説明

ゼオライトベータの調製方法

【課題】ゼオライトベータの新規な調製方法を提供する。
【解決手段】i)水性媒体中で、少なくとも1種の四価元素Xの少なくとも1種の源、フルオリドアニオンの少なくとも1種の源、および式(HC)−N−(CHCHC(CHを有する少なくとも1種の第四級アンモニウム塩を混合する工程と、ii)前記ゼオライトベータが形成されるまで上記混合物を水熱処理する工程とを少なくとも包含する、方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第四級アンモニウム基を含む有機テンプレート種の存在下に行われる、ゼオライトベータの新規な調製方法に関する。本発明の方法を用いて得られる前記ゼオライトベータは、有利には、触媒、吸着剤または分離剤として適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト、シリコアルミノリン酸塩等の結晶性ミクロ孔材料は、石油工業において、触媒、触媒担体、吸着剤または分離剤として広く用いられている固体である。多くのミクロ孔結晶構造が発見されたが、精油および石油化学工業は、常時、ガスの精製または分離、炭素含有種の転化その他の適用等の適用のための特定の特性を有する新規なゼオライト構造を探し求めている。
【0003】
ゼオライトベータは、2種の多形相(polymorph)である多形相Aおよび多形相Bの高度に無秩序化された連晶(通常60:40の比で見出される)によって構成されるとして記載されている既知の固体である(非特許文献1)。
【0004】
ゼオライトベータを調製するための多くの方法がまた、文献に記載されている。これらの方法の多くは、ゼオライトベータの調製用のテンプレートとして有機種を用いる。非特許文献2には、ゼオライトベータの合成を可能にする有機種の多くの例、例えば、テトラエチルアンモニウム、6−アゾニアスピロ[5,5]ウンデカン、N,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチルデカン−1,10−ジアンモニウムカチオンが提案されている。非特許文献3には、ゼオライトベータの合成においてジベンジルジメチルアンモニウムカチオンを有機テンプレート種として使用することが記載されている。
【非特許文献1】ジェイ・エム・ニューサム(J.M.Newsam)ら著、「Proc.R.Soc.,London A」,1988年、第420巻、p.375
【非特許文献2】キャンブロール(Camblor)ら著、「ミクロポーラス・アンド・メソポーラス・マテリアルズ(Microporous and Mesoporous Materials)」、2001年、第48巻、p.11-22
【非特許文献3】アランツ(Arranz)ら著,「Stud.Surf.Sci.Catal.」,2004年、第154巻、p.257-264
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、第四級アンモニウム基を含む有機テンプレート種の存在下に行われる、ゼオライトベータの新規な調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、ゼオライトベータの調製方法であって、
i)水性媒体中で、少なくとも1種の四価元素Xの少なくとも1種の源、フルオリドアニオンの少なくとも1種の源および式(HC)−N−(CHCHC(CHを有する少なくとも1種の第四級アンモニウム塩を混合する工程と、
ii)前記ゼオライトベータが形成されるまで上記混合物を水熱処理する工程と
を少なくとも包含するものである。
【0007】
前記工程i)を行うために用いられる第四級アンモニウム塩は、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムヒドロキシドであることが好ましい。
【0008】
四価元素Xはケイ素であることが好ましい。
【0009】
前記フルオリドアニオンの源は、フッ化水素酸であることが好ましい。
【0010】
少なくとも1種の三価元素Yの少なくとも1種の源が、前記工程i)を行うための混合物に混合されることが好ましい。
【0011】
前記元素Yはアルミニウムであることが好ましい。
【0012】
少なくとも1種のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属Mが、前記工程i)を行うための混合物に混合されることが好ましい。
【0013】
工程i)において得られる反応混合物は、式XO:vYO:wM2/mO:xF:yHO:zR(式中、vは0〜0.5であり、wは0〜1であり、xは0.05〜2であり、yは1〜50であり、zは0.01〜6であり、nは1〜3であり(nは整数または有理数)、mは1または2に等しく、Rは第四級アンモニウムカチオンN,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムであり、v、w、x、yおよびzは、それぞれ、YO、M2/mO、F、HOおよびRのモル数を示す)で表されるモル組成を有することが好ましい。
