説明

ゼオライトSSZ−32xを使用する基油生成のための触媒法及び系

炭化水素供給材料を脱蝋して潤滑基油を形成するための方法及び触媒系が提供される。本発明の層状触媒系は、第2水素化異性化脱蝋触媒の上流に配置された第1水素化異性化脱蝋触媒を含むことができる。第1及び第2水素化異性化脱蝋触媒は、それぞれ、n−パラフィンの異性化に対して選択的でありうる。第1水素化異性化触媒は、第2水素化異性化脱蝋触媒よりも、n−パラフィンの異性化に対して高いレベルの選択性を有することができる。第1及び第2水素化異性化脱蝋触媒のうちの少なくとも1つは、小結晶子ゼオライトSSZ−32xを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年6月29日出願の米国特許仮出願第61/359,720号、及び2011年6月14日出願の米国特許非仮出願第13/159,695号の、米国特許法第119条に基づく利益を主張する。
本発明は、炭化水素供給材料を脱蝋(dewaxing)する方法及び系に関する。
【背景技術】
【0002】
高品質の潤滑油は、近代的な機械類及び自動車両の作動にとって重要である。しかし、現行の原油供給は、そのような潤滑剤に対する現在の要求を満たすには不十分である。したがって、そうでなければ潤滑剤製造に不適切である原油留分を改良することが必要である。例としては、高品質潤滑油は、多くの場合に蝋状の供給原料から生成されなければならない。通常の低品質の供給材料を改良して潤滑基油を生成するための多数の方法が提案されてきた。
【0003】
炭化水素供給材料を、水素化分解(hydrocracking)又は水素化異性化(hydroisomerization)により触媒的に脱蝋することができる。水素化分解は、一般に、中間留出物、更にはより軽質のC4-生成物などの低分子量の炭化水素の生成に起因する収率上の損失をもたらし、一方、水素化異性化は、一般に、分解を最低限にすることによってより高い収率を提供する。
【0004】
米国特許第7,384,538号は、少なくとも2つの異性化触媒を有する触媒床を含む異性化領域における基油生成のための蝋状供給原料の水素化異性化を開示し、ここで、第1触媒は少なくとも6.2Åのチャンネル直径を有し、第2触媒は5.8Å以下のチャンネル直径を有する。米国特許出願公開第2008/0083657号は、金属改質小結晶子MTT骨格モレキュラーシーブによる炭化水素供給原料の脱蝋を開示する。米国特許出願公開第2009/0166252号は、2つの異性化触媒を使用する潤滑油基油生成を開示し、ここで、第1触媒は2以下の拘束指数(CI)を有し、第2触媒は2を超えるCIを有する。
【0005】
生成物収率の他に、基油の触媒生成における別の重要の要素は、触媒老化の最小化である。この点において、米国特許第5,951,848号は、水素化処理(hydrotreating)触媒及び脱蝋触媒を含む二触媒系の使用を開示する。水素化処理触媒層の存在により、脱蝋触媒の老化を遅らせることができる。
【0006】
米国特許第6,468,417号及び同第6,468,418号は、脱蝋潤滑油原料又は基油供給原料を固体吸着剤と接触させ、該脱蝋潤滑油原料又は基油供給原料によりも低減された曇り点を有する脱曇り基油を生成する工程を含む方法による、曇りを形成する傾向が低減された潤滑油の製造を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
貴重なII群及びIII群基油の生成のために、異性化選択性及び蝋状炭化水素供給材料の転換率(conversion)の増加を示す改善された脱蝋方法及び触媒系の必要性が引き続き存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、蝋含有炭化水素供給材料を、低い流動点、低い曇り点、少ない流動−曇り幅及び高い粘度指数(VI)を有する潤滑基油を含む高品質な生成物に効率的に転換する方法に関する。そのような方法は、複数の水素化異性化脱蝋触媒を含む層状触媒系を用いる。水素化異性化は、脂肪族非分岐鎖パラフィン系炭化水素(n−パラフィン)をイソパラフィン及び環状種に転換し、それによって基油生成物の流動点及び曇り点を供給材料と比較して減少する。実施形態において、本発明の層状触媒系は、防護層として水素化処理触媒を更に含んでいてもよく、これによって水素化異性化触媒の「老化」を減速させ、基油生成物収率を、約450°F〜約725°F(232℃〜385℃)の範囲の温度において、従来の方法と比較して長時間維持することができる。
【0009】
本発明の一つの態様によると、蝋状炭化水素供給材料を触媒的に脱蝋する方法であって、炭化水素供給材料を、第1水素化異性化領域において第1水素化異性化脱蝋条件下で第1水素化異性化触媒と接触させて、第1異性化流を生じること、及び第1異性化流の少なくとも一部を、第2水素化異性化領域において第2水素化異性化脱蝋条件下で第2水素化異性化触媒と接触させて、第2異性化流を生じることを含む方法が提供される。第1及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、モレキュラーシーブ及びVIII族の金属を含むことができる。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つのモレキュラーシーブは、焼成後に、実質的に下記の表1のようなX線回析パターンを有するゼオライトSSZ−32xを含んでいてもよい。
【0010】
一実施形態において、本発明は、蝋状炭化水素供給材料を触媒的に脱蝋する方法であって、炭化水素供給材料を、第1水素化異性化領域において第1水素化異性化脱蝋条件下で第1水素化異性化触媒と接触させて、第1異性化流を生じること、及び第1異性化流の少なくとも一部を、第2水素化異性化領域において第2水素化異性化脱蝋条件下で第2水素化異性化触媒と接触させて、第2異性化流を生じることを含む方法を提供する。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、1−D,10環ゼオライト及びVIII族の金属を含んでいてもよい。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つを、Mg、Ca、Sr、Ba、K、La、Pr、Nd、Cr及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属改質剤でドープしてもよい。第1及び第2水素化異性化触媒を同じ反応器内に配置してもよい。第1水素化異性化触媒のゼオライトは、焼成した後、実質的に下記の表1のX線回析パターンを有するSSZ−32xを含んでいてもよい。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、第1水素化異性化触媒を含む第1水素化異性化領域と、第2水素化異性化触媒を含む第2水素化異性化領域とを含む層状触媒系を提供する。第1及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、モレキュラーシーブ及びVIII族の金属を含んでいてもよい。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つのモレキュラーシーブを、Mg、Ca、Sr、Ba、K、La、Pr、Nd、Cr及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属改質剤でドープしてもよい。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つのモレキュラーシーブは、焼成後に、実質的に下記の表1のようなX線回析パターンを有するゼオライトSSZ−32xを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による炭化水素脱蝋方法の系を概略的に表す。
【図2A】本発明の一実施形態による層状脱蝋触媒系を概略的に表す。
【図2B】図2Aの系の逆配置を有する層状脱蝋触媒系を概略的に表す。
【図3A】単一の脱蝋触媒を有する触媒脱蝋系を概略的に表す。
【図3B】単一の脱蝋触媒を有する触媒脱蝋系を概略的に表す
