説明

ゼオライトの複合的な系を有する添加剤及び調製方法

LPG及び軽質オレフィンの生産を最大化するための流動接触分解(FCC)用のプロセス単位装置における触媒インベントリーと混合するための添加剤について記載されている。前記添加剤は、MFI型のゼオライト、好ましくはゼオライトZSM−5、Y型のゼオライト、及びリン源を単一の粒子中に組み込んでいるマトリックスを含む。この添加剤をFCC単位装置の平衡触媒と1.0〜40重量%の割合で混合することにより、LPG及び軽質オレフィン、主としてプロピレン、の生産が最大化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素の流動接触分解のための単位装置(unit)において使用するための触媒系に関し、より具体的には、単一の粒子内に、マトリックス、MFI型のゼオライト、特にZSM−5、Y型のゼオライト、及びリン源を含む添加剤に関する。前記添加剤は、流動接触分解用の単位装置において、転化率が維持され、生産されるLPG、エチレン、プロピレン及びブチレンの収率の水準に増加があるように、従来のFCC触媒と組み合わせて使用することができる。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解(FCC)プロセスは、世界中で使用される主要な石油精製技術の1つである。このプロセスは、高分子量の炭化水素の流れを、より大きい付加価値のある、例えばガソリン及び液化石油ガス(LPG)の、軽質炭化水素の流れに転化することを可能にする。
【0003】
従来のFCCプロセスにおいて、触媒は、480℃〜550℃の範囲の温度の反応器中、及び空気の存在下で触媒に堆積したコークス(coke)を650℃〜730℃の範囲の温度で燃焼させる再生器中を連続的に循環する。FCCプロセスにおいて採用される触媒は、伝統的に、Y型のゼオライト、アルミナ、カオリン及びバインダーを含有する。
【0004】
石油化学原料、主としてプロピレン、に対する需要の増大と共に、FCCプロセスにおける軽質オレフィンの収率の最大化を狙いとした非常に多くの研究が行われている。
【0005】
現在のところ、FCCプロセスにおける軽質オレフィン含量の増加は、その操作条件を変更すること及び異なる触媒系を使用することによって獲得することができる。
【0006】
実用上の経験は、FCCプロセスにおける操作条件の厳しさ(severity)の増大、例えば、反応温度の増大又は触媒/石油比の増大などが、軽質オレフィンの収率の増大をもたらすことを示している。
【0007】
幅広く研究されているものの、操作条件の厳しさの増大による、より具体的には温度の増大による、軽質オレフィンの最大化は、非常に多くの欠点、例えば、不安定な触媒の流れ及び反応器中の圧力プロファイルの変化を引き起こす触媒の循環を増加させることの必要性、クラッキング反応の選択性の減少、並びにメタン及びエタン等の望ましくない生成物の収率の増加などを引き起こす。
【0008】
前述のことを考慮して、FCCプロセスにおける軽質オレフィンの最大化を促進するために採用される別の手段は、使用される触媒系の改良である。
【0009】
専門書は、以下で引用している特許文献のように、流動接触分解プロセスにおける活性度、選択性及び安定性を改良するための軽質オレフィンに対して選択性のあるゼオライト、例えばZSM−5などの改良の様々な例を示している。
【0010】
触媒の配合中でのリンを含有する化合物の使用は、例えば、文献米国特許第4,605,637号及び米国特許第4,724,06号において見ることができるように、軽質オレフィンに対して選択的なゼオライトの性能を改良する。
【0011】
重質石油留分のクラッキングによりC及びC化合物、特にイソブタンの生産を増加させるための非晶質マトリックス中に組み込んだモルデナイト(mordenite)型のゼオライト、より具体的には、脱アルミニウム(dealuminated)したモルデナイトゼオライトに基づく添加剤の使用は、文献EP0288363において既に提案されている。
【0012】
