説明

タイヤの氷上発進・加速性能評価方法

【課題】円筒状のドラムを用いて、タイヤの氷上発進・加速性能を高精度で評価できる。
【解決手段】内周面を氷結路面2sとした円筒状のドラム2を一定の速度Voで回転させつつ、前記氷結路面2s上を走行するタイヤTを加速する加速手順K1、前記氷結路面2sを−5〜+1℃に制御する制御手順K2、前記加速中のタイヤTの氷結路面2sに対する摩擦係数μを測定する測定手順K3、及び前記測定された摩擦係数μを用いて氷上発進・加速性能を評価する評価手順K4を具えたタイヤの氷上発進・加速性能評価方法である。前記測定手順K3では、タイヤの速度vが4〜35km/h、ドラムの速度Voが2km/h以上かつタイヤの速度vから2〜4km/h減じた速度範囲に設定された測定状態において、タイヤに作用する上下荷重Fzと前後力Fxとを測定して摩擦係数μを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの氷上発進・加速性能を高精度で評価しうるタイヤの氷上発進・加速性能評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの氷上発進・加速性能を高精度で評価するには、氷結路面状態のテストコースで実車走行による評価方法が望ましい。しかしながら、外気温は変動が激しく、最も滑り易い0℃付近の氷結路面でテストできる時間が限られている。また、テスト走行が繰り返されると、タイヤと氷結路面との摩擦により、氷結路面の一部が溶けて路面の状態が変わり易いという問題があった。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、タイヤの氷上制動性能の評価方法が開示されている。この評価方法では、内周面を温度制御して氷結路面とした円筒状のドラムを用い、このドラムの回転速度を一定とすると共に、この氷結路面上を走行するタイヤの走行速度を次第に減速して制動し、そのときタイヤと氷結路面との間に発生する摩擦係数を計測し、タイヤの氷上での制動特性を評価している。この方法では、氷結路面を温度制御するため、外気温の影響を受けることが小さい。
【0004】
しかしながら、このような評価方法を加速試験に応用させて、ドラムの速度を一定として、タイヤ速度を連続的に加速させると、タイヤの前後力が大きく変化する状況となり、タイヤの上下荷重も大きく変動するため、摩擦係数を正確に計測することができず、氷上発進・加速性能を精度良く評価できないという問題がある。
【0005】
そこで、発明者らは、種々研究を重ね、タイヤ回転速度を連続的に加速させるのではなく、段階的に加速させるステップ駆動を行い、加速の各段階において摩擦係数を計測することを提案した。しかしながら、このような場合でも、タイヤの回転速度の加速度が大きいと、タイヤに生じる上下荷重や前後力の変動を収束させるための走行時間が長くなり、氷結路面の表面がタイヤとの摩擦熱で溶けるため、前記最も滑り易い0℃付近の氷結路面における摩擦係数を計測することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−078667号公報
【特許文献2】実案登録第3123589号公報
【特許文献3】特許出願公告平03−62990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、タイヤ及びドラムの速度を一定の範囲に限定することを基本として、走行時間を短縮させることにより氷結路面が溶けるのを抑制して、最も滑り易い0℃付近の氷結路面の摩擦係数を精度よく測定して、タイヤの氷上発進・加速性能を高精度で評価する評価方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち請求項1記載の発明は、内周面を氷結路面とした円筒状のドラムを一定の速度Voで回転させつつ、前記氷結路面上を走行するタイヤを加速する加速手順、前記氷結路面の温度を−5〜+1℃に制御する制御手順、前記加速中のタイヤの氷結路面に対する摩擦係数μを測定する測定手順、及び前記測定された摩擦係数μを用いて氷上発進・加速性能を評価する評価手順を含むタイヤの氷上発進・加速性能評価方法であって、前記測定手順では、前記タイヤの速度vが4〜35km/h、前記ドラムの速度Voが2km/h以上かつタイヤの速度vから2〜4km/h減じた速度範囲に設定された測定状態において、前記タイヤに作用する上下荷重Fzと前後力Fxとを測定し、次式(1)を用いて摩擦係数μを算出することを特徴とする。
