ゾル粒子特異的結合アッセイの多波長分析
本発明は、溶液中の第1試薬と第2試薬との複合体の存在を検出するための方法を開示する。特に、本発明は、複雑な生物学的サンプル中における分析物またはその特異的結合パートナーの定性的または定量的検出のための方法を提供する。本発明は、分析物とその結合パートナーとの分子間相互作用を確認するための、コロイド状の金属標識された分析物または特異的結合パートナーの光吸収スペクトルの、選択された波長での概略的速度変化を使用するアルゴリズムをさらに開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年3月20日に出願された、"Multi-Wavelength Analyses Of Sol-Particle Specific Binding Assays"という表題の、米国特許出願第61/038,324号;および2008年9月19日に出願された、"Multi-Wavelength Analyses Of Sol-Particle Specific Binding Assays"という表題の、米国特許出願第61/098,417号に対する優先権を主張する。これらの出願の内容は、全ての目的について、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
溶液、特に、生物学的流体中の分析物の正確な検出は、医学診断学、獣医学診断学、ならびに食品および医薬品安全性を含む、いくつかの分野において重要である。血液、血漿、血清、尿、および胆汁などの複雑な生物学的サンプルの固有の濁度ために、多数の分析物についての信頼できるアッセイおよびデバイスを開発することが困難であった。マトリックス関連干渉ならびに生体コロイドによる光の散乱は、分析物の、主に濁度に制限される高感度の測定を妨害する。
【0003】
分析物の検出のためのいくつかの現存するアッセイ方法は、抗体−抗原相互作用の使用を含む(例えば、イムノアッセイ)。これらのアッセイは、通常、放射性物質での抗体の標識(ラジオイムノアッセイ)、酵素への抗体の結合(酵素結合イムノソルベント検定法、即ち、ELISA)、または着色ラテックスまたは着色金属性ナノ粒子を使用した抗体の着色を含む。次いで、抗体−抗原複合体の検出が、標識の存在を決定すること(例えば、放射能を検出すること、連結された酵素の活性を測定すること、または色変化を観察すること)によってなされる。これらのアッセイは、以下の1つまたは複数の不利益を有する:(1)時間のかかる多数の分析工程を必要とする、(2)読み出しのために複雑で高価な機械を要する、(3)単一の分析物の検出に限定される、および(4)定性分析に限定される。従って、生物学的溶液中の1つまたは複数の分析物を検出するためのさらなる方法についての必要性が存在する。
【0004】
コロイダルゴールド試験が、1912年に、脳脊髄病理および肝機能障害を研究するために使用された。表面プラズモン共鳴(SPR)は、金属性ナノ粒子表面において生じる周知の現象である。前記現象は、ある角度で表面に入射光が入る場合の、金属表面の分子の厚みに起因する反射光の強度の段階的な減少を表す。
【0005】
局在表面プラズモン共鳴(LSPR)は、単分散ナノ粒子において観察される。それらの伝導電子の集団的な振動は、入射放射線の波長選択的な吸収および散乱を生じさせる。生物学的サンプルについてLSPRを使用することの欠点は、常に、非特異的反応に起因する干渉であった。従って、LSPRの鋭敏な感度を利用するが、非特異的相互作用からの干渉を最小化する、生物学的溶液中の分析物を検出するための方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、溶液、特に、生物学的サンプル中の、分析物またはその特異的結合パートナーを検出するための定性的および定量的方法を提供する。開示される分光学的方法は、分析物の存在および/または量を測定するために、コロイド状の金属標識された分析物または特異的結合パートナーのスペクトルの変化を利用する。本発明は、分析物とその特異的結合パートナーとの分子間相互作用を確認するための、選択された波長における概略的速度変化を使用するアルゴリズムをさらに提供する。
【0007】
ナノ粒子イムノアッセイを使用して、本発明者らは、驚くべきことに、1つまたは複数の波長での変化速度の測定、および必要に応じてアルゴリズムによるそれらのさらなる数値的な操作が、非特異的干渉の最小化を可能にし、従ってこのような方法の感度を実質的に改善することを発見した。
【0008】
本発明の方法は、複雑な生物学的媒体中の分析物の正確な測定を提供し、別個の分析物の検出に各々調整された多数の反応容器からの多数の測定値を使用して多数の分析物を同時に分析するように適合され得る。あるいは、多数の分析物が、いくつかの波長および時点での吸光度値をモニタリングすることによって同時に測定され得る。
【0009】
本発明は、混合物中における第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定するための方法を包含する。一態様において、前記方法は、第1試薬と第2試薬との混合時に、光吸収波長領域内の波長に対応する反応速度変化を測定する工程を含み、ここで、反応速度変化は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す。反応速度変化は、正または負であり得る。
【0010】
別の態様において、前記方法は、第1波長での第1反応速度変化、および第2波長での第2反応速度変化を測定する工程を含み、ここで、第1波長および第2波長は、光吸収波長領域内にあり、第1反応速度変化および第2反応速度変化は、複合体の存在または非存在を示す。
【0011】
なお別の態様において、前記方法は、第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を測定する工程を含み、ここで、第1波長は光吸収波長領域内にあり、第2波長は散乱波長領域内にあり、第1反応速度変化および第2反応速度変化は、複合体の存在または非存在を示す。
【0012】
ある態様において、第1波長および第2波長での反応速度変化は、異なる時点で測定され得る。第1時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最初の期間内にあり得る。第2時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最後の期間内にあり得る。
【0013】
他の態様において、第1波長での反応速度変化の1つのグループが、複数の時点について測定され、第2波長での反応速度変化の1つのグループが、複数の時点について測定され、ここで、反応速度変化の第1グループの積分または反応速度変化の第2グループの積分は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す。
【0014】
一部の態様において、反応速度変化は、参照波長に対応する吸光度値に関連して決定され得る。一態様において、参照波長は、第1試薬、第2試薬、および/またはそれらの複合体の光吸収または散乱に最小の干渉を有する波長である。別の態様において、参照波長は、等吸収点に対応する波長である。
【0015】
本発明の別の態様において、前記方法は、次の工程を含む:第1試薬と第2試薬との混合時に、第1波長での第1吸光度値および第2波長での第2吸光度値を測定する工程であって、該第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および、前記第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程であって、該値の比較が、前記第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示す、工程。ある態様において、第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程は、第2吸光度値に対する第1吸光度値の比率を測定する工程を含む。
【0016】
別の態様において、前記方法は、試薬インテグリティーの少なくとも1つの測定を得る工程をさらに含み、ここで、該少なくとも1つの測定は、非特異的シグナルを示す。試薬インテグリティーの測定は、第1試薬と第2試薬との混合の初期時点について、参照波長での透過率値、λmaxに対応する波長での最大吸光度値、またはそれらの組み合わせを測定する工程を含み得る。このような測定値は、所定の限度値と比較され得る。
【0017】
本発明は、光吸収スペクトルから得られた反応速度データを分析し、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定するための、アルゴリズムをさらに提供する。一態様において、前記アルゴリズムは、第1および第2の反応速度変化の合計を算出する。別の態様において、前記アルゴリズムは、第3および第4の反応速度変化の合計に対する第1および第2の反応速度変化の合計の比率を算出する。
【0018】
一部の態様において、前記アルゴリズムは、反応速度変化の合計または反応速度変化の合計の比率と所定の閾値とを比較する。ある態様において、前記アルゴリズムは、第1波長での反応速度変化の、ある第1グループを積分し、該積分と所定の閾値とを比較する。
【0019】
他の態様において、前記アルゴリズムは、第2波長での反応速度変化の、ある第2グループを積分し、該積分と所定の閾値とを比較する。一態様において、反応速度変化の第1グループは、第1波長に対応する吸光度値の第1セットから、第1波長での対照サンプルの吸光度値を差し引くことによって決定され、反応速度変化の第2グループは、第2波長に対応する吸光度値の第2セットから、第2波長での対照サンプルの吸光度値を差し引くことによって決定される。別の態様において、反応速度変化の第1グループは、第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される。
【0020】
別の態様において、反応速度変化の第1グループは、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、反応期間中の第1時点での第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される。
【0021】
別の態様において、反応速度変化の第1グループは、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、反応期間中の該第1点での第2波長に対応する吸光度値に基づいて標準化される。
【0022】
一部の態様において、前記アルゴリズムは、吸光度値の1つの第2グループに対する、吸光度値の1つの第1グループの平均比率を計算し、ここで、吸光度値の該第1グループは、第1試薬と第2試薬との混合のための初期反応期間中の複数の時点について第1波長で測定され、吸光度値の該第2グループは、該複数の時点について第2波長で測定され、第1波長は光吸収波長領域内にあり、第2波長は散乱波長領域内にある。前記平均比率は、所定の閾値と比較され得る。別の態様において、前記平均比率は、所定の上限値および下限値と比較される。
【0023】
別の態様において、吸光度値の第1グループは、前記複数の時点の各々について、第1波長での対照吸光度値の1つの第1グループに基づいて調節され、吸光度値の第2グループは、前記複数の時点の各々について、第2波長での対照吸光度値の1つの第2グループに基づいて調節される。対照吸光度値は、対照サンプルまたは対照溶液、例えば、光学的なおよびサンプルのブランクから測定される。
【0024】
なお別の態様において、本発明の方法は、混合物中における第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定する工程を含み、ここで、第1試薬は生物学的サンプル中の分析物である。ある態様において、第2試薬は、第1試薬へ特異的に結合する存在物(entity)である。他の態様において、第2試薬は、分析物へ特異的に結合する抗体である。
【0025】
本発明の一態様において、第1または第2試薬は、検出可能な存在物へ結合されている。検出可能な存在物は、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、複合粒子、金中空球体、金コーティングシリカナノシェル、およびシリカコーティングゴールドシェルを含む、金属ナノ粒子または金属ナノシェルであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】0、223、または445μg/Lの精製糸状虫抗原の存在下での、抗糸状虫抗体でコーティングされた金ナノ粒子の光吸収スペクトル。
【図2】異なる濃度の糸状虫抗原の存在および非存在下での、抗糸状虫抗体コーティングナノ粒子間の得られた吸光度差を示す正味の光吸収スペクトル。
【図3】金−抗体結合体と糸状虫抗原とのインキュベーション後の異なる時点(2、8、および13分)からの光吸収スペクトル。
【図4】金−抗体結合体と糸状虫抗原との反応における2つの異なる時間間隔(2〜8分および8〜13分)についての速度スペクトル。
【図5】陰性および陽性のイヌ糸状虫サンプルについてのロジック番号1に従って計算された初期速度の合計。点線は閾値レベルを示す。
【図6】陰性および陽性のイヌ糸状虫サンプルについてのロジック番号1に従って計算された速度比率。点線は閾値レベルを示す。
【図7】低反応性条件下での陰性および陽性のイヌ糸状虫サンプルについてロジック番号1に従って計算された初期速度の合計。点線は閾値レベルを示す。
【図8】凝集特異的シグナルについての速度計算および等吸収点を示す、金−抗体結合体と糸状虫抗原とのインキュベーション後の異なる時点(2、8、および13分)からの吸収スペクトル。
【図9】イヌ糸状虫の陰性および陽性のサンプルについてのロジック番号2に従うシグナル積分を示す。
【図10】陰性および陽性のイヌ糸状虫サンプルについての、光吸収波長(515/550)での反応速度についての標準化されたデルタ合計と、散乱波長(600/550)での反応速度についての標準化されたデルタ合計との相関。標準化されたデルタ合計を、ロジック番号2に従って計算した。
【図11】第1および最後の速度の合計を使用して反応スペクトルを分析する代替法を示す。
【図12】インターリービング速度の合計を使用して反応スペクトルを分析する第2の代替法を示す。
【図13】反応における異なる時点(0、5、および10分)での精製糸状虫抗原の存在下での、抗糸状虫抗体でコーティングされた金ナノ粒子の光吸収スペクトル。反応の進行に伴う、λmaxでのピーク吸光度の減少および吸光度ピークの広がりに注意のこと。
【図14】A.イヌ糸状虫について陰性の84個の異なるサンプルについての光吸収スペクトル。B.Aにおけるのと同一のサンプルについての標準化された光吸収スペクトル。各波長での吸光度を550 nm(λmax)での吸光度に対して標準化した。
【図15】A.種々の糸状虫抗原濃度についての標準化された光吸収スペクトル。各波長での吸光度を550 nm(λmax)での吸光度に対して標準化した。B.600 nmでの吸光度に対する515 nmでの吸光度の比率を、種々の糸状虫抗原濃度を含有するサンプルについて反応時間(パス数)に対してプロットする。
【図16】A.イヌ糸状虫について陰性のサンプルと混合された、9個の異なる金ナノ粒子結合体についての光吸収スペクトル。結合体の各々についての600 nmでの吸光度に対する515 nmでの吸光度の比率を、挿入部分内に示す。B.600 nmでの吸光度に対する515 nmでの吸光度の比率を、糸状虫抗原濃度(希釈比率として表される)に対してプロットする。高い抗原濃度(1:100)で、比率は、横ばい状態に達し始める。
【図17】異なる濃度の糸状虫抗原の存在下における515 nm(A)または600 nm(B)での反応時間に対する金ナノ粒子結合体の吸光度の変化のプロット。青色の線は陰性血漿サンプルを示し、赤色の線は低い抗原濃度を示し、緑色の線は高い抗原濃度を示す。
【図18】515 nm(菱形)または600 nm(三角形)での糸状虫抗原濃度(希釈比率として表される)に対してプロットされた反応速度。
【図19】A.20個の異なる分析器において測定された2つの異なる抗原含有サンプル(P0およびP3)の存在下における金ナノ粒子結合体の光吸収シグナル。各データポイントは、異なる分析器を示す。B.光学的ブランク(金ナノ粒子結合体のみ−サンプル無し)の吸光度について修正されたAにおいて示されるような光吸収シグナル。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を検出するための方法を提供する。これらの方法は、既知の分子の結合パートナーを同定するためならびに溶液中の特定の分析物を検出するために使用され得る。特に、本発明の方法は、複雑な生物学的溶液中の分析物の正確で高感度の検出の問題に対する解決法を提示する。
【0028】
本発明の方法は、単分散金属ナノ粒子において観察される局在表面プラズモン共鳴の現象を利用する。特定の分析物の検出は、関心対象の分析物の結合パートナーへ結合された金属ナノ粒子の光吸収スペクトルからの反応速度変化を測定することによって達成される。非特異的結合は、多数の波長での反応速度を測定することによって排除され得る。
【0029】
いくつかのタイプの複合体が、第1試薬または第2試薬のいずれかを検出可能な存在物、例えば、金属ナノ粒子へ結合することにより、本発明の方法を使用することによって、検出および定量され得る。第1試薬は、溶液中の分析物であり得、一方、第2試薬は、その分析物を特異的に認識する結合パートナーまたは存在物である。例えば、分析物は抗原であり得、結合パートナーは、その特定の抗原に対する抗体であり得る。検出され得る複合体の他の例としては、DNA/DNA、DNA/RNA、RNA/RNA、核酸/タンパク質、および受容体/リガンド複合体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一態様において、抗原/抗体複合体が検出され、ここで、第2試薬は、検出可能な存在物へ結合された抗体である。
【0030】
「検出可能な存在物」は、紫外線、可視光線、近赤外線電磁スペクトル中において波長選択的吸収を示し、入射放射線を散乱させる、存在物である。本発明の方法における使用に好適な検出可能な存在物としては、金属性ナノ粒子および金属ナノシェルが挙げられる。第1試薬または第2試薬のいずれかへ結合され得る種々のタイプの金属ナノ粒子としては、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、複合粒子、および金中空球体が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第6,699,724号に記載されるような金属ナノシェルもまた、標識粒子として使用され得る。金属ナノシェルは、規定のコア半径対シェル厚み比を有する、誘電性コアと金属性コーティングとから構成される粒子である。コアは、二酸化ケイ素、硫化金、二酸化チタンおよびポリスチレンを含む、種々の材料から構成され得る。シェルについての好適な金属としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、鉛および鉄が挙げられる。金コーティングシリカナノシェルまたはシリカコーティングゴールドシェルが、ある態様において好ましい。
【0031】
粒子の光学特性は、粒径に大きく依存する。固体金粒子について、最大光吸収波長(λmax)は、粒度に依存して約515 nm〜約560 nmである。30 nm直径を有する金粒子は、約520 nmで最大に吸収し、粒径が増加するにつれてλmaxはより長い波長へシフトする。銀および銅粒子は、紫外/青色または赤色領域(例えば、約350 nm〜約500 nm)においてλmaxを有し、粒径が増加することによって、λmaxがより長い波長へシフトする。約10 nm〜約100 nmの直径を有する金属性ナノ粒子が好ましい。
【0032】
ナノシェルの場合、コア半径対シェル厚み比はまた、粒子の光学共鳴を規定する。例えば、金コーティングシリカナノシェルについて、コア半径対シェル厚み比の減少は、λmaxをより短い波長へシフトさせる。本発明の方法における使用に好適なナノシェルは、典型的に、約1 nm〜約4μmの範囲のコア直径および約1 nm〜約100 nmの範囲のシェル厚みを有する。
【0033】
金属ナノ粒子または金属ナノシェルを高分子へ結合する方法は、当技術分野において周知である。1つの可能性のある方法は、受動的吸着による。この方法は、金属コロイド溶液のpHを、標識されるタンパク質が正電荷を有するpHへを調節すること、金属コロイド溶液とタンパク質溶液とを混合すること、および得られた混合物を遠心分離することを含む。次いで、上澄みを除去し、沈殿物を再溶解することによって、標識されたタンパク質が得られる。高分子を金属ナノ粒子またはナノシェルへ結合する他の方法は、当業者に公知であり、当業者は、使用される所望のナノ粒子のタイプおよび標識される高分子のタイプに基づいて、適切な方法を選択し得る。
【0034】