米国特許第6,355,591号は、LPGの生産を増加させる目的を有するFCC触媒のための添加剤の組成物中でのリン酸アルミニウム及びZSM−5型、β型、モルデナイト型、又はそれらの混合物であるゼオライトの使用について記載している。
【0013】
LPG及び軽質オレフィンの生産を最大化することを目的とするFCCプロセスにおけるZSM−5型のゼオライトの使用は幅広く研究されてきたが、それらの添加剤としての応用は依然としてある限界に直面している。添加剤としてのZSM−5型のゼオライトに基づく触媒の使用における主な限界は、それらの大量の使用がベース触媒(base catalyst)の希釈につながり、したがって、希釈効果としても知られる触媒系の活性の低下がもたらされることである。
【0014】
触媒系の活性は、添加剤中へのアルミナ等の活性マトリックスの導入によって増すことができるが、このアルミナはZSM−5の安定化のために必要なリンを捕捉し、軽質オレフィンの低い生産の原因となる。
【0015】
系の活性を増すための別の方法は、触媒系のゼオライトYの量を増すことであり得る。しかしながら、ベース触媒に加えられるYの量は、この触媒の物理的性質、例えば磨耗(abrasion)に対する耐性などによって常に制限される。
【0016】
過度のゼオライトYは、触媒系の活性を増すものの、水素の移動を促進し、軽質オレフィンの前駆物質に対する選択性を低下することも、指摘されなければならない。
【0017】
文献WO2006/050487は、1つはベース触媒であるY型のゼオライトを含有し、もう1つは、添加剤であるペンタシルゼオライト、好ましくはZSM−5、を含有する2つの型の異なる粒子の混合物の配合の最適化について記載している。この配合は、LPG及びプロピレンの高い収率を得ることに向けられている。この場合、添加剤又はその成分の組成に改良点は存在しないであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、LPG及び軽質オレフィンの収率を増加させるために、添加剤については、触媒系の希釈を引き起こし、その物理的性質を妨げ、又は関連する操作変数の厳しさを増すことなく、現在使用されているものより大量に加えることができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
石油精製において、流動接触分解(FCC)プロセスのための単位装置における軽質オレフィンの最大化は、平衡触媒インベントリー(equilibrium catalyst inventory)への添加剤の添加によって有利に行うことができる。
【0020】
本発明は、
a)10〜55重量%の範囲の濃度のMFI型のゼオライト、好ましくはZSM−5と、
b)該ゼオライトZSM−5に対して0.1〜2.0の重量比のY型のゼオライトと、
c)五酸化物の形で表される2.0重量%と25重量%の間の濃度のリンと
を組み込んでいる微小球の形のマトリックスから調製される添加剤を提供する。
【0021】
前記添加剤は、FCC単位装置の平衡触媒インベントリーと、現在使用されているものより多い量で、触媒系の希釈を引き起こしたり又はその物理的性質を妨げることなく混合することができ、同時にLPG及び軽質オレフィンの生産を最大化する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、流動接触分解プロセスで使用するための添加剤及びそれを調製する方法に関する。
【0023】
前記添加剤は、
a)10重量%と55重量%の間の濃度のMFI型のゼオライト、好ましくはZSM−5と、
b)該ゼオライトZSM−5に対して0.1〜2.0の重量比のY型のゼオライトと、
c)Pの形で表される2.0〜25重量%の濃度のリンと
を組み込んでいる微小球の形に調製されたマトリックスから構成されている。
【0024】
概して、前記添加剤の調製方法は、次の:
a)無機酸化物のゾルを不活性物質と混合することによってマトリックスを調製する段階と、
b)該マトリックスを、リンを含有する化合物の溶液を加えることによって改質(modify)する段階と、
