説明

ゾル−ゲル法で耐歪み性コーティングの形成方法

【課題】 ゾル−ゲル法を用いて金属基材を耐歪み性コーティングで被覆する方法及び当該方法で製造される物品を提供する。
【解決手段】 一実施形態では、金属基材の被覆方法は、金属基材にゾルコーティングを塗工する段階、ゾルコーティングをゲルコーティングに転化させる段階、ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせる段階、及びゲルコーティングを焼結する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、耐歪み性コーティングの形成方法について開示する。具体的には、本発明は基材に施工される耐歪み性コーティングの形成方法に関する。さらに具体的には、遮熱コーティング用の耐歪み性コーティングの形成方法について開示する。
【背景技術】
【0002】
金属は、高温(約704℃以上)及び酸化性環境に暴露されると、酸化、腐食及び脆化するおそれがある。かかる環境は、発電用途に用いられるタービンで生じる。遮熱コーティング(TBC)を金属タービン部品に施工すると、金属部品に対する高温・酸化性環境の影響を低減させることができる。
【0003】
遮熱コーティングは、通例、金属ボンドコートとセラミックコーティングの2つの構成要素からなる。金属ボンドコートには、アルミニウムやクロムのような酸化防止及び/又は腐食防止材料を含むものがある。例えば、金属ボンドコートには、クロム、アルミニウム、イットリウム又はMCrAlYのようなこれらの組合せ(式中、Mはニッケル、コバルト又は鉄。)を含むものがある(米国特許第4034142号(Hecht)及び米国特許第4585481号(Gupta他)には何種類かのコーティング材料が記載されている)。こうした金属ボンドコートは溶射法で施工できる(上記Gupta他の米国特許には、ケイ素及びハフニウム粒子を含むコーティング材料をプラズマ溶射で施工することが記載されている)。
【0004】
遮熱コーティングのセラミックコーティングは、大気プラズマ溶射法(APS)又は電子ビーム物理気相成長法(EB−PVD)のような公知の方法で金属ボンドコート上に施工できる。
【0005】
耐歪み性TBCを得るための従来の被覆法は、多大な経費を要し、製造が極めて難しいことがある。EB−PVD法で製造されるコーティングは耐歪み性の非常に高い構造を生じるが、経費がかかるだけでなく、特に大型又は特異な幾何形状の部品では実施できないことがある。そこで、金属タービン部品その他TBCの存在による恩恵を受ける構造体に耐歪み性TBCを施工するための改良法に対するニーズが存在する。
【特許文献1】米国特許第4034142号明細書
【特許文献2】米国特許第4585481号明細書
【特許文献3】米国特許第3975165号明細書
【特許文献4】米国特許第5091348号明細書
【特許文献5】米国特許第5285967号明細書
【特許文献6】米国特許第5585136号明細書
【特許文献7】米国再発行特許第36573号明細書
【特許文献8】米国特許第6235352号明細書
【特許文献9】米国特許第6898259号明細書
【発明の開示】
【0006】
本明細書では、ゾル−ゲル法を用いて金属基材を耐歪み性コーティングで被覆する方法並びに当該方法で製造される物品について開示する。一実施形態では、金属基材を耐歪み性コーティングで被覆する方法は、金属基材にゾルコーティングを塗工する段階、ゾルコーティングをゲルコーティングに転化させる段階、ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせる段階、及びゲルコーティングを焼結して耐歪み性コーティングを形成する段階を含む。
【0007】
別の実施形態では、金属基材の被覆方法は、金属基材に金属ボンドコートを塗工する段階、金属ボンドコートの金属基材側とは反対側の表面にゾルコーティングを塗工する段階、ゾルコーティングをゲルコーティングに転化させる段階、ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせてパターン化ゲルコーティングを形成する段階、パターン化ゲルコーティングを熱間静水圧プレスする段階、及びゲルコーティングを焼結して耐歪み性コーティングを形成する段階を含む。
【0008】