μ=Fx/Fz −−−(1)
【0009】
また請求項2記載の発明は、前記測定状態とは、タイヤとドラムとを夫々前記速度v及びVoに安定させた後、該タイヤとドラムとを接触させたときを起点とするとともに、前記測定手順では、前記測定状態になった瞬間からのタイヤの走行時間が120秒を超えてからの上下荷重Fzが駆動輪1輪に係る静止状態での荷重±5%に制御されかつ上下荷重Fzと前後力Fxとが測定される請求項1記載のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法である。
【0010】
また請求項3記載の発明は、前記測定手順では、前記上下荷重Fzと前後力Fxとが、前記タイヤの走行時間が600秒までの間で測定される請求項1又は2記載のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法である。
【0011】
また請求項4記載の発明は、前記測定手順では、前記上下荷重Fzと前後力Fxとが複数回測定され、前記評価手順では、上下荷重Fzと前後力Fxとの平均値から算出される平均摩擦係数μoが用いられる請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法である。
【0012】
また請求項5記載の発明は、前記氷結路面の温度は、氷結路面からドラムの回転中心方向に0.5〜1.5m離間した位置で計測される請求項1乃至4のいずれかに記載のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法である。
【0013】
また請求項6記載の発明は、前記制御手順は、前記氷結路面の温度を−2〜0℃に制御する請求項1乃至5のいずれかに記載のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法は、内周面を氷結路面とした円筒状のドラムを一定の速度Voで回転させつつ、前記氷結路面上を走行するタイヤを加速する加速手順、前記氷結路面の温度を−5〜+1℃に制御する制御手順、前記加速中のタイヤの氷結路面に対する摩擦係数μを測定する測定手順、及び前記測定された摩擦係数μを用いて氷上発進・加速性能を評価する評価手順を含む。このように氷結路面の温度を−5〜+1℃に制御するため、最も滑り易く問題となる0℃付近の氷結路面での摩擦係数を測定することができる。
【0015】
また、測定手順では、前記タイヤの速度vが4〜35km/h、前記ドラムの速度Voが2km/h以上かつタイヤの速度vから2〜km/h減じた速度範囲に設定された測定状態において、前記タイヤに作用する上下荷重Fzと前後力Fxを測定し、次式(1)を用いて摩擦係数μが算出される。
μ=Fx/Fz −−−(1)
このようにタイヤの速度v及びドラムの速度Voが限定されることにより、タイヤに生じる上下荷重や前後力の変動を収束させるための走行時間を短かくできるため、氷結路面を溶かすことも無い。また、このような速度範囲は、実車による発進に最も良く使用される領域を再現するため、この速度範囲で測定された摩擦係数μは、実車による発進・加速性能と相関する。従って、本発明の氷上発進・加速性能評価方法によって得られた摩擦係数μは、高精度の実車の発進・加速性能として高く評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のタイヤの氷上発進・加速性能の評価方法を実施するための氷上試験装置を概念的に示す側面図である。
【図2】摩擦係数μと走行時間Δtとの関係を示すグラフである。
【図3】(A)は、上下荷重Fzと走行時間との関係、(B)は、前後力Fxと走行時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本発明のタイヤの氷上発進・加速性能の評価方法を実施するための氷上試験装置1は、内周面を氷結路面2sとした円筒状のドラム2と、前記ドラム2を水平な軸心j2周りで回転可能に支持するドラム支持手段3と、前記氷結路面2sに対して、タイヤTの外周面を所定の荷重で接触させながら前記タイヤTを水平な軸心jT周りに回転可能に支持するタイヤ支持手段4とを具える。
【0018】
前記ドラム2は、鋼製の円筒状のドラム本体2Aと、このドラム本体2Aの一側面を閉じる側壁体2Bとを具える。また、ドラム本体2Aの他側面側はタイヤTを出し入れするための開口5とされ、該開口5の周縁には小高さのフランジ部5fが設けられている。