【図3C】本発明の一実施形態による層状触媒脱蝋系を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、炭化水素供給材料を、第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒を含む層状触媒系と接触させることを伴う、炭化水素脱蝋方法を提供する。一実施形態において、本発明は、炭化水素供給材料を脱蝋する触媒系も提供し、ここで第1水素化異性化触媒は、第2水素化異性化触媒の上流にあってもよい。
【0014】
一実施形態において、第1水素化異性化触媒は、触媒系の第1水素化異性化層又は領域にあってもよく、第2水素化異性化触媒は、触媒系の第2水素化異性化層又は領域にあってもよい。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒は、同じ反応器内にあってもよい。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒は、同じ反応器内の別々の床に配置されてもよい。或いは、第1水素化異性化触媒の少なくとも一部は、第2水素化異性化触媒の少なくとも一部と同じ床にあってもよく、及び/又は第2水素化異性化触媒の少なくとも一部は、第1水素化異性化触媒の少なくとも一部と同じ床にあってもよい。
【0015】
出願人らは、合計で容積Vの第1及び第2水素化異性化触媒を含む本発明の層状触媒系が、同じ容積(V)の第1水素化異性化触媒単独又は第2水素化異性化触媒単独のいずれかと比較して、優れた結果を、例えば基油生成物の増加した収率及び/又は高い粘度指数(VI)により判断される全体的により大きな異性化選択性を、提供できることをここに実証した。
【0016】
一実施形態において、本発明の触媒系は、水素化処理触媒を更に含んでいてもよい。水素化処理触媒は、防護層又は防護床を構成していてもよく、また防護層又は防護床として機能してもよい。防護層の水素化処理触媒を、第1水素化異性化触媒の上流に配置してもよい。防護層の水素化処理触媒は、水素化異性化触媒を不活性化しうる供給材料中の汚染物から、第1及び第2水素化異性化触媒を保護するために役立つことができる。このように、防護層の存在は、第1及び第2水素化異性化触媒の寿命を実質的に増加することができる。一実施形態において、防護層を第1及び第2水素化異性化触媒と同じ反応器内に配置してもよい。これによって、本発明の方法を単一反応器で実施することができる。
【0017】
一実施形態において、本発明の方法の反応条件は、とりわけ、第1及び第2水素化異性化触媒が本発明の所望の基油生成物の目標流動点を得るために必要な温度により決定されうる。典型的には、水素化異性化触媒は、約390°F〜約800°F(199℃〜427℃)、通常は約550°F〜約750°F(288℃〜399℃)の範囲の作動温度を有することができる。実際には、本方法の温度は、供給組成、供給速度、作動圧力、触媒系の配合及び水素化異性化触媒の「老化」などの方法の他の多様なパラメーターに依存し得る。
【0018】
定義
本明細書において使用される以下の用語は、別途の表示がない限り、本明細書下記に定義された意味を有する。
【0019】
用語「水素化処理」は、炭化水素供給材料の成分(例えば、不純物)の水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属及び/又は水素化脱芳香族のため、並びに/或いは供給材料における不飽和化合物の水素化(hydrogenation)のため、水素の存在下で実施される方法又はステップを意味する。水素化処理の種類及び反応条件に応じて、水素化処理の生成物は、例えば、改善された粘度、粘度指数、飽和含有量、低温特性、揮発度及び脱分極を有することができる。
【0020】
用語「防護層」及び「防護床」は、水素化処理触媒又は水素化処理触媒層を意味するために、本明細書において同義的及び交換可能に使用されうる。防護層は、炭化水素脱蝋用の触媒系の一成分であってもよく、少なくとも1つの水素化異性化触媒の上流に配置することができる。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「モレキュラーシーブ」は、孔、空洞又は間隙空間を通過するのに十分に小さい分子は吸着するが大きな分子は吸着しない、均一な大きさの孔、空洞又は間隙空間を含有する結晶性物質を意味する。モレキュラーシーブの例には、ゼオライト、並びにSAPO(シリコアルミノホスフェート)、MeAPO(メタロアルミノホスフェート)、AlPO及びELAPO(非金属置換アルミホスフェート類)が含まれるが、これらに限定されないゼオライト類似体などの非ゼオライトモレキュラーシーブが含まれる。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「流動点」は、油が制御条件下で流れ始める温度を意味する。流動点は、例えばASTM D5950により決定することができる。
【0023】
「目標流動点」は、潤滑基油生成物の望ましい又は要求される流動点を意味する。目標流動点は、一般に約−10℃、典型的には約−10℃〜約−50℃の範囲である。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「曇り点」は、潤滑油試料が、油が特定の条件下で冷却されたときに曇りを生じ始める温度を意味する。潤滑基油の曇り点は、その流動点と相補的である。曇り点は、例えばASTM D5773により決定することができる。
【0025】
基油の「流動点/曇り点幅」又は「流動−曇り幅」は、曇り点と流動点の幅又は差を意味し、℃で測定した、曇り点引く流動点と定義される。一般に、流動点と曇り点の幅を最小化することが望ましい。
【0026】
別途の表示がない限り、本開示において参照される元素周期表は、Handbook of Chemistry and Physics、72版(1991〜1992)においてChemical Abstract Serviceにより公表されたCAS版である。
【0027】
「VIII族の金属」は、元素周期表のVIII族から選択された元素金属(単数若しくは複数)及び/又はそのような金属(単数若しくは複数)を含む金属化合物を意味する。
【0028】
別途の表示がない限り、触媒反応領域に供給される炭化水素供給材料の「供給速度」は、1時間毎の触媒の容積あたりの供給原料の容積として本明細書において表現され、これを液空間速度(LHSV)と呼ぶことができ、単位は時間の逆数(h−1)である。
【0029】
用語「水素化異性化」は、n−パラフィン(n−アルカン)が水素化異性化(脱蝋)触媒を介して水素の存在下でより分岐された対応化合物に異性化される方法を意味する。
【0030】
別途の表示がない限り、そこから個別の成分又は成分の混合物を選択することができる元素、物質又は他の成分の属の記載は、提示された成分及びそれらの混合物の全ての可能な下位の属の組み合わせを含むことを意図するものである。また、「含む」及びその変形は、列挙における事項の記載が、本発明の物質、組成物及び方法において同様に有用でありうる他の同様の事項を排除しないように、非限定的であることを意図するものである。
【0031】
本明細書に記載される物質の特性を以下のように決定することができる:
(a)SiO/Al比(SAR):ICP元素分析により決定される。無限大(∞)のSARは、ゼオライトにアルミニウムがない場合、すなわちシリカとアルミナのモル比が無限大である場合を表す。この場合、モレキュラーシーブは、実質的に全てシリカから構成される。
(b)表面積:沸点におけるN吸着により決定される。BET表面積は、P/P=0.050、0.088、0.125、0.163及び0.200による5点法で計算される。水又は有機物のようなあらゆる吸着揮発物を排除するため、試料を最初に400℃で6時間、乾燥N流の存在下で前処理する。
(c)ミクロ孔容積:沸点でのN吸着により決定される。ミクロ孔容積は、P/P=0.050、0.088、0.125、0.163及び0.200によるt−プロット法で計算される。水又は有機物のようなあらゆる吸着揮発物を排除するため、試料を最初に400℃で6時間、乾燥N流の存在下で前処理する。
