説明

タイヤバルブ動作切換システム

【課題】タイヤバルブの動作切り換えを容易に行うことができるタイヤバルブ動作切換システムを提供する。
【解決手段】タイヤバルブ動作切換システム6は、各タイヤ2に取り付けられるとともにタイヤ空気圧の検出信号Stpを車体に無線送信可能なタイヤバルブ3の動作状態を切り換える。タイヤバルブ動作切換システム6は、車両1に予め搭載され、タイヤバルブ3が受信可能な電波と同一周波数の電波を送信可能なドアLF発信機13〜17と、タイヤバルブ3の動作状態の切り換え要求として、車両1にて入力されるトリガを検出するモード切換操作検出部11bと、モード切換操作検出部11bでトリガを検出した際、ドアLF発信機13〜17が自身の主機能でリクエスト信号Srqを送信するときよりも狭い範囲で、タイヤバルブ3の動作状態を設定する操作信号を、ドアLF発信機13〜17からタイヤバルブ3に送信させる送信制御部11cと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤバルブの例えば起動や停止を切り換えるタイヤバルブ動作切換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される装置として、タイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)が知られている。タイヤ空気圧監視システムは、走行時に車両のタイヤに装着されたセンサからタイヤの空気圧や温度を無線通信によって取得して、タイヤの異常を監視するシステムである。なお、センサは、タイヤバルブに一体に搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のようなタイヤ空気圧監視システムのタイヤバルブには、搭載されたセンサが検出した空気圧や温度等の検出情報を無線信号で送信する送信機が設けられる。また、車両には、送信機から送信された検出情報を含む無線信号を受信可能な受信機と、受信した信号から空気圧や温度等を表示するとともに、異常時には警告する制御装置とが設けられる。なお、送信機はタイヤバルブに内蔵されているものがほとんどである。
【0004】
タイヤ空気圧監視システムでは、自車両に対応したタイヤバルブから送信された無線信号であるか否かを判断するために、タイヤバルブの送信機からバルブ識別情報(バルブID)を含む無線信号を送信させる。そして、タイヤ空気圧監視システムの制御装置は、予め登録されたバルブIDと一致するか否かの認証を行い、認証が成立したことを条件に、無線信号に含まれる検出情報に基づいて空気圧や温度等を表示するとともに、異常時には警告する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−335115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記タイヤ空気圧監視システムに用いられるタイヤバルブは、工場出荷時にはスリープ状態(停止状態)である。このスリープ状態のタイヤバルブを起動させるためには、専用のツールを使って起動させる必要があった。すなわち、タイヤバルブの起動にはこの専用ツールが不可欠であって、工場やディーラであれば専用ツールを購入してタイヤバルブの起動を行うことができるが、小規模な修理工場や販売店、又は個人がタイヤバルブをメーカから購入しても専用ツールを持っていないためにタイヤバルブの起動を行うことができなかった。そこで、専用ツールがなかったとしても、タイヤバルブを容易に起動することができる技術が求められていた。
【0007】
また、タイヤバルブを使用しない際には、タイヤバルブをスリープ状態としておけば、電池の消費が抑えられる。よって、1つのタイヤバルブを長期間使用することができるので、この点からもタイヤバルブの起動や停止等の操作を容易に行うことができる技術が求められていた。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤバルブの動作切り換えを容易に行うことができるタイヤバルブ動作切換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、各タイヤに取り付けられるとともにタイヤ空気圧の検出信号を車体に無線送信可能なタイヤバルブの動作状態を切り換えるタイヤバルブ動作切換システムであって、車両に予め搭載され、前記タイヤバルブが受信可能な電波と同一周波数の電波を送信可能な送信手段と、前記タイヤバルブの動作状態の切り換え要求として、前記車両にて入力されるトリガを検出する検出手段と、前記検出手段で前記トリガを検出した際、前記送信手段が自身の主機能で電波を送信するときよりも狭い範囲で、前記タイヤバルブの動作状態を設定する操作信号を、前記送信手段から前記タイヤバルブに送信させる制御手段と、を備えたことをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、検出手段がトリガを検出すると、車両に予め搭載された送信手段から主機能で電波を送信するときよりも狭い範囲で操作信号を送信する。