説明

タイヤの振動特性の試験装置、及びそれを用いた試験方法

【課題】ロードノイズ性能の評価を精度良く行う。
【解決手段】ドラムと、このドラムを回転可能に保持する回転駆動手段と、前記ドラムの外周面に試験タイヤを所要の接地荷重で接触させながら該試験タイヤを回転可能に保持するタイヤ保持手段と、前記回転時の試験タイヤの軸力の変動を測定する測定手段とを具える。前記ドラムは、外周面に、ドラム周方向に等ピッチ間隔Pを有して一直線上に整列して取り付けられる複数かつ同形状の加振用突起体を具え、しかも前記加振用突起体の取付け数N及びピッチ間隔Pを変更可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の周波数にて加振されかつ特定の走行速度で走行する試験タイヤの振動特性を試験するタイヤの振動特性の試験装置、及びそれを用いた試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中のタイヤは、トレッド部に凹設される種々な模様のトレッドパターン、及び路面上の凹凸などによって振動し、この振動が車軸やサスペンションなどを伝って車輌側に入力され、車室内に音となって侵入する。
【0003】
この音は、ロードノイズと呼ばれる周波数10〜500Hzのものであり、この周波数が、人の感覚が比較的敏感な周波数域であることから、耳障りな騒音となる。特に、タイヤから伝わる振動の周波数と、サスペンションなどの車輌側の共振周波数とが一致した場合には、騒音レベルが高くなって、搭乗者に大きな不快感を与えることとなる。従って、前記ロードノイズを低減させるためには、車輌側の共振周波数と等しい或いはそれに近い特定の周波数における振動を低減したタイヤを作成することが必要となる。
【0004】
そのためには、タイヤの製品開発において、特定の周波数におけるタイヤの振動特性を正確に評価しうることが重要となる
【0005】
他方、従来より、ロードノイズに影響を与えるタイヤの振動特性を評価する方法として、種々の検討が行われており、例えば、通常路面を模擬したレプリカ路面を外周面に形成したドラムを用い、このレプリカ路面上でタイヤを走行させ、その時発生するタイヤの軸力変動に基づいて評価するもの、或いはドラムの外周面に突起体を設け、この突起体によって加振される走行中のタイヤの軸力変動に基づいて評価するもの(例えば特許文献1など)などが挙げられる。
【0006】
しかし、このような従来の評価方法では、特定の周波数におけるタイヤの振動特性を正確に評価することが難しく、実車走行におけるロードノイズの測定結果との間に不一致を招く場合があるという問題が生じていた。
【0007】
そこで本発明者は、特定の周波数が強調された路面を走行させることで、タイヤを特定の周波数で加振する加振走行試験を行うとともに、その時に発生するタイヤの軸力変動を周波数分析することで、前記特定の周波数におけるタイヤの振動特性をより正確に評価しうることを見出した。又前記特定の周波数が強調された路面として、ドラムの外周面上に、加振用の複数の突起体をドラム周方向に一定のピッチ間隔Pを隔てて取り付けたドラムが使用できることを提案した。この場合、下記式で示す周波数Fにてタイヤを加振しうる。
F=V/P
(式中、F:周波数、V:タイヤの走行速度、P:突起体のピッチ間隔)
【0008】
他方、実際の走行においては、走行速度によって加振力も変化する。従って、ロードノイズが問題となっている走行速度にて前記加振走行試験を行うことが、実際のロードノイズ性能をより正確に評価する上で好ましい。或いは、基準の走行速度を設定し、この速度に基づいて前記加振走行試験を行うことも好ましい。しかし、特定の周波数は、車輌の仕様などによって相違する。