【0014】
前記工程i)の間に反応混合物に種が加えられることが好ましい。
【0015】
前記工程ii)による前記水熱処理は、80〜200℃の温度で行われることが好ましい。
【0016】
工程ii)の終了時に得られたゼオライトベータから形成された固体相は、ろ過され、洗浄され、次いで、乾燥させられることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ゼオライトベータの調製方法であって、i)水性媒体中で、少なくとも1種の四価元素Xの少なくとも1種の源、フルオリドアニオンの少なくとも1種の源、および式(HC)−N−(CHCHC(CHを有する少なくとも1種の第四級アンモニウム塩を混合する工程と、ii)前記ゼオライトベータが形成されるまで上記混合物を水熱処理する工程とを少なくとも包含するものであり、本発明により、ゼオライトベータの新規な調製方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の簡単な説明)
本発明は、ゼオライトベータの調製方法であって、
i)水性媒体中で、少なくとも1種の四価元素Xの少なくとも1種の源と、フルオリドアニオンの少なくとも1種の源と、式(HC)−N−(CHCHC(CHを有する少なくとも1種の第四級アンモニウム塩とを混合する工程と、
ii)前記ゼオライトベータが形成されるまで上記混合物を水熱処理する工程と
を少なくとも包含する方法に関連する。
【0019】
少なくとも1種の四価元素の少なくとも1種の源、フルオリドアニオンの少なくとも1種の源および水と混合される前記式(HC)−N−(CHCHC(CHを有する第四級アンモニウム塩は、結果として、高純度のゼオライトベータの生成をもたらすことが発見された。全ての他の結晶性または非晶質相は、一般的におよび非常に好ましくは、調製方法の終了時に得られるゼオライトベータによって構成される結晶固体に存在していない。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ゼオライトベータの調製方法であって、
i)水性媒体中で、少なくとも1種の四価元素Xの少なくとも1種の源と、フルオリドアニオンの少なくとも1種の源と、式(HC)−N−(CHCHC(CHを有する少なくとも1種の第四級アンモニウム塩とを混合する工程と、
ii)前記ゼオライトベータが形成されるまで上記混合物を水熱処理する工程と
を少なくとも包含する方法に関する。
【0021】
本発明の方法によると、式(HC)−N−(CHCHC(CHを有する第四級アンモニウム塩(カチオンN,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムに対応する)は、本発明の方法を用いて調製されるゼオライトベータのテンプレートとして作用する。本発明の方法の工程i)を行うために混合物に導入されるN,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウム塩は、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムのハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、ケイ酸塩またはアルミン酸塩であり得る。非常に好ましくは、本発明の方法の前記工程i)を行うために用いられる第四級アンモニウム塩は、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムヒドロキシドである。この種(ヒドロキシド体にある)は、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムハリドから得られ得る。好ましくは、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムヒドロキシドは、室温における、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムブロミドの溶液の酸化銀による処理によって得られる。N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムブロミドは、当業者に知られる方法を用いて調製され得る。N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムブロミドを調製するための一つの可能な方法は、以下の反応スキームに与えられる:
【0022】
【化1】

【0023】
