説明

ソバ麺における食感・風味を改良できるソバ粉の製造方法

【課題】従来の乳化剤や増粘多糖類、小麦グルテン等の添加物を用いず、玄そばを原料とし、ソバ製麺で採用されている篩選別、分級等の技術を使って、蛋白質含量を高くし、特定の平均粒度を有するソバ粉を用いることにより、ソバの食感の改良、風味の増強が同時にできるソバ粉を経済的に製造すること。
【解決手段】玄ソバを粉砕し、篩い分けにより蛋白質含有量が16質量%以上の外層画分を玄ソバ総歩留20%以上で分離し、次いでこの外層画分を平均粒径が10〜60μm、好ましくは平均粒径が15〜50μmに微粉砕する微粉ソバ粉の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄ソバを粉砕し、篩い分けにより蛋白質含有量を所定量の蛋白質含有量となるように調整し、さらに微粉砕して所定の平均粒度とする微粉ソバ粉の製造方法、及び該微粉ソバ粉を利用したソバ麺に関する。
【背景技術】
【0002】
ソバ粉には、ポリフェノールの一種であるルチンが含まれる他、蛋白質、ビタミン、ミネラル等の栄養素も豊富に含むことから、健康食品として注目を集めている。特に、ソバ麺はソバ粉を用いた代表的な加工食品であり、一般的にはつるつるした滑らかさ、腰の強い歯応えのある食感が好まれている。ソバ麺は、ソバ屋をはじめとした立食いソバなどの外食店で食される場合や、生麺や茹で麺、乾麺といった形態でスーパーやデパートなどで販売され、家庭で調理されて食される場合や、また近年ではコンビニエンスストアで調理麺という形態で販売され食に供されるなど、様々な形態での販売・喫食がなされており、その多様な場面のすべてにおいて、好まれているつるつるした滑らかさ、腰の強い歯応えのある食感、さらにはソバの強い風味といったものが求められている。
【0003】
このため、食感改良のための従来技術としては、滑らかさを向上するための乳化剤や増粘多糖類等の添加物の添加、歯応え向上のためのグルテン等小麦蛋白や乾燥卵白等の添加物の使用といったソバ粉以外の添加物に頼ったソバ麺の製麺が行なわれている。
【0004】
さらに、ソバ麺の風味を上げる技術としては、ソバ粉における甘皮粉と呼ばれる蛋白値の高いソバ粉(一般的なソバ粉の製粉方法である石臼製粉・ロール製粉をした場合に発生する甘皮粉は蛋白質含有量が35質量%以上、発生量は玄ソバ総歩留の5%以下程度)をソバ麺に加えるという手法が用いられる技術が知られており、例えば、粒度分布範囲52μm以下かつ平均粒径25μm以下の微粉からなる微粉そば粉と、前記微粉そば粉に対して2〜15重量%の甘皮粉とを含むそば粉配合物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、食感改良、風味向上のためのソバ粉製造方法としては、例えば、全層ソバ、表層ソバの一種、もしくは、混合物、又は、全殼ソバの一部を加え3〜40μmに微粉砕したものを、常法により製麺して得られる無添加ソバの製造法(例えば、特許文献2参照)や、目開き106μmの篩を通過するソバ粉を用いる茹でソバ(例えば、特許文献3参照)、ソバ実の表層から取り出した甘皮を含み、平均粒径が25μm以下であるソバ繋ぎ用甘皮微粉末、該微粉末にソバ粉を混合したソバ原料(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0006】
さらに、レーザ回析法によって測定した粒度分布曲線に、粒径5〜15μmの領域と粒径30μm以上の領域との各々にピーク値が出現するソバ粉であって、該粒径5〜15μmの領域に出現するピーク値が、粒径30μm以上の領域に出現するピーク値よりも大であるソバ粉(例えば、特許文献5参照)や、殻のみ除去したソバの実を特定の粉砕装置を用いて微粉砕し粒度200メッシュ〜400メッシュの微粉体(ソバ粉の全層粉)を製造する方法(例えば、特許文献6参照)や、甘皮を気流粉砕機で微粉化して10ミクロン程度までに超微粉砕し、ソバ粉に5〜10%混ぜる粉砕技術(例えば、特許文献7参照)が知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−304623号公報