従って、この評価試験を行うためには、タイヤの走行速度を設定した後、この走行速度と特定の周波数とに基づいて、加振用突起体のピッチ間隔を設定することが必要であり、又そのためにはドラムにおいて、前記加振用突起体の取付け数N及びピッチ間隔Pを変更可能とすることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−85297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、ドラムの外周面に、複数の同形状の加振用突起体をドラム周方向に等ピッチ間隔Pを隔てて取り付けるとともに、その加振用突起体の取付け数N及びピッチ間隔Pを変更可能とすることを基本として、特定の周波数におけるタイヤの振動特性を正確に評価することができ、ロードノイズ性能の評価に役立つタイヤの振動特性の試験装置、及びそれを用いた試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、ドラムと、このドラムを回転可能に保持する回転駆動手段と、前記ドラムの外周面に試験タイヤを所要の接地荷重で接触させながら該試験タイヤを回転可能に保持するタイヤ保持手段と、前記回転時の試験タイヤの軸力の変動を測定する測定手段とを具えるとともに、前記ドラムは、外周面に、ドラム周方向に等ピッチ間隔Pを有して一直線上に整列して取り付けられる複数かつ同形状の加振用突起体を具え、しかも前記加振用突起体の取付け数N及びピッチ間隔Pを変更可能としたことを特徴としている。
【0012】
又請求項2の発明では、前記加振用突起体は、前記ドラムの外周面からの高さHが0.5〜7.0mm、ドラム周方向の長さLが3mm以上かつ前記ピッチ間隔Pの0.5倍以下、かつドラム軸芯方向の巾Wが3mm以上であることを特徴としている。
【0013】
又請求項3の発明では、前記加振用突起体は、試験タイヤが乗り上げる側の前縁が円弧をなす板状体、又は半円球状体であることを特徴としている。
【0014】
又請求項4の発明では、前記加振用突起体の巾Wは、タイヤ接地巾TWの1/7倍以下であり、
しかも前記加振用突起体は、試験タイヤのタイヤ赤道が通る中央の周方向線上、及びこの中央の周方向線からドラム軸心方向両側にタイヤ接地巾TWの1/4倍の距離を隔たる位置に配される一対の側の周方向線上に、それぞれ配されるとともに、ドラム軸心方向に隣り合う加振用突起体同士は、ドラム軸心線上に整列していることを特徴としている。
【0015】
又請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかに記載のタイヤの振動特性の試験装置を用い、特定の周波数F0にて加振された特定の走行速度V0の試験タイヤの振動特性を試験する試験方法であって、
タイヤの走行速度Vを、前記特定の走行速度V0に設定した後、
前記特定の走行速度V0と特定の周波数F0とから、次式(1)にて、前記加振用突起体のピッチ間隔Pを設定するピッチ設定ステップ、
P=V0/F0 −−−−(1)
前記ピッチ設定ステップにて求めたピッチ間隔Pに基づき、前記加振用突起体をドラムの外周面に取り付ける加振用突起体取付けステップ、
及び、前記ドラムに試験タイヤを所要の接地荷重で接触させることにより、該試験タイヤを前記周波数F0にて加振しながら前記走行速度V0にて回転させるとともに、その時発生する試験タイヤの軸力の変動を前記測定手段によって測定する軸力変動測定ステップを順次行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は叙上の如く、ドラムの外周面に、ドラム周方向に等ピッチ間隔Pを隔てて取り付けられる複数の同形状の加振用突起体を具えるとともに、この加振用突起体の取付け数N及びピッチ間隔Pを変更可能に構成している。そのため、試験タイヤを、例えばロードノイズが問題となる特定の周波数にて加振しながら、例えばロードノイズが問題となる特定の走行速度にて回転させることができる。そして、このとき発生するタイヤの軸力変動を前記測定手段により測定し、その結果を、周波数分析し、例えば前記特定の周波数近辺における軸力変動の最大振幅を比較することで、前記特定の周波数における振動特性を正確に評価することが可能となる。従って、ロードノイズ性能の評価精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のタイヤの振動特性の試験装置の一実施を示す側面図である。