(d)メソ孔孔径:沸点でのN吸着により決定される。メソ孔孔径は、E.P.Barrett、L.G.Joyner及びP.P.Halenda、「多孔性物質における孔容積及び面積分布の決定。I.窒素等温線による計算(The determination of pore volume and area distributions in porous substances.I.Computations from nitrogen isotherms)」J.Am.Chem.Soc.1951、73、373〜380において記載されているBJH法によりN等温線から計算される。水又は有機物のようなあらゆる吸着揮発物を排除するため、試料を最初に400℃で6時間、乾燥N流の存在下で前処理する。
(e)総孔容積:P/P=0.990における沸点でのN吸着により決定される。水又は有機物のようなあらゆる吸着揮発物を排除するため、試料を最初に400℃で6時間、乾燥N流の存在下で前処理する。
【0032】
許容される限り、本出願に引用されている全ての刊行物、特許及び特許出願は、それらの開示が本発明と不整合とならない限りにおいて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
水素化処理触媒
一実施形態において、本発明の触媒系は、例えば防護層の形態で水素化処理触媒を含んでいてもよい。本発明の水素化処理触媒は、耐火性無機酸化物担体及びVIII族の金属を含んでいてもよい。酸化物担体を、本明細書において結合剤と呼ぶこともできる。水素化処理触媒の担体は、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニアなど又はこれらの組み合わせから調製することができる又はこれらを含むことができる。触媒担体は、非晶質材料、結晶質材料又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。非晶質材料の例には、非晶質アルミナ、非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
一実施形態において、担体は非晶質アルミナを含んでいてもよい。シリカとアルミナの組み合わせを使用する場合、担体におけるシリカとアルミナの分布は、均質又は不均質のいずれであってもよい。幾つかの実施形態において、担体は、シリカ、シリカ/アルミナ又はアルミナ基材が分散されているアルミナゲルからなっていてもよい。担体は、例えば他の無機酸化物又は粘土粒子などの、アルミナ又はシリカ以外の耐火性材料を、そのような材料が最終触媒の水素化活性に悪影響を与えない又は供給材料の有害な分解をもたらさない限り、含有していてもよい。
【0035】
一下位実施形態において、シリカ及び/又はアルミナは、一般に、水素化処理触媒の担体の少なくとも約90重量%を構成し、幾つかの実施形態において、担体は、少なくとも実質的に全てシリカ又は全てアルミナであってもよい。水素化処理触媒における担体材料の種類にかかわりなく、本発明の方法及び触媒系に使用される水素化処理触媒は、典型的には低い酸性度を有する。適切な場合、担体の酸性度を、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属カチオンによる処理で減少させてもよい。
【0036】
本発明の実施に使用することができる多様な結晶質及び非結晶質触媒担体材料、並びにこれらの酸性度レベルの定量化及び触媒担体の酸性部位を中和する方法が、同一出願人に譲渡された同時係属米国特許出願公開第2011/0079540号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
水素化処理触媒のVIII族の金属成分(単数又は複数)は、白金、パラジウム又はこれらの組み合わせを含むことができる。一実施形態において、水素化処理触媒は、白金とパラジウムを約5:1〜約1:5、典型的には約3:1〜約1:3、多くの場合には約1:1〜約1:2の範囲のPt:Pd比で含む。水素化処理触媒のVIII族の金属含有量は、一般に約0.01重量%〜約5重量%、典型的には約0.2重量%〜約2重量%の範囲でありうる。一実施形態において、水素化処理触媒は、白金を約0.1〜約1.0重量%の範囲の濃度、及びパラジウムを約0.2〜約1.5重量%の範囲の濃度で含んでいてもよい。一下位実施形態において、水素化処理触媒は、約0.3重量%の白金及び約0.6重量%のパラジウムを含んでいてもよい。本発明の水素化処理触媒は、一般に、耐硫黄性と共に高い触媒活性を示す。
【0038】
一実施形態において、水素化処理触媒のVIII族の金属を、無機酸化物担体上に分散してもよい。白金及び/若しくはパラジウム金属又は白金及び/若しくはパラジウムを含む化合物を担体に付着させる多数の方法が、従来技術において知られており、そのような方法には、イオン交換、含浸及び共沈が含まれる。一実施形態において、担体への白金及び/又はパラジウム金属の含浸は、制御されたpH値下で実施することができる。白金及び/又はパラジウムは、典型的には、ハロゲン塩などの金属塩及び/又はアミン錯体及び/又は鉱酸の塩として含浸液に添加される。アンモニウム塩は、VIII族の金属含浸用の溶液を調製するのに特に有用であることが見出されている。使用することができる金属塩の他の例には、硝酸塩、炭酸塩及び重炭酸塩、並びに酢酸塩、クエン酸塩及びギ酸塩などのカルボン酸塩が含まれる。
【0039】
所望により、含浸担体を、含浸液と共に、例えば約2〜約24時間の範囲の時間放置することができる。VIII族の金属による酸化物担体の含浸の後、含浸担体を乾燥及び/又は焼成することができる。水素化処理触媒を乾燥及び焼成した後、調製された触媒を、当該技術において慣用的なように水素で還元して、使用することができる。
【0040】
水素化異性化触媒
一実施形態において、本発明の方法は、第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒を含む層状触媒系を使用し、ここで、第1水素化異性化触媒を第2水素化異性化触媒の上流に配置することができる。一実施形態において、第1及び第2水素化異性化触媒は、両方とも、炭化水素供給原料におけるn−パラフィンの異性化に選択的であってもよい。一実施形態において、第1及び第2水素化異性化触媒は、異なる配合を有し、異なるレベルの異性化選択性を有することができる。一実施形態において、第1水素化異性化触媒は、第2水素化異性化触媒と比較して、n−パラフィンの異性化に対して、より高いレベルの選択性を有していてもよい。
【0041】
第1及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、モレキュラーシーブ及びVIII族の金属を含んでいてもよい。一実施形態において、第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒のそれぞれのモレキュラーシーブは、1−D,10環モレキュラーシーブを含んでいてもよい。第1及び第2水素化処理触媒のVIII族の金属は、白金、パラジウム又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。一実施形態において、第1及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、約0.1〜約1.5重量%のVIII族の金属、典型的には約0.2〜約1.0重量%、通常は約0.325〜約1.0重量%のVIII族の金属を含むことができる。一実施形態において、第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つは、本明細書下記に実質的に記載されるように、Mg、Ca、Sr、Ba、K、La、Pr、Nd、Cr及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属改質剤を更に含んでいてもよい。
【0042】
典型的には、第1及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、担体又は結合剤をなお更に含む。担体は、耐火性無機酸化物を含むことができる。水素化異性化触媒に適した無機酸化物担体には、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−チタニアなど及びこれらの組み合わせが含まれる。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、約5〜約95重量%以上のモレキュラーシーブ成分、典型的には約15〜約85重量%のモレキュラーシーブ、通常は約25〜約75重量%のモレキュラーシーブを含むことができる。一般に、触媒が要求される活性及び選択性レベルを保持する限り、経済的な理由によりモレキュラーシーブ成分を最小限にすることが有利である。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、担体材料を約0〜約95重量%、より典型的には約5〜約90重量%含むことができる。
