説明

ソイルセメント用流動化剤

【課題】
土の種類(特に粘性土の種類)に影響されることなく、ソイルセメントに優れた流動性を付与することができる流動化剤を提供すること。
【解決手段】
アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)及びアクリル酸(A3)を必須構成単量体とする重合体(A)と、
アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機化合物(B)とからなることを特徴とする流動化剤を用いる。
アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)単位、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)単位及びアクリル酸(A3)単位のモル数に基づいて、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)単位の含有量が0.1〜30モル%、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)単位の含有量が30〜99.5モル%、アクリル酸(A3)単位の含有量が0.4〜40モル%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメント用流動化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソイルセメント用流動化剤として、カルボン酸又はその1価塩を主要構成単量単位とする重量平均分子量が25000以下の低分子量重合体及びアルカリ金属炭酸塩からなり、上記低分子量重合体及び上記アルカリ金属炭酸塩の合計重量に占める上記アルカリ金属炭酸塩の量の割合が50〜95重量%である流動化剤が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3554496号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の流動化剤では、内陸部粘土を主体とする土を使用したソイルセメントに適用すると、希望する流動性が得られないという問題がある。
すなわち、本発明の目的は、土の種類(特に粘性土の種類)に影響されることなく、ソイルセメントに優れた流動性を付与することができる流動化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のソイルセメント用流動化剤の特徴は、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)及びアクリル酸(A3)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、
アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機化合物(B)とからなり、
アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)単位、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)単位及びアクリル酸(A3)単位のモル数に基づいて、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)単位の含有量が0.1〜30モル%、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)単位の含有量が30〜99.5モル%、アクリル酸(A3)単位の含有量が0.4〜40モル%である点を要旨とする。
【0006】
本発明のソイルセメント構造体の製造方法の特徴は、上記のソイルセメント用流動化剤をソイルセメントに適用してソイルセメントを流動化させる流動化工程を含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のソイルセメント用流動化剤は、土の種類(特に粘性土の種類)に影響されることなく、ソイルセメントに優れた流動性を付与することができる。
【0008】
本発明のソイルセメント構造体の製造方法を適用すると、上記のソイルセメント用流動化剤を用いるので、土の種類(特に粘性土の種類)に影響されることなく、ソイルセメントに優れた流動性を付与することができるため、圧縮強度に優れたソイルセメント構造体を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)のアルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。これらは単独又は混合して用いてもよい。これらのうち、ベリリウム、マグネシウム及びカルシウムが好ましく、さらに好ましくはマグネシウム及びカルシウム、特に好ましくはマグネシウムである。
【0010】
アクリル酸アルカリ金属塩(A2)のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウム等が挙げられる。これらは単独又は混合して用いてもよい。これらのうち、リチウム、ナトリウム及びカリウムが好ましく、さらに好ましくはリチウム及びナトリウム、特に好ましくはナトリウムである。
【0011】
アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)単位の含有量(モル%)は、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)単位、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)単位及びアクリル酸(A3)単位のモル数に基づいて、0.1〜30が好ましく、さらに好ましくは1〜30、特に好ましくは2〜25、次に好ましくは3〜20、最も好ましくは5〜15である。この範囲であると、流動性がさらに良好となる。
【0012】
アクリル酸アルカリ金属塩(A2)単位の含有量(モル%)は、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)単位、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)単位及びアクリル酸(A3)単位のモル数に基づいて、30〜99.5が好ましく、さらに好ましくは45〜98、特に好ましくは55〜95、次に好ましくは55〜88、最も好ましくは60〜84である。この範囲であると、流動性がさらに良好となる。
【0013】