【図2】その一部を拡大して示す正面図である。
【図3】加振用突起体のピッチ間隔を示す周方向断面図である。
【図4】加振用突起体の取付け方法の一例を示す斜視図である。
【図5】加振用突起体の配列を示す説明図である。
【図6】(A)〜(C)は加振用突起体の突起本体の形状を例示する斜視図である。
【図7】(A)〜(C)は加振用突起体の他の配列を示す説明図である。
【図8】実施例1における軸力変動の周波数分析を示すグラフである。
【図9】実施例2における軸力変動の周波数分析を示すグラフである。
【図10】実施例3における軸力変動の周波数分析を示すグラフである。
【図11】実施例4における軸力変動の周波数分析を示すグラフである。
【図12】比較例1における軸力変動の周波数分析を示すグラフである。
【図13】タイヤの半径方向の振動モードを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1、2において、本実施形態のタイヤの振動特性の試験装置1(単に試験装置1という場合がある。)は、ドラム2と、このドラム2を回転可能に保持する回転駆動手段3と、試験タイヤTを回転可能に保持するタイヤ保持手段4と、回転時の試験タイヤTの軸力変動を測定する測定手段5とを具える。
【0019】
前記ドラム2は、外周面6Sを平滑面とした円筒状の胴部6Aを有する例えば鋼製のドラム本体6と、この外周面6S上に取り付く加振手段7とを具える。
【0020】
前記加振手段7は、ドラム2の外周面6Sに、ドラム周方向に等ピッチ間隔Pを有して一直線上に整列して取り付けられる複数かつ同形状の加振用突起体8を具える。詳しくは、前記加振手段7は、前記加振用突起体8を、ドラム周方向に等ピッチ間隔Pを隔てて一直線上に整列させた少なくとも1本の周方向の突起体列8Rから形成される。なお本例の如く、加振手段7が複数本の突起体列8Rから構成される場合には、ドラム軸心方向に隣り合う加振用突起体8同士も、ドラム軸心線X上で整列している。特に本例では、前記加振手段7が、図5に示すように、試験タイヤTのタイヤ赤道Coが通る中央の周方向線Yc上に配される中央の突起体列8Rcと、この中央の周方向線Ycからドラム軸心方向両側にタイヤ接地巾TWの1/4倍の距離を隔たる位置に配される一対の側の周方向線Ys、Ys上に配される側の突起体列8Rs、8Rsとの3本の突起体列8Rからなる場合が示される。図5では外周面6Sの一部を平面に展開して示している。
【0021】
ここで、前記「整列する」とは、加振用突起体8が、その中心(平面視における面中心)を一直線上に位置させて並ぶことを意味する。これに対して、「周方向線Y上に突起体列8Rが配される」とは、突起体列8Rをなす加振用突起体8の一部が周方向線Y上を通れば良く、必ずしも加振用突起体8の中心が周方向線Y上に位置することを要求しない。しかし好ましくは、前記加振用突起体8の中心が、周方向線Y上に位置することが望ましい。
【0022】
又前記加振用突起体8は、図3、4に示すように、前記ドラム2の外周面6Sから突出する突起本体10を有し、この突起本体10の前記ドラム2の外周面からの高さHを0.5〜7.0mm、ドラム周方向の長さLを3mm以上かつ前記ピッチ間隔Pの0.5倍以下、かつドラム軸芯方向の巾Wを3mm以上としている。前記高さHが0.5mm未満の時、及びドラム軸芯方向の巾Wが3mm未満の時には、加振力が過小となって振動特性の評価精度を低下させる。逆に前記高さHが7mmを越えると、試験タイヤTとの衝撃が大きすぎ、走行中に加振用突起体8がドラム2から外れる恐れを招く。又ドラム周方向の長さLが3mm未満では、試験タイヤTとの衝撃に耐えきれずに加振用突起体8自体が変形する恐れを招く。逆に前記長さLがピッチ間隔Pの0.5倍を越えると、試験タイヤTが、加振用突起体8、8間では外周面6Sに接地しないで、加振用突起体8のみに接しながら走行する傾向となるなど、試験タイヤを充分に加振することができなくなり、振動特性の評価精度を低下させる。