【0043】
本発明の方法により炭化水素供給材料を脱蝋するための例示的な触媒系において、第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、1−D,10環モレキュラーシーブ及びVIII族の金属を含んでいてもよい。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つのモレキュラーシーブは、中孔ゼオライト、例えば約0.39nm〜約0.7nmの範囲の孔開口を有するゼオライトを含んでいてもよい。一実施形態において、第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、約0.325重量%〜約1重量%の白金を更に含んでいてもよい。
【0044】
第1及び第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つを配合するのに有用でありうるモレキュラーシーブの例には、SAPO−11、SAPO−31、SM−3、SM−6などのAEL骨格型コードと共に、MTT又はTONコードのゼオライト型材料のモレキュラーシーブが含まれる。MTTコードのモレキュラーシーブには、ZSM−23、SSZ−32、EU−13、ISI−4及びKZ−1が含まれる。本発明を実施するのに有用でありうるTONコードのモレキュラーシーブには、Theta−1、ISI−1、KZ−2、NU−10及びZSM−22が含まれる。MTT及びTON型モレキュラーシーブのパラメーターは、International Zeolite Association(IZA)により出版されているAtlas of Zeolite Framework Typesに更に記載されている。一実施形態において、第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つは、ゼオライトSSZ−32xを含んでいてもよい。一下位実施形態において、第1水素化異性化触媒は、SSZ−32xを含んでいてもよい。別の下位実施形態において、第2水素化異性化触媒は、ゼオライトSSZ−32を含んでいてもよい。本発明の方法は、いかなる特定の水素化異性化触媒配合物にも限定されない。
【0045】
ゼオライトSSZ−32x
本発明の一つの実施形態によると、炭化水素供給原料を脱蝋する層状触媒系は、MTT骨格型モレキュラーシーブ指定ゼオライトSSZ−32xを含有する。SSZ−32x及びSSZ−32xを作製する方法は、米国特許第7,390,763号に記載されている。
【0046】
TEM検査により決定したところ、本発明により調製されたSSZ−32xの結晶子は、典型的には約2.0〜約2.4の範囲の長さ/幅の比を有して一般に伸長しており、典型的には約15nm〜約20nmの範囲の長さ及び典型的には約7nm〜約9nmの範囲の幅を有する。
【0047】
触媒の金属担持(loading)
一実施形態において、第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つは、1つ以上の金属改質剤を更に含むことができる。一下位実施形態において、第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒の両方は、それぞれ金属改質剤を含むことができる。典型的には、金属改質剤(単数又は複数)は、Mg、Ca、Sr、Ba、K、La、Pr、Nd、Cr及びこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。一下位実施形態において、金属改質剤はMgを含んでいてもよい。一実施形態において、本発明の金属改質触媒は、約0.5〜約3.5重量%のMg又は他の金属改質剤(単数又は複数)、典型的には約0.5〜約2.5重量%、通常は約0.9〜約2.5重量%のMg又は他の金属改質剤(単数又は複数)を含んでいてもよい。
【0048】
別の実施形態において、第2(例えば、下流)水素化異性化触媒は、実質的に金属改質剤を欠いていてもよい。別の言い方をすると、一実施形態において、Mg、Ca、Sr、Ba、K、La、Pr、Nd及びCrからなる群から選択される金属改質剤成分を第1水素化異性化触媒に含めることができるが、第2水素化異性化触媒から省くことができる。非限定的な例としては、第1水素化異性化触媒は、ゼオライトSSZ−32x;白金などのVIII族の貴金属;及びマグネシウムなどの金属改質剤を含んでいてもよい。対照的に、第2水素化異性化触媒は、実質的に1−D,10環モレキュラーシーブ(例えば、SSZ−32又はSSZ−32x)、VIII族の金属及び耐火性酸化物担体からなっていてもよい。
【0049】
本発明の脱蝋方法のために触媒又は触媒系を配合するとき、モレキュラーシーブと酸化物結合剤の混合物を、広範囲の物理的形状及び寸法を有する粒子又は押出物に形成することができる。一実施形態において、押出物又は粒子を、金属担持の前に乾燥及び焼成することができる。焼成は、典型的には約390°F〜約1100°F(199℃〜593℃)の範囲の温度で約0.5〜約5時間以上の範囲の時間にわたって実施してもよい。次に焼成された押出物又は形成された粒子に、Ca、Cr、Mg、La、Na、Pr、Sr、K、Nd及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの金属改質剤を担持することができる。理論に束縛されるものではないが、そのような金属は、金属改質水素化異性化触媒のモレキュラーシーブの酸性部位の数を有効に低減することができ、それによって供給原料におけるn−パラフィンの異性化(分解ではなく)に対する触媒の選択性を増加することができる。
【0050】
触媒(単数又は複数)への改質金属(単数又は複数)の担持は、含浸又はイオン交換などの当該技術において既知の技術により達成することができる。イオン交換技術は、典型的には、押出物又は粒子を、所望の金属カチオン(単数又は複数)の塩を含有する溶液と接触させることを伴う。ハロゲン化物、硝酸塩及び硫酸塩などの多様な金属塩を、これに関して使用することができる。所望の金属カチオン(単数又は複数)の塩溶液と接触させた後、押出物又は粒子を、例えば約150°F〜約800°F(66℃〜427℃)の範囲の温度で乾燥してもよい。その後、押出物又は粒子に、触媒のVIII族の金属成分を更に担持してもよい。
【0051】
一実施形態において、本発明のモレキュラーシーブ又は触媒に、改質金属とVIII族の金属を共含浸することができる。VIII族の金属及び改質金属を担持した後、触媒を、空気又は不活性ガス下、約500°F〜約900°F(260℃〜482℃)の範囲の温度で焼成してもよい。金属改質剤を含むモレキュラーシーブ触媒の調製は、同一出願人に譲渡された米国特許第7,141,529号及び米国特許出願公開第2008/0083657号に開示されており、それぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
脱蝋触媒系
本発明の一実施形態によると、炭化水素供給材料から基油を生成するための脱蝋触媒系10を、図1を参照して以下のように記載することができる。触媒系10は、複数の水素化異性化触媒層を含む層状系であってもよい。一実施形態において、水素化異性化触媒のそれぞれの層は、異なる配合、活性及び/又はn−パラフィン異性化選択性を有していてもよい。「n−パラフィン異性化選択性」とは、所定の触媒が、供給材料中のn−パラフィンを、分解するのではなく異性化する傾向を意味する。
【0053】
触媒系10は、水素化処理領域又は防護層12、第1水素化異性化領域14及び第2水素化異性化領域16を含むことができる。防護層12、第1水素化異性化領域14及び第2水素化異性化領域16は、それぞれ、水素化処理触媒18、第1水素化異性化触媒20及び第2水素化異性化触媒22を含有することができる。防護層12を第1水素化異性化触媒20の上流に配置することができ、第1水素化異性化触媒20を第2水素化異性化触媒22の上流に配置することができる。図1に示されている実施形態では、防護層12、第1水素化異性化領域14及び第2水素化異性化領域16を単一反応器24に収容することができる。本発明は、2つの水素化異性化領域及び防護層を含む図1を参照して記載されているが、他の数の領域及び層も本発明において可能である。
