説明

ゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る触媒組成物の製造法

ゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る成形された触媒組成物の製造法において、該方法は(a)ゼオライトおよび1種またはそれ以上の非ゼオライト成分を含んで成る前駆体混合物を老化させてゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る組成物をつくり、(b)ゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る組成物を成形して成形体をつくる段階を含んで成ることを特徴とする方法。この方法によれば、均一に分散したゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る成形体の製造が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る成形された触媒組成物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこのような組成物は、ゼオライトおよび非ゼオライト成分を混合し、次いでこの混合物を成形して粒子にすることにより製造されることは公知である。
【0003】
他方、特許文献1には、(a)アルミニウム化合物、マグネシウム源およびゼオライトを含んで成る前駆体混合物をつくり、(b)この前駆体混合物を成形して成形体をつくり、(c)これを老化させて陰イオン性粘土、ゼオライトおよびベーマイトを含む成形体を得ることによりゼオライトおよび非ゼオライト化合物(ベーマイトおよび陰イオン性粘土)を含んで成る成形体を製造する方法が記載されている。この場合ベーマイトは老化段階中に過剰のアルミニウム化合物からつくられる。
【0004】
非ゼオライト化合物を生成させる際にゼオライトを存在させる利点は、一般に公知の上記のような方法を使用する場合に比べ、得られる成形体の内部でゼオライトおよび非ゼオライト成分がいっそう均一に分散するからである。
【0005】
しかし、老化させる前に、即ち最終的な量の非ゼオライト成分が生成する前に前駆体混合物を成形すると、一般に非ゼオライト化合物の収率が比較的低くなる。このような低い収率が得られる一つの理由は、非ゼオライト化合物を得るための(結晶化)反応は一般に水性相を介して生じるという事実のためである。成形後、成形体は成形体の固定された位置において個々の前駆体粒子を含んでおり、従ってこれらの粒子と水との相互作用が制限される。さらに、前駆体粒子が成形体の中で固定されると、他の前駆体との接触が制限され、これによって2種の異なった前駆体からの非ゼオライト成分の生成に悪影響が及ぼされる。
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/12570号パンフレット。
【発明の開示】
【0007】
本発明においては、均一に分散したゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る成形体を、著しく高い非ゼオライト成分の収率で製造できることが見出された。
【0008】
本発明方法は、
(a)ゼオライトおよび1種またはそれ以上の非ゼオライト成分の前駆体を含んで成る前駆体混合物を老化させてゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る組成物をつくり、
(b)このゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る組成物を成形して成形体をつくる段階を含んで成っている。
【0009】
最終生成物はゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る成形体である。ゼオライトは非ゼオライト成分の内部に埋め込まれたスペーサーとして作用し、これによって成形体の中に多孔性および到達可能性(accessibility)をつくる。ゼオライトは非ゼオライト成分に取り囲まれ、それと緊密に接触している。換言すれば、ゼオライトは非ゼオライト成分で被覆されている。
【0010】