【特許文献2】特開平7−222563号公報
【特許文献3】特開平11−32713号公報
【特許文献4】特開2006−254771号公報
【特許文献5】特開2001−17102号公報
【特許文献6】特開2004−243311号公報
【特許文献7】特開2007−116920号公報(段落[0025]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の乳化剤や増粘多糖類等の添加物やソバ実の表層から取り出した甘皮を粉砕した甘皮粉等を添加したソバや、単に微粉化して得られるソバでは、ソバの食感、風味を同時に満足することができず、また、コスト的に高くつく問題点があったところ、本発明は、このような課題に対応して、従来のソバ製麺で採用されている篩選別、分級等の技術を使って、食感の改良、風味の増強が同時にできるソバ粉を経済的に製造する微粉ソバ粉の製造方法、この製造方法による微粉ソバ粉及び微粉ソバ粉を用いて製麺されたソバ麺を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ソバ麺の食感の改良に添加物を用いる技術は、食感の改良という点では有効であるが、材料コストや作業コストの増大、風味の低下という問題が発生し、またソバ粉における甘皮粉と呼ばれる蛋白値の高いソバ粉をソバ麺に使用する技術は、風味を増加する点においては優れているが、ソバ麺にした際には、ソバ麺で好まれる食感とは相反するぼそつき、くちゃつきといった食感が際立ってしまい、それを抑えるために更に食感改良のための添加物を使用しなければならなかった。このような添加物や甘皮粉を使わない手法として、ソバ粉を微粉砕することによりソバ麺の滑らかさや歯応えを向上できる技術は前述のようにいくつか知られているが、これらの手法によるソバ粉は、食感の向上は達せられるものの、ソバの風味には欠けるという問題がある。このため、さらに風味を付加しようとした場合には、従来の甘皮粉などを使用するほかなく、分離されて捨てられるような甘皮は発生量自体が少なく、大量にソバ粉に添加できないという問題や、細かく粉砕してしまうと、製粉直後は強い香り、味を有すものの、短時間で香気成分の飛散がおこりソバ粉の品質劣化速度が非常に早いという事実が確認されている。
【0010】
本発明者らは、ソバ食感の改良、風味の増強をより向上させ、かつ経済的に製造しうるソバの製造方法について鋭意研究した結果、通常の製粉機(ロール式製粉機、石臼式製粉機等)を用いて製粉したソバ粉について、篩選別、分級等の技術を使って蛋白質含有量が16質量%以上の一般的に外層粉と呼ばれるソバ粉、もしくはソバの実を挽き割り、内層の蛋白質含有量が低い区分を除去したソバ粉を分離し、さらに特定の平均粒径まで微粉砕することにより、硬さ、弾力性、滑らかさ等において優れ、また、食感がきわめて良好で、風味が増強したソバ麺が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(1)玄ソバを粉砕し、篩い分けにより蛋白質含有量が16質量%以上の外層画分を玄ソバ総歩留20%以上で分離し、次いでこの外層画分を平均粒径が10〜60μmになるように微粉砕することを特徴とする高蛋白微粉ソバ粉の製造方法や、(2)蛋白質含有量が20〜35質量%であることを特徴とする前記(1)記載の高蛋白微粉ソバ粉の製造方法や、(3)ソバ粉の平均粒径が15〜50μmに微粉砕することを特徴とする前記(1)又は(2)記載の高蛋白微粉ソバ粉の製造方法に関する。