上記その他の特徴は、以下の詳しい説明で例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書における「第一」、「第二」などの用語は順序、数量又は重要性を意味するものではなく、ある構成要素を他の構成要素から区別するために用いられる。単数形で記載したものであっても、数を限定するものではなく、そのものが少なくとも1つ存在することを意味する。数量に用いられる「約」という修飾語は、記載の数値を含み、文脈毎に決まる意味をもつ(例えば、特定の数量の測定に付随する誤差範囲を含む)。本明細書で用いる「(s)」という接尾辞は、それを付した語の単数形と複数形を包含し、そのものが1以上存在することを意味する(例えば、metal(s)は1種以上の金属を包含する)。本明細書に開示した範囲はすべてその上下限を含み、独立に結合可能である(例えば、「約25重量%以下、具体的には約5〜約20重量%」という範囲は、「約5〜25重量%」の上下限とその範囲内のすべての中間値を含む)。
【0010】
本明細書では、ゾル−ゲル法による耐歪み性コーティングの形成方法について開示する。ゾル−ゲル法を用いた耐歪み性コーティングの形成方法は、遮熱コーティングの形成に使用できる。かかる方法は、ディップコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、インクジェット印刷、スピンコーティング、塗装などの技術を用いて遮熱コーティングを施工できるので、複雑で大きな幾何形状を有する被覆物品(例えば、タービン部品)を簡便に製造することができる。以下の説明では、遮熱コーティングを例にとってコーティング及び方法を説明するが、かかるコーティング及び方法の用途は例示的なものにすぎず、本発明を限定するものではない。かかるコーティング及び方法は、適当な用途に適した基材にコーティングを施工するのに使用できる。
【0011】
一般に、金属基材上で耐歪み性遮熱コーティングを形成する方法は、金属基材にゾルコーティングを塗工する段階、ゾルコーティングをゲルコーティングに転化させる段階、ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせる段階、及びゲルコーティングを焼結して耐歪み性コーティングを形成する段階を含む。
【0012】
さらに具体的には、本方法は、金属基材に金属ボンドコートを塗工する段階、金属ボンドコートの金属基材側とは反対側の表面にゾルコーティングを塗工する段階、ゾルコーティングをゲルコーティングに転化させる段階、ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせる段階、及びゲルコーティングを焼結して耐歪み性遮熱コーティングを形成する段階を含む。こうして得られたコーティングは、金属ボンドコート及び基材を酸化から保護する。
【0013】
ゾル−ゲル法は、液相(コロイド「ゾル」)から固相(「ゲル」)への系の転移を伴う。ゾルは通例、液相中の粒度約1〜約1000ナノメートルの離散固体粒子の懸濁液又は分散液である。ゾルは、分散法又は縮合法のような公知の方法で調製できる。縮合法又は沈殿法は、例えば沈殿剤の添加又は温度変化によって、コロイド粒子を溶解状態からコロイド相へと移すことで機能する。典型的な縮合ゾル−ゲル法では、前駆体に一連の加水分解及び重合反応を施してコロイド懸濁液を形成する。次いで、粒子を縮合させて固相(ゲル)にする。ゾルの安定性は分散剤を用いて維持できる。
【0014】
ゾルは当技術分野で公知であり、様々な方法及び出発原料を用いて調製できる。ゾルコーティングは、有機ポリマー懸濁液に無機粉体を添加したものでもよい。ゾルを基材に塗布した後、重合を誘起することで網状ゲルが得られる。例示的なポリマー懸濁液には、金属アルコキシド前駆体から加水分解反応で調製されるゾルがあり、これを脱水すればゲルが形成される。ゾルの調製に適した特定の金属アルコキシド前駆体としては、例えば、M(OR)R4−n(式中、MはSi、Ti、Zrなどであり、Rは低級アルキル基であり、Rは低級アルキル基又は適宜1以上の低級アルキル基で置換されたフェニル基であり、nは1、2、3又は4である。)がある。本発明で用いる低級アルキル基としては、炭素原子数1〜約10の直鎖アルキル基、炭素原子数3〜約10の枝分れアルキル基、及び炭素原子数3〜約10の環状アルキル基が挙げられる。例示的な低級アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロブチル、n−ペンチル、イソペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチルなどが挙げられる。