c)MFI型のゼオライト、好ましくはZSM−5、の懸濁液を該改質したマトリックスに加える段階と、
d)c)において得られた混合物に、懸濁液の形態のY型のゼオライトを加える段階と、
e)d)で得られた該混合物を10℃から90℃まで、好ましくは、20℃から40℃まで変化する温度でそれらの熟成に必要な一定時間保持する段階と、
f)所望により、洗浄及びか焼操作等の後処理を行う段階と
を含む。
【0025】
好ましくは、この方法で使用するための上記無機酸化物のゾルは、シリカ、アルミナ又はシリカ−アルミナのゾルであり、上記不活性物質は、カオリンである。
【0026】
リンを組み込むことによって該マトリックスを改質するためには、リン酸(HPO)、亜リン酸(HPO)、リン酸の塩、亜リン酸の塩及びこれらの混合物から選択される化合物の溶液を添加することが推奨される。(NHHPO、(NH)HPO、(NHHPO及びこれらの混合物等のアンモニウム塩を使用することもできる。
【0027】
該添加剤の全重量に対するPの形で表されるリンの重量パーセントは、重量で2.0%から25.0%までの範囲、好ましくは3.0%と20%の間、より好ましくは5.0%と15%の間である。
【0028】
この方法で使用するためのMFI型のゼオライトの中では、好ましくはZSM−5を使用する。
【0029】
使用されるMFI型のゼオライトの懸濁液は、一般的には、20mg/100ml〜30mg/100ml、好ましくは23mg/100ml〜27mg/100ml、例えばおよそ25%の固形分含量を有しており、粒子は、3μm未満の平均直径(d50)を有する。
【0030】
前記添加剤の調製で使用することができるY型のゼオライトは、1.5重量%未満の低いナトリウム含量及び8Å以上の孔径(pore opening)を有しており、例えば、USY型及びREY型のゼオライトである。
【0031】
使用されるY型のゼオライトの懸濁液は、一般的には、20mg/100ml〜30mg/100ml、好ましくは23mg/100ml〜27mg/100ml、例えばおよそ25%の固形分含量を有しており、粒子は、3μm未満の平均直径(d50)を有する。それらは、添加剤中のY型のゼオライトとMFI型のゼオライトの間の重量比が、0.1〜2、好ましくは0.2〜1.5、より好ましくは0.4〜1.33の範囲内であるように添加しなければならない。
【0032】
Y型のゼオライトは、改質したマトリックス及びMFI型のゼオライトを含んでいる混合物と15分を超える時間の接触を保たなければならない。
【0033】
改質したマトリックス、MFI型のゼオライト及びY型のゼオライトを含む最終混合物は、次にスプレー乾燥機を用いて乾燥させる。
【0034】
所望により、汚染物を除去するための洗浄、及び生成した添加剤の機械的性質、より具体的にはその磨耗に対する抵抗を改善することを目的としたか焼等の後処理を利用することができる。
【0035】
本発明の別の態様は、LPG及び軽質オレフィンの生産を最大にするためのFCCプロセスであり、これは、添加剤を該プロセスの平衡触媒インベントリーに加えることによって制御される。
【0036】
このプロセスは、FCCプロセスの一般的な供給原料、例えば石油蒸留物又は残留供給原料、好ましくは軽油タイプ(gas oil type)、減圧軽油(vacuum gas oil)、常圧残渣油、減圧残渣油など、一般的には343℃より上の沸点を有する供給原料に適用する。
【0037】
従来のFCCプロセス単位装置においては、運転条件としては、0.5:1と15:1の間、好ましくは3:1と8:1の間の触媒/石油比、0.1秒と50秒の間、好ましくは0.5秒と5秒の間、より好ましくは0.75秒と4秒の間の触媒と接触する時間、及び482℃と約565℃の間の反応器頂部の温度(reactor top temperature)が挙げられる。
【0038】
さらに、FCCプロセス単位装置に関しては、FCCのための任意の商業ベースの触媒、例えば、Y型のゼオライトに基づくものを使用することができる。
【0039】