本発明方法に使用するのに好適なゼオライトはペンタシル(pentasil)ゼオライト(例えばZSM−5、ゼオライトβ)、フォジャサイト(faujasite)ゼオライト(例えばゼオライトXおよびY)、ゼオライトA、モーデナイト(mordenite)、カバザイト(chabazite)、キノプタロザイト(chinoptalozite)、エリオナイト(erionite)、MCM−型の材料(例えばMCM−41)、VIP−5、ITQ−21、SAPO、ALPO、および/または予備公刊された米国特許出願、US/0048737 A1号記載のアルミノ珪酸塩である。必要に応じゼオライトは超安定化された(例えばUSY)もの、フラッシュ・カ焼(falsh−calcined)されたもの、有機珪酸エステル、有機硼酸エステル、または有機チタン酸エステルで処理されたもの、および/または随時アルカリ土類金属、遷移金属および/または希土類金属でイオン交換されたものであることができる。
【0011】
好適な具体化例においては、フォジャサイト・ゼオライトおよびペンタシル・ゼオライトの両方を使用する。本発明方法によれば、両方のゼオライトを非ゼオライト成分(即ちマトリックス)と緊密に接触させ、その結果、成形体をFCC触媒または添加物として使用した場合、軽量オレフィンの製造量を増加させることができる。本発明方法によれば、フォジャサイト・ゼオライトおよび活性マトリックス(一次クラッキング成分)を緊密に接触させ(例えばNNN配置)、あるいはさらに良好にはペンタシル型のゼオライトに結合させることができる。一次および二次成分のこのような構造的な配置によりFCC法において軽量オレフィンの収率が増加する。
【0012】
本明細書において「非ゼオライト成分」という言葉は、触媒業界の専門家がゼオライト構造をもっていると見做さない化合物に対して使用される。このような非ゼオライト成分の例にはベーマイト、陰イオン性粘土(例えばハイドロタルサイト(hydrotalcite))、陽イオン性粘土(例えばスメクタイト(smectite))および燐酸アルミニウムのゲルが含まれる。
【0013】
好適な非ゼオライト成分はベーマイトである。「ベーマイト」と言う言葉は、アルミニウムの酸化物−水酸化物[AlO(OH)](天然産のベーマイトまたはダイアスポア(diaspore))に近いX線回折像(XRD)を示すが、異なった量の水和水を含み、また表面積、細孔容積、および比重が異なっており、且つ熱処理において異なった熱特性をもったアルミナ水和物を意味する。ベーマイトの異なったタイプのXRDパターンは特有なベーマイト[AlO(OH)]のピークを示すが、これらのピークの鋭さおよび正確な位置は結晶化度、結晶の大きさ、および欠陥の量に依存している。
【0014】
広義においてベーマイト・アルミナには二つの範疇がある。一つは疑似結晶性のベーマイト(またプソイド・ベーマイトまたはゼラチン状ベーマイトとも呼ばれる)であり、他の一つは微結晶性ベーマイトである。疑似結晶性ベーマイトは通常微結晶性ベーマイトに比べ表面積が大きく、大きな細孔をもち且つ細孔容積が大きく、比重が小さい。これらは容易に水または酸に分散し、結晶の大きさは小さく、多数の水和した水分子を含んでいる。結晶の大きさが小さく結晶の欠陥が大きい結果、疑似結晶性ベーマイトは微結晶性ベーマイトよりも広いXRDピークを示す。
【0015】
本明細書の目的に対し、疑似結晶ベーマイトは最大強度の半分の長さの所での(020)ピークの幅が2θとして1.5°またはそれ以上であるものとして定義される。最大強度の半分の長さの所での(020)ピークの幅が2θとして1.5°より小さいものは微結晶性ベーマイトと考えられる。銅の放射線に対し(020)の反射は2θとして約14°に現れる。若干の典型的な市販の疑似結晶性ベーマイトはCondea社のPural(R),Catapal(R)およびVersal(R)の製品である。典型的な市販の微結晶性ベーマイトはCondea社のP−200である。
【0016】
本発明方法で生じる生成物において得られるベーマイトの結晶性は老化中における前駆体混合物のpHおよび温度に依存する。温度およびpHが高いほど、得られるベーマイトの結晶性は増加する。
【0017】
本発明方法の段階(a)の前駆体混合物に加えるのに適したベーマイト前駆体は下記に列記するようなアルミニウム化合物である。ベーマイト前駆体としてこれらのアルミニウム化合物を2種またはそれ以上使用することもできる。
【0018】
他のタイプの非ゼオライト成分は粘土および陽イオン性粘土である。陰イオン性粘土は、2価および3価の金属水酸化物の特殊な組み合わせからつくられた正に荷電した相から成る結晶構造をもち、この相の間に陰イオンおよび水が存在する。ハイドロタルサイトは天然産の陰イオン性粘土の例であり、その中で3価の金属はアルミニウム、2価の金属はマグネシウムであり、主として存在する陰イオンは炭酸イオンである。マイクスネライト(Meixnerite)は陰イオン性粘土であり、その中で3価の金属はアルミニウム、2価の金属はマグネシウムであり、主要な陰イオンはヒドロキシルである。「陰イオン性粘土」の同義語はハイドロタルサイト状の材料および層状の二重水酸化物である。
【0019】