本明細書に開示される方法は、検出可能な存在物へカップリングされた結合パートナーへの分析物の結合時のスペクトルシフトを促進する任意の薬剤と共の使用について好適である。このような薬剤としては、種々のタイプのポリマー、例えば、PEG、PVA(ポリビニルアルコール)、およびPVP(ポリビニルピロリドン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明は、混合物中における第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定するための方法を提供する。一態様において、前記方法は、第1試薬と第2試薬との混合時に、光吸収波長領域内の波長に対応する反応速度変化を測定する工程を含み、ここで、反応速度変化は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す。
【0036】
反応速度変化は、例えば、検出が第1試薬と第2試薬との複合体の増加または減少に向けられるかどうかに依存して、正または負であり得る。ある態様において、第1試薬と第2試薬との間で形成される複合体の増加が検出され得る;例えば、それを試薬から分離することなどのさらなる処理のない複合体の直接的検出。このような検出は、通常、複合体の増加に関連する正の速度変化を生じさせる。ある態様において、第1試薬と第2試薬との間で形成される複合体の減少が検出され得る。例えば、例えば遠心力などによって、試薬から複合体の一部または全部を分離した後に、複合体の減少または「消滅」が検出され得る。このような検出は、通常、複合体の減少に関連する負の速度変化を生じさせる。正または負のどちらの反応速度変化も、種々の反応条件下での第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示すために使用され得る。
【0037】
別の態様において、前記方法は、第2波長での第2反応速度変化を測定する工程をさらに含み、ここで、第2波長は光吸収波長領域内にあり、第1および第2の反応速度変化は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す。
【0038】
さらに別の態様において、第1波長は光吸収波長領域中にあり、第2波長は散乱波長領域中にあり、第1および第2の反応速度変化は、複合体の存在または非存在を示す。
【0039】
光吸収および散乱波長領域は、第1または第2試薬へ結合された検出可能な存在物のタイプによって決定される。上述したように、異なる金属性ナノ粒子またはナノシェルは、それらのサイズおよび組成に基づいて異なる光学特性を示す。光吸収波長領域は、約280 nm〜約550 nmであり得る。散乱波長領域は、約550 nm〜約800 nmであり得る。各々の選択された金属粒子結合体についての正確な光吸収および散乱波長領域は、当業者によって容易に測定される。
【0040】
反応速度変化は、光吸収および/または散乱波長領域内の選択された波長での吸光度値ならびに参照波長での吸光度値を測定することによって計算され得る。参照波長は、第1試薬、第2試薬、および/またはそれらの複合体の光吸収または散乱に最小の干渉を有する波長である。従って、参照波長での吸光度値は、第1試薬、第2試薬、または第1試薬と第2試薬との複合体の存在によって影響されず、非特異的相互作用または光源の揺動に起因する光吸収または散乱を排除するために使用され得る。
【0041】
一態様において、参照波長は、電磁スペクトルの可視部の外の波長である(即ち、700 nmを超える)。別の態様において、参照波長は850 nmである。なお別の態様において、参照波長は、等吸収点に対応する波長である。
【0042】
「等吸収点」は、2つまたはそれ以上の種が同一の吸光率を有する特定の波長である。反応が沈殿または分子構造崩壊を引き起こさない限り、等吸収点に対応する波長での反応混合物の吸光度は、反応の過程にわたって変化しない。
【0043】
本発明の別の態様によれば、前記方法は、第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を第1時点について測定する工程、第1波長での第3反応速度変化および第2波長での第4反応速度変化を第2時点について測定する工程を含み、前記第1および第2の波長は、光吸収波長領域内にあり、第1、第2、第3、および第4の反応速度変化は、複合体の存在または非存在を示す。一態様において、前記第1および第3反応速度変化は第1波長で測定され、前記第2および第4反応速度変化は第2波長で測定され、ここで、第1波長は光吸収波長領域内にあり、第2波長は散乱領域内にある。
【0044】
別の態様において、第1時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最初の期間内にあり、第2時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最後の期間内にある。第1時点は、第1試薬と第2試薬との混合時の、約30秒、約1分、約2分、約3分、約4分、または約5分であり得る。第2時点は、第1試薬と第2試薬との混合時の、約4分、約6分、約8分、約10分、または約12分であり得る。
【0045】
本発明のある態様において、前記方法は、次の工程を含む:第1試薬と第2試薬との混合時に、第1波長での第1吸光度値および第2波長での第2吸光度値を測定する工程であって、該第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および、前記第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程であって、該値の比較が、前記第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示す、工程。
【0046】
第1吸光度値と第2吸光度値との比較は、第2吸光度値に対する第1吸光度値の比率、第1および第2吸光度値の差を測定すること、または任意の他の好適な数学的計算および/または比較を含み得る。一態様において、第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程は、第2吸光度値に対する第1吸光度値の比率を測定する工程を含む。
【0047】
第1および第2吸光度値は、本明細書に記載されるように参照波長に相対的に求められ得る。一態様において、第1および第2吸光度値は、λmaxに対応する波長での最大吸光度値に対して標準化される。ある物質についての最大吸光度またはピーク吸光度は、λmax波長で生じる。ピーク吸光度またはλmaxでの吸光度の変化は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示し得る。従って、本発明の別の態様において、前記方法は、λmaxでの第1吸光度値を第1時点について測定する工程、λmaxでの第2吸光度値を第2時点について測定する工程、ならびに第1および第2吸光度値を比較する工程を含み、ここで、第1および第2吸光度値の差は第1試薬と第2試薬との複合体を示す。好ましくは、第1時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最初の期間内にあり、第2時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最後の期間内にある。
【0048】
本発明の他の態様において、前記方法は、試薬インテグリティーの少なくとも1つの測定を得る工程をさらに含み、ここで、該少なくとも1つの測定は、非特異的シグナルを示す。「試薬インテグリティー」は、特定の試薬について標準範囲の値内にあると予想される、試薬または試薬の混合物の特徴または特性、例えば、吸光度、温度、色などを指す。「非特異的シグナル」は、第2試薬への第1試薬の結合に起因しない、吸光度値または吸光度値の変化を指す。非特異的シグナルとしては、第1試薬および/または第2試薬と相互作用するサンプル中の成分、光吸収の検出および測定における機器誤差、または検出可能な存在物もしくは検出可能な存在物を検出する手段(例えば、光源)に起因する複雑化から生じるシグナルが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0049】
一態様において、少なくとも1つの測定は、第1試薬と第2試薬との混合の初期時点での参照波長での透過率値を測定する工程;および、該透過率値と所定の限度値とを比較する工程を含む。所定の限度値は、多数の反応からの参照波長での透過率値に基づき得る。
【0050】
別の態様において、少なくとも1つの測定は、第1試薬と第2試薬との混合の初期時点でのλmaxに対応する波長での最大吸光度値を測定する工程;および、最大吸光度と所定の吸光度上限値または所定の吸光度下限値とを比較する工程を含む。ある態様において、所定の吸光度上限値および吸光度下限値は、特定の機器についての検出の最大および最小の限度に基づき得る。
【0051】
本発明のなお別の態様において、前記方法は次の工程を含む:第1試薬と第2試薬との混合のための初期反応期間中の複数の時点について、第1波長での吸光度値の1つの第1グループを測定する工程、該複数の時点について、第2波長での吸光度値の1つの第2グループを測定する工程であって、前記第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および、吸光度値の前記第1グループの平均値と吸光度値の前記第2グループの平均値とを比較する工程であって、該吸光度平均値の比較が、第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示す、工程。吸光度値の前記第1グループの平均値と吸光度値の前記第2グループの平均値とを比較する工程は、任意の好適な数学的比較および/または計算、例えば、比率、相違スコア、ランキングなどを含み得る。一態様において、吸光度平均値を比較する工程は、吸光度値の第2グループに対する、吸光度値の第1グループの平均比率を求める工程を含む。
【0052】
本発明はまた、第1試薬と第2試薬との複合体が形成されたかどうかを決定するために上述のような光吸収スペクトルから得られた反応速度データまたは吸光度値を分析するためのアルゴリズムを包含する。ロジック番号1と呼ばれる、第1アルゴリズムは、第1および第2試薬の高反応性の条件において使用される。第2アルゴリズムであるロジック番号2は、第1および第2試薬の間に低い反応性が存在し、等吸収点が光吸収スペクトルにおいて同定され得る場合に、特に有用である。第3アルゴリズムであるロジック番号3は、等吸収点が光吸収スペクトルから測定され得ない場合の低い反応性条件について、特に有用である。アルゴリズムの各々は、独立してまたは組み合わせて使用され得る。例えば、第1アルゴリズムを実行した後に陰性結果の結論が下される場合、第2アルゴリズムが、偽陰性の可能性を排除するために使用され得る。同様に、第2アルゴリズムから得られた陽性結果を確認するために、第3アルゴリズムが使用され得る。
【0053】
いくつかの分析オプションが、第1アルゴリズム(ロジック番号1)下で利用可能である。一態様において、第1および第2の反応速度変化の合計が、第1の所定の閾値と比較される。別の態様において、第3および第4の反応速度変化の合計に対する第1および第2の反応速度変化の合計の比率が、第2の所定の閾値と比較される。別の態様において、第1および第2の反応速度変化の合計が、第1の所定の閾値と比較され、第3および第4の反応速度変化の合計に対する第1および第2の反応速度変化の合計の比率が、第2の所定の閾値と比較され、ここで、第1の所定の閾値および第2の所定の閾値との比較は、複合体の存在または非存在を示す。
【0054】
閾値は、陰性サンプルまたは対照溶液から発生される最大シグナルから決定され得る。閾値は、アッセイの不精密さ(imprecision)を考慮するように、さらに調節され得る。計算された合計および/または比率がその対応の所定の閾値を超過する場合、サンプルは「陽性」である。「陽性」サンプルは、複合体が第1および第2試薬の間で検出されたことを意味する。計算された合計および/または比率が所定の閾値に等しいかまたは所定の閾値未満である場合、サンプルは「陰性」である。「陰性」サンプルは第1試薬と第2試薬との複合体が検出されなかったことを意味する。生物学的サンプル中の分析物を検出するための第1アルゴリズムの使用例を、実施例2に示す。
【0055】
前述したように、第2アルゴリズム(ロジック番号2)は、2つの試薬間の反応性が比較的低い場合に、第1試薬と第2試薬との複合体の存在を検出するために有用である。一態様において、前記方法は、第1試薬と第2試薬とを混合するための反応期間の複数の時点について、第1波長での反応速度変化の、ある第1グループを測定する工程、該複数の時点について、第2波長での反応速度変化の、ある第2グループを測定する工程を含み、ここで、第1波長は光吸収波長領域内にあり、第2波長は散乱波長領域内にあり、反応速度変化の第1グループの積分または反応速度変化の第2グループの積分は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す。反応速度変化の第1グループの積分および/または反応速度変化の第2グループの積分は、所定の閾値と比較され得る。
【0056】
第1アルゴリズムと同様に、閾値は、陰性サンプルまたは対照サンプルから測定され得、さらに、測定の不精密さを考慮するように調節され得る。反応速度変化の第1グループの積分または第2グループの反応速度変化の積分が所定の閾値を超過する場合、サンプルは陽性と報告される。積分値が所定の閾値に等しいかまたは所定の閾値未満である場合、サンプルは陰性と報告される。
【0057】
一態様において、反応速度変化の第1グループは、第1波長に対応する吸光度値の第1セット、および参照波長に対応する参照吸光度値に基づいて決定され、一方、反応速度変化の第2グループは、第2波長に対応する吸光度値の第2セット、および該参照吸光度値に基づいて決定される。ある態様において、参照波長は、等吸収点に対応する波長である。
【0058】
別の態様において、反応速度変化の第1グループは、第1波長に対応する吸光度値の第1セットから、第1波長での対照サンプルの吸光度値を差し引くことによって決定され、反応速度変化の第2グループは、第2波長に対応する吸光度値の第2セットから、第2波長での対照サンプルの吸光度値を差し引くことによって決定される。
【0059】
別の態様において、反応速度変化の第1グループは、第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される。
【0060】
なお別の態様において、反応速度変化の第1グループは、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、反応期間中の第1時点での第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される。
【0061】
さらに別の態様において、反応速度変化の第1グループは、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、反応期間中の該第1点での第2波長に対応する吸光度値に基づいて標準化される。
【0062】
第3アルゴリズム(ロジック番号3)は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在を測定するために、散乱領域中の第2波長での吸光度値に対する、光吸収領域中の第1波長での吸光度値の比率を使用する。このアルゴリズムは、等吸収点が光吸収スペクトルから同定され得ない場合、および第1試薬と第2試薬との反応性が低い場合に、特に有用である。一態様において、前記方法は、次の工程を含む:第1試薬と第2試薬との混合のための初期反応期間中の複数の時点について、第1波長での吸光度値の1つの第1グループを測定する工程、該複数の時点について、第2波長での吸光度値の1つの第2グループを測定する工程であって、前記第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および、吸光度値の前記第2グループに対する、吸光度値の前記第1グループの平均比率を求める工程であって、吸光度値の平均比率の変化が第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示す、工程。平均比率は、所定の閾値またはカットオフ値と比較され得る。
【0063】
第1および第2アルゴリズムについて記載したように、閾値は、陰性サンプルまたは対照サンプルから測定され得、さらに、測定の不精密さを考慮するように調節され得る。ある態様において、吸光度値の第2グループに対する、吸光度値の第1グループの平均比率が閾値レベル未満であり、ここで、吸光度値の前記第1グループが光吸収領域中の波長におけるものであり、吸光度値の前記第2グループが散乱領域中の波長におけるものである場合、サンプルは陽性と報告される。他の態様において、吸光度値の第1グループに対する、吸光度値の第2グループの平均比率が閾値レベルを超え、ここで、吸光度値の第2グループが散乱領域中の波長におけるものであり、吸光度値の第1グループが光吸収領域中の波長におけるものである場合、サンプルは陽性と報告される。
【0064】
一態様において、平均比率は、所定の比率上限値または所定の比率下限値と比較される。所定の比率上限値および比率下限値は、陰性対照サンプル、例えば、第2試薬(例えば、検出可能な存在物)のみを含有するもの、または高濃度の第1および第2試薬を含有するサンプルからの吸光度値によって決定され得る。例として、陰性対照サンプルは、検出抗体へ結合された金ナノ粒子のみを含有し得、一方、陽性対照サンプルは、検出抗体によって結合されている高濃度の抗原を含有し得る。
【0065】
別の態様において、吸光度値の第1グループは、前記複数の時点の各々について、第1波長での対照吸光度値の1つの第1グループに基づいて調節され、吸光度値の第2グループは、前記複数の時点の各々について、第2波長での対照吸光度値の1つの第2グループに基づいて調節される。「対照吸光度値」は、対照溶液または対照サンプルから得られ得る。
【0066】
「対照溶液」または「対照サンプル」は、「バックグラウンド」の読み取り、または非分析物が原因となるシグナルに関連する読み取り値を提供する溶液またはサンプルであり得る。例えば、対照溶液またはサンプルは、第1試薬、第2試薬、または両方を除く、反応の全ての成分を含有する混合物であり得る。あるいは、対照サンプルは、サンプルのみを含み、しかしいかなる反応試薬またはバッファーも含まない、「ブランクサンプル」であり得る。さらに、対照サンプルは、第1試薬、第2試薬、または両方が存在しない、試験されるサンプルを含有するバッファーであり得る。対照溶液または対照サンプルはまた、反応の残りの成分を全く含まない、第1試薬または第2試薬のみを含有する溶液であり得る。場合によっては、対照溶液または対照サンプルは、空の反応容器(例えば、空のキュベット)であり得る。他の態様において、対照溶液または対照サンプルは、検出可能な存在物のみが存在する、光学的ブランクであり得る。
【0067】
本明細書に記載される方法のいずれもが、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定するために使用され得る。このような方法は、サンプル中の分析物の近似量を測定することについて特に有用であり、これは、ある医学的状態を診断するためまたは薬物療法の効能を評価するために特に使用され得る。一態様において、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程は、既知量の複合体を含むサンプルについて本明細書に記載の方法に従って反応速度および/または吸光度比率を測定することによって、特定の複合体についての標準曲線を確立する工程;テストサンプルについて反応速度および/または吸光度比率を測定する工程;ならびに、テストサンプルについての反応速度および/または吸光度比率と標準曲線について得られた値とを比較し、それによって第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程を含む。ある態様において、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程は、テストサンプルからの吸光度比率および/または反応速度と、既知量の複合体を含む1つのサンプルからの吸光度比率および/または反応速度とを比較し、それによってテストサンプル中の複合体の量を測定する工程を含む。テストサンプルから得られた定量値は、所定の閾値と比較され得、ここで、該所定の閾値は、複合体(例えば、サンプル中の分析物)の異常または正常レベルのいずれかを示す。
【0068】
異なる波長での吸光度値を測定するための種々の手段が、当技術分野において周知である。任意の分光測光または測光機器が、本開示の方法における使用に好適である。いくつかの非限定的な例としては、プレートリーダー、Cobas Fara分析器、およびPiccolo(登録商標)xpress分析器、Vetscan、光ファイバーリーダー、遠心分析器、Olympus、Hitachi製などが挙げられる。本発明の方法における使用に必要とされる全ての計算は、吸光度データを得るために使用される機器に組み込まれたソフトウェアまたは独立したソフトウェアによって実行され得る。