【0054】
炭化水素供給原料26を、第1導管28aを介して反応器24に導入することができ、一方、水素ガスを、第2導管28bを介して反応器24に導入することができる。反応器24内において、供給原料26を、水素の存在下で水素化処理触媒18と接触させ、水素化処理された供給材料30を生じることができる。水素化処理された供給材料30を、第1水素化異性化領域14において第1水素化異性化条件下で第1水素化異性化触媒20と接触させて、第1異性化流32を生じることができる。第1異性化流32を、第2水素化異性化領域16において第2水素化異性化条件下で第2水素化異性化触媒22と接触させて、第2異性化流34を生じることができる。
【0055】
第2異性化流34を水素化仕上ユニット(図示されず)に供給して、適切な品質及び収率の所望の基油生成物を生じさせてもよい。基油生成物は、約−9℃以下、典型的には約−12℃以下、通常は約−14℃以下の流動点を有していてもよい。基油生成物は、約−5℃以下、典型的には約−7℃以下、通常は約−12℃以下の曇り点を有していてもよい。基油生成物は、約7℃以下、典型的には約5℃以下、通常は約3℃以下の流動−曇り幅を有していてもよい。一実施形態において、上記の特性を有する基油生成物を、少なくとも89%の収率で得てもよい。
【0056】
一実施形態において、水素化処理触媒18は、比較的高い液時空間速度(例えば、LHSV>1h−1)及び約550°F〜約750°F(228℃〜399℃)の範囲の温度で効果的に作動することができる高活性触媒であってもよい。水素化処理触媒(防護層)は、総触媒容積の約3容積%〜約30容積%を占めてもよく、すなわち、水素化処理触媒は、水素化処理触媒の容積+第1水素化異性化触媒の容積+第2水素化異性化触媒の容積の合計の約3%〜約30%を構成してもよい。典型的には、水素化処理触媒は、総触媒容積の約5%〜約20%、通常は総触媒容積の約5%〜約15%を構成することができる。
【0057】
一実施形態において、第1水素化異性化触媒の容積と第2水素化異性化触媒の容積の比は、約7:3〜約3:7、典型的には約3:2〜約2:3、通常は約5:4〜約4:5の範囲でありうる。一下位実施形態において、第1水素化異性化触媒の容積と第2水素化異性化触媒の容積の比は、約1:1であってもよい。
【0058】
基油生成のための供給原料
本発明を使用して、全原油、常圧蒸留残油、真空塔残留物、循環油、合成石油、ガス油、真空ガス油、ロウ下油、フィッシャー−トロプシュ由来蝋などを含む多様な軽質、中質及び/又は重質炭化水素供給材料を脱蝋することができる。一実施形態において、炭化水素供給材料は、一般に約0℃を超える流動点を有する及び約0℃に冷却すると凝固、沈殿、そうでなければ固体粒状物を形成する傾向を有する蝋状供給原料として記載することができる。直鎖n−パラフィンを単独で又は16個以上の炭素原子を有する鎖が僅かしか分岐していないパラフィンと共に、本明細書において蝋と呼ぶことができる。供給材料は、通常は、一般に約350°F(177℃)を超えて沸騰するC10+供給材料であろう。
【0059】
典型的な供給材料には、水素化処理又は水素化分解ガス油、水素化処理潤滑油ラフィネート、ブライトストック、潤滑油原料油、合成油、ロウ下油、フィッシャー−トロプシュ合成油、高流動点ポリオレフィン、通常のアルファオレフィン蝋、粗蝋、脱油蝋及び微晶質蝋が含まれうる。本発明の方法における使用に適した他の炭化水素供給材料は、例えば、ガス油及び真空ガス油;大気圧蒸留法による残留留分;溶剤−脱アスファルト化石油残留物;シェールオイル;循環油;動物及び植物由来脂肪、油及び蝋;石油及び粗蝋;並びに化学工場におけるプロセスで生成された蝋から選択することができる。
【0060】
本発明の一実施形態において、基油生成のための供給材料は、軽質供給原料を含んでいてもよい。本明細書において、用語「軽質供給原料」は、成分の少なくとも約80%が約900°F(482℃)未満の沸点を有する炭化水素供給材料を意味するために使用できる。本発明を実施するのに適した軽質供給原料の例には、軽質中性(100〜150N)及び中質中性(200〜250N)が含まれる。別の実施形態において、本発明の方法の供給材料は、重質供給原料を含んでいてもよい。本明細書において、用語「重質供給原料」は、成分の80%以上が約900°F(482℃)を超える沸点を有する炭化水素供給材料を意味するために使用できる。本発明を実施するのに適した重質供給原料の例には、重質中性(600N)及びブライトストックが含まれる。
【0061】
本発明は、ガス油、灯油及びジェット燃料を含む中間留出原料油などの蝋状流出原料油、潤滑油原料油、暖房用油、並びに流動点及び粘度が特定の指定範囲内に維持される必要がある他の留出留分を処理するためにも適切でありうる。
【0062】
本発明の方法の供給材料は、高分子量のn−パラフィン及び僅かに分岐しているパラフィンに加えて、典型的には、オレフィン及びナフテン成分、並びに芳香族及び複素環式化合物を含むことができる。本発明の方法の際に、供給原料中のn−パラフィン及び僅かに分岐しているパラフィンの分解度は、生成物収率の損失が最低限になるように厳密に制限されており、それによって供給原料の経済的価値が保全される。
【0063】
一実施形態において、本発明の炭化水素供給材料は、一般に0℃を超える、幾つかの実施形態では約20℃を超える流動点を有していてもよい。対照的に、供給材料の水素化異性化脱蝋によりもたらされる本発明の方法の基油生成物は、一般に0℃未満、典型的には約−12℃未満、多くの場合には約−14℃未満の流動点を有する。
【0064】
一実施形態において、本発明の方法に用いられる供給材料は、約20%を超える蝋、約50%を超える蝋、更には約70%を超える蝋を含有する蝋状供給原料であってもよい。より典型的には、供給原料は、約5%〜約30%の蝋を含有する。本明細書で使用されるとき、用語「蝋状炭化水素供給材料」は、石油由来の蝋に加えて、植物蝋及び動物由来の蝋を含むことができる。
【0065】
本発明の一つの態様によると、広範囲の供給原料を使用して、低い流動点、低い曇り点、少ない流動−曇り幅及び高い粘度指数を含む良好な性能特性を有する循環剤基油を高い収率で生成することができる。本発明の潤滑基油生成物の品質及び収率は、層状触媒系を含む水素化異性化触媒の配合及び触媒系の触媒層の配置を含む多数の要因によって左右されうる。
【0066】
本発明の一実施形態において、潤滑基油生成物の品質及び収率は、供給流に対して異なる水素化異性化触媒の配列に応じて左右されうる。例として、出願人らは、高レベルの異性化選択性を有する水素化異性化触媒を、低いレベルの異性化選択性を有する水素化異性化触媒の上流に配置して、従来の方法及び系と比較して改善された特性及び増加した収率を有する基油生成物を提供できることを、現在発見している。更に、出願人らは、供給流に対して逆の配列の水素化異性化触媒が不十分な結果、例えば基油生成物の品質及び/又は量の減少をもたらしかねないことにも気づいている。この点において「逆の配列」とは、高レベルの異性化選択性を有する水素化異性化触媒を、低いレベルの異性化選択性を有する水素化異性化触媒の下流に配置する触媒系配置を意味する。
【0067】
脱蝋方法
本発明の一つの実施形態によると、炭化水素供給材料から基油を生成する触媒脱蝋方法は、供給原料を、脱蝋触媒系を含有する反応器に導入する工程を伴っていてもよい。水素ガスを反応器に導入してもよく、これにより該方法を、例えば本明細書下記に記載されているように方法の条件を参照して、水素の存在下で実施することができる。
【0068】
反応器内では、供給原料を水素化処理領域又は防護層において水素化処理条件下で水素化処理触媒と接触させて、水素化処理供給材料を生じさせてもよい。供給材料を防護層において水素化処理触媒と接触させることは、供給材料中の芳香族化合物を効果的に水素化するため、並びに供給原料からN含有及びS含有化合物を除去するために役立つことができ、それによって触媒系の第1及び第2水素化異性化触媒を保護することができる。「芳香族化合物を効果的に水素化する」とは、水素化処理触媒が、供給材料の芳香族含有量を少なくとも約20%減少できることを意味する。水素化処理された供給材料は、一般に、C10+n−パラフィン及び僅かに分岐しているイソパラフィンを含むことができ、蝋含有量は、典型的には少なくとも約20%である。