アクリル酸(A3)単位の含有量(モル%)は、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)単位、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)単位及びアクリル酸(A3)単位のモル数に基づいて、0.4〜40が好ましく、さらに好ましくは1〜35、特に好ましくは2〜30、次に好ましくは9〜30、最も好ましくは10〜25である。この範囲であると、流動性がさらに良好となる。
【0014】
共重合体(A)は、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)及びアクリル酸(A3)以外に、他のビニル単量体(塩)を構成単量体として含むことができる。
【0015】
他のビニル単量体としては、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)及びアクリル酸(A3)と共重合できれば特に制限はなく、炭素数4〜17の不飽和カルボン酸(塩)、炭素数4〜20の不飽和カルボン酸エステル、炭素数4〜20の脂肪酸ビニルエステル、炭素数2〜20のオレフィン、炭素数3〜5の不飽和ニトリル、炭素数2〜8の不飽和アミド及び炭素数5〜60の不飽和エーテル等の単量体等が使用できる。
【0016】
不飽和カルボン酸(塩)としては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩{塩としては、アクリル酸塩と同様な塩が使用でき、含有量比も同様である}が含まれる。
不飽和モノカルボン酸としては、炭素数4〜10の脂肪族モノカルボン酸、炭素数6〜10の脂環式モノカルボン酸及び炭素数9〜17の芳香族モノカルボン酸等が使用できる。
【0017】
脂肪族モノカルボン酸としては、メタクリル酸、クロトン酸、3−ブテン酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、3−メチル−2−ブテン酸、3−メチル−3−ブテン酸、2−メチル−3−ブテン酸、2−メチル−2−ブテン酸、2−エチル−2−プロペン酸、2−ヘキセン酸、4−メチル−2−ペンテン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、2−ヘプテン酸、4,4−ジメチル−2−ペンテン酸、2−オクテン酸、3−メチル−2−ヘプテン酸、2−ノネン酸、3−メチル−2−オクテン酸、2−デセン酸及び2−ヒドロキシプロペン酸等が挙げられる。
【0018】
脂環式モノカルボン酸としては、1−シクロペンテンカルボン酸、3−シクロペンテンカルボン酸、4−シクロペンテンカルボン酸、1−シクロヘキセンカルボン酸、3−シクロヘキセンカルボン酸、4−シクロヘキセンカルボン酸、1−シクロヘプテンカルボン酸、3−シクロヘプテンカルボン酸、4−シクロヘプテンカルボン酸、5−シクロヘプテンカルボン酸、1−シクロオクテンカルボン酸、3−シクロオクテンカルボン酸、4−シクロオクテンカルボン酸、5−シクロオクテンカルボン酸、1−シクロノネンカルボン酸、3−シクロノネンカルボン酸、4−シクロノネンカルボン酸、5−シクロノネンカルボン酸、1−シクロデセンカルボン酸、3−シクロデセンカルボン酸、4−シクロデセンカルボン酸及び5−シクロデセンカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
芳香族モノカルボン酸としては、オルトカルボキシスチレン、パラカルボキシスチレン、桂皮酸、アトロパ酸{α−フェニルアクリル酸}、(メタ)アクリル酸ベンジル、5−ビニル−1−ナフタレンカルボン酸、4−ビニル−1−ナフタレンカルボン酸及び4−ビニル−1−アントラキノンカルボン酸等が挙げられる。
【0020】
不飽和ジカルボン酸としては、炭素数4〜11の脂肪族ジカルボン酸、炭素数6〜10の脂環式ジカルボン酸、炭素数9〜17の芳香族ジカルボン酸及びこれらの分子内酸無水物等が含まれる。
脂肪族ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ブテン二酸、2−ペンテン二酸、3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2−メチル−2−ブテン二酸、2−エチル−2−プロペン酸、2−ヘキセン二酸、2−ヘプテン二酸、2−オクテン酸、3−メチル−2−ヘプテン二酸、2−ノネン二酸、2−デセン二酸及び2−ヒドロキシプテンロ二酸等が挙げられる。
【0021】
脂環式ジカルボン酸としては、1,2−シクロペンテンジカルボン酸、1,3−シクロペンテンジカルボン酸、1,4−シクロペンテンジカルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、1,3−シクロヘキセンジカルボン酸、1,4−シクロヘキセンジカルボン酸、1,2−シクロヘプテンジカルボン酸、1,3−シクロヘプテンジカルボン酸、1,4−シクロヘプテンジカルボン酸、1,5−シクロヘプテンジカルボン酸、1,2−シクロオクテンジカルボン酸、1,3−シクロオクテンジカルボン酸、1,4−シクロオクテンジカルボン酸、1,5−シクロオクテンジカルボン酸、1,2−シクロノネンジカルボン酸、1,3−シクロノネンジカルボン酸、1,4−シクロノネンジカルボン酸、1,5−シクロノネンジカルボン酸、1,2−シクロデセンジカルボン酸、1,3−シクロデセンジカルボン酸、1,4−シクロデセンジカルボン酸及び1,5−シクロデセンジカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
芳香族ジカルボン酸としては、o,p−ジカルボキシスチレン、o,p−ジカルボキシスチレン、4−ビニル−1,2−ナフタレンジカルボン酸及び4−ビニル−1,3−アントラキノンジカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
不飽和ジカルボン酸の分子内酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸及び無水シトラコン酸等が挙げられる。
【0024】
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ヘキシル及びイタコン酸ブチル等が挙げられる。
【0025】
脂肪酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ラウリン酸ビニル及びステアリン酸ビニル等が挙げられる。
【0026】
オレフィンとしては、α−オレフィン(エチレン、プロピレン、ブチレン、へキシレン、オクチレン、ウンデシレン、テトラデシレン及びノナデシレン等)、ジイソブチレン、ブタジエン、ピペリレン、クロロプレン、ピネン、リモネン、インデン、シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0027】