【0069】
ある態様において、第1試薬は、生物学的サンプル中の分析物である。従って、本発明は、血液、血漿、血清、尿、胆汁、脳脊髄液、および唾液などの、生物学的サンプル中の分析物の存在を検出する方法を包含する。別の態様において、第2試薬は、第1試薬へ特異的に結合する存在物である。別の態様において、第2試薬は、分析物へ特異的に結合する抗体である。さらに別の態様において、第2試薬は、検出可能な存在物へ結合された抗体である。
【0070】
いくつかの異なるタイプの分析物、特に、疾患の診断において重要であるものが、本発明の方法で検出され得る。分析物のタイプのいくつかの例としては、タンパク質(例えば、ホルモン、酵素)、糖タンパク質、ペプチド、小分子、多糖類、抗体、核酸、薬物、毒素、ウイルス、ウイルス粒子、および細胞壁の一部が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のある態様において、分析物の存在または非存在は、動物またはヒト中の疾患または感染症の存在または非存在を予想する。いくつかの疾患、例えば、イヌ単球性エーリキア症、ライム病、アナプラズマ病、インフルエンザ、およびレジオネラ症が、本明細書に示される検出方法を使用して診断され得る。このような分析物のいくつかの非限定的な例としては、糸状虫、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、ネコ白血病ウイルス、パルボウイルス、A型およびB型インフルエンザウイルス株、トリインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レジオネラ菌、アデノウイルス、A群連鎖球菌、ならびに動物またはヒトにおいて疾患を引き起こすことが公知の他の細菌またはウイルスのエピトープが挙げられる。任意の抗原/抗体複合体が、本発明の方法を用いて生物学的サンプル中において検出され得る。
【0071】
本発明はまた、同時に多数の分析物の検出を意図する。別個の光吸収および散乱波長領域が、各タイプの結合パートナーへの結合について異なる金属から構成されたナノ粒子または異なるサイズのナノ粒子を使用することによって、各分析物の検出について得られ得る。下記の非限定的な例は、可能な一態様を示す。第1分析物を認識する第1抗体が、銀ナノ粒子へ結合され、第2分析物を認識する第2抗体が、金ナノ粒子へ結合される。第1抗体についての最大光吸収波長は、電磁スペクトルの紫外/青色領域内にあり(例えば、350 nm〜450 nm)、一方、第2抗体についての最大光吸収波長は、515 nm〜560 nmの範囲内にある。異なる波長および種々の時点での多数の測定は、試薬とバックグラウンド成分との非特異的相互作用に起因するシグナルを排除しつつ、第1抗体と第1分析物とのおよび/または第2抗体と第2分析物との特異的結合複合体の形成を検出することを可能にする。金属ナノ粒子および金属ナノシェルの組み合わせはまた、分析物のセットの検出についての光吸収および散乱波長領域を選択するための検出可能な存在物として使用され得る。
【0072】
あるいは、多数の分析物は、別個の分析物についての結合パートナーを含む複数の反応容器の各々について多数の波長および時点での吸光度値を測定することによって、同時に検出され得る。例として、第1反応容器は、第1分析物を分析するための検出可能な存在物へ結合された第1結合パートナーを含み得、第2反応容器は、第2分析物を分析するための検出可能な存在物へ結合された第2結合パートナーを含み得、ここで、第1および第2分析物は相違する。反応容器の各々の中の異なる結合パートナーへ結合された検出可能な存在物は、同一であり得、またはそれらは異なり得る。同時に検出され得る分析物の数は、吸光度をモニタリングする機器中に収容され得る反応容器の数によってのみ制限される。
【実施例】
【0073】
実施例1−均質イヌ糸状虫アッセイ
抗糸状虫抗体を、Capricorn Products、Custom MonoclonalsおよびICL labsなどのいくつかの供給源から入手した。糸状虫として一般的に公知の、ジロフィラリア・イミティス(Dirofilaria immitis)に対するIgG、IgM、IgY抗体を使用し、金ナノ粒子をコーティングした。標準技術を使用する受動的吸着によって、コロイド金粒子(直径37 nm)を抗糸状虫抗体でコーティングした。単純なフォーマットの典型的なアッセイを、金結合体、バッファー、塩化ナトリウムおよび高分子ポリエチレングリコールを混合することによって設定した。0、223または445μg/Lの精製糸状虫抗原(Capricorn Products)との10分間のインキュベーション後に得た金結合体のスペクトルを、図1に示す。
【0074】
0μg/Lについて、530 nmでの非常に鋭く狭いピークは、結合体がほぼ単分散されたことを示唆した。抗原濃度が増加するにつれて、散乱ピーク(600 nm)の付随する増加を伴って、530 nmでの吸光度ピークは減少した。このようなペクトルの重要な特徴は、種々の濃度の糸状虫抗原によって作製されたスペクトル曲線が、550 nmで交差し、等吸収点が生じたことであった。
【0075】
金−抗体結合体の、糸状虫抗原とのインキュベーション後の正味のスペクトル変化のプロットは、分析物を含まないものと陽性サンプルとを識別することにおいて、顕著により有益であることがわかった。図2に示されるように、光吸収および散乱領域中における反応速度変化は、等吸収点を参照した場合、非常に明確である。等吸収点の吸光度変化は、単にゾル粒子濃度の関数であるようである。
【0076】
本発明者らが観察した別の興味深い特徴は、反応速度が、反応の開始時において一般的に遥かにより早く、経時的に先細りになったことであった(図3)。このようなデータの数値的な操作によって、初期速度および最終速度の比率は、陰性サンプルと分析物含有サンプルとの差を最大化することをさらに助けるという驚くべき発見が得られた。糸状虫抗原と共に金抗体結合体をインキュベートした2、8、および13分後の反応スペクトルを、図3に示す。405 nmでの第2吸光度ピークは、恐らく、サンプルからの溶血に起因する。図4は、2つの時間間隔の間の速度比較を示す:t=2〜8分、およびt=8〜13分。散乱領域(>550 nm)中における反応速度は、反応の後期で明らかにより遅くなった。
【0077】
実施例2−分析物と結合体との反応性が高い場合に陽性サンプルを同定するためのアルゴリズム−ロジック番号1
結合体に対して顕著な反応性を示すサンプルについて、下記のロジックが適用され得る。初期および最終速度を、光吸収(515および550 nm)および散乱(600および630 nm)領域において計算する。顕著なシグナルが高陽性サンプルから発生されるので、定性決定が、全ての初期速度を単に加算することによって容易になされる。追加的または択一的に、速度比率が、陰性サンプルと高陽性サンプルとを識別するために、比較され得る。閾値は、陰性サンプルから発生された最大シグナルによって決定され得、次いで、アッセイの不精密さによってさらに調節され得る。アルゴリズム(ロジック番号1)は、下記のフローチャートによって記載される。
【0078】
図5および6は、陽性および陰性イヌ糸状虫(CHW)サンプル間の、それぞれ、第1速度合計および速度比率比較を示す。これらの実験についての閾値を、陰性サンプル中において観察された最大シグナル+実行間誤差(between-run error)の3つの標準偏差から確立した。表1は、ロジック番号1を使用してCHWについて陽性と同定されたサンプルの数を要約する。
【0079】
(表1)ロジック番号1のアルゴリズムを使用してCHWについて陽性と同定されたサンプルの要約
【0080】
表1に要約された結果によって示されるように、抗原と結合体との間に高反応性が観察された場合、陽性サンプルの大部分が同定され得た。
【0081】
実施例3−分析物と結合体との反応性が低い場合に陽性サンプルを同定するためのアルゴリズム−ロジック番号2
サンプルおよび/または結合体反応性が非常に低い場合、ロジック番号1を使用して陽性サンプルを同定することは困難である。例えば、図7は、サンプル経時変化に起因して非常に低い反応性および速度を示した陽性サンプルからの第1速度合計結果を示している。図7に示された結果から分かり得るように、陽性サンプルは、第1ロジックを使用して陰性サンプルから容易には識別されない。
【0082】
従って、本発明者らは、分析物と結合体との間に非常に低い反応性が存在する場合に使用される第2ロジックを開発した。凝集によって発生される特異的シグナルを定量するために、本発明者らは、参照波長として等吸収点を使用した。光吸収および散乱領域からの速度計算を、図8に示す。
【0083】
この第2ロジック(ロジック番号2)は、陰性および陽性シグナルを積分することを必要とし、下記のフローチャートによって示される。
【0084】
この実施例において、反応の間、13個の光吸収パスが存在する。図8に示されるように、等吸収点は550 nmにあり、光吸収および散乱波長領域は、それぞれ、515 nmおよび600 nmによって示される。
【0085】
所望の波長(例えば、光吸収および散乱波長)の各々でのイヌ糸状虫サンプル(CHW)の反応速度からサンプルバッファー(SB)の反応速度を差し引くことによって、バックグラウンドサンプルカラーを、まず、ブランクにする。次いで、各光吸収パスを、第1パスに対して標準化する。各光吸収パスと第1パスとの間の絶対デルタ変化を計算する。次いで、反応の間の全ての絶対デルタ変化を合計することによって、最終シグナルを計算する。
【0086】
515/550(光吸収波長/等吸収点)についてのアルゴリズムを、陰性および陽性サンプルについて図9に示す。影付きの領域は、与えられたパスによって得られた最大シグナル変化を示す。従って、第2ロジックは、これらの影付きの領域を積分する単純な方法を基本的に記載する。ロジック番号2は、ロジック番号1と併用して、または独立したロジックとして使用され得る。非常に高い反応性条件において、シグナルは、出発光学密度(第1パス)に対する標準化によって顕著に増幅される。
【0087】
ロジック番号2を使用して光吸収スペクトルを分析することによって、アッセイの感度は大いに改善される。この改善された感度は、陰性および陽性イヌ糸状虫サンプルについての、光吸収波長領域(515/550)中における反応速度についての標準化されたデルタの合計と、散乱波長領域(600/550)中における反応速度についての標準化されたデルタの合計との相関によって示される(図10)。表2は、ロジック番号1を使用してCHWについて陽性と同定されたサンプルの数を要約する。表3は、ロジック番号2を使用してCHWについて陽性と同定されたサンプルの数を要約する。表2および3に記載される結果の比較によって、ロジック番号2が使用される場合、アッセイ感度が顕著に改善されることが示される。
【0088】
(表2)ロジック番号1のアルゴリズムを使用して陽性と同定されたサンプルの要約
*弱い結合体反応性
【0089】
(表3)ロジック番号2のアルゴリズムを使用して陽性と同定されたサンプルの要約
【0090】
図11および12は、同一のシグナル積分範囲下でシグナルを近似する2つの派生的な方法を示す。図11に示される方法は、反応が第1および最後速度によって一般的に記載され得る場合に使用され得る。図12に示される方法は、反応のインターリービング速度変化を追跡および合計する。
【0091】
実施例4−等吸収点が同定され得ない場合に陽性サンプルを同定するためのアルゴリズム−ロジック番号3
この実施例は、金ナノ粒子結合体を使用してサンプル中の分析物(例えば、イヌ糸状虫)の存在を検出するための定性的アルゴリズムを提供する。このアルゴリズムは、等吸収点がスペクトルから決定することができず、かつロジック番号2(実施例3)に記載されるような反応速度変化を計算するために使用される場合に、特に有用である。この実施例におけるアルゴリズムは、コロイド金凝集から得られるスペクトル中において見られる2つの重要な特徴を利用する。図13において示されるように、分析物の存在(例えば、陽性反応)下で経時的に、吸光度ピークは広がり、吸光度最大値(ラムダ・マックス)は減少する。従って、光吸収率および/または吸光度ピーク広さの測定は、サンプル中の分析物との金ナノ粒子結合体の特異的結合を反映している。このアルゴリズムはまた、試薬のインテグリティー、ならびに偽陽性および偽陰性へ導く不精密な吸光度測定を防ぐための他の反応パラメータを評価するための、いくつかの測定を提供する。完全なアルゴリズムを示すフローチャートを、実施例の終わりに示す。
【0092】
このアルゴリズムにおいて、吸光度値は、テストサンプルおよび対照サンプル(例えば、サンプルブランク、サンプルバッファーのみ)について、参照波長(例えば、850 nm)と比べてスペクトルの光吸収領域(例えば、515 nm)および散乱領域(例えば、600 nm)中において測定される。最大吸光度値または吸光度ピークもまた、サンプルの各々について測定される(この実施例において550 nm)。好ましくは、吸光度は、吸光度ピークの上昇および下降段階内に入る波長で測定される。波長の各々での吸光度値を、反応の間、複数の時点で得てもよい。
【0093】
金ナノ粒子結合体の溶解(即ち、ビーズ溶解)は、反応の初期時点で850 nmでの透過率を測定することによって確認される。顕著な凝集反応において、850 nm吸光度は、図13に示されるように上昇し得、これは、テストサンプル中において850 nmでの透過率を減少させ得る。従って、850 nmでの透過率の初期値が、適切なビーズ溶解を確認するために所定の限度値と比較される。所定の限度値は、いくつかの反応から得られる850 nm透過率値に基づき得る。例えば、最近の研究からの最低の850 nm透過率値は、約0.6であった。金ナノ粒子−抗体結合体でのイヌ糸状虫抗原の検出のために、本発明者らは、他の分析物についての典型的なビーズ溶解限度よりも遥かに低い0.5に、ビーズ溶解限度(CHW_ビーズミックス_限度)を設定した。テストサンプル中において得られた850 nmでの透過率値がビーズ溶解限度(例えば、0.5)よりも高い場合、アルゴリズムは、「テスト・ビーズ・ミックス・エラー」を返し、金ナノ粒子結合体の不十分な溶解が反映される。アルゴリズムのこれらの初期計算を、実施例の終わりのフローチャート中において工程1〜3として示す。
【0094】
金粒子結合体の十分な濃度が反応混合物中に存在することを確実にするために、反応の初期時点(第1パス)で得られる測定波長(例えば、光吸収領域、散乱領域、およびλmax中)での吸光度値は、所定の吸光度の上限および下限と比較され得る。吸光度の上限は、吸光度を測定するために使用される機器の最大検出限度に基づき得る。この実施例において、本発明者らは、3.0の限度を使用し、これは、515/850、550/850および600/850について吸光度の上限(開始_abs_上限)として、光吸収スペクトルを得るために使用される分析器の光度計限度である。λmaxでの開始吸光度の下限は、光吸収スペクトルを得る機器の検出の最低レベルに基づき得る。例えば、550 nm(ラムダ・マックスに近い)での吸光度の下限は、最小結合体濃度を確実にするために0.5に設定される。任意の測定波長(例えば、光吸収領域、散乱領域、およびλmax中)での初期吸光度値が開始吸光度の上限を超過する場合、アルゴリズムは、「開始吸光度不適当」エラーメッセージを返し、結合体濃度が高すぎることを示す。同様に、λmaxでの初期吸光度の読み取り値が開始吸光度の下限未満である場合、アルゴリズムは、同一のエラーメッセージを返し、結合体濃度が低すぎることを示す。これらの測定を、下記のフローチャート中において工程4〜6として示す。
【0095】
吸光度の読み取りと干渉し得る高濃度の1つまたは複数の成分を有するサンプルを排除するために、追加の限度が決定され得る。例えば、サンプルブランクの吸光度に基づく計算は、このような限度を決定するために使用され得る。対照サンプル(例えば、サンプルのみ、サンプルブランク)について得られた光吸収および散乱領域中の波長での初期吸光度測定値は、これらの限度の1つまたは複数と比較され得る。初期吸光度測定値がこれらの所定の限度を超過する場合、アルゴリズムは、サンプルがこれらの干渉成分の1つまたは複数を高濃度で含有することを示すエラーメッセージを返す(下記のフローチャート中の工程7を参照のこと)。
【0096】
比率計算
図14Aに示されるように、本発明者らは、イヌ糸状虫について陰性の84個の異なるサンプル間の見かけのピーク高さ変動を観察した。この変動は、分注誤差、ビーズ質量損失、またはサンプル成分への非特異的吸着/沈殿に起因し得る。吸光度変動が偽凝集に起因するかどうかを測定するために、本発明者らは550 nm(λmax)に対して各実行の吸光度ODを標準化した。結果を図14Bに示す。標準化されたスペクトルは、陰性サンプル間で優れた一貫性を示し、このことは、これらの陰性サンプル中においてピーク広がりまたは凝集は生じないことを示唆している。
【0097】
図15Aは、種々の糸状虫抗原濃度についての標準化された光吸収スペクトルを示す。515 nmおよび600 nmでの標準化された吸光度値は、抗原濃度が増加するにつれて、反対の傾向を示した。具体的には、515 nmでの吸光度は、抗原濃度の増加に伴って減少し、一方、600 nmでの吸光度は増加した。従って、515 nmと600 nmとの波長比率は、イヌ糸状虫(CHW)抗原の存在下で減少する。図15Bは、種々の濃度のCHW抗原を含有するサンプルについての経時での515/600比率を示す。前記比率は、反応の始まりにおいても最も影響を受けやすい。従って、515および600 nm間の比率の最初の5つのパスの平均値が、結合体凝集、従ってサンプル中の抗原の存在を評価するために使用され得る。あるいは、515 nmでの吸光度に対する600 nmでの吸光度の比率が使用され得る。この場合、波長比率は、CHW抗原の存在下で増加する。
【0098】
アルゴリズム中における次のシリーズの工程は、光吸収領域中の波長(例えば、515 nm)での光吸収に対する散乱領域中の波長(例えば、600 nm)での吸光度の比率の計算、およびこの比率とカットオフ値または閾値との比較を必要とする。比率カットオフ値は、陰性サンプルの集団または希釈された抗原(虫抽出物)対照によって確立され得、これらは、アッセイシグナル感度カットオフを示す。テストサンプルについての計算された比率が比率カットオフ値を超過する場合、アルゴリズムは、「陽性」結果を報告する(下記のフローチャート中の工程9〜13を参照のこと)。
【0099】
誤った比率結果についてのエラートラップもまた確立され得る。理論的には、波長比率(515 nm/600 nm)は、ネイティブな結合体試薬を上回らないべきである。図16Aは、SA Scientific製の9個の異なる金ナノ粒子結合体バッチを比較する。515 nm/600 nmの比率は、2.0〜2.3に及んだ。従って、この実施例において、波長比率上限(CHW_比率_上限)は2.5に設定される。600 nm/515 nmの比率が515 nm/600 nmの比率の代わりに使用される場合、上述のものと同様の分析が、波長比率下限を確立するために使用され得る。
【0100】
515 nm/600 nm比率についての比率下限は、非常に高い抗原濃度で得られた比率値に基づき得る。例えば、図16Bは、異なる虫抽出物希釈物での吸光度比率の用量応答を示す。非常に高い抗原濃度で(1:100希釈)、比率は、一般的に横ばい状態に達する。従って、本発明者らは、波長比率下限(CHW_比率_下限)を1.0に設定した。再び、515 nmでの吸光度に対する600 nmでの吸光度の比率が使用される場合、用量応答データの分析が、波長比率上限を確立するために使用され得る。テストサンプルについて測定された波長比率が、波長比率上限を超えるかまたは波長比率下限未満である場合、アルゴリズムは、比率エラーメッセージを返す。下記フローチャート中の工程10および11を参照のこと。
【0101】
速度計算
ロジック1および2について上述したような光吸収領域(例えば、515 nm)中および散乱領域(例えば、600 nm)中の波長での光吸収率または反応速度(例えば、反応時間にわたる吸光度の変化)はまた、結合体凝集、従って抗原の存在を評価するために、比率計算と併用して使用され得る。515 nmおよび600 nmについての光吸収時間経過を、それぞれ、図17AおよびBに示す。吸光度は、一般的に、サンプルの吸光度が測定されるローターに適用される遠心力に起因して経時的に減少する。反応線形性は、非常に高い抗原濃度で悪化する(緑色の線)。測定された負の光吸収率の値は、値に「-1」を掛けることによって正の値へ変換され得る。
【0102】
アルゴリズム中の最終シリーズの工程は、抗原の存在を測定するために波長の各々での反応速度を使用する(工程14〜18を参照のこと)。反応速度は、515 nmおよび600 nmの両方ついてパス1〜13間の傾きを計算することによって測定される。ダイナミック・ウインドウ・スイッチングが、反応の最も線形の部分を同定するために使用され得る。図18は、種々の糸状虫抽出物希釈物での2つの波長での用量応答比較を示す。
【0103】