このため、ユーザが意図してタイヤバルブをこの操作信号が送信された狭い範囲に持ち込むことで、タイヤバルブが操作信号を受信して、タイヤバルブの動作状態を切り替えることが可能となる。なお、タイヤバルブが装着されたタイヤをこの操作信号が送信された狭い範囲に持ち込んでもよい。よって、専用ツールがなかったとしても、タイヤバルブの起動や停止等の操作を容易に行うことが可能となる。なお、本発明は、車両にタイヤ空気圧監視システムを備えることを必須としない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、前記車両は、当該車両からの通信を契機に狭域無線通信にて電子キーとID認証を行う電子キーシステムを備え、前記送信手段は、前記電子キーシステムの該車両側の送信手段であることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、電子キーシステムは大概の車両に取り付けられているので、本発明を適用させることが容易である。また、例えば車両の周囲に通信エリアが形成される電子キーシステムであれば、タイヤバルブの動作状態を切り換える際に使用し易い。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、前記送信手段は、前記車両に装着されたタイヤに届かない範囲に前記操作信号を送信することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、車両に装着されたタイヤに操作信号が届かないので、例えばタイヤ空気圧監視システム用のタイヤバルブがタイヤに装着されていたとしても、このタイヤに装着されたタイヤバルブを操作することなく、ユーザが操作したいタイヤバルブのみ操作することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、前記タイヤバルブに設けられ、当該タイヤバルブが前記操作信号に基づく動作状態に切り換えられたとき、その旨を前記車両に通知する通知信号を送信する通知手段と、前記車両に設けられ、前記タイヤバルブから前記通知信号を受信したとき、前記タイヤバルブの動作状態が切り換えられたことを、前記車両にて報知する報知手段と、を備えたことをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、操作信号が発信された範囲にタイヤバルブをユーザが持ち込んだことで、タイヤバルブの動作状態が切り換えられた際に報知するので、タイヤバルブが操作されたことをユーザが認識することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、前記送信手段のアンテナは、前記車両のバンパー内に設置されていることをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、バンパー内に設置された発信アンテナから操作信号を送信するので、例えばタイヤに取り付けられたタイヤ空気圧監視システム用のタイヤバルブを操作したいときに、タイヤを持ち上げることなく、タイヤバルブに操作信号を受信させて、タイヤバルブを操作することが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、前記送信手段は、荷室ドアの施解錠の前記ID認証に用いる無線信号を送信可能であり、リアバンパーに設けられることをその要旨としている。
【0020】
同構成によれば、荷室ドアの施解錠に用いる発信アンテナをリアバンパーに設けた。このため、荷室ドアの施解錠用の発信アンテナの取り付け位置をリアバンパーにすることで、タイヤ空気圧監視システム用のタイヤバルブが装着されたタイヤを持ち上げることなく、タイヤバルブに操作信号を受信させて、タイヤバルブを操作することが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、前記検出手段は、前記車両に予め設けられた操作手段に特定操作が行われた際に、前記タイヤバルブの動作状態の切り換え要求があったと認識することをその要旨としている。
【0022】
同構成によれば、ユーザが操作手段に特定操作を行うことで操作信号を送信させることが可能となり、操作信号を送信するための操作手段を新たに設けることなく、操作信号を意図的に送信することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、タイヤバルブの動作切り換えを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】タイヤバルブ動作切換システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】車両に周囲に形成される通信エリアを示す図。
