タイヤの使用条件評価方法及び装置、並びにタイヤの摩耗予測方法及び装置
【課題】車両の空気抵抗を考慮することにより、タイヤの使用条件の評価を好適行うことが可能なタイヤの使用条件評価方法等を提供する。
【解決手段】車両に搭載された加速度センサおよび速度センサを用いて、車両に装着されたタイヤの使用条件を、コンピュータを用いて評価するタイヤの使用条件評価方法であって、加速度センサから、前後方向および横方向における車両の加速度を取得する加速度取得工程(ステップS1)と、速度センサから、前後方向における車両の速度を取得する速度取得工程(ステップS1)と、車両の速度区分別に、取得した各成分の加速度の出現頻度をプロットして、速度区分別の複数の加速度頻度分布を生成する加速度頻度分布生成工程(ステップS3)と、を備えた。
【解決手段】車両に搭載された加速度センサおよび速度センサを用いて、車両に装着されたタイヤの使用条件を、コンピュータを用いて評価するタイヤの使用条件評価方法であって、加速度センサから、前後方向および横方向における車両の加速度を取得する加速度取得工程(ステップS1)と、速度センサから、前後方向における車両の速度を取得する速度取得工程(ステップS1)と、車両の速度区分別に、取得した各成分の加速度の出現頻度をプロットして、速度区分別の複数の加速度頻度分布を生成する加速度頻度分布生成工程(ステップS3)と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する車両に装着されたタイヤの使用条件を、コンピュータを用いて評価するタイヤの使用条件評価方法および使用条件評価装置、並びにタイヤの摩耗予測方法および摩耗予測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの使用条件を評価する方法として、例えば、車両を走行させた時のタイヤに作用する荷重を、前後力および左右力として単位走行距離毎にサンプリングすると共に、分割したタイヤの要素毎に、サンプリングされた前後力および左右力の発生頻度をカウントして頻度分布データを求めることにより、タイヤの摩耗量を予測するタイヤ摩耗の予測方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他のタイヤの使用条件を評価する方法として、例えば、車両を走行させた時の横方向および前後方向の加速度の頻度分布を求めるステップと、特定の走行状態において、車両に装着されたタイヤに生じる外的条件を、横方向および前後方向の加速度に対応付けて求めるステップと、加速度の頻度分布と外的条件とを考慮して設定された走行モードに基づいて、模擬路面上でタイヤを転動させるステップと、を備えたタイヤ摩耗試験方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−63933号公報
【特許文献2】特開2007−139708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1では、前後力および左右力の頻度分布データに基づいて、タイヤの摩耗量を予測しているが、車両に作用する前後力および左右力をサンプリングすることは複雑な構成となる。このため、特許文献2に示すように、現実的には、前後方向および横方向(左右方向)の加速度を検出することで、加速度の頻度分布を求め、加速度の頻度分布に基づいて、タイヤの摩耗量を予測している。
【0006】
ところで、車両に作用する荷重の1つとして空気抵抗があり、車両に作用する荷重は、空気抵抗によって大きく可変する。具体的に、空気抵抗は、車両の走行速度が重要な因子となっており、走行速度の二乗と比例関係となっていることから、走行速度が可変することによって、空気抵抗が二次関数的に可変する。このとき、従来のタイヤ摩耗の予測方法では、車両の空気抵抗を考慮せずに、車両の加速度の発生頻度をサンプリングしているため、タイヤの使用条件を適切に評価することが困難である。これにより、サンプリングした加速度の頻度分布を用いて、タイヤの摩耗予測を行う場合、車両の空気抵抗を考慮することができないため、タイヤの摩耗予測の精度を向上させることは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、車両の空気抵抗を考慮することにより、タイヤの使用条件の評価を好適に行うことが可能なタイヤの使用条件評価方法および使用条件評価装置、並びにタイヤの摩耗予測方法および摩耗予測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のタイヤの使用条件評価方法は、車両に装着されたタイヤの使用条件を、コンピュータを用いて評価するタイヤの使用条件評価方法であって、車両に加わる空気抵抗に関する空気抵抗因子となる車両の速度を取得する速度取得工程と、速度取得工程による車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における車両の加速度を取得する加速度取得工程と、空気抵抗因子を複数に区分した区分別に、取得した加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成する加速度頻度分布生成工程と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この場合、空気抵抗因子は、車両の速度であり、加速度頻度分布生成工程では、取得した車両の速度を速度区分別に複数に等分し、等分した速度区分別に、車両の加速度の出現頻度をプロットすることで、速度区分別の複数の加速度頻度分布を生成していることが、好ましい。
【0010】
この場合、空気抵抗因子は、車両の速度を二乗したものであり、加速度頻度分布生成工程では、取得した車両の速度を二乗し、車両の速度の二乗を二乗速度区分別に複数に等分し、等分した二乗速度区分別に、車両の加速度の出現頻度をプロットすることで、二乗速度区分別の複数の加速度頻度分布を生成していることが、好ましい。
【0011】
この場合、加速度取得工程では、車両の前後方向における加速度を取得しており、加速度取得工程後且つ加速度頻度分布生成工程前において、取得した車両の前後方向における加速度に対し、車両の空気抵抗を考慮した補正を行う第1加速度補正工程を更に備え、加速度頻度分布生成工程では、補正後の車両の前後方向における加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成していることが、好ましい。
【0012】
この場合、加速度取得工程では、車両の横方向における加速度を取得しており、加速度取得工程後且つ加速度頻度分布生成工程前において、取得した車両の横方向における加速度に対し、車両の空気抵抗を考慮した補正を行う第2加速度補正工程を更に備え、加速度頻度分布生成工程では、補正後の車両の横方向における加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成していることが、好ましい。
【0013】
本発明のタイヤの摩耗予測方法は、予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、走行パターンに従って走行する車両の速度と、車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、請求項1ないし3に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、予め取得した車両諸元データ、タイヤ特性データ、および走行パターンに従って走行する車両の走行状態に関する走行状態データに基づいて、タイヤに付与される加速度および荷重を、車両の空気抵抗を考慮して導出する加速度・荷重導出工程と、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、導出したタイヤに付与される加速度および荷重による重み付けと、区分別の複数の加速度頻度分布による重み付けとを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の他のタイヤの摩耗予測方法は、予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、走行パターンに従って走行する車両の速度と、車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、請求項4に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、予め取得した車両諸元データ、タイヤ特性データ、および走行パターンに従って走行する車両の走行状態に関する走行状態データに基づいて、タイヤに付与される加速度および荷重を導出する加速度・荷重導出工程と、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、導出したタイヤに付与される加速度および荷重による重み付けと、区分別の複数の加速度頻度分布による重み付けとを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の他のタイヤの摩耗予測方法は、予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、走行パターンに従って走行する車両の速度と、車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、請求項5に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、区分別の複数の加速度頻度分布による重み付けを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明のタイヤの使用条件評価装置は、車両に装着されたタイヤの使用条件を評価するタイヤの使用条件評価装置において、車両に加わる空気抵抗に関する空気抵抗因子となる車両の速度を取得すると共に、車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における車両の加速度を取得する速度・加速度取得部と、空気抵抗因子を複数に区分した区分別に、取得した加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成する加速度頻度分布生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明のタイヤの摩耗予測装置は、予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を予測するタイヤの摩耗予測装置において、少なくとも、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーと、請求項9に記載のタイヤの使用条件評価装置において生成した区分別の複数の加速度頻度分布と、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量と、を取得する情報取得部と、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、区分別の複数の加速度頻度分布による重み付けを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタイヤの使用条件評価方法および使用条件評価装置、並びにタイヤの摩耗予測方法および摩耗予測装置によれば、車両の走行速度等の空気抵抗因子の区分別に複数の加速度頻度分布を生成することができるため、加速度頻度分布は、車両の空気抵抗を考慮したものとすることができる。これにより、本発明では、車両の空気抵抗を考慮して、タイヤの使用条件の評価を好適に行うことができ、ひいては、タイヤの摩耗予測の精度も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1に係るタイヤの使用条件評価方法およびタイヤの摩耗予測方法を実行する使用条件評価システムおよび摩耗予測装置の概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1に係るタイヤの使用条件評価方法により導出された速度区分別の複数の加速度頻度マップの説明図である。
【図3】図3は、実施例1に係るタイヤの使用条件評価方法に関する一連のフローチャートである。
【図4】図4は、タイヤの使用条件評価方法の評価対象となるタイヤの上半部における断面図である。
【図5】図5は、実施例1に係るタイヤの摩耗予測方法に関する一連のフローチャートである。
【図6】図6は、変形例に係るタイヤの使用条件評価方法により導出された速度区分別の複数の加速度頻度マップの説明図である。
【図7】図7は、実施例2に係るタイヤの使用条件評価方法により導出された速度区分別の複数の加速度頻度マップの説明図である。
【図8】図8は、実施例2に係るタイヤの使用条件評価方法に関する一連のフローチャートである。
【図9】図9は、実施例2に係るタイヤの摩耗予測方法に関する一連のフローチャートである。
【図10】図10は、実施例3に係るタイヤの使用条件評価方法により導出された速度区分別の複数の加速度頻度マップの説明図である。
【図11】図11は、実施例3に係るタイヤの使用条件評価方法に関する一連のフローチャートである。
【図12】図12は、実施例3に係るタイヤの摩耗予測方法に関する一連のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係るタイヤの使用条件評価方法および使用条件評価装置、並びにタイヤの摩耗予測方法および摩耗予測装置について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0021】
実施例1に係るタイヤの使用条件評価方法は、使用条件評価装置を用いて、前後方向および横方向に対するタイヤの使用条件の厳しさを評価するものである。具体的に、タイヤの使用条件評価方法は、前後方向および横方向において測定した加速度の出現頻度をマップ化した加速度頻度マップ(加速度頻度分布)を生成し、生成した加速度頻度マップを、タイヤの使用条件の評価としている。また、タイヤの摩耗予測方法は、生成した加速度頻度マップを用いて、タイヤの摩耗状態の予測を行っている。先ず、図1を参照して、実施例1に係るタイヤの使用条件評価方法を実行するためのタイヤの使用条件評価システムの構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、タイヤ2の使用条件評価システム5は、車両1の前後方向および横方向の加速度を測定可能な2軸加速度センサ7と、車両1の前後方向における速度を測定可能な速度センサ8と、2軸加速度センサ7と速度センサ8とが接続された使用条件評価装置9と、で構成されている。
【0023】