各波長についてのカットオフ速度または閾値速度は、希釈された虫抽出物対照または陰性サンプルの集団によって確立され得、これらは、アッセイシグナル感度カットオフを示す。負の反応速度を使用する場合、反応速度がいずれかの波長のカットオフ速度未満であるならば、アルゴリズムは「陽性」結果を報告する。あるいは、正の反応速度を使用する場合、反応速度がいずれかの波長のカットオフ速度を超えるならば、アルゴリズムは「陽性」結果を報告する。
【0104】
一般的な反応傾向は、各波長での速度限度を確立することによって確認され得る。SA金ナノ粒子結合体について、本発明者らは、速度限度(CHW_速度_限度)を0に設定する。
【0105】
機器間変動を最小限にするための光学的ブランクの追加
上述の波長比率測定はサンプル中の抗原の存在を検出するために鋭敏な感度を提供するが、それはまた、分析器間の微妙な光学的差異の影響を非常に受けやすかった。図19Aは、20個の異なる分析器からの2つの異なる抗原含有サンプル(P0およびP3)について得られたシグナル(例えば、調節された波長比率)を示す。有効な比較を確実にするために、波長比率を、異なる分析器にわたって光学キュベットから得られた平均値である絶対値0.407を差し引くことによって調節した。実験の目的は、各機器において試験された光学キュベットからの真の測定値との比較において機器ごとに変化しない所定のオフセット値を使用してアッセイ精度を実証することであった。各サンプルについて、各データポイントは、異なる分析器を示す。結果は、機器変動に起因する明らかな系統的バイアスを示している。
【0106】
この変動を修正するために、本発明者らは、光学的ブランク(Cuv 5)として結合体ビーズを単独で使用し、異なる機器間の変動を排除する、結合体波長比率を維持した。図19Bは、光学的ブランク結合体ビーズを使用した場合の20個の機器における結果を示している。光学的ブランクの使用がアッセイの精度および感度を改善することが、結果から明らかである。
【0107】
下記の表4は、金ナノ粒子結合抗体で生物学的サンプル中のイヌ糸状虫を検出するためのロジック番号3のアルゴリズムにおいて使用される、上述の異なるエラートラップについての限度値ならびにバーコード(BC)方程式を要約する。
【0108】
(表4)ロジック番号3のアルゴリズムについてのエラートラップ限度およびバーコード方程式
【0109】
完全なロジック番号3のアルゴリズムを、下記のフローチャートによって示す。
【0110】
【0111】
開示される本発明は、これらは変化し得るので、記載される特定の方法、プロトコルおよび材料に限定されないことが理解される。本明細書において使用される用語は、特定の態様を記載する目的のためのみであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも理解される。
【0112】
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様の多くの均等物を認識し、または日常的な実験を使用してこれらを確認することができる。このような均等物は、下記の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年3月20日に出願された、"Multi-Wavelength Analyses Of Sol-Particle Specific Binding Assays"という表題の、米国特許出願第61/038,324号;および2008年9月19日に出願された、"Multi-Wavelength Analyses Of Sol-Particle Specific Binding Assays"という表題の、米国特許出願第61/098,417号に対する優先権を主張する。これらの出願の内容は、全ての目的について、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
溶液、特に、生物学的流体中の分析物の正確な検出は、医学診断学、獣医学診断学、ならびに食品および医薬品安全性を含む、いくつかの分野において重要である。血液、血漿、血清、尿、および胆汁などの複雑な生物学的サンプルの固有の濁度ために、多数の分析物についての信頼できるアッセイおよびデバイスを開発することが困難であった。マトリックス関連干渉ならびに生体コロイドによる光の散乱は、分析物の、主に濁度に制限される高感度の測定を妨害する。
【0003】
分析物の検出のためのいくつかの現存するアッセイ方法は、抗体−抗原相互作用の使用を含む(例えば、イムノアッセイ)。これらのアッセイは、通常、放射性物質での抗体の標識(ラジオイムノアッセイ)、酵素への抗体の結合(酵素結合イムノソルベント検定法、即ち、ELISA)、または着色ラテックスまたは着色金属性ナノ粒子を使用した抗体の着色を含む。次いで、抗体−抗原複合体の検出が、標識の存在を決定すること(例えば、放射能を検出すること、連結された酵素の活性を測定すること、または色変化を観察すること)によってなされる。これらのアッセイは、以下の1つまたは複数の不利益を有する:(1)時間のかかる多数の分析工程を必要とする、(2)読み出しのために複雑で高価な機械を要する、(3)単一の分析物の検出に限定される、および(4)定性分析に限定される。従って、生物学的溶液中の1つまたは複数の分析物を検出するためのさらなる方法についての必要性が存在する。
【0004】
コロイダルゴールド試験が、1912年に、脳脊髄病理および肝機能障害を研究するために使用された。表面プラズモン共鳴(SPR)は、金属性ナノ粒子表面において生じる周知の現象である。前記現象は、ある角度で表面に入射光が入る場合の、金属表面の分子の厚みに起因する反射光の強度の段階的な減少を表す。
【0005】
局在表面プラズモン共鳴(LSPR)は、単分散ナノ粒子において観察される。それらの伝導電子の集団的な振動は、入射放射線の波長選択的な吸収および散乱を生じさせる。生物学的サンプルについてLSPRを使用することの欠点は、常に、非特異的反応に起因する干渉であった。従って、LSPRの鋭敏な感度を利用するが、非特異的相互作用からの干渉を最小化する、生物学的溶液中の分析物を検出するための方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、溶液、特に、生物学的サンプル中の、分析物またはその特異的結合パートナーを検出するための定性的および定量的方法を提供する。開示される分光学的方法は、分析物の存在および/または量を測定するために、コロイド状の金属標識された分析物または特異的結合パートナーのスペクトルの変化を利用する。本発明は、分析物とその特異的結合パートナーとの分子間相互作用を確認するための、選択された波長における概略的速度変化を使用するアルゴリズムをさらに提供する。
【0007】
ナノ粒子イムノアッセイを使用して、本発明者らは、驚くべきことに、1つまたは複数の波長での変化速度の測定、および必要に応じてアルゴリズムによるそれらのさらなる数値的な操作が、非特異的干渉の最小化を可能にし、従ってこのような方法の感度を実質的に改善することを発見した。
【0008】
本発明の方法は、複雑な生物学的媒体中の分析物の正確な測定を提供し、別個の分析物の検出に各々調整された多数の反応容器からの多数の測定値を使用して多数の分析物を同時に分析するように適合され得る。あるいは、多数の分析物が、いくつかの波長および時点での吸光度値をモニタリングすることによって同時に測定され得る。
【0009】
本発明は、混合物中における第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定するための方法を包含する。一態様において、前記方法は、第1試薬と第2試薬との混合時に、光吸収波長領域内の波長に対応する反応速度変化を測定する工程を含み、ここで、反応速度変化は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す。反応速度変化は、正または負であり得る。
【0010】
別の態様において、前記方法は、第1波長での第1反応速度変化、および第2波長での第2反応速度変化を測定する工程を含み、ここで、第1波長および第2波長は、光吸収波長領域内にあり、第1反応速度変化および第2反応速度変化は、複合体の存在または非存在を示す。
【0011】
なお別の態様において、前記方法は、第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を測定する工程を含み、ここで、第1波長は光吸収波長領域内にあり、第2波長は散乱波長領域内にあり、第1反応速度変化および第2反応速度変化は、複合体の存在または非存在を示す。
【0012】
ある態様において、第1波長および第2波長での反応速度変化は、異なる時点で測定され得る。第1時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最初の期間内にあり得る。第2時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最後の期間内にあり得る。
【0013】
他の態様において、第1波長での反応速度変化の1つのグループが、複数の時点について測定され、第2波長での反応速度変化の1つのグループが、複数の時点について測定され、ここで、反応速度変化の第1グループの積分または反応速度変化の第2グループの積分は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す。
【0014】
一部の態様において、反応速度変化は、参照波長に対応する吸光度値に関連して決定され得る。一態様において、参照波長は、第1試薬、第2試薬、および/またはそれらの複合体の光吸収または散乱に最小の干渉を有する波長である。別の態様において、参照波長は、等吸収点に対応する波長である。
【0015】
本発明の別の態様において、前記方法は、次の工程を含む:第1試薬と第2試薬との混合時に、第1波長での第1吸光度値および第2波長での第2吸光度値を測定する工程であって、該第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および、前記第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程であって、該値の比較が、前記第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示す、工程。ある態様において、第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程は、第2吸光度値に対する第1吸光度値の比率を測定する工程を含む。
【0016】
別の態様において、前記方法は、試薬インテグリティーの少なくとも1つの測定を得る工程をさらに含み、ここで、該少なくとも1つの測定は、非特異的シグナルを示す。試薬インテグリティーの測定は、第1試薬と第2試薬との混合の初期時点について、参照波長での透過率値、λmaxに対応する波長での最大吸光度値、またはそれらの組み合わせを測定する工程を含み得る。このような測定値は、所定の限度値と比較され得る。
【0017】
本発明は、光吸収スペクトルから得られた反応速度データを分析し、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定するための、アルゴリズムをさらに提供する。一態様において、前記アルゴリズムは、第1および第2の反応速度変化の合計を算出する。別の態様において、前記アルゴリズムは、第3および第4の反応速度変化の合計に対する第1および第2の反応速度変化の合計の比率を算出する。
【0018】
一部の態様において、前記アルゴリズムは、反応速度変化の合計または反応速度変化の合計の比率と所定の閾値とを比較する。ある態様において、前記アルゴリズムは、第1波長での反応速度変化の、ある第1グループを積分し、該積分と所定の閾値とを比較する。
【0019】
他の態様において、前記アルゴリズムは、第2波長での反応速度変化の、ある第2グループを積分し、該積分と所定の閾値とを比較する。一態様において、反応速度変化の第1グループは、第1波長に対応する吸光度値の第1セットから、第1波長での対照サンプルの吸光度値を差し引くことによって決定され、反応速度変化の第2グループは、第2波長に対応する吸光度値の第2セットから、第2波長での対照サンプルの吸光度値を差し引くことによって決定される。別の態様において、反応速度変化の第1グループは、第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される。
【0020】
別の態様において、反応速度変化の第1グループは、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、反応期間中の第1時点での第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される。
【0021】
別の態様において、反応速度変化の第1グループは、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、反応期間中の該第1点での第2波長に対応する吸光度値に基づいて標準化される。
【0022】
一部の態様において、前記アルゴリズムは、吸光度値の1つの第2グループに対する、吸光度値の1つの第1グループの平均比率を計算し、ここで、吸光度値の該第1グループは、第1試薬と第2試薬との混合のための初期反応期間中の複数の時点について第1波長で測定され、吸光度値の該第2グループは、該複数の時点について第2波長で測定され、第1波長は光吸収波長領域内にあり、第2波長は散乱波長領域内にある。前記平均比率は、所定の閾値と比較され得る。別の態様において、前記平均比率は、所定の上限値および下限値と比較される。
【0023】
別の態様において、吸光度値の第1グループは、前記複数の時点の各々について、第1波長での対照吸光度値の1つの第1グループに基づいて調節され、吸光度値の第2グループは、前記複数の時点の各々について、第2波長での対照吸光度値の1つの第2グループに基づいて調節される。対照吸光度値は、対照サンプルまたは対照溶液、例えば、光学的なおよびサンプルのブランクから測定される。
【0024】
なお別の態様において、本発明の方法は、混合物中における第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定する工程を含み、ここで、第1試薬は生物学的サンプル中の分析物である。ある態様において、第2試薬は、第1試薬へ特異的に結合する存在物(entity)である。他の態様において、第2試薬は、分析物へ特異的に結合する抗体である。
【0025】
本発明の一態様において、第1または第2試薬は、検出可能な存在物へ結合されている。検出可能な存在物は、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、複合粒子、金中空球体、金コーティングシリカナノシェル、およびシリカコーティングゴールドシェルを含む、金属ナノ粒子または金属ナノシェルであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】0、223、または445μg/Lの精製糸状虫抗原の存在下での、抗糸状虫抗体でコーティングされた金ナノ粒子の光吸収スペクトル。
【図2】異なる濃度の糸状虫抗原の存在および非存在下での、抗糸状虫抗体コーティングナノ粒子間の得られた吸光度差を示す正味の光吸収スペクトル。
【図3】金−抗体結合体と糸状虫抗原とのインキュベーション後の異なる時点(2、8、および13分)からの光吸収スペクトル。
【図4】金−抗体結合体と糸状虫抗原との反応における2つの異なる時間間隔(2〜8分および8〜13分)についての速度スペクトル。
【図5】陰性および陽性のイヌ糸状虫サンプルについてのロジック番号1に従って計算された初期速度の合計。点線は閾値レベルを示す。
【図6】陰性および陽性のイヌ糸状虫サンプルについてのロジック番号1に従って計算された速度比率。点線は閾値レベルを示す。
【図7】低反応性条件下での陰性および陽性のイヌ糸状虫サンプルについてロジック番号1に従って計算された初期速度の合計。点線は閾値レベルを示す。
【図8】凝集特異的シグナルについての速度計算および等吸収点を示す、金−抗体結合体と糸状虫抗原とのインキュベーション後の異なる時点(2、8、および13分)からの吸収スペクトル。
【図9】イヌ糸状虫の陰性および陽性のサンプルについてのロジック番号2に従うシグナル積分を示す。
【図10】陰性および陽性のイヌ糸状虫サンプルについての、光吸収波長(515/550)での反応速度についての標準化されたデルタ合計と、散乱波長(600/550)での反応速度についての標準化されたデルタ合計との相関。標準化されたデルタ合計を、ロジック番号2に従って計算した。
【図11】第1および最後の速度の合計を使用して反応スペクトルを分析する代替法を示す。
【図12】インターリービング速度の合計を使用して反応スペクトルを分析する第2の代替法を示す。
【図13】反応における異なる時点(0、5、および10分)での精製糸状虫抗原の存在下での、抗糸状虫抗体でコーティングされた金ナノ粒子の光吸収スペクトル。反応の進行に伴う、λmaxでのピーク吸光度の減少および吸光度ピークの広がりに注意のこと。
【図14】A.イヌ糸状虫について陰性の84個の異なるサンプルについての光吸収スペクトル。B.Aにおけるのと同一のサンプルについての標準化された光吸収スペクトル。各波長での吸光度を550 nm(λmax)での吸光度に対して標準化した。
【図15】A.種々の糸状虫抗原濃度についての標準化された光吸収スペクトル。各波長での吸光度を550 nm(λmax)での吸光度に対して標準化した。B.600 nmでの吸光度に対する515 nmでの吸光度の比率を、種々の糸状虫抗原濃度を含有するサンプルについて反応時間(パス数)に対してプロットする。
【図16】A.イヌ糸状虫について陰性のサンプルと混合された、9個の異なる金ナノ粒子結合体についての光吸収スペクトル。結合体の各々についての600 nmでの吸光度に対する515 nmでの吸光度の比率を、挿入部分内に示す。B.600 nmでの吸光度に対する515 nmでの吸光度の比率を、糸状虫抗原濃度(希釈比率として表される)に対してプロットする。高い抗原濃度(1:100)で、比率は、横ばい状態に達し始める。
【図17】異なる濃度の糸状虫抗原の存在下における515 nm(A)または600 nm(B)での反応時間に対する金ナノ粒子結合体の吸光度の変化のプロット。青色の線は陰性血漿サンプルを示し、赤色の線は低い抗原濃度を示し、緑色の線は高い抗原濃度を示す。
【図18】515 nm(菱形)または600 nm(三角形)での糸状虫抗原濃度(希釈比率として表される)に対してプロットされた反応速度。
【図19】A.20個の異なる分析器において測定された2つの異なる抗原含有サンプル(P0およびP3)の存在下における金ナノ粒子結合体の光吸収シグナル。各データポイントは、異なる分析器を示す。B.光学的ブランク(金ナノ粒子結合体のみ−サンプル無し)の吸光度について修正されたAにおいて示されるような光吸収シグナル。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を検出するための方法を提供する。これらの方法は、既知の分子の結合パートナーを同定するためならびに溶液中の特定の分析物を検出するために使用され得る。特に、本発明の方法は、複雑な生物学的溶液中の分析物の正確で高感度の検出の問題に対する解決法を提示する。
【0028】
本発明の方法は、単分散金属ナノ粒子において観察される局在表面プラズモン共鳴の現象を利用する。特定の分析物の検出は、関心対象の分析物の結合パートナーへ結合された金属ナノ粒子の光吸収スペクトルからの反応速度変化を測定することによって達成される。非特異的結合は、多数の波長での反応速度を測定することによって排除され得る。
【0029】
いくつかのタイプの複合体が、第1試薬または第2試薬のいずれかを検出可能な存在物、例えば、金属ナノ粒子へ結合することにより、本発明の方法を使用することによって、検出および定量され得る。第1試薬は、溶液中の分析物であり得、一方、第2試薬は、その分析物を特異的に認識する結合パートナーまたは存在物である。例えば、分析物は抗原であり得、結合パートナーは、その特定の抗原に対する抗体であり得る。検出され得る複合体の他の例としては、DNA/DNA、DNA/RNA、RNA/RNA、核酸/タンパク質、および受容体/リガンド複合体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一態様において、抗原/抗体複合体が検出され、ここで、第2試薬は、検出可能な存在物へ結合された抗体である。
【0030】