【図3】タイヤバルブをドアにかざした状態を示す図。
【図4】タイヤをリアバンパーに近づけた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を電子キーシステム及びタイヤ空気圧監視システムを備えた車両に具体化した一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示されるように、車両1には、運転者等が携帯する電子キー40と相互無線通信を行うことで、ドアロックの施解錠やエンジンの始動及び停止等を行うことが可能な電子キーシステム4が搭載されている。電子キーシステム4は、キー固有のIDコードを無線通信で発信可能な電子キー40が車両キーとして使用され、車両1と狭域無線通信(通信範囲:数m)によりID照合を実行する。
【0026】
また、車両1の車体には、タイヤ2の空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)5が設けられている。そして、本実施例においては、電子キーシステム4とタイヤ空気圧監視システム5との制御部及び電波の送受信部が共用されている。
【0027】
車両1には、電子キーシステム4及びタイヤ空気圧監視システム5の制御を行う照合ECU(Electronic Control Unit)11と、車両1の電源系を管理するメインボディECU21とが設けられている。照合ECU11には、車両1の車室内に埋設されてLF(Low Frequency)帯の電波を発信可能な車室内LF発信機12と、車両1の各ドア付近に設置されてLF帯の電波を車室外に発信可能な右前ドアLF発信機13、右後ドアLF発信機14、左前ドアLF発信機15、左後ドアLF発信機16、トランクドアLF発信機17とが接続されている。右前ドアLF発信機13、右後ドアLF発信機14、左前ドアLF発信機15、左後ドアLF発信機16は、各ドアのアウトサイドドアハンドル7に略対向する位置に設置されている(図3参照)。また、トランクドアLF発信機17は、リアバンパー8の内部に設置されている(図4参照)。各ドアLF発信機13〜17は、発信アンテナと一体に設けられている。なお、各ドアLF発信機13〜17が送信手段を構成する。
【0028】
また、照合ECU11には、車室内後方に設置されてUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な統合チューナ18が接続されている。照合ECU11には、例えばドアロック施解錠等を管理するメインボディECU21やエンジンECU22が車内LAN(Local Area Network)20を介して接続されている。
【0029】
一方、電子キーシステム4に用いる電子キー40には、コントロールユニットとして通信制御部41が設けられている。通信制御部41は、固有のキーコードとしてIDコードが記憶されたメモリ41aを備えている。通信制御部41には、外部で発信されたLF帯の電波を受信可能なLF受信部42と、通信制御部41の指令に従いUHF帯の電波を発信可能なUHF発信部43とが接続されている。
【0030】
車両1の各ドアには、ユーザが車両1のドアロックを施錠するときに操作するロックセンサ24と、ドアロックを解錠するときに操作するアンロックセンサ25とが設けられている。
【0031】
ユーザが車室外に位置するときには、照合ECU11は、各ドアLF発信機13〜17から車室外にリクエスト信号Srqを間欠的に発信させ、スマート通信の成立を試みる。このとき、各ドアLF発信機13〜17は、リクエスト信号Srqを各ドアから数mの範囲に発信し、車両1の周囲に車室外通信エリアAoを形成する(図2参照)。電子キー40は、リクエスト信号SrqをLF受信部42で受信すると、自身のメモリ41aに登録されたIDコードを含ませたIDコード信号SidをUHF発信部43から返信する。照合ECU11は、IDコード信号SidのIDコードと自身のメモリ11aに登録されたIDコードとを照らし合わせてID照合を行い、この車室外におけるID照合が成立することを確認すると、電子キー40が車室外に位置するとして、車室外照合が成立したとして処理する。よって、メインボディECU21にドアロックの解錠動作を実行させる。つまり、電子キー40を所持して車両1に近づいてアンロックセンサ25に触れるだけで、ドアロックが解錠される。
【0032】