【0023】
なお加振用突起体8のドラム軸芯方向の巾Wの上限は、特に規制されないが、前記加振用突起体が複数の列をなす場合には、列の数をMとしたとき、下記の式(2)を満たすのが好ましい。
W≦(TW−W×M)/(M+1) −−−(2)
即ち、前記巾Wは、M本の突起体列8Rをタイヤ接地巾TW内で均等に配したときにドラム軸芯方向で隣り合う加振用突起体8、8間の間隙G(図5に示す。)以下であることが好ましい。前記巾Wが前記間隙Gよりも大きくなる、即ち上記式(2)を満たさないとき、ドラム軸芯方向で隣り合う加振用突起体8、8間で、試験タイヤTが外周面6Sに充分接地しなくなる傾向を招く。なお本例(M=3)の場合、W≦TW/7である。
【0024】
又前記ドラム2は、前記加振用突起体8を、その取付け数N及びピッチ間隔Pを変更可能に取り付けている。この取付方法としては、特に規制されないが、本例では前記図4の如く、加振用突起体8を、前記突起本体10と、その下面から突出する例えば矩形ブロック状の取付部11とから形成している。前記取付部11の下面には、ボルト12が螺着するボルト取付孔11Hが穿設される。又前記ドラム本体6の円筒状の胴部6Aには、前記取付部11をドラム周方向に移動自在に保持する長穴状の取付孔6Hを形成している。この取付孔6Hは、前記取付部11が嵌り込む保持孔部6H1と、前記取付部11の下面を受ける段差部6H2を介して前記ボルト12が下方から通る巾狭のボルト挿通孔6H3とから形成される。
【0025】
従って、前記ドラム2は、前記加振用突起体8を、前記取付孔6Hに沿ってドラム周方向に自在に位置替え可能に固定でき、前記加振用突起体8の取付け数N、及びピッチ間隔Pを自在に変更可能としている。なお前記加振用突起体8を、マグネット等の磁性体にて形成することが好ましい。これにより、前記加振用突起体8をドラム2にボルト止めする際、吸着力により加振用突起体8がドラム2から落下するのを防止でき、取付作業性を高めることができる。なお取付方法としては、ボルト止めに代えて、接着剤によって固定しても良く、この場合には、加振用突起体8を突起本体10のみで形成しうる。又特に磁性体を用いる場合には、接着剤が硬化するまでの間、加振用突起体8をドラム2に保持させることができるため、作業性を向上しうるとともに、吸着力によって加振用突起体8の固定強度を高めることができる。
【0026】
又前記加振用突起体8の突起本体10は、図6(A)〜(C)に示すように、試験タイヤTが乗り上げる側の前縁10eが円弧をなす板状体、又は半円球状体であることが好ましい。このように前縁10eを円弧とすることにより、試験タイヤTとの衝撃を緩和でき、該試験タイヤTに局部的な応力が作用するのを抑制しうる。なお前記板状体としては、円板状体8A(図6(A)に示す。)、後縁側を除去した半円板状体8B(図6(B)に示す。)、及び後縁側を矩形とした前円後矩形状板状体8C(図6(C)に示す。)などが挙げられる。
【0027】
次に、前記回転駆動手段3は、前記図1の如く、ドラム2の中心軸2Aを回転自在に支持するドラムホルダ15と、前記中心軸2Aに出力軸が連結され前記ドラム2を回転駆動するモータMとを具える。なお前記モータMの回転速度を自在に調節可能であり、この回転速度を調節することにより、ドラム2の外周面6Sの速度、即ち試験タイヤTの走行速度Vを自在に調整することができる。
【0028】
次に、前記タイヤ保持手段4は、基台16に昇降自在に取り付く昇降台17と、この昇降台17に回転自在に枢支されかつ先端に試験タイヤTを着脱自在に取り付けうるタイヤ支持軸18とを具える。そして前記昇降台17の下降により、タイヤ支持軸18の先端に取り付く試験タイヤTを、前記ドラム2の外周面6Sに押し付けでき、所要の接地荷重にて接地させることができる。なお接地荷重としては、特に規制されないが、正規荷重が好適に採用しうる。この正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定める荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