【0069】
水素化処理された供給材料を第1水素化異性化領域おいて第1水素化異性化脱蝋条件下で第1水素化異性化触媒と接触させて、第1異性化流を生じさせてもよい。その後、第1異性化流を、第2水素化異性化領域において第2水素化異性化脱蝋条件下で第2水素化異性化触媒と接触させて、第2異性化流を生じさせてもよい。防護層、第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒を、全て、単一の反応器内に配置してもよい。本発明の触媒脱蝋方法に使用することができる水素化処理及び水素化異性化条件を、本明細書下記に記載する。
【0070】
第2異性化流を水素化仕上ユニットに供給して、適切な品質及び収率の所望の基油生成物を提供することができる。そのような水素化仕上(hydrofinishing)ステップは、基油生成物から微量のあらゆる芳香族化合物、オレフィン、着色体などを除去することができる。水素化仕上ユニットは、アルミナ担体と、貴金属、典型的にはパラジウム又はパラジウムと組み合わせた白金とを含む水素化仕上触媒を含んでいてもよい。一実施形態において、水素化仕上触媒の貴金属含有量は、典型的には約0.1〜約1.0重量%、通常は約0.1〜約0.6重量%、多くの場合には約0.2〜約0.5重量%の範囲でありうる。
【0071】
第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、例えば本明細書上記の「水素化異性化触媒」において実質的に記載されているように、1−D,10環モレキュラーシーブ及びVIII族の金属を含んでいてもよい。第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒は、それぞれ、供給材料成分が分解されるのではなく優先的に異性化されるように、供給材料中のn−パラフィンの異性化に対して選択的であってよい。一実施形態において、第1水素化異性化触媒のモレキュラーシーブは、本明細書上記に記載されているように、ゼオライトSSZ−32xを含んでいてもよい。
【0072】
本発明の一つの態様によると、第1及び第2水素化異性化触媒は、供給材料中のn−パラフィンの異性化に対して異なるレベルの選択性を有していてもよい。一実施形態において、第1水素化異性化触媒は、第2水素化異性化触媒と比較して、供給材料中のn−パラフィンの異性化に対してより選択的であってもよい(例えば、図2Aを参照すること)。別の言い方をすると、本発明の一実施形態において、第1水素化処理触媒は、供給材料中のn−パラフィンの異性化に対して第1レベルの選択性を有することができ、第2水素化異性化触媒は、供給材料中のn−パラフィンの異性化に対して第2レベルの選択性を有することができ、ここで第1レベルの選択性は、第2レベルの選択性より高くてもよい。
【0073】
図2Aは、本発明の一実施形態による層状脱蝋触媒系10Aを概略的に表す。触媒系10Aは、第2水素化異性化触媒122の上流に配置された第1水素化異性化触媒120を含む。実施形態において、第1水素化異性化触媒120は、第2水素化異性化触媒122と比較して、n−パラフィンの異性化に対してより高いレベルの選択性を有していてもよい。図2Bは、図2Aの触媒系10Aと比較して同じ組成を有するが、逆の配列を有する層状脱蝋触媒系10Bを表し、すなわち、触媒系10Bにおいて、水素化異性化触媒120は、水素化異性化触媒122の下流に配置される。
【0074】
更に図2A〜Bを参照すると、蝋状炭化水素供給原料を、水素の存在下で水素化異性化触媒120及び122と接触させて、基油生成物を生じさせることができる。特に、触媒系10Aは脱蝋生成物Aを生じ、一方、触媒系10Bは脱蝋生成物Bを生じ、ここで生成物Aは、驚くべきことに、生成物Bよりも実質的に優れている。したがって、出願人らは、第2水素化異性化触媒122の上流に配置された第1水素化異性化触媒120の組み合わせ(例えば、図2A)が、逆の配置(図2B)と比較して、優れた基油生成物を生じうることを見出した。
【0075】
本発明の別の態様によると、出願人らは、第2水素化異性化触媒の上流の第1水素化異性化触媒の組み合わせが、第1水素化異性化触媒単独又は第2水素化異性化触媒単独のいずれかの同じ容積の触媒と比較して、同等又は優れた結果を提供できることも見出した。
【0076】
潤滑油生成のための層状触媒系の使用に関して本明細書上記に参照された優れた結果は、生成物収率の増大のみならず生成物品質の改善としても現れうる。
【0077】
図3Aは、反応器24に配置された第1触媒脱蝋系100Aを概略的に表し、ここで脱蝋系100Aは、第1水素化異性化触媒220から実質的になっていてもよい。図3Bは、反応器24に配置された第2触媒脱蝋系100Bを概略的に表し、ここで脱蝋系100Bは、第2水素化異性化触媒222から実質的になっていてもよい。第1水素化異性化触媒220及び第2水素化異性化触媒222は、それぞれ、n−パラフィンの異性化に対して第1及び第2レベルの選択性を有していてもよい。一実施形態において、第1及び第2レベルの選択性は、同様又は少なくとも実質的に同じであってもよい。系100A及び100Bは、水素の存在下で炭化水素供給原料を脱蝋することにより脱蝋生成物A’及び脱蝋生成物B’をそれぞれ生じることができ、ここで生成物A’及びB’の収率は、少なくとも実質的に同じであってよい。炭化水素供給原料は、軽質、中質又は重質供給原料であってよい。所望により、系100A及び100Bは、防護層を含むことができる。
【0078】
図3Cは、本発明の一実施形態による層状脱蝋触媒系100Cを概略的に表す。触媒系100Cは、第2水素化異性化触媒222の上流に配置された第1水素化異性化触媒220を含んでいてもよい。一実施形態において、触媒系100Cは、n−パラフィンの異性化に対して第3レベルの選択性を有していてもよく、ここで第3レベルの選択性は、触媒220の第1レベルの選択性及び触媒222の第2レベルの選択性のそれぞれよりも高い場合がある。その結果、系100Cは、生成物A’又は生成物B’のいずれかの収率と比較して、所定の曇り点において、有意に高い収率で脱蝋生成物C’を生じることができる。一実施形態において、層状脱蝋系100Cは、第1水素化異性化触媒120の上流に配置された防護層を含んでいてもよい(例えば、図1を参照すること)。
【0079】
このように、本発明の一実施形態によると、出願人らは、第1及び第2水素化異性化触媒220及び222の組み合わせ(例えば、図3Cを参照すること)が、第1水素化異性化触媒220単独又は第2水素化異性化触媒222単独のいずれかの同じ容積の使用と比較して、優れた結果を提供できることを見出した。そのような優れた結果は、生成物収率の増大のみならず生成物品質の改善としても現れうる。
【0080】
反応条件
本発明の方法が実施される条件には、一般に約390°F〜約800°F(199℃〜427℃)の範囲内の温度が含まれる。一実施形態において、第1及び第2水素化異性化脱蝋条件には、それぞれ、約550°F〜約700°F(288℃〜371℃)の範囲の温度が含まれる。更なる実施形態において、温度は、約590°F〜約675°F(310℃〜357℃)の範囲であってもよい。圧力は、約15〜約3000psig(0.10〜20.68MPa)の範囲、典型的には約100〜約2500psig(0.69〜17.24MPa)の範囲であってもよい。
【0081】
典型的には、本発明の脱蝋過程の際の触媒系/反応器への供給速度は、約0.1〜約20h−1LHSV、通常は約0.1〜約5h−1LHSVの範囲であってよい。一般に、本発明の脱蝋方法は水素の存在下で実施される。典型的には、水素と炭化水素の比は、炭化水素1バレルあたり約2000〜約10,000標準立方フィートのH、通常は、炭化水素1バレルあたり約2500〜約5000標準立方フィートのHの範囲であってよい。
【0082】
上記の条件を、水素化処理領域の水素化処理条件、並びに第1及び第2水素化異性化領域の水素化異性化条件に適用することができる(例えば、図1を参照すること)。反応器の温度及び他の方法のパラメーターは、使用される炭化水素供給材料の性質、並びに基油生成物の所望の特性(例えば、流動点、曇り点、VI)及び収率などの要因によって変わりうる。