ユーザが降車したときには、照合ECU11は、ロックセンサ24が操作されたことをトリガとしてスマート通信の成立を試みる。照合ECU11は、車室外照合が成立すると、メインボディECU21にドアロックの施錠動作を実行させる。つまり、電子キー40を所持して降車してロックセンサ24に触れるだけで、ドアロックが施錠される。このとき、照合ECU11は、ロックセンサ24が触れたことを検出すると、まず車室外照合を実行し、電子キー40が車室外に存在するか否かを確認する。照合ECU11は、車室外照合が成立することを確認すると、メインボディECU21にドアロック施錠を実行させる。
【0033】
車両1には、照合ECU11の車室内におけるID照合が成立したことに基づいてエンジンの点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU22が設けられている。エンジンECU22は、車内LAN20を通じて照合ECU11等の各種ECUに接続されている。車両1の運転席には、車両1の電源状態(電源ポジション)を切り換える際に操作されるエンジンスイッチ23が設けられている。エンジンスイッチ23は、照合ECU11とメインボディECU21とに接続されている。
【0034】
照合ECU11は、例えばカーテシスイッチ(図示略)等でユーザの乗車を確認したときや、エンジンスイッチ23が押されたとき、車室内LF発信機12からリクエスト信号Srqを発信させて、車室内におけるID照合を実行する。このとき、車室内LF発信機12は、リクエスト信号Srqを車室内に発信して、車室内通信エリアAiを形成する(図2参照)。照合ECU11は、ID照合が成立することを確認すると、電子キー40が車室内に位置するとして、車室内照合を成立として処理する。
【0035】
照合ECU11は、車室内照合が成立することを確認すると、メインボディECU21にエンジンスイッチ23の操作を許可する。メインボディECU21は、電子キー40が車室内に存在する場合に、エンジンスイッチ23が押し操作される度に電源状態をACCオン→IGオン→電源オフの順に繰り返し遷移させる。また、照合ECU11は、電子キー40が車室内に存在する場合に、エンジン停止時にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ23が操作されると、エンジンECU22にエンジンを始動させる。
【0036】
また、車両1の各タイヤ2には、タイヤ空気圧等の状態を検出可能なタイヤバルブ3が設けられている。タイヤバルブ3には、タイヤバルブ3の動作を制御するバルブ制御部31が搭載されている。バルブ制御部31には、日本国内ではUHF帯の電波(約315MHz)によってタイヤ2の空気圧等を含む検出信号Stpを送信するUHF発信部33が接続されている。バルブ制御部31には、バルブIDを記憶したメモリ31aが設けられている。
【0037】
また、タイヤバルブ3には、タイヤ2の圧力を検出する圧力センサ34、タイヤ2の温度を検出する温度センサ35、タイヤ2の径方向に掛かる加速度を検出する加速度センサ36等が搭載されている。これらセンサ類は、検出信号をバルブ制御部31に出力する。
【0038】
UHF発信部33が送信する検出信号Stpには、タイヤ2の空気圧、温度、及びタイヤバルブ3の固有ID(バルブID)等が含まれている。タイヤバルブ3は、加速度センサ36が加速度を検出した際に、各タイヤバルブ3から順に検出信号StpをUHF発信部33から送信する。
【0039】
車両1の運転席には、タイヤ2の空気圧等を運転者に表示する表示装置27が設置されている。照合ECU11は、タイヤバルブ3から送信された検出信号Stpを統合チューナ18で受信すると、自身のメモリ11aに登録されたバルブIDとを照らし合わせてバルブ照合を行う。そして、照合ECU11は、バルブ照合が成立すると、バルブ照合が成立したタイヤに関し、表示装置27に空気圧や温度を表示する。
【0040】
本実施例の車両1の電子キーシステム4には、タイヤバルブ動作切換システム6が設けられている。本例のタイヤバルブ動作切換システム6は、例えば車両1が任意の方式で操作されたとき、タイヤバルブ動作切換システム6をその操作に応じたモードに移行させ、各ドアLF発信機13〜17からタイヤバルブ3を操作する起動信号Swkや停止信号Ssp等の操作信号を発信させる。そして、起動信号Swkや停止信号Sspをタイヤバルブ3に受信させ、タイヤバルブ3を各信号に応じた動作状態(起動・停止)に設定する。
【0041】
この場合、照合ECU11には、タイヤバルブ3の動作状態を設定する際に行う各種操作を検出するモード切換操作検出部11bが設けられている。モード切換操作検出部11bは、車両1に備えられた操作手段に特定操作が行われると、その特定操作がどのモードのものかを判定する。例えば、モード切換操作検出部11bは、エンジンスイッチ23と、運転席窓開閉スイッチ28又は助手席窓開閉スイッチ29とが同時に操作されると、タイヤバルブ動作切換システム6をタイヤバルブ起動モードに移行すべきと判断する。また、モード切換操作検出部11bは、エンジンスイッチ23が押されながら助手席窓開閉スイッチ29が操作されると、タイヤバルブ動作切換システム6をタイヤバルブ停止モードに移行すべきと判断する。なお、モード切換操作検出部11bが検出手段として機能する。