不飽和ニトリルとしては、(メタ)アクリロニトリル、シアノプロペン及びシアノペンテン等が挙げられる。
【0028】
不飽和アミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−アミノエチル)(メタ)アクリルアミド及びN−(2−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
不飽和エーテルとしては、メトキシポリエチレングリコール(重合度25)(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(重合度5)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度20)モノ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(重合度10)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
これらの他のビニル単量体のうち、不飽和カルボン酸エステル及び不飽和ニトリルが好ましく、さらに好ましくは不飽和ニトリル、特に好ましくはアクリロニトリルである。
【0031】
他のビニル単量体を構成単量体として含有する場合、他のビニル単量体単位の含有量(モル%)は、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)及びアクリル酸(A3)のモル数に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.3〜5、特に好ましくは0.5〜3である。この範囲であるとソイルセメントの流動性がさらに良好となる。
【0032】
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、4,000〜40,000が好ましく、さらに好ましくは7,000〜30,000、特に好ましくは10,000〜20,000である。また、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1.2〜3.0が好ましく、さらに好ましくは1.3〜2.5、特に好ましくは1.4〜2.0である。この範囲内であるとソイルセメントの流動性がさらに良好となる。
【0033】
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、分子量既知の(ポリ)エチレングリコールを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される(カラム温度40℃、溶離液:0.1−MPBのリン酸水素二ナトリウム水溶液:0.1−MPBリン酸二水素ナトリウム水溶液=1:1(モル比)、流速0.8ml/分、試料濃度:0.4重量%溶離液溶液。)。
【0034】
共重合体(A)は、通常のビニルモノマーの重合方法を用いて得ることができ、重合方法としては懸濁重合、塊状重合及び溶液重合等が適用でき、生産性の観点等から、溶液重合が好ましい。
【0035】
共重合体(A)は、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)、アクリル酸(A3)、及び必要により他のビニル単量体を共重合して製造する方法(方法1)、アクリル酸、並びに必要により他のビニル単量体を共重合してから、水酸化アルカリ土類金属や水酸化アルカリ金属等で中和して製造する方法(方法2)、並びにこれらの方法1及び2を併用する方法(方法3)により得ることができる。
【0036】
重合には、重合触媒を使用することができる。重合触媒としては、通常の重合触媒等が用いられ、アゾ化合物、過硫酸塩、無機過酸化物、レドックス触媒及び有機過酸化物等が含まれる。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−アルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]及び1,1’−アゾビス(1ーアセトキシー1−フェニルエタン)等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等が挙げられる。無機過酸化物としては、過硼酸塩及び過酸化水素等が挙げられる。レドックス触媒としては、アスコルビン酸−過酸化水素等が挙げられる。有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。これらの重合触媒は、単独又は混合して用いられてもよい。これらのうち、過硫酸塩及びアゾ化合物が好ましく、さらに好ましくは過硫酸塩及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、特に好ましくは過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムである。
【0037】
重合触媒を使用する場合、重合触媒の使用量(重量%)は、構成単量体の重量に基づいて、3〜100が好ましく、さらに好ましくは8〜80、特に好ましくは10〜60である。
【0038】
溶液重合及び懸濁重合の場合、溶媒としては、水(水道水、イオン交換水及び工業用水等)、アルコール溶剤(メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコール等)及び/又は芳香族溶剤(トルエン及びキシレン等)等が使用できる。これらのうち、水、水及びアルコール溶剤の混合溶媒が好ましく、さらに好ましくは水及びアルコールの混合溶媒、特に好ましくはイオン交換水及びイソプロピルアルコールの混合溶媒である。
溶媒を使用する場合、この使用量(重量%)は、構成単量体の全重量に基づいて、50〜900が好ましく、さらに好ましくは60〜800、特に好ましくは100〜600である。
【0039】
重合反応温度は、40〜130℃程度が好ましく、重合反応時間は、1〜15時間程度が好ましい。
【0040】
なお、構成単量体の全量又は一部を滴下しながら重合してもよい。また、重合触媒の全量又は一部を滴下しながら重合してもよい。また、溶媒の全量又は一部を構成単量体又は重合触媒と共に滴下しながら重合してもよい。一方、溶媒の全量を重合槽に仕込んでおき溶媒を除去しながら重合してもよい。これらのうち、生産性の観点等から、構成単量体と重合触媒との全量を滴下する方法及び溶媒の一部を構成単量体又は重合触媒と共に滴下する方法が好ましく、さらに好ましくは構成単量体と重合触媒との全量を溶剤の一部と共に滴下する方法である。
【0041】
共重合体(A)の形態としては特に限定はなく、液状でも、固状でもよい。