それ故、本発明の添加剤は、LPG及び軽質オレフィンの生産を最大化する目的でFCCプロセスの平衡触媒インベントリーに添加することができる。この混合物は、該単位装置の平衡触媒インベントリーに対して1重量%と40重量%の間の範囲の添加剤の割合を有さなければならない。
【0040】
LPG及び軽質オレフィン、より具体的にはプロピレン、の収率は、下の実施例で示されているように、単一の粒子中にY型とMFI型のゼオライトを含有する添加剤を使用するとき著しく増加することが、指摘されるべきである。
【0041】
例2の触媒試験において、ゼオライトUSY及びZSM−5を含有する添加剤の、平衡触媒に対して10重量%の割合での使用は、ベース触媒(E−cat)と比較して、LPG及びプロピレンの収率にそれぞれ7.1及び4.0の絶対的増加を引き起こすことが認められる。対照的に、ベース触媒(E−cat)に対するLPG及びプロピレンの増加は、ZSM−5型のゼオライトのみを含有する従来の添加剤(R1)を同じ割合で使用するときは、それぞれ4.8及び2.9である。
【0042】
ここに記載されている添加剤中に存在するY型のゼオライトは、それが熱水失活(hydrothermal deactivation)後にX線回折によって測定可能な結晶性を示さないので、恐らくは大部分非晶質活性物質に転換する。したがって、Y型のゼオライトは、そのときMFI型のゼオライトによって分解され、軽質オレフィン(C3〜C4)及びLPGの生産の増加を引き起こす前駆物質を発生するものと考えられる。
【0043】
ZSM−5のみを含有する従来の添加剤の高含量の使用は、一般に希釈効果によって転化率の減少を引き起こすことを強調することが重要である。ところで、ベース触媒に対する従来の添加剤のそれと同等以上の割合で使用される本発明において教示されているゼオライトUSY及びZSM−5を含有する添加剤の使用は、その希釈効果を見ることなく転化率の維持をもたらす。このことは下の例6においてはっきりと示されており、そこでは、平衡触媒に対して6.2重量比%の従来の添加剤の使用(R3)は、転化率の減少を引き起こしている。それから、ゼオライトUSY及びZSM−5を含有する添加剤の10重量比%の使用(A8)は、基本ケースと同様の転化率を示した。
【0044】
以下に示す実施例は、上記の添加剤の調製及びFCCプロセスにおける平衡触媒インベントリーと混合することによるその応用について例証しているが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0045】
(例1)
この例は、Y型のゼオライト及びZSM−5型のゼオライトを含有する添加剤の調製及びその物理的性質について説明する。
【0046】
ゼオライトの平均粒径(d50)が3マイクロメートルより小さいZSM−5型のゼオライトの懸濁液を用意した。
【0047】
並行して、アルミナと一緒のシリカのゾルを含み、これに不活性物質、この場合はカオリン、を加えたマトリックスを用意した。
【0048】
次に、形成されたそのマトリックスにリン酸を加えることによってリンを組み込み、次に、約25%の固形分含量を有するゼオライトZSM−5の懸濁液をその改質されたマトリックスに加えた。
【0049】
2μmと3μmの間の平均粒径及び25%の固形分含量を有する懸濁液の形のY型の2番目のゼオライト構造を、そのようにして形成された混合物に加えた。
【0050】
使用されたY型のゼオライトは、低いナトリウム含量(<1.3重量%)及び7より上、好ましくは約10以上のシリカ−アルミナのフレームワーク比(framework ratio)を有しており、当業者にはUSYとして知られている。
【0051】
形成された最終の混合物を、20℃から40℃まで変化する温度で、それらの熟成に必要な時間保持した。
【0052】
その混合物を、次にスプレー乾燥機中で乾燥した。
【0053】
表1は、2つの添加剤、ここで対照用として取り入れた25重量%のZSM−5を含有する添加剤R1、及び本発明に従って調製した25重量%のZSM−5及び25重量%のUSYを含有する添加剤A1の化学組成及び特性を示す。
【表1】