【0042】
照合ECU11には、タイヤバルブ動作切換システム6の各モードに応じた操作信号を、各ドアLF発信機13〜17から送信させる送信制御部11cが設けられている。本例の送信制御部11cは、タイヤバルブ動作切換システム6をタイヤバルブ起動モードに移行したとき、起動信号Swkを各ドアLF発信機13〜17から所定時間継続して発信する。また、送信制御部11cは、タイヤバルブ動作切換システム6をタイヤバルブ停止モードに移行したとき、停止信号Sspを各ドアLF発信機13〜17から所定時間継続して発信する。なお、送信制御部11cが制御手段として機能する。
【0043】
図2に示されるように、各ドアLF発信機13〜17は、起動信号Swkや停止信号Ssp等の操作信号を、車室外にリクエスト信号Srqを発信するときの車室外通信エリアAoよりも小さい範囲に発信し、バルブ操作通信エリアAvを形成する。つまり、各ドアLF発信機13〜17は、車室外にリクエスト信号Srqを送信するという主機能の動作のときよりも狭い範囲(例えば約10cm程度)で、起動信号Swkや停止信号Ssp等の操作信号を送信する。また、操作信号は、車両1の各タイヤに届かない程の狭いエリアで送信される。
【0044】
タイヤバルブ3には、LF帯の電波を受信可能なLF受信部32が設けられている。LF受信部32は、LF帯の電波を受信すると電波に含まれるデータを取り出して、このデータをバルブ制御部31に出力する。リクエスト信号Srqを発信する各ドアLF発信機13〜17は、タイヤバルブ3を操作する起動信号Swkや停止信号Ssp等の操作信号を発信する。
【0045】
タイヤバルブ3は、操作信号をLF受信部32で受信すると、操作信号の操作内容に従って動作する。例えば、タイヤバルブ3は、起動信号Swkを受信すると、スリープ状態から起動状態に遷移する。また、タイヤバルブ3は、停止信号Sspを受信すると、起動状態からスリープ状態に遷移する。なお、スリープ状態のタイヤバルブ3は、バルブ制御部31が停止状態であって、LF受信部32のみ起動して電波の受信のみ可能な状態である。タイヤバルブ3は、LF受信部32が起動信号Swkを受信すると、LF受信部32がバルブ制御部31を停止状態から起動させる。
【0046】
タイヤバルブ3には、操作信号を受信して、操作信号に基づく動作状態に切り換えた旨を車両1に通知する通知部31bが設けられている。通知部31bは、操作信号に基づく動作状態に切り換えると、受信信号SreをUHF発信部33から返信する。なお、通知部31bが通知手段として機能する。
【0047】
照合ECU11には、タイヤバルブ3の動作状態が切り換えられたことを報知する報知部11dが設けられている。報知部11dは、受信信号Sreを受信すると、メインボディECU21を介してウィンカー19等を点灯させ、タイヤバルブ3の動作状態が切り換えられたことを報知する、いわゆるアンサーバックを行う。なお、報知部11dが報知手段として機能する。
【0048】
次に、本例の各ドアLF発信機13〜17によるタイヤバルブ3の操作について図3及び図4を参照して説明する。図3ではタイヤバルブ3の起動操作を示す。図4ではタイヤ2に装着されたタイヤバルブ3の停止操作を示す。
【0049】
図3に示されるように、工場から出荷されたタイヤバルブ3は停止状態となっており、通常は専用ツールを用いて起動させる必要がある。そこで、タイヤ2に装着されていないタイヤバルブ3を起動させる際には、まずユーザがエンジンスイッチ23を押しながら運転席窓開閉スイッチ28を操作することでタイヤバルブ動作切換システム6を動作させる。照合ECU11は、エンジンスイッチ23と運転席窓開閉スイッチ28との同時操作を検出すると、タイヤバルブ動作切換システム6をタイヤバルブ起動モードに切り換え、各ドアLF発信機13〜17から起動信号Swkを発信させる。各ドアLF発信機13〜17は、リクエスト信号Srqを発信するときの車室外通信エリアAoよりも小さい範囲であるバルブ操作通信エリアAvに起動信号Swkを送信する。
【0050】
ユーザがスリープ状態のタイヤバルブ3を運転席ドアのアウトサイドドアハンドル7に近づけると、タイヤバルブ3がバルブ操作通信エリアAvに進入することととなり、LF受信部32が起動信号Swkを受信する。タイヤバルブ3は、起動信号Swkを受信すると、バルブ制御部31が起動する。
【0051】