「検出可能な存在物」は、紫外線、可視光線、近赤外線電磁スペクトル中において波長選択的吸収を示し、入射放射線を散乱させる、存在物である。本発明の方法における使用に好適な検出可能な存在物としては、金属性ナノ粒子および金属ナノシェルが挙げられる。第1試薬または第2試薬のいずれかへ結合され得る種々のタイプの金属ナノ粒子としては、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、複合粒子、および金中空球体が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第6,699,724号に記載されるような金属ナノシェルもまた、標識粒子として使用され得る。金属ナノシェルは、規定のコア半径対シェル厚み比を有する、誘電性コアと金属性コーティングとから構成される粒子である。コアは、二酸化ケイ素、硫化金、二酸化チタンおよびポリスチレンを含む、種々の材料から構成され得る。シェルについての好適な金属としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、鉛および鉄が挙げられる。金コーティングシリカナノシェルまたはシリカコーティングゴールドシェルが、ある態様において好ましい。
【0031】
粒子の光学特性は、粒径に大きく依存する。固体金粒子について、最大光吸収波長(λmax)は、粒度に依存して約515 nm〜約560 nmである。30 nm直径を有する金粒子は、約520 nmで最大に吸収し、粒径が増加するにつれてλmaxはより長い波長へシフトする。銀および銅粒子は、紫外/青色または赤色領域(例えば、約350 nm〜約500 nm)においてλmaxを有し、粒径が増加することによって、λmaxがより長い波長へシフトする。約10 nm〜約100 nmの直径を有する金属性ナノ粒子が好ましい。
【0032】
ナノシェルの場合、コア半径対シェル厚み比はまた、粒子の光学共鳴を規定する。例えば、金コーティングシリカナノシェルについて、コア半径対シェル厚み比の減少は、λmaxをより短い波長へシフトさせる。本発明の方法における使用に好適なナノシェルは、典型的に、約1 nm〜約4μmの範囲のコア直径および約1 nm〜約100 nmの範囲のシェル厚みを有する。
【0033】
金属ナノ粒子または金属ナノシェルを高分子へ結合する方法は、当技術分野において周知である。1つの可能性のある方法は、受動的吸着による。この方法は、金属コロイド溶液のpHを、標識されるタンパク質が正電荷を有するpHへを調節すること、金属コロイド溶液とタンパク質溶液とを混合すること、および得られた混合物を遠心分離することを含む。次いで、上澄みを除去し、沈殿物を再溶解することによって、標識されたタンパク質が得られる。高分子を金属ナノ粒子またはナノシェルへ結合する他の方法は、当業者に公知であり、当業者は、使用される所望のナノ粒子のタイプおよび標識される高分子のタイプに基づいて、適切な方法を選択し得る。
【0034】
本明細書に開示される方法は、検出可能な存在物へカップリングされた結合パートナーへの分析物の結合時のスペクトルシフトを促進する任意の薬剤と共の使用について好適である。このような薬剤としては、種々のタイプのポリマー、例えば、PEG、PVA(ポリビニルアルコール)、およびPVP(ポリビニルピロリドン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明は、混合物中における第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定するための方法を提供する。一態様において、前記方法は、第1試薬と第2試薬との混合時に、光吸収波長領域内の波長に対応する反応速度変化を測定する工程を含み、ここで、反応速度変化は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す。
【0036】
反応速度変化は、例えば、検出が第1試薬と第2試薬との複合体の増加または減少に向けられるかどうかに依存して、正または負であり得る。ある態様において、第1試薬と第2試薬との間で形成される複合体の増加が検出され得る;例えば、それを試薬から分離することなどのさらなる処理のない複合体の直接的検出。このような検出は、通常、複合体の増加に関連する正の速度変化を生じさせる。ある態様において、第1試薬と第2試薬との間で形成される複合体の減少が検出され得る。例えば、例えば遠心力などによって、試薬から複合体の一部または全部を分離した後に、複合体の減少または「消滅」が検出され得る。このような検出は、通常、複合体の減少に関連する負の速度変化を生じさせる。正または負のどちらの反応速度変化も、種々の反応条件下での第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示すために使用され得る。
【0037】
別の態様において、前記方法は、第2波長での第2反応速度変化を測定する工程をさらに含み、ここで、第2波長は光吸収波長領域内にあり、第1および第2の反応速度変化は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す。
【0038】
さらに別の態様において、第1波長は光吸収波長領域中にあり、第2波長は散乱波長領域中にあり、第1および第2の反応速度変化は、複合体の存在または非存在を示す。
【0039】
光吸収および散乱波長領域は、第1または第2試薬へ結合された検出可能な存在物のタイプによって決定される。上述したように、異なる金属性ナノ粒子またはナノシェルは、それらのサイズおよび組成に基づいて異なる光学特性を示す。光吸収波長領域は、約280 nm〜約550 nmであり得る。散乱波長領域は、約550 nm〜約800 nmであり得る。各々の選択された金属粒子結合体についての正確な光吸収および散乱波長領域は、当業者によって容易に測定される。
【0040】
反応速度変化は、光吸収および/または散乱波長領域内の選択された波長での吸光度値ならびに参照波長での吸光度値を測定することによって計算され得る。参照波長は、第1試薬、第2試薬、および/またはそれらの複合体の光吸収または散乱に最小の干渉を有する波長である。従って、参照波長での吸光度値は、第1試薬、第2試薬、または第1試薬と第2試薬との複合体の存在によって影響されず、非特異的相互作用または光源の揺動に起因する光吸収または散乱を排除するために使用され得る。
【0041】
一態様において、参照波長は、電磁スペクトルの可視部の外の波長である(即ち、700 nmを超える)。別の態様において、参照波長は850 nmである。なお別の態様において、参照波長は、等吸収点に対応する波長である。
【0042】
「等吸収点」は、2つまたはそれ以上の種が同一の吸光率を有する特定の波長である。反応が沈殿または分子構造崩壊を引き起こさない限り、等吸収点に対応する波長での反応混合物の吸光度は、反応の過程にわたって変化しない。
【0043】
本発明の別の態様によれば、前記方法は、第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を第1時点について測定する工程、第1波長での第3反応速度変化および第2波長での第4反応速度変化を第2時点について測定する工程を含み、前記第1および第2の波長は、光吸収波長領域内にあり、第1、第2、第3、および第4の反応速度変化は、複合体の存在または非存在を示す。一態様において、前記第1および第3反応速度変化は第1波長で測定され、前記第2および第4反応速度変化は第2波長で測定され、ここで、第1波長は光吸収波長領域内にあり、第2波長は散乱領域内にある。
【0044】
別の態様において、第1時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最初の期間内にあり、第2時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最後の期間内にある。第1時点は、第1試薬と第2試薬との混合時の、約30秒、約1分、約2分、約3分、約4分、または約5分であり得る。第2時点は、第1試薬と第2試薬との混合時の、約4分、約6分、約8分、約10分、または約12分であり得る。
【0045】
本発明のある態様において、前記方法は、次の工程を含む:第1試薬と第2試薬との混合時に、第1波長での第1吸光度値および第2波長での第2吸光度値を測定する工程であって、該第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および、前記第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程であって、該値の比較が、前記第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示す、工程。
【0046】
第1吸光度値と第2吸光度値との比較は、第2吸光度値に対する第1吸光度値の比率、第1および第2吸光度値の差を測定すること、または任意の他の好適な数学的計算および/または比較を含み得る。一態様において、第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程は、第2吸光度値に対する第1吸光度値の比率を測定する工程を含む。
【0047】
第1および第2吸光度値は、本明細書に記載されるように参照波長に相対的に求められ得る。一態様において、第1および第2吸光度値は、λmaxに対応する波長での最大吸光度値に対して標準化される。ある物質についての最大吸光度またはピーク吸光度は、λmax波長で生じる。ピーク吸光度またはλmaxでの吸光度の変化は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示し得る。従って、本発明の別の態様において、前記方法は、λmaxでの第1吸光度値を第1時点について測定する工程、λmaxでの第2吸光度値を第2時点について測定する工程、ならびに第1および第2吸光度値を比較する工程を含み、ここで、第1および第2吸光度値の差は第1試薬と第2試薬との複合体を示す。好ましくは、第1時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最初の期間内にあり、第2時点は、第1試薬と第2試薬との混合の最後の期間内にある。
【0048】
本発明の他の態様において、前記方法は、試薬インテグリティーの少なくとも1つの測定を得る工程をさらに含み、ここで、該少なくとも1つの測定は、非特異的シグナルを示す。「試薬インテグリティー」は、特定の試薬について標準範囲の値内にあると予想される、試薬または試薬の混合物の特徴または特性、例えば、吸光度、温度、色などを指す。「非特異的シグナル」は、第2試薬への第1試薬の結合に起因しない、吸光度値または吸光度値の変化を指す。非特異的シグナルとしては、第1試薬および/または第2試薬と相互作用するサンプル中の成分、光吸収の検出および測定における機器誤差、または検出可能な存在物もしくは検出可能な存在物を検出する手段(例えば、光源)に起因する複雑化から生じるシグナルが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0049】
一態様において、少なくとも1つの測定は、第1試薬と第2試薬との混合の初期時点での参照波長での透過率値を測定する工程;および、該透過率値と所定の限度値とを比較する工程を含む。所定の限度値は、多数の反応からの参照波長での透過率値に基づき得る。
【0050】
別の態様において、少なくとも1つの測定は、第1試薬と第2試薬との混合の初期時点でのλmaxに対応する波長での最大吸光度値を測定する工程;および、最大吸光度と所定の吸光度上限値または所定の吸光度下限値とを比較する工程を含む。ある態様において、所定の吸光度上限値および吸光度下限値は、特定の機器についての検出の最大および最小の限度に基づき得る。
【0051】
本発明のなお別の態様において、前記方法は次の工程を含む:第1試薬と第2試薬との混合のための初期反応期間中の複数の時点について、第1波長での吸光度値の1つの第1グループを測定する工程、該複数の時点について、第2波長での吸光度値の1つの第2グループを測定する工程であって、前記第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および、吸光度値の前記第1グループの平均値と吸光度値の前記第2グループの平均値とを比較する工程であって、該吸光度平均値の比較が、第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示す、工程。吸光度値の前記第1グループの平均値と吸光度値の前記第2グループの平均値とを比較する工程は、任意の好適な数学的比較および/または計算、例えば、比率、相違スコア、ランキングなどを含み得る。一態様において、吸光度平均値を比較する工程は、吸光度値の第2グループに対する、吸光度値の第1グループの平均比率を求める工程を含む。
【0052】
本発明はまた、第1試薬と第2試薬との複合体が形成されたかどうかを決定するために上述のような光吸収スペクトルから得られた反応速度データまたは吸光度値を分析するためのアルゴリズムを包含する。ロジック番号1と呼ばれる、第1アルゴリズムは、第1および第2試薬の高反応性の条件において使用される。第2アルゴリズムであるロジック番号2は、第1および第2試薬の間に低い反応性が存在し、等吸収点が光吸収スペクトルにおいて同定され得る場合に、特に有用である。第3アルゴリズムであるロジック番号3は、等吸収点が光吸収スペクトルから測定され得ない場合の低い反応性条件について、特に有用である。アルゴリズムの各々は、独立してまたは組み合わせて使用され得る。例えば、第1アルゴリズムを実行した後に陰性結果の結論が下される場合、第2アルゴリズムが、偽陰性の可能性を排除するために使用され得る。同様に、第2アルゴリズムから得られた陽性結果を確認するために、第3アルゴリズムが使用され得る。
【0053】
いくつかの分析オプションが、第1アルゴリズム(ロジック番号1)下で利用可能である。一態様において、第1および第2の反応速度変化の合計が、第1の所定の閾値と比較される。別の態様において、第3および第4の反応速度変化の合計に対する第1および第2の反応速度変化の合計の比率が、第2の所定の閾値と比較される。別の態様において、第1および第2の反応速度変化の合計が、第1の所定の閾値と比較され、第3および第4の反応速度変化の合計に対する第1および第2の反応速度変化の合計の比率が、第2の所定の閾値と比較され、ここで、第1の所定の閾値および第2の所定の閾値との比較は、複合体の存在または非存在を示す。
【0054】
閾値は、陰性サンプルまたは対照溶液から発生される最大シグナルから決定され得る。閾値は、アッセイの不精密さ(imprecision)を考慮するように、さらに調節され得る。計算された合計および/または比率がその対応の所定の閾値を超過する場合、サンプルは「陽性」である。「陽性」サンプルは、複合体が第1および第2試薬の間で検出されたことを意味する。計算された合計および/または比率が所定の閾値に等しいかまたは所定の閾値未満である場合、サンプルは「陰性」である。「陰性」サンプルは第1試薬と第2試薬との複合体が検出されなかったことを意味する。生物学的サンプル中の分析物を検出するための第1アルゴリズムの使用例を、実施例2に示す。
【0055】
前述したように、第2アルゴリズム(ロジック番号2)は、2つの試薬間の反応性が比較的低い場合に、第1試薬と第2試薬との複合体の存在を検出するために有用である。一態様において、前記方法は、第1試薬と第2試薬とを混合するための反応期間の複数の時点について、第1波長での反応速度変化の、ある第1グループを測定する工程、該複数の時点について、第2波長での反応速度変化の、ある第2グループを測定する工程を含み、ここで、第1波長は光吸収波長領域内にあり、第2波長は散乱波長領域内にあり、反応速度変化の第1グループの積分または反応速度変化の第2グループの積分は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す。反応速度変化の第1グループの積分および/または反応速度変化の第2グループの積分は、所定の閾値と比較され得る。
【0056】
第1アルゴリズムと同様に、閾値は、陰性サンプルまたは対照サンプルから測定され得、さらに、測定の不精密さを考慮するように調節され得る。反応速度変化の第1グループの積分または第2グループの反応速度変化の積分が所定の閾値を超過する場合、サンプルは陽性と報告される。積分値が所定の閾値に等しいかまたは所定の閾値未満である場合、サンプルは陰性と報告される。
【0057】
一態様において、反応速度変化の第1グループは、第1波長に対応する吸光度値の第1セット、および参照波長に対応する参照吸光度値に基づいて決定され、一方、反応速度変化の第2グループは、第2波長に対応する吸光度値の第2セット、および該参照吸光度値に基づいて決定される。ある態様において、参照波長は、等吸収点に対応する波長である。
【0058】
別の態様において、反応速度変化の第1グループは、第1波長に対応する吸光度値の第1セットから、第1波長での対照サンプルの吸光度値を差し引くことによって決定され、反応速度変化の第2グループは、第2波長に対応する吸光度値の第2セットから、第2波長での対照サンプルの吸光度値を差し引くことによって決定される。
【0059】
別の態様において、反応速度変化の第1グループは、第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される。
【0060】
なお別の態様において、反応速度変化の第1グループは、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、反応期間中の第1時点での第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される。
【0061】
さらに別の態様において、反応速度変化の第1グループは、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の第2グループは、反応期間中の該第1点での第2波長に対応する吸光度値に基づいて標準化される。
【0062】
第3アルゴリズム(ロジック番号3)は、第1試薬と第2試薬との複合体の存在を測定するために、散乱領域中の第2波長での吸光度値に対する、光吸収領域中の第1波長での吸光度値の比率を使用する。このアルゴリズムは、等吸収点が光吸収スペクトルから同定され得ない場合、および第1試薬と第2試薬との反応性が低い場合に、特に有用である。一態様において、前記方法は、次の工程を含む:第1試薬と第2試薬との混合のための初期反応期間中の複数の時点について、第1波長での吸光度値の1つの第1グループを測定する工程、該複数の時点について、第2波長での吸光度値の1つの第2グループを測定する工程であって、前記第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および、吸光度値の前記第2グループに対する、吸光度値の前記第1グループの平均比率を求める工程であって、吸光度値の平均比率の変化が第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示す、工程。平均比率は、所定の閾値またはカットオフ値と比較され得る。
【0063】
第1および第2アルゴリズムについて記載したように、閾値は、陰性サンプルまたは対照サンプルから測定され得、さらに、測定の不精密さを考慮するように調節され得る。ある態様において、吸光度値の第2グループに対する、吸光度値の第1グループの平均比率が閾値レベル未満であり、ここで、吸光度値の前記第1グループが光吸収領域中の波長におけるものであり、吸光度値の前記第2グループが散乱領域中の波長におけるものである場合、サンプルは陽性と報告される。他の態様において、吸光度値の第1グループに対する、吸光度値の第2グループの平均比率が閾値レベルを超え、ここで、吸光度値の第2グループが散乱領域中の波長におけるものであり、吸光度値の第1グループが光吸収領域中の波長におけるものである場合、サンプルは陽性と報告される。
【0064】
一態様において、平均比率は、所定の比率上限値または所定の比率下限値と比較される。所定の比率上限値および比率下限値は、陰性対照サンプル、例えば、第2試薬(例えば、検出可能な存在物)のみを含有するもの、または高濃度の第1および第2試薬を含有するサンプルからの吸光度値によって決定され得る。例として、陰性対照サンプルは、検出抗体へ結合された金ナノ粒子のみを含有し得、一方、陽性対照サンプルは、検出抗体によって結合されている高濃度の抗原を含有し得る。
【0065】
別の態様において、吸光度値の第1グループは、前記複数の時点の各々について、第1波長での対照吸光度値の1つの第1グループに基づいて調節され、吸光度値の第2グループは、前記複数の時点の各々について、第2波長での対照吸光度値の1つの第2グループに基づいて調節される。「対照吸光度値」は、対照溶液または対照サンプルから得られ得る。
【0066】
「対照溶液」または「対照サンプル」は、「バックグラウンド」の読み取り、または非分析物が原因となるシグナルに関連する読み取り値を提供する溶液またはサンプルであり得る。例えば、対照溶液またはサンプルは、第1試薬、第2試薬、または両方を除く、反応の全ての成分を含有する混合物であり得る。あるいは、対照サンプルは、サンプルのみを含み、しかしいかなる反応試薬またはバッファーも含まない、「ブランクサンプル」であり得る。さらに、対照サンプルは、第1試薬、第2試薬、または両方が存在しない、試験されるサンプルを含有するバッファーであり得る。対照溶液または対照サンプルはまた、反応の残りの成分を全く含まない、第1試薬または第2試薬のみを含有する溶液であり得る。場合によっては、対照溶液または対照サンプルは、空の反応容器(例えば、空のキュベット)であり得る。他の態様において、対照溶液または対照サンプルは、検出可能な存在物のみが存在する、光学的ブランクであり得る。