共重合体(A)が液状の場合、水性溶媒に共重合体(A)が溶解又は分散した状態を意味する。この場合、共重合体(A)を懸濁重合又は溶液重合等によって得て、溶媒をすべて除去しないで得てもよいし、塊状重合等によって得た共重合体(A)を水性溶媒に溶解又は分散させて得てもよい。
水性溶媒としては、水、炭素数1〜6のアルコール(エチルアルコール、メチルアルコール、エチレングリコール及びジエチレングリコール等)及び炭素数1〜6のケトン(メチルイソブチルケトン及びアセトン等)等が挙げられ、これらは単独又は混合して用いられてよい。
【0042】
一方、共重合体(A)が固状の場合、共重合体(A)からなる固体であってもよく、液状の共重合体(A)を粉体に担持させた粉であってもよい。
共重合体(A)からなる固体の場合、塊状重合によって得てもよいし、共重合体(A)を含む溶液又は分散液を懸濁重合又は溶液重合等によって得てから、溶媒を除去することにより得てもよい。
共重合体(A)を含む溶液又は分散液から溶媒を除去する方法としては、乾燥粉砕法、凍結粉砕法、スプレイドライヤー法及びドラムドライヤー法等の公知の方法を用いることができる。これらのうち、乾燥粉砕法及びスプレイドライヤー法が好ましい。
固状の共重合体(A)の大きさ(mm;最大長)は、本発明の流動化剤の溶解性の観点等から、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3、特に好ましくは0.08〜1である。
液状の共重合体(A)を粉体に担持させる場合、粉体としては、活性炭、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、シラスバルーン及びベントナイト等が挙げられる。
これらの粉体に液状の共重合体(A)を担持させる方法としては、公知の撹拌混合機(リボンミキサー及びヘンシェルミキサー等)を使用して、粉体と液状の共重合体(A)とを撹拌混合する方法等が適用できる。
共重合体(A)の形態のうち、液状が好ましく、さらに好ましくは水性溶媒に共重合体(A)が溶解した状態である。
【0043】
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属珪酸塩としては、オルト珪酸リチウム、メタ珪酸リチウム、メタ珪酸リチウム水和物、オルト二珪酸六リチウム、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム水和物、二珪酸ナトリウム、オルト珪酸カリウム及びメタ珪酸カリウム等が挙げられる。
【0044】
これらのうち、ナトリウム塩及びカリウム塩が好ましく、さらに好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、オルト珪酸カリウム及びメタ珪酸カリウム、特に好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、オルト珪酸カリウム及びメタ珪酸カリウム、つぎに好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、オルト珪酸ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウム、最も好ましくは炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムである。これらは単独又は混合して用いられてよい。
【0045】
無機化合物(B)の含有量(重量%)は、共重合体(A)の重量に基づいて、90〜2500が好ましく、さらに好ましくは100〜2000、特に好ましくは200〜1500である。この範囲であると、ソイルセメントの硬化性への影響が小さく、流動性がさらに向上する。
【0046】
無機化合物(B)の形態としては特に限定はなく、液状でも、固状でもよい。
無機化合物(B)が液状の場合、水性溶媒に無機化合物(B)が溶解又は分散した状態を意味する。この場合、無機化合物(B)は、市場から液状製品を購入してもよいし、固状製品を購入して水性溶媒に溶解又は分散させてもよい。
【0047】
一方、無機化合物(B)が固状の場合、無機化合物(B)からなる固体であってもよく、無機化合物(B)を粉体に担持させた粉であってもよい。
無機化合物(B)からなる固体の場合、市場から固状製品を購入しもよいし、市場から購入した液状製品から溶媒を除去することにより得てもよい。
無機化合物(B)を含む溶液又は分散液から溶媒を除去する方法としては、好ましいものも含めて共重合体(A)の場合と同様である。
固状の無機化合物(B)の大きさ(mm;最大長)は、本発明の流動化剤の溶解性の観点等から、0.01〜10が好ましく、さらに好ましくは0.05〜8、特に好ましくは0.08〜5である。
液状の無機化合物(B)を粉体に担持させる場合、粉体及び担持方法は共重合体(A)の場合と同様である。
無機化合物(B)の形態のうち、固状が好ましく、さらに好ましくは固体である。
【0048】
本発明の流動化剤には、セメントと共に用いられる公知の添加剤(AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、遅延剤、早強剤、硬化促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、急結剤、膨張剤、増粘剤及び防水剤等)等を含有させることができる。これらは、単独又は混合して用いられてよい。
添加剤を含有させる場合、これらの含有量(重量%)は、共重合体(A)及び無機化合物(B)の合計重量に基づいて、1〜30が好ましく、さらに好ましくは2〜15、特に好ましくは3〜10である。
また、本発明の流動化剤には水性溶媒等を含有させることができる。水溶性溶媒を含有させる場合、この含有量(重量%)は、流動化剤の取扱性(粘度等)の観点等から、共重合体(A)、無機化合物(B)及び必要により添加される添加剤の合計重量に基づいて、70〜2,000が好ましく、さらに好ましくは80〜1,000、特に好ましくは90〜500である。
【0049】
本発明の流動化剤の形態は、(1)共重合体(A)と、無機化合物(B)とが一緒に存在する形態{液体でも固体でもよい、また(A)と(B)とが反応してもよい}、または(2)共重合体(A)と、無機化合物(B)とが別々に存在する形態{それぞれ、液体でも固体でもよい、また使用時にそれぞれが混合される}のいずれでもよい。なお、(2)の場合、必要により含有される添加剤及び/又は水は、それぞれに含まれても、いずれかに含まれてもよい。
【0050】
本発明の流動化剤が、(1)共重合体(A)と、無機化合物(B)とが一緒に存在する形態の場合、本発明の流動化剤は、共重合体(A)、無機化合物(B)、並びに必要により、添加剤及び/又は水性溶媒が均一混合されていれば、製造方法に制限はない。