【0083】
水素化処理触媒を、水素化異性化触媒の上流に配置することができ、水素化異性化触媒と同じ反応器内に配置することができる。一実施形態において、第1と第2の水素化異性化領域の間に温度の差があってもよい。例えば、第1水素化異性化領域は第1温度であることができ、第2水素化異性化領域は第2温度であることができ、ここで第2温度は、第1温度よりも約20°F〜約60°F高くてもよく、より典型的には約30°F〜約50°F高くてもよく、通常は第1温度よりも約35°F〜約45°F高くてもよい。
【0084】
本発明の触媒系からの流出液又は流、例えば第2水素化異性化領域からの第2水素化異性化流を、水素化仕上げ(hydrofinishing)により更に処理してもよい。そのような水素化仕上げを、当該技術分野において知られているように水素化触媒の存在下で実施してもよい。水素化仕上げに使用される水素化触媒は、例えば、アルミナ担体上の白金、パラジウム又はこれらの組み合わせを含むことができる。水素化仕上げを、約400°F〜約650°F(204℃〜343℃)の範囲の温度及び約400psig〜約4000psig(2.76〜27.58MPa)の範囲の圧力で実施することができる。潤滑油を生成するための水素化仕上げは、例えば米国特許第3,852,207号に記載されており、この開示は本明細書に参照により組み込まれる。
【0085】
基油生成物
一実施形態において、本発明の方法は、高い価値で高い品質の潤滑油を低い価値の蝋状炭化水素供給材料から良好な収率で生じる。本発明の潤滑油は、例えばASTM D97により測定して、典型的には約9℃未満、通常は約−12℃未満、多くの場合には約−14℃未満の流動点を有するであろう。一実施形態において、潤滑油生成物は、約−10℃〜約−30℃の範囲の流動点を有していてもよい。本発明の生成物は、ASTM D445により測定して、一般に、100℃で3〜30cStの範囲の粘度及び約95〜約170の範囲のVIを有するであろう。
【0086】
本明細書上記に示されているように、脱蝋第2水素化異性化流(図1)を、例えば1つ以上の水素化仕上触媒を介して更に水素化処理して、所望の特性を有する最終潤滑油生成物を得ることができる。例としては、第2水素化異性化流の少なくとも一部を水素化仕上げして、所望の潤滑油仕様を満たすため及び/又は基油生成物の安定性を改善するために、あらゆる着色物質を除去すること及び/又はあらゆる芳香族種を水素化することができる。
【0087】
以下の実施例は本発明を説明するが、限定するものではない。
【実施例】
【0088】
ゼオライトSSZ−32xの合成
(例1)
SSZ−32xの合成のための反応混合物は、以下を順に脱イオン水に加えることにより調製した:KOH(45.8%、Fisher)、0.47MのN,N’−ジイソプロピルイミダゾリウムヒドロキシド(DIPI)及びアルミナ被覆シリカDVSZN007[SAR=35;固形分25.22%(Nalco、Naperville、IL)]。反応混合物の成分のモル比は以下であった:
成分 モル比
SiO/Al 35.0
O/SiO 33.86
OH/SiO 0.28
KOH/SiO 0.24
DIPI/SiO 0.04
反応混合物を8時間勾配で170℃に加熱し、150rpmで135時間連続的に撹拌した。生成物は、粉末X線回析(XRD)分析により、SSZ−32xであると特定された。SSZ−32xの合成のための反応時間は、反応混合物に種結晶を含めることにより顕著に短縮することができる(例えば、例2及び3を参照すること)。
【0089】
(例2)
SSZ−32xの合成のための反応混合物は、SSZ−32xスラリー種(SiO含有量に対して3.15重量%のSSZ−32x)を反応混合物に含めた以外は、例1と同じ成分を加えることにより調製した。種結晶は、スラリー種を含まない、前のSSZ−32x調製物(例えば、例1を参照すること)から得た。反応混合物の成分のモル比は以下であった:
成分 モル比
SiO/Al 35.00
O/SiO 31.00
OH/SiO 0.27
KOH/SiO 0.23
DIPI/SiO 0.04
種% 3.15%
反応混合物を8時間勾配で170℃に加熱し、150rpmで連続的に撹拌した。反応の終点は、約60時間の反応時間(該温度での)により実現した。生成物は、粉末XRD分析によりSSZ−32xであると確認された。
【0090】
(例3)
反応混合物を例2に実質的に記載されたように調製して、以下のモル比の成分を有する反応混合物を用意することにより、SSZ−32xの別の試料を合成した:
成分 モル比
SiO/Al 35.00
O/SiO 33.00
OH/SiO 0.27
KOH/SiO 0.21
DIPI/SiO 0.06
種% 3.5%
反応混合物に使用されたSSZ−32x種の量は、SiO含有量に対して3.5重量%であった。反応条件は、例2に記載されたとおりであった。例3のSSZ−32x生成物を、マッフル炉の中で、2%酸素/98%窒素下で焼成し、NHNOを使用してアンモニウム交換し、洗浄し、乾燥した。例3により調製した焼成SSZ−32xのXRDデータを表1に示す。
【表1】

【0091】
(例4)
ヘキサデカン異性化
例2及び3のSSZ−32x調製物を、供給原料としてn−ヘキサデカンを使用し、米国特許第7,063,828号の例10に実質的に記載されている手順を使用して、異性化選択性について試験した。2つの調製物の、n−C16転換率96%での、異性化選択性の率及びC4−分解を表2に示す。
【表2】

【0092】
(例5)
脱蝋触媒の調製
水素化異性化触媒Aを以下のように調製した。小(例えば、約15〜20nm)結晶子SSZ−32xをアルミナと複合化して、45重量%のゼオライトを含有する混合物を生じ、混合物を押し出し、乾燥し、焼成した。乾燥及び焼成した押出物に、白金とマグネシウムの両方を含有する溶液を含浸し、次に該共含浸触媒を乾燥し、焼成した。全体的な白金担持量は0.325重量%であり、マグネシウム担持量は2.5重量%であった。
【0093】
水素化異性化触媒Bを、触媒Aについて記載されたように調製して、45重量%のゼオライトを含有する混合物を生じた。乾燥及び焼成した押出物に白金を含浸して、0.325重量%の白金担持量を得た。
【0094】
水素化異性化触媒Cを、混合物が65重量%のゼオライトを含有した以外は、触媒Aについて一般に記載されたように調製した。乾燥及び焼成した押出物に白金及びマグネシウムを共含浸して、0.325重量%の白金担持量及び0.9重量%のマグネシウム担持量を得た。
【0095】
(例6)
触媒系A/Bを使用した触媒脱蝋の比較
層状水素化異性化脱蝋触媒系A/Bは、触媒Aが上側層になるように、すなわち触媒Aが触媒Bの上流に配置されるように、触媒Aの層を触媒Bの層に対して配置することにより調製した。0.3重量%のPt及び0.6重量%のPdを担持したアルミナを含む防護層を、触媒系A/Bの上流に配置した。層状触媒系A/Bを、蝋状重質水素化分解生成物(600N)供給原料の脱蝋について、同容積の触媒A単独と比較した。異性化に続いて、脱蝋生成物を、Pt/Pdシリカ−アルミナ水素化仕上触媒上で別々に水素化仕上げした。層状触媒系A/Bは、予想外なことに、同じ容積の触媒A単独と比較して、目標曇り点において収率の増加をもたらした。
【0096】
(例7)
触媒系A/Cを使用した触媒脱蝋の比較
層状水素化異性化脱蝋触媒系A/Cは、触媒Aが上側層になるように、すなわち触媒Aが触媒Cの上流に配置されるように、触媒Aの層を触媒Cの層に対して配置することにより調製した。Pt及びPdを担持したアルミナを含む防護層を、触媒系A/Cの上流に配置した。層状触媒系A/Cを、蝋状重質水素化分解生成物(600N)供給原料の脱蝋について、同容積の触媒A単独と比較した。異性化に続いて、脱蝋生成物を、Pt/Pdシリカ−アルミナ水素化仕上触媒上で別々に水素化仕上げした。層状触媒系A/Cは、予想外なことに、同じ容積の触媒A単独と比較して、目標曇り点において収率の増加をもたらした。
【0097】
本発明の多数の変種が、本明細書の教示及び例を考慮すると可能でありうる。したがって、以下の特許請求の範囲の範囲内において、本発明を本明細書に特に記載又は例示された以外の別の方法で実施できることが理解される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蝋状炭化水素供給材料を触媒的に脱蝋する方法であって、