陽イオン性粘土は相の間に陽イオンをもった層状の構造物である。陽イオン性粘土の層は3価および4価の金属、および随時2価の金属からつくられる。好適な種類の陽イオン性粘土はスメクタイト型の材料である。スメクタイト型の材料は層の中に2価、3価および4価の金属、例えばMg、AlおよびSiをもっている。
【0020】
従って、非ゼオライト成分として陰イオン性粘土を得るためには、非ゼオライト成分の少なくとも2種の非ゼオライト成分前駆体:即ち2価および3価の金属化合物が必要である。非ゼオライト成分として陽イオン性粘土を生成させるには前駆体として少なくとも1種の3価の金属化合物および1種の4価の金属化合物、そして随時1種の2価の金属化合物が必要である。
【0021】
適当な2価の金属化合物には、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、カルシウム、バリウム、およびこれらの組み合わせが含まれる。適当な亜鉛、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、カルシウム、およびバリウムの化合物はそれぞれの酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、硝酸塩、および塩化物である。
【0022】
適当なマグネシウム化合物は、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム、例えばMgO、Mg(OH)、ハイドロマグネサイト、マグネシウム塩、例えば蟻酸マグネシウム、ヒドロキシ酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシ炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、および塩化マグネシウム、並びにマグネシウム含有粘土、例えばドロマイト、サポナイト、およびセピオライトを含んでいる。
【0023】
好適な2価の金属化合物は、比較的廉価な材料であるために酸化物および水酸化物である。さらにこれらの材料は、洗滌して除去しなければならないか、或いは加熱すると環境的に有害なガスを放出する生成物中の陰イオンを放出しない。
【0024】
適当な4価の金属化合物は珪素化合物、例えば(メタ)珪酸ナトリウムまたは水ガラス、安定化したシリカゾル、シリカゲル、ポリ珪酸、オルト珪酸テトラエチル、煙霧シリカ、沈澱シリカ、およびこれらの混合物を含んでいる。
【0025】
適当な3価の金属化合物はアルミニウム、ガリウム、インジウム、鉄、クロム、バナジン、コバルト、マンガン、セリウム、ニオブ、ランタン、およびこれらの混合物を含んでいる。
【0026】
適当なガリウム、インジウム、鉄、クロム、バナジン、コバルト、セリウム、ニオブ、ランタン、およびマンガンの化合物はそれぞれの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、クロロハイドレート、およびアルコキシドである。
【0027】
好適な3価の金属化合物は、比較的廉価な材料であるという理由で、酸化物および水酸化物である。さらにこれらの材料は洗滌して除去しなければならないか、或いは加熱すると環境的に有害なガスを放出する陰イオンを生成物中に残さない。
【0028】
適当なアルミニウム化合物はアルミニウムアルコキシド、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、およびアルミン酸ナトリウムのような水溶性のアルミニウム塩を沈澱させることによってつくられた水酸化アルミニウム、(プソイド)ベーマイト、フラッシュ・カ焼したアルミニウムトリハイドレート(aluminum trihydrate)(Alcoa Cp(R)アルミナ)、無定形ゲルのアルミナのような熱処理されたアルミニウムトリハイドレート、ギブサイト、BOC、およびバイエライトのようなアルミニウムトリハイドレート、およびこれらの混合物を含んでいる。
【0029】
好適なアルミニウム化合物は、材料が比較的廉価であるという理由で、(熱処理した)アルミニウムトリハイドレートおよび無定形ゲルのアルミナである。さらにこれらの材料は洗滌して除去しなければならないか、或いは加熱すると環境的に有害なガスを放出する陰イオンを生成物中に残さない。
【0030】
これらのアルミニウム化合物のいくつかは、ベーマイトの生成の種子として作用する。特にベーマイト前駆体としてアルミニウムトリハイドレートを使用する場合、種子があることが望ましい。適当な種子はベーマイトをつくるための公知の種子、例えば市販のベーマイト、(Catapal(R)、Condea Versal(R)、P−200(R)等)、無定形の種子、摩砕したベーマイトの種子、アルミン酸ナトリウム溶液からつくられたベーマイト、熱処理したアルミニウムトリハイドレートの種子、例えばFC ATHの種子である。