【0019】
また、前記ドラム支持手段3は、ドラム2の前記側壁体2Bに一端部が固定される支持軸3Aと、この支持軸3Aを軸受けを介して回転自在に支持する支持台3Bと、前記支持軸3Aを回転駆動する駆動手段3Cとを具える。前記駆動手段3Cは、モータMを含み、このモータMの回転速度を制御することにより前記ドラム2の回転速度が調節される。
【0020】
前記ドラム本体2Aの内周面側には、周方向に連続する滑らかな氷結路面2sが形成される。この氷結路面2sは、前記ドラム2を回転させながら水を注入することにより形成される。具体的には、ドラム2を、その内周面の速度が50〜100km/hの範囲となる高速回転域にて回転させながら、ドラム2内に水を適宜注入する。そして、この注入した水を遠心力によって前記内周面に均等に貼り付けながら凍結させ、これを繰り返すことで氷厚さが例えば20〜50mmの氷盤が形成される。その後、ドラム回転状態にて例えば、切削バイトを用いて氷盤表面を薄く削り取ることにより、ドラム2と同心な滑らかな氷結路面2sが形成される。また、ドラム本体2Aの内周面側には、該氷結路面2sから前記ドラムの回転中心方向に0.5〜1.5m離間した位置Hでの温度を計測制御する温度計Sが設けられる。本実施形態では、氷結路面の温度は、この温度計Sで計測された値をいう。
【0021】
また、前記タイヤ支持手段4は、本実施形態では、基台10と、この基台10上にドラム軸方向にスライド移動可能に支持される支持台11と、該支持台11にシリンダ12を介して昇降自在に取り付く支持アーム13と、該支持アーム13の下端部に軸受けを介して連結される水平なタイヤ支持軸14とを具える。そして、このタイヤ支持手段4は、前記シリンダ12によって支持アーム13を上下動させることにより、前記タイヤ支持軸14に回転自在に保持されるタイヤTを、前記氷結路面2sに対して所定の荷重で押し付けうるとともに、その時の荷重量を調整することができる。
【0022】
また、前記支持アーム13には、前記タイヤ支持軸14の回転速度、ひいてはタイヤTの走行速度を自在にコントロールしうるタイヤ速度制御手段15が取り付く。このタイヤ速度制御手段15は、例えば周知のモータを含んで構成される。又前記タイヤ支持軸14には、タイヤTに作用する上下荷重Fz及び前後力Fxを測定するための荷重センサとして、本実施形態では分力計6が取り付けられる。
【0023】
次に、タイヤの氷上発進・加速性能の評価方法を説明する。この評価方法は、内周面を氷結路面2sとした前記ドラム2を一定の速度Vo(氷結路面2sの周速度Vo)で回転させつつ、前記氷結路面2s上を空転するタイヤTを加速する加速手順K1、前記氷結路面2sの温度を−5〜+1℃に制御する制御手順K2、前記加速中のタイヤTの氷結路面2sに対する摩擦係数μを測定する測定手順K3、及び前記測定された摩擦係数μを用いて氷上発進・加速性能を評価する評価手順K4を具える。
【0024】
前記加速手順K1では、ドラム2を一定の速度Voで走行させる一方、タイヤTの走行速度vをドラム2の速度Voよりも大の速度にする。これにより、タイヤTは、ドラム2に対して加速状態となり、発進・加速を発生している。
【0025】
制御手順K2では、氷結路面2sの温度が−5〜+1℃に制御される必要がある。氷結路面2sの温度が−5℃よりも小さくなると、タイヤTとの摩擦熱によっても氷は溶けないため、最も滑り易く問題となる0℃付近の氷結路面(つるつる路面)における摩擦係数μを測定することができない。逆に氷結路面2sの温度が+1℃を超えると、前記摩擦熱により氷結路面2sが溶け易くなり、同様に、つるつる路面における摩擦係数μを測定することができない。このような観点より、前記氷結路面2sの温度は、−2〜0℃に制御されるのが望ましい。また、タイヤの上下荷重Fzは、そのタイヤが装着される車両の静止状態での駆動輪1輪に係る荷重の±5%に制御されるのが望ましい。
【0026】
前記測定手順K3では、タイヤTの速度vが、4〜35km/h、ドラム2の速度Voが、2km/h以上かつタイヤの速度vから2〜km/h減じた速度に設定(以下、このような状態を「測定状態」という。)される必要がある。前記測定状態とは、本明細書において、より詳しくは、タイヤとドラムとを夫々前記速度v及びVoに安定させた後、該タイヤとドラムとを接触させたときを起点とする状態をいう。
【0027】