本発明の流動化剤が、(2)共重合体(A)と、無機化合物(B)とが別々に存在する形態の場合、共重合体(A)又は無機化合物(B)と、必要により、添加剤及び/又は水性溶媒とを均一混合する方法等により、得られる。
【0051】
本発明の流動化剤は、セメントスラリーに添加混合した後、これと掘削土とを混合してソイルセメントとすることが好ましい。
セメントスラリーは、セメント及び水を混合することで得られる。
セメントとしては、ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメント等;JIS R5210:2003)、高炉セメント(JIS R5211:2003)、シリカセメント(JIS R5212−1997)及びフライアッシュセメント(JIS R5213−1997)等が挙げられる。これらのセメントは、一種または二種以上の混合物として使用することができ、さらにこれらのセメントと、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム及び石灰系固化材等の公知のセメント混和剤を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、入手しやすさの観点等から、ポルトランドセメントが好ましい。
セメントスラリーに含まれる水の含有量(重量%)は、セメントの重量に基づいて、50〜200が好ましく、さらに好ましくは60〜190、特に好ましくは70〜180である。
【0052】
本発明の流動化剤の使用量は、共重合体(A)及び無機化合物(B)の合計重量が、セメントの重量に基づいて、0.1〜60となることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜30となること、特に好ましくは0.4〜20となることである。
【0053】
掘削土には制限がなく、土の粘土量の多少に関わらず、粗粒土等を含有する掘削土が使用できる。
ソイルセメントに含まれる掘削土の含有量(重量%)は、セメントの重量に基づいて、120〜2400が好ましく、さらに好ましくは200〜1500、特に好ましくは250〜1200である。
【0054】
ソイルセメントには、必要に応じて、セメントと共に用いられている公知の添加剤(AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、急結剤、膨張剤、増粘剤、防水剤及びベントナイト等)を添加でき、これらは単独又は混合して用いられてよい。これらの添加剤を含む場合、これらの添加量は通常の場合と同様である。
【0055】
ソイルセメントを施工現場で調製して打設し硬化させることによりソイルセメント構造体が得られる。
ソイルセメント構造体の製造方法について限定はなく、例えば、掘削と混練の両機能を兼ね備えた、掘削機の先端部にセメントスラリーの排出口が設けられている掘削混練機を用いて、セメントスラリーと掘削土を地中で混練し、硬化後にソイルセメント構造体を得る方法、又は、地上でセメントスラリーと掘削土を混練した後に、掘削場所に打設し、硬化後にソイルセメント構造体を得る方法等が挙げられる(ソイルセメント構造体のより詳しい製造方法については特開2000−169209号公報等に記載の方法と同様である。)。
【実施例】
【0056】
以下の実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を表す。
<製造例1>
滴下ライン、撹拌装置及び温度計付きの耐圧反応容器にイオン交換水200.0部及びイソプロピルアルコール300.0部を投入し、撹拌下、アクリル酸300.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液100.0部をそれぞれ別々の滴下ラインから3時間かけて一定速度で滴下しながら密閉下で反応させた。反応温度は80〜100℃を保った。滴下終了後、3時間95〜100℃に保った後、150.0部のイオン交換水を滴下(加水)しながらイソプロピルアルコールを減圧除去した後、30℃まで冷却し、撹拌下、40℃以下に保ちながら、徐々に水酸化マグネシウム[試薬特級、和光純薬工業(株)製]1.2部を分割投入し、更に48%水酸化ナトリウム水溶液[試薬特級、関東化学(株)製]312.5部を分割投入した。そして加水して濃度を40%に調整して、共重合体(1)[アクリル酸マグネシウム塩(1モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(90モル%)−アクリル酸(9モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(1)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0057】
<製造例2>
「水酸化マグネシウム1.2部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液312.5部」を、それぞれ、「水酸化マグネシウム6.1部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液291.7部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(2)[アクリル酸マグネシウム塩(5モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(84モル%)−アクリル酸(11モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(2)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0058】
<製造例3>
「水酸化マグネシウム1.2部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液312.5部」を、それぞれ、「水酸化マグネシウム12.1部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液277.8部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(3)[アクリル酸マグネシウム塩(10モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(80モル%)−アクリル酸(10モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(3)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0059】
<製造例4>