【0029】
又前記タイヤ支持軸18には、回転時の試験タイヤTの軸力変動を測定する測定手段5が取り付けられる。前記測定手段5として、本例では、タイヤ支持軸18の軸受け部に取り付き、上下の軸力変動を測定するロードセル5Aを用いているが、例えば6分力計など種々のセンサが使用できる。
【0030】
次に、前記試験装置1を用いたタイヤの振動特性の試験方法を説明する。この試験方法では、特定の周波数F0にて加振された特定の走行速度V0の試験タイヤTの振動特性を試験する。
【0031】
具体的には、前記特定の周波数F0として、例えばタイヤの製品開発において問題となっているロードノイズのうちで最も低減が望まれる音の周波数が好適に採用できる。又特定の走行速度V0としては、前記問題となっているロードノイズが発生している走行速度が好適に採用できる。しかし特定の走行速度V0としては、他に、基準の走行速度として例えば60km/Hを設定し、この基準の走行速度を固定値として、各タイヤの振動特性試験を行うのも好ましい。
【0032】
そして、前記回転駆動手段3に対し、試験タイヤTの走行速度Vが前記特定の走行速度V0となるように、ドラム2の回転速度を設定する。このとき前記走行速度V0は、40km/H以上であるのが好ましく、40km/H未満では、加振力が過小となって満足のいく評価精度をうることが難しくなる。又試験の安全性の観点からは、前記走行速度V0は100km/H以下、さらには80km/H以下であるのが好ましい。
【0033】
又前記特定の走行速度V0と特定の周波数F0とから、次式(1)にて、前記加振用突起体8のピッチ間隔Pを設定するピッチ設定ステップと、
P=V0/F0 −−−−(1)
前記ピッチ設定ステップにて求めたピッチ間隔Pに基づき、前記加振用突起体8をドラム2の外周面6Sに取り付ける加振用突起体取付けステップとを順次行う。なおロードノイズの周波数は大凡10〜500Hzの範囲であり、従って走行速度を前述の如く40km/H以上とするためには、前記式(1)から前記ピッチ間隔Pは22mm以上が必要となる。従って、前記ピッチ間隔Pの下限値は22mm以上が好ましい。
【0034】
その後、前記試験装置1を作動させて軸力変動測定ステップを行う。この軸力変動測定ステップでは、前記回転駆動手段3及びタイヤ保持手段4を作動させ、前記ドラム2に試験タイヤTを所要の接地荷重で接触させることにより、試験タイヤTを前記周波数F0にて加振しながら前記走行速度V0にて回転させる。そしてこの走行状態において発生する試験タイヤTの軸力の変動、本例では上下の軸力変動を、前記測定手段5によって測定する。
【0035】
又前記軸力変動の測定結果を、周波数分析することで、例えば図10に例示するようなグラフが得られる。そしてこのグラフにおいて、前記特定の周波数F0近辺における軸力変動の最大振幅を比較することで、前記特定の周波数F0における振動特性を評価することが可能となる。そしてこの評価に基づき、タイヤの製品開発において前記振動特性を向上させることにより、ロードノイズが低いタイヤを提供することが可能となる。なお前記周波数F0近辺として、例えば前記周波数F0±5Hzの範囲が好適に採用しうる。
【0036】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0037】
本発明の効果を確認するため、内部構造を違えたタイヤサイズ175/65R15の4種類の試験タイヤ(A、B、C、D)に対し、本発明に係わる試験方法に基づいて、下記の表1の仕様により振動特性試験を行った。そして、その時の各試験タイヤの軸力変動を測定するとともに、その測定結果を周波数分析した結果を、図8〜11に示す。
【0038】