【0054】
これらの特性は、本発明に従って調製した添加剤A1が、対照用添加剤と同様の密度を有しているが、熱水失活前と後の両方においてより大きい比面積を有することを示している。
【0055】
(例2)
この例は、両方共例1において説明した対照用添加剤(R1)及び添加剤(A1)に対する触媒試験において得られた生成物の転化率及び収率を比較した。
【0056】
試験すべき添加剤は、100%水蒸気により815℃で5時間、予め処理した。
【0057】
処理したそれぞれの添加剤を、次に商業ベースのFCC単位装置から得た平衡触媒(E−cat)と、10%の添加剤対90%のE−catの重量の割合で混合した。
【0058】
表2は、この平衡触媒の化学組成及び物理的性質を示す。
【表2】

【0059】
それぞれの添加剤及び平衡触媒を、上で記載した割合で含む混合物をACE実験装置(Kaiser Technology、米国特許第6,069,012号)において、供給原料として重質軽油(特性は表3に示されている)を用い、触媒/石油重量比6及び温度535℃で試験した。
【表3】

【0060】
表4は、平衡触媒、及び平衡触媒と例1に記載の添加剤(R1及びA1)との混合物に対する転化率及び収率についての比較結果を示す。
【0061】
表4に示されている混合物についての転化率及び収率の値は、添加剤無しで平衡触媒を使用したときの基本の値、転化率及び収率と、混合物(E−cat+添加剤)により得られた値との間の絶対差である。
【表4】

【0062】
これらの結果は、例1に記載の方法に従って調製した25重量%のUSY及び25重量%のZSM−5を含有する添加剤A1が、ゼオライトZSM−5のみを含有する添加剤(R1)よりプロピレン及びLPGの高い収率を与えることを示している。
【0063】
(例3)
この例は、例1において記載されている対照用添加剤(R1)及び例1に記載の方法に従って調製した他の3つの添加剤(A2、A3及びA4)に対する触媒試験において得られた生成物の転化率及び収率を説明する。
【0064】
添加剤A2〜A4は、マトリックスの組成が変化しているのみで、25重量%のZSM−5及び25重量%のUSYを含有する。対照用添加剤R1は、ゼオライトZSM−5のみを25重量%の濃度で含有する。
【0065】
試験される添加剤は、前処理、815℃の100%水蒸気による5時間の失活を受ける。
【0066】
表5は、それら添加剤の特性及び化学組成を示している。
【0067】
処理されたそれぞれの添加剤は、次に商業ベースのFCC単位装置から得られた平衡触媒(E−cat)と10%の添加剤対90%のE−catの重量割合で混合した。
【0068】
それぞれの添加剤及び平衡触媒を含む混合物をACE実験装置(Kaiser Technology、米国特許第6,069,012号)において、供給原料として重質軽油(特性は表3に示されている)を用い、触媒/石油重量比6及び温度535℃で試験した。
【表5】

【0069】
表6は、FCCプロセスにおいて上記の条件で使用したときの対照用添加剤(R1)及び添加剤A2〜A4により得られた収率及び転化率を示している。
【表6】

【0070】
これらの結果は、添加剤A2〜A4が、R1と同じ触媒/石油比を使用するとき、より高い転化率を与え、それらがR1のものよりも良好なLPGに対する選択性を有することを示している。
【0071】
添加剤A2及びA3は、軽質オレフィンに対する選択性における優先的な改良により際立っており、添加剤A4は、転化率における改良により際立っている。
【0072】
(例4)
この例は、対照用添加剤(R2)及び添加剤(A5)(後者は、例1に記載の方法に従って調製した)に対する触媒試験において得られた生成物の転化率及び収率を説明している。
【0073】
添加剤A5は、35重量%のZSM−5及び15重量%のUSYを含有する。対照用添加剤R2は、ゼオライトZSM−5のみを35重量%の濃度で含有する。
【0074】
試験すべき添加剤は、前処理、815℃の100%水蒸気による5時間の失活を受けた。
【0075】
これらの添加剤の特性を表7に示す。
【表7】

【0076】
それぞれの処理した添加剤を、次に、商業ベースのFCC単位装置から得た平衡触媒(E−cat)と、10%の添加剤対90%のE−catの重量比で混合した。
【0077】
それぞれの添加剤及び平衡触媒を上で記載した割合で含む混合物をACE実験装置(Kaiser Technology、米国特許第6,069,012号)において、供給原料として重質軽油(特性は表3に示されている)を用い、触媒/石油重量比6及び温度535℃で試験した。
【0078】
表8は、FCCプロセスにおける添加剤R2及びA5に対して得られた転化率及び収率の結果を示している。
【0079】
これらの結果は、添加剤A5が、対照用添加剤R2と同じ触媒/石油比を使用するとき、LPGに対するより高い転化率及びより高い選択性を与えることを示している。
【表8】