2軸加速度センサ7は、車両1の前後方向およびこれに直交する横方向の加速度を測定可能に構成され、接続された使用条件評価装置9に測定結果を出力している。そして、使用条件評価装置9は、出力された測定結果を、前後方向および横方向の各成分における加速度データとして、車両1の一定走行距離毎に取得する。なお、実施例1では、2軸加速度センサ7を用いて、前後方向および横方向における加速度を取得するが、3軸加速度センサを用いて、前後方向、横方向および鉛直方向における加速度を取得してもよい。
【0024】
速度センサ8は、車両1の前後方向における走行速度を測定しており、接続された使用条件評価装置9に測定結果を出力している。この場合も、使用条件評価装置9は、出力された測定結果を、前後方向における速度データとして、車両1の一定走行距離毎に取得する。
【0025】
このとき、2軸加速度センサ7および速度センサ8は、加速度および速度を同期させながら測定しており、使用条件評価装置9は、同期させた加速度データと速度データとを対応付けて取得する。
【0026】
使用条件評価装置9は、いわゆる、コンピュータであり、取得した加速度データおよび速度データに基づいて加速度頻度マップM(図2参照)を生成している。具体的に、使用条件評価装置9は、処理部15と、記憶部16と、情報通信部17と、これらを接続する入出力部(I/O)18と、を備えており、これらが協働することにより、タイヤ2の使用条件の評価が実行される。
【0027】
情報通信部17は、使用条件評価装置9に入力された速度データと各成分の加速度データとを取得し、取得した加速度データおよび速度データを対応付けて、入出力部18を介して、記憶部16に保存する。つまり、情報通信部17は、速度データおよび加速度データを取得する速度・加速度取得部として機能している。
【0028】
記憶部16は、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリを組み合わせて構成され、取得した速度データおよび加速度データを保存可能に構成される。また、記憶部16には、加速度頻度マップMを生成するためのマップ生成プログラム20が格納されている。
【0029】
処理部15は、各種プログラムを実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリや、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されている。従って、加速度頻度マップMを生成する場合、処理部15は、記憶部16に保存されたマップ生成プログラム20を展開すると共に、記憶部16に保存された速度データおよび加速度データを入出力部18を介して読み出す。この後、処理部15は、読み出した速度データおよび加速度データに基づき、マップ生成プログラム20に従って演算を行うことで、加速度頻度マップMを生成することができる。つまり、処理部15は、マップ生成プログラム20に従って演算を行うことで、加速度頻度分布生成部として機能する。
【0030】
続いて、上記したタイヤ2の使用条件評価システム5において、取得した速度データおよび加速度データから加速度頻度マップMを生成するタイヤの使用条件評価方法について説明する。このタイヤの使用条件評価方法では、車両1の速度区分別に複数の加速度頻度マップMを生成することで、車両1に加わる空気抵抗を考慮したタイヤの使用条件の評価を行うことが可能となっている。つまり、空気抵抗は、車両1の走行速度が重要な空気抵抗因子となっており、車両1の速度区分別に複数の加速度頻度マップMを生成することで、空気抵抗を考慮できる。
【0031】
タイヤ2の使用条件評価方法は、加速度データを取得する加速度取得工程と、速度データを取得する速度取得工程と、取得した速度データおよび加速度データに基づいて加速度頻度マップMを生成するマップ生成工程(加速度頻度分布生成工程)と、を備えている。
【0032】
速度取得工程では、走行する車両1の一定距離間隔毎に、前後方向における速度データを取得しており、取得した速度データを記憶部16に保存している。
【0033】
加速度取得工程では、2軸加速度センサ7を用いて、走行する車両1の一定距離間隔毎に、前後方向および横方向における加速度データを取得しており、取得した各成分の加速度データを記憶部16に保存している。このとき、2軸加速度センサ7および速度センサ8は、加速度および速度を同期させながら測定しているため、加速度取得工程では、同期させた加速度データと速度データとを対応付けて取得している。
【0034】
マップ生成工程では、記憶部16に保存された複数の速度データと、各速度データに対応付けられた前後方向および横方向の複数の加速度データとに基づいて、速度区分別に複数の加速度頻度マップMが生成される。具体的に、マップ生成工程では、車両1の走行速度を均等となるように複数に区分し、均等となった速度区分毎に各成分の加速度の発生頻度をプロットすることにより、加速度頻度マップMを生成している。
【0035】
例えば、図2に示すように、車両1の走行速度は、0km/h〜20km/hの第1区分と、20km/h〜40km/hの第2区分と、40km/h〜60km/hの第3区分と、60km/h〜80km/hの第4区分と、80km/h〜100km/hの第5区分と、に等間隔に区分けされている。そして、マップ生成工程では、第1区分における前後方向の加速度の出現頻度をプロットし、また、第1区分における横方向の加速度の出現頻度をプロットすることで、第1区分における加速度頻度マップM1を生成する。同様の手順で、第2区分における加速度頻度マップM2、第3区分における加速度頻度マップM3、第4区分における加速度頻度マップM4、および第5区分における加速度頻度マップM5を生成する。これにより、マップ生成工程では、速度区分別に5つの加速度頻度マップMを生成することができる。
【0036】
続いて、図3を参照して、上記したタイヤ2の使用条件評価方法における一連のフローについて説明する。タイヤ2の使用条件評価方法では、先ず、予め定められた走行パターンに従って走行する車両1の速度データを取得し、速度データの取得に同期させて、前後方向および横方向の各成分における加速度データを取得する(ステップS1:速度取得工程および加速度取得工程)。取得された加速度データは、同期させて取得した速度データに対応付けられて、車両の一定走行距離間隔毎に記憶部16へ順次保存(サンプリング)される。
【0037】
続いて、車両1の走行後、使用条件評価装置9は、記憶部16に保存されたマップ生成プログラム20を展開し、速度データに対応付けられた加速度データを、速度区分別に振り分ける(ステップS2)。この後、使用条件評価装置9は、各速度区分における加速度の出現頻度をそれぞれプロットして、車両1の速度区分別に複数の加速度頻度マップMを生成する(ステップS3:マップ生成工程)。
【0038】
ここで、上記したタイヤ2の使用条件評価方法によって得られた車両1の速度区分別の複数の加速度頻度マップMは、タイヤ2の使用条件を評価することに用いられている。例えば、車両1の速度区分別の複数の加速度頻度マップMは、国別の路面状況におけるタイヤ2の使用環境を比較する場合に用いられたり、あるいは、タイヤ2の摩耗予測を行う場合に用いられたりする。以下では、上記したタイヤ2の使用条件評価方法によって得られた車両1の速度区分別の複数の加速度頻度マップMを用いて、タイヤ2の摩耗予測を行うタイヤ2の摩耗予測方法について説明する。
【0039】
タイヤ2の摩耗予測方法の説明に先立ち、図4を参照して、タイヤ2の摩耗予測方法の適用の対象であるタイヤ2について説明する。タイヤ2は、カーカスや補強ベルト等をゴム材料によって被覆した複合材料であり、トレッド面35が地面と接地する。タイヤ内面34とトレッド面35との間にはアンダートレッド36が設けられている。トレッド面35とアンダートレッド36との間のゴム層をキャップトレッド37といい、キャップトレッド37を構成するゴム材料をトレッドゴムという。トレッド面35には複数の溝32および複数のブロック33が形成されている。そして、複数の溝32および複数のブロック33により、トレッド面35にはトレッドパターンが形成される。
【0040】
タイヤ2が車両1に取り付けられて転動すると、トレッドゴムが摩耗する結果、タイヤ2のトレッド面35等が摩耗する。そして、このトレッド面35等の摩耗量は、トレッド面35等に作用する摩擦力、ひいてはトレッド面35等に作用する加速度に比例する。従って、車両1に装着されたタイヤ2の使用条件の厳しさを、上記の速度区分別の複数の加速度頻度マップMを用いて評価することで、タイヤ2の摩耗を評価したり、摩耗量を推定したりすることが可能となる。
【0041】
続いて、再び図1を参照して、タイヤ2の摩耗予測方法を実行可能な摩耗予測装置40について説明する。この摩耗予測装置40は、上記のタイヤ2の使用条件評価システム5において生成した速度区分別の複数の加速度頻度マップMを取得可能に構成されている。摩耗予測装置40は、いわゆる、コンピュータであり、上記した加速度頻度マップMを含む各種データに基づいて、タイヤ2の摩耗予測に関する演算を行うことにより、タイヤ2の摩耗量を予測するものである。なお、実施例1では、説明を簡単にすべく、使用条件評価装置9と、摩耗予測装置40とを別体としたが、これを単一のコンピュータで構成してもよい。また、使用条件評価装置9では、速度データおよび加速度データの取得のみを行い、タイヤ2の使用条件の評価を摩耗予測装置40で行ってもよい。摩耗予測装置40は、処理部45と、記憶部46と、情報通信部(情報取得部)47とを備え、これら各部は入出力部48によって接続されている。
【0042】
情報通信部47は、入力された各種データを取得し、取得した各種データを入出力部48を介して記憶部46に保存したり、処理部45に出力したりする。ここで、各種データとしては、タイヤ2に発生する単位走行距離当たりの摩擦エネルギー、車両諸元データ、タイヤ特性データ、走行パターン、上記した加速度頻度マップM、摩耗エネルギーに対する摩耗量のデータ、タイヤ2の各位置における溝32の深さのデータ等がある。
【0043】
単位走行距離当たりの摩擦エネルギーは、摩擦エネルギー測定装置によって、タイヤ2の各位置における単位走行距離当たりの摩擦エネルギーが導出される。摩擦エネルギー測定装置は、例えば、シャシダイ上にタイヤ2を接地させ、タイヤ2に垂直抗力を加えた状態で転動させることにより、タイヤ2の各位置における単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを測定している。
【0044】
なお、摩擦エネルギー測定装置は、上記の構成に限らず、例えば、有限要素法等の解析手法を用いて、単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを導出してもよい。具体的に、摩擦エネルギー測定装置は、タイヤ2を有限個の要素に分割したタイヤモデルを転動解析することにより、単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを導出できる。すなわち、摩擦エネルギー測定装置は、摩擦エネルギーを算出する場合、生成したタイヤモデルに対し、垂直抗力を与えた状態で転動させ、タイヤ2に作用する力(例えば、コーナーリングフォースや前後力)が略定常状態となった後の転動解析結果から、定常状態における単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを導出する。同様に、摩擦エネルギー測定装置は、タイヤ2の駆動状態における単位走行距離当たりの摩擦エネルギー、タイヤ2の制動状態における単位走行距離当たりの摩擦エネルギー、およびタイヤ2の旋回状態における単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを導出できる。なお、解析手法は、有限要素法に限られず、境界要素法や有限差分法等も使用できる。
【0045】
車両の諸元データは、車両の重量、ホイールアライメント、LSD(Limited Slip Differential)、アッカーマン率、サスペンション特性、駆動力配分および制動力配分等であり、タイヤ2の特性データは、動荷重半径、コーナリングパワー等である。また、走行パターンは、車両が走行する走行経路を予め設定したものであり、走行経路としては、高速道路等の種々の経路が設定される。なお、車両諸元データ、タイヤ特性データおよび走行パターンは、タイヤ2の摩耗予測に先立ち、予め記憶部46に記憶されている。また、タイヤ2の各位置における溝32の深さのデータは、測定により取得される。
【0046】
摩擦エネルギーに対する摩耗量のデータは、車両1の前後方向および横方向の成分毎に分けて導出されている。前後方向において、摩擦エネルギーに対する摩耗量のデータを導出する場合、任意の摩擦エネルギーが付与された状態でタイヤ2を転動させ、任意の摩擦エネルギーに対する単位走行距離当たりのタイヤ2の摩耗量を測定する。そして、任意の摩擦エネルギーを変更して複数回、タイヤ2の摩耗量を測定することにより、摩擦エネルギーに対する単位走行距離当たりのタイヤ2の摩耗量の関係を、摩擦エネルギーに対する摩耗量のデータとして導出することができる。
【0047】
記憶部46は、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリを組み合わせて構成され、取得した上記の各種データを保存可能に構成される。また、記憶部46には、タイヤ2の摩耗を予測するためのタイヤ摩耗予測プログラム50が格納されている。
【0048】
処理部45は、各種プログラムを実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリや、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されている。従って、タイヤ2の摩耗予測を行う場合、処理部45は、記憶部46に保存されたタイヤ摩耗予測プログラム50を展開すると共に、記憶部46に保存された各種データを入出力部48を介して読み出す。この後、処理部45は、読み出した各種データや処理部45に入力された各種データに基づき、タイヤ摩耗予測プログラム50に従って演算を行うことで、タイヤ2の摩耗状態を予測することができる。つまり、処理部45は、タイヤ摩耗予測プログラム50に従って演算を行うことで、摩耗予測部として機能する。
【0049】
続いて、上記したタイヤ2の摩耗予測装置40において、取得した各種データからタイヤ2の摩耗状態を予測するタイヤ2の摩耗予測方法について説明する。このタイヤ2の摩耗予測方法では、上記のタイヤ2の使用条件評価方法において生成された速度区分別の複数の加速度頻度マップMを用いて、タイヤ2の摩耗予測を行っている。なお、下記するタイヤ2の摩耗予測方法では、上記のタイヤ2の使用条件評価方法が含められている。このタイヤ2の摩耗予測方法は、摩擦エネルギー取得工程と、速度・加速度取得工程と、摩耗量取得工程と、マップ生成工程と、加速度・荷重導出工程と、摩耗予測工程と、を備えている。
【0050】