a)該炭化水素供給材料を、第1水素化異性化領域において第1水素化異性化脱蝋条件下で第1水素化異性化触媒と接触させて、第1異性化流を生じること、及び
b)該第1異性化流の少なくとも一部を、第2水素化異性化領域において第2水素化異性化脱蝋条件下で第2水素化異性化触媒と接触させて、第2異性化流を生じることを含み、該第1及び第2水素化異性化触媒が、それぞれ、モレキュラーシーブ及びVIII族の金属を含み、該第1水素化異性化触媒及び第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つの該モレキュラーシーブがゼオライトSSZ−32xを含む、上記方法。
【請求項2】
前記第2水素化異性化触媒が1−D,10環モレキュラーシーブを含み、前記第1水素化異性化触媒がSSZ−32xを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2水素化異性化触媒のモレキュラーシーブが、SSZ−32又はSSZ−32xを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1水素化異性化触媒が、Mg、Ca、Sr、Ba、K、La、Pr、Nd、Cr及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属改質剤でドープされたSSZ−32xを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1水素化異性化触媒が、前記供給材料中のn−パラフィンの異性化に対して第1レベルの選択性を有し、前記第2水素化異性化触媒が、前記供給材料中のn−パラフィンの異性化に対して第2レベルの選択性を有し、該第1レベルの選択性が該第2レベルの選択性よりも高い、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記金属改質剤が、約0.5〜約2.5重量%の範囲の濃度でMgを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第2水素化異性化触媒が少なくとも実質的に金属改質剤を欠いている、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記供給材料成分の少なくとも約80%が約900°F(482℃)未満の沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1水素化異性化触媒及び前記第2水素化異性化触媒が、それぞれ、Mg、Ca、Sr、Ba、K、La、Pr、Nd、Cr及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属改質剤でドープされている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記供給材料成分の少なくとも約80%が約900°F(482℃)を超える沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1水素化異性化触媒及び前記第2水素化異性化触媒が単一の反応器内に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
c)ステップa)の前に、前記炭化水素供給材料を、水素化処理領域において水素化処理条件下で水素化処理触媒と接触させることを更に含み、該水素化処理触媒が、該水素化処理触媒、前記第1水素化異性化触媒及び前記第2水素化異性化触媒の総容積の約3%〜約30%の範囲の容積を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1水素化異性化触媒の容積と前記第2水素化異性化触媒の容積の比が、約3:2〜約2:3の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
d)前記第2異性化流を、水素の存在下で水素化仕上触媒と接触させて、約−12℃以下の流動点及び約5℃以下の流動−曇り幅を有する基油生成物を生じることを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記第1水素化異性化触媒が、約5〜約95重量%のSSZ−32x及び約0.1〜約1.0重量%のVIII族の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
蝋状炭化水素供給材料を触媒的に脱蝋する方法であって、
a)該炭化水素供給材料を、第1水素化異性化領域において第1水素化異性化脱蝋条件下で第1水素化異性化触媒と接触させて、第1異性化流を生じること、及び
b)該第1異性化流の少なくとも一部を、第2水素化異性化領域において第2水素化異性化脱蝋条件下で第2水素化異性化触媒と接触させて、第2異性化流を生じることを含み、該第1水素化異性化触媒及び該第2水素化異性化触媒が、それぞれ、1−D,10環ゼオライト及びVIII族の金属を含み、該第1水素化異性化触媒及び該第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つが、Mg、Ca、Sr、Ba、K、La、Pr、Nd、Cr及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属改質剤でドープされており、該第1及び第2水素化異性化触媒が同じ反応器内に配置され、該第1水素化異性化触媒のゼオライトがSSZ−32xを含む、上記方法。
【請求項17】
c)前記第2異性化流を、水素の存在下で水素化仕上触媒と接触させて、約−12℃以下の流動点及び約5℃以下の流動−曇り幅を有する基油生成物を生じることを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1水素化異性化触媒が金属改質剤でドープされており、該第1水素化異性化触媒が、前記供給材料中のn−パラフィンの異性化に対して第1レベルの選択性を有し、前記第2水素化異性化触媒が、該供給材料中のn−パラフィンの異性化に対して第2レベルの選択性を有し、該第1レベルの選択性が該第2レベルの選択性よりも高い、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
第1水素化異性化触媒を含む第1水素化異性化領域と、第2水素化異性化触媒を含む第2水素化異性化領域とを含み、該第1及び第2水素化異性化触媒が、それぞれ、モレキュラーシーブ及びVIII族の金属を含み、該第1水素化異性化触媒及び該第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つのモレキュラーシーブが、Mg、Ca、Sr、Ba、K、La、Pr、Nd、Cr及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属改質剤でドープされており、該第1水素化異性化触媒及び該第2水素化異性化触媒のうちの少なくとも1つの該モレキュラーシーブが、ゼオライトSSZ−32xを含む、層状触媒系。
【請求項20】
前記第1水素化異性化触媒が、前記金属改質剤でドープされたSSZ−32xを含み、該第1水素化異性化触媒が、前記第2水素化異性化触媒の上流に配置され、該第1水素化異性化触媒が、n−パラフィンの異性化に対して第1レベルの選択性を有し、該第2水素化異性化触媒が、n−パラフィンの異性化に対して第2レベルの選択性を有し、該第1レベルの選択性が該第2レベルの選択性よりも高い、請求項19に記載の層状触媒系。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2013−516548(P2013−516548A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549165(P2012−549165)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2011/041810
【国際公開番号】WO2012/005981
【国際公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】