説明

ソーラーシステム

【課題】簡単な構造で所定の温度の温水を確実に得ることのできるソーラーシステムを提供すること。
【解決手段】潜熱蓄熱材18を設けた太陽熱温水器10、及びガス湯沸かし器32を直列に接続する。潜熱蓄熱材18としては、相変化温度が、ガス湯沸かし器32で設定した出湯温度よりも低い温度のものを用いる。夏の日差しの強い時間帯等であっても、潜熱蓄熱材18の温度、即ち太陽熱温水器10から排出される温水の最高温度が、ガス湯沸かし器32で設定した出湯温度よりも低い温度(ガス湯沸かし器32が正常に作動する温度。)となるので、ガス湯沸かし器32は上手く作動し、出湯温度設定機能で設定された温度の湯を確実に出湯することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーシステムに係り、特に、太陽熱によって水を加熱して温水を作る太陽熱温水器と、湯沸かし器とを組み合わせたソーラーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の屋根等に設置され、太陽熱で水を加熱して温水を作り、作った温水をタンクに貯留するタイプの太陽熱温水器が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−265251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般の家庭で使用される温水(お湯)の温度は、例えば、手洗いで40°C程度、風呂、シャワー等で42°C程度が一般的である。
太陽熱温水器のみでお湯を作るシステムでは、効率が良い、湯沸かし器が不要になるという利点がある反面、タンクが空になるとお湯が出ない、補助ヒーターが無いシステムでは冬、日射不足等の場合にお湯がぬるい、即ち、季節、天候等によっては上記のお湯の温度に達しない場合がある等の欠点を有する。
【0005】
そこで、太陽熱温水器と湯沸かし器を直列に接続し、太陽熱温水器で暖められた温水を、温度設定装置の設けられた湯沸かし器でさらに加熱し、ユーザーが設定した所望の温度のお湯を使用できるシステムが考えられる。
【0006】
このシステムでは、太陽熱温水器で作られた温水の温度が低い場合でも、湯沸かし器で所望の温度にすることができ、また、タンクの温水が無くなった場合でも、水を供給すれば、供給した水を湯沸かし器で所望の温度のお湯にできるので、太陽熱温水器のみのシステムの上記欠点を解消することができる。
【0007】
しかしながら、夏等で日差しが強い場合には、太陽熱温水器で作られる温水の温度が50°C以上となる場合がある。
湯沸かし器は、供給された冷たい水、例えば、水温18〜22°C以下の水道等の水を温めて温水にすることを想定して作られているため、温水が湯沸かし器に供給される温水の温度によっては湯沸かし器がうまく動作しない場合がある。
【0008】
また、当然ながら、湯沸かし器には冷却機能は無いため、湯沸かし器の温度設定を40°Cにしても、設定温度以上の温水、例えば、60°Cの温水が供給されてしまうと、60°Cの高温のお湯が蛇口から出てしまう、また、蛇口を開けて湯沸かし器が作動してしまうと、さらに高温のお湯が蛇口から出てしまう問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、簡単な構造で所定の温度のお湯を確実に得ることのできるソーラーシステムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであって、請求項1に記載のソーラーシステムでは、供給した水を太陽熱によって加熱して温水として排出可能な太陽熱温水器と、前記太陽熱温水器の温水排出側に設けられ、前記太陽熱温水器から供給された温水を加熱可能な出湯温度設定機能付きの湯沸かし器と、を備え、前記太陽熱温水器には相変化によって蓄熱を行う潜熱蓄熱材が設けられおり、前記潜熱蓄熱材の相変化温度が前記湯沸かし器の出湯温度よりも低く設定されている。
【0011】
次に、請求項1に記載のソーラーシステムの作用を説明する。
請求項1に記載のソーラーシステムにおいて、太陽熱温水器は供給した水を太陽熱によって加熱して温水として排出することができる。なお、太陽熱温水器には潜熱蓄熱材が設けられているため、受熱した太陽熱は、潜熱蓄熱材の固体から液体への相変化によって潜熱蓄熱材に蓄熱され、しかも太陽熱が受熱され続けても潜熱蓄熱材の温度上昇が抑えられるので、太陽熱温水器内の温水はある温度(おおよそ潜熱蓄熱材の相変化温度:融点)にて一定に保たれる。