【0015】
所望の金属アルコキシドを適当な溶媒(例えば、アルキルアルコール)及び適宜水と混合する。ゾルに縮合触媒を添加してもよい。例示的なゾルには、金属アルコキシド(例えば、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド又はテトライソプロポキシド)をアルコール(特にn−プロパノール又はイソプロパノール)に溶解した溶液から調製されるものがあり、これに水及び/又は縮合触媒としての無機又は有機酸を適宜添加してもよい。例示的な縮合触媒としては、塩酸又は酢酸が挙げられる。
【0016】
次いで、ゾルから水その他の揮発分成分を除去すれば、ゲル状態を生じさせることができる。ゾルの乾燥は、周囲室温を超えかつ350℃未満(特に250℃未満)の温度で実施できる。一実施形態では、350℃未満の温度の空気又は不活性ガスをゾルコーティングに吹き付けて乾燥させることができる。かかるゾル−ゲル法は米国特許第6898259号に開示されている。同様なゾルは米国特許第5585136号に記載されている。
【0017】
他の好適なゾルとしては、米国特許第5091348号に開示された水和酸化物ゾルが挙げられる。例示的なゾルとしては、ジルコニウム(IV)、インジウム(III)、ガリウム(III)、鉄(III)、アルミニウム(III)、クロム(III)、セリウム(IV)、ケイ素(IV)、チタン(IV)及びこれらの1種以上を含む組合せの水和酸化物ゾルが挙げられる。イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、カルシウム(Ca)など、これらの1種以上を含む酸化物、並びにこれらの1種以上を含む組合せ(例えば、イットリア安定化ジルコニア)のような安定剤を含んでいてもよい。ゾルを脱水して均質ゲルを形成し、次いで焼結すれば所望のセラミック材料を形成できる。これらのゾル並びに縮合法で調製されたものは、さらに、Al、Pb、Ca、Sr、Ba、La、Rb、Ag、Au、Cd、Na、Mg、Li、K、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Nb、In、Hf、Ta、W、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、U、Ni、Cu、Zn、As、Ga、Ge、Ru、Sn及びこれらの1種以上を含む組合せからなる群から選択される1種以上の金属の塩又は酸化物を適宜含んでいてもよい。具体的には、得られる焼結コーティングに耐食性及び他の望ましい性質を付与するために金属酸化物又は金属塩を添加してもよい。
【0018】
次いで、水和酸化物ゾルを脱水して均質ゲルを形成することができる。脱水は、ゲルが均質になるような条件下で、非水溶媒の使用又は水の蒸発によって実施できる。
【0019】
ゾルの粘度及び表面張力を調節してその安定性を向上させると共に基材を被覆するためのゾルの加工を容易にするため、添加剤を添加してもよい。基材へのゾルの塗工は、例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、インクジェット印刷、スピンコーティング、塗装などの技術を用いて実施できる。コーティングの厚さは、逐次被覆法の使用又はゾルからの浸漬成分の急速除去で調節できる。
【0020】
次いで、ゾルコーティングを網状ゲルへと重合させることによって、ルコーティングが形成される。ゲルの形成を誘起する方法としては、前述のようにゾルを乾燥又は脱水することが挙げられる。
【0021】
得られるゲルコーティングの厚さは、最大約600マイクロメートル以上、具体的には約1〜約500マイクロメートル、さらに具体的には約250〜約400マイクロメートルとし得る。
【0022】
一実施形態では、最終コーティング中に亀裂が生じる可能性を最小限に抑えるため、焼結段階前又は焼結段階中にゲルコーティングを熱間静水圧プレスする。かかる段階は、管理されない亀裂又は不要の亀裂なしに厚いコーティングの乾燥及び焼結を可能にする。
【0023】
