することを特徴とする請求項2記載のセーバソー。
【請求項4】
前記第1の部材は、前記第2の部材に対して回動可能に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載のセーバソー。
【請求項5】
前記ブレードは、前記プランジャに取付け可能な被取付け部を有しており、
前記ブレードは、前記プランジャに被取付け部を介して第1の位置と、前記第1の位置と180度逆転した第2の位置に取付け可能であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載のセーバソー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−241243(P2009−241243A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94185(P2008−94185)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】