一方、湯沸かし器は、太陽熱温水器から供給された温水を加熱することができ、また、出湯温度設定機能により、出湯温度を所望の温度に設定することができる。
【0012】
ここで、太陽熱温水器から供給される温水の温度が、湯沸かし器の出湯温度よりも十分低い場合には、該温水を湯沸かし器で加熱し、所望の温度のお湯を湯沸かし器から出湯することができる。
更に、請求項1に記載のソーラーシステムでは、潜熱蓄熱材の相変化温度を、予め設定された湯沸かし器の出湯温度よりも低く設定することで、太陽熱温水器から供給される温水の温度を湯沸かし器の出湯温度よりも低くすることができる。
【0013】
太陽熱温水器から供給される温水の温度が、湯沸かし器で設定した出湯温度よりも高い場合、蛇口から高温のお湯が出る場合があるが、請求項1に記載のソーラーシステムでは、太陽熱温水器から供給される温水の温度を湯沸かし器の出湯温度よりも低くできるので、湯沸かし器は上手く作動し、出湯温度設定機能で設定された温度の湯を確実に出湯することができる。
【0014】
また、太陽熱温水器で作られたお湯が無くなった場合には、太陽熱温水器を通過させた水が潜熱蓄熱材から放出される熱によって加熱され、湯沸かし器に供給され、日没後であってもある程度の温度の温水を湯沸かし器に供給することが出来る。
なお、このシステムでは、湯沸かし器が組み込まれているため、補助ヒーターは必要としない。
【0015】
例えば、使用するお湯の温度を例えば42°Cとし、湯沸かし器を上手く作動させるために湯沸かし器に供給する温水の湯温の上限を35°Cとした場合、相変化の温度が35°C前後とされた潜熱蓄熱材を太陽熱温水器に用いれば良いことになる。
また、太陽熱温水器としては、比較的低温の低温給湯で良いため、熱効率が良いという利点がある。
【0016】
また、このシステムでは、太陽熱温水器に潜熱蓄熱材を設け、太陽熱温水器と湯沸かし器とを直列に接続するという簡単な構成で済むため、既存のシステムも簡単な改造で本発明のソーラーシステムとすることが出来る。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のソーラーシステムにおいて、前記潜熱蓄熱材はn−パラフィン含んでいる。
【0018】
次に、請求項2に記載のソーラーシステムの作用を説明する。
n−パラフィンは、潜熱蓄熱材として一般的に用いられており、炭素数の変更により、温度一定になる温度域をコントロールすることができ、本発明のソーラーシステムに用いるのに適している。
例えば、n−パラフィンがC2042であれば融点は36°Cであり、例えば、湯沸かし器の出湯温度を40°C前後に設定する場合に好適である。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のソーラーシステムにおいて、前記潜熱蓄熱材は硫酸ナトリウム水和物を含んでいる。
【0020】
次に、請求項3に記載のソーラーシステムの作用を説明する。
硫酸ナトリウム水和物は、潜熱蓄熱材として一般的に用いられており、融点は32°Cであり、例えば、湯沸かし器の出湯温度を40°C前後に設定する場合に好適である。
炭素数の変更により、温度一定になる温度域をコントロールすることができ、本発明のソーラーシステムに用いるのに適している。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明のソーラーシステムによれば、簡単な構造で、設定した所望の温度のお湯を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るソーラーシステムを示す構成図である。
【図2】太陽熱温水器の面に沿った断面図である。
【図3】太陽熱温水器の厚み方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施形態に係るソーラーシステム11を図1乃至図3にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施形態のソーラーシステム11は、住宅等の建物の屋根等に設置される太陽熱温水器10、及びガス湯沸かし器32を備えている。
【0024】
太陽熱温水器10には、水道、井戸等からの水を供給する給水用の配管28と、温水排水用の配管30が接続されている。
図2、及び図3に示すように、本実施形態の太陽熱温水器10は、内部を真空状態とした矩形の薄い箱状とされた外側ケース12の内部に集熱板14を配置したものである。