起動したバルブ制御部31は、受信信号SreをUHF発信部33から発信させる。照合ECU11は、統合チューナ18が受信信号Sreを受信すると、ウィンカー19等を点灯させることによってタイヤバルブ3の動作状態が切り換わったことを報知させる。
【0052】
なお、運転席ドア等のアウトサイドに対してタイヤバルブ3が装着されたタイヤ2を近づけて、起動や停止等の操作をさせてもよい。タイヤバルブ3が装着されたタイヤ2を近づけただけでタイヤバルブ3を操作できないときには、持ち上げて操作させる必要がある。
【0053】
一方、図4に示されるように、冬用タイヤから夏用タイヤに交換した際には、タイヤバルブ3を停止させておくことが望ましい。そこで、タイヤ2に装着されたタイヤバルブ3を停止させる際には、まずエンジンスイッチ23を押しながら助手席窓開閉スイッチ29を操作する。照合ECU11は、エンジンスイッチ23と助手席窓開閉スイッチ29との同時操作を検出すると、タイヤバルブ動作切換システム6をタイヤバルブ停止モードに切り換え、各ドアLF発信機13〜17から停止信号Sspを発信させる。各ドアLF発信機13〜17は、リクエスト信号Srqを発信するときの車室外通信エリアAoよりも小さい範囲であるバルブ操作通信エリアAvに停止信号Sspを送信する。
【0054】
ユーザが起動状態のタイヤバルブ3が装着されたタイヤ2を持ち上げることなく、転がしてリアバンパー8に近づけると、タイヤバルブ3がバルブ操作通信エリアAvに進入することとなり、LF受信部32が停止信号Sspを受信する。タイヤバルブ3は、停止信号Sspを受信すると、バルブ制御部31が停止する。
【0055】
停止するバルブ制御部31は、停止する前に受信信号SreをUHF発信部33から発信させる。照合ECU11は、統合チューナ18が受信信号Sreを受信すると、ウィンカー19等を点灯させることによってタイヤバルブ3の動作状態が切り換わったことを報知させる。
【0056】
なお、リアバンパー8にタイヤバルブ3を近づけて、起動や停止等の操作をさせてもよい。タイヤバルブ3が装着されたタイヤ2を近づけただけでタイヤバルブ3を操作できないときには、タイヤ2を回転させる必要がある。
【0057】
以上により、本例においては、電子キーシステム4に用いる各ドアLF発信機13〜17から起動信号Swkや停止信号Ssp等の操作信号を発信させ、この操作信号をタイヤバルブ3に受信させることで、専用ツールを使うことなく、タイヤバルブ3を操作することができる。
【0058】
また、各ドアLF発信機13〜17から発信させる操作信号の範囲を小さくすることで、車両1に装着されたタイヤ2のタイヤバルブ3に届くことなく、ユーザが意図的にバルブ操作通信エリアAvに進入させたタイヤバルブ3のみ操作させることができる。
【0059】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)車両1に予め搭載されたドアLF発信機13〜17から主機能でリクエスト信号Srqを送信するときよりも狭いバルブ操作通信エリアAvで操作信号を送信する。このため、ユーザが意図してタイヤバルブ3をこの操作信号が送信されたバルブ操作通信エリアAvに持ち込むことで、タイヤバルブ3が操作信号を受信して、タイヤバルブ3の動作状態を切り替えることが可能となる。なお、タイヤバルブ3が装着されたタイヤ2をバルブ操作通信エリアAvに持ち込んでも同様の効果を得ることができる。よって、専用ツールがなかったとしても、タイヤバルブ3の起動や停止等の操作を容易に行うことができる。なお、車両1にタイヤ空気圧監視システム5を備えていなかったとしても、タイヤバルブ3の起動や停止等の操作を行うことができる。
【0060】
(2)電子キーシステム4は大概の車両1に取り付けられているので、本発明を適用させることが容易である。また、車両1の周囲に車室外通信エリアAoが形成される電子キーシステム4なので、タイヤバルブ3の動作状態を切り換える際に使用し易い。
【0061】
(3)車両1に装着されたタイヤ2に操作信号が届かないので、タイヤ空気圧監視システム5用のタイヤバルブ3がタイヤ2に装着されていたとしても、このタイヤ2に装着されたタイヤバルブ3を操作することなく、ユーザが操作したいタイヤバルブ3のみ操作することができる。
【0062】
(4)操作信号が発信された範囲にタイヤバルブ3をユーザが持ち込んだことで、タイヤバルブ3の動作状態が切り換えられた際に報知するので、タイヤバルブ3が操作されたことをユーザが認識することができる。
【0063】
(5)バンパー内に設置されたトランクドアLF発信機17から操作信号を送信するので、タイヤ2に取り付けられたタイヤバルブ3を操作したいときに、タイヤ2を持ち上げることなく、タイヤバルブ3に操作信号を受信させて、タイヤバルブ3を操作することができる。
【0064】