摩擦エネルギー取得工程では、タイヤ2の単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得しており、上記したように、摩擦エネルギー測定装置により導出される。速度・加速度取得工程は、上記のタイヤ2の使用条件評価方法における速度取得工程および加速度取得工程に相当するものであり、走行パターンに従って走行する車両の速度・加速度を一定距離間隔毎に取得している。
【0051】
摩耗量取得工程では、摩耗エネルギーに対するタイヤ2の摩耗量を取得しており、上記したように、摩擦エネルギーに対する単位走行距離当たりのタイヤ2の摩耗量の関係を、実測により導出する。マップ生成工程は、上記のタイヤ2の使用条件評価方法におけるマップ生成工程と同様であり、取得した速度データと、前後方向および横方向の成分毎の加速度データとに基づいて、速度区分別に複数の加速度頻度マップMを生成する。
【0052】
加速度・荷重導出工程では、車両諸元データ、タイヤ特性データ、および走行パターンに従って走行する車両1の走行状態に関する走行状態データに基づいて、タイヤ2に付与される加速度および荷重を導出する。つまり、車両1が走行パターンに従って走行することで、車両1のタイヤ2には、前後方向および横方向に加速度および荷重が付与される。このとき、車両諸元データおよびタイヤ特性データを考慮することにより、タイヤ2に付与される加速度および荷重を導出することができる。なお、車両1の走行状態として、少なくとも車両1の前後方向に空気抵抗が加わるように条件設定を行っているため、加速度・荷重導出工程で導出されたタイヤ2に付与される加速度および荷重は、車両1の前後方向における空気抵抗を考慮したものとなっている。合わせて、車両1の横方向に空気抵抗が加わるように条件設定を行ってもよい。
【0053】
摩耗予測工程では、タイヤ2の単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、速度区分別に生成した複数の加速度頻度マップM、およびタイヤ2に付与される加速度および荷重に基づいて、重み付けを行うことにより、タイヤ2の各位置における摩擦エネルギーを導出する。そして、摩耗予測工程では、導出したタイヤ2の各位置における摩擦エネルギー、摩擦エネルギーに対する摩耗量、およびタイヤ2の各位置における溝32の深さに基づいて、タイヤ2の摩耗寿命を導出する。
【0054】
ここで、図5を参照して、タイヤ2の摩耗予測方法における一連の動作フローについて説明する。先ず、摩耗予測装置40は、実測または解析等によって導出されたタイヤ2の各位置における単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する(ステップS11:摩擦エネルギー取得工程)。この後、摩耗予測装置40は、予め記憶部46に保存された車両諸元データおよびタイヤ特性データを取得する(ステップS12)。続いて、摩耗予測装置40は、走行パターンに従って走行する車両1の走行状態に関する走行状態データを取得する(ステップS13:速度・加速度取得工程)。このとき、走行状態データは、車両1の速度データおよび加速度データを含んだデータとなっている。
【0055】
そして、摩耗予測装置40は、ステップS12およびステップS13において取得した車両諸元データ、タイヤ特性データおよび走行状態データに基づいて、所定の走行パターンに従って走行する車両1の走行運動によってタイヤ2に付与される前後方向および横方向の加速度を導出すると共に、前後方向および横方向においてタイヤ2に加わる荷重を導出する(ステップS14)。このとき、上記したように、車両の走行状態は、少なくとも前後方向において空気抵抗を加味した条件設定としているため、タイヤ2に付与される加速度および荷重は、前後方向における空気抵抗を考慮したものとして導出される。
【0056】
次に、摩耗予測装置40は、ステップS13において取得した走行状態データの中の速度データおよび加速度データに基づいて、上記したタイヤ2の使用条件評価方法で説明したようなステップで、速度区分別に複数の加速度頻度マップMを生成する(ステップS15:マップ生成工程)。
【0057】
続いて、摩耗予測装置40は、ステップS11において取得したタイヤ2の各位置における単位走行距離あたりの摩擦エネルギーに対し、ステップS14において導出したタイヤ2に付与される前後方向および横方向の加速度・荷重に基づいて重み付けを行うことにより、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出する(ステップS16)。
【0058】
そして、摩耗予測装置40は、ステップS16において導出した速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーに対し、ステップS15において生成した速度区分別の複数の加速度頻度マップMに基づいて重み付けを行うことにより、タイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出する(ステップS17)。
【0059】
この後、摩耗予測装置40は、摩擦エネルギーに対するタイヤ2の摩耗量を取得する(ステップS18:摩耗量取得工程)と共に、タイヤ2の各位置における溝32の深さの測定データを取得する(ステップS19)。そして、摩耗予測装置40は、ステップS17において導出したタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤ2の摩耗量とから、タイヤ2の各位置における推定摩耗量を導出する。最後に、摩耗予測装置40は、導出したタイヤ2の各位置における推定摩耗量と、タイヤ2の各位置における溝32の深さとから、タイヤ2の各位置における推定摩耗寿命を導出する(ステップS20)。
【0060】
なお、ステップS11、ステップS12、ステップS13、ステップS18およびステップS19における各種データの取得は、平行して行ってもよいため、この順番に限らず、前後しても良い。
【0061】
以上のように、実施例1に係るタイヤ2の使用条件評価方法によれば、速度区分別に複数の加速度頻度マップMを用いることができるため、車両1の走行時における空気抵抗を考慮して、タイヤ2の使用条件を精度よく評価することができる。
【0062】
また、実施例1に係るタイヤ2の摩耗予測方法によれば、速度区分別の複数の加速度頻度マップMを用いることができるため、車両1の走行時における空気抵抗を考慮して、タイヤ2の摩耗状態を精度よく予測することができる。
【0063】
なお、実施例1では、マップ生成工程において、車両1の走行速度を、均等となるように複数に区分し、均等となった速度区分毎に加速度の発生頻度をプロットして、加速度頻度マップMを生成した。しかしながら、この構成に限らず、例えば、変形例として、車両1の走行速度の二乗を、均等となるように複数に区分し、均等となった二乗速度区分毎に加速度の発生頻度をプロットして、加速度頻度マップMa(図6参照)を生成してもよい。すなわち、空気抵抗は、車両1の走行速度の二乗と比例関係にあり、重要な空気抵抗因子であるため、車両1の走行速度の二乗を均等となるように複数に区分してもよい。
【0064】
例えば、図6に示すように、車両1の走行速度の範囲を0km/h〜140km/hとすると、車両1の走行速度の二乗の範囲は、0km2/h2〜19600km2/h2となる。このため、車両1の走行速度の二乗は、0km2/h2〜3920km2/h2の第1区分と、3920km2/h2〜7840km2/h2の第2区分と、7840km2/h2〜11760km2/h2の第3区分と、11760km2/h2〜15680km2/h2の第4区分と、15680km2/h2〜19600km2/h2の第5区分と、に等間隔に区分けされている。そして、マップ生成工程では、第1区分における前後方向の加速度の出現頻度をプロットし、また、第1区分における横方向の加速度の出現頻度をプロットすることで、第1区分における加速度頻度マップMa1を生成する。同様の手順で、第2区分における加速度頻度マップMa2、第3区分における加速度頻度マップMa3、第4区分における加速度頻度マップMa4、および第5区分における加速度頻度マップMa5を生成する。これにより、マップ生成工程では、速度区分別(二乗速度区分別)に5つの加速度頻度マップMaを生成することができる。
【0065】
この構成においても、空気抵抗を考慮して、速度区分別に複数の加速度頻度マップMaを生成することができるため、タイヤ2の使用条件評価方法においては、タイヤ2の使用条件を精度よく評価することができ、タイヤ2の摩耗予測方法においては、タイヤ2の摩耗を精度よく予測することができる。
【実施例2】
【0066】
次に、図7ないし図9を参照して、実施例2に係るタイヤ2の使用条件評価方法およびタイヤ2の摩耗予測方法について説明する。なお、実施例2では、重複した記載は避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。また、使用条件評価装置9および摩耗予測装置40は、実施例1と同様の装置構成であるため、説明を省略する。実施例1におけるタイヤ2の使用条件評価方法では、取得した車両1の前後方向および横方向の各成分における加速度データに基づいて、速度区分別の複数の加速度頻度マップMを生成した。しかしながら、実施例2におけるタイヤ2の使用条件評価方法では、取得した車両1の前後方向および横方向の各成分における加速度データのうち、車両1の前後方向における加速度データを補正し、補正した前後方向における加速度データおよび横方向における加速度データと速度データとに基づいて、速度区分別の複数の加速度頻度マップMb(図7参照)を生成している。このため、実施例2におけるタイヤ2の摩耗予測方法では、上記のように生成された速度区分別の複数の加速度頻度マップMbを用いて、タイヤ2の摩耗予測を行っている。
【0067】
具体的に、図8に示すように、実施例2のタイヤ2の使用条件評価方法は、加速度取得工程および速度取得工程(ステップS1)と、取得した車両1の前後方向における加速度データを補正する第1加速度補正工程(ステップS33)と、補正後の前後方向における加速度データおよび横方向における加速度データと速度データとに基づいて、加速度頻度マップMbを生成するマップ生成工程(ステップS34)と、を備えている。なお、加速度取得工程および速度取得工程は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
第1加速度補正工程は、取得した前後方向における加速度データを、(1)式に基づいて補正する。(1)式により前後方向における加速度データを補正することで、前後方向における加速度データは、前後方向における空気抵抗を考慮したものとなる。
【数1】
【0069】
そして、図7に示すように、マップ生成工程では、車両1の走行速度の二乗を、均等となるように複数に区分し、均等となった速度区分毎に、補正後の前後方向における加速度の発生頻度をプロットし、また、横方向における加速度の発生頻度をプロットすることで、空気抵抗を考慮した、区分別の複数の加速度頻度マップMbを生成している。
【0070】
続いて、図9を参照して、実施例2のタイヤ2の摩耗予測方法について説明する。このタイヤ2の摩耗予測方法は、実施例1のタイヤ2の摩耗予測方法におけるステップS14、ステップS15、ステップS16およびステップS17に代えて、ステップS44、ステップS45、ステップS46およびステップS47となっており、タイヤ2の摩耗予測に関する処理が一部異なっている。
【0071】
具体的に、ステップS14では、タイヤ2に付与される加速度および荷重は、空気抵抗を考慮して導出されていたが、ステップS44では、空気抵抗を考慮することなく、タイヤ2に付与される加速度および荷重を導出している。つまり、車両1の走行状態として、前後方向に空気抵抗が加わるように条件設定を行っていないため、加速度・荷重導出工程で導出されたタイヤ2に付与される加速度および荷重は、空気抵抗を考慮したものとなっていない。
【0072】
また、ステップS15では、前後方向における加速度データの補正を行わずに、速度区分別の複数の加速度頻度マップMを生成したが、ステップS45では、上記したように、前後方向における加速度データの補正を行って、空気抵抗を考慮した速度区分別の複数の加速度頻度マップMbを生成している。
【0073】
さらに、ステップS16では、タイヤ2の各位置における単位走行距離あたりの摩擦エネルギーと、空気抵抗を考慮したタイヤ2に付与される加速度および荷重とに基づいて、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出した。そして、ステップS17では、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーと、空気抵抗を考慮していない速度区分別の複数の加速度頻度マップMとに基づいて、タイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出した。しかしながら、ステップS46では、タイヤ2の各位置における単位走行距離あたりの摩擦エネルギーと、空気抵抗を考慮していないタイヤ2に付与される加速度および荷重とに基づいて、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出している。そして、ステップS47では、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーと、前後方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMbとに基づいて、タイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出している。
【0074】
以上のように、実施例2に係るタイヤ2の使用条件評価方法によれば、前後方向における空気抵抗を考慮した速度区分別の複数の加速度頻度マップMbを用いることができるため、タイヤ2の使用条件を精度よく評価することができる。また、実施例2に係るタイヤ2の摩耗予測方法によれば、空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMbを用いることができるため、車両1の走行時における空気抵抗を考慮して、タイヤ2の摩耗状態を精度よく予測することができる。
【実施例3】
【0075】
次に、図10ないし図12を参照して、実施例3に係るタイヤ2の使用条件評価方法およびタイヤ2の摩耗予測方法について説明する。なお、実施例3においても、重複した記載は避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。また、使用条件評価装置9および摩耗予測装置40は、実施例1と同様の装置構成であるため、説明を省略する。実施例1におけるタイヤ2の使用条件評価方法では、取得した車両1の前後方向および横方向の各成分における加速度データに基づいて、速度区分別の複数の加速度頻度マップMを生成した。しかしながら、実施例3におけるタイヤ2の使用条件評価方法では、取得した車両1の前後方向および横方向の各成分における加速度データをそれぞれ補正し、補正した前後方向および横方向における加速度データと速度データとに基づいて、速度区分別の複数の加速度頻度マップMcを生成している。このため、実施例3におけるタイヤ2の摩耗予測方法は、上記のように生成された速度区分別の複数の加速度頻度マップMcを用いて、タイヤ2の摩耗予測を行っている。