外側ケース12は、太陽に面する側が開口した金属または樹脂からなる箱12Aと、箱12Aの開口部分全体を覆う透明カバー12Bとから構成されている。
【0025】
透明カバー12Bは、光の透過率に優れ、強度が得られれば材料の種類は問わず、ガラス、合成樹脂等で形成することができる。
【0026】
本実施形態の集熱板14は、全体が矩形に形成された薄い箱形状とされており、錆びず、熱伝達率に優れた金属材料(例えば、銅。銅以外金属であっても良い。)等で形成されている。なお、集熱板14の表面(少なくとも太陽光の照射される、透明カバー側の表面)には、周知の選択吸収膜が蒸着されている。
【0027】
集熱板14の内部には、ジグザグ状に屈曲形成された配管16が配置されている。配管16は、錆びず、熱伝達率に優れた金属材料(例えば、銅パイプ)等で形成されている。
【0028】
また、集熱板14の内部には、潜熱蓄熱材18が充填されている。
潜熱蓄熱材18としては、ガス湯沸かし器32の出湯設定温度よりも低い融点温度を有するものが選択して用いられ、本実施形態では、例えば、n−パラフィン(例えば、C2042:融点36°C)が用いられているが、硫酸ナトリウム水和物(NaSO+10HO:融点32°C)等、他の公知の蓄熱材を用いても良い。
n−パラフィンは、例えば、乳化液としたもの、多孔質材料に含浸させたもの等を用いることができる。
【0029】
図3に示すように、集熱板14と箱12Aの底面12Aaとの間、及び集熱板14と透明カバー12Bとの間には、微小間隙形成体(所謂スペーサ)としての微小柱体22が複数個配置されており、集熱板14と箱12Aの底面12Aaとの間、及び集熱板14と透明カバー12Bとの間に隙間を設けている。
【0030】
これにより、集熱板14の裏表面は、箱12A、及び透明カバー12Bに密着することなく、複数個の微小柱体22に対して点接触するのみとなる。
微小柱体22は、例えば、エポキ樹脂を含む高粘度のインクを用いてシルク印刷にて微小のドットを集熱板14の表面に複数印刷し、印刷したエポキシ樹脂のドットを集熱板14の表面で固化させることで形成することができる。
【0031】
なお、この微小柱体22の大きさは、径がφ10〜100μm、高さが1μm〜100μmの範囲内が好ましい。
微小柱体22を形成するインクは、印刷後に硬化して固化するものであればエポキシ樹脂以外の材料から構成されていても良い。また、微小柱体22は、透明カバー12Bに形成しても良い。
なお、箱12Aには、図2に示すように、内部を真空にする際に真空ポンプと接続するための空気吸引孔24が形成されており、空気吸引孔24は栓26で塞がれている。
【0032】
本実施形態のガス湯沸かし器32は、出湯温度設定機能付きのものであり、出湯の温度を、コントローラの操作によって所望の温度に設定することが可能な一般的な構造のものを用いることができる。
【0033】
(作用)
次に、本実施形態のソーラーシステム11の作用を説明する。
本実施形態のソーラーシステム11では、配管16の一端側が水供給用の配管28を介して水道に接続され、配管16の他端側が配管30を介してガス湯沸かし器32に接続される。
【0034】
日中、太陽熱温水器10の集熱板14が太陽33の熱で加熱されると、集熱板14の潜熱蓄熱材18が加熱されると共に、配管16の内部に貯留されている水が加熱されて温水となる。
【0035】
ここで、例えば、建物内の水機器(例えば、蛇口、シャワー、食器洗い機、皿洗い機、洗濯機等)が使用されると、ガス湯沸かし器32が作動(蛇口を開けることによる水圧の変化で自動的に作動)すると共に、配管16の一端側(水道側)から水が供給されると共に、集熱板内部で温められた温水が他端側から排出され、排出された温水がガス湯沸かし器32で加熱されて水機器へと排出される。
【0036】
本実施形態では、太陽熱温水器10で得られた温水をガス湯沸かし器32に供給するので、水をガス湯沸かし器32に供給する場合に比較してガス湯沸かし器32で用いるエネルギーが少なくて済み、省エネとなる。
【0037】
従来一般の太陽熱温水器では、例えば、夏の日差しの強い時間帯等において温水器内の温水の温度が50°C以上になる場合もあったが、本実施形態の太陽熱温水器10には、n−パラフィン(例えば、C2042:融点36°C)を含む潜熱蓄熱材18が用いられているため、強い太陽光を受け続けても、ある期間(潜熱蓄熱材18の容量により設定可能)は潜熱蓄熱材18の温度を36°C付近で一定とすることができる。