【0012】
また本発明は、(4)前記(1)〜(3)のいずれか記載の製造方法により得られた高蛋白微粉ソバ粉や、(5)蛋白質含有量が20〜35質量%で、かつ平均粒径が15〜50μmである高蛋白微粉ソバ粉や、(6)前記(4)又は(5)記載の高蛋白微粉ソバ粉と他のソバ粉との重量比が10:0〜2:8の割合であることを特徴とする配合ソバ粉や、(7)微粉ソバ粉と他のソバ粉との重量比が10:0〜6:4の割合であることを特徴とする前記(6)記載の配合ソバ粉に関する。
【0013】
さらに本発明は、(8)前記(6)又は(7)記載の配合ソバ粉を用いてなる手打ち用ソバ原料や、(9)前記(6)又は(7)記載の配合ソバ粉を用いて、ソバ粉のみもしくは小麦粉、山芋、卵白、フノリ等のソバつなぎといわれるものを配合して製麺されたソバ麺や、(10)前記(4)又は(5)記載の高蛋白微粉ソバ粉が、乾燥重量換算で20質量%以上配合して製麺されたことを特徴とする前記(9)記載のソバ麺に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高蛋白微粉ソバ粉を含有する配合ソバ粉を用いて製麺することにより得られるソバ麺は、従来のソバ麺よりも良好な食感と増強されたソバ風味を有する。本発明の高蛋白微粉ソバ粉は低コストで製造することができ、この高蛋白微粉ソバ粉を含有する配合ソバ粉は、加水量を少なくしても麺生地は程よく繋がり、その結果、ソバ風味に優れた手打ちソバ原料に適するソバ粉とすることができる。さらに、蛋白質含量が通常のソバ粉より高いことから、栄養バランス、アミノ酸バランスに優れ、引いてはダイエット効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の高蛋白微粉ソバ粉の製造方法としては、玄ソバを粉砕し、篩い分けにより蛋白質含有量が16質量%以上の外層画分を玄ソバ総歩留20%以上で分離し、次いでこの外層画分を平均粒径が10〜60μmになるように微粉砕する方法であれば特に制限されるものではなく、上記玄ソバとしては、一般的に食用にされている普通ソバ、ダッタンソバ、宿根ソバ等を例示することができるが、普通ソバを特に好適に挙げることができる。本発明の上記「玄ソバ総歩留20%以上で分離」する条件とは、玄ソバを脱皮機等にかけてソバ殻を除去し(ソバ殻の歩留15〜20%)、得られたソバの実を製粉機に投入する。この際、ソバの実は内層ほど柔らかく、外層にいくにつれて繊維質が多くなって硬くなる性質を持つため、最初に製粉されて出てくるソバ粉は内層区分の粉となる。これを、状況に応じて35〜130メッシュ程度の篩を使用して内層区分の歩留が50〜55%となるまで篩い分けすることにより、内層粉を分離させて必要となる外層粉を玄ソバ総歩留20%以上で得ることができる。このようにして篩い分けされた外層粉が玄ソバ総重量に占める割合をいう。
【0016】
具体的には、通常の製粉機(ロール式製粉機、石臼式製粉機等)を用いて製粉し、得られるソバ粉を、篩選別、分級等の技術を使って蛋白質含有量が16質量%以上の外層画分(一般的に外層粉と呼ばれるソバ粉)を玄ソバ総歩留20%以上で分離するが、特に蛋白質含有量20〜35質量%であるものが好ましい。蛋白質含有量が16質量%未満のものは基本的には全層粉に区分され、従来の技術と変わるところがなく、また風味の付加という観点に於いては蛋白質含有量20質量%以上が好ましく、蛋白質含有量35質量%以下であれば発生量、製粉効率の面から工業的な生産にも適する範囲である。玄ソバ総歩留の点からみて、製粉に用いる玄ソバの品質によって若干の変動はあるが、蛋白質含有量16質量%以上の粉は玄ソバ総歩留の20%以上取れ、目的とする外層ソバ粉が取れる歩留を下げていくにしたがって蛋白質含有量は高くなり、蛋白質含有量35質量%以上のものに限定すると玄ソバ総歩留の5%程度となる。したがって、この点からみても、蛋白質含有量が20〜35質量%とすることが好ましい。