又比較例として、外表面にレプリカ路面を形成したドラムを用いて同様の試験を行い、各試験タイヤの軸力変動を測定するとともに、その測定結果を周波数分析した結果を、図12に示す。なおレプリカ路面は、通常路面を模擬した路面であり、本例では、ドラム軸心方向にのびる排水用のレイングルーブ(溝巾7mm)が、ドラム周方向に20mm間隔にて形成されたものを使用している。比較例と実施例とは、ドラム以外は実質的に同条件である。
【0039】
共通仕様は、下記のとうりである。
・特定の周波数F0 :380Hz(問題となっているロードノイズの周波数)
・特定の走行速度V0 :70km/H(前記ロードノイズが問題となっている走行速度)
<ドラム>
・外周面
・・突起体列の形成数:表1に記載
・・突起本体の形状 :円板体(直径=10mm、高さH=5mm)
・・周方向のピッチ間隔P=V0/F0=70000000/(60×60×380)≒51<mm>
・・加振用突起体の取付数N:30個
・・ドラムの周長 :1530mm
<走向条件>
・適用リム :15×5JJ
・タイヤの内圧 :230kPa
・走行速度 :70km/H
・接地荷重 :3.4kN
【0040】
表1において、
・ 突起体列Rの形成数が1本の場合、図7(A)に示すように、タイヤ赤道Coが通る中央の周方向線Yc上に突起体列Rを形成している。(なお周方向線Yc上に、加振用突起体8の中心が位置している。)
・ 突起体列Rの形成数が2本の場合、図7(B)に示すように、前記中央の周方向線Ycからドラム軸心方向両側にタイヤ接地巾TWの1/6倍の距離を隔たる位置に配される一対の側の周方向線Ys上に、突起体列Rを形成している。(なお周方向線Ys上に、加振用突起体8の中心が位置している。)
・ 突起体列Rの形成数が3本の場合、図5(B)に示すように、前記中央の周方向線Yc上と、この中央の周方向線Ycからドラム軸心方向両側にタイヤ接地巾TWの1/4倍の距離を隔たる位置に配される一対の側の周方向線Ys上とに、それぞれ突起体列Rを形成している。(なお各周方向線Yc、Ys上に、加振用突起体8の中心が位置している。)
・ 突起体列Rの形成数が4本の場合、図7(C)に示すように、前記中央の周方向線Ycからドラム軸心方向両側にタイヤ接地巾TWの1/10倍の距離を隔たる位置に配される一対の内側の周方向線Ys1上と、前記中央の周方向線Ycからドラム軸心方向両側にタイヤ接地巾TWの3/10倍の距離を隔たる位置に配される一対の外側の周方向線Ys2上とに、それぞれ突起体列Rを形成している。(なお各周方向線Ys1、Ys2上に、加振用突起体8の中心が位置している。)
【0041】
【表1】

【0042】
試験タイヤを、適用リム(15×5JJ)、タイヤの内圧(230kPa)の条件にて車両(国産1300ccのFR車)の全輪に装着し、ロードノイズ計測路(アスファルト粗面路)を速度70km/H で走行したときの車内騒音を、ドライバーによって官能評価した(このテストを実車走行テストという場合がある。)。そしてこの評価に基づき、各試験タイヤA、B、C、Dのロードノイズ性能を、1位〜4位と順位づけした(1位が最も優れている。)。
試験タイヤA−−−2位、
試験タイヤB−−−1位、
試験タイヤC−−−3位、
試験タイヤD−−−4位、
【0043】
図12に示すように、レプリカ路面にて加振した比較例の試験方法では、軸力変動の周波数分析結果からは、ロードノイズ性能を評価することが難しい。これに対して、図8〜11に示すように、加振用突起体を等ピッチ間隔Pで配置し、380Hzの周波数にて加振した実施例の試験方法では、軸力変動の周波数分析結果において、380Hz近辺の軸力変動の振幅に明確な差異が生じており、この差異は、前記実車走行テストにおけるロードノイズ性能の順位に一致している。即ち、この380Hz近辺の軸力変動の振幅の最大値からロードノイズ性能を評価しうるのが確認できる。
【0044】