【0038】
したがって、温水器内の温水の温度も36°C付近までしか上昇せず、ガス湯沸かし器32に供給される温水の最高温度は、ガス湯沸かし器32の出湯設定温度(例えば、42°C)よりも低い36°C付近となる。このため、ガス湯沸かし器32を上手く作動させることができ、ガス湯沸かし器32から出湯設定温度のお湯を確実に排出することができる。
【0039】
本実施形態の太陽熱温水器10では、潜熱蓄熱材18が日中に受けた熱を蓄熱しており、集熱板14の配管16内にもお湯が貯留されているため(容積を大きく設定することで配管16を、タンクの代わりとすることができる)、夜間等であっても、家屋内の水機器が使用されれば、配管16の他端側から十分な量のお湯を排出することができる。
【0040】
また、潜熱蓄熱材18は、多量の熱を蓄熱しているので、配管内に貯留されていたお湯が全量排出された後であっても、配管16に水を供給すれば供給された水を潜熱蓄熱材18の熱でもってある程度加温して排出することが可能であり、ガス湯沸かし器32のエネルギー使用量を抑えることができる。
【0041】
本実施形態の太陽熱温水器10では、外側ケース12の内部が真空にされており、しかも集熱板14の裏表面が複数の微小柱体22で点当たりで支持されているので、集熱板14の外側ケース12への熱伝達が最小限に抑えられ、潜熱蓄熱材18の温度低下を極力抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態のソーラーシステム11は、潜熱蓄熱材18を設けた太陽熱温水器10とガス湯沸かし器40という簡単な構成であり、既存のシステムも簡単な改造で本発明のソーラーシステム11とすることが出来る。
なお、一般家庭等では、温水のみではなく、暖めていない通常の水道水を使用する場合もあるため、その場合には、図1に示すように、蛇口として温水用と水用とを設け、風呂には温水と水とを供給するように、給水用の配管28から分岐管34を設けても良い。
【0043】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、ソーラーシステム11を住宅に適用した例を説明したが、マンション、団地等の集合住宅等の適用することもできる。その場合、太陽熱温水器10からの温水を分岐し、各家庭のガス湯沸かし器32に供給すれば良い。
【0044】
上記実施形態では、潜熱蓄熱材18として、相変化する温度が36°Cとされたn−パラフィンを用いたが、相変化する温度は36°Cに限定されるものではなく、ガス湯沸かし器32の設定温度によって適宜変更されるものである。また、上記実施形態では、ガス湯沸かし器32の出湯温度を42°Cに設定したが、42°C以外の温度に設定しても良いのは勿論である。
【0045】
上記実施形態の太陽熱温水器10は、平板状の集熱板14で太陽光を受けるタイプであったが、黒色のガラス管等で太陽光を受ける他の構成のものであっても良く、潜熱蓄熱材18を用いれば太陽熱温水器自体の構成は、従来公知のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 ソーラーシステム
11 太陽熱温水器
18 潜熱蓄熱材
40 ガス湯沸かし器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給した水を太陽熱によって加熱して温水として排出可能な太陽熱温水器と、
前記太陽熱温水器の温水排出側に設けられ、前記太陽熱温水器から供給された温水を加熱可能な出湯温度設定機能付きの湯沸かし器と、
を備え、
前記太陽熱温水器には相変化によって蓄熱を行う潜熱蓄熱材が設けられおり、前記潜熱蓄熱材の相変化温度が前記湯沸かし器の出湯温度よりも低く設定されているソーラーシステム。
【請求項2】
前記潜熱蓄熱材はn−パラフィン含んでいる請求項1に記載のソーラーシステム。
【請求項3】
前記潜熱蓄熱材は硫酸ナトリウム水和物を含んでいる請求項1に記載のソーラーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−117633(P2011−117633A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273845(P2009−273845)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000170554)国際技術開発株式会社 (34)