また、測定手順K3では、前記測定状態におけるタイヤに作用する上下荷重Fzと前後力Fxが測定される。そして、この上下荷重Fzと前後力Fxとにより、摩擦係数μが、次式(1)を用いて算出される。
μ=Fx/Fz −−−(1)
【0028】
ここで、発明者らの種々の実験結果から、このような速度範囲に設定することにより、実際の車両の発進時の加速状態を再現することが判明した。これにより、この速度範囲で測定された摩擦係数μは、実車発進・加速性能と精度良く相関する。
【0029】
また、図2には、測定状態になった瞬間からのタイヤの走行時間と摩擦係数μとの関係が示される。図2に示されるように、氷結路面2sにおけるタイヤの摩擦係数μは、タイヤの走行の初期領域hでは大きく減少し、その後の中期領域mでは漸増し、さらにこれ以降の終期領域sでは漸減する傾向がある。この理由としては、上下荷重Fzと走行時間との関係を示す図3(A)及び前後力Fxと走行時間との関係を示す図3(B)に示されるように、タイヤTに生じる上下荷重Fz及び前後力Fxの走行時間による変動に起因するものであることが確認できる。従って、本実施形態の測定手順K3では、上下荷重や前後力の変動が小さく安定している終期領域sでの摩擦係数μを測定することとしている。これにより、高精度で発進・加速性能を評価できる。
【0030】
また、本実施形態では、タイヤTの速度v及びドラム2の速度Voが上述の所定の速度に限定される必要がある。これにより、上下荷重Fz及び前後力Fxの変動が小さくなり、タイヤTとドラム2との摩擦熱が抑制され、つるつる路面における摩擦係数μの計測が可能になる。また、このような作用効果をさらに発揮させる観点より、前記タイヤTの速度v及びドラム2の速度Voを等速度(所定の速度±10%の範囲の速度を含む)にすることが望ましい。
【0031】
前記速度vが、4km/h未満又は35km/hを超えると、タイヤに発進・加速が作用しないかまたは過度の発進・加速が作用する状態となり、実際の走行状態と乖離した摩擦係数μが計測されるおそれがある。同じく、前記速度Voが、2km/h未満または速度vと前記速度Voとの差(v−Vo)が、2km/h未満若しくは4km/hを超えても実際の走行を再現したものとはならないおそれがある。このような観点より、前記速度vは、10〜20km/hが望ましく、また、速度Voは、7〜18km/hが望ましく、さらにタイヤの速度vから2.5〜3.5km/h減じた速度に設定されるのが望ましい。また、同様の観点より、タイヤの上下荷重Fzは、そのタイヤが装着される車両の静止状態での駆動輪1輪に係る荷重の好ましくは±3%に制御されるのが望ましい。
【0032】
また、本実施形態の測定状態では、図2に明らかに示されるように、前記タイヤの走行時間が120秒未満では、摩擦係数μが大きく変化している不安定な状態である。逆に、前記タイヤの走行時間が長くなると、タイヤTとドラム2との摩擦熱が大きくなり、氷結路面の状態変化を招くおそれがある。従って、前記測定手順K3では、前記上下荷重Fzと前後力Fxとは、前記タイヤの走行時間が120秒を超えてから測定されるのが好ましく、また、600秒までの間に測定されるのが望ましく、さらに好ましくは、400秒までの間に測定されるのが望ましい。
【0033】
前記評価手順K4では、前記測定手順K3によって測定された摩擦係数μの値から、例えば、事前に算出した摩擦係数μと実車走行による発進・加速性能との相関関係の表などを用いて、発進・加速性能を評価する。
【0034】
また、さらに精度良く発進・加速性能を評価するために、前記摩擦係数μは、複数回、より好ましくは、5〜10回測定された前記上下荷重Fzと前後力Fxとの平均値から算出される平均摩擦係数μoを用いるのが望ましい。
【0035】
以上本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施することができる。
【0036】
図1に示す氷上試験装置を用い、トレッドパターンの異なる6種類の小型トラック用ラジアルタイヤ(タイヤサイズ225/80R17.5)の摩擦係数μを、表1に示す仕様にて夫々計測した。このとき、所定の速度に安定させたタイヤとドラムとを接触させた時点から走行時間の計測を開始し、開始後120秒から180秒までを10秒間隔で摩擦係数μを10回計測し、その平均値を算出した。そして、各パラメータでの摩擦係数μの最も大きなタイヤの評点を5、最も小さなタイヤの評点を1とする5段階で表した。なお、総合評価は、後述する実車走行テスト結果と比較した結果であり、以下の評価を表す。