本発明によると、少なくとも1種の四価元素Xの少なくとも1種の源は、調製方法の工程i)を行うための混合物に混合される。Xは、好ましくは、ケイ素、チタンおよびこれら2種の四価元素の混合物から選択されるが、非常に好ましくは、Xはケイ素である。前記四価元素の単数種または複数種の源は、元素Xを含み、かつ、この元素を水溶液中に活性体で遊離させ得るあらゆる化合物であってよい。元素Xは、酸化体XOまたは任意の他の形態で混合物に混合され得る。Xがチタンである場合、有利には、Ti(EtO)がチタンの源として用いられる。Xがケイ素である好ましい場合、ケイ素源は、ゼオライト合成のために現在採用されている源、例えば、シリカ粉体、ケイ酸、コロイドシリカ、溶解シリカまたはテトラエトキシシラン(tetraethoxysilane:TEOS)のいずれか1つであってよい。用いられ得るシリカ粉体の例は、沈降シリカ(特に、アルカリ金属の溶液からの沈降によって得られるもの)、熱分解シリカ(例えば、「CAB−O−SIL(登録商標)」)およびシリカゲルである。種々の粒子サイズ(例えば、10〜15nmの範囲または40〜50nmの範囲の平均等価径)を有するコロイドシリカ、例えば、「LUDOX(登録商標)」等の登録商標の下で販売されるものが用いられてよい。好ましくは、ケイ素源は、テトラエトキシシラン(TEOS)である。
【0024】
本発明によると、本発明の調製方法の工程i)を行うためにフルオリドアニオンFの少なくとも1種の源が用いられる。用いられるフルオリドアニオン源は、MHF、NaF、KF、LiF等のフルオリド塩またはこれらの塩の少なくとも2種の混合物またはフッ化水素酸HFであり得る。好ましくは、フルオリドアニオン源は、水溶液中のフッ化水素酸HFである。
【0025】
本発明の方法の第1の好ましい実施形態によると、少なくとも1種の三価元素Yの少なくとも1種の源は、本発明の調製方法の前記工程i)を行うための混合物に混合される。前記三価元素Yは、アルミニウム、ホウ素、鉄、インジウム、ガリウムおよびこれらの三価元素の少なくとも2種の混合物から選択されるが、非常に好ましくは、Yはアルミニウムである。前記三価元素の単数種または複数種の源は、当該元素を水溶液中に活性体で遊離させ得る元素Yを含むあらゆる化合物であり得る。元素Yは、酸化体YO(1≦n≦3;nは整数または有理数)でまたは任意の他の形態で混合物に混合され得る。Yがアルミニウムである好ましい場合、アルミニウム源は、好ましくは、アルミン酸ナトリウム、アルミニウム塩(例えば、塩化物、硝酸塩、水酸化物または硫酸塩)、アルミニウムアルコキシド(例えば、アルミニウムイソプロポキシド)または適切なアルミナ(好ましくは、水和物または水和可能な形態、例えば、コロイドアルミナ、擬ベーマイト、ガンマアルミナ、アルファまたはベータ三水和物)である。上記に挙げられた源の混合物を用いることも可能である。
【0026】
本発明の方法の第2の好ましい実施形態において、少なくとも1種のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属Mは、本発明の調製方法の前記工程i)を行うための混合物に混合され、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムおよびカルシウムおよびこれらの金属の少なくとも2種の混合物から選択される。好ましくは、前記金属Mは、アルカリ金属であり、非常に好ましくは、それはナトリウムである。
【0027】
本発明の調製方法によると、工程i)において得られる反応混合物は、式:
XO:vYO:wM2/mO:xF:yHO:xR
(式中、
・vは0〜0.5、好ましくは0.01〜0.3であり;
・wは0〜1、好ましくは0.01〜0.5であり;
・xは0.05〜2、好ましくは0.1〜1.5であり;
・yは1〜50、好ましくは2〜10であり;
・zは0.01〜6、好ましくは0.05〜4であり;
nは1〜3(nは整数または有理数である)であり;
mは1または2に等しく、
X、YまたはMは、上記に与えられたものと同じ意味を有し、すなわち、Xは、ケイ素およびチタンによって形成される群から選択される1種以上の四価元素、非常に好ましくはXはケイ素であり、Yは、アルミニウム、鉄、ホウ素、インジウムおよびガリウムによって形成される群から選択される1種以上の三価元素であり、非常に好ましくは、Yはアルミニウムであり、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびカルシウムおよびこれらの金属の少なくとも2種の混合物から選択される1種以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属であり、非常に好ましくはMはナトリウムであり;Rは、第四級アンモニウムカチオンN,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムであり;v、w、x、yおよびzは、それぞれ、YO、M2/mO、F、HOおよびRのモル数を示す)