【0031】
前駆体混合物が非ゼオライト成分の2種またはそれ以上の前駆体を含んでいる場合、2種以上の非ゼオライト成分を得ることができる。例えば、非ゼオライト成分の前駆体がアルミニウム化合物および2価の金属化合物である場合、陰イオン性の粘土が唯一の生成する非ゼオライト成分であるか、或いはベーマイトおよび陰イオン性粘土の混合物が生じる。結果はアルミニウム対2価の金属の比および処理条件に依存するであろう。
【0032】
前駆体混合物はさらに他の成分、金属添加物、燐含有化合物、硼素含有化合物、カオリン、酸、塩基等を含んでいることができる。
【0033】
適当な金属添加物は希土類金属(例えばCe、La)、VI族の金属、VIII族の金属(Pd、Pt)、アルカリ土類金属(例えばCa、Mg、およびBa)、および/または遷移金属(例えばRh、Nb、Co、Mn、Fe、Ti、Cr、Zr、Cu、Ni、Zn、Mo,W,V、Sn)を含んで成る化合物である。
【0034】
燐含有化合物の例は燐酸、燐酸アンモニウム、および燐酸ナトリウムである。アルミニウム含有化合物と一緒に燐酸アルミニウムが生じることができる。上記の金属添加物を用いるとドーピングされた燐酸アルミニウム、例えばLaをドーピングした燐酸アルミニウム、Ceをドーピングした燐酸アルミニウム、Znをドーピングした燐酸アルミニウム、またはMgをドーピングした燐酸アルミニウムをつくることができる。
【0035】
これらの添加物は前駆体混合物に別々に加えることができ、或いは1種またはそれ以上のこれらの添加物をドーピングした非ゼオライト化合物の前駆体により添加することができる。
【0036】
前駆体混合物を老化させる。「老化」と言う言葉は懸濁物を熱的または熱水的条件下において約30分〜約72時間処理することを意味する。この文脈において「熱水的」と言う言葉は、水(または水蒸気)の存在下において温度約100℃以上、圧力は大気圧より高い圧力、例えば自発性圧力下にあることを意味する。「熱的」とは温度が約15〜100℃で圧力は大気圧であることを意味する。
【0037】
好適な老化温度は25〜375℃、好ましくは50〜200℃、最も好ましくは100〜175℃である。老化時間は好ましくは少なくとも約30分、さらに好ましくは少なくとも約45分、もっと好ましくは少なくとも約1時間である。老化時間は好ましくは約72時間以下、さらに好ましくは約24時間以下、もっと好ましくは約6時間以下である。
【0038】
これに加えて、前駆体混合物を添加する前に、前駆体混合物またはその任意の成分を摩砕することができる。本明細書において「摩砕」と言う言葉は粒径を減少させる任意の方法と定義される。このような粒径の減少は同時に反応表面を生成させ、或いは粒子を加熱する結果を伴うことができる。摩砕に使用できる装置はボールミル、高剪断混合機、コロイド混合機、および超音波をスラリの中に導入し得る電気的トランスデューサーを含んでいる。低剪断混合機、即ち成分を実質的に懸濁状態に保って行われる撹拌は「摩砕」とは見做さない。
【0039】
本発明方法は連続的な方法で行うことが好ましい。さらに好ましくは2個またはそれ以上の変換容器を含んで成る装置、例えば公刊されていない特許出願PCT/EP 02/04938号記載の装置中で行われる。
【0040】
例えばゼオライトおよびアルミニウム化合物を供給物調製容器の中で混合し、この中で老化を行うことができる。
【0041】
老化の前または老化の際に、即ち調製容器または変換容器の一つの中で、前駆体混合物にさらに他の成分を加えることができる。例えば第1の変換容器の中でゼオライトおよびアルミニウム化合物を老化させてゼオライトおよびベーマイトを含んで成る組成物をつくり、他方第2の変換容器の中でマグネシウム化合物を加え、この混合物を老化させてゼオライトおよび非ゼオライト成分としてベーマイトおよびMg−Al陰イオン性粘土を含んで成る組成物をつくることができる。
【0042】
他の例は得られる生成物中の微結晶性ベーマイト対疑似結晶性ベーマイトの比を変化させることに関連している。アルミニウム化合物およびゼオライトを含んで成る前駆体混合物を第1の調製容器に加える。この容器の中でpHおよび温度を主として微結晶性ベーマイトが生じるように調節する。pHおよび温度が疑似結晶性ベーマイトの生成に有利な第2の容器に対しては、追加量のアルミニウム化合物を加える。この追加量のアルミニウム化合物は疑似結晶性ベーマイトに変わり、ゼオライト、疑似結晶性ベーマイト、および微結晶性ベーマイトが生じるであろう。
【0043】
同じ原理を使用し、例えば異なったタイプのベーマイト、陰イオン性粘土、および/またはスメクタイトを含むいくつかの組成物をつくることができる。