【0067】
本明細書に記載される方法のいずれもが、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定するために使用され得る。このような方法は、サンプル中の分析物の近似量を測定することについて特に有用であり、これは、ある医学的状態を診断するためまたは薬物療法の効能を評価するために特に使用され得る。一態様において、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程は、既知量の複合体を含むサンプルについて本明細書に記載の方法に従って反応速度および/または吸光度比率を測定することによって、特定の複合体についての標準曲線を確立する工程;テストサンプルについて反応速度および/または吸光度比率を測定する工程;ならびに、テストサンプルについての反応速度および/または吸光度比率と標準曲線について得られた値とを比較し、それによって第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程を含む。ある態様において、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程は、テストサンプルからの吸光度比率および/または反応速度と、既知量の複合体を含む1つのサンプルからの吸光度比率および/または反応速度とを比較し、それによってテストサンプル中の複合体の量を測定する工程を含む。テストサンプルから得られた定量値は、所定の閾値と比較され得、ここで、該所定の閾値は、複合体(例えば、サンプル中の分析物)の異常または正常レベルのいずれかを示す。
【0068】
異なる波長での吸光度値を測定するための種々の手段が、当技術分野において周知である。任意の分光測光または測光機器が、本開示の方法における使用に好適である。いくつかの非限定的な例としては、プレートリーダー、Cobas Fara分析器、およびPiccolo(登録商標)xpress分析器、Vetscan、光ファイバーリーダー、遠心分析器、Olympus、Hitachi製などが挙げられる。本発明の方法における使用に必要とされる全ての計算は、吸光度データを得るために使用される機器に組み込まれたソフトウェアまたは独立したソフトウェアによって実行され得る。
【0069】
ある態様において、第1試薬は、生物学的サンプル中の分析物である。従って、本発明は、血液、血漿、血清、尿、胆汁、脳脊髄液、および唾液などの、生物学的サンプル中の分析物の存在を検出する方法を包含する。別の態様において、第2試薬は、第1試薬へ特異的に結合する存在物である。別の態様において、第2試薬は、分析物へ特異的に結合する抗体である。さらに別の態様において、第2試薬は、検出可能な存在物へ結合された抗体である。
【0070】
いくつかの異なるタイプの分析物、特に、疾患の診断において重要であるものが、本発明の方法で検出され得る。分析物のタイプのいくつかの例としては、タンパク質(例えば、ホルモン、酵素)、糖タンパク質、ペプチド、小分子、多糖類、抗体、核酸、薬物、毒素、ウイルス、ウイルス粒子、および細胞壁の一部が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のある態様において、分析物の存在または非存在は、動物またはヒト中の疾患または感染症の存在または非存在を予想する。いくつかの疾患、例えば、イヌ単球性エーリキア症、ライム病、アナプラズマ病、インフルエンザ、およびレジオネラ症が、本明細書に示される検出方法を使用して診断され得る。このような分析物のいくつかの非限定的な例としては、糸状虫、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、ネコ白血病ウイルス、パルボウイルス、A型およびB型インフルエンザウイルス株、トリインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レジオネラ菌、アデノウイルス、A群連鎖球菌、ならびに動物またはヒトにおいて疾患を引き起こすことが公知の他の細菌またはウイルスのエピトープが挙げられる。任意の抗原/抗体複合体が、本発明の方法を用いて生物学的サンプル中において検出され得る。
【0071】
本発明はまた、同時に多数の分析物の検出を意図する。別個の光吸収および散乱波長領域が、各タイプの結合パートナーへの結合について異なる金属から構成されたナノ粒子または異なるサイズのナノ粒子を使用することによって、各分析物の検出について得られ得る。下記の非限定的な例は、可能な一態様を示す。第1分析物を認識する第1抗体が、銀ナノ粒子へ結合され、第2分析物を認識する第2抗体が、金ナノ粒子へ結合される。第1抗体についての最大光吸収波長は、電磁スペクトルの紫外/青色領域内にあり(例えば、350 nm〜450 nm)、一方、第2抗体についての最大光吸収波長は、515 nm〜560 nmの範囲内にある。異なる波長および種々の時点での多数の測定は、試薬とバックグラウンド成分との非特異的相互作用に起因するシグナルを排除しつつ、第1抗体と第1分析物とのおよび/または第2抗体と第2分析物との特異的結合複合体の形成を検出することを可能にする。金属ナノ粒子および金属ナノシェルの組み合わせはまた、分析物のセットの検出についての光吸収および散乱波長領域を選択するための検出可能な存在物として使用され得る。
【0072】
あるいは、多数の分析物は、別個の分析物についての結合パートナーを含む複数の反応容器の各々について多数の波長および時点での吸光度値を測定することによって、同時に検出され得る。例として、第1反応容器は、第1分析物を分析するための検出可能な存在物へ結合された第1結合パートナーを含み得、第2反応容器は、第2分析物を分析するための検出可能な存在物へ結合された第2結合パートナーを含み得、ここで、第1および第2分析物は相違する。反応容器の各々の中の異なる結合パートナーへ結合された検出可能な存在物は、同一であり得、またはそれらは異なり得る。同時に検出され得る分析物の数は、吸光度をモニタリングする機器中に収容され得る反応容器の数によってのみ制限される。
【実施例】
【0073】
実施例1−均質イヌ糸状虫アッセイ
抗糸状虫抗体を、Capricorn Products、Custom MonoclonalsおよびICL labsなどのいくつかの供給源から入手した。糸状虫として一般的に公知の、ジロフィラリア・イミティス(Dirofilaria immitis)に対するIgG、IgM、IgY抗体を使用し、金ナノ粒子をコーティングした。標準技術を使用する受動的吸着によって、コロイド金粒子(直径37 nm)を抗糸状虫抗体でコーティングした。単純なフォーマットの典型的なアッセイを、金結合体、バッファー、塩化ナトリウムおよび高分子ポリエチレングリコールを混合することによって設定した。0、223または445μg/Lの精製糸状虫抗原(Capricorn Products)との10分間のインキュベーション後に得た金結合体のスペクトルを、図1に示す。
【0074】
0μg/Lについて、530 nmでの非常に鋭く狭いピークは、結合体がほぼ単分散されたことを示唆した。抗原濃度が増加するにつれて、散乱ピーク(600 nm)の付随する増加を伴って、530 nmでの吸光度ピークは減少した。このようなペクトルの重要な特徴は、種々の濃度の糸状虫抗原によって作製されたスペクトル曲線が、550 nmで交差し、等吸収点が生じたことであった。
【0075】
金−抗体結合体の、糸状虫抗原とのインキュベーション後の正味のスペクトル変化のプロットは、分析物を含まないものと陽性サンプルとを識別することにおいて、顕著により有益であることがわかった。図2に示されるように、光吸収および散乱領域中における反応速度変化は、等吸収点を参照した場合、非常に明確である。等吸収点の吸光度変化は、単にゾル粒子濃度の関数であるようである。
【0076】
本発明者らが観察した別の興味深い特徴は、反応速度が、反応の開始時において一般的に遥かにより早く、経時的に先細りになったことであった(図3)。このようなデータの数値的な操作によって、初期速度および最終速度の比率は、陰性サンプルと分析物含有サンプルとの差を最大化することをさらに助けるという驚くべき発見が得られた。糸状虫抗原と共に金抗体結合体をインキュベートした2、8、および13分後の反応スペクトルを、図3に示す。405 nmでの第2吸光度ピークは、恐らく、サンプルからの溶血に起因する。図4は、2つの時間間隔の間の速度比較を示す:t=2〜8分、およびt=8〜13分。散乱領域(>550 nm)中における反応速度は、反応の後期で明らかにより遅くなった。
【0077】
実施例2−分析物と結合体との反応性が高い場合に陽性サンプルを同定するためのアルゴリズム−ロジック番号1
結合体に対して顕著な反応性を示すサンプルについて、下記のロジックが適用され得る。初期および最終速度を、光吸収(515および550 nm)および散乱(600および630 nm)領域において計算する。顕著なシグナルが高陽性サンプルから発生されるので、定性決定が、全ての初期速度を単に加算することによって容易になされる。追加的または択一的に、速度比率が、陰性サンプルと高陽性サンプルとを識別するために、比較され得る。閾値は、陰性サンプルから発生された最大シグナルによって決定され得、次いで、アッセイの不精密さによってさらに調節され得る。アルゴリズム(ロジック番号1)は、下記のフローチャートによって記載される。
【0078】
図5および6は、陽性および陰性イヌ糸状虫(CHW)サンプル間の、それぞれ、第1速度合計および速度比率比較を示す。これらの実験についての閾値を、陰性サンプル中において観察された最大シグナル+実行間誤差(between-run error)の3つの標準偏差から確立した。表1は、ロジック番号1を使用してCHWについて陽性と同定されたサンプルの数を要約する。
【0079】
(表1)ロジック番号1のアルゴリズムを使用してCHWについて陽性と同定されたサンプルの要約
【0080】
表1に要約された結果によって示されるように、抗原と結合体との間に高反応性が観察された場合、陽性サンプルの大部分が同定され得た。
【0081】
実施例3−分析物と結合体との反応性が低い場合に陽性サンプルを同定するためのアルゴリズム−ロジック番号2
サンプルおよび/または結合体反応性が非常に低い場合、ロジック番号1を使用して陽性サンプルを同定することは困難である。例えば、図7は、サンプル経時変化に起因して非常に低い反応性および速度を示した陽性サンプルからの第1速度合計結果を示している。図7に示された結果から分かり得るように、陽性サンプルは、第1ロジックを使用して陰性サンプルから容易には識別されない。
【0082】
従って、本発明者らは、分析物と結合体との間に非常に低い反応性が存在する場合に使用される第2ロジックを開発した。凝集によって発生される特異的シグナルを定量するために、本発明者らは、参照波長として等吸収点を使用した。光吸収および散乱領域からの速度計算を、図8に示す。
【0083】
この第2ロジック(ロジック番号2)は、陰性および陽性シグナルを積分することを必要とし、下記のフローチャートによって示される。
【0084】
この実施例において、反応の間、13個の光吸収パスが存在する。図8に示されるように、等吸収点は550 nmにあり、光吸収および散乱波長領域は、それぞれ、515 nmおよび600 nmによって示される。
【0085】
所望の波長(例えば、光吸収および散乱波長)の各々でのイヌ糸状虫サンプル(CHW)の反応速度からサンプルバッファー(SB)の反応速度を差し引くことによって、バックグラウンドサンプルカラーを、まず、ブランクにする。次いで、各光吸収パスを、第1パスに対して標準化する。各光吸収パスと第1パスとの間の絶対デルタ変化を計算する。次いで、反応の間の全ての絶対デルタ変化を合計することによって、最終シグナルを計算する。
【0086】
515/550(光吸収波長/等吸収点)についてのアルゴリズムを、陰性および陽性サンプルについて図9に示す。影付きの領域は、与えられたパスによって得られた最大シグナル変化を示す。従って、第2ロジックは、これらの影付きの領域を積分する単純な方法を基本的に記載する。ロジック番号2は、ロジック番号1と併用して、または独立したロジックとして使用され得る。非常に高い反応性条件において、シグナルは、出発光学密度(第1パス)に対する標準化によって顕著に増幅される。
【0087】
ロジック番号2を使用して光吸収スペクトルを分析することによって、アッセイの感度は大いに改善される。この改善された感度は、陰性および陽性イヌ糸状虫サンプルについての、光吸収波長領域(515/550)中における反応速度についての標準化されたデルタの合計と、散乱波長領域(600/550)中における反応速度についての標準化されたデルタの合計との相関によって示される(図10)。表2は、ロジック番号1を使用してCHWについて陽性と同定されたサンプルの数を要約する。表3は、ロジック番号2を使用してCHWについて陽性と同定されたサンプルの数を要約する。表2および3に記載される結果の比較によって、ロジック番号2が使用される場合、アッセイ感度が顕著に改善されることが示される。
【0088】
(表2)ロジック番号1のアルゴリズムを使用して陽性と同定されたサンプルの要約
*弱い結合体反応性
【0089】
(表3)ロジック番号2のアルゴリズムを使用して陽性と同定されたサンプルの要約
【0090】
図11および12は、同一のシグナル積分範囲下でシグナルを近似する2つの派生的な方法を示す。図11に示される方法は、反応が第1および最後速度によって一般的に記載され得る場合に使用され得る。図12に示される方法は、反応のインターリービング速度変化を追跡および合計する。
【0091】
実施例4−等吸収点が同定され得ない場合に陽性サンプルを同定するためのアルゴリズム−ロジック番号3
この実施例は、金ナノ粒子結合体を使用してサンプル中の分析物(例えば、イヌ糸状虫)の存在を検出するための定性的アルゴリズムを提供する。このアルゴリズムは、等吸収点がスペクトルから決定することができず、かつロジック番号2(実施例3)に記載されるような反応速度変化を計算するために使用される場合に、特に有用である。この実施例におけるアルゴリズムは、コロイド金凝集から得られるスペクトル中において見られる2つの重要な特徴を利用する。図13において示されるように、分析物の存在(例えば、陽性反応)下で経時的に、吸光度ピークは広がり、吸光度最大値(ラムダ・マックス)は減少する。従って、光吸収率および/または吸光度ピーク広さの測定は、サンプル中の分析物との金ナノ粒子結合体の特異的結合を反映している。このアルゴリズムはまた、試薬のインテグリティー、ならびに偽陽性および偽陰性へ導く不精密な吸光度測定を防ぐための他の反応パラメータを評価するための、いくつかの測定を提供する。完全なアルゴリズムを示すフローチャートを、実施例の終わりに示す。
【0092】
このアルゴリズムにおいて、吸光度値は、テストサンプルおよび対照サンプル(例えば、サンプルブランク、サンプルバッファーのみ)について、参照波長(例えば、850 nm)と比べてスペクトルの光吸収領域(例えば、515 nm)および散乱領域(例えば、600 nm)中において測定される。最大吸光度値または吸光度ピークもまた、サンプルの各々について測定される(この実施例において550 nm)。好ましくは、吸光度は、吸光度ピークの上昇および下降段階内に入る波長で測定される。波長の各々での吸光度値を、反応の間、複数の時点で得てもよい。
【0093】
金ナノ粒子結合体の溶解(即ち、ビーズ溶解)は、反応の初期時点で850 nmでの透過率を測定することによって確認される。顕著な凝集反応において、850 nm吸光度は、図13に示されるように上昇し得、これは、テストサンプル中において850 nmでの透過率を減少させ得る。従って、850 nmでの透過率の初期値が、適切なビーズ溶解を確認するために所定の限度値と比較される。所定の限度値は、いくつかの反応から得られる850 nm透過率値に基づき得る。例えば、最近の研究からの最低の850 nm透過率値は、約0.6であった。金ナノ粒子−抗体結合体でのイヌ糸状虫抗原の検出のために、本発明者らは、他の分析物についての典型的なビーズ溶解限度よりも遥かに低い0.5に、ビーズ溶解限度(CHW_ビーズミックス_限度)を設定した。テストサンプル中において得られた850 nmでの透過率値がビーズ溶解限度(例えば、0.5)よりも高い場合、アルゴリズムは、「テスト・ビーズ・ミックス・エラー」を返し、金ナノ粒子結合体の不十分な溶解が反映される。アルゴリズムのこれらの初期計算を、実施例の終わりのフローチャート中において工程1〜3として示す。
【0094】
金粒子結合体の十分な濃度が反応混合物中に存在することを確実にするために、反応の初期時点(第1パス)で得られる測定波長(例えば、光吸収領域、散乱領域、およびλmax中)での吸光度値は、所定の吸光度の上限および下限と比較され得る。吸光度の上限は、吸光度を測定するために使用される機器の最大検出限度に基づき得る。この実施例において、本発明者らは、3.0の限度を使用し、これは、515/850、550/850および600/850について吸光度の上限(開始_abs_上限)として、光吸収スペクトルを得るために使用される分析器の光度計限度である。λmaxでの開始吸光度の下限は、光吸収スペクトルを得る機器の検出の最低レベルに基づき得る。例えば、550 nm(ラムダ・マックスに近い)での吸光度の下限は、最小結合体濃度を確実にするために0.5に設定される。任意の測定波長(例えば、光吸収領域、散乱領域、およびλmax中)での初期吸光度値が開始吸光度の上限を超過する場合、アルゴリズムは、「開始吸光度不適当」エラーメッセージを返し、結合体濃度が高すぎることを示す。同様に、λmaxでの初期吸光度の読み取り値が開始吸光度の下限未満である場合、アルゴリズムは、同一のエラーメッセージを返し、結合体濃度が低すぎることを示す。これらの測定を、下記のフローチャート中において工程4〜6として示す。
【0095】
吸光度の読み取りと干渉し得る高濃度の1つまたは複数の成分を有するサンプルを排除するために、追加の限度が決定され得る。例えば、サンプルブランクの吸光度に基づく計算は、このような限度を決定するために使用され得る。対照サンプル(例えば、サンプルのみ、サンプルブランク)について得られた光吸収および散乱領域中の波長での初期吸光度測定値は、これらの限度の1つまたは複数と比較され得る。初期吸光度測定値がこれらの所定の限度を超過する場合、アルゴリズムは、サンプルがこれらの干渉成分の1つまたは複数を高濃度で含有することを示すエラーメッセージを返す(下記のフローチャート中の工程7を参照のこと)。
【0096】
比率計算
図14Aに示されるように、本発明者らは、イヌ糸状虫について陰性の84個の異なるサンプル間の見かけのピーク高さ変動を観察した。この変動は、分注誤差、ビーズ質量損失、またはサンプル成分への非特異的吸着/沈殿に起因し得る。吸光度変動が偽凝集に起因するかどうかを測定するために、本発明者らは550 nm(λmax)に対して各実行の吸光度ODを標準化した。結果を図14Bに示す。標準化されたスペクトルは、陰性サンプル間で優れた一貫性を示し、このことは、これらの陰性サンプル中においてピーク広がりまたは凝集は生じないことを示唆している。
【0097】
図15Aは、種々の糸状虫抗原濃度についての標準化された光吸収スペクトルを示す。515 nmおよび600 nmでの標準化された吸光度値は、抗原濃度が増加するにつれて、反対の傾向を示した。具体的には、515 nmでの吸光度は、抗原濃度の増加に伴って減少し、一方、600 nmでの吸光度は増加した。従って、515 nmと600 nmとの波長比率は、イヌ糸状虫(CHW)抗原の存在下で減少する。図15Bは、種々の濃度のCHW抗原を含有するサンプルについての経時での515/600比率を示す。前記比率は、反応の始まりにおいても最も影響を受けやすい。従って、515および600 nm間の比率の最初の5つのパスの平均値が、結合体凝集、従ってサンプル中の抗原の存在を評価するために使用され得る。あるいは、515 nmでの吸光度に対する600 nmでの吸光度の比率が使用され得る。この場合、波長比率は、CHW抗原の存在下で増加する。
【0098】
アルゴリズム中における次のシリーズの工程は、光吸収領域中の波長(例えば、515 nm)での光吸収に対する散乱領域中の波長(例えば、600 nm)での吸光度の比率の計算、およびこの比率とカットオフ値または閾値との比較を必要とする。比率カットオフ値は、陰性サンプルの集団または希釈された抗原(虫抽出物)対照によって確立され得、これらは、アッセイシグナル感度カットオフを示す。テストサンプルについての計算された比率が比率カットオフ値を超過する場合、アルゴリズムは、「陽性」結果を報告する(下記のフローチャート中の工程9〜13を参照のこと)。
【0099】