によって表されるモル組成を有する。
【0028】
本発明の方法の工程i)は、少なくとも1種の四価元素Xの少なくとも1種の源(好ましくは酸化物XO)、場合による少なくとも1種の三価元素Yの少なくとも1種の源(好ましくは、酸化物YO)、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムの少なくとも1種の塩、フルオリドアニオンの少なくとも1種の源、および場合による1種以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の少なくとも1種の源を含むゲルと呼ばれる水性の反応混合物を調製することからなる。前記反応剤の量は、それがゼオライトベータに結晶化することを可能にする組成をこのゲルに与えるように調節される。
【0029】
ゼオライトベータの結晶が生ずるのに必要な時間を短縮し、かつ/または、総結晶化時間を短縮するために本発明の方法の前記工程i)の間に反応混合物に種を加えることが有利であり得る。前記種はまた、不純物を押しのけて前記ゼオライトベータの形成を促進する。このような種は、結晶固体、特に、ゼオライトベータの結晶を含む。結晶種は、一般的に、反応混合物において用いられる元素Xの源(好ましくは酸化物XO)の質量の0.01〜10%の範囲の比率で加えられる。
【0030】
本発明の方法の工程ii)により、ゲルは水熱処理を経る。この水熱処理は、好ましくは、80〜200℃温度で、ゼオライトベータが形成されるまで行われる。ゲルは、有利には、水熱条件下に、自生反応圧力下(場合によっては、ガス、例えば窒素が加えられる)、80〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度でゼオライトベータの結晶が形成されるまで置かれる。結晶体を得るために必要な時間は、一般的には1〜50日、好ましくは1〜21日、より好ましくは5〜16日である。反応は、一般的には、攪拌を伴ってまたは攪拌を行わずに行われるが、好ましくは、攪拌を伴う。
【0031】
反応の終了時に、本発明の調製方法の前記工程ii)を行った後に前記ゼオライトベータが形成される場合、ゼオライトベータから形成された固体相はろ過され、洗浄され、乾燥させられる。乾燥は、一般的には20〜150℃、好ましくは60〜120℃の温度で、5〜10時間の期間にわたって行われる。乾燥ゼオライトベータは、一般的には、X線回折によって分析され、この技術はまた、本発明の方法によって得られた前記ゼオライトの純度が測定されることを可能にする。非常に有利には、本発明の方法により、結果として、ゼオライトベータが、任意の他の結晶または非晶質相が存在することなく、形成される。前記ゼオライトは、乾燥工程後、すぐに焼成、イオン交換等の続く工程に使える状態にある。これらの工程のために、当業者に知られるあらゆる従来の方法が用いられ得る。
【0032】
本発明の方法を用いて得られたゼオライトベータの焼成は、好ましくは、500〜700℃の温度で、5〜15時間の期間にわたって行われる。焼成期間の終了時に得られるゼオライトベータは、あらゆる有機種、特に、式(HC)−N−(CHCHC(CHを有する第四級アンモニウム塩を含んでいない。
【0033】
一般則として、本発明の方法によって得られるゼオライトベータの1種または複数種のカチオンMは、任意の単数種または複数種の金属カチオン、特に、第IA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB族(希土類元素を含む)、VIII(貴金属元素を含む)からのもの並びに鉛、スズおよびビスマスと交換され得る。交換は、適切なカチオンを含有するあらゆる水溶性の塩を用いて行われる。
【0034】
本発明の方法によって得られるゼオライトベータの水素型を得ることも有利である。前記水素型は、酸、特に、強鉱酸(塩酸、硫酸、硝酸等)または塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等の化合物とのイオン交換を行うことによって得られ得る。イオン交換は、1回以上前記ゼオライトベータをイオン交換溶液に懸濁させることによって行われ得る。前記ゼオライトは、イオン交換の前または後、または、2回のイオン交換工程の合間に焼成され得る。好ましくは、ゼオライトは、イオン交換が促進されるようにゼオライトの細孔中に含まれるあらゆる有機物質を除去するためにイオン交換前に焼成される。
【0035】
本発明の方法によって得られるゼオライトベータは、イオン交換後に、精油および石油化学の分野における触媒用の酸固体として用いられ得る。それはまた、汚染を制御するための吸着剤または分離用のモレキュラーシーブとして用いられ得る。
【0036】