【0044】
ゼオライトおよび非ゼオライト成分の混合物を、随時結合剤および/または充填剤の助けを借りて成形して成形体をつくる。適当な成形法には噴霧乾燥、ペレット化、造粒、押し出し(随時捏和と組み合わせる)、ビーズ化、または触媒および吸収剤の分野で使用される他の通常の方法、或いはこれらの組み合わせが含まれる。成形すべき混合物中に存在する液体の量は行われる特定の成形段階に適合していなければならない。混合物中に存在する液体を一部除去するか、および/または余分のまたは他の液体を加えるか、および/または混合物のpHを変化させて混合物をゲル化可能にし成形に適したものにすることが推奨されるであろう。種々の成形法に通常使用される添加物、例えば押出し用添加物を混合物に加えることができる。
【0045】
他の工程段階をさらに追加することができる。例えば成形段階を行う前に、ゼオライトおよび非ゼオライト成分を含む混合物をフラッシュ・カ焼することができる。次にこの(フラッシュ)カ焼生成物を成形段階の前または後で再水和させることができる。
【0046】
再水和の際に、前駆体混合物に加えるのに適したものとして1種またはそれ以上の上記に概説した他の成分を加えることができる。例えばこの際水和段階の前またはその際にマグネシウム化合物を加えることができる。それによってゼオライト、ベーマイト、およびMg−Al陰イオン性粘土を含んで成る組成物が生成する。
【0047】
最終生成物を他の触媒成分、例えば結合剤、充填剤(例えばカオリンのような粘土、酸化チタン、ジルコニア、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイト等)、組成物中に既に存在しているもの以外のゼオライト等と組み合わせることができる。またさらに他の金属添加物、例えば希土類金属、遷移金属、および/または貴金属を含浸またはイオン交換により成形体に加えることもできる。
【0048】
得られた触媒組成物はFCC法、水添処理、Fischer Tropsch合成、アルキル化、水添分解アルキル化、異性化等に適切に使用することができる。
【実施例1】
【0049】
ギブサイト、MgO(Mg/Alのモル比0.5),およびRE−Yを高剪断混合し、固体分25重量%を含む水性スラリをつくる。RE−Yの量は約10重量%(全固体分に関し)である。混合した後の平均粒径は約3μである。
【0050】
このスラリの一部を185℃で2時間老化させる。老化した部分を噴霧乾燥する。
【0051】
X線回折パターン(XRD)により、185℃で老化させた組成物はMg−Al、陰イオン性粘土、RE−Y、および微結晶性ベーマイトを含んでいることが示された。
【実施例2】
【0052】
実施例1を繰り返したが、ギブサイトの代わりにフラッシュ・カ焼したギブサイトを用いた。
【0053】
85℃で老化させてつくられた組成物はMg−Al陰イオン性粘土、RE−Y,および疑似結晶性ベーマイトを含んでいるが、185℃で老化させた組成物はMg−Al陰イオン性粘土、RE−Y,および微結晶性ベーマイトを含んでいる。
【実施例3】
【0054】
実施例2を繰り返したが、4重量%(全固体分含量に関し)のZn(NOをスラリに加えた。
【0055】
85℃で老化させてつくられた組成物はZnがドーピングされたMg−Al陰イオン性粘土、RE−Y,およびZnがドーピングされた疑似結晶性ベーマイトを含んでいるが、185℃で老化させた組成物はZnがドーピングされたMg−Al陰イオン性粘土、RE−Y,およびZnがドーピングされた微結晶性ベーマイトを含んでいる。
【実施例4】
【0056】
実施例3を繰り返したが、4重量%のZn(NOの代わりに6重量%(全固体分含量に関し)のLa(NOをスラリに加えた。
【0057】
85℃で老化させてつくられた組成物はLaがドーピングされたMg−Al陰イオン性粘土、RE−Y,およびLaがドーピングされた疑似結晶性ベーマイトを含んでいるが、185℃で老化させた組成物はLaがドーピングされたMg−Al陰イオン性粘土、RE−Y,およびLaがドーピングされた微結晶性ベーマイトを含んでいる。
【実施例5】
【0058】
実施例1を繰り返したが、ギブサイトの代わりにギブサイトおよびフラッシュ・カ焼したギブサイトの50/50混合物を用いる。Mg/Alのモル比は0.25であり、5重量%(全固体分含量に関し)のCe(NOをスラリに加えた。
【0059】
85℃で老化させてつくられた組成物はCeがドーピングされた陰イオン性粘土、RE−Y,およびCeがドーピングされた疑似結晶性ベーマイトを含んでいるが、185℃で老化させた組成物はCeがドーピングされた陰イオン性粘土、RE−Y,およびCeがドーピングされた微結晶性ベーマイトを含んでいる
【実施例6】