【0076】
具体的に、図11に示すように、実施例3のタイヤ2の使用条件評価方法は、加速度取得工程および速度取得工程(ステップS1)と、取得した車両1の前後方向における加速度データを補正する第1加速度補正工程(ステップS33)と、取得した車両1の横方向における加速度データを補正する第2加速度補正工程(ステップS54)と、補正後の前後方向および横方向における加速度データと速度データとに基づいて、加速度頻度マップMcを生成するマップ生成工程(ステップS55)と、を備えている。なお、加速度取得工程および速度取得工程は、実施例1と同様であり、第1加速度補正工程は、第2実施例と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
第2加速度補正工程は、取得した横方向における加速度データを、(2)式に基づいて補正する。(2)式により横方向における加速度データを補正することで、横方向における加速度データは、空気抵抗によるコンプライアンスステアを考慮したものとなる。
【数2】
【0078】
そして、図10に示すように、マップ生成工程では、車両1の走行速度の二乗を、均等となるように複数に区分し、均等となった区分毎に、補正後の前後方向における加速度の発生頻度をプロットし、また、補正後の横方向における加速度の発生頻度をプロットすることで、空気抵抗を考慮した、区分別の複数の加速度頻度マップMcを生成している。
【0079】
続いて、図12を参照して、実施例3のタイヤ2の摩耗予測方法について説明するに、このタイヤの摩耗予測方法は、実施例1のタイヤ2の摩耗予測方法におけるステップS12およびステップS14を行わず、また、ステップS15、ステップS16およびステップS17に代えて、ステップS65、ステップS66およびステップS67となっており、タイヤ2の摩耗予測に関する処理が一部異なっている。
【0080】
具体的に、ステップS15では、前後方向および横方向における加速度データの補正を行わずに、区分別の複数の加速度頻度マップMを生成したが、ステップS65では、上記したように、前後方向および横方向における加速度データの補正を行って、前後方向および横方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMcを生成している。このとき、区分別の複数の加速度頻度マップMcは、前後方向および横方向において空気抵抗を考慮しているため、ステップS14をもって空気抵抗を考慮する必要はなく、ステップS14を省略でき、あわせてステップS12を省略できる。
【0081】
さらに、ステップS16では、タイヤ2の各位置における単位走行距離あたりの摩擦エネルギーと、空気抵抗を考慮したタイヤ2に付与される加速度および荷重とに基づいて、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出した。そして、ステップS17では、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーと、空気抵抗を考慮していない区分別の複数の加速度頻度マップMとに基づいて、タイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出した。しかしながら、ステップS66では、タイヤ2の各位置における単位走行距離あたりの摩擦エネルギーから、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出している。そして、ステップS67では、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーと、前後方向および横方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMcとに基づいて、タイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出している。
【0082】
以上のように、実施例3に係るタイヤ2の使用条件評価方法によれば、前後方向および横方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMcを用いることができるため、タイヤ2の使用条件を精度よく評価することができる。また、実施例3に係るタイヤ2の摩耗予測方法によれば、前後方向および横方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMcを用いることができるため、車両1の走行時における空気抵抗を考慮して、タイヤ2の摩耗状態を精度よく予測することができる。さらに、実施例3に係るタイヤ2の摩耗予測方法によれば、前後方向および横方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMcを用いることにより、ステップ数を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明に係るタイヤの使用条件評価方法およびタイヤの摩耗予測方法は、車両の空気抵抗を考慮する場合において有用であり、特に、タイヤの使用条件の評価の精度を向上を図る場合に適している。
【符号の説明】
【0084】
1 車両
2 タイヤ
5 使用条件評価システム
7 2軸加速度センサ
8 速度センサ
9 使用条件評価装置
15 使用条件評価装置の処理部
16 使用条件評価装置の記憶部
17 使用条件評価装置の情報通信部
18 使用条件評価装置の入出力部
20 マップ生成プログラム
32 溝
33 ブロック
34 タイヤ内面
35 トレッド面
36 アンダートレッド
37 キャップトレッド
40 摩耗予測装置
45 摩耗予測装置の処理部
46 摩耗予測装置の記憶部
47 摩耗予測装置の情報通信部
48 摩耗予測装置の入出力部
50 タイヤ摩耗予測プログラム
M 加速度頻度マップ(実施例1)
Ma 加速度頻度マップ(変形例)
Mb 加速度頻度マップ(実施例2)
Mc 加速度頻度マップ(実施例3)
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する車両に装着されたタイヤの使用条件を、コンピュータを用いて評価するタイヤの使用条件評価方法および使用条件評価装置、並びにタイヤの摩耗予測方法および摩耗予測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの使用条件を評価する方法として、例えば、車両を走行させた時のタイヤに作用する荷重を、前後力および左右力として単位走行距離毎にサンプリングすると共に、分割したタイヤの要素毎に、サンプリングされた前後力および左右力の発生頻度をカウントして頻度分布データを求めることにより、タイヤの摩耗量を予測するタイヤ摩耗の予測方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他のタイヤの使用条件を評価する方法として、例えば、車両を走行させた時の横方向および前後方向の加速度の頻度分布を求めるステップと、特定の走行状態において、車両に装着されたタイヤに生じる外的条件を、横方向および前後方向の加速度に対応付けて求めるステップと、加速度の頻度分布と外的条件とを考慮して設定された走行モードに基づいて、模擬路面上でタイヤを転動させるステップと、を備えたタイヤ摩耗試験方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−63933号公報
【特許文献2】特開2007−139708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1では、前後力および左右力の頻度分布データに基づいて、タイヤの摩耗量を予測しているが、車両に作用する前後力および左右力をサンプリングすることは複雑な構成となる。このため、特許文献2に示すように、現実的には、前後方向および横方向(左右方向)の加速度を検出することで、加速度の頻度分布を求め、加速度の頻度分布に基づいて、タイヤの摩耗量を予測している。
【0006】
ところで、車両に作用する荷重の1つとして空気抵抗があり、車両に作用する荷重は、空気抵抗によって大きく可変する。具体的に、空気抵抗は、車両の走行速度が重要な因子となっており、走行速度の二乗と比例関係となっていることから、走行速度が可変することによって、空気抵抗が二次関数的に可変する。このとき、従来のタイヤ摩耗の予測方法では、車両の空気抵抗を考慮せずに、車両の加速度の発生頻度をサンプリングしているため、タイヤの使用条件を適切に評価することが困難である。これにより、サンプリングした加速度の頻度分布を用いて、タイヤの摩耗予測を行う場合、車両の空気抵抗を考慮することができないため、タイヤの摩耗予測の精度を向上させることは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、車両の空気抵抗を考慮することにより、タイヤの使用条件の評価を好適に行うことが可能なタイヤの使用条件評価方法および使用条件評価装置、並びにタイヤの摩耗予測方法および摩耗予測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のタイヤの使用条件評価方法は、車両に装着されたタイヤの使用条件を、コンピュータを用いて評価するタイヤの使用条件評価方法であって、車両に加わる空気抵抗に関する空気抵抗因子となる車両の速度を取得する速度取得工程と、速度取得工程による車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における車両の加速度を取得する加速度取得工程と、空気抵抗因子を複数に区分した区分別に、取得した加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成する加速度頻度分布生成工程と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この場合、空気抵抗因子は、車両の速度であり、加速度頻度分布生成工程では、取得した車両の速度を速度区分別に複数に等分し、等分した速度区分別に、車両の加速度の出現頻度をプロットすることで、速度区分別の複数の加速度頻度分布を生成していることが、好ましい。
【0010】
この場合、空気抵抗因子は、車両の速度を二乗したものであり、加速度頻度分布生成工程では、取得した車両の速度を二乗し、車両の速度の二乗を二乗速度区分別に複数に等分し、等分した二乗速度区分別に、車両の加速度の出現頻度をプロットすることで、二乗速度区分別の複数の加速度頻度分布を生成していることが、好ましい。
【0011】
この場合、加速度取得工程では、車両の前後方向における加速度を取得しており、加速度取得工程後且つ加速度頻度分布生成工程前において、取得した車両の前後方向における加速度に対し、車両の空気抵抗を考慮した補正を行う第1加速度補正工程を更に備え、加速度頻度分布生成工程では、補正後の車両の前後方向における加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成していることが、好ましい。
【0012】
この場合、加速度取得工程では、車両の横方向における加速度を取得しており、加速度取得工程後且つ加速度頻度分布生成工程前において、取得した車両の横方向における加速度に対し、車両の空気抵抗を考慮した補正を行う第2加速度補正工程を更に備え、加速度頻度分布生成工程では、補正後の車両の横方向における加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成していることが、好ましい。
【0013】
本発明のタイヤの摩耗予測方法は、予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、走行パターンに従って走行する車両の速度と、車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、請求項1ないし3に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、予め取得した車両諸元データ、タイヤ特性データ、および走行パターンに従って走行する車両の走行状態に関する走行状態データに基づいて、タイヤに付与される加速度および荷重を、車両の空気抵抗を考慮して導出する加速度・荷重導出工程と、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、導出したタイヤに付与される加速度および荷重による重み付けと、区分別の複数の加速度頻度分布による重み付けとを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の他のタイヤの摩耗予測方法は、予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、走行パターンに従って走行する車両の速度と、車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、請求項4に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、予め取得した車両諸元データ、タイヤ特性データ、および走行パターンに従って走行する車両の走行状態に関する走行状態データに基づいて、タイヤに付与される加速度および荷重を導出する加速度・荷重導出工程と、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、導出したタイヤに付与される加速度および荷重による重み付けと、区分別の複数の加速度頻度分布による重み付けとを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の他のタイヤの摩耗予測方法は、予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、走行パターンに従って走行する車両の速度と、車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、請求項5に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、区分別の複数の加速度頻度分布による重み付けを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明のタイヤの使用条件評価装置は、車両に装着されたタイヤの使用条件を評価するタイヤの使用条件評価装置において、車両に加わる空気抵抗に関する空気抵抗因子となる車両の速度を取得すると共に、車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における車両の加速度を取得する速度・加速度取得部と、空気抵抗因子を複数に区分した区分別に、取得した加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成する加速度頻度分布生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明のタイヤの摩耗予測装置は、予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を予測するタイヤの摩耗予測装置において、少なくとも、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーと、請求項9に記載のタイヤの使用条件評価装置において生成した区分別の複数の加速度頻度分布と、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量と、を取得する情報取得部と、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、区分別の複数の加速度頻度分布による重み付けを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタイヤの使用条件評価方法および使用条件評価装置、並びにタイヤの摩耗予測方法および摩耗予測装置によれば、車両の走行速度等の空気抵抗因子の区分別に複数の加速度頻度分布を生成することができるため、加速度頻度分布は、車両の空気抵抗を考慮したものとすることができる。