例として、触媒として用いられる場合、本発明の方法を用いて調製されたゼオライトは、焼成され、交換され、好ましくは、水素型であり、無機マトリクスおよび金属相と関連させられ得、該無機マトリクスは、不活性であっても触媒的に活性であってもよい。無機マトリクスは、単純に、ゼオライトの小粒子を触媒の種々の既知の形態に(押出物、ペレット状物、ビーズ状物、粉体状物として)一緒に保持するためのバインダーとして存在し得るか、または、それは、そうしなければ早過ぎる速度で発生して、あまりに多量のコークス形成の結果として触媒の詰まりにつながるであろう方法に転化度を設定するための希釈剤として加えられ得る。典型的な無機マトリクスは、シリカ、種々の形態のアルミナ、マグネシア、ジルコニア、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、リン酸アルミニウム、カオリン粘土、ベントナイト、モンモモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト、フーラー土、合成多孔質材料(例えば、SiO−Al、SiO−ZrO、SiO−ThO、SiO−BeO、SiO−TiO)またはこれらの化合物の任意の組合せ等の触媒用の担体物質である。無機マトリクスは、種々の化合物、特に、不活性相および活性相の混合物であり得る。
【0037】
本発明の方法を用いて調製されたゼオライトはまた、少なくとも1種の他のゼオライトと関連させられ、主要活性相または添加物として作用し得る。
【0038】
金属相は、Cu、Ag、Ga、Mg、Ca、Sr、Zn、Cd、B、Al、Sn、Pb、V、P、Sb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Ru、Rh、Os、Irおよび元素周期律表からの任意の他の元素から選択される、カチオンまたは酸化物によるイオン交換または含浸によって、ゼオライト単独、無機マトリクス単独または無機マトリクス−ゼオライトの集合物上に導入される。金属は、全て同じ方法で、または、異なる技術を用いて、調製の間のあらゆる時期に、成形の前または後に、任意の順番で導入され得る。さらに、焼成および/または還元等の中間処理が、種々の金属の担持の合間に適用され得る。
【0039】
本発明の方法を用いて調製されたゼオライトベータを含む触媒組成物は、一般的に、主要な炭化水素転換方法およびエーテル等の有機化合物の合成反応を行うのに適している。
【0040】
当業者に知られるあらゆる成形方法が、ゼオライトベータを含む触媒に適している。例として、ペレット化、押出またはビーズ成形を行うことが可能である。少なくとも部分的に酸型の本発明の方法を用いて調製されたゼオライトを含有する触媒は、一般的に、その対象とする用途に応じて押出物またはビーズ状物に成形される。
【0041】
本発明は、以下に、下記実施例によって例示されることになるが、該実施例は、決して制限的なものではない。
【0042】
(実施例1:窒素含有有機テンプレートN,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムヒドロキシドの合成)
N,N,3,3−テトラメチルブチルアミン(Aldrich)1g(0.77×10−2モル)および1−ブロモ−3,3−ジメチルブタン1.917g(1.16×10−2モル)(Prolabo)および約4mLのイソプロパノールを含有する混合物が調製された。次に、炭酸ナトリウム1.23g(1.16×10−2モル)が加えられた。この懸濁液は、2日間にわたり100℃の温度で還流加熱された。白色固体が現れ、その後、沈殿の量を増加させるように約5mLのジエチルエーテルが反応混合物に加えられた。次いで、イソプロパノールおよびジエチルエーテルが、30℃でロータリーエバポレータを用いて留去された。形成された有機物は、ジクロロメタンを用いて反応混合物から抽出された。10mLのジクロロメタンによる3回の連続的な抽出が行われた。得られた有機相は、ロータリーエバポレータを用いて溶媒留去された。形成された白色固体は、無水ジエチルエーテルにより洗浄され、ナイロン膜(直径=0.2μm)上でろ過された。N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムブロミド(DMDMBA−Br)0.8g(0.27×10−2モル)が得られた。得られた種の性質は、プロトン核磁気共鳴によって確かめられた。この分析の結果は以下に与えられる:
1H NMR(D2O,400MHz、25℃,δppm/TMS):0.83(s,18H),1.51-1.55(m,4H),2.91(s,6H),3.18-3.23(m,4H)。