ゲルコーティングを形成した後、ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせることによって、焼結後に耐歪み性コーティングを得ることができる。本明細書で使用する「パターンを生じさせる」とは、ゲルコーティングの表面形態及び構造を変化させることによって、焼結後に耐歪み性コーティングをもたらすパターンを得ることを意味する。パターンを生じさせる方法は特に限定されず、特段の実験を行わなくても本明細書の教示内容に基づいて当業者が選択できる。パターンを生じさせる方法は、各種の機械的、化学的又は熱的方法で提供され得る。機械的方法は、スクラッチング、インプリンティング、スクリーニング、切削又は剥離可能なメッシュ(即ち、基材上の所望位置の被覆を阻止すると共に、被覆工程の完了後に物理的に除去され、又は焼結工程中に焼失するもの)のような手段を含んでいてもよい。インプリンティングは、金型をゲルの表面に押し付けてパターンを付与することを含んでいてもよい。この場合、金型は所望パターンの陰型を含む。化学的手段は、非湿性パターンの適用或いは乾燥及び/又は焼結段階中に予測可能な亀裂を生じさせる特殊バインダの配合のような方法を含んでいてもよい。熱的修飾は、レーザーエッチング又は電子ビーム(EB)エッチングのような手段を用いて達成できる。こうして得られたパターンは、その生成方法を問わず、得られるコーティングが被覆部品の熱膨張変化に良く耐えることを可能にする。
【0024】
得られたゲルコーティングを加熱することによって、遊離水及び結合水並びに存在することのある残留揮発性成分を除去できる。
【0025】
パターンを有するゲルコーティングに焼結段階を施して残留する有機ポリマー成分を焼失させれば、基材又は金属ボンドコートの表面上に塗工された無機材料のコーティングが得られる。焼結段階は、低温焼成方法を用いて実施できる。かかる方法は、約750〜約1800℃、具体的には約900〜約1150℃、さらに具体的には約1000〜約1100℃、さらに一段と具体的には約1050〜約1075℃の温度でゲルコーティングを焼結することを含む。
【0026】
焼結コーティングの密度は、ゾル−ゲル中に存在する有機バインダの量並びに焼結工程の温度及び時間で調節できる。
【0027】
金属基材は、例えば、燃焼器ライナ又はトランジションピース、バケット、ノズル、動翼、静翼、シュラウド、その他例えばタービンエンジンの高温ガス流内に配設される部品など、遮熱コーティングの付加で恩恵を受ける各種の部品のいずれであってもよい。金属基材は、かかる用途に用いられる各種の金属からなるものでよい。かかる金属としては、ニッケル、コバルト、鉄、これらの1種以上を含む組合せ、並びにこれらの1種以上を含む合金(例えば、ニッケル基超合金及び/又はコバルト基超合金)が挙げられる。
【0028】
遮熱コーティングを形成するための金属ボンドコート材料としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、これらの1種以上を含む合金、並びにこれらの1種以上を含む組合せが挙げられる。例えば、金属ボンドコートはMCrAlYからなるものでもよく、式中、Mはニッケル、コバルト、鉄、又はこれらの1種以上を含む組合せを含む。MCrAlYコーティングはさらに、ケイ素(Si)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、金(Au)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、レニウム(Re)、ハフニウム(Hf)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、これらの1種以上を含む合金、並びにこれらの1種以上を含む組合せを含んでいてもよい。例えば、金属ボンドコートは、金属ボンドコートの表面にアルミニウムスケールを生成するのに十分なアルミニウムを含んでいてもよい。アルミニウムはアルミナイドの形態であってもよく、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、これらの1種以上を含む合金、並びにこれらの1種以上を含む組合せを適宜含んでいてもよい。
【0029】