(6)トランクドアの施解錠用のトランクドアLF発信機17の取り付け位置をリアバンパー8にすることで、タイヤバルブ3が装着されたタイヤ2を持ち上げることなく、タイヤバルブ3に操作信号を受信させて、タイヤバルブ3を操作することができる。
【0065】
(7)ユーザがエンジンスイッチ23と窓開閉スイッチ28,29とに特定操作を行うことで操作信号を送信させることができ、操作信号を送信するための操作手段を新たに設けることなく、操作信号を意図的に送信することができる。
【0066】
(8)自車両にタイヤバルブ動作切換システム6が備え付けられていなくても、近くにタイヤバルブ動作切換システム6を備えた車両があれば、この車両を用いてタイヤバルブ3の起動や停止を設定することができる。
【0067】
(9)起動信号Swkや停止信号Ssp等の操作信号は狭い範囲で送信されるので、仮に近くに電子キー40が置かれていても、この電子キー40まで電波が届く可能性が低くなる。よって、電子キー40の電源を無駄に消費させずに済む。
【0068】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、タイヤバルブ動作切換システム6を動作させる操作手段としてエンジンスイッチ23と窓開閉スイッチ28,29とを用いたが、車両1に設けられたスイッチであれば、いずれを選択してもよい。また、車両1に設けられたスイッチを1つ選択して、通常とは異なる操作を特定操作としてもよい。
【0069】
・上記実施形態では、操作手段に対する特定操作によってタイヤバルブ動作切換システム6を動作させたが、操作手段に対する特定操作を省略して、定期的に操作信号を各ドアLF発信機13〜17から発信するようにしてもよい。
【0070】
・上記実施形態では、各ドアLF発信機13〜17のいずれからも操作信号を送信するようにしたが、少なくとも1つから発信するようにしてもよい。例えば、右前ドアLF発信機13とトランクドアLF発信機17とからのみ操作信号を発信してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、操作信号を受信したタイヤバルブ3が受信信号Sreを返信するようにしたが、受信信号の送信を省略してもよい。
・上記実施形態では、各ドアLF発信機13〜16を各ドアのアウトサイドハンドル近傍に設置したが、ドアの近傍であればいずれに設置してもよい。
【0072】
・上記実施形態では、トランクドアLF発信機17をリアバンパーに設置したが、低い位置に設置しなくてもよければ、他の位置に設置してもよい。
・上記実施形態では、バルブ操作通信エリアAvを車両1に装着されたタイヤ2に届かない範囲としたが、車両1にタイヤ空気圧監視システム5が設けられていなければ、タイヤ2に届いてもよい。
【0073】
・上記構成において、車両1にタイヤ空気圧監視システム5を省略した構成を採用してもよい。すなわち、タイヤ空気圧監視システム5を備えていない車両1においてもタイヤバルブ3の起動や停止等の操作を行うことが可能である。
【0074】
・上記実施形態において、タイヤバルブ3の操作は、起動や停止の操作に限らず、初期化やIDコードの書き換え等の他の操作でもよい。
・上記実施形態では、電子キーシステム4において車室内外のそれぞれにLF発信機を有したが、車室内に設置したLF発信機を車室内外に共用してもよい。
【0075】
・上記実施形態において、各ドアLF発信機13〜17の配置は所望の車室外通信エリアAoを得られれば、任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、車両1から電子キー40にリクエスト信号Srqを発信するときの周波数と、車両1からタイヤバルブ3に操作信号を発信するときの周波数を異ならせてもよい。なお、この場合には、電子キー40とタイヤバルブ3とへの送信に合わせて周波数を変更する必要がある。
【0076】
・上記実施形態において、電子キーシステム4で使用する無線信号の周波数は、必ずしもLFやUHFに限定されず、これら以外の周波数が使用可能である。また、車両1から電子キー40に無線信号を発信するときの周波数と、電子キー40から車両1に無線信号を返信するときの周波数とは、必ずしも異なるものに限定されず、これらを同じ周波数としてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、電子キーシステム4の制御部とタイヤ空気圧監視システム5の制御部とを照合ECU11にて共用したが、別々の制御部としてもよい。
・上記実施形態では、電子キーシステム4の受信部とタイヤ空気圧監視システム5の受信部とを統合チューナ18にて共用したが、別々の受信部としてもよい。
【0078】
・上記実施形態において、モードへの移行は、車両1の操作機器を手動操作することに限らず、例えば電子キー等の無線端末から車両1に切り換えの信号を送ることにより設定してもよい。