【0017】
次いで、このソバ粉もしくはソバ粉砕物を衝撃式粉砕機、気流式粉砕機等の細かい粒径の粒子が得られる粉砕機を使用して平均粒径10〜60μmになるように微粉砕する。平均粒径が60μmより大きいソバ粉では目的となる食感の改良効果が得られず、また食感改良を行う際の微粉ソバ粉の使用量という観点から平均粒径を50μm以下とするのがより望ましい。さらに、平均粒径が細かくなればなるほど高い食感改良効果が望めるが、平均粒径が10μm未満のソバ粉については製造コスト、製粉効率の面から生産には適しない。平均粒径15〜50μmに微粉砕することがより好ましい。
【0018】
以上のようにして得られた高蛋白微粉ソバ粉は、ソバ麺を製麺する際にこの微粉ソバ粉を100%使用する場合はもちろん、微粉ソバ粉と他のソバ粉とを重量比が10:0〜2:8、好ましくは10:0〜6:4の割合で混合して本発明の配合ソバ粉とすることができる。上記他のソバ粉としては、蛋白質含有量が16質量%以上、例えば蛋白質含有量が20〜35質量%で微粉砕していない、例えば平均粒径80〜110μmの高蛋白ソバ粉や、通常製粉のソバ粉、例えば全層粉のソバ粉である蛋白質含有量13.50質量%で平均粒径80〜110μmの通常ソバ粉や、全層粉のソバ粉である蛋白質含有量13.50質量%で平均粒径10〜60μmの微粉砕ソバ粉などを挙げることができる。上記のように、高蛋白微粉ソバ粉と他のソバ粉との重量比が10:0〜6:4の割合で配合した配合ソバ粉をソバ粉として用いると、より顕著な食感の改良及び風味の増強効果を奏するものである。この混合ソバ粉と小麦粉とを重量比が10:0〜2:8、例えば、3:7、6:4、8:2、10:0でソバ麺を製麺した場合でも、食感の改良及び風味の増強効果を奏する。製麺に際し、必要に応じて、山芋、卵白、フノリ等のソバつなぎを配合することができる。
【0019】
本発明による微粉ソバ粉は、加水量を少なくして程よく繋がることから手打ちソバ用の原料とすることができ、最近の手打ちソバブームの要請に応えるものである。本発明の手打ち用ソバ原料としては、本発明の配合ソバ粉と小麦粉を重量比で7:3〜10:0、好ましくは8:2で混合し、必要に応じて、山芋、卵白、フノリ等のソバつなぎを配合したものを好適に例示することができる。
【0020】
本発明のソバ麺としては、本発明の配合ソバ粉を用いて、ソバ粉のみもしくは小麦粉、山芋、卵白、フノリ等のソバつなぎといわれるものを配合して製麺された麺や、本発明の高蛋白微粉ソバ粉が、乾燥重量換算で20質量%以上配合して製麺された麺であれば特に制限されず、ソバ麺の種類としては、例えば乾燥麺、生ソバ、包装麺を例示することができ、調理法もかけソバやざるソバなど一般のソバの調理法を例示することができる。本発明のソバ麺は、蛋白質が通常より多く含まれることから、ソバの本来有するルチンやビタミンによる効用ばかりでなく、栄養バランス、アミノ酸バランスに優れ、引いてはダイエット効果を奏することができる。
【0021】
本発明における平均粒径とは、レーザー回析・散乱法により測定される粒径のメジアン径(50%粒径)のことをさすが、具体的には、マイクロトラックMT3000(乾式・湿式どちらでも可)(日機装株式会社製)を用いて測定し、平均粒径を算出した。
【0022】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
[高蛋白微粉ソバ粉の製造方法」