誤った比率結果についてのエラートラップもまた確立され得る。理論的には、波長比率(515 nm/600 nm)は、ネイティブな結合体試薬を上回らないべきである。図16Aは、SA Scientific製の9個の異なる金ナノ粒子結合体バッチを比較する。515 nm/600 nmの比率は、2.0〜2.3に及んだ。従って、この実施例において、波長比率上限(CHW_比率_上限)は2.5に設定される。600 nm/515 nmの比率が515 nm/600 nmの比率の代わりに使用される場合、上述のものと同様の分析が、波長比率下限を確立するために使用され得る。
【0100】
515 nm/600 nm比率についての比率下限は、非常に高い抗原濃度で得られた比率値に基づき得る。例えば、図16Bは、異なる虫抽出物希釈物での吸光度比率の用量応答を示す。非常に高い抗原濃度で(1:100希釈)、比率は、一般的に横ばい状態に達する。従って、本発明者らは、波長比率下限(CHW_比率_下限)を1.0に設定した。再び、515 nmでの吸光度に対する600 nmでの吸光度の比率が使用される場合、用量応答データの分析が、波長比率上限を確立するために使用され得る。テストサンプルについて測定された波長比率が、波長比率上限を超えるかまたは波長比率下限未満である場合、アルゴリズムは、比率エラーメッセージを返す。下記フローチャート中の工程10および11を参照のこと。
【0101】
速度計算
ロジック1および2について上述したような光吸収領域(例えば、515 nm)中および散乱領域(例えば、600 nm)中の波長での光吸収率または反応速度(例えば、反応時間にわたる吸光度の変化)はまた、結合体凝集、従って抗原の存在を評価するために、比率計算と併用して使用され得る。515 nmおよび600 nmについての光吸収時間経過を、それぞれ、図17AおよびBに示す。吸光度は、一般的に、サンプルの吸光度が測定されるローターに適用される遠心力に起因して経時的に減少する。反応線形性は、非常に高い抗原濃度で悪化する(緑色の線)。測定された負の光吸収率の値は、値に「-1」を掛けることによって正の値へ変換され得る。
【0102】
アルゴリズム中の最終シリーズの工程は、抗原の存在を測定するために波長の各々での反応速度を使用する(工程14〜18を参照のこと)。反応速度は、515 nmおよび600 nmの両方ついてパス1〜13間の傾きを計算することによって測定される。ダイナミック・ウインドウ・スイッチングが、反応の最も線形の部分を同定するために使用され得る。図18は、種々の糸状虫抽出物希釈物での2つの波長での用量応答比較を示す。
【0103】
各波長についてのカットオフ速度または閾値速度は、希釈された虫抽出物対照または陰性サンプルの集団によって確立され得、これらは、アッセイシグナル感度カットオフを示す。負の反応速度を使用する場合、反応速度がいずれかの波長のカットオフ速度未満であるならば、アルゴリズムは「陽性」結果を報告する。あるいは、正の反応速度を使用する場合、反応速度がいずれかの波長のカットオフ速度を超えるならば、アルゴリズムは「陽性」結果を報告する。
【0104】
一般的な反応傾向は、各波長での速度限度を確立することによって確認され得る。SA金ナノ粒子結合体について、本発明者らは、速度限度(CHW_速度_限度)を0に設定する。
【0105】
機器間変動を最小限にするための光学的ブランクの追加
上述の波長比率測定はサンプル中の抗原の存在を検出するために鋭敏な感度を提供するが、それはまた、分析器間の微妙な光学的差異の影響を非常に受けやすかった。図19Aは、20個の異なる分析器からの2つの異なる抗原含有サンプル(P0およびP3)について得られたシグナル(例えば、調節された波長比率)を示す。有効な比較を確実にするために、波長比率を、異なる分析器にわたって光学キュベットから得られた平均値である絶対値0.407を差し引くことによって調節した。実験の目的は、各機器において試験された光学キュベットからの真の測定値との比較において機器ごとに変化しない所定のオフセット値を使用してアッセイ精度を実証することであった。各サンプルについて、各データポイントは、異なる分析器を示す。結果は、機器変動に起因する明らかな系統的バイアスを示している。
【0106】
この変動を修正するために、本発明者らは、光学的ブランク(Cuv 5)として結合体ビーズを単独で使用し、異なる機器間の変動を排除する、結合体波長比率を維持した。図19Bは、光学的ブランク結合体ビーズを使用した場合の20個の機器における結果を示している。光学的ブランクの使用がアッセイの精度および感度を改善することが、結果から明らかである。
【0107】
下記の表4は、金ナノ粒子結合抗体で生物学的サンプル中のイヌ糸状虫を検出するためのロジック番号3のアルゴリズムにおいて使用される、上述の異なるエラートラップについての限度値ならびにバーコード(BC)方程式を要約する。
【0108】
(表4)ロジック番号3のアルゴリズムについてのエラートラップ限度およびバーコード方程式
【0109】
完全なロジック番号3のアルゴリズムを、下記のフローチャートによって示す。
【0110】
【0111】
開示される本発明は、これらは変化し得るので、記載される特定の方法、プロトコルおよび材料に限定されないことが理解される。本明細書において使用される用語は、特定の態様を記載する目的のためのみであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも理解される。
【0112】
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様の多くの均等物を認識し、または日常的な実験を使用してこれらを確認することができる。このような均等物は、下記の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1試薬と第2試薬との混合時に、光吸収波長領域内の波長に対応する反応速度変化を測定する工程
を含む方法であって、
前記反応速度変化が、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す、
混合物中における第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定するための方法。
【請求項2】
第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を測定する工程
を含む方法であって、
前記第1波長および第2波長が、光吸収波長領域内にあり、かつ
前記第1反応速度変化および第2反応速度変化が、前記複合体の存在または非存在を示す、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を測定する工程
を含む方法であって、
前記第1波長が光吸収波長領域内にあり、前記第2波長が散乱波長領域内にあり、かつ
前記第1反応速度変化および第2反応速度変化が、前記複合体の存在または非存在を示す、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を第1時点について測定する工程、
前記第1波長での第3反応速度変化および前記第2波長での第4反応速度変化を第2時点について測定する工程
を含む方法であって、
前記第1および第2の波長が、光吸収波長領域内にあり、かつ
前記第1、第2、第3、および第4の反応速度変化が、前記複合体の存在または非存在を示す、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第1時点が、第1試薬と第2試薬との混合の最初の期間内にあり、前記第2時点が、第1試薬と第2試薬との混合の最後の期間内にある、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を第1時点について測定する工程、
第1波長での第3反応速度変化および第2波長での第4反応速度変化を第2時点について測定する工程
を含む方法であって、
前記第1波長が光吸収波長領域内にあり、前記第2波長が散乱波長領域内にあり、かつ
前記第1、第2、第3、および第4の反応速度変化が、前記複合体の存在または非存在を示す、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
第1および第2の反応速度変化の合計が、第1の所定の閾値と比較される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
第3および第4の反応速度変化の合計に対する第1および第2の反応速度変化の合計の比率が、第2の所定の閾値と比較される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の反応速度変化の合計が、第1の所定の閾値と比較され、前記第3および第4の反応速度変化の合計に対する第1および第2の反応速度変化の合計の比率が、第2の所定の閾値と比較され、該第1の所定の閾値および第2の所定の閾値との比較が、前記複合体の存在または非存在を示す、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記第1時点が、第1試薬と第2試薬との混合の最初の期間内にあり、前記第2時点が、第1試薬と第2試薬との混合の最後の期間内にある、請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記第1時点が、第1試薬と第2試薬との混合時の、0.5、1、2、3、4、または5分である、請求項6記載の方法。
【請求項12】
前記第2時点が、第1試薬と第2試薬との混合時の、4、6、8、10、または12分である、請求項6記載の方法。
【請求項13】
第1試薬と第2試薬とを混合するための反応期間の複数の時点について、第1波長での反応速度変化の、ある第1グループを測定する工程、
前記複数の時点について、第2波長での反応速度変化の、ある第2グループを測定する工程
を含む方法であって、
前記第1波長が光吸収波長領域内にあり、前記第2波長が散乱波長領域内にあり、
反応速度変化の前記第1グループの積分または反応速度変化の前記第2グループの積分が、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す、
請求項1記載の方法。
【請求項14】
反応速度変化の前記第1グループの積分が、所定の閾値と比較される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
反応速度変化の前記第2グループの積分が、所定の閾値と比較される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
反応速度変化の前記第1グループが、第1波長に対応する吸光度値の第1セット、および参照波長に対応する参照吸光度値に基づいて決定され、反応速度変化の前記第2グループが、第2波長に対応する吸光度値の第2セット、および該参照吸光度値に基づいて決定される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
参照波長が、等吸収点に対応する波長である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
反応速度変化の前記第1グループが、第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の前記第2グループが、第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される、請求項13記載の方法。
【請求項19】
反応速度変化の前記第1グループが、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の前記第2グループが、反応期間中の第1時点での第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される、請求項13記載の方法。
【請求項20】
反応速度変化の前記第1グループが、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の前記第2グループが、反応期間中の該第1点での第2波長に対応する吸光度値に基づいて標準化される、請求項13記載の方法。
【請求項21】
反応速度変化が、前記波長に対応する吸光度値、および参照波長に対応する参照吸光度値に基づいて決定される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
参照波長が、第1試薬、第2試薬、および/またはそれらの複合体の光吸収または散乱に最小の干渉を有する波長である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
参照波長が、等吸収点に対応する波長である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
第1反応速度変化が、第1波長に対応する第1吸光度値、および参照波長に対応する参照吸光度値に基づいて決定され、
第2反応速度変化が、第2波長に対応する第2吸光度値、および前記参照吸光度値に基づいて決定される、
請求項2または3記載の方法。
【請求項25】
第1反応速度変化が、第1波長に対応する第1吸光度値、および参照波長に対応する参照吸光度値に基づいて決定され、
第2反応速度変化が、第2波長に対応する吸光度値、および前記参照吸光度値に基づいて決定され、
第3反応速度変化が、第3波長に対応する第3吸光度値、および前記参照吸光度値に基づいて決定され、
第4反応速度変化が、第4波長に対応する第4吸光度値、および前記参照吸光度値に基づいて決定される、
請求項4または6記載の方法。
【請求項26】
光吸収波長領域が、約280 nm〜約550 nmである、請求項1記載の方法。
【請求項27】
散乱波長領域が、約550 nm〜約800 nmである、請求項3記載の方法。
【請求項28】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物であり、第2試薬が、第1試薬へ特異的に結合する存在物(entity)である、請求項1記載の方法。
【請求項30】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物であり、第2試薬が、第1試薬へ特異的に結合する抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項31】
第1試薬が、糸状虫、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、ネコ白血病ウイルス、パルボウイルス、A型インフルエンザ株、B型インフルエンザ株、トリインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レジオネラ菌、アデノウイルス、およびA群連鎖球菌のエピトープからなる群より選択される生物学的サンプル中の分析物である、請求項1記載の方法。
【請求項32】
第2試薬が、糸状虫、エーリキア・カニス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・アフゼリ、ボレリア・ガリニ、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム、ネコ白血病ウイルス、パルボウイルス、A型インフルエンザ株、B型インフルエンザ株、トリインフルエンザウイルス、合胞体ウイルス、レジオネラ菌、アデノウイルス、またはA群連鎖球菌のエピトープへ特異的に結合する抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項33】
第2試薬が、検出可能な存在物と結合された抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
検出可能な存在物が、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、複合粒子、金中空球体、金コーティングシリカナノシェル、およびシリカコーティングゴールドシェルからなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
反応速度変化が正である、請求項1記載の方法。
【請求項36】
反応速度変化が負である、請求項1記載の方法。
【請求項37】
第1試薬と第2試薬との混合時に、第1波長での第1吸光度値および第2波長での第2吸光度値を測定する工程であって、該第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および
前記第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程であって、該値の比較が、前記第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示す、工程
を含む、混合物中における第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定するための方法。
【請求項38】
前記第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程が、第2吸光度値に対する第1吸光度値の比率を求める工程を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記第1および第2の吸光度値が、参照波長での参照吸光度値に相対的に求められる、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記第1および第2の吸光度値が、λmaxに対応する波長での最大吸光度値に対して標準化される、請求項37記載の方法。
【請求項41】
試薬インテグリティーの少なくとも1つの測定を得る工程をさらに含む方法であって、該少なくとも1つの測定が、非特異的シグナルを示す、請求項37記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの測定が、第1試薬と第2試薬との混合の初期時点での、参照波長での透過率値を測定する工程;および、該透過率値と所定の限度値とを比較する工程を含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1つの測定が、第1試薬と第2試薬との混合の初期時点での、λmaxに対応する波長での最大吸光度値を測定する工程;および、最大吸光度と所定の吸光度上限値または所定の吸光度下限値とを比較する工程を含む、請求項41記載の方法。
【請求項44】
第1試薬と第2試薬との混合のための初期反応期間中の複数の時点について、第1波長での吸光度値の1つの第1グループを測定する工程、
前記複数の時点について、第2波長での吸光度値の1つの第2グループを測定する工程であって、該第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および
吸光度値の前記第1グループの平均値と吸光度値の前記第2グループの平均値とを比較する工程であって、該吸光度平均値の比較が、前記第1試薬と前記第2試薬との複合体の存在を示す、工程
を含む、請求項37記載の方法。
【請求項45】
吸光度平均値を比較する工程が、吸光度値の前記第2グループに対する、吸光度値の前記第1グループの平均比率を求める工程を含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
平均比率が所定の閾値と比較される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
平均比率が、所定の比率上限値または所定の比率下限値と比較される、請求項45記載の方法。
【請求項48】
吸光度値の前記第1グループが、前記複数の時点の各々について、第1波長での対照吸光度値の1つの第1グループに基づいて調節され、吸光度値の前記第2グループが、前記複数の時点の各々について、第2波長での対照吸光度値の1つの第2グループに基づいて調節される、請求項44記載の方法。
【請求項49】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物である、請求項37記載の方法。
【請求項50】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物であり、第2試薬が、第1試薬へ特異的に結合する存在物である、請求項37記載の方法。
【請求項51】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物であり、第2試薬が、第1試薬へ特異的に結合する抗体である、請求項37記載の方法。
【請求項52】
第1試薬が、糸状虫、エーリキア・カニス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・アフゼリ、ボレリア・ガリニ、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム、ネコ白血病ウイルス、パルボウイルス、A型インフルエンザ株、B型インフルエンザ株、トリインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レジオネラ菌、アデノウイルス、およびA群連鎖球菌のエピトープからなる群より選択される生物学的サンプル中の分析物である、請求項37記載の方法。