【0079】
・上記実施形態では、電子キーシステム4の送信アンテナを送信手段としたが、電子キーシステム4の送信アンテナに限定されない。
・上記実施形態におけるモードは、起動や停止に限定されない。
【符号の説明】
【0080】
1…車両、2…タイヤ、3…タイヤバルブ、4…電子キーシステム、5…タイヤ空気圧監視システム、6…タイヤバルブ動作切換システム、7…アウトサイドドアハンドル、8…リアバンパー、11…照合ECU、11a…メモリ、11b…モード切換操作検出部、11c…送信制御部、11d…報知部、12…車室内LF発信機、13…右前ドアLF発信機、14…右後ドアLF発信機、15…左前ドアLF発信機、16…左後ドアLF発信機、17…トランクドアLF発信機、18…統合チューナ、19…ウィンカー、20…車内LAN、21…メインボディECU、22…エンジンECU、23…エンジンスイッチ、24…ロックセンサ、25…アンロックセンサ、26…ドアロック装置、27…表示装置、28…運転席窓開閉スイッチ、29…助手席窓開閉スイッチ、31…バルブ制御部、31a…メモリ、31b…通知部、32…LF受信部、33…UHF発信部、34…圧力センサ、35…温度センサ、36…加速度センサ、40…電子キー、41…通信制御部、41a…メモリ、42…LF受信部、43…UHF発信部、Sre…受信信号、Srq…リクエスト信号、Ssp…停止信号、Stp…検出信号、Swk…起動信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各タイヤに取り付けられるとともにタイヤ空気圧の検出信号を車体に無線送信可能なタイヤバルブの動作状態を切り換えるタイヤバルブ動作切換システムであって、
車両に予め搭載され、前記タイヤバルブが受信可能な電波と同一周波数の電波を送信可能な送信手段と、
前記タイヤバルブの動作状態の切り換え要求として、前記車両にて入力されるトリガを検出する検出手段と、
前記検出手段で前記トリガを検出した際、前記送信手段が自身の主機能で電波を送信するときよりも狭い範囲で、前記タイヤバルブの動作状態を設定する操作信号を、前記送信手段から前記タイヤバルブに送信させる制御手段と、を備えた
ことを特徴とするタイヤバルブ動作切換システム。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、
前記車両は、当該車両からの通信を契機に狭域無線通信にて電子キーとID認証を行う電子キーシステムを備え、
前記送信手段は、前記電子キーシステムの該車両側の送信手段である
ことを特徴とするタイヤバルブ動作切換システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、
前記送信手段は、前記車両に装着されたタイヤに届かない範囲に前記操作信号を送信する
ことを特徴とするタイヤバルブ動作切換システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、
前記タイヤバルブに設けられ、当該タイヤバルブが前記操作信号に基づく動作状態に切り換えられたとき、その旨を前記車両に通知する通知信号を送信する通知手段と、
前記車両に設けられ、前記タイヤバルブから前記通知信号を受信したとき、前記タイヤバルブの動作状態が切り換えられたことを、前記車両にて報知する報知手段と、を備えた
ことを特徴とするタイヤバルブ動作切換システム。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、
前記送信手段のアンテナは、前記車両のバンパー内に設置されている
ことを特徴とするタイヤバルブ動作切換システム。
【請求項6】
請求項5に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、
前記送信手段は、荷室ドアの施解錠の前記ID認証に用いる無線信号を送信可能であり、リアバンパーに設けられる
ことを特徴とするタイヤバルブ動作切換システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のタイヤバルブ動作切換システムにおいて、
前記検出手段は、前記車両に予め設けられた操作手段に特定操作が行われた際に、前記タイヤバルブの動作状態の切り換え要求があったと認識する
ことを特徴とするタイヤバルブ動作切換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−236528(P2012−236528A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107369(P2011−107369)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)