これにより、本発明では、車両の空気抵抗を考慮して、タイヤの使用条件の評価を好適に行うことができ、ひいては、タイヤの摩耗予測の精度も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1に係るタイヤの使用条件評価方法およびタイヤの摩耗予測方法を実行する使用条件評価システムおよび摩耗予測装置の概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1に係るタイヤの使用条件評価方法により導出された速度区分別の複数の加速度頻度マップの説明図である。
【図3】図3は、実施例1に係るタイヤの使用条件評価方法に関する一連のフローチャートである。
【図4】図4は、タイヤの使用条件評価方法の評価対象となるタイヤの上半部における断面図である。
【図5】図5は、実施例1に係るタイヤの摩耗予測方法に関する一連のフローチャートである。
【図6】図6は、変形例に係るタイヤの使用条件評価方法により導出された速度区分別の複数の加速度頻度マップの説明図である。
【図7】図7は、実施例2に係るタイヤの使用条件評価方法により導出された速度区分別の複数の加速度頻度マップの説明図である。
【図8】図8は、実施例2に係るタイヤの使用条件評価方法に関する一連のフローチャートである。
【図9】図9は、実施例2に係るタイヤの摩耗予測方法に関する一連のフローチャートである。
【図10】図10は、実施例3に係るタイヤの使用条件評価方法により導出された速度区分別の複数の加速度頻度マップの説明図である。
【図11】図11は、実施例3に係るタイヤの使用条件評価方法に関する一連のフローチャートである。
【図12】図12は、実施例3に係るタイヤの摩耗予測方法に関する一連のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係るタイヤの使用条件評価方法および使用条件評価装置、並びにタイヤの摩耗予測方法および摩耗予測装置について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0021】
実施例1に係るタイヤの使用条件評価方法は、使用条件評価装置を用いて、前後方向および横方向に対するタイヤの使用条件の厳しさを評価するものである。具体的に、タイヤの使用条件評価方法は、前後方向および横方向において測定した加速度の出現頻度をマップ化した加速度頻度マップ(加速度頻度分布)を生成し、生成した加速度頻度マップを、タイヤの使用条件の評価としている。また、タイヤの摩耗予測方法は、生成した加速度頻度マップを用いて、タイヤの摩耗状態の予測を行っている。先ず、図1を参照して、実施例1に係るタイヤの使用条件評価方法を実行するためのタイヤの使用条件評価システムの構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、タイヤ2の使用条件評価システム5は、車両1の前後方向および横方向の加速度を測定可能な2軸加速度センサ7と、車両1の前後方向における速度を測定可能な速度センサ8と、2軸加速度センサ7と速度センサ8とが接続された使用条件評価装置9と、で構成されている。
【0023】
2軸加速度センサ7は、車両1の前後方向およびこれに直交する横方向の加速度を測定可能に構成され、接続された使用条件評価装置9に測定結果を出力している。そして、使用条件評価装置9は、出力された測定結果を、前後方向および横方向の各成分における加速度データとして、車両1の一定走行距離毎に取得する。なお、実施例1では、2軸加速度センサ7を用いて、前後方向および横方向における加速度を取得するが、3軸加速度センサを用いて、前後方向、横方向および鉛直方向における加速度を取得してもよい。
【0024】
速度センサ8は、車両1の前後方向における走行速度を測定しており、接続された使用条件評価装置9に測定結果を出力している。この場合も、使用条件評価装置9は、出力された測定結果を、前後方向における速度データとして、車両1の一定走行距離毎に取得する。
【0025】
このとき、2軸加速度センサ7および速度センサ8は、加速度および速度を同期させながら測定しており、使用条件評価装置9は、同期させた加速度データと速度データとを対応付けて取得する。
【0026】
使用条件評価装置9は、いわゆる、コンピュータであり、取得した加速度データおよび速度データに基づいて加速度頻度マップM(図2参照)を生成している。具体的に、使用条件評価装置9は、処理部15と、記憶部16と、情報通信部17と、これらを接続する入出力部(I/O)18と、を備えており、これらが協働することにより、タイヤ2の使用条件の評価が実行される。
【0027】
情報通信部17は、使用条件評価装置9に入力された速度データと各成分の加速度データとを取得し、取得した加速度データおよび速度データを対応付けて、入出力部18を介して、記憶部16に保存する。つまり、情報通信部17は、速度データおよび加速度データを取得する速度・加速度取得部として機能している。
【0028】
記憶部16は、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリを組み合わせて構成され、取得した速度データおよび加速度データを保存可能に構成される。また、記憶部16には、加速度頻度マップMを生成するためのマップ生成プログラム20が格納されている。
【0029】
処理部15は、各種プログラムを実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリや、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されている。従って、加速度頻度マップMを生成する場合、処理部15は、記憶部16に保存されたマップ生成プログラム20を展開すると共に、記憶部16に保存された速度データおよび加速度データを入出力部18を介して読み出す。この後、処理部15は、読み出した速度データおよび加速度データに基づき、マップ生成プログラム20に従って演算を行うことで、加速度頻度マップMを生成することができる。つまり、処理部15は、マップ生成プログラム20に従って演算を行うことで、加速度頻度分布生成部として機能する。
【0030】
続いて、上記したタイヤ2の使用条件評価システム5において、取得した速度データおよび加速度データから加速度頻度マップMを生成するタイヤの使用条件評価方法について説明する。このタイヤの使用条件評価方法では、車両1の速度区分別に複数の加速度頻度マップMを生成することで、車両1に加わる空気抵抗を考慮したタイヤの使用条件の評価を行うことが可能となっている。つまり、空気抵抗は、車両1の走行速度が重要な空気抵抗因子となっており、車両1の速度区分別に複数の加速度頻度マップMを生成することで、空気抵抗を考慮できる。
【0031】
タイヤ2の使用条件評価方法は、加速度データを取得する加速度取得工程と、速度データを取得する速度取得工程と、取得した速度データおよび加速度データに基づいて加速度頻度マップMを生成するマップ生成工程(加速度頻度分布生成工程)と、を備えている。
【0032】
速度取得工程では、走行する車両1の一定距離間隔毎に、前後方向における速度データを取得しており、取得した速度データを記憶部16に保存している。
【0033】
加速度取得工程では、2軸加速度センサ7を用いて、走行する車両1の一定距離間隔毎に、前後方向および横方向における加速度データを取得しており、取得した各成分の加速度データを記憶部16に保存している。このとき、2軸加速度センサ7および速度センサ8は、加速度および速度を同期させながら測定しているため、加速度取得工程では、同期させた加速度データと速度データとを対応付けて取得している。
【0034】
マップ生成工程では、記憶部16に保存された複数の速度データと、各速度データに対応付けられた前後方向および横方向の複数の加速度データとに基づいて、速度区分別に複数の加速度頻度マップMが生成される。具体的に、マップ生成工程では、車両1の走行速度を均等となるように複数に区分し、均等となった速度区分毎に各成分の加速度の発生頻度をプロットすることにより、加速度頻度マップMを生成している。
【0035】
例えば、図2に示すように、車両1の走行速度は、0km/h〜20km/hの第1区分と、20km/h〜40km/hの第2区分と、40km/h〜60km/hの第3区分と、60km/h〜80km/hの第4区分と、80km/h〜100km/hの第5区分と、に等間隔に区分けされている。そして、マップ生成工程では、第1区分における前後方向の加速度の出現頻度をプロットし、また、第1区分における横方向の加速度の出現頻度をプロットすることで、第1区分における加速度頻度マップM1を生成する。同様の手順で、第2区分における加速度頻度マップM2、第3区分における加速度頻度マップM3、第4区分における加速度頻度マップM4、および第5区分における加速度頻度マップM5を生成する。これにより、マップ生成工程では、速度区分別に5つの加速度頻度マップMを生成することができる。
【0036】
続いて、図3を参照して、上記したタイヤ2の使用条件評価方法における一連のフローについて説明する。タイヤ2の使用条件評価方法では、先ず、予め定められた走行パターンに従って走行する車両1の速度データを取得し、速度データの取得に同期させて、前後方向および横方向の各成分における加速度データを取得する(ステップS1:速度取得工程および加速度取得工程)。取得された加速度データは、同期させて取得した速度データに対応付けられて、車両の一定走行距離間隔毎に記憶部16へ順次保存(サンプリング)される。
【0037】
続いて、車両1の走行後、使用条件評価装置9は、記憶部16に保存されたマップ生成プログラム20を展開し、速度データに対応付けられた加速度データを、速度区分別に振り分ける(ステップS2)。この後、使用条件評価装置9は、各速度区分における加速度の出現頻度をそれぞれプロットして、車両1の速度区分別に複数の加速度頻度マップMを生成する(ステップS3:マップ生成工程)。
【0038】
ここで、上記したタイヤ2の使用条件評価方法によって得られた車両1の速度区分別の複数の加速度頻度マップMは、タイヤ2の使用条件を評価することに用いられている。例えば、車両1の速度区分別の複数の加速度頻度マップMは、国別の路面状況におけるタイヤ2の使用環境を比較する場合に用いられたり、あるいは、タイヤ2の摩耗予測を行う場合に用いられたりする。以下では、上記したタイヤ2の使用条件評価方法によって得られた車両1の速度区分別の複数の加速度頻度マップMを用いて、タイヤ2の摩耗予測を行うタイヤ2の摩耗予測方法について説明する。
【0039】
タイヤ2の摩耗予測方法の説明に先立ち、図4を参照して、タイヤ2の摩耗予測方法の適用の対象であるタイヤ2について説明する。タイヤ2は、カーカスや補強ベルト等をゴム材料によって被覆した複合材料であり、トレッド面35が地面と接地する。タイヤ内面34とトレッド面35との間にはアンダートレッド36が設けられている。トレッド面35とアンダートレッド36との間のゴム層をキャップトレッド37といい、キャップトレッド37を構成するゴム材料をトレッドゴムという。トレッド面35には複数の溝32および複数のブロック33が形成されている。そして、複数の溝32および複数のブロック33により、トレッド面35にはトレッドパターンが形成される。
【0040】
タイヤ2が車両1に取り付けられて転動すると、トレッドゴムが摩耗する結果、タイヤ2のトレッド面35等が摩耗する。そして、このトレッド面35等の摩耗量は、トレッド面35等に作用する摩擦力、ひいてはトレッド面35等に作用する加速度に比例する。従って、車両1に装着されたタイヤ2の使用条件の厳しさを、上記の速度区分別の複数の加速度頻度マップMを用いて評価することで、タイヤ2の摩耗を評価したり、摩耗量を推定したりすることが可能となる。
【0041】
続いて、再び図1を参照して、タイヤ2の摩耗予測方法を実行可能な摩耗予測装置40について説明する。この摩耗予測装置40は、上記のタイヤ2の使用条件評価システム5において生成した速度区分別の複数の加速度頻度マップMを取得可能に構成されている。摩耗予測装置40は、いわゆる、コンピュータであり、上記した加速度頻度マップMを含む各種データに基づいて、タイヤ2の摩耗予測に関する演算を行うことにより、タイヤ2の摩耗量を予測するものである。なお、実施例1では、説明を簡単にすべく、使用条件評価装置9と、摩耗予測装置40とを別体としたが、これを単一のコンピュータで構成してもよい。また、使用条件評価装置9では、速度データおよび加速度データの取得のみを行い、タイヤ2の使用条件の評価を摩耗予測装置40で行ってもよい。摩耗予測装置40は、処理部45と、記憶部46と、情報通信部(情報取得部)47とを備え、これら各部は入出力部48によって接続されている。
【0042】
情報通信部47は、入力された各種データを取得し、取得した各種データを入出力部48を介して記憶部46に保存したり、処理部45に出力したりする。ここで、各種データとしては、タイヤ2に発生する単位走行距離当たりの摩擦エネルギー、車両諸元データ、タイヤ特性データ、走行パターン、上記した加速度頻度マップM、摩耗エネルギーに対する摩耗量のデータ、タイヤ2の各位置における溝32の深さのデータ等がある。
【0043】