【0080】
(例5)
この例は、本発明に従う添加剤の調製におけるY型のゼオライト源としてのゼオライトUSY及びREYの使用、並びにそれらの特性評価及びFCCプロセスにおける使用について説明する。
【0081】
添加剤A6及びA7は、例1において説明した方法によって調製し、添加剤A6は、重量で20%のUSY及び25%のZSM−5の濃度を有しており、添加剤A7は、重量で20%のREY及び25%のZSM−5の濃度を有している。
【0082】
ゼオライトREYは、ゼオライト中に2%のREを得るようにするゼオライトYのアンモニア及びレアアース(rare earth)の溶液によるイオン交換によって得た。次いで、そのゼオライトは、500℃に近い温度でのか焼を受け、次いで例1において説明した手順によって添加剤に組み込まれた。
【0083】
試験すべき添加剤は、前処理、815℃の100%水蒸気による5時間の失活を受けた。
【0084】
表9は、その添加剤の組成及び特性を示している。
【表9】

【0085】
それぞれの処理した添加剤を、次に、商業ベースのFCC単位装置から得た平衡触媒(E−cat)と、10%の添加剤対90%のE−catの重量比で混合した。
【0086】
それぞれの添加剤及び平衡触媒を上で記載した割合で含む混合物をACE実験装置(Kaiser Technology、米国特許第6,069,012号)において、供給原料として重質石油(特性は表3に示されている)を用い、触媒/石油重量比6及び温度535℃で試験した。
【0087】
表10は、FCCプロセスにおける添加剤A6及びA7により得られた収率及び転化率の結果を示している。
【表10】

【0088】
これらの結果は、添加剤A6が、A7と似ている性能を与えることを示している。これは、ゼオライトUSYが、本発明に従う添加剤の調製において、ゼオライトREYの使用と比較したとき収率及び転化率の損失をもたらすことなく使用することができることを暗示している。
【0089】
(例6)
この例は、対照用添加剤(R3)及び例1で記載の方法に従って調製した添加剤(A8)に対する触媒試験において得られた生成物の転化率及び収率を、希釈効果を示すために説明している。
【0090】
ZSM−5の高い含量を有する商業ベースの添加剤R3を、ゼオライトUSYの添加無しに従来の方法によって調製した。
【0091】
試験すべき添加剤は、事前に、815℃の100%水蒸気による5時間の処理をした。
【0092】
それぞれの処理した添加剤を、次に、商業ベースのFCC単位装置から得た平衡触媒(E−cat)と、混合物中に同じ含量のZSM−5をもたらす6.2%の添加剤R3対93.8%のE−cat及び10%の添加剤A8対90%のE−catの重量による比率で混合した。
【0093】
それぞれの添加剤及び平衡触媒を上で記載した割合で含む混合物をACE実験装置(Kaiser Technology、米国特許第6,069,012号)において、供給原料として重質軽油(特性は表3に示されている)を用い、触媒/石油重量比5及び温度535℃で試験した。
【0094】
その触媒試験の結果を表11に示す。
【0095】
混合物中により低い含量で使用される、USY無しの従来の方法によって調製された高含量のZSM−5を有する添加剤R3は、全転化率の減少(希釈効果)をもたらす。このことは、6.24%の添加剤R3がその系に添加されたときに実証され、転化率は60.6%から59.2%に減少した。
【0096】
提案された新規の添加剤の場合、10%のA8の使用は、添加剤無しの平衡触媒(E−cat)の使用と同等の転化率をもたらす。A8のプロピレン及びLPGに対する選択性は、両方の系が同じZSM−5の含量を有するときに、R3の選択性より高い。
【表11】