過剰の酸化銀(AgO)が、DMDMBA−Brの水溶液と接触させられた(DMDMBA−Br1モルに対してAgO1.5モル)。この混合物は、室温で終夜攪拌された。次いで、形成された臭化銀は、遠心分離によって溶液から分離された。上澄みは、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムヒドロキシドの溶液であった。この溶液の濃度は、プロトン核磁気共鳴によって測定された。
【0043】
(実施例2:高純度のケイ酸性のゼオライトベータの合成)
N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムヒドロキシド(ROH)の28.3重量%水溶液2.04gおよびテトラエトキシシラン(Aldrich)1.04gが、ポリプロピレンビーカーに注がれた。エタノールおよび過剰の水が、1.2525gの質量が達成されるまで室温で攪拌しながら留去された。次に、40重量%フッ化水素酸(Fluka)水溶液0.125gが加えられ、それは、均一なペーストが形成されるまで攪拌された。次いで、ゲルは、テフロン(登録商標)ジャケットに移され、次いで、そのジャケットは、20ミリリットルのオートクレーブ内に置かれた。ゲルのモル組成は1SiO:0.5ROH:0.5HF:0.5HOであった。
【0044】
オートクレーブは、14日間にわたりオーブン中170℃で加熱された。合成の間、オートクレーブは、連続的に攪拌され、オートクレーブの長手方向軸は、回転軸に垂直な平面に約15rpmのスピードで回転した。合成のためのpHは、9近傍であった。ろ過後、生成物は蒸留水により洗浄され、70℃で終夜乾燥させられた。
【0045】
乾燥固体生成物は、粉末X線回折によって分析された:得られた結晶固体は、高純度のゼオライトベータであった。
【0046】
(実施例3:高純度のケイ酸性ゼオライトベータの合成)
N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムヒドロキシド(ROH)の28.3重量%水溶液4.081gおよびテトラエトキシシラン(Aldrich)1.04gがポリプロピレンビーカーに注がれた。エタノールおよび過剰の水が、1.836gの質量が達成されるまで室温で攪拌しながら留去された。次に、フッ化水素酸の40重量%水溶液(Fluka)0.25gが加えられ、それは、均一なペーストが形成されるまで攪拌された。次いで、ゲルは、テフロン(登録商標)ジャケットに移され、次いで、そのジャケットは、20ミリリットルのオートクレーブ内に置かれた。ゲルのモル組成は、1SiO:1ROH:1HF:5.9HOであった。
【0047】
オートクレーブは、14日間にわたりオーブン中170℃で加熱された。合成の間、オートクレーブは、連続的に攪拌され、オートクレーブの長手方向軸は、回転軸に垂直な平面に約15rpmのスピードで回転していた。合成のpHは、9近傍であった。ろ過後、生成物は、蒸留水により洗浄され、70℃で終夜乾燥させられた。
【0048】
乾燥固体生成物は、粉末X線回折によって分析された:得られた結晶固体は、高純度のゼオライトベータであった。
【0049】
(実施例4:アルミノケイ酸性のゼオライトベータの合成)
N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムヒドロキシド(ROH)の28.3重量%水溶液4.081g、テトラエトキシシラン(Aldrich)1.04gおよびアルミニウムイソプロポキシド(Aldrich)0.02gが、ポリプロピレンビーカーに注がれた。エタノール、プロパノールおよび過剰の水が、1.76gの質量が達成されるまで室温で攪拌しながら留去された。次に、40重量%のフッ化水素酸水溶液(Fluka)0.25gが加えられ、均一なペースト状物が形成されるまでそれは攪拌された。次いで、ゲルは、テフロン(登録商標)ジャケットに移され、次いで、そのジャケットは、20ミリリットルのオートクレーブ内に置かれた。
【0050】
ゲルのモル組成は、1SiO:0.01Al:1ROH:1HF:5HOであった。
【0051】
オートクレーブは、14日間にわたってオーブン中170℃で加熱された。合成の間、オートクレーブは、連続的に攪拌され、オートクレーブの長手方向軸は、回転軸に垂直な平面に約15rpmのスピードで回転していた。合成のためのpHは、9近傍であった。ろ過後、生成物は蒸留水により洗浄され、70℃で終夜乾燥させられた。
【0052】
乾燥固体生成物は、粉末X線回折によって分析された:得られた結晶固体は、高純度のゼオライトベータであった。
【0053】
(実施例5:窒素含有有機テンプレートとしてN,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムを用いてSi−Al系で合成されたゼオライトベータからの触媒の調製)
この実施例において用いられるゼオライトは、実施例4のSi−Al系で得られる合成された際のままの、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムをその結晶内細孔内に含むゼオライトベータである。