単位走行距離当たりの摩擦エネルギーは、摩擦エネルギー測定装置によって、タイヤ2の各位置における単位走行距離当たりの摩擦エネルギーが導出される。摩擦エネルギー測定装置は、例えば、シャシダイ上にタイヤ2を接地させ、タイヤ2に垂直抗力を加えた状態で転動させることにより、タイヤ2の各位置における単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを測定している。
【0044】
なお、摩擦エネルギー測定装置は、上記の構成に限らず、例えば、有限要素法等の解析手法を用いて、単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを導出してもよい。具体的に、摩擦エネルギー測定装置は、タイヤ2を有限個の要素に分割したタイヤモデルを転動解析することにより、単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを導出できる。すなわち、摩擦エネルギー測定装置は、摩擦エネルギーを算出する場合、生成したタイヤモデルに対し、垂直抗力を与えた状態で転動させ、タイヤ2に作用する力(例えば、コーナーリングフォースや前後力)が略定常状態となった後の転動解析結果から、定常状態における単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを導出する。同様に、摩擦エネルギー測定装置は、タイヤ2の駆動状態における単位走行距離当たりの摩擦エネルギー、タイヤ2の制動状態における単位走行距離当たりの摩擦エネルギー、およびタイヤ2の旋回状態における単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを導出できる。なお、解析手法は、有限要素法に限られず、境界要素法や有限差分法等も使用できる。
【0045】
車両の諸元データは、車両の重量、ホイールアライメント、LSD(Limited Slip Differential)、アッカーマン率、サスペンション特性、駆動力配分および制動力配分等であり、タイヤ2の特性データは、動荷重半径、コーナリングパワー等である。また、走行パターンは、車両が走行する走行経路を予め設定したものであり、走行経路としては、高速道路等の種々の経路が設定される。なお、車両諸元データ、タイヤ特性データおよび走行パターンは、タイヤ2の摩耗予測に先立ち、予め記憶部46に記憶されている。また、タイヤ2の各位置における溝32の深さのデータは、測定により取得される。
【0046】
摩擦エネルギーに対する摩耗量のデータは、車両1の前後方向および横方向の成分毎に分けて導出されている。前後方向において、摩擦エネルギーに対する摩耗量のデータを導出する場合、任意の摩擦エネルギーが付与された状態でタイヤ2を転動させ、任意の摩擦エネルギーに対する単位走行距離当たりのタイヤ2の摩耗量を測定する。そして、任意の摩擦エネルギーを変更して複数回、タイヤ2の摩耗量を測定することにより、摩擦エネルギーに対する単位走行距離当たりのタイヤ2の摩耗量の関係を、摩擦エネルギーに対する摩耗量のデータとして導出することができる。
【0047】
記憶部46は、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリを組み合わせて構成され、取得した上記の各種データを保存可能に構成される。また、記憶部46には、タイヤ2の摩耗を予測するためのタイヤ摩耗予測プログラム50が格納されている。
【0048】
処理部45は、各種プログラムを実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリや、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されている。従って、タイヤ2の摩耗予測を行う場合、処理部45は、記憶部46に保存されたタイヤ摩耗予測プログラム50を展開すると共に、記憶部46に保存された各種データを入出力部48を介して読み出す。この後、処理部45は、読み出した各種データや処理部45に入力された各種データに基づき、タイヤ摩耗予測プログラム50に従って演算を行うことで、タイヤ2の摩耗状態を予測することができる。つまり、処理部45は、タイヤ摩耗予測プログラム50に従って演算を行うことで、摩耗予測部として機能する。
【0049】
続いて、上記したタイヤ2の摩耗予測装置40において、取得した各種データからタイヤ2の摩耗状態を予測するタイヤ2の摩耗予測方法について説明する。このタイヤ2の摩耗予測方法では、上記のタイヤ2の使用条件評価方法において生成された速度区分別の複数の加速度頻度マップMを用いて、タイヤ2の摩耗予測を行っている。なお、下記するタイヤ2の摩耗予測方法では、上記のタイヤ2の使用条件評価方法が含められている。このタイヤ2の摩耗予測方法は、摩擦エネルギー取得工程と、速度・加速度取得工程と、摩耗量取得工程と、マップ生成工程と、加速度・荷重導出工程と、摩耗予測工程と、を備えている。
【0050】
摩擦エネルギー取得工程では、タイヤ2の単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得しており、上記したように、摩擦エネルギー測定装置により導出される。速度・加速度取得工程は、上記のタイヤ2の使用条件評価方法における速度取得工程および加速度取得工程に相当するものであり、走行パターンに従って走行する車両の速度・加速度を一定距離間隔毎に取得している。
【0051】
摩耗量取得工程では、摩耗エネルギーに対するタイヤ2の摩耗量を取得しており、上記したように、摩擦エネルギーに対する単位走行距離当たりのタイヤ2の摩耗量の関係を、実測により導出する。マップ生成工程は、上記のタイヤ2の使用条件評価方法におけるマップ生成工程と同様であり、取得した速度データと、前後方向および横方向の成分毎の加速度データとに基づいて、速度区分別に複数の加速度頻度マップMを生成する。
【0052】
加速度・荷重導出工程では、車両諸元データ、タイヤ特性データ、および走行パターンに従って走行する車両1の走行状態に関する走行状態データに基づいて、タイヤ2に付与される加速度および荷重を導出する。つまり、車両1が走行パターンに従って走行することで、車両1のタイヤ2には、前後方向および横方向に加速度および荷重が付与される。このとき、車両諸元データおよびタイヤ特性データを考慮することにより、タイヤ2に付与される加速度および荷重を導出することができる。なお、車両1の走行状態として、少なくとも車両1の前後方向に空気抵抗が加わるように条件設定を行っているため、加速度・荷重導出工程で導出されたタイヤ2に付与される加速度および荷重は、車両1の前後方向における空気抵抗を考慮したものとなっている。合わせて、車両1の横方向に空気抵抗が加わるように条件設定を行ってもよい。
【0053】
摩耗予測工程では、タイヤ2の単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、速度区分別に生成した複数の加速度頻度マップM、およびタイヤ2に付与される加速度および荷重に基づいて、重み付けを行うことにより、タイヤ2の各位置における摩擦エネルギーを導出する。そして、摩耗予測工程では、導出したタイヤ2の各位置における摩擦エネルギー、摩擦エネルギーに対する摩耗量、およびタイヤ2の各位置における溝32の深さに基づいて、タイヤ2の摩耗寿命を導出する。
【0054】
ここで、図5を参照して、タイヤ2の摩耗予測方法における一連の動作フローについて説明する。先ず、摩耗予測装置40は、実測または解析等によって導出されたタイヤ2の各位置における単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する(ステップS11:摩擦エネルギー取得工程)。この後、摩耗予測装置40は、予め記憶部46に保存された車両諸元データおよびタイヤ特性データを取得する(ステップS12)。続いて、摩耗予測装置40は、走行パターンに従って走行する車両1の走行状態に関する走行状態データを取得する(ステップS13:速度・加速度取得工程)。このとき、走行状態データは、車両1の速度データおよび加速度データを含んだデータとなっている。
【0055】
そして、摩耗予測装置40は、ステップS12およびステップS13において取得した車両諸元データ、タイヤ特性データおよび走行状態データに基づいて、所定の走行パターンに従って走行する車両1の走行運動によってタイヤ2に付与される前後方向および横方向の加速度を導出すると共に、前後方向および横方向においてタイヤ2に加わる荷重を導出する(ステップS14)。このとき、上記したように、車両の走行状態は、少なくとも前後方向において空気抵抗を加味した条件設定としているため、タイヤ2に付与される加速度および荷重は、前後方向における空気抵抗を考慮したものとして導出される。
【0056】
次に、摩耗予測装置40は、ステップS13において取得した走行状態データの中の速度データおよび加速度データに基づいて、上記したタイヤ2の使用条件評価方法で説明したようなステップで、速度区分別に複数の加速度頻度マップMを生成する(ステップS15:マップ生成工程)。
【0057】
続いて、摩耗予測装置40は、ステップS11において取得したタイヤ2の各位置における単位走行距離あたりの摩擦エネルギーに対し、ステップS14において導出したタイヤ2に付与される前後方向および横方向の加速度・荷重に基づいて重み付けを行うことにより、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出する(ステップS16)。
【0058】
そして、摩耗予測装置40は、ステップS16において導出した速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーに対し、ステップS15において生成した速度区分別の複数の加速度頻度マップMに基づいて重み付けを行うことにより、タイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出する(ステップS17)。
【0059】
この後、摩耗予測装置40は、摩擦エネルギーに対するタイヤ2の摩耗量を取得する(ステップS18:摩耗量取得工程)と共に、タイヤ2の各位置における溝32の深さの測定データを取得する(ステップS19)。そして、摩耗予測装置40は、ステップS17において導出したタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤ2の摩耗量とから、タイヤ2の各位置における推定摩耗量を導出する。最後に、摩耗予測装置40は、導出したタイヤ2の各位置における推定摩耗量と、タイヤ2の各位置における溝32の深さとから、タイヤ2の各位置における推定摩耗寿命を導出する(ステップS20)。
【0060】
なお、ステップS11、ステップS12、ステップS13、ステップS18およびステップS19における各種データの取得は、平行して行ってもよいため、この順番に限らず、前後しても良い。
【0061】
以上のように、実施例1に係るタイヤ2の使用条件評価方法によれば、速度区分別に複数の加速度頻度マップMを用いることができるため、車両1の走行時における空気抵抗を考慮して、タイヤ2の使用条件を精度よく評価することができる。
【0062】
また、実施例1に係るタイヤ2の摩耗予測方法によれば、速度区分別の複数の加速度頻度マップMを用いることができるため、車両1の走行時における空気抵抗を考慮して、タイヤ2の摩耗状態を精度よく予測することができる。
【0063】
なお、実施例1では、マップ生成工程において、車両1の走行速度を、均等となるように複数に区分し、均等となった速度区分毎に加速度の発生頻度をプロットして、加速度頻度マップMを生成した。しかしながら、この構成に限らず、例えば、変形例として、車両1の走行速度の二乗を、均等となるように複数に区分し、均等となった二乗速度区分毎に加速度の発生頻度をプロットして、加速度頻度マップMa(図6参照)を生成してもよい。すなわち、空気抵抗は、車両1の走行速度の二乗と比例関係にあり、重要な空気抵抗因子であるため、車両1の走行速度の二乗を均等となるように複数に区分してもよい。
【0064】
例えば、図6に示すように、車両1の走行速度の範囲を0km/h〜140km/hとすると、車両1の走行速度の二乗の範囲は、0km2/h2〜19600km2/h2となる。このため、車両1の走行速度の二乗は、0km2/h2〜3920km2/h2の第1区分と、3920km2/h2〜7840km2/h2の第2区分と、7840km2/h2〜11760km2/h2の第3区分と、11760km2/h2〜15680km2/h2の第4区分と、15680km2/h2〜19600km2/h2の第5区分と、に等間隔に区分けされている。そして、マップ生成工程では、第1区分における前後方向の加速度の出現頻度をプロットし、また、第1区分における横方向の加速度の出現頻度をプロットすることで、第1区分における加速度頻度マップMa1を生成する。同様の手順で、第2区分における加速度頻度マップMa2、第3区分における加速度頻度マップMa3、第4区分における加速度頻度マップMa4、および第5区分における加速度頻度マップMa5を生成する。これにより、マップ生成工程では、速度区分別(二乗速度区分別)に5つの加速度頻度マップMaを生成することができる。
【0065】
この構成においても、空気抵抗を考慮して、速度区分別に複数の加速度頻度マップMaを生成することができるため、タイヤ2の使用条件評価方法においては、タイヤ2の使用条件を精度よく評価することができ、タイヤ2の摩耗予測方法においては、タイヤ2の摩耗を精度よく予測することができる。
【実施例2】
【0066】
次に、図7ないし図9を参照して、実施例2に係るタイヤ2の使用条件評価方法およびタイヤ2の摩耗予測方法について説明する。なお、実施例2では、重複した記載は避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。また、使用条件評価装置9および摩耗予測装置40は、実施例1と同様の装置構成であるため、説明を省略する。実施例1におけるタイヤ2の使用条件評価方法では、取得した車両1の前後方向および横方向の各成分における加速度データに基づいて、速度区分別の複数の加速度頻度マップMを生成した。しかしながら、実施例2におけるタイヤ2の使用条件評価方法では、取得した車両1の前後方向および横方向の各成分における加速度データのうち、車両1の前後方向における加速度データを補正し、補正した前後方向における加速度データおよび横方向における加速度データと速度データとに基づいて、速度区分別の複数の加速度頻度マップMb(図7参照)を生成している。このため、実施例2におけるタイヤ2の摩耗予測方法では、上記のように生成された速度区分別の複数の加速度頻度マップMbを用いて、タイヤ2の摩耗予測を行っている。
【0067】