乾燥させた普通ソバの実から殻を取り除いたソバをロール製粉機(4本ローラーミルMDDM1250/250 ビューラー社製)にて粉砕し、振動式篩「メタルシフター」[(株)東京製粉機製作所製]で90メッシュを使用して篩選別して蛋白質含有量29.60質量%の外層画分を玄ソバ総歩留27%で分離し(ソバ殻除去18%、内層粉55%)、得られた外層画分をさらに高速粉砕機((株)日本精機製作所)を用いて平均粒径が約15μm、45μm、70μmになるまで粉砕し、一般的なソバ粉(平均粒径80〜110μm)よりも平均粒径の細かい高蛋白微粉ソバ粉を得た。
【実施例2】
【0024】
[高蛋白微粉ソバ粉と高蛋白ソバ粉(平均粒径90μm)との比較]
実施例1で得られた平均粒径が約15μm、45μm、70μmである三種類の高蛋白微粉ソバ粉と、微粉砕処理する前の蛋白質含有量29.60質量%のソバ粉(平均粒径90μm)について、ソバ粉30%、小麦粉70%(ソバつなぎ用小麦粉「ふじ」日穀製粉株式会社)の配合で機械製麺により製麺してソバ麺[茹麺(温かいソバ・カケソバ);切り刃#16・麺厚1.6mm、生麺(冷たいソバ・ザルソバ);切り刃#20・麺厚1.3mm]を得た。これらのソバ麺を茹で麺では100℃の沸騰水中で3分間、生麺では、茹で後20秒水に晒し、氷水で麺をしめる。次いで、茹で麺(温かいソバ・カケソバ)と生麺(冷たいソバ・ザルソバ)について試食を行なった。微粉砕処理する前のソバ粉で製麺したソバ麺を基準とし、微粉ソバ粉で製麺したソバ麺について官能評価を行なった。官能評価の結果を表1(表1.1、表1.2)に示す。これらの結果から、茹で麺(温かいソバ・カケソバ)においては、平均粒径が細かくなるほど、麺の硬さ、弾力、滑らかさが増し、また、生麺(冷たいソバ・ザルソバ)においても同様に平均粒径が細かくなるほど、麺の硬さ、弾力、滑らかさにおいて良好なソバ麺であることが確認された。
【0025】
【表1】

【0026】
表1における官能検査結果は、微粉砕処理する前のソバ粉(平均粒径90μm)で製麺したソバ麺を基準とし、微粉ソバ粉で製麺したソバ麺について下記の評価基準(表2の官能評価表A)に従ってそれぞれの評価点により評価を行なった。官能検査は、日穀製粉株式会社における官能検査訓練を実施した検査員12名で行なった。それぞれの結果については、Thompson棄却検定によって異常値を削除し、Tukey法によって有意差検定を行なった。表中で異なるアルファベットは、各項目についてTukey法により危険率1%で有意差があることを示す。
【0027】
【表2】

【実施例3】
【0028】
[高蛋白微粉ソバ粉を含む配合ソバ粉と高蛋白ソバ粉(平均粒径90μm)との比較]
実施例1で得た微粉ソバ粉のうち、平均粒径15μmと45μmのソバ粉を使用し、微粉砕処理する前の蛋白質含有量29.60質量%のソバ粉(平均粒径90μm)に配合することによってどのような効果が得られるか実験を行なった。それぞれの微粉ソバ粉について、微粉ソバ粉の配合率と微粉砕処理する前のソバ粉(平均粒径90μm)との配合率を3:7、6:4にした配合ソバ粉と、対照としての微粉砕処理する前のソバ粉(平均粒径90μm)とを、ソバ粉30%、小麦粉70%(ソバつなぎ用小麦粉「ふじ」日穀製粉株式会社)の配合で機械製麺にてソバ麺を製麺し、茹で麺(温かいソバ・カケソバ)と生麺(冷たいソバ・ザルソバ)について試食を行なった。微粉砕処理する前のソバ粉で製麺したソバ麺を基準とし、微粉ソバ粉を配合したソバ粉で製麺したソバ麺について評価を行なった。官能評価の結果について表3(表3.1、表3.2)に示す。表に示す結果から分るように、平均粒径が細かい微粉ソバ粉が多く配合されたソバ麺ほど、麺の硬さ、滑らかさが増し、官能として比較的良好なソバ麺である傾向があることが確認された。なお、官能評価手法については実施例2で示したものと同じである。
【0029】
【表3】

【実施例4】
【0030】
[高蛋白微粉ソバ粉を含む配合ソバ粉と全層粉ソバ粉(平均粒径90μm)との比較]