単一又は複数の段階で行うことができる基材への金属ボンドコートの施工は、気相成長(例えば、電子ビーム物理気相成長(EB−PVD)、化学気相成長(CVD)など)、電気めっき、イオンプラズマ堆積(IPD)、プラズマ溶射(例えば、真空プラズマ溶射(VPS)、低圧プラズマ溶射(LPPS)、大気プラズマ溶射(APS)など)、熱堆積(例えば、高速フレーム溶射(HVOF)など)、並びにこれらの方法の1以上を含む組合せを始めとする様々な方法で実施できる。例えば、金属ボンドコート成分を基材に(例えば、誘導融解などで)結合し、(例えば、粉体噴霧で)粉体化し、又はプラズマ溶射することができる。別法として、これらの方法に加えて、金属ボンドコート成分を目標物中に導入したり、イオンプラズマ堆積してもよい。複数の段階が使用される場合、各段階中に同一の元素又は相異なる元素を基材に施工することができる。例えば、廃棄物の低減した技術で貴金属(例えば、白金)を施工し、次いで残りの元素を施工するためには別の方法を使用することができる。したがって、貴金属は基材表面上に電気めっきし、他の元素は粉体組成物の(例えば、HVOFによる)熱堆積で施工することができる。次いで、例えば貴金属とコーティング組成物の残部との混合を達成するため、アルミナイジングを実施することができる。
【0030】
例えば、金属材料(例えば、線、棒などの形態のもの)を基材に施工できる。金属材料を酸素アセチレン炎中に供給すればよい。炎で金属材料を融解すると共に、補助高圧空気流で粒子溶融物を噴霧すれば、材料は基材にコーティングとして堆積する。
【0031】
米国特許第5285967号(Weidman)に開示されているもののような無炎溶射装置を使用することもできる。HVOF法は、平滑なコーティング(例えば、約1マイクロメートル(50マイクロインチ)以下のRを有するコーティング)を形成する。
【0032】
金属ボンドコートの厚さは、被覆部品を使用する用途及び施工技術に依存する。コーティングは、約50〜約625マイクロメートル、さらに具体的には約75〜約425マイクロメートルの厚さでタービン部品上に施工できる。ゾル−ゲルコーティングの施工に先立ち、金属ボンドコートを処理して表面を粗面化することができる。具体的には、ゾル−ゲルコーティングの施工にとって十分な結合力を得るため、金属ボンドコートを約100〜約400マイクロインチ(約2.54〜約10.16マイクロメートル)程度の平均表面粗さ(Ra)に粗面化できる。
【0033】
例示的な実施形態では、ゾル−ゲル法を用いて金属基材が耐歪み性TBCで被覆される。まず、例えばHVOF又はVPSをはじめとする任意の数の方法で金属基材が金属ボンドコートで被覆される。次いで、無機金属酸化物粉体を含むゾルが、金属基材と反対側の反対側の金属ボンドコート表面上に塗布される。ゾルの液体成分及び他の揮発性成分を除去することによって、ゾルコーティングからゲルコーティングを形成する。こうして生じるゾルの重合又は硬化によってゲルコーティングが得られる。得られたゲルコーティング中に耐歪み性パターン(例えば、クロスハッチパターン)を生じさせることによって、最終製品において耐歪み性が得られる。かかる耐歪み性は、例えばタービンエンジン部品のエンジン運転期間中におけるコーティングの亀裂や剥落の発生及び成長を抑制する。最終段階は、パターン化ゲルコーティングを焼結して金属基材に耐歪み性TBCを形成することを含む。
【0034】
本発明では、金属基材にゾルコーティングを塗工する段階、ゾルコーティングをゲルコーティングに転化させる段階、ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせる段階、及びゲルコーティングを焼結して耐歪み性コーティングを形成する段階を含む方法で形成されるコーティングも提供する。具体的には、かかるコーティングは、金属基材に金属ボンドコートを塗工する段階、金属ボンドコートの金属基材側とは反対側の表面にゾルコーティングを塗工する段階、ゾルコーティングをゲルコーティングに転化させる段階、ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせてパターン化ゲルコーティングを形成する段階、焼結前又は焼結時にパターン化ゲルコーティングを熱間静水圧プレスする段階、及びゲルコーティングを焼結して耐歪み性コーティングを形成する段階を含む方法で形成される。かかるコーティングは遮熱コーティングであり得る。
【0035】
以上、好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲内で本発明に様々な変更を加えることができ、本発明の構成要素を均等物で置き換えることができることは当業者には明らかであろう。さらに、本発明の技術的範囲内で特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるため数多くの変更を加えることもできる。従って、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材の被覆方法であって、