【0060】
フラッシュ・カ焼したギブサイト、MgO(Mg/AIのモル比0.25),8重量%のRE−Y、および6重量%のCe(NOおよび15重量%(すべて全固体分に関し)のカオリンを高剪断混合し、固体分25重量%を含む水性スラリをつくる。
【0061】
このスラリの一部を85℃で18時間老化させる。他の一部は185℃で2時間老化させる。老化した部分を噴霧乾燥する。
【0062】
X線回折パターン(XRD)により、85℃で老化させてつくられた組成物は陰イオン性粘土、カオリン、RE−Y、およびCeがドーピングされた微結晶性ベーマイトを含んでいるが、185℃で老化させた組成物はハイドロタルサイト、カオリン、RE−Y,およびCeがドーピングされた微結晶性ベーマイトを含んでいることが示された。
【0063】
製造後、クラッキング活性、ガソリンおよびディーゼル油中の硫黄低減度、およびFCC再生器の廃ガスのSO/NOの除去に関して組成物を試験する。
【実施例7】
【0064】
実施例7を繰り返したが、噴霧乾燥した生成物を550℃で4時間カ焼した後、4重量%のバナジン酸アンモニウムを含む水溶液中で再水和させる。得られた生成物を濾過し乾燥する。
【実施例8】
【0065】
フラッシュ・カ焼したギブサイト、MgO(Mg/Alのモル比0.25)、15重量%の鉄でイオン交換したZSM−5、および4重量%の硫酸バナジルを高剪断混合してスラリをつくる。
【0066】
このスラリの一部を85℃で18時間老化させる;他の一部を185℃で2時間老化させる。老化した部分を噴霧乾燥する。ギブサイトおよびMgOの全重量は乾燥した最終生成物が約90重量%のギブサイトおよびMgOを含むような量であった。
【実施例9】
【0067】
細かく粉砕したギブサイト、MgO(Mg/Alのモル比2.3)、8重量%のRE−USYを高剪断混合してスラリをつくる。
【0068】
このスラリの一部を85℃で18時間老化させる;他の一部を185℃で2時間老化させる。老化した部分を噴霧乾燥する。
【実施例10】
【0069】
70重量%のフラッシュ・カ焼したギブサイト(Alcoa CP−3(R))および約30重量%のRE−USY(すべて全固体分含量に関し)を含んで成る水性スラリをつくる。高剪断混合によりスラリを均一化する。スラリのpHを約5に調節する。 スラリを165℃で1時間老化させる。
【0070】
XRDは、微結晶性ベーマイトおよびRE−USYを含んで成る組成物が生成したことを示した。
【0071】
この組成物をフラッシュ・カ焼し、水の中でスラリ化し、噴霧乾燥して微小球体をつくる。この微小球をMgOを含んで成る懸濁液(懸濁液中のMg/Alの比は1)の中でスラリ化し、85℃で18時間老化する。老化の間、水酸化アンモニウムを用いてpHを9.5に調節する。
【0072】
得られる生成物はRE−USY、疑似結晶性ベーマイト、およびMg−Al陰イオン性粘土を含んでいる。
【実施例11】
【0073】
実施例10を繰り返したが、噴霧乾燥段階は85℃で老化させる前ではなく後に行う。
【0074】
得られる生成物はRE−USY、疑似結晶性ベーマイト、およびMg−Al陰イオン性粘土を含んでいる。
【実施例12】
【0075】
実施例10を繰り返したが、165℃で老化させた後、スラリにMgOを加えた。得られるMg/Alの比は1である。pHを約9に調節する。
【0076】
得られたスラリをさらに1時間165℃で老化させた後、フラッシュ・カ焼し、水中で再スラリ化し、噴霧乾燥する。
【0077】
得られた生成物はRE−USY、疑似結晶性ベーマイト、およびMg−Al陰イオン性粘土を含んでいる。
【実施例13】
【0078】
60重量%の細かい粒子状のギブサイトおよび約40重量%のRE−Y(全固体分含量に関し)を含んで成る水性のスラリをつくる。このスラリをコロイド混練り機で摩砕し、フラッシュ・カ焼する。フラッシュ・カ焼した生成物を水中で再スラリ化し、蟻酸を用いてpHを約5に設定し、165℃で1時間再水和する。このスラリは25重量%の固体分を含んでいる。
【0079】
MgOをスラリに加え(Mg/Alは約1)、pHを9.5に調節し、スラリを85℃で18時間老化させる。最終的な混合物を噴霧乾燥する。
【0080】
XRDは、RE−Y,陰イオン性粘土、およびベーマイトを含んで成る組成物が生成したことを示している。
【実施例14】
【0081】
60重量%の細かい粒子状のギブサイトおよび約40重量%のRE−Y(全固体分含量に関し)を含んで成る水性のスラリをつくる。このスラリをコロイド摩砕機で摩砕し、フラッシュ・カ焼する。フラッシュ・カ焼した生成物を水中で再スラリ化し、硝酸を用いてpHを約5に設定し、165℃で1時間再水和する。このスラリは25重量%の固体分を含んでいる。
【0082】