実施例1で得た微粉ソバ粉の内、平均粒径15μmと45μmのソバ粉を使用し、一般的な全層粉のソバ粉である蛋白質含有量13.50質量%・平均粒径90μmのソバ粉に配合することによってどのような効果が得られるか実験を行なった。それぞれの微粉ソバ粉について、微粉ソバ粉の配合率と一般的な全粒粉のソバ粉との配合率を3:7、6:4にした配合ソバ粉と、対照としての一般的な全層粉のソバ粉とを、ソバ粉30%、小麦粉70%(ソバつなぎ用小麦粉「ふじ」日穀製粉株式会社)の配合で機械製麺にてソバ麺を製麺し、茹で麺(温かいソバ・カケソバ)と生麺(冷たいソバ・ザルソバ)について試食を行なった。一般的な全粒粉のソバ粉で製麺したソバ麺を基準とし、微粉ソバ粉を配合したソバ粉で製麺したソバ麺について評価を行なった官能評価の結果について表4(表4.1〜4.4)に示す。表に示すとおり、平均粒径が細かい微粉ソバ粉が多く配合されたソバ麺ほど、麺の硬さ、滑らかさが増し、官能(食感)として比較的良好なソバ麺である傾向があることが確認された。またこの傾向は生麺(冷たいソバ・ザルソバ)において顕著であった。さらに、味覚官能として味の強さ、香りの強さについても、平均粒径が細かい微粉ソバ粉が多く配合されたソバ麺ほど良好であることが確認された。なお、官能評価手法については実施例2で示したものと同じであるが、更に味覚官能についても下記の表5の評価基準(官能評価表B)に従ってそれぞれの評価点をつける形で実施した。
【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【実施例5】
【0033】
[高蛋白微粉ソバ粉を含む配合ソバ粉と全層粉ソバ粉(平均粒径80μm)との手打ちソバ比較]
実施例1で得た微粉ソバ粉の内、15μmと45μmのソバ粉を使用し、一般的な全層粉のソバ粉である蛋白質含有量14.00質量%・平均粒径80μmのソバ粉(石臼製粉)に配合することによってどのような効果が得られるか実験を行なった。それぞれの微粉ソバ粉について、微粉ソバ粉の配合率と一般的な全層粉のソバ粉との配合率を3:7、6:4にした配合ソバ粉と、一般的な全層粉のソバ粉とを、ソバ粉80%、小麦粉20%(ソバつなぎ用小麦粉「常念」日穀製粉株式会社)の配合で手打ち製麺にてソバ麺の製麺を行った。製麺の際、一般的な全層粉のソバ粉の際には加水量45%で製麺したが、微粉ソバ粉を配合したものは3:7の時で43%、6:4の時で42%で製麺することができた。この生麺(冷たいソバ・ザルソバ)について試食を行なった。一般的な全層粉のソバ粉で製麺したソバ麺を基準とし、微粉ソバ粉を配合したソバ粉で製麺したソバ麺について評価を行なった官能評価の結果について表6(表6.1、表6.2)に示す。この表に示すように、平均粒径が細かい微粉ソバ粉が多く配合されたソバ麺ほど、麺の硬さ、滑らかさが増し、官能として良好なソバ麺である傾向があることが確認された。さらに、味覚官能として味の強さ、香りの強さについても、平均粒径が細かい微粉ソバ粉が多く配合されたソバ麺ほど良好であることが確認された。なお、官能評価手法については実施例2、4で示したものと同じである。
【0034】
【表6】

【実施例6】
【0035】
[高蛋白微粉ソバ粉と全層粉ソバ粉(平均粒径45μm)との比較]
一般的な全層粉のソバ粉である蛋白質含有量13.50質量%のソバ粉について、高速粉砕機(株式会社日本精機製作所)にて平均粒径が45μmになるまで粉砕し、一般的な全層粉のソバ粉における微粉ソバ粉を得た。このソバ粉と、実施例1で得た高蛋白質含有の微粉ソバ粉の内、15μmと45μmのソバ粉を使用し、ソバ粉30%、小麦粉70%(ソバつなぎ用小麦粉「ふじ」日穀製粉株式会社)の配合で機械製麺にてソバ麺を製麺し、茹で麺(温かいソバ・カケソバ)と生麺(冷たいソバ・ザルソバ)について試食を行なった。