「水酸化マグネシウム1.2部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液312.5部」を、それぞれ、「水酸化カルシウム[試薬特級、和光純薬工業(株)製]23.1部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液208.3部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(4)[アクリル酸カルシウム塩(15モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(60モル%)−アクリル酸(25モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(4)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0060】
<製造例5>
「水酸化マグネシウム1.2部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液312.5部」を、それぞれ、「水酸化マグネシウム24.3部」及び「水酸化リチウム1水和物[試薬特級、和光純薬工業(株)製]122.3部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(5)[アクリル酸マグネシウム塩(20モル%)−アクリル酸リチウム塩(70モル%)−アクリル酸(10モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(5)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0061】
<製造例6>
「水酸化マグネシウム1.2部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液312.5部」を、それぞれ、「水酸化カルシウム38.5部」及び「水酸化リチウム1水和物96.1部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(6)[アクリル酸カルシウム塩(25モル%)−アクリル酸リチウム塩(55モル%)−アクリル酸(20モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(6)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0062】
<製造例7>
「水酸化マグネシウム1.2部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液312.5部」を、それぞれ、「水酸化マグネシウム36.4部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液104.2部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(7)[アクリル酸マグネシウム塩(30モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(30モル%)−アクリル酸(40モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(7)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0063】
<製造例8>
「イオン交換水200.0部」、「イソプロピルアルコール300.0部」及び「40%過硫酸ナトリウム水溶液100.0部」を、それぞれ、「イオン交換水800.0部」、「イソプロピルアルコール500.0部」及び「40%過硫酸ナトリウム水溶液200.0部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(8)[アクリル酸マグネシウム塩(1モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(90モル%)−アクリル酸(9モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(8)の重量平均分子量は4,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.0であった。
【0064】
<製造例9>
「イオン交換水200.0部」、「イソプロピルアルコール300.0部」、「40%過硫酸ナトリウム水溶液100.0部」、「水酸化マグネシウム1.2部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液312.5部」を、それぞれ、「イオン交換水400.0」、「イソプロピルアルコール400.0部」、「40%過硫酸ナトリウム水溶液150.0部」、「水酸化マグネシウム6.1部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液291.7部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(9)[アクリル酸マグネシウム塩(5モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(84モル%)−アクリル酸(11モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(9)の重量平均分子量は10,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。
【0065】
<製造例10>
滴下ライン、撹拌装置及び温度計付きの耐圧反応容器にイオン交換水200.0部及びイソプロピルアルコール300.0部を投入し、撹拌下、アクリル酸300.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液75.0部をそれぞれ別々の滴下ラインから2時間かけて一定速度で滴下しながら密閉下で反応させた。反応温度は90〜100℃を保った。滴下終了後、3時間95〜100℃に保った後、150.0部のイオン交換水を滴下(加水)しながらイソプロピルアルコールを減圧除去した後、30℃まで冷却し、撹拌下、40℃以下に保ちながら、徐々に水酸化マグネシウム12.1部を分割投入し、更に48%水酸化ナトリウム水溶液277.8部を分割投入した。そして加水して濃度を40%に調整して、共重合体(10)[アクリル酸マグネシウム塩(10モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(80モル%)−アクリル酸(10モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(10)の重量平均分子量は25,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0066】