具体的に、図8に示すように、実施例2のタイヤ2の使用条件評価方法は、加速度取得工程および速度取得工程(ステップS1)と、取得した車両1の前後方向における加速度データを補正する第1加速度補正工程(ステップS33)と、補正後の前後方向における加速度データおよび横方向における加速度データと速度データとに基づいて、加速度頻度マップMbを生成するマップ生成工程(ステップS34)と、を備えている。なお、加速度取得工程および速度取得工程は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
第1加速度補正工程は、取得した前後方向における加速度データを、(1)式に基づいて補正する。(1)式により前後方向における加速度データを補正することで、前後方向における加速度データは、前後方向における空気抵抗を考慮したものとなる。
【数1】
【0069】
そして、図7に示すように、マップ生成工程では、車両1の走行速度の二乗を、均等となるように複数に区分し、均等となった速度区分毎に、補正後の前後方向における加速度の発生頻度をプロットし、また、横方向における加速度の発生頻度をプロットすることで、空気抵抗を考慮した、区分別の複数の加速度頻度マップMbを生成している。
【0070】
続いて、図9を参照して、実施例2のタイヤ2の摩耗予測方法について説明する。このタイヤ2の摩耗予測方法は、実施例1のタイヤ2の摩耗予測方法におけるステップS14、ステップS15、ステップS16およびステップS17に代えて、ステップS44、ステップS45、ステップS46およびステップS47となっており、タイヤ2の摩耗予測に関する処理が一部異なっている。
【0071】
具体的に、ステップS14では、タイヤ2に付与される加速度および荷重は、空気抵抗を考慮して導出されていたが、ステップS44では、空気抵抗を考慮することなく、タイヤ2に付与される加速度および荷重を導出している。つまり、車両1の走行状態として、前後方向に空気抵抗が加わるように条件設定を行っていないため、加速度・荷重導出工程で導出されたタイヤ2に付与される加速度および荷重は、空気抵抗を考慮したものとなっていない。
【0072】
また、ステップS15では、前後方向における加速度データの補正を行わずに、速度区分別の複数の加速度頻度マップMを生成したが、ステップS45では、上記したように、前後方向における加速度データの補正を行って、空気抵抗を考慮した速度区分別の複数の加速度頻度マップMbを生成している。
【0073】
さらに、ステップS16では、タイヤ2の各位置における単位走行距離あたりの摩擦エネルギーと、空気抵抗を考慮したタイヤ2に付与される加速度および荷重とに基づいて、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出した。そして、ステップS17では、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーと、空気抵抗を考慮していない速度区分別の複数の加速度頻度マップMとに基づいて、タイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出した。しかしながら、ステップS46では、タイヤ2の各位置における単位走行距離あたりの摩擦エネルギーと、空気抵抗を考慮していないタイヤ2に付与される加速度および荷重とに基づいて、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出している。そして、ステップS47では、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーと、前後方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMbとに基づいて、タイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出している。
【0074】
以上のように、実施例2に係るタイヤ2の使用条件評価方法によれば、前後方向における空気抵抗を考慮した速度区分別の複数の加速度頻度マップMbを用いることができるため、タイヤ2の使用条件を精度よく評価することができる。また、実施例2に係るタイヤ2の摩耗予測方法によれば、空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMbを用いることができるため、車両1の走行時における空気抵抗を考慮して、タイヤ2の摩耗状態を精度よく予測することができる。
【実施例3】
【0075】
次に、図10ないし図12を参照して、実施例3に係るタイヤ2の使用条件評価方法およびタイヤ2の摩耗予測方法について説明する。なお、実施例3においても、重複した記載は避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。また、使用条件評価装置9および摩耗予測装置40は、実施例1と同様の装置構成であるため、説明を省略する。実施例1におけるタイヤ2の使用条件評価方法では、取得した車両1の前後方向および横方向の各成分における加速度データに基づいて、速度区分別の複数の加速度頻度マップMを生成した。しかしながら、実施例3におけるタイヤ2の使用条件評価方法では、取得した車両1の前後方向および横方向の各成分における加速度データをそれぞれ補正し、補正した前後方向および横方向における加速度データと速度データとに基づいて、速度区分別の複数の加速度頻度マップMcを生成している。このため、実施例3におけるタイヤ2の摩耗予測方法は、上記のように生成された速度区分別の複数の加速度頻度マップMcを用いて、タイヤ2の摩耗予測を行っている。
【0076】
具体的に、図11に示すように、実施例3のタイヤ2の使用条件評価方法は、加速度取得工程および速度取得工程(ステップS1)と、取得した車両1の前後方向における加速度データを補正する第1加速度補正工程(ステップS33)と、取得した車両1の横方向における加速度データを補正する第2加速度補正工程(ステップS54)と、補正後の前後方向および横方向における加速度データと速度データとに基づいて、加速度頻度マップMcを生成するマップ生成工程(ステップS55)と、を備えている。なお、加速度取得工程および速度取得工程は、実施例1と同様であり、第1加速度補正工程は、第2実施例と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
第2加速度補正工程は、取得した横方向における加速度データを、(2)式に基づいて補正する。(2)式により横方向における加速度データを補正することで、横方向における加速度データは、空気抵抗によるコンプライアンスステアを考慮したものとなる。
【数2】
【0078】
そして、図10に示すように、マップ生成工程では、車両1の走行速度の二乗を、均等となるように複数に区分し、均等となった区分毎に、補正後の前後方向における加速度の発生頻度をプロットし、また、補正後の横方向における加速度の発生頻度をプロットすることで、空気抵抗を考慮した、区分別の複数の加速度頻度マップMcを生成している。
【0079】
続いて、図12を参照して、実施例3のタイヤ2の摩耗予測方法について説明するに、このタイヤの摩耗予測方法は、実施例1のタイヤ2の摩耗予測方法におけるステップS12およびステップS14を行わず、また、ステップS15、ステップS16およびステップS17に代えて、ステップS65、ステップS66およびステップS67となっており、タイヤ2の摩耗予測に関する処理が一部異なっている。
【0080】
具体的に、ステップS15では、前後方向および横方向における加速度データの補正を行わずに、区分別の複数の加速度頻度マップMを生成したが、ステップS65では、上記したように、前後方向および横方向における加速度データの補正を行って、前後方向および横方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMcを生成している。このとき、区分別の複数の加速度頻度マップMcは、前後方向および横方向において空気抵抗を考慮しているため、ステップS14をもって空気抵抗を考慮する必要はなく、ステップS14を省略でき、あわせてステップS12を省略できる。
【0081】
さらに、ステップS16では、タイヤ2の各位置における単位走行距離あたりの摩擦エネルギーと、空気抵抗を考慮したタイヤ2に付与される加速度および荷重とに基づいて、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出した。そして、ステップS17では、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーと、空気抵抗を考慮していない区分別の複数の加速度頻度マップMとに基づいて、タイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出した。しかしながら、ステップS66では、タイヤ2の各位置における単位走行距離あたりの摩擦エネルギーから、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出している。そして、ステップS67では、速度区分別におけるタイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーと、前後方向および横方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMcとに基づいて、タイヤ2の各位置の推定摩擦エネルギーを導出している。
【0082】
以上のように、実施例3に係るタイヤ2の使用条件評価方法によれば、前後方向および横方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMcを用いることができるため、タイヤ2の使用条件を精度よく評価することができる。また、実施例3に係るタイヤ2の摩耗予測方法によれば、前後方向および横方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMcを用いることができるため、車両1の走行時における空気抵抗を考慮して、タイヤ2の摩耗状態を精度よく予測することができる。さらに、実施例3に係るタイヤ2の摩耗予測方法によれば、前後方向および横方向における空気抵抗を考慮した区分別の複数の加速度頻度マップMcを用いることにより、ステップ数を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明に係るタイヤの使用条件評価方法およびタイヤの摩耗予測方法は、車両の空気抵抗を考慮する場合において有用であり、特に、タイヤの使用条件の評価の精度を向上を図る場合に適している。
【符号の説明】
【0084】
1 車両
2 タイヤ
5 使用条件評価システム
7 2軸加速度センサ
8 速度センサ
9 使用条件評価装置
15 使用条件評価装置の処理部
16 使用条件評価装置の記憶部
17 使用条件評価装置の情報通信部
18 使用条件評価装置の入出力部
20 マップ生成プログラム
32 溝
33 ブロック
34 タイヤ内面
35 トレッド面
36 アンダートレッド
37 キャップトレッド
40 摩耗予測装置
45 摩耗予測装置の処理部
46 摩耗予測装置の記憶部
47 摩耗予測装置の情報通信部
48 摩耗予測装置の入出力部
50 タイヤ摩耗予測プログラム
M 加速度頻度マップ(実施例1)
Ma 加速度頻度マップ(変形例)
Mb 加速度頻度マップ(実施例2)
Mc 加速度頻度マップ(実施例3)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されたタイヤの使用条件を、コンピュータを用いて評価するタイヤの使用条件評価方法であって、
前記車両に加わる空気抵抗に関する空気抵抗因子となる前記車両の速度を取得する速度取得工程と、
前記速度取得工程による前記車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における前記車両の加速度を取得する加速度取得工程と、
前記空気抵抗因子を複数に区分した区分別に、取得した加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成する加速度頻度分布生成工程と、を備えたことを特徴とするタイヤの使用条件評価方法。
【請求項2】
前記空気抵抗因子は、前記車両の速度であり、
前記加速度頻度分布生成工程では、取得した前記車両の速度を速度区分別に複数に等分し、等分した速度区分別に、前記車両の加速度の出現頻度をプロットすることで、速度区分別の複数の前記加速度頻度分布を生成していることを特徴とする請求項1に記載のタイヤの使用条件評価方法。
【請求項3】
前記空気抵抗因子は、前記車両の速度を二乗したものであり、
前記加速度頻度分布生成工程では、取得した前記車両の速度を二乗し、前記車両の速度の二乗を二乗速度区分別に複数に等分し、等分した二乗速度区分別に、前記車両の加速度の出現頻度をプロットすることで、二乗速度区分別の複数の前記加速度頻度分布を生成していることを特徴とする請求項1に記載のタイヤの使用条件評価方法。
【請求項4】
前記加速度取得工程では、前記車両の前後方向における加速度を取得しており、
前記加速度取得工程後且つ前記加速度頻度分布生成工程前において、取得した前記車両の前後方向における加速度に対し、前記車両の空気抵抗を考慮した補正を行う第1加速度補正工程を更に備え、
前記加速度頻度分布生成工程では、補正後の前記車両の前後方向における加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の前記加速度頻度分布を生成していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤの使用条件評価方法。
【請求項5】
前記加速度取得工程では、前記車両の横方向における加速度を取得しており、
前記加速度取得工程後且つ前記加速度頻度分布生成工程前において、取得した前記車両の横方向における加速度に対し、前記車両の空気抵抗を考慮した補正を行う第2加速度補正工程を更に備え、
前記加速度頻度分布生成工程では、補正後の前記車両の横方向における加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の前記加速度頻度分布を生成していることを特徴とする請求項4に記載のタイヤの使用条件評価方法。
【請求項6】
予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、
前記走行パターンに従って走行する車両の速度と、前記車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における前記車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、
摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、
請求項1ないし3に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の前記加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、