一般的な全層粉の微粉ソバ粉で製麺したソバ麺を基準とし、実施例1で得た15μmと45μmの微粉ソバ粉で製麺したソバ麺について評価を行なった。官能評価の結果につい表7(表7.1〜7.4)に示す。表に示すとおり、食感については一般的な全層粉の微粉ソバ粉と実施例1の微粉ソバ粉との間に大きな差は見られなかったが、味覚については、実施例1の微粉ソバ粉は、15μmと45μmの平均粒度共に一般的な全層粉の微粉ソバ粉よりも味の強さ、香りの強さの点において非常に強いことが明らかになった。なお、官能評価手法については実施例2、4で示したものと同じである。
【0036】
【表7】

【実施例7】
【0037】
[高蛋白微粉ソバ粉を含む配合ソバ粉と全層粉ソバ粉(平均粒径90μm)との比較]
実施例5で得た一般的な全層粉のソバ粉における微粉ソバ粉と、実施例1で得た高蛋白質含有の微粉ソバ粉の内、15μmと45μmのソバ粉を使用し、一般的な全層粉のソバ粉である蛋白質含有量13.50質量%・平均粒径90μmのソバ粉に配合することによってどのような効果が得られるか実験を行なった。それぞれの微粉ソバ粉について、微粉ソバ粉の配合率と一般的な全層粉のソバ粉との配合率を3:7、6:4にした配合ソバ粉を、ソバ粉30%、小麦粉70%(ソバつなぎ用小麦粉「ふじ」日穀製粉株式会社)の配合で機械製麺にてソバ麺を製麺し、茹で麺(温かいソバ・カケソバ)と生麺(冷たいソバ・ザルソバ)について試食を行なった。微粉ソバ粉の配合率と一般的な全層粉のソバ粉との配合率を3:7、6:4としたそれぞれについて、一般的な全層粉の微粉ソバ粉を配合したソバ粉で製麺したソバ麺を基準とし、実施例1で得た15μmと45μmの微粉ソバ粉を配合したソバ粉で製麺したソバ麺について評価を行なった。官能評価の結果について表8(表8.1〜8.4)に示す。この表に示す結果のとおり、食感についてはどの微粉ソバ粉を配合した場合にも大きな差は見られなかったが、味覚については、どの微粉ソバを配合しても本発明の微粉ソバ粉によるものは、一般的な全層粉の微粉ソバ粉よりも味の強さ、香りの強さの点において、非常に強いことが明らかになった。なお、官能評価手法については実施例2、4で示したものと同じである。
【0038】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄ソバを粉砕し、篩い分けにより蛋白質含有量が16質量%以上の外層画分を玄ソバ総歩留20%以上で分離し、次いでこの外層画分を平均粒径が10〜60μmになるように微粉砕することを特徴とする高蛋白微粉ソバ粉の製造方法。
【請求項2】
蛋白質含有量が20〜35質量%であることを特徴とする請求項1記載の高蛋白微粉ソバ粉の製造方法。
【請求項3】
ソバ粉の平均粒径が15〜50μmに微粉砕することを特徴とする請求項1又は2記載の高蛋白微粉ソバ粉の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の製造方法により得られた高蛋白微粉ソバ粉。
【請求項5】
蛋白質含有量が20〜35質量%で、かつ平均粒径が15〜50μmである高蛋白微粉ソバ粉。
【請求項6】
請求項4又は5記載の高蛋白微粉ソバ粉と他のソバ粉との重量比が10:0〜2:8の割合であることを特徴とする配合ソバ粉。
【請求項7】
微粉ソバ粉と他のソバ粉との重量比が10:0〜6:4の割合であることを特徴とする請求項6記載の配合ソバ粉。
【請求項8】
請求項6又は7記載の配合ソバ粉を用いてなる手打ち用ソバ原料。
【請求項9】
請求項6又は7記載の配合ソバ粉を用いて、ソバ粉のみもしくは小麦粉、山芋、卵白、フノリ等のソバつなぎといわれるものを配合して製麺されたソバ麺。
【請求項10】
請求項4又は5記載の高蛋白微粉ソバ粉が、乾燥重量換算で20質量%以上配合して製麺されたことを特徴とする請求項9記載のソバ麺。