説明

ソーラーシステムハウス用集熱ダクト

【課題】屋根面を集熱面とする屋根の棟部分に設置するものとして、半円形に曲成した湾曲板と、平板とを組合せて形成した下向き半円形のダクトを、現場でも容易に組み立てることができ、しかも、ダクトを建築構造材に固定するのにも簡単で設置の容易性も確保できる。
【解決手段】屋根面を集熱面とする屋根の棟部分に設置するものとして、半円形に曲成した湾曲板4aと、平板4bとを組合せて形成した下向き半円形のダクトにおいて、平板4bの端部に側壁部24とその上下に位置する横向き片25、26からなるコ字形金物27を嵌合させ、このコ字形金物27の側壁部24からこれに沿う方向に突出させた突出板29で湾曲板4aの端部を外側から抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気によって太陽エネルギーを利用するソーラーシステムハウスで使用する集熱ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の南側に大きな開口部を取って冬の日射を大量に取入れ、夏にはその一部を開け放って通風を図ることは古くから行われていることである。これを一歩進めて、居室の外側にサンルームを作り、これを温室としてここから居室へ温められた空気を取入れることも行われている。これを合理的に推進させ、方位に限定されず、太陽光により集熱した空気を効果的に利用できるソーラーシステムハウスを下記特許文献に示すように出願人は先に提案し出願した(特願2001−30908)。
【特許文献1】特開2002−235955号公報
【0003】
前記特許文献1のソーラーシステムハウスは、図11にあるように、カラー鉄板の金属製屋根板1の直下に屋根勾配を有する空気流路2を形成し、この空気流路2の一方の端は軒先等に空気取入口3として開口し、さらに空気流路2の他方の端は集熟ダクトとしての棟ダクト4に連通させる。
【0004】
内部に逆流防止ダンパー6、集熱用ファン7及び流路切換えダンパー8を設けたハンドリングボックス5を屋根裏空間である小屋裏33に設置し、ハンドリングボックス5の流路切換えダンパー8の流出側の一方は排気ダクト9により屋外に開口する。
【0005】
また、ハンドリングボックス5の逆流防止ダンパー6の流入側を接続ダクト32を介して前記棟ダクト4に連通させ、流路切換えダンパー8の流出側の他の一方を立下りダクト10の上端に連結する。立下りダクト10の下端は床下蓄熱体としての土間コンクリート11と床パネル12との間の空気流通空間13に開口した。さらに、該空気流通空間13から室内への床吹出口14を設けた。
【0006】
ハンドリングボックス5の内部またはハンドリングボックス5と棟ダクト4との間にお湯とりコイル15を設け、このお湯とりコイル15は循環配管16で貯湯槽17および循環ポンプ19と連結し、該貯湯槽17には、追焚き用の給湯ボイラー18を途中へ設けて、風呂や洗面所、台所へとつながる給湯配管21を接続する。
【0007】
このようにして、太陽光で加熱された金属板である屋根板1が、空気流路2へ入った外気を温め、この温められた空気は屋根勾配に沿って上昇する。そして、この加熱空気は棟ダクト4に集められてから集熱用ファン7によりハンドリングボックス5に入り、ハンドリングボックス5から立下りダクト10内へ流下し、蓄熱土間コンクリート11と床パネル12との間の空気流通空間13へ入る。この空気流通空間13では加熱空気が床パネル12を介して直接床面下を温めるのと、蓄熱土間コンクリート11に蓄熱させるのと床吹出口14から温風として直接室内20へ吹出させるのとの3通りの暖房作用を行う。
【0008】
一方、お湯とりコイル15で、ここに循環配管16を介して貯湯槽17から循環ポンプ19によって送り込まれる熱媒が加熱され、湯として貯湯槽17へ蓄えられ、さらにここから必要に応じて追焚き用の給湯ボイラー18で再加熱されて給湯配管21から各所へ給湯される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記棟ダクト4は太陽光で加熱された金属板である屋根板1が温める空気を集め、ハンドリングボックス5経由で床下に送り込むものであるが、屋根勾配に沿って上昇する空気を集める関係から屋根の上部であり、しかも屋根裏空間である小屋裏33の上部である棟部分に設置される。
【0010】
前記棟ダクト4は、丸ダクトとして示したが、一般にある角ダクトや丸ダクトでは屋根の勾配に合わせて設置が比較的困難である。
【0011】
そこで、図12に示すように、棟ダクト4を半円形ダクトとすることが望ましい。この半円形ダクトは、空気式ソーラーシステムなどの集熱ダクトなどに使われている。半円形ダクトは、角ダクトや丸ダクトに比べ、接続ダクトや屋根の取り付けが容易である。
【0012】
図12中、23は屋根板1を覆うように設けた集熱ガラス、34は屋根の構造材、31はスリーブダクトである。
【0013】
前記半円形の棟ダクト4はそれでも、実際の固定には、重量があるために、一人で施工することが大変であった。また、工場製作品によるものであるが、ダクト本体も体積を必要とするので、輸送コストがかかっていた。
【0014】
なお、これを建築施工現場で組み立てようとする場合は、半円形に曲成した湾曲板4aと、平板4bとを組合せて形成することになるが、テープや接着材等で組み立て方法では、半円形ダクトのひずみ等があり、容易ではない。特に、半円形に曲成した湾曲板4aはその端部が外側に広がろうとするものであり、これを押さえる手段が無かった。