【0097】
概要
本発明は、流動接触分解のための単位装置用のゼオライトの複合的な系を有する添加剤であって、それは、
a)10〜55重量%の範囲内の濃度でのMFI型のゼオライトと、
b)前記MFI型のゼオライトに対して0.1と2.0の間の重量比にあるY型のゼオライトと、
c)2.0重量%と25重量%の間の五酸化物の濃度での化学元素のリンと
を組み込んでいる微小球の形のマトリックスを含むことを特徴とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動接触分解単位装置において使用するための添加剤であって、それが微小球の形のマトリックスを含み、該マトリックスが、
a)該マトリックスに対して10〜55重量%の範囲の濃度のMFI型のゼオライトと、
b)Y型のゼオライトであって、該Y型のゼオライト対該MFI型のゼオライトの重量比が0.1:1と2.0:1の間である上記Y型のゼオライトと、
c)化学元素のリンであって、該リンの量が、マトリックスに対して2.0〜25重量%の五酸化リンとして存在する量、に相当する上記リンと
を組み込んでいることを特徴とする上記添加剤。
【請求項2】
前記MFI型のゼオライトがゼオライトZSM−5であることを特徴とする、請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
前記マトリックスが、無機酸化物及び不活性物質のゾルを含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の添加剤。
【請求項4】
前記無機酸化物のゾルが、シリカ、アルミナ及びシリカ−アルミナの1つ又は複数から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の添加剤。
【請求項5】
前記不活性物質が、カオリンであることを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の添加剤。
【請求項6】
前記Y型のゼオライト対前記MFI型のゼオライトの重量比が、0.2:1〜1.5:1の範囲内であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項7】
前記Y型のゼオライト対前記MFI型のゼオライトの重量比が、0.4:1〜1.33:1の範囲内であることを特徴とする、請求項6に記載の添加剤。
【請求項8】
前記リンの量が、前記マトリックスに対して3.0〜20重量%の五酸化リンとして存在する量、に相当することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項9】
前記リンの量が、前記マトリックスに対して5.0〜15.0重量%の五酸化リンとして存在する量、に相当することを特徴とする、請求項8に記載の添加剤。
【請求項10】
前記Y型のゼオライトが、化学元素のナトリウムを1.5重量%未満の濃度で含み、8Å以上の孔径を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項11】
前記化学元素のリンが、リン酸(HPO)、亜リン酸(HPO)、リン酸の塩、亜リン酸の塩若しくは(NHHPO、(NH)HPO、(NHHPOの型のアンモニウム塩、又は任意の割合のこれらの混合物から選択される化合物を前記マトリックスに加えることによって組み込まれることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項12】
使用される前記Y型のゼオライトが、2μm〜3μmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項13】
前記MFI型のゼオライトの平均粒径が、3μm未満であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に規定される添加剤の調製方法であって、次の:
a)無機酸化物のゾルを不活性物質と混合することによってマトリックスを調製する段階と、
b)該マトリックスを化学元素のリンを含有する化合物の溶液を加えることによって改質する段階と、
c)およそ25mg/100mlの固形分含量を有するMFI型のゼオライトの懸濁液を該改質したマトリックスに加えて混合物を得る段階と、
d)段階(c)において得られた該混合物に、およそ25mg/100mlの固形分含量を有する粉末又は懸濁液の形をしたY型のゼオライトを加える段階と、
e)(d)で得られた該混合物を10℃〜90℃の範囲内の1つ又は複数の温度でそれらの熟成に必要な一定時間保持する段階と、
f)所望により、洗浄、及びか焼作業等の、1つ又は複数の後処理を行う段階と
を含むことを特徴とする上記方法。
【請求項15】
前記MFI型のゼオライトの懸濁液及び前記Y型のゼオライトの懸濁液が、それぞれ独立して、20mg/100ml〜30mg/100ml、好ましくは23mg/100ml〜27mg/100mlの固形分含量を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(d)で得られた前記混合物の熟成に必要な温度範囲が、20℃〜40℃であることを特徴とする、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
段階(d)の持続時間が、15分を超えることを特徴とする、請求項14から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
クラッキングの条件においてLPG及びオレフィンを最大化するためのFCCプロセスであって、請求項1から13までのいずれか一項に規定の、又は請求項14から17までのいずれか一項に記載の方法によって得られる、添加剤が、該プロセスの平衡触媒インベントリーと共に1.0と40重量%の間の割合で混合されることを特徴とする上記FCCプロセス。
【請求項19】
FCC生産物の1つ又は複数の成分を単離することをさらに含む、請求項18に記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−503065(P2012−503065A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527400(P2011−527400)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002254
【国際公開番号】WO2010/032025
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(591005349)ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ − ペトロブラス (25)
【Fターム(参考)】