<製造例11>
滴下ライン、撹拌装置及び温度計付きの耐圧反応容器にイオン交換水200.0部及びイソプロピルアルコール300.0部を投入し、撹拌下、アクリル酸300.0部、メタクリル酸メチル0.2部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液10.0部をそれぞれ別々の滴下ラインから1時間かけて一定速度で滴下しながら密閉下で反応させた。反応温度は80〜100℃を保った。滴下終了後、3時間95〜100℃に保った後、150.0部のイオン交換水を滴下(加水)しながらイソプロピルアルコールを減圧除去した後、30℃まで冷却し、撹拌下、40℃以下に保ちながら、徐々に水酸化マグネシウム12.1部を分割投入し、更に48%水酸化ナトリウム水溶液277.8部を分割投入した。そして加水して濃度を40%に調整して、共重合体(12)[アクリル酸マグネシウム塩(10モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(80モル%)−アクリル酸(9.9モル%)−メタクリル酸メチル(0.1モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(11)の重量平均分子量は40,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0067】
<製造例12>
メタクリル酸メチルを「0.2部」から「1.0部」に変更したこと以外、製造例12と同様にして、共重合体(13)[アクリル酸マグネシウム塩(10モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(80モル%)−アクリル酸(9.5モル%)−メタクリル酸メチル(0.5モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(12)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0068】
<製造例13>
「メタクリル酸メチル0.2部」を「アクリロニトリル3.3部」に変更したこと以外、製造例12と同様にして、共重合体(14)[アクリル酸マグネシウム塩(10モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(80モル%)−アクリル酸(7モル%)−アクリロニトリル(3モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(13)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.6であった。
【0069】
<製造例14>
「メタクリル酸メチル0.2部」及び「水酸化マグネシウム12.1部」を、それぞれ、「アクリロニトリル3.3部」及び「水酸化マグネシウム6.1部」に変更したこと以外、製造例12と同様にして、共重合体(14)[アクリル酸マグネシウム塩(5モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(80モル%)−アクリル酸(5モル%)−アクリロニトリル(10モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(14)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0070】
<製造例15>
「水酸化マグネシウム1.2部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液312.5部」を、それぞれ、「水酸化マグネシウム0.1部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液345.5部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(15)[アクリル酸マグネシウム塩(0.1モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(99.5モル%)−アクリル酸(0.4モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(15)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0071】
<製造例16>
「水酸化マグネシウム1.2部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液312.5部」を、それぞれ、「水酸化カルシウム0.8部」及び「48%水酸化ナトリウム水溶液329.9部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(16)[アクリル酸カルシウム塩(0.5モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(95モル%)−アクリル酸(4.5モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(16)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0072】
<製造例17>
48%水酸化ナトリウム水溶液「312.5部」を「340.3部」に変更したこと以外、製造例1と同様にして、共重合体(17)[アクリル酸マグネシウム塩(1モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(98モル%)−アクリル酸(1モル%)共重合体]を得た。なお、共重合体(17)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0073】
<比較製造例1>
滴下ライン、撹拌装置及び温度計付きの耐圧反応容器にイオン交換水200.0部及びイソプロピルアルコール300.0部を投入し、撹拌下、アクリル酸300.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液10.0部をそれぞれ別々の滴下ラインから2時間かけて一定速度で滴下しながら密閉下で反応させた。反応温度は80〜100℃を保った。滴下終了後、3時間95〜100℃に保った後、150.0部のイオン交換水を滴下(加水)しながらイソプロピルアルコールを減圧除去した後、30℃まで冷却し、撹拌下、40℃以下に保ちながら、徐々に48%水酸化ナトリウム水溶液277.8部を分割投入した。そして加水して濃度を40%に調整して、比較用の共重合体(18)[アクリル酸ナトリウム塩(90モル%)−アクリル酸(10ル%)重合体]を得た。なお、共重合体(18)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0074】