【0015】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、屋根面を集熱面とする屋根の棟部分に設置するものとして、半円形に曲成した湾曲板と、平板とを組合せて形成した下向き半円形のダクトを、現場でも容易に組み立てることができ、しかも、ダクトを建築構造材に固定するのにも簡単で設置の容易性も確保できるソーラーシステムハウス用集熱ダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため本発明は、第1に、屋根面を集熱面とする屋根の棟部分に設置するものとして、半円形に曲成した湾曲板と、平板とを組合せて形成した下向き半円形のダクトにおいて、平板の端部に側壁部とその上下に位置する横向き片からなるコ字形金物を嵌合させ、このコ字形金物の側壁部からこれに沿う方向に突出させた突出板で湾曲板の端部を外側から抑えること、第2に、コ字形金物は、前記突出板が突出する側の横向き片の幅を横向き片よりも幅広に形成したこと、第3に、コ字形金物は、幅狭の横向き片に対して、反対側にこの横向き片に並ぶ第3の横向き片を設けたことを要旨とするものである。
【0017】
請求項1記載の本発明によれば、コ字形金物は現場での組み立てを容易にする機能とダクトを建築の屋根構造材に固定するための機能を併せ持つ。
【0018】
すなわち、コ字形金物は半円形に曲成した湾曲板を平板に固定する機能を有するもので、突出板で湾曲板の端部を外側から抑えることで、湾曲板の広がりを防止し、湾曲板と平板とを結合させる。
【0019】
また、平板の端部にコ字形金物を嵌合させ、このコ字形金物を介在させて平板を先に屋根構造材に固定し、その後、湾曲板を組み合わせることで、取り付けの際の重量を軽減でき、一人等の小人数で施工することも可能となる。
【0020】
請求項2記載の本発明によれば、前記作用に加えて、コ字形金物は、前記突出板が突出する側の横向き片の幅を横向き片よりも幅広に形成したことにより、上下に位置する横向き片の幅が異なることで、平板の端部をこのコ字形金物に嵌め易くすることができ、しかも、下向き半円形のダクトとして設置する場合に、この幅広に形成した横向き片を下側にして、これで幅広く平板の端部を下側から押さえることで、安定した固定状態が確保でき、ビス止め等も容易となる。
【0021】
請求項3記載の本発明によれば、コ字形金物は、幅狭の横向き片に対して、反対側にこの横向き片に並ぶ第3の横向き片を設けることで、この第3の横向き片を屋根構造材に固定するための支持片として利用することができ、ビス止め等を行うのに、平板自体にビスを貫通させずに行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように本発明のソーラーシステムハウス用集熱ダクトは、屋根面を集熱面とする屋根の棟部分に設置するものとして、半円形に曲成した湾曲板と、平板とを組合せて形成した下向き半円形のダクトを、コ字形金物を用いることにより、現場でも容易に組み立てることができ、しかも、ダクトを建築構造材に固定するのにも簡単で、設置の容易性も確保できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のソーラーシステムハウス用集熱ダクトの1実施形態を示す側面図、図2は同上要部を示す縦断側面図で、前記従来例を示す図12と同一構成要素には同一参照符号を付したものである。
【0024】
図1において、1は集熱板としての金属製屋根板であり、その直下に屋根勾配を有する空気流路2を形成し、この空気流路2の一方の端は軒先等に空気取入口(図示せず)として開口する。
【0025】
金属製屋根板1の上方は、少し間隔を存して集熱ガラス23で覆う。この集熱ガラス23で覆うのは屋根面の全面ではなく一部のみでもよいが、集熱ガラス23で覆うことにより、金属製屋根板1の集熱において風等の影響を防ぐことができる。
【0026】
棟部分に、下向きの半円形のダクトとしての棟ダクト4を設置し、この棟ダクト4をスリーブダクト31を介して空気流路2の上方部に連通させる。
【0027】
図中34は屋根の構造材で、棟ダクト4はこの屋根の構造材34に固定する。また、図示は省略するが、棟ダクト4は接続ダクト32を介してハンドリングボックスに接続させる。
【0028】
なお、このハンドリングボックスを含めたソーラーシステムハウスの概要については、前記図11で説明した通りであり、説明を省略する。
【0029】
前記半円形のダクトとしての棟ダクト4は、ダクト素材としては、グラスウールダクトやポリプロピレンなどの発泡断熱材によるものであるが、半円形に曲成した湾曲板4aと、平板4bとの組合せからなる。
【0030】
先に組合せのための金物について説明する。図5、図6はその第1例を示し、側壁部24とその上下に位置する横向き片25、26からなるコ字形金物27で、コ字形の内側部分が平板4bの端部の挿入箇所28となる。
【0031】
上下に位置する横向き片25、26は、横向き片25が横向き片26よりも幅広のものとした。
【0032】