【0054】
このゼオライトベータは、初めに、8時間にわたり空気の流れの中で550℃での乾式焼成(dry calcining)を経、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムが除去された。次いで、得られた固体は、Z−アームミキサーにおいてベーマイト(Pural SB3,Sasol)と混合し、得られたペースト状物を、ピストン式押出機を用いて押し出すことによって押出物に成形された。次いで、押出物は、マッフル炉中、120℃で12時間にわたり空気中で乾燥させられ、550℃で2時間にわたり空気の流れの中で焼成された。それらは、触媒担体を構成していた。
【0055】
競争剤(塩酸)の存在下のヘキサクロロ白金酸との陰イオン交換によって、担体のアルミナ上に白金が担持させられた。次いで、交換された担体は、120℃で12時間にわたり空気中で乾燥させられ、550℃で乾燥空気の流れの中1時間にわたり焼成された。
【0056】
こうして調製された触媒は、水素型のゼオライトベータ50重量%、アルミナ49.8重量%および白金0.2重量%からなっていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトベータの調製方法であって、
i)水性媒体中で、少なくとも1種の四価元素Xの少なくとも1種の源、フルオリドアニオンの少なくとも1種の源および式(HC)−N−(CHCHC(CHを有する少なくとも1種の第四級アンモニウム塩を混合する工程と、
ii)前記ゼオライトベータが形成されるまで上記混合物を水熱処理する工程と
を少なくとも包含する、方法。
【請求項2】
前記工程i)を行うために用いられる第四級アンモニウム塩は、N,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムヒドロキシドである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
四価元素Xはケイ素である、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記フルオリドアニオンの源は、フッ化水素酸である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項5】
少なくとも1種の三価元素Yの少なくとも1種の源が、前記工程i)を行うための混合物に混合される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項6】
前記元素Yはアルミニウムである、請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
少なくとも1種のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属Mが、前記工程i)を行うための混合物に混合される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項8】
工程i)において得られる反応混合物は、式XO:vYO:wM2/mO:xF:yHO:zR(式中、vは0〜0.5であり、wは0〜1であり、xは0.05〜2であり、yは1〜50であり、zは0.01〜6であり、nは1〜3であり(nは整数または有理数)、mは1または2に等しく、Rは第四級アンモニウムカチオンN,N−ジメチル−N,N−ジ(3,3−ジメチルブチル)アンモニウムであり、v、w、x、yおよびzは、それぞれ、YO、M2/mO、F、HOおよびRのモル数を示す)で表されるモル組成を有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項9】
前記工程i)の間に反応混合物に種が加えられる、請求項1〜8のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項10】
前記工程ii)による前記水熱処理は、80〜200℃の温度で行われる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項11】
工程ii)の終了時に得られたゼオライトベータから形成された固体相は、ろ過され、洗浄され、次いで、乾燥させられる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の調製方法。

【公開番号】特開2008−260680(P2008−260680A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98832(P2008−98832)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】