予め取得した車両諸元データ、タイヤ特性データ、および前記走行パターンに従って走行する前記車両の走行状態に関する走行状態データに基づいて、タイヤに付与される加速度および荷重を、空気抵抗を考慮して導出する加速度・荷重導出工程と、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、導出したタイヤに付与される加速度および荷重による重み付けと、区分別の複数の前記加速度頻度分布による重み付けとを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、前記走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とするタイヤの摩耗予測方法。
【請求項7】
予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、
前記走行パターンに従って走行する車両の速度と、前記車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における前記車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、
摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、
請求項4に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の前記加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、
予め取得した車両諸元データ、タイヤ特性データ、および前記走行パターンに従って走行する前記車両の走行状態に関する走行状態データに基づいて、タイヤに付与される加速度および荷重を導出する加速度・荷重導出工程と、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、導出したタイヤに付与される加速度および荷重による重み付けと、区分別の複数の前記加速度頻度分布による重み付けとを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、前記走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とするタイヤの摩耗予測方法。
【請求項8】
予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、
前記走行パターンに従って走行する車両の速度と、前記車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における前記車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、
摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、
請求項5に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の前記加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、区分別の複数の前記加速度頻度分布による重み付けを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、前記走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とするタイヤの摩耗予測方法。
【請求項9】
車両に装着されたタイヤの使用条件を評価するタイヤの使用条件評価装置において、
前記車両に加わる空気抵抗に関する空気抵抗因子となる前記車両の速度を取得すると共に、前記車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における前記車両の加速度を取得する速度・加速度取得部と、
前記空気抵抗因子を複数に区分した区分別に、取得した加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成する加速度頻度分布生成部と、を備えたことを特徴とするタイヤの使用条件評価装置。
【請求項10】
予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を予測するタイヤの摩耗予測装置において、
少なくとも、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーと、請求項9に記載のタイヤの使用条件評価装置において生成した区分別の複数の前記加速度頻度分布と、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量と、を取得する情報取得部と、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、区分別の複数の前記加速度頻度分布による重み付けを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、前記走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測部と、を備えたことを特徴とするタイヤの摩耗予測装置。
【請求項1】
車両に装着されたタイヤの使用条件を、コンピュータを用いて評価するタイヤの使用条件評価方法であって、
前記車両に加わる空気抵抗に関する空気抵抗因子となる前記車両の速度を取得する速度取得工程と、
前記速度取得工程による前記車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における前記車両の加速度を取得する加速度取得工程と、
前記空気抵抗因子を複数に区分した区分別に、取得した加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成する加速度頻度分布生成工程と、を備えたことを特徴とするタイヤの使用条件評価方法。
【請求項2】
前記空気抵抗因子は、前記車両の速度であり、
前記加速度頻度分布生成工程では、取得した前記車両の速度を速度区分別に複数に等分し、等分した速度区分別に、前記車両の加速度の出現頻度をプロットすることで、速度区分別の複数の前記加速度頻度分布を生成していることを特徴とする請求項1に記載のタイヤの使用条件評価方法。
【請求項3】
前記空気抵抗因子は、前記車両の速度を二乗したものであり、
前記加速度頻度分布生成工程では、取得した前記車両の速度を二乗し、前記車両の速度の二乗を二乗速度区分別に複数に等分し、等分した二乗速度区分別に、前記車両の加速度の出現頻度をプロットすることで、二乗速度区分別の複数の前記加速度頻度分布を生成していることを特徴とする請求項1に記載のタイヤの使用条件評価方法。
【請求項4】
前記加速度取得工程では、前記車両の前後方向における加速度を取得しており、
前記加速度取得工程後且つ前記加速度頻度分布生成工程前において、取得した前記車両の前後方向における加速度に対し、前記車両の空気抵抗を考慮した補正を行う第1加速度補正工程を更に備え、
前記加速度頻度分布生成工程では、補正後の前記車両の前後方向における加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の前記加速度頻度分布を生成していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤの使用条件評価方法。
【請求項5】
前記加速度取得工程では、前記車両の横方向における加速度を取得しており、
前記加速度取得工程後且つ前記加速度頻度分布生成工程前において、取得した前記車両の横方向における加速度に対し、前記車両の空気抵抗を考慮した補正を行う第2加速度補正工程を更に備え、
前記加速度頻度分布生成工程では、補正後の前記車両の横方向における加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の前記加速度頻度分布を生成していることを特徴とする請求項4に記載のタイヤの使用条件評価方法。
【請求項6】
予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、
前記走行パターンに従って走行する車両の速度と、前記車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における前記車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、
摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、
請求項1ないし3に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の前記加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、
予め取得した車両諸元データ、タイヤ特性データ、および前記走行パターンに従って走行する前記車両の走行状態に関する走行状態データに基づいて、タイヤに付与される加速度および荷重を、空気抵抗を考慮して導出する加速度・荷重導出工程と、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、導出したタイヤに付与される加速度および荷重による重み付けと、区分別の複数の前記加速度頻度分布による重み付けとを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、前記走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とするタイヤの摩耗予測方法。
【請求項7】
予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、
前記走行パターンに従って走行する車両の速度と、前記車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における前記車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、
摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、
請求項4に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の前記加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、
予め取得した車両諸元データ、タイヤ特性データ、および前記走行パターンに従って走行する前記車両の走行状態に関する走行状態データに基づいて、タイヤに付与される加速度および荷重を導出する加速度・荷重導出工程と、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、導出したタイヤに付与される加速度および荷重による重み付けと、区分別の複数の前記加速度頻度分布による重み付けとを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、前記走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とするタイヤの摩耗予測方法。
【請求項8】
予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を、コンピュータを用いて予測するタイヤの摩耗予測方法であって、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーを取得する摩擦エネルギー取得工程と、
前記走行パターンに従って走行する車両の速度と、前記車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における前記車両の加速度とを取得する速度・加速度取得工程と、
摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量を取得する摩耗量取得工程と、
請求項5に記載のタイヤの使用条件評価方法により生成した区分別の複数の前記加速度頻度分布を取得する加速度頻度分布取得工程と、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、区分別の複数の前記加速度頻度分布による重み付けを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、前記走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測工程と、を備えたことを特徴とするタイヤの摩耗予測方法。
【請求項9】
車両に装着されたタイヤの使用条件を評価するタイヤの使用条件評価装置において、
前記車両に加わる空気抵抗に関する空気抵抗因子となる前記車両の速度を取得すると共に、前記車両の速度の取得に同期させて、少なくとも2方向における前記車両の加速度を取得する速度・加速度取得部と、
前記空気抵抗因子を複数に区分した区分別に、取得した加速度の出現頻度をプロットして、区分別の複数の加速度頻度分布を生成する加速度頻度分布生成部と、を備えたことを特徴とするタイヤの使用条件評価装置。
【請求項10】
予め定められた走行パターンに従って走行する車両のタイヤの摩耗を予測するタイヤの摩耗予測装置において、
少なくとも、タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーと、請求項9に記載のタイヤの使用条件評価装置において生成した区分別の複数の前記加速度頻度分布と、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量と、を取得する情報取得部と、
タイヤの単位走行距離当たりの摩擦エネルギーに対し、区分別の複数の前記加速度頻度分布による重み付けを行って、タイヤの各位置における推定摩擦エネルギーを導出し、導出したタイヤの各位置における推定摩擦エネルギーと、摩擦エネルギーに対するタイヤの摩耗量とから、前記走行パターンにおけるタイヤの各位置の摩耗量を予測する摩耗予測部と、を備えたことを特徴とするタイヤの摩耗予測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−149879(P2011−149879A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12526(P2010−12526)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
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