◎・・・実車走行テスト結果と全て(6種類のタイヤ)の評点とが一致したもの
○・・・実車走行テスト結果と5種類のタイヤの評点とが一致したもの
△・・・実車走行テスト結果と4種類のタイヤの評点とが一致したもの
×・・・実車走行テスト結果と3種類以下のタイヤの評点とが一致したもの
主な共通仕様は下記の通りである。
氷結路面の温度:−2℃
タイヤの内圧:700kPa
タイヤの負荷荷重:3.9kN
テストの結果を表1に示す。
【0037】
【表1】



【0038】
又、実車走行テストとして、同じ6種類のタイヤを内圧700kPaの条件にて、車両(国産トラック、積載量3500kg 排気量8200ccの前1軸、後1軸の後輪駆動)の後輪4輪に装着し、気温0℃の環境下で、氷結路面のテストコースを走行させた。そして、車両発進時の発進・加速性能をドライバーのフィーリングの最も良いものを5点、最も悪いものを1点とする5段階で評価した。テストの結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表1に示されるように、実施例は、比較例よりも実車走行による発進・加速性能に近似した評価が可能となる。また、走行時間が120秒よりも短い時間でも摩擦係数μを計測したが、その結果は、前後力や上下荷重の変動が大きくなるため、実車走行による発進・加速性能に近似したものにはならなかった。
【符号の説明】
【0041】
2 ドラム
2s 氷結路面
K1 加速手順
K2 制御手順
K3 測定手順
K4 評価手順
T タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面を氷結路面とした円筒状のドラムを一定の速度Voで回転させつつ、前記氷結路面上を走行するタイヤを加速する加速手順、
前記氷結路面の温度を−5〜+1℃に制御する制御手順、
前記加速中のタイヤの氷結路面に対する摩擦係数μを測定する測定手順、
及び前記測定された摩擦係数μを用いて氷上発進・加速性能を評価する評価手順を含むタイヤの氷上発進・加速性能評価方法であって、
前記測定手順では、前記タイヤの速度vが4〜35km/h、前記ドラムの速度Voが2km/h以上かつタイヤの速度vから2〜4km/h減じた速度範囲に設定された測定状態において、前記タイヤに作用する上下荷重Fzと前後力Fxとを測定し、次式(1)を用いて摩擦係数μを算出することを特徴とするタイヤの氷上発進・加速性能評価方法。
μ=Fx/Fz −−−(1)
【請求項2】
前記測定状態とは、タイヤとドラムとを夫々前記速度v及びVoに安定させた後、該タイヤとドラムとを接触させたときを起点とするとともに、
前記測定手順では、前記測定状態になった瞬間からのタイヤの走行時間が120秒を超えてからの上下荷重Fzが駆動輪1輪に係る静止状態での荷重±5%に制御されかつ上下荷重Fzと前後力Fxとが測定される請求項1記載のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法。
【請求項3】
前記測定手順では、前記上下荷重Fzと前後力Fxとが、前記タイヤの走行時間が600秒までの間で測定される請求項1又は2記載のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法。
【請求項4】
前記測定手順では、前記上下荷重Fzと前後力Fxとが複数回測定され、
前記評価手順では、上下荷重Fzと前後力Fxとの平均値から算出される平均摩擦係数μoが用いられる請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法。
【請求項5】
前記氷結路面の温度は、氷結路面からドラムの回転中心方向に0.5〜1.5m離間した位置で計測される請求項1乃至4のいずれかに記載のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法。
【請求項6】
前記制御手順は、前記氷結路面の温度を−2〜0℃に制御する請求項1乃至5のいずれかに記載のタイヤの氷上発進・加速性能評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−163365(P2012−163365A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21968(P2011−21968)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)