特に、突起体列の形成数を3本とした図10の周波数分析結果は、軸力変動の振幅の差が拡大されており、より明確にロードノイズ性能を評価しうるのが確認できる。その理由として以下のように推測される。図13にタイヤの半径方向の振動モードを示すように、タイヤには、タイヤ赤道aとショルダー部bとに共振の腹部分が位置している。従って、突起体列の形成数を3本とし、その位置を上記のように設定することで、各突起体列が、それぞれ前記共振の腹部分を加振でき、軸力変動の振幅の差を増大させると推測される。
【符号の説明】
【0045】
1 振動特性の試験装置
2 ドラム
3 回転駆動手段
4 タイヤ保持手段
5 測定手段
6S 外周面
8 加振用突起体
10e 前縁
Co タイヤ赤道
T 試験タイヤ
X ドラム軸心線
Yc 中央の周方向線
Ys 側の周方向線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムと、
このドラムを回転可能に保持する回転駆動手段と、
前記ドラムの外周面に試験タイヤを所要の接地荷重で接触させながら該試験タイヤを回転可能に保持するタイヤ保持手段と、
前記回転時の試験タイヤの軸力の変動を測定する測定手段とを具えるとともに、
前記ドラムは、外周面に、ドラム周方向に等ピッチ間隔Pを有して一直線上に整列して取り付けられる複数かつ同形状の加振用突起体を具え、しかも前記加振用突起体の取付け数N及びピッチ間隔Pを変更可能としたことを特徴とするタイヤの振動特性の試験装置。
【請求項2】
前記加振用突起体は、前記ドラムの外周面からの高さHが0.5〜7.0mm、ドラム周方向の長さLが3mm以上かつ前記ピッチ間隔Pの0.5倍以下、かつドラム軸芯方向の巾Wが3mm以上であることを特徴とする請求項1記載のタイヤの振動特性の試験装置。
【請求項3】
前記加振用突起体は、試験タイヤが乗り上げる側の前縁が円弧をなす板状体、又は半円球状体であることを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤの振動特性の試験装置。
【請求項4】
前記加振用突起体の巾Wは、タイヤ接地巾TWの1/7倍以下であり、
しかも前記加振用突起体は、試験タイヤのタイヤ赤道が通る中央の周方向線上、及びこの中央の周方向線からドラム軸心方向両側にタイヤ接地巾TWの1/4倍の距離を隔たる位置に配される一対の側の周方向線上に、それぞれ配されるとともに、ドラム軸心方向に隣り合う加振用突起体同士は、ドラム軸心線上に整列していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のタイヤの振動特性の試験装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のタイヤの振動特性の試験装置を用い、特定の周波数F0にて加振された特定の走行速度V0の試験タイヤの振動特性を試験する試験方法であって、
タイヤの走行速度Vを、前記特定の走行速度V0に設定した後、
前記特定の走行速度V0と特定の周波数F0とから、次式(1)にて、前記加振用突起体のピッチ間隔Pを設定するピッチ設定ステップ、
P=V0/F0 −−−−(1)
前記ピッチ設定ステップにて求めたピッチ間隔Pに基づき、前記加振用突起体をドラムの外周面に取り付ける加振用突起体取付けステップ、
及び、前記ドラムに試験タイヤを所要の接地荷重で接触させることにより、該試験タイヤを前記周波数F0にて加振しながら前記走行速度V0にて回転させるとともに、その時発生する試験タイヤの軸力の変動を前記測定手段によって測定する軸力変動測定ステップを順次行うことを特徴とするタイヤの振動特性の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−112781(P2012−112781A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261614(P2010−261614)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)