金属基材にゾルコーティングを塗工する段階、
ゾルコーティングをゲルコーティングに転化させる段階、
ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせる段階、及び
ゲルコーティングを焼結して耐歪み性コーティングを形成する段階
を含んでなる方法。
【請求項2】
さらに、金属基材に金属ボンドコートを塗工する段階を含み、ゾルコーティングが金属ボンドコートの金属基材側とは反対側の表面に塗工される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
i)ゾルコーティングが次の一般式の1種以上の金属アルコキシド前駆体から調製されるか、
M(OR)R4−n
(式中、各Mは独立にケイ素、チタン又はジルコニウムであり、各Rは独立に低級アルキル基であり、各Rは独立に低級アルキル基又は適宜1以上の低級アルキル基で置換されたフェニル基であり、nは1、2、3又は4である。)
ii)ゾルコーティングが、ジルコニウム(IV)、インジウム(III)、ガリウム(III)、鉄(III)、アルミニウム(III)、クロム(III)、セリウム(IV)、ケイ素(IV)、チタン(IV)又はこれらの1種以上を含む組合せの水和酸化物ゾルを含むか、或いは
iii)ゾルコーティングがポリマー懸濁液及び固形セラミック粉体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ゾルコーティングがさらに、Al、Pb、Ca、Sr、Ba、La、Rb、Ag、Au、Cd、Na、Mg、Li、K、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Nb、In、Hf、Ta、W、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、U、Ni、Cu、Zn、As、Ga、Ge、Ru、Sn及びこれらの1種以上を含む組合せからなる群から選択される1種以上の金属を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
金属基材にゾルコーティングを塗工する段階が、ディップコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、インクジェット印刷、スピンコーティング、塗装又はこれらの方法の1以上を含む組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせる段階が機械的、熱的又は化学的方法からなる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせる機械的方法が、スクラッチング、インプリンティング、スクリーニング、切削、除去可能な非湿性パターン若しくはメッシュの適用、又はこれらの1以上を含む組合せを含み、
ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせる化学的方法が、非湿性パターンの適用又はバインダの配合によって乾燥又は焼結時にゲルコーティングの制御可能な亀裂を生じさせることを含み、
ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせる熱的方法が、レーザーエッチング又は電子ビームエッチングを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
焼結段階前又は焼結段階中に、ゲルコーティングを熱間静水圧プレスする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ゲルコーティングの焼結が約750〜約1800℃の温度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
金属基材の被覆方法であって、
金属基材に金属ボンドコートを塗工する段階、
金属ボンドコートの金属基材側とは反対側の表面にゾルコーティングを塗工する段階、
ゾルコーティングをゲルコーティングに転化させる段階、
ゲルコーティング上又はゲルコーティング中にパターンを生じさせてパターン化ゲルコーティングを形成する段階、
パターン化ゲルコーティングを熱間静水圧プレスする段階、及び
ゲルコーティングを焼結して耐歪み性コーティングを形成する段階
を含んでなる方法。