【請求項53】
第2試薬が、糸状虫、エーリキア・カニス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・アフゼリ、ボレリア・ガリニ、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム、ネコ白血病ウイルス、パルボウイルス、A型インフルエンザ株、B型インフルエンザ株、トリインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レジオネラ菌、アデノウイルス、またはA群連鎖球菌のエピトープへ特異的に結合する抗体である、請求項37記載の方法。
【請求項54】
第2試薬が、検出可能な存在物を有する抗体である、請求項37記載の方法。
【請求項55】
検出可能な存在物が、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、複合粒子、金中空球体、金コーティングシリカナノシェル、およびシリカコーティングゴールドシェルからなる群より選択される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
反応速度変化に基づいて第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項57】
第1反応速度変化および第2反応速度変化に基づいて、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項58】
第1、第2、第3、および第4の反応速度変化に基づいて、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項59】
反応速度変化の前記第1グループおよび反応速度変化の前記第2グループに基づいて、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項60】
第1吸光度値と第2吸光度値との比較に基づいて、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項61】
吸光度値の前記第1グループの平均値と吸光度値の前記第2グループの平均値との比較に基づいて、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項1】
第1試薬と第2試薬との混合時に、光吸収波長領域内の波長に対応する反応速度変化を測定する工程
を含む方法であって、
前記反応速度変化が、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す、
混合物中における第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定するための方法。
【請求項2】
第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を測定する工程
を含む方法であって、
前記第1波長および第2波長が、光吸収波長領域内にあり、かつ
前記第1反応速度変化および第2反応速度変化が、前記複合体の存在または非存在を示す、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を測定する工程
を含む方法であって、
前記第1波長が光吸収波長領域内にあり、前記第2波長が散乱波長領域内にあり、かつ
前記第1反応速度変化および第2反応速度変化が、前記複合体の存在または非存在を示す、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を第1時点について測定する工程、
前記第1波長での第3反応速度変化および前記第2波長での第4反応速度変化を第2時点について測定する工程
を含む方法であって、
前記第1および第2の波長が、光吸収波長領域内にあり、かつ
前記第1、第2、第3、および第4の反応速度変化が、前記複合体の存在または非存在を示す、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第1時点が、第1試薬と第2試薬との混合の最初の期間内にあり、前記第2時点が、第1試薬と第2試薬との混合の最後の期間内にある、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第1波長での第1反応速度変化および第2波長での第2反応速度変化を第1時点について測定する工程、
第1波長での第3反応速度変化および第2波長での第4反応速度変化を第2時点について測定する工程
を含む方法であって、
前記第1波長が光吸収波長領域内にあり、前記第2波長が散乱波長領域内にあり、かつ
前記第1、第2、第3、および第4の反応速度変化が、前記複合体の存在または非存在を示す、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
第1および第2の反応速度変化の合計が、第1の所定の閾値と比較される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
第3および第4の反応速度変化の合計に対する第1および第2の反応速度変化の合計の比率が、第2の所定の閾値と比較される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の反応速度変化の合計が、第1の所定の閾値と比較され、前記第3および第4の反応速度変化の合計に対する第1および第2の反応速度変化の合計の比率が、第2の所定の閾値と比較され、該第1の所定の閾値および第2の所定の閾値との比較が、前記複合体の存在または非存在を示す、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記第1時点が、第1試薬と第2試薬との混合の最初の期間内にあり、前記第2時点が、第1試薬と第2試薬との混合の最後の期間内にある、請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記第1時点が、第1試薬と第2試薬との混合時の、0.5、1、2、3、4、または5分である、請求項6記載の方法。
【請求項12】
前記第2時点が、第1試薬と第2試薬との混合時の、4、6、8、10、または12分である、請求項6記載の方法。
【請求項13】
第1試薬と第2試薬とを混合するための反応期間の複数の時点について、第1波長での反応速度変化の、ある第1グループを測定する工程、
前記複数の時点について、第2波長での反応速度変化の、ある第2グループを測定する工程
を含む方法であって、
前記第1波長が光吸収波長領域内にあり、前記第2波長が散乱波長領域内にあり、
反応速度変化の前記第1グループの積分または反応速度変化の前記第2グループの積分が、第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を示す、
請求項1記載の方法。
【請求項14】
反応速度変化の前記第1グループの積分が、所定の閾値と比較される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
反応速度変化の前記第2グループの積分が、所定の閾値と比較される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
反応速度変化の前記第1グループが、第1波長に対応する吸光度値の第1セット、および参照波長に対応する参照吸光度値に基づいて決定され、反応速度変化の前記第2グループが、第2波長に対応する吸光度値の第2セット、および該参照吸光度値に基づいて決定される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
参照波長が、等吸収点に対応する波長である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
反応速度変化の前記第1グループが、第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の前記第2グループが、第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される、請求項13記載の方法。
【請求項19】
反応速度変化の前記第1グループが、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の前記第2グループが、反応期間中の第1時点での第2波長に対応する対照サンプルの吸光度値に基づいて標準化される、請求項13記載の方法。
【請求項20】
反応速度変化の前記第1グループが、反応期間中の第1時点での第1波長に対応する吸光度値に基づいて標準化され、反応速度変化の前記第2グループが、反応期間中の該第1点での第2波長に対応する吸光度値に基づいて標準化される、請求項13記載の方法。
【請求項21】
反応速度変化が、前記波長に対応する吸光度値、および参照波長に対応する参照吸光度値に基づいて決定される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
参照波長が、第1試薬、第2試薬、および/またはそれらの複合体の光吸収または散乱に最小の干渉を有する波長である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
参照波長が、等吸収点に対応する波長である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
第1反応速度変化が、第1波長に対応する第1吸光度値、および参照波長に対応する参照吸光度値に基づいて決定され、
第2反応速度変化が、第2波長に対応する第2吸光度値、および前記参照吸光度値に基づいて決定される、
請求項2または3記載の方法。
【請求項25】
第1反応速度変化が、第1波長に対応する第1吸光度値、および参照波長に対応する参照吸光度値に基づいて決定され、
第2反応速度変化が、第2波長に対応する吸光度値、および前記参照吸光度値に基づいて決定され、
第3反応速度変化が、第3波長に対応する第3吸光度値、および前記参照吸光度値に基づいて決定され、
第4反応速度変化が、第4波長に対応する第4吸光度値、および前記参照吸光度値に基づいて決定される、
請求項4または6記載の方法。
【請求項26】
光吸収波長領域が、約280 nm〜約550 nmである、請求項1記載の方法。
【請求項27】
散乱波長領域が、約550 nm〜約800 nmである、請求項3記載の方法。
【請求項28】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物であり、第2試薬が、第1試薬へ特異的に結合する存在物(entity)である、請求項1記載の方法。
【請求項30】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物であり、第2試薬が、第1試薬へ特異的に結合する抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項31】
第1試薬が、糸状虫、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、ネコ白血病ウイルス、パルボウイルス、A型インフルエンザ株、B型インフルエンザ株、トリインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レジオネラ菌、アデノウイルス、およびA群連鎖球菌のエピトープからなる群より選択される生物学的サンプル中の分析物である、請求項1記載の方法。
【請求項32】
第2試薬が、糸状虫、エーリキア・カニス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・アフゼリ、ボレリア・ガリニ、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム、ネコ白血病ウイルス、パルボウイルス、A型インフルエンザ株、B型インフルエンザ株、トリインフルエンザウイルス、合胞体ウイルス、レジオネラ菌、アデノウイルス、またはA群連鎖球菌のエピトープへ特異的に結合する抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項33】
第2試薬が、検出可能な存在物と結合された抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
検出可能な存在物が、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、複合粒子、金中空球体、金コーティングシリカナノシェル、およびシリカコーティングゴールドシェルからなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
反応速度変化が正である、請求項1記載の方法。
【請求項36】
反応速度変化が負である、請求項1記載の方法。
【請求項37】
第1試薬と第2試薬との混合時に、第1波長での第1吸光度値および第2波長での第2吸光度値を測定する工程であって、該第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および
前記第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程であって、該値の比較が、前記第1試薬と第2試薬との複合体の存在を示す、工程
を含む、混合物中における第1試薬と第2試薬との複合体の存在または非存在を決定するための方法。
【請求項38】
前記第1吸光度値と第2吸光度値とを比較する工程が、第2吸光度値に対する第1吸光度値の比率を求める工程を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記第1および第2の吸光度値が、参照波長での参照吸光度値に相対的に求められる、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記第1および第2の吸光度値が、λmaxに対応する波長での最大吸光度値に対して標準化される、請求項37記載の方法。
【請求項41】
試薬インテグリティーの少なくとも1つの測定を得る工程をさらに含む方法であって、該少なくとも1つの測定が、非特異的シグナルを示す、請求項37記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの測定が、第1試薬と第2試薬との混合の初期時点での、参照波長での透過率値を測定する工程;および、該透過率値と所定の限度値とを比較する工程を含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1つの測定が、第1試薬と第2試薬との混合の初期時点での、λmaxに対応する波長での最大吸光度値を測定する工程;および、最大吸光度と所定の吸光度上限値または所定の吸光度下限値とを比較する工程を含む、請求項41記載の方法。
【請求項44】
第1試薬と第2試薬との混合のための初期反応期間中の複数の時点について、第1波長での吸光度値の1つの第1グループを測定する工程、
前記複数の時点について、第2波長での吸光度値の1つの第2グループを測定する工程であって、該第1波長が光吸収波長領域内にあり、該第2波長が散乱波長領域内にある、工程;および
吸光度値の前記第1グループの平均値と吸光度値の前記第2グループの平均値とを比較する工程であって、該吸光度平均値の比較が、前記第1試薬と前記第2試薬との複合体の存在を示す、工程
を含む、請求項37記載の方法。
【請求項45】
吸光度平均値を比較する工程が、吸光度値の前記第2グループに対する、吸光度値の前記第1グループの平均比率を求める工程を含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
平均比率が所定の閾値と比較される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
平均比率が、所定の比率上限値または所定の比率下限値と比較される、請求項45記載の方法。
【請求項48】
吸光度値の前記第1グループが、前記複数の時点の各々について、第1波長での対照吸光度値の1つの第1グループに基づいて調節され、吸光度値の前記第2グループが、前記複数の時点の各々について、第2波長での対照吸光度値の1つの第2グループに基づいて調節される、請求項44記載の方法。
【請求項49】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物である、請求項37記載の方法。
【請求項50】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物であり、第2試薬が、第1試薬へ特異的に結合する存在物である、請求項37記載の方法。
【請求項51】
第1試薬が、生物学的サンプル中の分析物であり、第2試薬が、第1試薬へ特異的に結合する抗体である、請求項37記載の方法。
【請求項52】
第1試薬が、糸状虫、エーリキア・カニス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・アフゼリ、ボレリア・ガリニ、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム、ネコ白血病ウイルス、パルボウイルス、A型インフルエンザ株、B型インフルエンザ株、トリインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レジオネラ菌、アデノウイルス、およびA群連鎖球菌のエピトープからなる群より選択される生物学的サンプル中の分析物である、請求項37記載の方法。
【請求項53】
第2試薬が、糸状虫、エーリキア・カニス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・アフゼリ、ボレリア・ガリニ、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム、ネコ白血病ウイルス、パルボウイルス、A型インフルエンザ株、B型インフルエンザ株、トリインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レジオネラ菌、アデノウイルス、またはA群連鎖球菌のエピトープへ特異的に結合する抗体である、請求項37記載の方法。
【請求項54】
第2試薬が、検出可能な存在物を有する抗体である、請求項37記載の方法。
【請求項55】
検出可能な存在物が、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、複合粒子、金中空球体、金コーティングシリカナノシェル、およびシリカコーティングゴールドシェルからなる群より選択される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
反応速度変化に基づいて第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項57】
第1反応速度変化および第2反応速度変化に基づいて、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項58】
第1、第2、第3、および第4の反応速度変化に基づいて、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項59】
反応速度変化の前記第1グループおよび反応速度変化の前記第2グループに基づいて、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項60】
第1吸光度値と第2吸光度値との比較に基づいて、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項61】
吸光度値の前記第1グループの平均値と吸光度値の前記第2グループの平均値との比較に基づいて、第1試薬と第2試薬との複合体の量を測定する工程をさらに含む、請求項44記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2011−525966(P2011−525966A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500931(P2011−500931)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/037553
【国際公開番号】WO2009/117510
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(505452771)アバクシス, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/037553
【国際公開番号】WO2009/117510
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(505452771)アバクシス, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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