<比較製造例2>
48%水酸化ナトリウム水溶液を「277.8部」から「266.7部」に変更したこと以外、比較製造例1と同様にして、比較用の共重合体(19)[アクリル酸ナトリウム塩(80モル%)−アクリル酸(20ル%)重合体]を得た。なお、共重合体(19)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0075】
<比較製造例3>
48%水酸化ナトリウム水溶液を「277.8部」から「233.3部」に変更したこと以外、比較製造例1と同様にして、比較用の共重合体(20)[アクリル酸ナトリウム塩(70モル%)−アクリル酸(30ル%)重合体]を得た。なお、共重合体(20)の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0076】
製造例及び比較製造例で得た40%の共重合体(1)〜(20)を用いて、以下のようにして評価用ソイルセメントを調製し、この評価用ソイルセメントについて、流動性試験及び一軸圧縮強度測定を行い、これらの結果を表3〜5に示した。
【0077】
<ソイルセメントの調整>
表1に示した配合成分(粘土については3種類の粘土を用い、各々について評価を行った。)を20℃で12時間放置(温調)してから、これらの配合成分のうち、共重合体、無機化合物(アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩又はアルカリ金属水酸化物)及び水以外の成分を、モルタルミキサー[型式:C138A−486、(株)丸東製作所製]を用いて60秒間空練りした後、水、共重合体及び無機化合物を表1の配合量で加えて、90秒間混練して、評価用ソイルセメントを得た。
【0078】
<流動性評価>
20℃の室内で、内径5cm×高さ5cmのアクリル樹脂製円筒管(円筒管の両端は開口されている)を50cm×50cmのアクリル板の中央に垂直に立て、この円筒管に製造直後の評価用ソイルセメントを詰めた。引き続き円筒管を垂直に引き上げ、ソイルセメントの水平方向への広がり(流動性:フロー性)を測定した。数値の大きい方が流動性は高いことを意味し好ましい。
【0079】
<一軸圧縮強さ>
垂直に立てた6本のモールド{内径5cm×高さ10cmの鉄製円筒管、取り外し可能な底板と、2つの半円筒部(2つ組み合わせると内径5cmの円筒になる)とから構成されている。}に製造直後の評価用ソイルセメントをそれぞれ充填し、20℃にて1日間及び28日間の気中養生(各3本づつ)を行った。その後、ソイルセメント構造体をモールドから取り外し、JIS A1216:1998に準拠して、20℃の室内で一軸圧縮強さを測定し、3本の平均値を求めた。
【0080】
【表1】



【0081】
(注1)セメント :普通ポルトランドセメント、太平洋セメント(株)製
(注2)ベントナイト:関西ベントナイト(密度2.51)、カサネン工業(株)製
(注3)粘土 :SCP−A(密度2.61)、松下鉱産(株)製
笠岡粘土(密度2.45)、カサネン工業(株)製
トチクレー(密度2.66)、関東ベントナイト工業(株)製
(注4)共重合体、無機化合物:表2に記載したものを用いた。
(注5)共重合体、無機化合物:表2に記載した配合量で用いた。
【0082】
【表2】




【0083】
無機化合物(B)は、以下のものを使用した。
炭酸ナトリウム:試薬特級、和光純薬工業(株)製
炭酸カリウム:試薬特級、和光純薬工業(株)製
炭酸リチウム:試薬特級、和光純薬工業(株)製
炭酸水素ナトリウム:試薬特級、和光純薬工業(株)製
水酸化ナトリウム:試薬特級、和光純薬工業(株)製
水酸化カリウム:試薬特級、和光純薬工業(株)製
メタ珪酸ナトリウム:メタ珪酸ナトリウム・9水和物、試薬特級、和光純薬工業(株)製
オルト珪酸ナトリウム:オルト珪酸ナトリウム・n水和物、試薬特級、和光純薬工業(株)製
【0084】
【表3】



【0085】
【表4】



【0086】
【表5】



【0087】
本発明の流動化剤は、比較用のソイルセメント用流動化剤に比べ、セメント構造体の強度を高いレベルで維持できる上に、さらに粘土を主体とする土を使用した場合に関係なくソイルセメントの流動性を著しく高めた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の流動化剤はソイルセメントが用いられる埋立土、軟弱地盤の強化、ソイルセメント壁体の造成等の地盤改良に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)及びアクリル酸(A3)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、
アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機化合物(B)とからなり、
アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)単位、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)単位及びアクリル酸(A3)単位のモル数に基づいて、アクリル酸アルカリ土類金属塩(A1)単位の含有量が0.1〜30モル%、アクリル酸アルカリ金属塩(A2)単位の含有量が30〜99.5モル%、アクリル酸(A3)単位の含有量が0.4〜40モル%であることを特徴とするソイルセメント用流動化剤。
【請求項2】
無機化合物(B)がアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩又はアルカリ金属水酸化物である請求項1に記載の流動化剤。
【請求項3】
無機化合物(B)の含有量が共重合体(A)の重量に基づいて90〜2500重量%である請求項1又は2に記載の流動化剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載されたソイルセメント用流動化剤をソイルセメントに適用してソイルセメントを流動化させる流動化工程を含むことを特徴とするソイルセメント構造体の製造方法。

【公開番号】特開2010−159183(P2010−159183A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2992(P2009−2992)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】