得られたスラリに10重量%のナトリウムを含まないシリカゲルを加える。この混合物を均一化し、噴霧乾燥する。生成物はRE−Y、ベーマイト、およびシリカを含んで成っている。
【実施例15】
【0083】
70重量%のUSYゼオライトおよび30重量%のZSM−5(すべて全固体分含量に関し)を含む水性スラリを高剪断混合し、フラッシュ・カ焼する。フラッシュ・カ焼した後、35重量%のフラッシュ・カ焼したギブサイトおよび10重量%の硝酸ニッケルを含んで成る懸濁液の中で生成物を再スラリ化し、高剪断混合する。
【0084】
得られる混合物をpH6において165℃で1時間老化させる。スラリを脱水し、押し出してペレットをつくる。ペレットをカ焼し、6重量%の硝酸コバルトで含浸する。
【実施例16】
【0085】
70重量%のUSYゼオライトおよび30重量%のZSM−5(すべて全固体分含量に関し)を含む水性スラリを高剪断混合し、フラッシュ・カ焼する。フラッシュ・カ焼した後、フラッシュ・カ焼したギブサイト、MgO(Mg/Alのモル比0.5)および10重量%の硝酸ニッケルを含んで成る懸濁液の中で生成物を再スラリ化し、高剪断混合する。MgOおよびフラッシュ・カ焼したギブサイトの全量は2種のゼオライトの量の約40重量%である。
【0086】
得られる混合物をpH9.5において165℃で1時間老化させる。スラリを脱水し、押し出してペレットをつくる。最後にペレットをカ焼し、6重量%の硝酸コバルトで含浸する。
【実施例17】
【0087】
安定化させたREY、粉砕したギブサイト、および酸化マグネシウムを含んで成るスラリをつくる。このスラリは固体分含量が28重量%、Mg/Alのモル比は2.3である。コロイド摩砕機の中でスラリを摩砕する。
【0088】
このスラリを85℃で18時間老化させる。次に老化したスラリを噴霧乾燥して微小球体をつくる。この微小球体をカ焼し、次いで85℃において8時間水性スラリの中で再水和させる。
【0089】
得られた組成物はゼオライトREYおよび非ゼオライト化合物としてのMg−Al陰イオン性粘土を含んで成っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る成形された触媒組成物の製造法において、該方法は
(a)ゼオライトおよび1種またはそれ以上の非ゼオライト成分の前駆体を含んで成る前駆体混合物を老化させてゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る組成物をつくり、
(b)ゼオライトおよび非ゼオライト成分を含んで成る組成物を成形して成形体をつくる段階を含んで成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
非ゼオライト成分はベーマイト、陰イオン性粘土、および燐酸アルミニウムゲルから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
非ゼオライト成分の前駆体はアルミニウム化合物であることを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された方法。
【請求項4】
少なくとも2種の異なったアルミニウム化合物を非ゼオライト成分の前駆体として使用することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
該混合物を噴霧乾燥により成形することを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された方法。
【請求項6】
前駆体混合物の中に金属添加物が存在することを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された方法。
【請求項7】
成形体に対し次いで含浸工程またはイオン交換工程を行うことを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された方法。
【請求項8】
上記請求項のいずれか一つに記載された方法によって得られる成形された触媒組成物。

【公表番号】特表2008−544853(P2008−544853A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519746(P2008−519746)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/026500
【国際公開番号】WO2007/006047
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(506417681)アルベマール・ネーザーランズ・ベーブイ (20)
【Fターム(参考)】