L字形の金物を前記側壁部24に沿わせ、このL字形の金物の上部をコ字形金物27の側壁部24からこれに沿う方向に突出させた突出板29とし、また、L字形の金物の水平部を前記幅狭の横向き片26に対して、反対側にこの横向き片26に並ぶ第3の横向き片30とした。
【0033】
図6、図8は金物の第2例を示し、前記第3の横向き片30を設けないタイプであるが、2つのL字形の金物を組み合わせて側壁部24とその上下に位置する横向き片25、26からなるコ字形金物27を形成するのに、一方のL字形の金物は縦向きとして、側壁部24からこれに沿う方向に突出させた突出板29とし、下部の横向き片を幅狭の横向き片26とする。
【0034】
側壁部24は、2つのL字形の金物の重合部であり、縦向きのL字形の金物に組み合わさる横向きのL字形の金物は、幅広の横向き片25を構成する。
【0035】
図9は、突出板29の上端部の仕舞い状態を示すもので、(a)はそのまま、(b)(c)は丸めたもの、(d)は直角に横向きに曲げたものである。
【0036】
図10は、第3の横向き片30の端部の仕舞い状態を示すもので、(a)はそのまま、(b)は直角に上方に曲げたものである。(c)(d)は直角に上方に曲げたさらにその先端をさらに丸めたものである。
【0037】
図2に示すように、コ字形金物27を用いて、先に、平板4bを屋根の構造材34に固定する。平板4bはその端部にコ字形金物27を嵌合させ、幅広の横向き片25の部分で、ビス35で貫通固定する。その場合、第3の横向き片30は構造材34に対する当板となるが、図4に示すようにこの部分をビス35での固定部分としてもよい。
【0038】
平板4bは単体では、固定は可能であるが、取り付けによって変形してしまうために、該コ字形金物27があると、変形せず、また、取り付けが容易となる。
【0039】
このように平板4bを先に固定してから、半円形に曲成した湾曲板4aを平板4bに組合せるが、湾曲板4aの端部を突出板29で外側から抑えるようにする。平板4bと湾曲板4aの結合は、接着またはテープ処理する。
【0040】
図3は、前記図6、図8の第2例の金物を使用した場合であり、先に、平板4bを屋根の構造材34に固定し、その後、湾曲板4aの結合する点は同様である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のソーラーシステムハウス用集熱ダクトの1実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明のソーラーシステムハウス用集熱ダクトの1実施形態を示す要部の縦断側面図である。
【図3】本発明のソーラーシステムハウス用集熱ダクトの第2実施形態を示す要部の縦断側面図である。
【図4】本発明のソーラーシステムハウス用集熱ダクトの第3実施形態を示す要部の縦断側面図である。
【図5】コ字形金物の第1例を示す斜視図である。
【図6】コ字形金物の第2例を示す斜視図である。
【図7】コ字形金物の第1例を示す側面図である。
【図8】コ字形金物の第2例を示す側面図である。
【図9】突出板の上端部の仕舞いを示す説明図である。
【図10】第3の横向き片の端部の仕舞いを示す説明図である。
【図11】ソーラーシステムハウスの全体概要を示す縦断正面図である。
【図12】従来の棟ダクトの概要を示す側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…屋根板 2…空気流路
3…空気取入口 4…棟ダクト
4a…湾曲板 4b…平板
5…ハンドリングボックス 6…逆流防止ダンパー
7…集熱用ファン 8…流路切換えダンパー
9…排気ダクト 10…立下りダクト
11…土間コンクリート 12…床パネル
13…空気流通空間 14…床吹出口
15…お湯とりコイル 16…循環配管
17…貯湯槽 18…追焚き用の給湯ボイラー
19…循環ポンプ 21…給湯配管
23…集熱ガラス 24…側壁部
25、26…横向き片 27…コ字形金物
28…挿入箇所 29…突出板
30…第3の横向き片 31…スリーブダクト
32…接続ダクト 33…小屋裏
34…屋根の構造材 35…ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根面を集熱面とする屋根の棟部分に設置するものとして、半円形に曲成した湾曲板と、平板とを組合せて形成した下向き半円形のダクトにおいて、平板の端部に側壁部とその上下に位置する横向き片からなるコ字形金物を嵌合させ、このコ字形金物の側壁部からこれに沿う方向に突出させた突出板で湾曲板の端部を外側から抑えることを特徴としたソーラーシステムハウス用集熱ダクト。
【請求項2】
コ字形金物は、前記突出板が突出する側の横向き片の幅を横向き片よりも幅広に形成した請求項1記載のソーラーシステムハウス用集熱ダクト。
【請求項3】
コ字形金物は、幅狭の横向き片に対して、反対側にこの横向き片に並ぶ第3の横向き片を設けた請求項2記載のソーラーシステムハウス用集熱ダクト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−107019(P2008−107019A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290897(P2006−290897)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(399015986)オーエム計画株式会社 (7)